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特許7010567導光物品用のアクリルポリビニルアセタールフィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】導光物品用のアクリルポリビニルアセタールフィルム
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/124 20060101AFI20220119BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20220119BHJP
   C08L 29/14 20060101ALI20220119BHJP
   C08L 33/04 20060101ALI20220119BHJP
   G02B 1/04 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
G02B5/124
B32B27/30 A
B32B27/30 102
C08L29/14
C08L33/04
G02B1/04
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018564299
(86)(22)【出願日】2017-06-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-07-18
(86)【国際出願番号】 US2017035882
(87)【国際公開番号】W WO2017214007
(87)【国際公開日】2017-12-14
【審査請求日】2020-06-04
(31)【優先権主張番号】62/346,788
(32)【優先日】2016-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100110803
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】トッド ディー.ジョーンズ
(72)【発明者】
【氏名】バイマル ブイ.タッカー
(72)【発明者】
【氏名】デュエイン ディー.ファンスラー
(72)【発明者】
【氏名】アントニー エフ.シュルツ
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン イー.ジャノスキー
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド シー.ルエンブルク
(72)【発明者】
【氏名】カーラ エス.トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ティエン ワイ.エイチ.ホワイティング
(72)【発明者】
【氏名】ロバート エフ.ワトキンス
【審査官】森内 正明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/115883(WO,A1)
【文献】特表2009-534709(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 27/30
C08L 33/04 - 33/16
C08L 29/14
G02B 1/04
G02B 5/12 - 5/136
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
0℃~60℃の範囲の単一のTgを有し、(メタ)アクリルポリマー及び以下の式を有する重合単位を含むポリビニルアセタールポリマーを含む本体層と、
【化1】
[式中、Rは水素又はC1~C7のアルキル基である]
前記本体層に近接し、かつコーナーキューブ要素を含む、第2の層と
を含む、再帰反射物品。
【請求項2】
前記本体層が、25℃及び1ヘルツで少なくとも1MPaの引張弾性率を有する、請求項1記載の再帰反射物品。
【請求項3】
前記本体層が、0℃未満のTgを有する単官能性アルキル(メタ)アクリレートモノマーの重合単位を、85重量%以下含む、請求項1又は2に記載の再帰反射物品。
【請求項4】
前記単官能性アルキル(メタ)アクリレートモノマーの重合単位が、-10℃、-20℃、-30℃、-40℃、又は-50℃未満のTgを有する、請求項に記載の再帰反射物品。
【請求項5】
前記本体層が、前記第2の層と一体に連結されている、請求項1~のいずれか一項に記載の再帰反射物品。
【請求項6】
前記コーナーキューブ要素に隣接する又はその上の鏡面反射性コーティングを更に含む、請求項1~のいずれか一項に記載の再帰反射物品。
【請求項7】
前記コーナーキューブ要素の一部に結合されたシールフィルムを更に含む、請求項1~のいずれか一項に記載の再帰反射物品。
【請求項8】
再帰反射性シート材である、請求項1~のいずれか一項に記載の再帰反射物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、導光物品用のアクリルポリビニルアセタールフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
導光物品は、入射光を操作する能力を有する。導光性フィルム及びシート材は、典型的には、微細構造化プリズム又はビーズであり得る光学活性部を含む。
【0003】
導光窓用フィルムなどの導光物品は、光の一部が制御された方法で基材を透過するのを可能にし得る。これらのタイプの導光物品では、光学活性部は、典型的には、微細構造化プリズムである。
【0004】
導光物品は、入射光をその光源に向け直すことができ、再帰反射物品と呼ばれる。光を再帰反射する機能は、再帰反射性シート材が様々な物品に幅広く使用されることに繋がった。再帰反射物品では、光学活性部は、典型的には、ビーズ又はコーナーキューブである微細構造化プリズムのいずれかである。ビーズ型シート材は、多数のガラス又はセラミック製マイクロスフェアを使用して入射光を再帰反射するものである。一方、コーナーキューブシート材は、典型的には、多数の剛性コーナーキューブ要素を用い、入射光を再帰反射する。米国特許第2,407,680号では、ビーズ型再帰反射性シート材の例が示され、米国特許第5,450,235号では、コーナーキューブ型再帰反射性シート材の例が示されている。
【0005】
金属コーティングなどの鏡面反射性コーティングをコーナーキューブ要素の裏面に配することで、再帰反射を促すことができる。金属コーティングに加えて又はその代わりに、コーナーキューブ要素の裏面にシールフィルムを適用することができる。シールフィルムは、キューブの裏面に空気界面を維持し、再帰反射性を高める。可撓性再帰反射性シート材での使用に適した様々なシールフィルムが記載されている。例えば、米国特許第5,784,197号、同第5,691,846号、及び同第6,318,867号を参照されたい。
【0006】
導光物品は、標識、ナンバープレート、及び安全服に使用される。再帰反射性シート材などの可撓性導光物品は、不規則面への使用又は可撓性の若しくは不規則形状の基材への接着によく適している。例としては、バレル及びコーンのような一時交通規制材料、エンボス加工のナンバープレート、及び個人の衣服(安全ベスト)がある。そのような用途では、導光性物品は、機械的変形に対して耐久性とするべきである。光学活性領域の下層の損傷は、光学機能を低減又は消滅することがあるため、導光物品の外側の露出面を保護することが重要である。
【0007】
従来、導光性フィルムの光学活性部分を保護するために使用するフィルムは、ごくわずかの選択肢、典型的には、ポリ塩化ビニル(PVC、又はビニル)又はポリ(エチレンアクリル酸)コポリマー、又はEAAに限定されてきた。通常界面活性があり、したがって材料を介して拡散する傾向がある可塑剤を広範囲に使用することによって、PVCはその可撓特性に達する。結果的に、その特性は、環境曝露に対して不安定となる場合がある。
【0008】
EAAは印刷が困難な場合があり、その結晶融点によって高温安定性が低い。これらの特性は、プリズム形再帰反射物品の製造及び使用条件における課題であり得る。
【発明の概要】
【0009】
開示されるアクリルポリビニルアセタールフィルムは、共重合することができる広範囲の(メタ)アクリルモノマー、並びにこれらと反応するために利用可能な範囲のポリビニルアセタールモノマーをベースとすることができる。このような可撓性は、導光物品に適用するためのアクリルポリビニルアセタールフィルムにおける特性を変化させるために与えられる。導光物品は、光学活性部分を含む。光学活性部分を保護するために、開示されるアクリルポリビニルアセタールフィルムが導光物品に含まれ、この導光物品は可撓性であり、かつ機械的変形に対して耐久性がある。
【0010】
1つの実施形態において、30℃~60℃の範囲のTgを有する本体層を含む導光性フィルムを記載する。本体層は、(メタ)アクリルポリマー及び以下の式を有する重合単位を含むポリビニルアセタールポリマーを含む
【化1】
[式中、Rは水素又はC1~C7のアルキル基である]。導光物品は、本体層に近接し、かつ光学要素を含む、第2の層を更に含む。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】コーナーキューブ型シート材の一実施形態の側断面図である。
図2】コーナーキューブ型シート材の別の実施形態の側断面図である。
図3】コーナーキューブ型シート材の別の実施形態の側断面図である。
図4】ビーズ型シート材の一実施形態の側断面図である。
図5】コーナーキューブ型シート材の別の実施形態の側断面図である。
図6】コーナーキューブ型シート材の別の実施形態の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
開示される導光物品10は、本体層18、及び光学要素12を有する第2の層を含み、本体層18は光学要素12に近接している。いくつかの実施形態において、光学要素12は、複数のビーズである。いくつかの実施形態において、光学要素12は、複数の微細構造体である。微細構造体は、プリズムを含むことができる。1つの実施形態において、微細構造体は、コーナーキューブを含むことができる。いくつかの実施形態において、導光物品は、光学要素12若しくは本体層18に隣接した又は光学要素12と本体層18との間に、印刷、保護、プライマー又は接着層などの追加の層を含む。
【0013】
本明細書で使用される「微細構造体」は、その開示内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,576,850号に定義され説明されている。微細構造体は、例えば中心線の上の表面輪郭により包囲された面積の合計が線の下の面積の合計と等しくなるように、微細構造を通って引かれた平均中心線から輪郭がずれている物品表面内の突起及びくぼみのように、一般に不連続であり、線は物品の名目表面(微細構造を有する)に本質的に平行である。例えば、1~30cmの表面の代表的な特性長を通って、光学又は電子顕微鏡により測定したとき、そのずれの高さは典型的には、約±0.005~±750ミクロンである。その平均中心線は、平面、凹面、凸面、非球面又はこれらの組み合わせであってもよい。ずれが低位、例えば、±0.005~±0.1又は好ましくは±0.05ミクロンであり、かつ、ずれがめったに起こらないか又は最小限に抑えられている、即ち、表面が任意の著しい不連続を含まない物品は、本質的に「平坦な」又は「滑らかな」表面を有すると見なすことができる。他の物品は、例えば、±0.1~±750ミクロンの高位であり、及び同じ又は異なり、かつランダム若しくは規則正しい方式により相隔たる又は連続する複数個の実利的不連続を含む微細構造に起因するずれを有する。
【0014】
本体層18は、以下に詳述するアクリルポリビニルアセタール層を含む。いくつかの実施形態において、導光物品10に含まれる1つ以上の追加の層は、開示されるアクリルポリビニルアセタール層を含む。
【0015】
開示されるアクリルポリビニルアセタール層を含む導光物品の構造体の例を、以下に記載する。記述は、再帰反射性シート材と関連し得るが、概ねの記述は他の導光物品に適用されることを理解されたい。
【0016】
図1は、多数のプリズム要素12及び本体層18を含む微細構造化導光シート材10の1つの実施形態を示す。本体層18は、重層フィルム、保護層とも呼ばれる場合がある。本体層18は、典型的には、少なくとも20マイクロメートル、より典型的には少なくとも50マイクロメートルの厚さを有する。本体層18は、通常、1000マイクロメートル未満、典型的には250マイクロメートル以下の厚さを有する。プリズム要素12は、本体層18の第1の面、典型的には裏面から突出する。
【0017】
プリズム要素12及び本体層18は、典型的には、そこに入射する光の強度の少なくとも70パーセントを所与の波長で透過させることができる光透過性ポリマー材料から形成される。いくつかの実施形態において、光透過率は、80パーセント超、より好ましくは90パーセント超である。1つの実施形態において、本体層18は透明である。導光シート材10が、看板などの交通安全以外の用途に用いられるとき、光透過率は、5~10パーセントと同等に低い場合がある。
【0018】
1つの実施形態において、本体層18は、シート材10の前面の最外層である。図1に示すように、再帰反射性シート材では、プリズム要素12はコーナーキューブであり、光が前面21を通って導光シート材10に入る。次いで、光は、本体部分18を通り抜け、コーナーキューブ要素12の平面にぶつかり、矢印23で示すように、来た方向に戻る。本体層18は、屋外の環境要素からシート材を保護する機能を有し、かつ/又はシート材に機械的な一体性を与える。
【0019】
微細構造化導光シート材は、米国特許第5,450,235号及び図5に示すようなランド層16を任意に含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、ランド層は、微細構造化要素と一体であり、ランド部及びキューブが、後に一体になる2つの異なるポリマー層ではなく、単一のポリマー材料から形成されていることを意味する。特に、シート材が可撓性である実施形態では、ランド層16は、典型的には、約0~150マイクロメートルの範囲、好ましくはおおよそ約1~100マイクロメートルの範囲の厚さを有する。ランド部の厚さは、好ましくはプリズム要素の高さの10パーセント以下であり、より好ましくはその約1~5パーセントである。より厚いランド部を有するシート材では、個々のプリズム要素の分離を実現することは、典型的には、より困難である。
【0020】
プリズム要素12は、典型的には、約20~500マイクロメートルの範囲、より典型的には約35~100マイクロメートルの範囲の高さを有する。図1に示す本発明の実施形態は、単一の本体層18を有するが、2つ以上の本体層18があってもよい。
【0021】
図2は、典型的には、再帰反射物品の裏面であるコーナーキューブ要素面の1つの実施形態の斜視図を例示する。図示されるように、コーナーキューブ要素12は、シート材の片面上の配列中に、対応した対として配置されている。それぞれのコーナーキューブ要素12は、3つの露出した平坦面22を有する3面体プリズムの形状を有している。平坦面22は、互いに実質的に垂直であってよく(部屋のコーナーのように)、プリズムの頂点24が底面の中心と垂直方向に整列されている。面22同士の間の角度は、通常、その配列内の各コーナーキューブ要素について同じであり、約90度となる。しかし、角度は、既知の通り、90度から外れる場合もある。例えば、その開示内容が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,775,219号Appledornらを参照されたい。各コーナーキューブ要素12の頂点24は、コーナーキューブ要素の底面の中心と垂直方向に整列されていてもよく、例えば、米国特許第3,684,348号を参照されたい。頂点はまた、米国特許第4,588,258号に開示されるように底面の中心に対して斜めに位置していてもよい。本発明の導光物品は、任意の特定のコーナーキューブの形状に限定されるものではない。様々なコーナーキューブ配置が、その開示内容が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第7,188,960号、同第4,938,563号、同第4,775,219号、同第4,588,258号、同第4,243,618号、同第4,202,600号、及び同第3,712,706号に記載のように既知である。
【0022】
図3及び4は、光学要素12及び鏡面反射層14を有する微細構造化物品10の実施形態を示す。図3において、光学要素12は、微細構造化コーナーキューブ要素である。図4において、光学要素12はビーズである。金属コーティングなどの鏡面反射性コーティング14を光学要素12の裏面に配することで、再帰反射を促すことができる。金属コーティングは、アルミニウム、銀、又はニッケルなどの金属を蒸着する又は化学的に堆積するなどの既知の技術によって適用することができる。プライマー層を、コーナーキューブ要素の裏面に適用し、金属コーティングの接着性を促進してもよい。本体層18は、最外面にあり、光学要素12を保護する。
【0023】
図5は、シールフィルム19を有する微細構造化物品10の実施形態を示す。鏡面反射層に加えて又はその代わりに、シールフィルム19を、コーナーキューブ要素12の裏面に適用してもよく、例えば、その開示内容が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,691,846号、同第5,784,197号、及び同第6,318,867号を参照されたい。特定の適用では、この任意のシール層19は、微細構造化要素を環境効果から顕著に保護することができ、並びに全ての内部反射に必要な屈折率差をもたらすために必須である、微細構造化要素周囲の空気層の密閉を維持する。図5に示すようなシールフィルムを有する実施形態では、シールフィルムは、熱可塑性材料を含んでいてもよい。このような材料は、比較的容易なかつ一般的に利用可能な熱的手法による溶融によく適する。
【0024】
図1~5に示す実施形態では、場合により取り外し可能な剥離ライナーで覆われた接着層20(図6参照)を含むことで、微細構造化物品10を標識、ナンバープレート、窓、又はその他のディスプレイなどの基材に固定することができる。
【0025】
図6は、感圧性接着剤20上にバリア層17を有する微細構造化物品10の実施形態を示す。感圧性接着剤20は、バリア層17を囲む領域内のプリズム要素12に組み込み、同時に障壁層17は下層の接着剤がプリズム要素12と接触することを防止し、隣接するプリズム要素12の裏面の空気界面を維持して屈折率差をもたらす。感圧性接着剤20は、物品10を標識、ナンバープレート、窓、又はその他のディスプレイなどの基材に固定することができる。バリア層構造体の更なる開示が、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2013/0034682号及び同第2013/0135731号で見出すことができる。
【0026】
微細構造化要素は、硬質かつ剛性な傾向がある。微細構造化要素を作製するために使用されるポリマー組成物は、熱可塑性であってよいが、好ましくは、架橋をもたらす多官能性を有する重合性樹脂の反応生成物である。1つの実施形態における微細構造化要素の組成物の弾性率は、16×10パスカル超であり、1つの実施形態において、18×10パスカル超であり、1つの実施形態において、25×10パスカル超である。
【0027】
微細構造化要素の樹脂組成物(及び処理条件)は、好ましくは、樹脂を本体層又は重層フィルムに貫入させ、次いでin situで硬化できるように、そうでなければ固化できるように選択されるため、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,691,856号に記載されるように、硬化後、微細構造化要素の材料と本体層との間に相互貫入ネットワークが形成される。
【0028】
微細構造化要素組成物が硬化又は固化する間、コーナーキューブ材料の組成に応じて、個々の微細構造化要素は一定の大きさの収縮を起こし得る。本体層の弾性率が高すぎる場合、硬化中に微細構造化要素が収縮すると、ねじり応力が微細構造化要素に作用することがある。この応力が充分に高い場合、微細構造化要素が歪み、光学性能の低下につながり得る。本体層の弾性率が微細構造化要素材料の弾性率よりも十分に低い場合には、本体層は、微細構造化要素の収縮に伴って変形することができ、光学特性の望ましくない低下につながるこのような変形応力がコーナーキューブ要素に与えられることはない。
【0029】
微細構造化要素を形成するために使用される熱可塑性組成物は、典型的には、低い、すなわち1パーセント未満の線形成形収縮率を有する。米国特許第5,691,845号に記載の通り、コーナーキューブ重合性樹脂組成物は、典型的には、硬化すると収縮する。典型的には、樹脂は、硬化時に少なくとも5体積パーセント、より好ましくは硬化時に5~20体積パーセント収縮する。収縮する樹脂組成物の使用は、最小厚さのランド部16を得るのに適している。
【0030】
いくつかの実施形態において、微細構造化要素(例えば、コーナーキューブ)は、好ましくは、化学線、例えば電子ビーム、紫外線、又は可視光に曝露することによるフリーラジカル重合機構によって架橋することができる重合性樹脂から形成される。あるいは又はフリーラジカル重合に加えて、重合性樹脂は、過酸化ベンゾイルなどの熱反応開始剤の追加を伴う熱的手段によって重合してもよい。放射線開始カチオン重合性樹脂もまた、使用することができる。
【0031】
重合性樹脂組成物は、重合性エチレン性不飽和モノマー、オリゴマー、プレポリマー、又はこれらの組み合わせのうちの1つ以上を含む。硬化後、エチレン性不飽和構成成分は反応してポリマーになる。好ましい重合性組成物は、100%固体であり、実質的に溶媒を含まない。
【0032】
微細構造化要素組成物は、1種以上の反応性(例えば、エチレン性不飽和)成分及び/又は1種以上の非反応性成分を任意に含んでいてもよい。参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,450,235号に記載されるような、溶媒、連鎖移動剤、着色剤(例えば、染料)、酸化防止剤、光安定剤、UV吸収剤、ブロッキング防止剤などの加工助剤、離型剤、潤滑剤、及び他の添加剤などの様々な添加剤を、本体部分又は微細構造化要素に添加することができる。
【0033】
熱可塑性ポリマーを微細構造体(例えば、キューブ)中で使用するとき、ガラス転移温度は概ね80℃超であり、軟化温度は典型的には150℃超である。概ね、微細構造化層中で使用される熱可塑性ポリマーは、非晶質又は半晶質である。
【0034】
微細構造化要素中で使用され得る熱可塑性ポリマーの例としては、ポリ(メタクリル酸メチル)などのアクリルポリマー;ポリカーボネート;酢酸セルロース、セルロース(アセテート-co-ブチレート)、硝酸セルロースなどのセルロース系;エポキシ;ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリ(エチレンテレフタレート)などのポリエステル;ポリ(クロロフルオロエチレン)、ポリ(フッ化ビニリデン)などのフルオロポリマー;ポリ(カプロラクタム)、ポリ(アミノカプロン酸)、ポリ(ヘキサメチレンジアミン-co-アジピン酸)、ポリ(アミド-co-イミド)及びポリ(エステル-co-イミド)などのポリアミド;ポリエーテルケトン;ポリ(エーテルイミド);ポリ(メチルペンテン)などのポリオレフィン;ポリ(フェニレンエーテル);ポリ(フェニレンスルフィド);ポリ(スチレン-co-アクリロニトリル)、ポリ(スチレン-co-アクリロニトリル-co-ブタジエン)などのポリ(スチレン)及びポリ(スチレン)コポリマー;ポリスルホン;例えば、シリコーンポリアミド及びシリコーンポリカーボネートなどの、シリコーン変性ポリマー(すなわち、僅かな重量パーセント(10重量パーセント未満)のシリコーンを含むポリマー);ペルフルオロポリ(エチレンテレフタレート)などのフッ素変性ポリマー;並びに上記ポリマーの混合物、例えば、ポリ(エステル)及びポリ(カーボネート)ブレンド、並びにフルオロポリマー及びアクリル系ポリマーブレンドが挙げられる。
【0035】
微細構造化シート材は、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第3,689,346号、同第3,811,983号、同第4,332,847号、同第4,601,861号、同第5,491,586号、同第5,642,222号、及び同第5,691,846号に記載されるような、コーナーキューブ型シート材を作製するための様々な既知の方法にしたがって作製することができる。
【0036】
微細構造化物品、特にコーナーキューブ型再帰反射性シート材は、一般的に、先ず、構造化表面を有するマスター金型を製造することによって生成されるが、この構造化された表面は、完成したシート材がコーナーキューブ型角錐形を有するかコーナーキューブ型キャビティを有するか(又は両方)に応じて、完成したシート材中の所望のコーナーキューブ要素の形状、又はそのマイナス(逆)コピーのいずれかに対応する。次いで、従来のニッケル電鋳法などの任意の好適な技法を用いて金型を複製し、エンボス加工、押出加工、又はキャスト及び硬化などの方法によってコーナーキューブ型再帰反射性シート材を形成するためのツーリングを作製する。米国特許第5,156,863号(Priconeら)では、コーナーキューブ形再帰反射性シート材の製造において使用されるツーリングの形成方法の例示的な概説が提供される。マスター金型を製造するための既知の方法としては、ピンバンドリング(pin-bundling)技術、直接機械加工技術、及び米国特許第7,188,960号に記載されるような積層を用いた技術が挙げられる。いくつかの実施形態において、要素は、台形、矩形、平行四辺形、五角形、及び六角形から選択される平面図中の形状を有する。
【0037】
米国特許第3,684,348号及び同第3,811,983号では、再帰反射性材料と、コーナーキューブ型くぼみを有する成形面上に流体成形材料を堆積し、予め形成しておいた本体部材をそこに適用する、複合材料の製造方法とが記載されている。次いで、成形材料を硬化し、本体部材に結合させる。成形材料は、溶融樹脂であってよく、その固化は冷却によって少なくとも部分的に達成され、溶融樹脂の固有の性質が、その本体部材への結合をもたらす。あるいは、成形材料は、架橋基を有する液体樹脂であってもよく、その固化は、樹脂の架橋によって少なくとも部分的に達成してもよい。成形材料はまた、部分的に重合した樹脂配合物であってもよく、その固化は、樹脂配合物の重合によって少なくとも部分的に達成される。
【0038】
重合性樹脂は、スロットダイ装置に供給するディスペンサーに直接注入してもよく、又はポンプで入れてもよい。ポリマー樹脂が反応性樹脂である実施形態では、シート材の製造方法は、1つ以上の工程で樹脂を硬化することを更に含む。例えば、樹脂は、ツールから取り出す前に、樹脂を充分固化するように重合性樹脂の性質に応じて、化学線、紫外線、可視光などの好適な放射エネルギー源に曝露して硬化してもよい。冷却及び硬化の組み合わせを利用してもよい。
【0039】
本発明の可撓性コーナーキューブ型再帰反射性シート材は、(a)光透過性材料から複数のコーナーキューブ要素を形成することと、(b)本体層を複数のコーナーキューブ要素に固定することとによって作製することができる。1つの実施形態において、方法は、概ね、所望の微細構造要素を形成するのに適した複数のキャビティを含む成形面を有する(例えば、加熱した)電着ニッケルツール(例えば、再帰反射性物品のコーナーキューブ要素)を準備することと、少なくともキャビティへ充填するのに充分な量の流動性(例えば、硬化性)樹脂組成物を成形面に適用することとを含む。次いで、(露出した実質的に平坦な)樹脂組成物の面を本体層フィルムと接触させた後、樹脂を硬化し、本体層に結合した微細構造要素(例えば、コーナーキューブ要素)の配列を含む複合シート材を形成する。複合シート材をツールから取り外した後、それらがランド部によって連結されていた場合、シート材に機械的応力を適用して、周囲の微細構造要素から実質的に各個別の微細構造要素を引き剥がし分離させる。あるいは、複数のコーナーキューブセグメントが形成され、各セグメントが2つ以上のコーナーキューブ要素を含むように、シート材を引き剥がしてもよい。(例えば、米国特許第6,318,867号を参照のこと。)
【0040】
他の実施形態において、光学要素を含む第2の層を、最初に形成してもよく、次いで本体層を第2の層へ結合する。例えば、第2の層は、複数のビーズを含む基質であってもよく、次いで本体層を第2の層へ結合する。本体層がすでに形成された第2の層に対して個別に適用される場合には、本体層は、第2の層に対して接着結合又は熱的に結合のいずれかを行うことができる。
【0041】
本体層は、1~22個の炭素原子、一実施形態において、平均4~12個の炭素原子を含む(例えば非第三級)アルコールから誘導された、1つ以上の(メタ)アクリレートエステルモノマーの重合単位を含む。
【0042】
モノマーの例としては、アクリル酸又はメタクリル酸のいずれかと、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、2-メチル-1-ブタノール、3-メチル-1-ブタノール、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、2-メチル-1-ペンタノール、3-メチル-1-ペンタノール、2-エチル-1-ブタノール、3,5,5-トリメチル-1-ヘキサノール、3-ヘプタノール、1-オクタノール、2-オクタノール、イソオクチルアルコール、2-エチル-1-ヘキサノール、1-デカノール、2-プロピルヘプタノール、1-ドデカノール、1-トリデカノール、1-テトラデカノールなどの非第三級アルコールとのエステルが挙げられる。
【0043】
本体層は、1つ以上の低Tg(メタ)アクリレートモノマーの重合単位を含み、すなわち、反応してホモポリマーを形成したときの(メタ)アクリレートモノマーは、0℃以下のTを有する。いくつかの実施形態において、低Tgモノマーは、-5℃以下、又は-10℃以下のTを有する。これらのホモポリマーのTgは、多くの場合は、-80℃以上、-70℃以上、-60℃以上、又は-50℃以上である。フィルムは、モノリシックフィルム、又は多層フィルムの(例えば外側)層であってもよい。
【0044】
低Tgモノマーは、次の式を有していてもよい
C=CRC(O)OR
[式中、RはH又はメチルであり、Rは1~22個の炭素を有するアルキル、又は2~20個の炭素及び酸素若しくは硫黄から選択される1~6個のヘテロ原子を有するヘテロアルキルである]。アルキル基又はヘテロアルキル基は、直鎖状、分枝状、環状、又はこれらの組み合わせとすることができる。
【0045】
例示的な低Tgモノマーとしては、例えば、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、n-ペンチルアクリレート、イソアミルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、2-メチルブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、4-メチル-2-ペンチルアクリレート、n-オクチルアクリレート、2-オクチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソノニルアクリレート、デシルアクリレート、イソデシルアクリレート、ラウリルアクリレート、イソトリデシルアクリレート、オクタデシルアクリレート、及びドデシルアクリレートが挙げられる。
【0046】
低Tgヘテロアルキルアクリレートモノマーとしては、2-メトキシエチルアクリレート及び2-エトキシエチルアクリレートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
いくつかの実施形態において、本体層は、6~20個の炭素原子を含むアルキル基を有する、少なくとも1つの低Tgモノマーの重合単位を含む。いくつかの実施形態において、低Tgモノマーは、7個又は8個の炭素原子を含むアルキル基を有する。例示的なモノマーとしては、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、2-オクチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、及びラウリル(メタ)アクリレートが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、モノマーは、(メタ)アクリル酸と、再生可能資源に由来するアルコールとのエステル、例えば2-オクチル(メタ)アクリレートである。
【0048】
本体層は、典型的には、0℃未満のTgを有する単官能性アルキル(メタ)アクリレートモノマーの重合単位を、重合単位の総重量(すなわち、無機充填剤又は他の添加物を除く)に基づいて、少なくとも10、15、20、25、30、35、40、50重量%含む。本明細書で使用される、重合単位の重量%は、(メタ)アクリルポリマー、ポリビニルアセタール(例えばブチラール)ポリマー、及び存在する場合に架橋剤の総重量に基づく重量%を指す。本体層は、典型的には、0℃未満のTgを有する単官能性アルキル(メタ)アクリレートモノマーの重合単位を、重合単位の総重量に基づいて、85、60、55、50、45、又は40重量%以下含む。
【0049】
他の実施形態において、本体層は、0℃未満のTgを有する単官能性アルキル(メタ)アクリレートモノマーの重合単位を、(メタ)アクリルポリマー、ポリビニルアセタール(例えばブチラール)ポリマー、及び存在する場合に架橋剤の重合単位の総重量に基づいて、10重量%未満含む。例えば、0℃未満のTgを有する単官能性アルキル(メタ)アクリレートモノマーの重合単位の最小濃度は、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8又は9重量%であってもよい。
【0050】
ポリビニルアセタール樹脂、及びフリーラジカル重合性溶媒モノマーの種類及び量は、硬化した組成物が25℃及び1ヘルツで少なくとも1MPaの引張弾性率を有するように選択される。
【0051】
本体層が無機充填剤及び添加剤などの非重合構成成分を含まない場合、特定の重合単位の重量%は、本体層組成物全体中に存在するその重合単位の重量%とほぼ同じである。しかし、本体層組成物が無機充填剤又は他の非重合性添加剤などの非重合構成成分を含む場合、本体層組成物全体は実質的により少ない重合単位を含むことができる。概ね、非重合性添加剤の総量は最大25重量%の範囲であってもよい。したがって、そのような非重合性添加剤を含む本体層の場合、特定の重合単位の濃度は、そのような添加剤の総濃度に応じて、5、10、15、20、25、30、35重量%未満と同程度とすることができる。例えば、本体層が無機充填剤を20重量%含む場合、低Tg単官能性アルキル(メタ)アクリレートモノマーの濃度は20%少なくてもよく、すなわち、少なくとも8重量%、12重量%などであってもよい。
【0052】
本体層は概ね、少なくとも1つの(例えば非極性)高Tgモノマーを含み、すなわち、反応してホモポリマーを形成したときの(メタ)アクリレートモノマーは、0℃超のTgを有する。高Tgモノマーは、より典型的には、5℃、10℃、15℃、20℃、25℃、30℃、35℃、40℃、50℃、75℃、100℃超のTgを有する。
【0053】
典型的な実施形態において、本体層は、少なくとも1つの高Tg単官能性アルキル(メタ)アクリレートモノマーを含み、その高Tg単官能性アルキル(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、t-ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、s-ブチルメタクリレート、t-ブチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、フェニルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、ベンジルメタクリレート、3,3,5トリメチルシクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、及びプロピルメタクリレート又は組み合わせが挙げられる。
【0054】
いくつかの実施形態において、本体層は、40℃、50℃、60℃、70℃、又は80℃超のTgを有する単官能性アルキル(メタ)アクリレートモノマーの重合単位を、重合単位の総重量(すなわち無機充填剤又は他の添加剤を除く)に基づいて、少なくとも1、2、又は3重量%~35又は40重量%含む。いくつかの実施形態において、本体層は、高Tg単官能性アルキル(メタ)アクリレートモノマーの重合単位を、30、25、20、又は10重量%以下含む。更に、いくつかの実施形態において、本体層は、高Tg単官能性アルキル(メタ)アクリレートモノマーの重合単位を1.0、0.5、0.1重量%未満含むか、又はそれを含まない。
【0055】
他の実施形態において、本体層は、40℃超のTgを有する単官能性アルキル(メタ)アクリレートモノマーの重合単位を、(メタ)アクリルポリマー、ポリビニルアセタール(例えばブチラール)ポリマー、及び存在する場合に架橋剤の重合単位の総重量に基づいて、40重量%超含む。例えば、40℃超のTgを有する単官能性アルキル(メタ)アクリレートモノマーの重合単位の最大濃度は、50、60、70、80又は90重量%であってもよい。
【0056】
様々なモノマーのホモポリマーのTgは既知であり、様々なハンドブックに報告されている。いくつかの例示的なモノマーのTgは、参照により本明細書に組み込まれる、2015年12月7日に出願された国際出願PCT/US2015/64215号にも報告されている。ポリビニルアセタールポリマーは、典型的には、ランダムコポリマーである。しかし、ブロック共重合体及びテーパ状ブロック共重合体は、ランダム共重合体と同様の利点をもたらし得る。
【0057】
1つの実施形態において、本体層は、極性モノマーの重合単位を、少なくとも10、15、又は20重量%、かつ65重量%以下更に含む。熱結合性フィルムなどの他の実施形態において、フィルム及び組成物は、より低い濃度の極性モノマーを、重合単位の約1、2、3、4、又は5重量%~約15又は20重量%の範囲で含んでいてもよい。そのような極性モノマーは、概ね、ポリビニルアセタール(例えばブチラール)樹脂と高Tg及び低Tgアルキル(メタ)アクリレート溶媒モノマーとの相溶化に役立つ。極性モノマーは典型的には0℃超のTgを有するが、高Tg単官能性アルキル(メタ)アクリレートモノマーが存在する場合、Tgは高Tg単官能性アルキル(メタ)アクリレートモノマーより低くてもよい。
【0058】
代表的な極性モノマーとしては、例えば、酸官能性モノマー、ヒドロキシル官能性モノマー、窒素含有モノマー、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0059】
いくつかの実施形態において、本体層は酸官能性モノマー(高Tgモノマーの一部)の重合単位を含み、ここで酸官能基は、カルボン酸など、酸それ自体であってもよく、又は一部分が、カルボン酸アルカリ金属などのその塩であってもよい。有用な酸官能性モノマーとしては、エチレン性不飽和カルボン酸、エチレン性不飽和スルホン酸、エチレン性不飽和ホスホン酸、及びこれらの混合物から選択されるものが挙げられるが、これらに限定されない。このような化合物の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、クロトン酸、シトラコン酸、マレイン酸、オレイン酸、β-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2-スルホエチルメタクリレート、スチレンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、ビニルホスホン酸及びこれらの混合物から選択されるものが挙げられる。
【0060】
いくつかの実施形態において、本体層は、アクリル酸等の酸官能性モノマーの重合単位を、0.5~20又は25重量%含む。いくつかの実施形態において、本体層組成物は、酸官能性モノマーの重合単位を、少なくとも1、2、3、4、又は5重量%含む。他の実施形態において、本体層組成物は、酸官能性モノマーの重合単位を1.0、0.5、0.1重量%未満含むか、又はそれを含まない。
【0061】
いくつかの実施形態において、本体層は非酸官能性極性モノマーを含む。
【0062】
非酸官能性極性モノマーの1つの分類としては、窒素含有モノマーが挙げられる。代表的な例としては、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、アクリルアミド、モノ-又はジ-N-アルキル置換アクリルアミド、t-ブチルアクリルアミド、ジメチルアミノエチルアクリルアミド、及びN-オクチルアクリルアミドが挙げられる。いくつかの実施形態において、本体層は、窒素含有モノマーの重合単位を、少なくとも0.5、1、2、3、4又は5重量%、かつ典型的には25又は30重量%以下含む。他の実施形態において、本体層は、1.0、0.5、0.1重量%未満の窒素含有モノマーの重合単位を含むか、又はそれを含まない。
【0063】
非酸官能性極性モノマーの別の分類としては、アルコキシ官能性(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。代表的な例としては、2-(2-エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-(メトキシエトキシ)エチル、2-メトキシエチルメタクリレート、及びポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0064】
いくつかの実施形態において、本体層は、アルコキシ官能性(メタ)アクリレートモノマーの重合単位を、少なくとも0.5、1、2、3、4又は5重量%、かつ典型的には30又は35重量%以下含む。他の実施形態において、本体層は、アルコキシ官能性(メタ)アクリレートモノマーの重合単位を1.0、0.5、0.1重量%未満含むか、又はそれを含まない。
【0065】
好ましい極性モノマーとしては、アクリル酸、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアクリルアミド及びN-ビニルピロリジノンが挙げられる。本体層は、概ね、極性モノマーの重合単位を少なくとも10、15又は20重量%、かつ典型的には65、60、55、50又は45重量%以下の量で含む。
【0066】
本体層は、任意に、ビニルモノマーを含んでいてもよく、そのビニルモノマーとしては、ビニルエステル(例えば、ビニルアセテート及びビニルプロピオネート)、スチレン、置換スチレン(例えば、α-メチルスチレン)、ビニルハライド、及びこれらの混合物が挙げられる。本明細書で使用されるビニルモノマーに極性モノマーは含まれない。いくつかの実施形態において、本体層は、ビニルモノマーの重合単位を、少なくとも0.5、1、2、3、4又は5重量%、かつ典型的には10重量%以下含む。他の実施形態において、本体層は、ビニルモノマーの重合単位を1.0、0.5、0.1重量%未満含むか、又はそれを含まない。
【0067】
いくつかの有利な実施形態において、(メタ)アクリルポリマーの重合単位は脂肪族基を含み、かつ芳香族部分を欠いている。
【0068】
典型的な実施形態において、溶媒モノマーが重合して、ランダム(メタ)アクリルポリマーコポリマーを形成する。
【0069】
ポリビニルアセタールポリマーは、例えば、当該技術分野で知られているように、ポリビニルアルコールをアルデヒドと反応させることによって得られ、かつ先に引用した2015年12月7日出願の国際出願PCT/US2015/64215号でより詳細に記載されている。
【0070】
ポリビニルアセタール(例えばブチラール)の含有量は、典型的には、ポリビニルアセタール(例えばブチラール)ポリマーの65重量%~90重量%の範囲である。いくつかの実施形態において、ポリビニルアセタール(例えばブチラール)の含有量は、約70又は75~80又は85重量%の範囲である。ポリビニルアルコールの含有量は、典型的には、ポリビニルアセタール(例えばブチラール)ポリマーの約10~30重量%の範囲である。いくつかの実施形態において、ポリビニルアセタール(例えばブチラール)ポリマーのポリビニルアルコールの含有量は、約15~25重量%の範囲である。ポリビニルアセタール(例えばブチラール)ポリマーのポリビニルアセテートの含有量は、0であるか、ポリビニルアセタール(例えばブチラール)ポリマーの1~8重量%の範囲とすることができる。いくつかの実施形態において、ポリビニルアセテートの含有量は、約1~5重量%の範囲である。
【0071】
いくつかの実施形態において、アルデヒドのアルキル残基は1~7個の炭素原子を含む。他の実施形態において、アルデヒドのアルキル残基は、ブチルアルデヒド(R=3)、ヘキシルアルデヒド(R=5)、n-オクチルアルデヒド(R=7)の場合のように、に3~7個の炭素原子を含む。これらのうち、ブタナールとしても知られるブチルアルデヒドが、最も一般的に利用される。ポリビニルブチラール(「PVB」)ポリマーは、Kurarayから商品名「Mowital(商標)」及びSolutiaから商品名「Butvar(商標)」で市販されている。
【0072】
いくつかの実施形態において、ポリビニルアセタール(例えばブチラール)ポリマーのTgは、約60℃~約75℃又は80℃の範囲である。いくつかの実施形態において、ポリビニルアセタール(例えばブチラール)ポリマーのTgは、少なくとも65又は70℃である。n-オクチルアルデヒドなどの他のアルデヒドをポリビニルアセタールポリマーの調製に使用する場合、Tgは、65℃又は60℃未満であってもよい。ポリビニルアセタールポリマーのTgは、典型的には少なくとも35、40、又は45℃である。ポリビニルアセタールポリマーのTgが60℃未満の場合、ポリビニルブチラールポリマーを用いたものと比較して、より高濃度の高Tgモノマーを本体層組成物に用いてもよい。アセトアルデヒドなどの他のアルデヒドをポリビニルアセタールポリマーの調製に使用する場合、Tgは75℃又は80℃より高くてもよい。ポリビニルアセタールポリマーのTgが70℃より高い場合、ポリビニルブチラールポリマーを用いたものと比較して、より高濃度の低Tgモノマーを本体層組成物に用いてもよい。
【0073】
いくつかの実施形態において、ポリビニルアセタール(例えば、PVB)ポリマーは、典型的には、少なくとも10,000g/モル又は15,000g/モル、かつ150,000g/モル又は100,000g/モル以下の平均分子量(Mw)を有する。いくつかの有利な実施形態において、ポリアセタール(例えばPVB)ポリマーは、少なくとも20,000g/モル、25,000、30,000、35,000g/モル、かつ典型的には75,000g/モル以下の平均分子量(Mw)を有する。
【0074】
いくつかの実施形態において、本体層は、(メタ)アクリレートポリマー、ポリビニルアセタール(例えばブチラール)ポリマー、及び存在する場合に架橋剤の重合単位の総重量に基づいて、ポリビニルブチラールなどのポリビニルアセタールポリマーを5~30重量%含む。いくつかの実施形態において、本体層は、ポリビニルアセタール(例えばPVB)ポリマーを、少なくとも10、11、12、13、14、又は15重量%含む。いくつかの実施形態において、本体層は、ポリビニルアセタール(例えばPVB)ポリマーを25又は20重量%以下含む。本体層が、平均分子量(Mw)が50,000g/モル未満のポリビニルアセタール(例えばPVB)ポリマーを含む場合、本体層は、ポリビニルアセタール(例えばPVB)ポリマーを35又は40重量%などのより高濃度で含んでもよい。したがって、フィルム及び組成物は、微量のポリビニルアセタール(例えばPVB)樹脂を、主要量の(メタ)アクリルポリマーとの組み合わせで含む。(メタ)アクリルポリマーの量は、典型的には、フィルムの少なくとも50、55、60、65、70、75、80、85、90、又は95重量%である。
【0075】
本熱結合性フィルム及び組成物は、低量の、ポリビニルブチラールなどのポリビニルアセタール樹脂を含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、熱結合性フィルム及び組成物は、ポリビニルアセタール樹脂を、少なくとも5、6、7、8、9、又は10重量%含む。いくつかの実施形態において、熱結合性フィルム及び組成物は、ポリビニルアセタール樹脂を、20、19、18、17、16、又は15重量%以下含む。フィルム及び組成物が、50,000g/モル未満の平均分子量(Mw)を有するポリアセタール(例えばPVB)樹脂を含む場合、フィルム及び組成物は、ポリビニル(例えばPVB)アセタール樹脂を25又は30重量%などのより高濃度で含んでいてもよい。
【0076】
他の実施形態において、本体層は、(メタ)アクリルポリマー、ポリビニルアセタール(例えばブチラール)ポリマー、及び存在する場合に架橋剤の重合単位の総重量に基づいて、5重量%未満のポリビニルアセタール(例えばブチラール)ポリマーを含む。例えば、ポリビニルアセタール(例えば、ブチラール)ポリマーの最小濃度は、0.5、1、1.5、2、1.5、3、3.5、4又は4.5重量%であってもよい。
【0077】
いくつかの実施形態において、本体層は重合架橋剤単位を含む。いくつかの実施形態において、架橋剤は、(メタ)アクリレート、ビニル、及びアルケニル(例えばC~C20のオレフィン基)から選択される官能基を含む架橋剤、並びに塩素化トリアジン系架橋化化合物の場合のように、(メタ)アクリルポリマーの重合単位を架橋することが可能な多官能性架橋剤である。
【0078】
有用な(例えば脂肪族)多官能性(メタ)アクリレートの例としては、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリブタジエンジ(メタ)アクリレート、ポリウレタンジ(メタ)アクリレート、及びプロポキシル化グリセリントリ(メタ)アクリレート、及びこれらの混合物など、ジ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリレート、及びテトラ(メタ)アクリレートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0079】
1つの実施形態において、架橋性モノマーは(メタ)アクリレート基及びオレフィン基を含む。オレフィン基は少なくとも1個の炭化水素不飽和を含む。架橋性モノマーは、以下の式を有していてもよい
【化2】
[式中、R1はH又はCHであり、
Lは任意の結合基であり、
R2はオレフィン基であり、これは任意に置換されている]。
【0080】
ジヒドロシクロペンタジエニルアクリレートは、この分類の架橋性モノマーの一例である。C~C20のオレフィンを含むこのタイプの他の架橋性モノマーが、国際公開第2014/172185号に記載されている。
【0081】
他の実施形態において、架橋性モノマーは、アリル、メタリル、又はこれらの組み合わせから選択される少なくとも2つの末端基を含む。アリル基は構造式HC=CH-CH-を有する。これは、ビニル基(-CH=CH)に結合したメチレン架橋(-CH-)からなる。同様に、メタリル基は、構造式HC=C(CH)-CH-を有する置換基である。(メタ)アリルという用語には、アリル基とメタリル基の両方が含まれる。このタイプの架橋性モノマーは、国際公開第2015/157350号に記載されている。
【0082】
いくつかの実施形態において、本体層は、1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサンの場合のように、ビニル基を含む多官能性架橋剤を更に含んでいてもよい。
【0083】
トリアジン架橋化化合物は、以下の式を有していてもよい
【化3】
[式中、このトリアジン架橋剤のR、R、R及びRは独立して、水素又はアルコキシ基であり、かつR、R、R及びRのうちの1~3個は水素である]。アルコキシ基は、典型的には、12個以下の炭素原子を有する。有利な実施形態において、アルコキシ基は独立してメトキシ又はエトキシである。1つの代表的な種は、2,4,-ビス(トリクロロメチル)-6-(3,4-ビス(メトキシ)フェニル)-トリアジンである。このようなトリアジン架橋化化合物は、米国特許第4,330,590号に更に記載されている。
【0084】
他の実施形態において、架橋剤は、(メタ)アクリルポリマー(例えばHEA)のアルコキシ基又はポリビニルアセタール(PVB)のポリビニルアルコール基を架橋することが可能な、イソシアネート基などのヒドロキシル反応性基を含む。有用な(例えば脂肪族)多官能性イソシアネート架橋剤の例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、並びにこれらの誘導体及びプレポリマーが挙げられる。
【0085】
架橋剤の2つ以上の様々な組み合わせが用いられてもよい。
【0086】
存在する場合、架橋剤は、典型的には、(メタ)アクリレートポリマー、ポリビニルアセタール(例えばブチラール)ポリマー、架橋剤の重合単位の総重量に基づいて、少なくとも0.5、1.0、1.5、又は2重量%~5又は10重量%の範囲の量で存在する。したがって、本体層は、そのような量の重合架橋剤単位を含む。
【0087】
他の実施形態において、本体層は、重合架橋剤単位を、(メタ)アクリルポリマー、ポリビニルアセタール(例えばブチラール)ポリマー、及び存在する場合に架橋剤の重合単位の総重量に基づいて、10重量%超含む。例えば、重合架橋剤単位の最大濃度は、最大50、55、60、65、70、75、又は80重量%の範囲であってもよい。
【0088】
本体層は、様々な技法によって重合させることができるが、好ましくは、電子ビーム、ガンマ線、特に紫外線を使用したプロセスを含む、無溶媒放射線重合によって重合させる。この(例えば紫外線照射による)実施形態において、概ね、メタクリレートモノマーはほとんど又は全く用いられない。したがって、本体層は、メタクリレート基を有するモノマーの重合単位を、0か、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1重量%以下含む。本明細書に記載される本体層の1つの調製方法は、ポリビニルアセタール(例えばPVB)ポリマーのポリマーを(メタ)アクリルポリマーの未重合溶媒モノマーに溶解し、十分な粘度のコーティング可能組成物を形成することを含む。
【0089】
別の方法には、溶媒モノマーを部分的に重合し、未重合の溶媒モノマーに溶解した溶質(メタ)アクリルポリマーを含むシロップ組成物を作製することが含まれる。
【0090】
ポリビニルアセタール(例えばPVB)ポリマーは、(メタ)アクリルポリマーのモノマーの部分重合の前及び/又はその後に添加することができる。この実施形態において、コーティング可能組成物は、部分的に重合した(例えばアルキル(メタ)アクリレート)溶媒モノマー及びポリビニルアセタール(例えばPVB)ポリマーのポリマーを含む。次いで、このコーティング可能組成物を好適な基材上にコーティングし、更に重合させる。
【0091】
コーティング可能組成物の粘度は、典型的には、25℃で少なくとも1,000又は2,000cpsであり、最大500,000cpsの範囲である。いくつかの実施形態において、粘度は、200,000、100,000、75,000、50,000又は25,000cps以下である。コーティング可能組成物は、剥離ライナーなどの好適な基材にコーティングし、放射線に曝露することによって重合させる。
【0092】
本方法は、予重合した(メタ)アクリルポリマーとポリビニルアセタール(例えばPVB)ポリマーとの溶媒ブレンドによって用いられ得るものと比べて、より高い分子量の(メタ)アクリルポリマーを形成することができる。より高い分子量の(メタ)アクリルポリマーによって鎖の絡み合い量が増加し、ひいては凝集力が増加し得る。また、架橋間の距離も高分子(メタ)アクリルポリマーでは大きくなり得るため、そのことが隣接する(例えばフィルム)層の表面上のウェットアウトを増加させる。
【0093】
本体層組成物の分子量は、架橋剤を含むことによって、更になお高めることができる。
【0094】
高分子量(メタ)アクリルポリマー並びに本体層は、典型的には、少なくとも20、25、30、35、又は40%のゲル含有量(テトラヒドロフラン(THF)を利用する実施例に記載されるゲル含有量試験方法に従い測定したときに)を有する。いくつかの実施形態において、ゲル含有量は、少なくとも45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、又は95%である。ゲル含有量は、典型的には、100%、99%、又は98%未満である。(メタ)アクリルポリマーは、ゲル含有量が高い場合、典型的には熱可塑性ではない。
【0095】
重合は、好ましくは、溶媒モノマー及びポリビニル(例えばPVB)アセタールの官能基と非反応性である、酢酸エチル、トルエン及びテトラヒドロフランなどの非重合性有機溶媒の非存在下で実施される。溶媒は、ポリマー鎖への様々なモノマーの組み込み速度に影響を及ぼし、ポリマーが溶液からゲル化又は沈殿するため、概ね低分子量をもたらす。したがって、本体層組成物は、非重合性有機溶媒を含まないとすることができる。
【0096】
有用な光開始剤としては、ベンゾインメチルエーテル及びベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインエーテル;商品名IRGACURE 651又はESACURE KB-1光開始剤(Sartomer Co.,West Chester,PA)で入手可能な2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン光開始剤及びジメチルヒドロキシアセトフェノンなどの置換アセトフェノン;2-メチル-2-ヒドロキシプロピオフェノンなどの置換α-ケトール;2-ナフタレン-スルホニルクロライドなどの芳香族スルホニルクロライド;1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(O-エトキシ-カルボニル)オキシムなどの光活性オキシム;IRGANOX 819又はLUCIRIN TPOなどのモノ-又はビス-アクリルホスフィンオキサイドが挙げられる。
【0097】
好ましい光開始剤は、ノリッシュI開裂を起こしてアクリル二重結合への付加により開始可能なフリーラジカルを生成する、光活性化合物である。ポリマー(例えばシロップ)を形成した後に、光開始剤をコーティング用の混合物に添加することができ、すなわち、光開始剤を添加することができる。そのような重合性光開始剤は、例えば米国特許第5,902,836号及び同第5,506,279号(Gaddamら)に記載されている。
【0098】
そのような光開始剤は、典型的には0.1~1.0重量%の量で存在する。光開始剤の吸光係数が低いときに、比較的厚いコーティングを達成することができる。
【0099】
本体層組成物を、従来のコーティング技法を用いて(例えば構造化されていない)剥離ライナー上に被覆することができる。例えば、これらのフィルム組成物は、ローラーコーティング、フローコーティング、ディップコーティング、スピンコーティング、スプレーコーティング、ナイフコーティング、及びダイコーティングなどの方法により適用することができる。コーティングの厚さは、変更してもよい。フィルム組成物は、続く被覆に望ましい任意の濃度であってよいが、典型的には、(メタ)アクリル溶媒モノマー中、ポリビニルアセタールポリマー固形分5~30、35、又は40重量%である。所望の濃度を、コーティング可能組成物を更に希釈することによって達成してもよい。コーティングの厚さは、(例えば放射線)硬化した本体層の所望の厚さに応じて変更してもよい。
【0100】
コーティングされた剥離ライナーを光学要素層と接触させた後、硬化させてもよい。あるいは、本体層を硬化させた後、光学要素層が本体層に近接して配置されていてもよい。
【0101】
本体層組成物及び光開始剤に、280~425ナノメートルの範囲にUVA最大値を有する活性化UV放射線で照射し、モノマー構成成分を重合させてもよい。UV光源は、様々な種類とすることができる。ブラックライトなどの低強度光源により、概して、0.1又は0.5mW/cm(ミリワット/平方センチメートル)から、10mW/cmの範囲の強度が得られる(米国国立標準技術研究所(United States National Institute of Standards and Technology)により承認された、例えば、UVIMAP UM 365 L-S線量計(Electronic Instrumentation & Technology,Inc.,Sterling,VA製)により測定)。高光度光源は、概ね、10、15又は20mW/cm超の強度を、最大450mW/cm以上の範囲の強度をもたらす。いくつかの実施形態において、高強度光源は、最大500、600、700、800、900又は1000mW/cmの強度をもたらす。モノマー構成成分を重合させるUV光は、発光ダイオード(LED)、ブラックライト、中圧水銀ランプなど、又はこれらの組み合わせなどの、様々な光源によって得ることができる。モノマー構成成分はまた、Fusion UV System Inc.から入手可能なより高強度の光源を用いて重合することもできる。重合及び硬化のためのUV曝露時間は、使用される光源の強度に応じて変更することができる。例えば、低強度光源を用いた完全硬化は、約30~300秒の範囲の曝露時間で達成することができるが、高強度光源による完全硬化は、約5~20秒の範囲のより短い曝露時間で達成することができる。高強度光源による部分硬化は、典型的には、約2秒~約5又は10秒の範囲の曝露時間で達成することができる。
【0102】
いくつかの実施形態において、本体層は透明であり、少なくとも90パーセントの可視光透過率を有する。いくつかの実施形態において、本体層並びに(メタ)アクリルポリマー、ポリビニルアセタール(例えばブチラール)、及び存在する場合に架橋剤の組成物は透明であり、実施例にて記載した試験方法にしたがって測定したときに、少なくとも90、91、92、93、94又は95%の可視光透過率を有する。いくつかの実施形態において、透明度は、少なくとも90、91、92、93、94又は95%である。透過率及び透明度は、典型的には100%未満である。いくつかの実施形態において、ヘイズは15%又は10%未満である。いくつかの実施形態において、ヘイズは9、8、7、6、5、4、3又は2%未満である。ヘイズは少なくとも0.5%であってもよい。
【0103】
本体層は、1種以上の従来の添加剤を任意に含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、安定剤、紫外線吸収剤、潤滑剤、加工助剤、静電気防止剤、着色剤、耐衝撃助剤、充填剤、艶消剤、難燃剤(例えばホウ酸亜鉛)などが挙げられる。充填剤又は顔料のいくつかの例としては、酸化亜鉛、二酸化チタン、シリカ、カーボンブラック、炭酸カルシウム、三酸化アンチモン、金属粉末、雲母、黒鉛、タルク、セラミック微小球、ガラスなどの無機酸化物、又はポリマービーズ若しくは気泡、繊維、デンプンなどが挙げられる。
【0104】
存在する場合、添加剤の量は、少なくとも0.1、0.2、0.3、0.4、又は0.5重量%とすることができる。いくつかの実施形態において、添加剤の量は、本体層組成物全体の25、20、15、10又は5重量%以下である。他の実施形態において、添加剤の濃度は、本体層組成物全体の最大40、45、50、55又は約65重量%の範囲とすることができる。
【0105】
いくつかの実施形態において、本体層は、可塑剤、粘着付与剤及びこれらの組み合わせを含まない。他の実施形態において、本体層組成物は、可塑剤、粘着付与剤及びこれらの組み合わせを、本体層組成物全体の5、4、3、2、又は1重量%以下の量で含む。引張強度の観点から、粘着付与剤又は可塑剤を多量に添加しないことが好ましい。
【0106】
いくつかの実施形態において、本体層組成物はヒュームドシリカを含む。(例えばヒュームド)シリカの濃度は変更することができる。いくつかの実施形態において、本体層組成物は、(例えばヒュームド)シリカを、少なくとも0.5又は1.0重量%含む。
【0107】
本体層は、様々な技法を使用して特徴付けすることができる。コポリマーのTgは、構成モノマーのTg及びその重量パーセントに基づきフォックス方程式を使用して推定してもよいが、フォックス方程式は、非相溶性などの効果の相互作用を考慮に入れないため、Tgが、計算したTgから外れる場合がある。本体層のTgは、先に引用した2015年12月7日出願の国際出願PCT/US2015/64215号に記載されている試験方法にしたがって、示差走査熱量測定(DSC)によって測定したときのTg中点値を指す。フィルム及び(例えば放射線)硬化した組成物が、150℃を超えるTgを有するモノマーを含む場合、DSC試験温度の上限は、最も高いTgモノマーのものよりも高くなるように選択する。DSCによって測定したときのTg中点値は、動的機械分析(DMA)によって10Hzの周波数及び3℃/分の速度で測定したときのピーク温度Tgよりも10~12℃低い。したがって、DSCによって測定したときの60℃のTgは、この直前に記載した通りDMAによって測定したときの70~72℃と等価である。
【0108】
本体層のTgは、概して、少なくとも20、25、又は30℃であり、最大55、56、57、58、59、又は60℃の範囲である。いくつかの実施形態において、本体層のTgは、少なくとも31、32、33、34又は35℃である。他の実施形態において、本体層のTgは、少なくとも36、37、38、39又は40℃である。更に他の実施形態において、本体層のTgは、少なくとも41、42、43、44又は45℃である。いくつかの実施形態において、本体層は、DSCによって測定したときに単一のTgを呈する。したがって、(メタ)アクリルポリマー及びポリビニルアセタールポリマー組成物は、単一のTgを呈することができる。したがって、重合した(メタ)アクリルポリマー及びポリビニルアセタールポリマー組成物のみのもの、又は架橋剤との組み合わせは、単一のTgを呈することができる。
【0109】
単一のTgは、単一の(例えば連続的な)相形態の1つの指標である。したがって、フィルム、並びに重合した(メタ)アクリルポリマー及びポリビニルアセタールポリマー組成物は、単独で、又は架橋剤と組み合わせて、単一の連続相として特徴付けることができる。あるいは、フィルム又は(例えば放射線)硬化した組成物は、同時出願された代理人整理番号75577US004に記載されている試験方法にしたがって透過型電子顕微鏡(TEM)によって試験することができる。低ヘイズ及び高透過率を有するフィルムには、単一(例えば、連続)相形態が好ましい。
【0110】
他の実施形態において、フィルム、並びに重合した(メタ)アクリルポリマー及びポリビニルアセタールポリマー組成物は、単独で、又は架橋剤と組み合わせて、(メタ)アクリルポリマーの連続相中にポリビニルアセタール(例えば、ブチラール)の分散相を有するものとして特徴付けることができる。平均分散体サイズは、TEMを用い、分散相のランダムに(randomly)選択された粒子(例えば100個の粒子)の直径を平均することにより計算することができる。平均分散体サイズは、0.1~10ミクロンの範囲とすることができる。いくつかの実施形態において、平均分散体サイズは、0.5、0.3、0.4、0.3、0.1ミクロン未満である。また、0.1ミクロン未満の平均分散体サイズにより、低いヘイズで高い透過率のフィルムを得ることもできる。
【0111】
本体層は、先に引用した2015年12月7日出願の国際出願PCT/US2015/64215号に記載されている試験方法にしたがって、引張及び伸長により特徴付けることができる。いくつかの実施形態において、引張強度は、少なくとも10、11、12、13、14又は15MPaであり、かつ典型的には50、45、40、又は35MPa以下である。破断点伸長は、2、3、4又は5%~約150%、200%、又は300%及びそれを超える範囲とすることができる。いくつかの実施形態において、伸長は、少なくとも50、100、150、又は175%であり、かつ最大225、250、275、又は300%の範囲であってもよい。
【0112】
本体層は、好ましくは、室温(25℃)、好ましくは最大(120°F)50℃の範囲の(例えば貯蔵又は輸送)温度で接触するために、非粘着性である。いくつかの実施形態において、本体層は、ガラスに対して低レベルの接着性を呈していてもよい。例えば、180°剥離値は、12インチ/分の剥離速度で約2オンス/インチ以下とすることができる。
【0113】
いくつかの実施形態において、本体層は、熱結合性フィルム又は熱結合性フィルム層として使用するのに好適である。熱結合性フィルムは、概ね、約50、60又は70℃の範囲から最大約140、145、又は150℃の範囲までの温度で結合を形成することができる。いくつかの実施形態において、熱結合は、約5~20psiの圧力を約5、10、15、20、25、又は30秒の持続時間にわたり利用して達成される。
【0114】
熱結合性本体層は、様々な金属(例えばステンレス鋼)及びポリマー(例えばポリカーボネート)基材の結合(実施例の試験方法に記載される方法など)に好適である。1つの実施形態において、本体層は120℃の温度でポリカーボネートに対して熱結合性であり、熱結合後、25℃で少なくとも0.5、0.6、0.7、又は0.8kg/cmの剥離強度を、最大2、2.5、又は3kg/cmの範囲で呈する。別の実施形態において、本体層は120℃の温度でポリカーボネートに対して熱結合性であり、熱結合後、70℃で少なくとも1、1.5、又は2kg/cmの剥離強度を、最大3、3.5,4.0、4.5又は5kg/cmの範囲で呈する。
【0115】
本体層は、光学要素を含む第2の層に近接している。1つの実施形態において、本体層は、第2の層と一体に連結されている。例えば、本体層は、第2の層上へ直接形成してもよい。例えば、本体層は、第2の層へ熱的に結合されていてもよく、又は第2の層へ接着結合されていてもよい。1つの実施形態において、本体層が、第2の層に近接しているが、1つ以上の追加の層によって第2の層から離れて間隔があいている。例えば、追加の層は、第2の層と本体層との間に含まれていてもよい。典型的には、本体層は、導光物品の最外面を形成する。
【0116】
本体層は、第2の層と接触していてもよく、又はプライマー若しくは接着促進処理が、本体層上又は第2の層の間に配置されていてもよい。更に別の実施形態において、接着剤は、本体層と第2の層との間に配置されていてもよい。典型的な実施形態において、第2の層は連続的であり、構造化されていない。
【0117】
いくつかの実施形態において、導光性フィルムは適合可能(conformable)である。「適合可能(conformable)」とは、フィルム又はフィルム層が、フィルムを曲線若しくは突出部の周りに引き伸ばしできるように、又はフィルムを破ることも剥離させることもなく押し付けて凹部を作製できるように、基材表面上の曲線、凹部、又は突出部に適応するのに十分に、柔軟かつ可撓性であることを意味する。また、適用後にフィルムが基材表面から剥離又は遊離(ポップアップとして知られている)しないことが望ましい。
【0118】
いくつかの実施形態において、導光性フィルムは、延伸された後に十分な非弾性変形を有するため、延伸されるとフィルムは元の長さに戻らない。いくつかの実施形態において、導光性フィルム全体は、それらの元の長さの115%まで一度延伸された後に少なくとも5%の非弾性変形を有する。他の実施形態において、フィルム、本体層、又はバッキングの適合性は、2015年12月7日出願の国際出願PCT/US2015/64215号に記載されているような%引張永久歪みによって決定され、少なくとも20、25、又は30%である。
【0119】
いくつかの実施形態において、接着剤組成物の層は、本体層、又は第2のバッキングに近接する。接着剤は、典型的には、本体又は第2のバッキング上に直接配置されてもよく、本体又はバッキングと、接着層との間にプライマー処理又は接着促進処理を含んでもよい。プライマーのタイプは、使用されるフィルム及び接着剤のタイプによって変化し、当業者であれば適切なプライマーを選択することができる。接着剤層は、任意の好適な接着剤であってよい。接着剤の非限定的な例としては、感圧性接着剤、感熱接着剤、放射線硬化性接着剤などが挙げられる。接着剤層は任意に、剥離ライナーで保護してもよい。
【0120】
導光物品は、長手方向の両端部によって制限された幅を有する薄膜シート材であってもよい。1つの実施形態において、シート材は、ロールで提供されてもよい。
【0121】
多くの用途において、導光物品は、材料上の全て又は一部に印刷を含む。印刷は、本体層若しくは第2の層、又は両方の表面上にあってもよい。1つの実施形態において、印刷は第2の層の表面にあり、かつ本体層は第2の層フィルムの印刷表面に重ねて配することで、印刷を保護する。
【0122】
再帰反射性シート材である導光物品に関しては、再帰反射性シート材は、その可撓性と再帰反射される明るさとの組み合わせを考慮すると、交通標識、路面の標示、車両の標示、ナンバープレート、及び個人用安全物品などの様々な用途に有用である。再帰反射係数Rを、米連邦試験方法標準規格370にしたがって、入射角-4°、方位角0°で異なる観測角にて測定してもよい。再帰反射性シート材は、典型的には、入射角-4°、方位角0°、及び少なくとも50、100、150、200又は250カンデラ/ルクス/mの観測角0.2°の再帰反射係数Rを有する。
【0123】
再帰反射性ではないが、導光性であり、したがってシート材を通過する光の方向制御する導光物品に関しては、シート材は、例えば、窓をカバーするために有用である。
【0124】
シート材の可撓性のため、シート材は、カンバス及び他の織物などの可撓性基材、波状の又はリベット打ちされた表面、並びに単純又は複合的な湾曲を有する湾曲表面に対する適用に関して修正可能である。可撓性の再帰反射性シート材はまた、熱膨張及び熱収縮を起こしやすい装置(例えば、バレル、コーンなどの交通装置)に対する適用に関して修正可能である。
【0125】
本明細書において具体的な実施形態を示し、記載してきたが、これらの実施形態は、多数の構成が可能な単なる例示であることを理解されたい。当業者であれば、本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく、多数のかつ多様な他の構成を考案することができる。したがって本発明の範囲は、本願で述べた構造に限定されるべきものではなく、特許請求の文言により述べられる構造及びそうした構造の等価物によってのみ限定されるものである。図面は、縮尺どおりに描かれていない場合がある。
【実施例
【0126】
【表1】
【0127】
試験方法
再帰反射性輝度
再帰反射係数、R、を、標準試験ASTME810-03にしたがって測定し、ここで、Rはカンデラ毎ルクス毎平方メートル(cd/(lux-平方メートル))で示される。ASTME810-03で使用した入射角は4度であり、かつ観測角は0.2度であった。
【0128】
【表2】
【0129】
【表3】
【0130】
【表4】
【0131】
接着剤シロップ1
接着シロップ1は、1ガロン(3.8リットル)のジャーに、IOA、AA、及びIrg 651を表2に示す量で充填し、光開始剤が溶解し、均一な混合物が得られるまで撹拌することによって調製した。ジャーの蓋にある開口部を介して挿入した管を通して、窒素ガスを導入することによって、混合物を脱気し、少なくとも5分間激しくバブリングした。撹拌しながら、混合物を、被覆に適していると思われる粘度を有するプレ接着剤シロップが形成されるまで、UV-A光に曝露した。UV曝露後、空気をジャー内に導入した。光源は、365nmのピーク発光波長を有するLEDアレイであった。予備重合後、0.2pphのTMPTAを、終夜ローリングすることによってシロップ中に混合した。
【0132】
実施例1
ベースシロップ1を、ノッチバーコーターを使用して、0.002インチ(51マイクロメートル)の厚さで第2の試料PET1上にコーティングした。ベースシロップ1組成物を、350ナノメートルのピーク発光波長を有する複数の蛍光ランプを使用して、3600ミリジュール/平方センチメートルの総UV-Aエネルギーへ曝露し、PET1上に非感圧性接着剤(PSA)アクリルフィルムを得た。接着シロップ1を、ノッチバーコーターを使用して、0.002インチ(51マイクロメートル)の厚さでPET1上にコーティングした。照射された非PSAアクリルフィルム/PET1の組み合わせを、全ての間隙設定が0.008インチ(203マイクロメートル)の2-ロールコーティングステーションを使用して、接着シロップ1がコーティングされたPET1と密着させ、350ナノメートルのピーク放出波長を有する複数の蛍光ランプを使用して、4263ミリジュール/平方センチメートルの総UV-Aエネルギーへ曝露した。順番に、PET1、PSA、非PSAアクリルフィルム、及びPET1を有する構造体を得た。次に、DLX2ラン由来のロット9番からPET1ライナーを取り外し、接着層を露出させ、次いで、ハンドスクィーズロールラミネーターを用いて、3M(商標)Advanced Engineer Grade Prismatic Sheeting Series 7930の上部に積層した。
【0133】
実施例2
ベースシロップ2の構成成分へMAX 100 WHITE SPEEDMIXER(FleckTek,Inc.,Landrum,SCから入手可能)を添加し、3500RPMで5分間混合した。ベースシロップ2を、未処理のPETライナー間に2.0ミルの厚さでコーティングし、UVA光へ曝露した。低強度検出ヘッド(EIT Inc.,Sterling,VAから入手可能)を備えたPowermap(商標)放射計を使用して総エネルギーを測定すると、1824mJ/cmであった。
【0134】
複数の光学活性要素、具体的には、その開示内容は、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第5,691,846号に概ね記載されているような微細複製コーナーキューブ構造体が層上に得られる。(構造体を個々のキューブに分離する前の)コーナーキューブ構造体は、ピッチ(すなわち、主な溝間隔)が0.004”で、コーナーキューブ要素の高さが50.0ミクロン(2ミル)になる58/58/64度のベース三角形開口を伴うような、交差溝を3セット有していた。
【0135】
商品名「Ebecryl 3720」で市販されている25重量%のビスフェノールAエポキシジアクリレート、50重量%のTMPTA(トリメチロールプロパントリアクリレート)、及び25重量%の1,6-HDDA(ヘキサンジオールジアクリレート)を組み合わせることによって調製した樹脂を用いて、コーナーキューブ構造体を形成した。配合物は、0.5pphのTPO(2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド)光開始剤及び0.5pphのDarocure 1173(2-ヒドロキシ-2,2,-ジメチルフェニルプロパン-1-オン)を有していた。
【0136】
次いで、本体層及びPETキャリアフィルムを、ツールのキャビティ上に適用される樹脂組成物の量が最小限になるように設定された間隙を有するゴムニップローラーによって、170°Fに加熱された金属ツール上のコーナーキューブ構造体に接触させた。コーナーキューブ構造体の樹脂を、2つのフュージョンD UVランプ(Fusion Systems,Rockville,MDから入手可能)を用いて、それぞれ360及び600W/inに設定し、本体層及びキャリアフィルムを通して硬化した。UVランプの前方にダイクロイックフィルターを使用し、赤外線による構造体の加熱を最小に抑えた。微細複製プロセス及びツールからの取り外しが完了した際に、75%で作動されたFusion D UVランプで、コーナーキューブ要素を有する複合材の重合性樹脂面を照射し、UV照射後硬化を行った。構造体を170°Fに設定したオーブンに通し、フィルム内の応力を緩和させた。
【0137】
次いで、参照によりその全体の開示内容が本明細書に援用される、米国特許公開第2013/0034682号に記載される通りに調製したシールフィルムを使用して導光物品を密封し、ただし、(1)フレキソ印刷機を使用し、接着層上にUVA硬化性インクを印刷すること、(2)印刷したパターンは、全被覆率49%に関しては、420平方ミクロン及び180ミクロンの間隙で構成されることを除いた。
【0138】
このようにして構築したシート材の0.2/-4輝度は、163cd/lx/m2であった。
なお、以上の各実施形態に加えて以下の態様について付記する。
(付記1)
少なくとも30℃のTgを有し、(メタ)アクリルポリマー及び以下の式を有する重合単位を含むポリビニルアセタールポリマーを含む本体層と、
【化1】
[式中、R は水素又はC1~C7のアルキル基である]
前記本体層に近接し、かつ光学要素を含む、第2の層と
を含む、導光物品。
(付記2)
前記本体層が60℃以下のTgを有する、付記1に記載の導光物品。
(付記3)
前記本体層及び/又は第2の層が、顔料、着色剤、装飾用添加剤、UV吸収剤、又はこれらの組み合わせを含む、付記1又は2に記載の導光物品。
(付記4)
前記本体層が、25℃及び1ヘルツで少なくとも1MPaの引張弾性率を有する、付記1~3のいずれか一項に記載の導光物品。
(付記5)
前記本体層が、0℃未満のTgを有する単官能性アルキル(メタ)アクリレートモノマーの重合単位を、少なくとも、20、25、30、35、40、50重量%含む、付記1~4のいずれか一項に記載の導光物品。
(付記6)
前記本体層が、0℃未満のTgを有する単官能性アルキル(メタ)アクリレートモノマーの重合単位を、85重量%以下含む、付記1~5のいずれか一項に記載の導光物品。
(付記7)
前記単官能性アルキル(メタ)アクリレートモノマーの重合単位が、-10℃、-20℃、-30℃、-40℃、又は-50℃未満のTgを有する、付記5又は6に記載の導光物品。
(付記8)
前記本体層が、8個の炭素原子を含むアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートモノマーの重合単位を含む、付記1~7のいずれか一項に記載の導光物品。
(付記9)
前記本体層が、ポリビニルアセタールポリマーを、5~30重量%含む、付記1~8のいずれか一項に記載の導光物品。
(付記10)
前記本体層が光開始剤を含む、付記1~9のいずれか一項に記載の導光物品。
(付記11)
前記本体層が、前記導光物品の最外面を形成する、付記1~10のいずれか一項に記載の導光物品。
(付記12)
前記光学要素が、ビーズ又は微細構造化要素を含む、付記1~11のいずれか一項に記載の導光物品。
(付記13)
前記微細構造化要素が、縦方向に延びるプリズム又はコーナーキューブ要素である、付記12に記載の導光物品。
(付記14)
前記コーナーキューブ要素が、切頭型キューブ又はフルキューブを含む、付記13に記載の導光物品。
(付記15)
前記微細構造化要素が、重合性樹脂の反応生成物を含む、付記12~14のいずれか一項に記載の導光物品。
(付記16)
前記微細構造化要素が、固化した熱可塑性樹脂を含む、付記12~15のいずれか一項に記載の導光物品。
(付記17)
前記本体層が、前記第2の層と一体に連結されている、付記1~16のいずれか一項に記載の導光物品。
(付記18)
前記本体層が、前記第2の層へ熱的に結合されている、付記17に記載の導光物品。
(付記19)
前記本体層が、前記第2の層へ接着結合されている、付記17に記載の導光物品。
(付記20)
前記本体層が、前記第2の層に近接しているが、1つ以上の追加の層によって前記第2の層から離れて間隔があいている、付記1~16のいずれか一項に記載の導光物品。
(付記21)
前記追加の層が、接着促進層、インク、構造支持層である、付記20に記載の導光物品。
(付記22)
前記第2の層又は本体層上に接着促進表面処理を含み、接着促進表面処理が、プライマー層、又はこれらの組み合わせから選択される、付記1~21のいずれか一項に記載の導光物品。
(付記23)
ロールの両端部によって制限された幅を有するシート材のロールである、付記1~22のいずれか一項に記載の導光物品。
(付記24)
前記光学要素に隣接する又はその上の鏡面反射性コーティングを更に含む、付記1~23のいずれか一項に記載の導光物品。
(付記25)
前記光学要素の一部に結合されたシールフィルムを更に含む、付記1~24のいずれか一項に記載の導光物品。
(付記26)
第1の領域及び第2の領域を含む接着層を更に含み、前記第2の領域が、前記第1の領域を囲み、かつ前記微細構造化要素に接触しており、前記第1の領域及び前記第2の領域が、前記接着層と前記微細構造化要素の間に低屈折率層を形成するのに十分異なる特性を有する、付記1~25のいずれか一項に記載の導光物品。
(付記27)
前記本体層とは反対側の、前記第2の層上に接着層を更に含む、付記1~26のいずれか一項に記載の導光物品。
(付記28)
前記接着層が剥離ライナーで覆われ、前記剥離ライナーが、前記導光物品の最外面を形成している、付記27に記載の導光物品。
(付記29)
再帰反射性シート材である、付記1~28のいずれか一項に記載の導光物品。
図1
図2
図3
図4
図5
図6