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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】合わせガラス用中間膜及び合わせガラス
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/12 20060101AFI20220119BHJP
   B32B 17/10 20060101ALI20220119BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20220119BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
C03C27/12 D
B32B17/10
B32B27/00 B
B32B27/30 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2016508879
(86)(22)【出願日】2016-02-05
(86)【国際出願番号】 JP2016053520
(87)【国際公開番号】W WO2016125895
(87)【国際公開日】2016-08-11
【審査請求日】2018-10-16
【審判番号】
【審判請求日】2020-03-19
(31)【優先権主張番号】P 2015021626
(32)【優先日】2015-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2015021627
(32)【優先日】2015-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2015021628
(32)【優先日】2015-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2015021629
(32)【優先日】2015-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩本 達矢
(72)【発明者】
【氏名】水口 奈美
【合議体】
【審判長】宮澤 尚之
【審判官】伊藤 真明
【審判官】後藤 政博
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/043817(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/133668(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C27/12
B32B7/02
B32B27/20
B32B27/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1層の構造又は2層以上の構造を有し、かつ全ての層が、熱可塑性樹脂であるポリビニルアセタール樹脂を含む合わせガラス用中間膜であって、
熱可塑性樹脂であるポリビニルアセタール樹脂を含む第1の層を備え
記第1の層の軟化点が60℃以上であり、
MD方向とTD方向とを有する中間膜(但し、MD方向の寸法が5cm未満である中間膜を除く、かつ、TD方向の寸法が15cm未満である中間膜を除く)であり、
下記の第1の内側部分、下記の第2の内側部分及び下記の中央部分をそれぞれ80℃で2分間加熱したときの熱収縮率に関して、下記の熱収縮率MDMAXと下記の熱収縮率MDMINとの差の絶対値が10%未満であり、
下記の熱収縮率MDMAXが、14%以下である、合わせガラス用中間膜。
第1の内側部分:中間膜のTD方向の一端と他端との間の距離をXとしたときに、中間膜のTD方向の一端から内側に向かって0.05Xの距離部分である5cm角の部分を表す
第2の内側部分:中間膜のTD方向の一端と他端との間の距離をXとしたときに、中間膜のTD方向の他端から内側に向かって0.05Xの距離部分である5cm角の部分を表す
中央部分:中間膜のTD方向の一端と他端との間の距離をXとしたときに、中間膜のTD方向の一端及び他端のそれぞれから内側に向かって0.5Xの距離部分である5cm角の部分を表す
熱収縮率MD1MAX及び熱収縮率MD1MIN:第1の内側部分のMD方向と平行である2辺の熱収縮率が異なる場合は、熱収縮率が高い辺の熱収縮率をMD1MAX、熱収縮率が低い辺の熱収縮率をMD1MINとし、第1の内側部分のMD方向と平行である2辺の熱収縮率が同じ場合は、一方の熱収縮率をMD1MAXとし、他方の熱収縮率をMD1MINとする
熱収縮率MD2MAX及び熱収縮率MD2MIN:第2の内側部分のMD方向と平行である2辺の熱収縮率が異なる場合は、熱収縮率が高い辺の熱収縮率をMD2MAX、熱収縮率が低い辺の熱収縮率をMD2MINとし、第2の内側部分のMD方向と平行である2辺の熱収縮率が同じ場合は、一方の熱収縮率をMD2MAXとし、他方の熱収縮率をMD2MINとする
熱収縮率MD3MAX及び熱収縮率MD3MIN:中央部分のMD方向と平行である2辺の熱収縮率が異なる場合は、熱収縮率が高い辺の熱収縮率をMD3MAX、熱収縮率が低い辺の熱収縮率をMD3MINとし、中央部分のMD方向と平行である2辺の熱収縮率が同じ場合は、一方の熱収縮率をMD3MAXとし、他方の熱収縮率をMD3MINとする
熱収縮率MDMAX:熱収縮率MD1MAXと熱収縮率MD2MAXと熱収縮率MD3MAXとのうちの最も大きい熱収縮率を表す
熱収縮率MDMIN:熱収縮率MD1MINと熱収縮率MD2MINと熱収縮率MD3MINとのうちの最も小さい熱収縮率を表す
【請求項2】
前記第1の層の軟化点が61.5℃以上である、請求項1に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項3】
前記第1の層のガラス転移温度が35℃以上である、請求項1又は2に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項4】
熱可塑性樹脂であるポリビニルアセタール樹脂を含む第2の層を備え、
前記第2の層の第1の表面側に、前記第1の層が配置されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項5】
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率が、前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率よりも9.5モル%以上多い、請求項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項6】
前記第2の層がフィラーを含む、請求項4又は5に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項7】
熱可塑性樹脂であるポリビニルアセタール樹脂を含む第3の層を備え、
前記第2の層の前記第1の表面とは反対側の第2の表面側に、前記第3の層が配置されている、請求項4~のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項8】
前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率が33モル%以上である、請求項1~のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項9】
前記第1の層が可塑剤を含み、
前記第1の層中の前記熱可塑性樹脂100重量部に対して、前記第1の層中の前記可塑剤の含有量が25重量部以上、35重量部以下である、請求項1~のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項10】
前記熱収縮率MDMAXと前記熱収縮率MDMINとの差の絶対値が、8%以下である、請求項1~のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜。
【請求項11】
第1の合わせガラス部材と、
第2の合わせガラス部材と、
請求項1~10のいずれか1項に記載の合わせガラス用中間膜とを備え、
前記第1の合わせガラス部材と前記第2の合わせガラス部材との間に、前記合わせガラス用中間膜が配置されている、合わせガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合わせガラスを得るために用いられる合わせガラス用中間膜に関する。また、本発明は、上記合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
合わせガラスは、外部衝撃を受けて破損してもガラスの破片の飛散量が少なく、安全性に優れている。このため、上記合わせガラスは、自動車、鉄道車両、航空機、船舶及び建築物等に広く使用されている。上記合わせガラスは、2つのガラス板の間に合わせガラス用中間膜を挟み込むことにより、製造されている。
【0003】
上記合わせガラス用中間膜としては、1層の構造を有する単層の中間膜と、2層以上の構造を有する多層の中間膜とがある。
【0004】
上記合わせガラス用中間膜の一例として、下記の特許文献1には、アセタール化度が60~85モル%のポリビニルアセタール樹脂100重量部と、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩の内の少なくとも一種の金属塩0.001~1.0重量部と、30重量部を超える可塑剤とを含む遮音層が開示されている。この遮音層は、単層で中間膜として用いられ得る。
【0005】
さらに、下記の特許文献1には、上記遮音層と他の層とが積層された多層の中間膜も記載されている。遮音層に積層される他の層は、アセタール化度が60~85モル%のポリビニルアセタール樹脂100重量部と、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩の内の少なくとも一種の金属塩0.001~1.0重量部と、30重量部以下である可塑剤とを含む。
【0006】
下記の特許文献2には、33℃以上のガラス転移温度を有するポリマー層である中間膜が開示されている。
【0007】
下記の特許文献3には、幅方向の厚さ分布が10%以下、揮発分が1.0質量%以下であるポリビニルアセタール系樹脂フィルムが開示されている。このポリビニルアセタール系樹脂フィルムでは、幅方向の両端からフィルム全幅の5%内側部分について、それぞれ150℃で30分加熱した際に、フィルムに平行かつ幅方向に垂直である流れ方向の熱収縮率が大きい方の値を熱収縮率MD1、もう一方の値を熱収縮率MD2とし、フィルムの幅方向の中央部分を150℃で30分加熱した際のフィルムに平行かつ幅方向に垂直である流れ方向の熱収縮率を熱収縮率MD3とした場合に、熱収縮率MD1、熱収縮率MD2および熱収縮率MD3のいずれも3~20%である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2007-070200号公報
【文献】US2013/0236711A1
【文献】WO2012/133668A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
軟化点が高い中間膜では、TD方向における中間膜の端部とTD方向における中間膜の中心部分とで顕著に加熱収縮率が異なるという課題が、本発明者らにより見出された。
【0010】
このような加熱収縮率が部分的に異なる中間膜を用いて、合わせガラスを製造すると、合わせガラスの角部分に、中間膜が欠けた空隙が生じるという問題がある。なお、空隙とは、2枚のガラス板の間に合わせガラス用中間膜が存在しない状態をいう。
【0011】
本発明の目的は、合わせガラスにおいて中間膜が欠けた空隙を生じ難くすることができる合わせガラス用中間膜を提供することである。また、本発明は、上記合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスを提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の広い局面によれば、1層の構造又は2層以上の構造を有する合わせガラス用中間膜であって、熱可塑性樹脂を含む第1の層を備え、前記第1の層の軟化点が60℃以上であり、中間膜は、MD方向とTD方向とを有し、下記の第1の内側部分、下記の第2の内側部分及び下記の中央部分をそれぞれ80℃で2分間加熱したときの熱収縮率に関して、下記の熱収縮率MDMAXと下記の熱収縮率MDMINとの差の絶対値が10%未満である、合わせガラス用中間膜が提供される。
【0013】
第1の内側部分:中間膜のTD方向の一端と他端との間の距離をXとしたときに、中間膜のTD方向の一端から内側に向かって0.05Xの距離部分である5cm角の部分を表す。
【0014】
第2の内側部分:中間膜のTD方向の一端と他端との間の距離をXとしたときに、中間膜のTD方向の他端から内側に向かって0.05Xの距離部分である5cm角の部分を表す。
【0015】
中央部分:中間膜のTD方向の一端と他端との間の距離をXとしたときに、中間膜のTD方向の一端及び他端のそれぞれから内側に向かって0.5Xの距離部分である5cm角の部分を表す。
【0016】
熱収縮率MD1MAX及び熱収縮率MD1MIN:第1の内側部分のMD方向と平行である2辺の熱収縮率が異なる場合は、熱収縮率が高い辺の熱収縮率をMD1MAX、熱収縮率が低い辺の熱収縮率をMD1MINとし、第1の内側部分のMD方向と平行である2辺の熱収縮率が同じ場合は、一方の熱収縮率をMD1MAXとし、他方の熱収縮率をMD1MINとする。
【0017】
熱収縮率MD2MAX及び熱収縮率MD2MIN:第2の内側部分のMD方向と平行である2辺の熱収縮率が異なる場合は、熱収縮率が高い辺の熱収縮率をMD2MAX、熱収縮率が低い辺の熱収縮率をMD2MINとし、第2の内側部分のMD方向と平行である2辺の熱収縮率が同じ場合は、一方の熱収縮率をMD2MAXとし、他方の熱収縮率をMD2MINとする。
【0018】
熱収縮率MD3MAX及び熱収縮率MD3MIN:中央部分のMD方向と平行である2辺の熱収縮率が異なる場合は、熱収縮率が高い辺の熱収縮率をMD3MAX、熱収縮率が低い辺の熱収縮率をMD3MINとし、中央部分のMD方向と平行である2辺の熱収縮率が同じ場合は、一方の熱収縮率をMD3MAXとし、他方の熱収縮率をMD3MINとする。
【0019】
熱収縮率MDMAX:熱収縮率MD1MAXと熱収縮率MD2MAXと熱収縮率MD3MAXとのうちの最も大きい熱収縮率を表す。
【0020】
熱収縮率MDMIN:熱収縮率MD1MINと熱収縮率MD2MINと熱収縮率MD3MINとのうちの最も小さい熱収縮率を表す。
【0021】
本発明に係る合わせガラス用中間膜のある特定の局面では、前記第1の層の軟化点が61.5℃以上である。
【0022】
本発明に係る合わせガラス用中間膜のある特定の局面では、前記第1の層のガラス転移温度が35℃以上である。
【0023】
本発明に係る合わせガラス用中間膜のある特定の局面では、前記中間膜は、熱可塑性樹脂を含む第2の層を備え、前記第2の層の第1の表面側に、前記第1の層が配置されている。
【0024】
本発明に係る合わせガラス用中間膜のある特定の局面では、前記第1の層中の前記熱可塑性樹脂が、ポリビニルアセタール樹脂であり、前記第2の層中の前記熱可塑性樹脂が、ポリビニルアセタール樹脂である。
【0025】
本発明に係る合わせガラス用中間膜のある特定の局面では、前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率が、前記第2の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率よりも9.5モル%以上多い。
【0026】
本発明に係る合わせガラス用中間膜のある特定の局面では、前記第2の層がフィラーを含む。
【0027】
本発明に係る合わせガラス用中間膜のある特定の局面では、前記中間膜は、熱可塑性樹脂を含む第3の層を備え、前記第2の層の前記第1の表面とは反対側の第2の表面側に、前記第3の層が配置されている。
【0028】
本発明に係る合わせガラス用中間膜のある特定の局面では、前記第1の層中の前記熱可塑性樹脂が、ポリビニルアセタール樹脂であり、前記第1の層中の前記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率が33モル%以上である。
【0029】
本発明に係る合わせガラス用中間膜のある特定の局面では、前記第1の層が可塑剤を含み、前記第1の層中の前記熱可塑性樹脂100重量部に対して、前記第1の層中の前記可塑剤の含有量が25重量部以上、35重量部以下である。
【0030】
本発明に係る合わせガラス用中間膜のある特定の局面では、前記熱収縮率MDMAXが、20%以下である。
【0031】
本発明に係る合わせガラス用中間膜のある特定の局面では、前記熱収縮率MDMAXと前記熱収縮率MDMINとの差の絶対値が、8%以下である。
【0032】
本発明の広い局面によれば、第1の合わせガラス部材と、第2の合わせガラス部材と、上述した合わせガラス用中間膜とを備え、前記第1の合わせガラス部材と前記第2の合わせガラス部材との間に、前記合わせガラス用中間膜が配置されている、合わせガラスが提供される。
【発明の効果】
【0033】
本発明に係る合わせガラス用中間膜は、1層の構造又は2層以上の構造を有する合わせガラス用中間膜であって、熱可塑性樹脂を含む第1の層を備え、上記第1の層の軟化点が60℃以上であり、中間膜は、MD方向とTD方向とを有し、上記第1の内側部分、上記第2の内側部分及び上記中央部分をそれぞれ80℃で2分間加熱したときの熱収縮率に関して、上記熱収縮率MDMAXと上記熱収縮率MDMINとの差の絶対値が、10%未満であるので、合わせガラスにおいて中間膜が欠けた空隙を生じ難くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1図1は、本発明の第1の実施形態に係る合わせガラス用中間膜を模式的に示す断面図である。
図2図2は、本発明の第2の実施形態に係る合わせガラス用中間膜を模式的に示す断面図である。
図3図3は、図1に示す合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスの一例を模式的に示す断面図である。
図4図4は、図2に示す合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスの一例を模式的に示す断面図である。
図5図5は、熱収縮率を測定するための測定対象物(中間膜)を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0036】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下の構成を備える。
【0037】
本発明に係る合わせガラス用中間膜(本明細書において、「中間膜」と略記することがある)は、1層の構造又は2層以上の構造を有する。本発明に係る中間膜は、熱可塑性樹脂を含む第1の層を備える。
【0038】
本発明に係る中間膜では、上記第1の層の軟化点が60℃以上である。第1の層は比較的硬い。このような第1の層を備える中間膜は比較的硬くなる。
【0039】
本発明に係る中間膜は、MD方向とTD方向とを有する。中間膜は、例えば、溶融押出成形により得られる。MD方向は、中間膜の製造時の中間膜の流れ方向である。TD方向は、中間膜の製造時の中間膜の流れ方向と直交する方向であり、かつ中間膜の厚み方向と直交する方向である。
【0040】
本発明に係る中間膜では、下記の第1の内側部分、下記の第2の内側部分及び下記の中央部分をそれぞれ80℃で2分間加熱したときの熱収縮率に関して、下記の熱収縮率MDMAXと下記の熱収縮率MDMINとの差の絶対値が、10%未満である。
【0041】
第1の内側部分:中間膜のTD方向の一端と他端との間の距離をXとしたときに、中間膜のTD方向の一端から内側に向かって0.05Xの距離部分(0.05X離れた部分)である5cm角の部分を表す。
【0042】
第2の内側部分:中間膜のTD方向の一端と他端との間の距離をXとしたときに、中間膜のTD方向の他端から内側に向かって0.05Xの距離部分(0.05X離れた部分)である5cm角の部分を表す。
【0043】
中央部分:中間膜のTD方向の一端と他端との間の距離をXとしたときに、中間膜のTD方向の一端及び他端のそれぞれから内側に向かって0.5Xの距離部分(0.5X離れた部分)である5cm角の部分を表す。
【0044】
熱収縮率MD1MAX及び熱収縮率MD1MIN:第1の内側部分のMD方向と平行である2辺の熱収縮率が異なる場合は、熱収縮率が高い辺の熱収縮率をMD1MAX、熱収縮率が低い辺の熱収縮率をMD1MINとし、第1の内側部分のMD方向と平行である2辺の熱収縮率が同じ場合は、一方の熱収縮率をMD1MAXとし、他方の熱収縮率をMD1MINとする。
【0045】
熱収縮率MD2MAX及び熱収縮率MD2MIN:第2の内側部分のMD方向と平行である2辺の熱収縮率が異なる場合は、熱収縮率が高い辺の熱収縮率をMD2MAX、熱収縮率が低い辺の熱収縮率をMD2MINとし、第2の内側部分のMD方向と平行である2辺の熱収縮率が同じ場合は、一方の熱収縮率をMD2MAXとし、他方の熱収縮率をMD2MINとする。
【0046】
熱収縮率MD3MAX及び熱収縮率MD3MIN:中央部分のMD方向と平行である2辺の熱収縮率が異なる場合は、熱収縮率が高い辺の熱収縮率をMD3MAX、熱収縮率が低い辺の熱収縮率をMD3MINとし、中央部分のMD方向と平行である2辺の熱収縮率が同じ場合は、一方の熱収縮率をMD3MAXとし、他方の熱収縮率をMD3MINとする。
【0047】
熱収縮率MDMAX:熱収縮率MD1MAXと熱収縮率MD2MAXと熱収縮率MD3MAXとのうちの最も大きい熱収縮率を表す。
【0048】
熱収縮率MDMIN:熱収縮率MD1MINと熱収縮率MD2MINと熱収縮率MD3MINとのうちの最も小さい熱収縮率を表す。
【0049】
本発明に係る中間膜における上述した構成の採用により、合わせガラスにおいて中間膜が欠けた空隙を生じ難くすることができる。
【0050】
本発明に係る中間膜では、軟化点が60℃以上である第1の層が存在するにもかかわらず、MD方向における中間膜の端部とMD方向における中間膜の中心部分とで加熱収縮率の差異を小さくして、合わせガラスの角部分に、中間膜が欠けた空隙を生じ難くなる。
【0051】
合わせガラスに空隙をより一層生じ難くする観点からは、上記熱収縮率MDMAXと上記熱収縮率MDMINとの差の絶対値は好ましくは0以上(差がない場合が含まれる)、好ましくは9.5%以下、より好ましくは8%以下である。
【0052】
空隙が抑制された合わせガラスの製造効率を効果的に高める観点からは、熱収縮率MD1MIN、熱収縮率MD2MIN、熱収縮率MD3MIN及び熱収縮率MDMINはそれぞれ、好ましくは0%以上、より好ましくは0.5%以上、より一層好ましくは1.5%以上、更に好ましくは3%以上、特に好ましくは4%以上である。空隙が抑制された合わせガラスの製造効率を効果的に高める観点からは、熱収縮率MD1MAX、熱収縮率MD2MAX、熱収縮率MD3MAX及び熱収縮率MDMAXはそれぞれ、好ましくは17.5%以下、より好ましくは17%以下、より一層好ましくは16%以下、更に好ましくは14%以下、特に好ましくは10%以下、最も好ましくは8%以下である。
【0053】
上記の熱収縮率を達成する方法としては、中間膜の応力を緩和する方法等が挙げられる。具体的には、中間膜をアニール処理したり、押出工程において、中間膜を引っ張る力を弱くしたりする方法等がある。押出工程において、中間膜の温度が高い(例えば、90℃を超える場合)状態で中間膜を引っ張る場合1、及び、中間膜の温度が低い(例えば、90℃以下の場合)状態で中間膜を引っ張る場合2を比較すると、上記場合2の中間膜の熱収縮率は上記場合1の中間膜の熱収縮率よりも高くなる傾向がある。更に、押出工程において、中間膜の温度が同じであったとしても、中間膜を引っ張る力が強い場合3(例えば、線速が相対的に速い場合)、及び、中間膜を引っ張る力が弱い場合4(例えば、線速が相対的に遅い場合)を比較すると、上記場合3の中間膜の熱収縮率は上記場合4の中間膜の熱収縮率よりも高くなる傾向がある。また、ポリビニルアセタール樹脂の合成時に熟成温度を調整することで、得られる中間膜の加熱収縮を制御できる。
【0054】
上記第1の内側部分のMD方向の熱収縮率、上記第2の内側部分のMD方向の熱収縮率、及び上記中央部分のMD方向の熱収縮率を測定するための測定対象物(中間膜A1、中間膜A2及び中間膜A3)は、以下のようにして得ることができる。
【0055】
図5に示すように、中間膜のTD方向の一端から他端にわたって、中間膜のMD方向の寸法が10cmとなるように中間膜を切り出し、中間膜Aを得る。中間膜Aの寸法変化を抑制しない方法(そのまま網棚の上に置く等)で23℃、30%RHにて2日間調湿を行う。その後、図5に示すように、調湿した中間膜Aから、TD方向の一端から内側に向かって0.05Xの距離部分である5cm角の部分の中間膜A1(試験片)、TD方向の他端から内側に向かって0.05Xの距離部分である5cm角の部分の中間膜A2(試験片)、及び、中間膜のTD方向の一端及び他端のそれぞれから内側に向かって0.5Xの距離部分である5cm角の部分の中間膜A3(試験片)を得る。TD方向の一端から内側に向かって0.05Xの位置が、中間膜A1の中心線と重なるように、5cm角の正方形の大きさの中間膜A1を得る。TD方向の他端から内側に向かって0.05Xの位置が、中間膜A2の中心線と重なるように、5cm角の正方形の大きさの中間膜A2を得る。TD方向の一端及び他端のそれぞれから内側に向かって0.5Xの位置が、中間膜A3の中心線と重なるように、5cm角の正方形の大きさの中間膜A3を得る。
【0056】
中間膜A1、中間膜A2及び中間膜A3をそれぞれ、80℃で2分間加熱する。加熱時に、中間膜A1、中間膜A2及び中間膜A3は固定することなく、熱風乾燥機(アズワン社製プログラム定温乾燥器「型式DO-600FPA」)内に置いたフッ素樹脂シート(アズワン社製「品番7-363」、厚み5mm)の上に水平に置く。なお、80℃の熱風乾燥機内にフッ素樹脂シートを20分間置き予熱した後に、中間膜A1、中間膜A2及び中間膜A3をそれぞれ、予熱されたフッ素樹脂シートの上に水平に置く。
【0057】
熱処理前後に、MD方向の長さを0.1cm単位で測定する。中間膜A1のMD方向と平行である2辺のうち、TD方向の一端側の辺の長さを測定し、熱収縮率を計算する。同様な方法で熱収縮率の測定を3回行い、平均値を中間膜A1のMD方向と平行である2辺のうち、TD方向の一端側の熱収縮率とする。次いで、中間膜A1のMD方向と平行である2辺のうち、TD方向の他端側の辺の長さを測定し、熱収縮率を計算する。同様な方法で熱収縮率の測定を3回行い、平均値を中間膜A1のMD方向と平行である2辺のうち、TD方向の他端側の熱収縮率とする。更に、中間膜A1のTD方向の一端側の熱収縮率とTD方向の他端側の熱収縮率とを比較し、熱収縮率が高い方の熱収縮率をMD1MAXとし、熱収縮率が低い方の熱収縮率をMD1MINとする。なお、中間膜A1のTD方向の一端側の熱収縮率とTD方向の他端側の熱収縮率とが同じ場合は、MD1MAXとMD1MINとが同じ数値となる。同様に、中間膜A2及び中間膜A3それぞれのMD2MAX、MD2MIN、MD3MAX、及び、MD3MINを求める。熱収縮率は下記式(X)により求められる。
【0058】
熱収縮率%=(熱処理前のMD方向の寸法-熱処理後のMD方向の寸法)/熱処理前のMD方向の寸法×100 ・・・式(X)
【0059】
また、例えば、中間膜のTD方向の寸法が15cm以上50cm未満である場合は、中間膜A1及び中間膜A2については、中間膜の一端及び他端からそれぞれ、TD方向に5cm、MD方向に5cmの正方形の中間膜を切り出す。さらに、中間膜のTD方向の寸法が15cm未満である場合は、中間膜A1、中間膜A2及び中間膜A3について、TD方向の距離を3等分した場合のTD方向の寸法を基準として、正方形の中間膜を切り出す。なお、中間膜のTD方向の寸法の好ましい下限は50cm、より好ましい下限は70cm、更に好ましい下限は80cm、好ましい上限は500cm、より好ましい上限は400cm、更に好ましい上限は300cmである。
【0060】
上記中間膜は、1層の構造を有していてもよく、2層の構造を有していてもよく、2層以上の構造を有していてもよく、3層の構造を有していてもよく、3層以上の構造を有していてもよい。上記中間膜が1層の構造を有する中間膜である場合には、上記第1の層が中間膜である。上記中間膜が2層以上の構造を有する中間膜である場合には、上記中間膜は、上記第1の層と、他の層(第2の層、第3の層など)とを備える。
【0061】
空隙が抑制された合わせガラスの製造効率を効果的に高める観点からは、上記中間膜は、上記第1の層を表面層として備えることが好ましい。上記中間膜は、後述する第3の層を表面層として備えることが好ましい。
【0062】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明する。
【0063】
図1に、本発明の第1の実施形態に係る合わせガラス用中間膜を模式的に断面図で示す。
【0064】
図1に示す中間膜11は、2層以上の構造を有する多層の中間膜である。中間膜11は、合わせガラスを得るために用いられる。中間膜11は、合わせガラス用中間膜である。中間膜11は、第1の層1と、第2の層2と、第3の層3とを備える。第2の層2の第1の表面2aに、第1の層1が配置されており、積層されている。第2の層2の第1の表面2aとは反対側の第2の表面2bに、第3の層3が配置されており、積層されている。第2の層2は中間層である。第1の層1及び第3の層3はそれぞれ、保護層であり、本実施形態では表面層である。第2の層2は、第1の層1と第3の層3との間に配置されており、挟み込まれている。従って、中間膜11は、第1の層1と第2の層2と第3の層3とがこの順で積層された多層構造(第1の層1/第2の層2/第3の層3)を有する。
【0065】
なお、第1の層1と第2の層2との間、及び、第2の層2と第3の層3との間にはそれぞれ、他の層が配置されていてもよい。第1の層1と第2の層2、及び、第2の層2と第3の層3とはそれぞれ、直接積層されていることが好ましい。他の層として、ポリエチレンテレフタレート等を含む層が挙げられる。
【0066】
図2に、本発明の第2の実施形態に係る合わせガラス用中間膜を模式的に断面図で示す。
【0067】
図2に示す中間膜11Aは、1層の構造を有する単層の中間膜である。中間膜11Aは、第1の層である。中間膜11Aは、合わせガラスを得るために用いられる。中間膜11Aは、合わせガラス用中間膜である。
【0068】
中間膜は、中間膜における中間層又は中間膜における表面層ではない層として、第2の層を備えていてもよい。中間膜は、中間膜における表面層として、第1の層を備えることが好ましい。中間膜は、中間膜における表面層として、第3の層を備えることが好ましい。
【0069】
以下、本発明に係る中間膜を構成する上記第1の層、上記第2の層及び上記第3の層の詳細、並びに上記第1の層、上記第2の層及び上記第3の層に含まれる各成分の詳細を説明する。
【0070】
(ポリビニルアセタール樹脂又は熱可塑性樹脂)
上記第1の層は、熱可塑性樹脂(以下、熱可塑性樹脂(1)と記載することがある)を含み、熱可塑性樹脂(1)として、ポリビニルアセタール樹脂(以下、ポリビニルアセタール樹脂(1)と記載することがある)を含むことが好ましい。上記第2の層は、熱可塑性樹脂(以下、熱可塑性樹脂(2)と記載することがある)を含み、熱可塑性樹脂(2)として、ポリビニルアセタール樹脂(以下、ポリビニルアセタール樹脂(2)と記載することがある)を含むことが好ましい。上記第3の層は、熱可塑性樹脂(以下、熱可塑性樹脂(3)と記載することがある)を含み、熱可塑性樹脂(3)として、ポリビニルアセタール樹脂(以下、ポリビニルアセタール樹脂(3)と記載することがある)を含むことが好ましい。上記ポリビニルアセタール樹脂(1)と上記ポリビニルアセタール樹脂(2)と上記ポリビニルアセタール樹脂(3)とは、同一であってもよく、異なっていてもよいが、遮音性がより一層高くなることから、上記ポリビニルアセタール樹脂(2)は、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)及び上記ポリビニルアセタール樹脂(3)と異なっていることが好ましい。上記熱可塑性樹脂(1)と上記熱可塑性樹脂(3)とは、同一であってもよく、異なっていてもよい。上記ポリビニルアセタール樹脂(1)、上記ポリビニルアセタール樹脂(2)及び上記ポリビニルアセタール樹脂(3)はそれぞれ、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。上記熱可塑性樹脂(1)、上記熱可塑性樹脂(2)及び上記熱可塑性樹脂(3)はそれぞれ、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0071】
上記熱可塑性樹脂としては、ポリビニルアセタール樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン-アクリル酸共重合体樹脂、ポリウレタン樹脂及びポリビニルアルコール樹脂等が挙げられる。これら以外の熱可塑性樹脂を用いてもよい。
【0072】
上記ポリビニルアセタール樹脂は、例えば、ポリビニルアルコールをアルデヒドによりアセタール化することにより製造できる。上記ポリビニルアルコールは、例えば、ポリ酢酸ビニルをけん化することにより得られる。上記ポリビニルアルコールのけん化度は、一般に70~99.9モル%である。
【0073】
上記ポリビニルアルコール(PVA)の平均重合度は、好ましくは200以上、より好ましくは500以上、より一層好ましくは1500以上、更に好ましくは1600以上、特に好ましくは2600以上、最も好ましくは2700以上、好ましくは5000以下、より好ましくは4000以下、更に好ましくは3500以下である。上記平均重合度が上記下限以上であると、合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなる。上記平均重合度が上記上限以下であると、中間膜の成形が容易になる。
【0074】
上記ポリビニルアルコールの平均重合度は、JIS K6726「ポリビニルアルコール試験方法」に準拠した方法により求められる。
【0075】
上記ポリビニルアセタール樹脂におけるアセタール基の炭素数は3~5であることが好ましく、4又は5であることが好ましい。
【0076】
上記アルデヒドとして、一般には、炭素数が1~10のアルデヒドが好適に用いられる。上記炭素数が1~10のアルデヒドとしては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n-ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n-バレルアルデヒド、2-エチルブチルアルデヒド、n-ヘキシルアルデヒド、n-オクチルアルデヒド、n-ノニルアルデヒド、n-デシルアルデヒド、及びベンズアルデヒド等が挙げられる。なかでも、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n-ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n-ヘキシルアルデヒド又はn-バレルアルデヒドが好ましく、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n-ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド又はn-バレルアルデヒドがより好ましく、n-ブチルアルデヒド又はn-バレルアルデヒドが更に好ましい。上記アルデヒドは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0077】
上記ポリビニルアセタール樹脂(2)の水酸基の含有率(水酸基量)は、好ましくは17モル%以上、より好ましくは20モル%以上、更に好ましくは22モル%以上、好ましくは30モル%以下、より好ましくは27モル%未満、更に好ましくは25モル%以下、特に好ましくは25モル%未満である。上記水酸基の含有率が上記下限以上であると、中間膜の接着力がより一層高くなる。特に、上記ポリビニルアセタール樹脂(2)の水酸基の含有率が20モル%以上であると反応効率が高く生産性に優れ、また27モル%未満であると、合わせガラスの遮音性がより一層高くなる。また、上記水酸基の含有率が上記上限以下であると、中間膜の柔軟性が高くなり、中間膜の取扱いが容易になる。
【0078】
上記ポリビニルアセタール樹脂(1)及び上記ポリビニルアセタール樹脂(3)の水酸基の各含有率は、好ましくは25モル%以上、より好ましくは28モル%以上、より好ましくは30モル%以上、より一層好ましくは31モル%を超え、更に好ましくは31.5モル%以上、更に一層好ましくは32モル%以上、特に好ましくは33モル%以上、好ましくは37モル%以下、より好ましくは36.5モル%以下、更に好ましくは36モル%以下である。上記水酸基の含有率が上記下限以上であると、中間膜の接着力がより一層高くなる。また、上記水酸基の含有率が上記上限以下であると、中間膜の柔軟性が高くなり、中間膜の取扱いが容易になる。
【0079】
合わせガラスの剛性を高くし、空隙が抑制された合わせガラスの製造効率を効果的に高める観点からは、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)及び上記ポリビニルアセタール樹脂(3)の水酸基の各含有率は、33モル%以上であることが特に好ましい。
【0080】
遮音性をより一層高める観点からは、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率及び上記ポリビニルアセタール樹脂(3)の水酸基の含有率はそれぞれ、上記ポリビニルアセタール樹脂(2)の水酸基の含有率よりも多いことが好ましい。遮音性を更に一層高める観点からは、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率と、上記ポリビニルアセタール樹脂(2)の水酸基の含有率との差の絶対値、及び、上記ポリビニルアセタール樹脂(3)の水酸基の含有率と、上記ポリビニルアセタール樹脂(2)の水酸基の含有率との差の絶対値はそれぞれ、好ましくは1モル%以上、より好ましくは5モル%以上、更に好ましくは9モル%以上、更に一層好ましくは9.5モル%以上、特に好ましくは10モル%以上、最も好ましくは12モル%以上である。上記ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率と、上記ポリビニルアセタール樹脂(2)の水酸基の含有率との差の絶対値、及び、上記ポリビニルアセタール樹脂(3)の水酸基の含有率と、上記ポリビニルアセタール樹脂(2)の水酸基の含有率との差の絶対値はそれぞれ、好ましくは20モル%以下である。
【0081】
合わせガラスの剛性を高くし、空隙が抑制された合わせガラスの製造効率を効果的に高める観点からは、上記ポリビニルアセタール樹脂(1)の水酸基の含有率は、上記ポリビニルアセタール樹脂(2)の水酸基の含有率よりも9.5モル%以上多いことが特に好ましい。空隙が抑制された合わせガラスの製造効率を効果的に高める観点からは、上記ポリビニルアセタール樹脂(3)の水酸基の含有率は、上記ポリビニルアセタール樹脂(2)の水酸基の含有率よりも9.5モル%以上多いことが特に好ましい。
【0082】
上記ポリビニルアセタール樹脂の水酸基の含有率は、水酸基が結合しているエチレン基量を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率で示した値である。上記水酸基が結合しているエチレン基量は、例えば、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠して、測定することにより求めることができる。
【0083】
上記ポリビニルアセタール樹脂(2)のアセチル化度(アセチル基量)は、好ましくは0.01モル%以上、より好ましくは0.1モル%以上、より一層好ましくは7モル%以上、更に好ましくは9モル%以上、好ましくは30モル%以下、より好ましくは25モル%以下、更に好ましくは24モル%以下、特に好ましくは20モル%以下である。上記アセチル化度が上記下限以上であると、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との相溶性が高くなる。上記アセチル化度が上記上限以下であると、中間膜及び合わせガラスの耐湿性が高くなる。特に、上記ポリビニルアセタール樹脂(2)のアセチル化度が0.1モル%以上、25モル%以下であると、耐貫通性に優れる。
【0084】
上記ポリビニルアセタール樹脂(1)及び上記ポリビニルアセタール樹脂(3)の各アセチル化度は、好ましくは0.01モル%以上、より好ましくは0.5モル%以上、好ましくは10モル%以下、より好ましくは2モル%以下である。上記アセチル化度が上記下限以上であると、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との相溶性が高くなる。上記アセチル化度が上記上限以下であると、中間膜及び合わせガラスの耐湿性が高くなる。
【0085】
上記アセチル化度は、アセチル基が結合しているエチレン基量を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率で示した値である。上記アセチル基が結合しているエチレン基量は、例えば、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠して測定できる。
【0086】
上記ポリビニルアセタール樹脂(2)のアセタール化度(ポリビニルブチラール樹脂の場合にはブチラール化度)は、好ましくは47モル%以上、より好ましくは60モル%以上、好ましくは85モル%以下、より好ましくは80モル%以下、更に好ましくは75モル%以下である。上記アセタール化度が上記下限以上であると、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との相溶性が高くなる。上記アセタール化度が上記上限以下であると、ポリビニルアセタール樹脂を製造するために必要な反応時間が短くなる。
【0087】
上記ポリビニルアセタール樹脂(1)及び上記ポリビニルアセタール樹脂(3)の各アセタール化度(ポリビニルブチラール樹脂の場合にはブチラール化度)は、好ましくは55モル%以上、より好ましくは60モル%以上、好ましくは75モル%以下、より好ましくは71モル%以下である。上記アセタール化度が上記下限以上であると、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との相溶性が高くなる。上記アセタール化度が上記上限以下であると、ポリビニルアセタール樹脂を製造するために必要な反応時間が短くなる。
【0088】
上記アセタール化度は、主鎖の全エチレン基量から、水酸基が結合しているエチレン基量と、アセチル基が結合しているエチレン基量とを差し引いた値を、主鎖の全エチレン基量で除算して求めたモル分率を百分率で示した値である。
【0089】
なお、上記水酸基の含有率(水酸基量)、アセタール化度(ブチラール化度)及びアセチル化度は、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により測定された結果から算出することが好ましい。但し、ASTM D1396-92による測定を用いてもよい。ポリビニルアセタール樹脂がポリビニルブチラール樹脂である場合は、上記水酸基の含有率(水酸基量)、上記アセタール化度(ブチラール化度)及び上記アセチル化度は、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により測定された結果から算出され得る。
【0090】
合わせガラスの耐貫通性をより一層良好にする観点からは、上記ポリビニルアセタール樹脂(2)は、アセチル化度(a)が8モル%未満であり、かつアセタール化度(a)が65モル%以上であるポリビニルアセタール樹脂(A)であるか、又はアセチル化度(b)が8モル%以上であるポリビニルアセタール樹脂(B)であることが好ましい。上記ポリビニルアセタール樹脂(1)及び上記ポリビニルアセタール樹脂(3)は、上記ポリビニルアセタール樹脂(A)であってもよく、上記ポリビニルアセタール樹脂(B)であってもよい。
【0091】
上記ポリビニルアセタール樹脂(A)のアセチル化度(a)は8モル%未満、好ましくは7.9モル%以下、より好ましくは7.8モル%以下、更に好ましくは6.5モル%以下、特に好ましくは6モル%以下、好ましくは0.1モル%以上、より好ましくは0.5モル%以上、更に好ましくは5モル%以上、特に好ましくは5.5モル%以上である。上記アセチル化度(a)が0.1モル%以上、8モル%未満であると、可塑剤の移行を容易に制御でき、合わせガラスの遮音性がより一層高くなる。
【0092】
上記ポリビニルアセタール樹脂(A)のアセタール化度(a)は65モル%以上、好ましくは66モル%以上、より好ましくは67モル%以上、更に好ましくは67.5モル%以上、特に好ましくは75モル%以上、好ましくは85モル%以下、より好ましくは84モル%以下、更に好ましくは83モル%以下、特に好ましくは82モル%以下である。上記アセタール化度(a)が上記下限以上であると、合わせガラスの遮音性がより一層高くなる。上記アセタール化度(a)が上記上限以下であると、ポリビニルアセタール樹脂(A)を製造するために必要な反応時間を短縮できる。
【0093】
上記ポリビニルアセタール樹脂(A)の水酸基の含有率(a)は好ましくは18モル%以上、より好ましくは19モル%以上、更に好ましくは20モル%以上、特に好ましくは21モル%以上、最も好ましくは23モル%以上、好ましくは31モル%以下、より好ましくは30モル%以下、更に好ましくは29モル%以下、特に好ましくは28モル%以下である。上記水酸基の含有率(a)が上記下限以上であると、上記第2の層の接着力がより一層高くなる。上記水酸基の含有率(a)が上記上限以下であると、合わせガラスの遮音性がより一層高くなる。
【0094】
上記ポリビニルアセタール樹脂(B)のアセチル化度(b)は、8モル%以上、好ましくは9モル%以上、より好ましくは9.5モル%以上、更に好ましくは10モル%以上、特に好ましくは10.5モル%以上、好ましくは30モル%以下、より好ましくは28モル%以下、更に好ましくは26モル%以下、特に好ましくは24モル%以下である。上記アセチル化度(b)が上記下限以上であると、合わせガラスの遮音性がより一層高くなる。上記アセチル化度(b)が上記上限以下であると、ポリビニルアセタール樹脂(B)を製造するために必要な反応時間を短縮できる。
【0095】
上記ポリビニルアセタール樹脂(B)のアセタール化度(b)は好ましくは50モル%以上、より好ましくは53モル%以上、更に好ましくは55モル%以上、特に好ましくは60モル%以上、好ましくは78モル%以下、より好ましくは75モル%以下、更に好ましくは72モル%以下、特に好ましくは70モル%以下である。上記アセタール化度(b)が上記下限以上であると、合わせガラスの遮音性がより一層高くなる。上記アセタール化度(b)が上記上限以下であると、ポリビニルアセタール樹脂(B)を製造するために必要な反応時間を短縮できる。
【0096】
上記ポリビニルアセタール樹脂(B)の水酸基の含有率(b)は好ましくは18モル%以上、より好ましくは19モル%以上、更に好ましくは20モル%以上、特に好ましくは21モル%以上、最も好ましくは23モル%以上、好ましくは31モル%以下、より好ましくは30モル%以下、更に好ましくは29モル%以下、特に好ましくは28モル%以下である。上記水酸基の含有率(b)が上記下限以上であると、上記第2の層の接着力がより一層高くなる。上記水酸基の含有率(b)が上記上限以下であると、合わせガラスの遮音性がより一層高くなる。
【0097】
上記ポリビニルアセタール樹脂(A)及び上記ポリビニルアセタール樹脂(B)はそれぞれ、ポリビニルブチラール樹脂であることが好ましい。
【0098】
(可塑剤)
上記第1の層(単層の中間膜を含む)は、可塑剤(以下、可塑剤(1)と記載することがある)を含むことが好ましい。上記第2の層は、可塑剤(以下、可塑剤(2)と記載することがある)を含むことが好ましい。上記第3の層は、可塑剤(以下、可塑剤(3)と記載することがある)を含むことが好ましい。可塑剤の使用により、またポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との併用により、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを含む層の合わせガラス部材又は他の層に対する接着力が適度に高くなる。上記可塑剤は特に限定されない。上記可塑剤(1)と上記可塑剤(2)と上記可塑剤(3)とは同一であってもよく、異なっていてもよい。上記可塑剤(1)、上記可塑剤(2)及び上記可塑剤(3)はそれぞれ、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0099】
上記可塑剤としては、一塩基性有機酸エステル及び多塩基性有機酸エステル等の有機エステル可塑剤、並びに有機リン酸可塑剤及び有機亜リン酸可塑剤などの有機リン酸可塑剤等が挙げられる。なかでも、有機エステル可塑剤が好ましい。上記可塑剤は液状可塑剤であることが好ましい。
【0100】
上記一塩基性有機酸エステルとしては、グリコールと一塩基性有機酸との反応によって得られたグリコールエステル等が挙げられる。上記グリコールとしては、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール及びトリプロピレングリコール等が挙げられる。上記一塩基性有機酸としては、酪酸、イソ酪酸、カプロン酸、2-エチル酪酸、ヘプチル酸、n-オクチル酸、2-エチルヘキシル酸、n-ノニル酸及びデシル酸等が挙げられる。
【0101】
上記多塩基性有機酸エステルとしては、多塩基性有機酸と、炭素数4~8の直鎖又は分岐構造を有するアルコールとのエステル化合物等が挙げられる。上記多塩基性有機酸としては、アジピン酸、セバシン酸及びアゼライン酸等が挙げられる。
【0102】
上記有機エステル可塑剤としては、トリエチレングリコールジ-2-エチルプロパノエート、トリエチレングリコールジ-2-エチルブチレート、トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート、トリエチレングリコールジカプリレート、トリエチレングリコールジ-n-オクタノエート、トリエチレングリコールジ-n-ヘプタノエート、テトラエチレングリコールジ-n-ヘプタノエート、ジブチルセバケート、ジオクチルアゼレート、ジブチルカルビトールアジペート、エチレングリコールジ-2-エチルブチレート、1,3-プロピレングリコールジ-2-エチルブチレート、1,4-ブチレングリコールジ-2-エチルブチレート、ジエチレングリコールジ-2-エチルブチレート、ジエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート、ジプロピレングリコールジ-2-エチルブチレート、トリエチレングリコールジ-2-エチルペンタノエート、テトラエチレングリコールジ-2-エチルブチレート、ジエチレングリコールジカプリレート、アジピン酸ジヘキシル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ヘキシルシクロヘキシル、アジピン酸ヘプチルとアジピン酸ノニルとの混合物、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ヘプチルノニル、セバシン酸ジブチル、油変性セバシン酸アルキド、及びリン酸エステルとアジピン酸エステルとの混合物等が挙げられる。これら以外の有機エステル可塑剤を用いてもよい。上述のアジピン酸エステル以外の他のアジピン酸エステルを用いてもよい。
【0103】
上記有機リン酸可塑剤としては、トリブトキシエチルホスフェート、イソデシルフェニルホスフェート及びトリイソプロピルホスフェート等が挙げられる。
【0104】
上記可塑剤は、下記式(1)で表されるジエステル可塑剤であることが好ましい。
【0105】
【化1】
【0106】
上記式(1)中、R1及びR2はそれぞれ、炭素数2~10の有機基を表し、R3は、エチレン基、イソプロピレン基又はn-プロピレン基を表し、pは3~10の整数を表す。上記式(1)中のR1及びR2はそれぞれ、炭素数5~10の有機基であることが好ましく、炭素数6~10の有機基であることがより好ましい。
【0107】
上記可塑剤は、トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート(3GO)、トリエチレングリコールジ-2-エチルブチレート(3GH)又はトリエチレングリコールジ-2-エチルプロパノエートを含むことが好ましく、トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート又はトリエチレングリコールジ-2-エチルブチレートを含むことがより好ましく、トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエートを含むことが更に好ましい。
【0108】
上記熱可塑性樹脂(1)100重量部(熱可塑性樹脂(1)がポリビニルアセタール樹脂(1)である場合には、ポリビニルアセタール樹脂(1)100重量部)に対する上記可塑剤(1)の含有量(以下、含有量(1)と記載することがある)、並びに上記熱可塑性樹脂(3)100重量部(熱可塑性樹脂(3)がポリビニルアセタール樹脂(3)である場合には、ポリビニルアセタール樹脂(3)100重量部)に対する上記可塑剤(3)の含有量(以下、含有量(3)と記載することがある)はそれぞれ、好ましくは10重量部以上、より好ましくは15重量部以上、更に好ましくは20重量部以上、更に一層好ましくは25重量部以上、特に好ましくは30重量部以上、好ましくは40重量部以下、より好ましくは39重量部以下、更に好ましくは35重量部以下、更に一層好ましくは34重量部以下、特に好ましくは33重量部以下である。上記含有量(1)及び上記含有量(3)が上記下限以上であると、中間膜の柔軟性が高くなり、中間膜の取扱いが容易になる。上記含有量(1)及び上記含有量(3)が上記上限以下であると、合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなる。
【0109】
合わせガラスの剛性を高くし、空隙が抑制された合わせガラスの製造効率を効果的に高める観点からは、上記含有量(1)は25重量部以上、35重量部以下であることが好ましい。空隙が抑制された合わせガラスの製造効率を効果的に高める観点からは、上記含有量(3)は25重量部以上、35重量部以下であることが好ましい。
【0110】
上記熱可塑性樹脂(2)100重量部(熱可塑性樹脂(2)がポリビニルアセタール樹脂(2)である場合には、ポリビニルアセタール樹脂(2)100重量部)に対する上記可塑剤(2)の含有量(以下、含有量(2)と記載することがある)は、好ましくは50重量部以上、より好ましくは55重量部以上、更に好ましくは60重量部以上、好ましくは100重量部以下、より好ましくは90重量部以下、更に好ましくは85重量部以下、特に好ましくは80重量部以下である。上記含有量(2)が上記下限以上であると、中間膜の柔軟性が高くなり、中間膜の取扱いが容易になる。上記含有量(2)が上記上限以下であると、合わせガラスの耐貫通性がより一層高くなる。
【0111】
合わせガラスの遮音性を高めるために、上記含有量(2)は上記含有量(1)よりも多いことが好ましく、上記含有量(2)は上記含有量(3)よりも多いことが好ましい。
【0112】
合わせガラスの遮音性をより一層高める観点からは、上記含有量(1)と上記含有量(2)との差の絶対値、並びに上記含有量(3)と上記含有量(2)との差の絶対値はそれぞれ、好ましくは10重量部以上、より好ましくは15重量部以上、更に好ましくは20重量部以上、特に好ましくは25重量部を超えることである。上記含有量(1)と上記含有量(2)との差の絶対値、並びに上記含有量(3)と上記含有量(2)との差の絶対値はそれぞれ、好ましくは80重量部以下、より好ましくは75重量部以下、更に好ましくは70重量部以下である。
【0113】
(フィラー)
上記第2の層はフィラーを含むことが好ましい。上記第1の層はフィラーを含んでいてもよい。上記第3の層はフィラーを含んでいてもよい。
【0114】
上記フィラーとしては、炭酸カルシウム粒子、及びシリカ粒子等が挙げられる。上記フィラーは、炭酸カルシウム粒子、又は、シリカ粒子であることが好ましく、シリカ粒子であることがより好ましい。フィラーの使用により、遮音性及び曲げ剛性が高くなり、更に各層間接着力も高くなる。上記フィラーは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0115】
上記シリカ粒子のBET法による比表面積は好ましくは50m/g以上、より好ましくは100m/g以上、更に好ましくは200m/g以上、特に好ましくは250m/g以上、最も好ましくは300m/g以上、好ましくは500m/g以下である。上記比表面積は、比表面積/細孔分布測定装置を用いてガス吸着法により測定できる。上記測定装置としては、例えば島津製作所社製「アサップ2420」等が挙げられる。
【0116】
上記第2の層において、上記熱可塑性樹脂(2)100重量部に対して、上記フィラーの含有量は、好ましくは2重量部以上、より好ましくは5重量部以上、更に好ましくは10重量部以上、好ましくは65重量部以下、より好ましくは60重量部以下、更に好ましくは50重量部以下、特に好ましくは30重量部以下である。上記フィラーの含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、各層間の接着力がより一層高くなり、曲げ剛性がより一層高くなる。上記フィラーの含有量が上記上限以下であると、遮音性がより一層高くなる。
【0117】
(遮熱性化合物)
上記中間膜は、遮熱性化合物を含むことが好ましい。上記第1の層は、遮熱性化合物を含むことが好ましい。上記第2の層は、遮熱性化合物を含むことが好ましい。上記第3の層は、遮熱性化合物を含むことが好ましい。上記遮熱性化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0118】
成分X:
上記中間膜は、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物及びアントラシアニン化合物の内の少なくとも1種の成分Xを含むことが好ましい。上記第1の層は、上記成分Xを含むことが好ましい。上記第2の層は、上記成分Xを含むことが好ましい。上記第3の層は、上記成分Xを含むことが好ましい。上記成分Xは遮熱性化合物である。上記成分Xは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0119】
上記成分Xは特に限定されない。成分Xとして、従来公知のフタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物及びアントラシアニン化合物を用いることができる。
【0120】
中間膜及び合わせガラスの遮熱性をより一層高くする観点からは、上記成分Xは、フタロシアニン、フタロシアニンの誘導体、ナフタロシアニン及びナフタロシアニンの誘導体からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、フタロシアニン及びフタロシアニンの誘導体の内の少なくとも1種であることがより好ましい。
【0121】
遮熱性を効果的に高め、かつ長期間にわたり可視光線透過率をより一層高いレベルで維持する観点からは、上記成分Xは、バナジウム原子又は銅原子を含有することが好ましい。上記成分Xは、バナジウム原子を含有することが好ましく、銅原子を含有することも好ましい。上記成分Xは、バナジウム原子又は銅原子を含有するフタロシアニン及びバナジウム原子又は銅原子を含有するフタロシアニンの誘導体の内の少なくとも1種であることがより好ましい。中間膜及び合わせガラスの遮熱性を更に一層高くする観点からは、上記成分Xは、バナジウム原子に酸素原子が結合した構造単位を有することが好ましい。
【0122】
上記成分Xを含む層(第1の層、第2の層又は第3の層)100重量%中、上記成分Xの含有量は、好ましくは0.001重量%以上、より好ましくは0.005重量%以上、更に好ましくは0.01重量%以上、特に好ましくは0.02重量%以上、好ましくは0.2重量%以下、より好ましくは0.1重量%以下、更に好ましくは0.05重量%以下、特に好ましくは0.04重量%以下である。上記成分Xの含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、遮熱性が充分に高くなり、かつ可視光線透過率が充分に高くなる。例えば、可視光線透過率を70%以上にすることが可能である。
【0123】
遮熱粒子:
上記中間膜は、遮熱粒子を含むことが好ましい。上記第1の層は、上記遮熱粒子を含むことが好ましい。上記第2の層は、上記遮熱粒子を含むことが好ましい。上記第3の層は、上記遮熱粒子を含むことが好ましい。上記遮熱粒子は遮熱性化合物である。遮熱粒子の使用により、赤外線(熱線)を効果的に遮断できる。上記遮熱粒子は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0124】
合わせガラスの遮熱性をより一層高める観点からは、上記遮熱粒子は、金属酸化物粒子であることがより好ましい。上記遮熱粒子は、金属の酸化物により形成された粒子(金属酸化物粒子)であることが好ましい。
【0125】
可視光よりも長い波長780nm以上の赤外線は、紫外線と比較して、エネルギー量が小さい。しかしながら、赤外線は熱的作用が大きく、赤外線が物質に吸収されると熱として放出される。このため、赤外線は一般に熱線と呼ばれている。上記遮熱粒子の使用により、赤外線(熱線)を効果的に遮断できる。なお、遮熱粒子とは、赤外線を吸収可能な粒子を意味する。
【0126】
上記遮熱粒子の具体例としては、アルミニウムドープ酸化錫粒子、インジウムドープ酸化錫粒子、アンチモンドープ酸化錫粒子(ATO粒子)、ガリウムドープ酸化亜鉛粒子(GZO粒子)、インジウムドープ酸化亜鉛粒子(IZO粒子)、アルミニウムドープ酸化亜鉛粒子(AZO粒子)、ニオブドープ酸化チタン粒子、ナトリウムドープ酸化タングステン粒子、セシウムドープ酸化タングステン粒子、タリウムドープ酸化タングステン粒子、ルビジウムドープ酸化タングステン粒子、錫ドープ酸化インジウム粒子(ITO粒子)、錫ドープ酸化亜鉛粒子、珪素ドープ酸化亜鉛粒子等の金属酸化物粒子や、六ホウ化ランタン(LaB)粒子等が挙げられる。これら以外の遮熱粒子を用いてもよい。なかでも、熱線の遮蔽機能が高いため、金属酸化物粒子が好ましく、ATO粒子、GZO粒子、IZO粒子、ITO粒子又は酸化タングステン粒子がより好ましく、ITO粒子又は酸化タングステン粒子が特に好ましい。特に、熱線の遮蔽機能が高く、かつ入手が容易であるので、錫ドープ酸化インジウム粒子(ITO粒子)が好ましく、酸化タングステン粒子も好ましい。
【0127】
中間膜及び合わせガラスの遮熱性をより一層高くする観点からは、酸化タングステン粒子は、金属ドープ酸化タングステン粒子であることが好ましい。上記「酸化タングステン粒子」には、金属ドープ酸化タングステン粒子が含まれる。上記金属ドープ酸化タングステン粒子としては、具体的には、ナトリウムドープ酸化タングステン粒子、セシウムドープ酸化タングステン粒子、タリウムドープ酸化タングステン粒子及びルビジウムドープ酸化タングステン粒子等が挙げられる。
【0128】
中間膜及び合わせガラスの遮熱性をより一層高くする観点からは、セシウムドープ酸化タングステン粒子が特に好ましい。中間膜及び合わせガラスの遮熱性を更に一層高くする観点からは、該セシウムドープ酸化タングステン粒子は、式:Cs0.33WOで表される酸化タングステン粒子であることが好ましい。
【0129】
上記遮熱粒子の平均粒子径は好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.02μm以上、好ましくは0.1μm以下、より好ましくは0.05μm以下である。平均粒子径が上記下限以上であると、熱線の遮蔽性が充分に高くなる。平均粒子径が上記上限以下であると、遮熱粒子の分散性が高くなる。
【0130】
上記「平均粒子径」は、体積平均粒子径を示す。平均粒子径は、粒度分布測定装置(日機装社製「UPA-EX150」)等を用いて測定できる。
【0131】
上記遮熱粒子を含む層(第1の層、第2の層又は第3の層)100重量%中、上記遮熱粒子の含有量は、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上、更に好ましくは1重量%以上、特に好ましくは1.5重量%以上、好ましくは6重量%以下、より好ましくは5.5重量%以下、更に好ましくは4重量%以下、特に好ましくは3.5重量%以下、最も好ましくは3重量%以下である。上記遮熱粒子の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、遮熱性が充分に高くなり、かつ可視光線透過率が充分に高くなる。
【0132】
(金属塩)
上記中間膜は、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩の内の少なくとも1種の金属塩(以下、金属塩Mと記載することがある)を含むことが好ましい。上記第1の層は、上記金属塩Mを含むことが好ましい。上記第2の層は、上記金属塩Mを含むことが好ましい。上記第3の層は、上記金属塩Mを含むことが好ましい。上記金属塩Mの使用により、中間膜と合わせガラス部材との接着性を制御することが容易になる。上記金属塩Mは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0133】
上記金属塩Mは、Li、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr及びBaからなる群から選択された少なくとも1種の金属を含むことが好ましい。中間膜中に含まれている金属塩は、K及びMgの内の少なくとも1種の金属を含むことが好ましい。
【0134】
また、上記金属塩Mは、炭素数2~16の有機酸のアルカリ金属塩又は炭素数2~16の有機酸のアルカリ土類金属塩であることがより好ましく、炭素数2~16のカルボン酸マグネシウム塩又は炭素数2~16のカルボン酸カリウム塩であることが更に好ましい。
【0135】
上記炭素数2~16のカルボン酸マグネシウム塩及び上記炭素数2~16のカルボン酸カリウム塩としては特に限定されないが、例えば、酢酸マグネシウム、酢酸カリウム、プロピオン酸マグネシウム、プロピオン酸カリウム、2-エチル酪酸マグネシウム、2-エチルブタン酸カリウム、2-エチルヘキサン酸マグネシウム及び2-エチルヘキサン酸カリウム等が挙げられる。
【0136】
上記金属塩Mを含む層(第1の層、第2の層又は第3の層)におけるMg及びKの含有量の合計は、好ましくは5ppm以上、より好ましくは10ppm以上、更に好ましくは20ppm以上、好ましくは300ppm以下、より好ましくは250ppm以下、更に好ましくは200ppm以下である。Mg及びKの含有量の合計が上記下限以上及び上記上限以下であると、中間膜と合わせガラス部材との接着性をより一層良好に制御できる。
【0137】
(紫外線遮蔽剤)
上記中間膜は、紫外線遮蔽剤を含むことが好ましい。上記第1の層は、紫外線遮蔽剤を含むことが好ましい。上記第2の層は、紫外線遮蔽剤を含むことが好ましい。上記第3の層は、紫外線遮蔽剤を含むことが好ましい。紫外線遮蔽剤の使用により、中間膜及び合わせガラスが長期間使用されても、可視光線透過率がより一層低下し難くなる。上記紫外線遮蔽剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0138】
上記紫外線遮蔽剤には、紫外線吸収剤が含まれる。上記紫外線遮蔽剤は、紫外線吸収剤であることが好ましい。
【0139】
上記紫外線遮蔽剤としては、例えば、金属原子を含む紫外線遮蔽剤、金属酸化物を含む紫外線遮蔽剤、ベンゾトリアゾール構造を有する紫外線遮蔽剤、ベンゾフェノン構造を有する紫外線遮蔽剤、トリアジン構造を有する紫外線遮蔽剤、マロン酸エステル構造を有する紫外線遮蔽剤、シュウ酸アニリド構造を有する紫外線遮蔽剤及びベンゾエート構造を有する紫外線遮蔽剤等が挙げられる。
【0140】
上記金属原子を含む紫外線遮蔽剤としては、例えば、白金粒子、白金粒子の表面をシリカで被覆した粒子、パラジウム粒子及びパラジウム粒子の表面をシリカで被覆した粒子等が挙げられる。紫外線遮蔽剤は、遮熱粒子ではないことが好ましい。
【0141】
上記紫外線遮蔽剤は、好ましくはベンゾトリアゾール構造を有する紫外線遮蔽剤、ベンゾフェノン構造を有する紫外線遮蔽剤、トリアジン構造を有する紫外線遮蔽剤又はベンゾエート構造を有する紫外線遮蔽剤であり、より好ましくはベンゾトリアゾール構造を有する紫外線遮蔽剤又はベンゾフェノン構造を有する紫外線遮蔽剤であり、更に好ましくはベンゾトリアゾール構造を有する紫外線遮蔽剤である。
【0142】
上記金属酸化物を含む紫外線遮蔽剤としては、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン及び酸化セリウム等が挙げられる。さらに、上記金属酸化物を含む紫外線遮蔽剤に関して、表面が被覆されていてもよい。上記金属酸化物を含む紫外線遮蔽剤の表面の被覆材料としては、絶縁性金属酸化物、加水分解性有機ケイ素化合物及びシリコーン化合物等が挙げられる。
【0143】
上記ベンゾトリアゾール構造を有する紫外線遮蔽剤としては、例えば、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール(BASF社製「TinuvinP」)、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール(BASF社製「Tinuvin320」)、2-(2’-ヒドロキシ-3’-t-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール(BASF社製「Tinuvin326」)、及び2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール(BASF社製「Tinuvin328」)等のベンゾトリアゾール構造を有する紫外線遮蔽剤が挙げられる。紫外線を吸収する性能に優れることから、上記紫外線遮蔽剤は、ハロゲン原子を含むベンゾトリアゾール構造を有する紫外線遮蔽剤であることが好ましく、塩素原子を含むベンゾトリアゾール構造を有する紫外線遮蔽剤であることがより好ましい。
【0144】
上記ベンゾフェノン構造を有する紫外線遮蔽剤としては、例えば、オクタベンゾン(BASF社製「Chimassorb81」)等が挙げられる。
【0145】
上記トリアジン構造を有する紫外線遮蔽剤としては、例えば、ADEKA社製「LA-F70」及び2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[(ヘキシル)オキシ]-フェノール(BASF社製「Tinuvin1577FF」)等が挙げられる。
【0146】
上記マロン酸エステル構造を有する紫外線遮蔽剤としては、2-(p-メトキシベンジリデン)マロン酸ジメチル、テトラエチル-2,2-(1,4-フェニレンジメチリデン)ビスマロネート、2-(p-メトキシベンジリデン)-ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル4-ピペリジニル)マロネート等が挙げられる。
【0147】
上記マロン酸エステル構造を有する紫外線遮蔽剤の市販品としては、Hostavin B-CAP、Hostavin PR-25、Hostavin PR-31(いずれもクラリアント社製)が挙げられる。
【0148】
上記シュウ酸アニリド構造を有する紫外線遮蔽剤としては、N-(2-エチルフェニル)-N’-(2-エトキシ-5-t-ブチルフェニル)シュウ酸ジアミド、N-(2-エチルフェニル)-N’-(2-エトキシ-フェニル)シュウ酸ジアミド、2-エチル-2’-エトキシ-オキシアニリド(クラリアント社製「SanduvorVSU」)などの窒素原子上に置換されたアリール基などを有するシュウ酸ジアミド類が挙げられる。
【0149】
上記ベンゾエート構造を有する紫外線遮蔽剤としては、例えば、2,4-ジ-tert-ブチルフェニル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート(BASF社製「Tinuvin120」)等が挙げられる。
【0150】
期間経過後の可視光線透過率の低下をより一層抑制する観点からは、上記紫外線遮蔽剤を含む層(第1の層、第2の層又は第3の層)100重量%中、上記紫外線遮蔽剤の含有量は、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.2重量%以上、更に好ましくは0.3重量%以上、特に好ましくは0.5重量%以上、好ましくは2.5重量%以下、より好ましくは2重量%以下、更に好ましくは1重量%以下、特に好ましくは0.8重量%以下である。特に、上記紫外線遮蔽剤を含む層100重量%中、上記紫外線遮蔽剤の含有量が0.2重量%以上であることにより、中間膜及び合わせガラスの期間経過後の可視光線透過率の低下を顕著に抑制できる。
【0151】
(酸化防止剤)
上記中間膜は、酸化防止剤を含むことが好ましい。上記第1の層は、酸化防止剤を含むことが好ましい。上記第2の層は、酸化防止剤を含むことが好ましい。上記第3の層は、酸化防止剤を含むことが好ましい。上記酸化防止剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0152】
上記酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤及びリン系酸化防止剤等が挙げられる。上記フェノール系酸化防止剤はフェノール骨格を有する酸化防止剤である。上記硫黄系酸化防止剤は硫黄原子を含有する酸化防止剤である。上記リン系酸化防止剤はリン原子を含有する酸化防止剤である。
【0153】
上記酸化防止剤は、フェノール系酸化防止剤又はリン系酸化防止剤であることが好ましい。
【0154】
上記フェノール系酸化防止剤としては、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール、ステアリル-β-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’-メチレンビス-(4-メチル-6-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス-(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデン-ビス-(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、1,1,3-トリス-(2-メチル-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、テトラキス[メチレン-3-(3’,5’-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、1,3,3-トリス-(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェノール)ブタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ビス(3,3’-t-ブチルフェノール)ブチリックアッシドグリコールエステル及びビス(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルベンゼンプロパン酸)エチレンビス(オキシエチレン)等が挙げられる。これらの酸化防止剤の内の1種又は2種以上が好適に用いられる。
【0155】
上記リン系酸化防止剤としては、トリデシルホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリノニルフェニルホスファイト、ビス(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(デシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4-ジ-t-ブチル-6-メチルフェニル)エチルエステル亜リン酸、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、及び2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチル-1-フェニルオキシ)(2-エチルヘキシルオキシ)ホスホラス等が挙げられる。これらの酸化防止剤の内の1種又は2種以上が好適に用いられる。
【0156】
上記酸化防止剤の市販品としては、例えばBASF社製「IRGANOX 245」、BASF社製「IRGAFOS 168」、BASF社製「IRGAFOS 38」、住友化学工業社製「スミライザーBHT」、並びにBASF社製「IRGANOX 1010」等が挙げられる。
【0157】
中間膜及び合わせガラスの高い可視光線透過率を長期間に渡り維持するために、上記中間膜100重量%中又は酸化防止剤を含む層(第1の層、第2の層又は第3の層)100重量%中、上記酸化防止剤の含有量は0.1重量%以上であることが好ましい。また、酸化防止剤の添加効果が飽和するので、上記中間膜100重量%中又は上記酸化防止剤を含む層100重量%中、上記酸化防止剤の含有量は2重量%以下であることが好ましい。
【0158】
(他の成分)
上記第1の層、上記第2の層及び上記第3の層はそれぞれ、必要に応じて、ケイ素、アルミニウム又はチタンを含むカップリング剤、分散剤、界面活性剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料、染料、接着力調整剤、耐湿剤、蛍光増白剤及び赤外線吸収剤等の添加剤を含んでいてもよい。これらの添加剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0159】
(合わせガラス用中間膜の他の詳細)
中間膜の剛性を高くし、合わせガラスの製造効率を効果的に高める観点から、上記第1の層の軟化点は60℃以上である。中間膜の剛性をより一層高くし、空隙が抑制された合わせガラスの製造効率を効果的に高める観点からは、上記第1の層の軟化点は好ましくは61.5℃以上、より好ましくは62.5℃以上、より一層好ましくは64℃以上、更に好ましくは65℃以上、更に一層好ましくは66℃以上、特に好ましくは70℃以上である。中間膜の剛性をより一層高くし、空隙が抑制された合わせガラスの製造効率を効果的に高める観点からは、上記第3の層の軟化点は好ましくは58℃以上、より好ましくは60℃以上、より一層好ましくは61.5℃以上、更に好ましくは62.5℃以上、更に好ましくは64℃以上、更に好ましくは65℃以上、更に一層好ましくは66℃以上、最も好ましくは70℃以上である。上記第1の層及び上記第3の層のそれぞれの軟化点の上限は特に限定されない。上記第1の層及び上記第3の層のそれぞれの軟化点は好ましくは80℃以下、より好ましくは78℃以下、更に好ましくは76℃以下、特に好ましくは75℃以下である。
【0160】
中間膜の剛性をより一層高くし、空隙が抑制された合わせガラスの製造効率を効果的に高める観点からは、上記第1の層及び上記第3の層のそれぞれのガラス転移温度は好ましくは31℃以上、より好ましくは35℃以上、更に好ましくは38℃以上である。上記第1の層及び上記第3の層のそれぞれのガラス転移温度の上限は特に限定されない。上記第1の層及び上記第3の層のそれぞれのガラス転移温度は好ましくは48℃以下である。
【0161】
上記軟化点及び上記ガラス転移温度は以下のようにして測定される。
【0162】
得られた中間膜を温度23℃、湿度30%で1ヶ月以上、又は、1ヶ月保管した後に、中間膜が多層の場合は第1の層及び第3の層を剥がすことによって単離し、プレス成型機でプレス成型した測定対象物について、TAINSTRUMENTS社製「ARES-G2」を用いて測定を行う。なお、中間膜が単層の場合は直径8mmに切断し、測定を行う。治具として、直径8mmのパラレルプレートを用い、3℃/分の降温速度で100℃から-10℃まで温度を低下させる条件、及び周波数1Hz及び歪1%の条件で測定を行う。得られた測定結果において、損失正接のピーク温度をガラス転移温度Tg(℃)とする。100℃からTg(℃)の間の温度領域において損失正接の値が極小となる温度を軟化点とする。得られた中間膜を温度23℃、湿度30%で保管する期間は1ヶ月以上であれば特に限定されないが、1ヵ月であることが好ましい。また、測定対象物の厚みは特に限定されないが、例えば、厚みが300~800μmの範囲内であることが好ましい。
【0163】
上記中間膜の厚みは特に限定されない。実用面の観点、並びに合わせガラスの耐貫通性を充分に高める観点からは、中間膜の厚みは、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.25mm以上、好ましくは3mm以下、より好ましくは1.5mm以下である。中間膜の厚みが上記下限以上であると、合わせガラスの耐貫通性が高くなる。中間膜の厚みが上記上限以下であると、中間膜の透明性がより一層良好になる。
【0164】
上記中間膜は、溶融押出成形により得られることが好ましい。
【0165】
上記中間膜の製造方法としては特に限定されない。上記中間膜の製造方法としては、単層の中間膜の場合に、樹脂組成物を押出機を用いて押出する方法が挙げられる。上記中間膜の製造方法としては、多層の中間膜の場合に、各層を形成するための各樹脂組成物を用いて各層をそれぞれ形成した後に、例えば、得られた各層を積層する方法、並びに各層を形成するための各樹脂組成物を押出機を用いて共押出することにより、各層を積層する方法等が挙げられる。連続的な生産に適しているため、押出成形する製造方法が好ましい。
【0166】
中間膜の製造効率が優れることから、上記第1の層と上記第3の層とに、同一のポリビニルアセタール樹脂が含まれていることが好ましく、上記第1の層と上記第3の層とに、同一のポリビニルアセタール樹脂及び同一の可塑剤が含まれていることがより好ましく、上記第1の層と上記第3の層とが同一の樹脂組成物により形成されていることが更に好ましい。また、上記中間膜の断面形状は矩形であってもよく、楔形であってもよい。
【0167】
上記中間膜の表面にエンボスを付与することが好ましい。上記中間膜の最表面の軟化点が高いと、エンボスを付与することが困難な場合や、合わせガラスの製造工程においてエンボスが潰れず、合わせガラスに発泡が生じる場合があるが、エンボスを付与する際に、中間膜の温度、プレス圧力、又は、エンボスロールの温度を適宜調整することにより、適切なエンボスを付与することができる。また、上記中間膜の最表面の軟化点が高いと、中間膜同士や、上記中間膜とガラス板との間における摩擦が生じにくくなるという問題があるが、適切なエンボスを付与することにより、上記の問題を解決することができる。
【0168】
(合わせガラス)
図3は、図1に示す合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスの一例を模式的に示す断面図である。
【0169】
図3に示す合わせガラス31は、第1の合わせガラス部材21と、第2の合わせガラス部材22と、中間膜11とを備える。中間膜11は、第1の合わせガラス部材21と第2の合わせガラス部材22との間に配置されており、挟み込まれている。
【0170】
中間膜11の第1の表面11aに、第1の合わせガラス部材21が積層されている。中間膜11の第1の表面11aとは反対の第2の表面11bに、第2の合わせガラス部材22が積層されている。第1の層1の外側の表面1aに第1の合わせガラス部材21が積層されている。第3の層3の外側の表面3aに第2の合わせガラス部材22が積層されている。
【0171】
図4は、図2に示す合わせガラス用中間膜を用いた合わせガラスの一例を模式的に示す断面図である。
【0172】
図4に示す合わせガラス31Aは、第1の合わせガラス部材21と、第2の合わせガラス部材22と、中間膜11Aとを備える。中間膜11Aは、第1の合わせガラス部材21と第2の合わせガラス部材22との間に配置されており、挟み込まれている。
【0173】
中間膜11Aの第1の表面11aに、第1の合わせガラス部材21が積層されている。中間膜11Aの第1の表面11aとは反対の第2の表面11bに、第2の合わせガラス部材22が積層されている。
【0174】
このように、上記合わせガラスは、第1の合わせガラス部材と、第2の合わせガラス部材と、中間膜とを備えており、該中間膜が、本発明に係る合わせガラス用中間膜である。上記合わせガラスでは、上記第1の合わせガラス部材と上記第2の合わせガラス部材との間に、上記中間膜が配置されている。
【0175】
上記合わせガラス部材としては、ガラス板及びPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム等が挙げられる。合わせガラスには、2枚のガラス板の間に中間膜が挟み込まれている合わせガラスだけでなく、ガラス板とPETフィルム等との間に中間膜が挟み込まれている合わせガラスも含まれる。上記合わせガラスは、ガラス板を備えた積層体であり、少なくとも1枚のガラス板が用いられていることが好ましい。上記第1の合わせガラス部材及び上記第2の合わせガラス部材がそれぞれ、ガラス板又はPETフィルムであり、かつ上記合わせガラスは、上記第1の合わせガラス部材及び上記第2の合わせガラス部材の内の少なくとも一方として、ガラス板を備えることが好ましい。上記第1の合わせガラス部材及び上記第2の合わせガラス部材の双方が、ガラス板(第1のガラス板及び第2のガラス板)であることが好ましい。上記中間膜は、第1のガラス板と第2のガラス板との間に配置されて、合わせガラスを得るために好適に用いられる。
【0176】
上記ガラス板としては、無機ガラス及び有機ガラスが挙げられる。上記無機ガラスとしては、フロート板ガラス、熱線吸収板ガラス、熱線反射板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、及び線入り板ガラス等が挙げられる。上記有機ガラスは、無機ガラスに代用される合成樹脂ガラスである。上記有機ガラスとしては、ポリカーボネート板及びポリ(メタ)アクリル樹脂板等が挙げられる。上記ポリ(メタ)アクリル樹脂板としては、ポリメチル(メタ)アクリレート板等が挙げられる。
【0177】
上記合わせガラス部材の厚みは、好ましくは1mm以上、好ましくは5mm以下、より好ましくは3mm以下、更に好ましくは1.8mm以下である。また、上記合わせガラス部材がガラス板である場合に、該ガラス板の厚みは、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは0.7mm以上、好ましくは5mm以下、より好ましくは3mm以下である。上記合わせガラス部材がPETフィルムである場合に、該PETフィルムの厚みは、好ましくは0.03mm以上、好ましくは0.5mm以下である。上記合わせガラス部材は平板ガラスであってもよく、湾曲ガラスであってもよいが、上記合わせガラス部材の厚みが、例えば、1.8mm以下である場合は、湾曲ガラスを用いることにより、合わせガラスの剛性を高めることができる。また、軟化点が高い中間膜は、湾曲ガラスの湾曲形状に一致させることが困難なことがあるが、中間膜にエンボスを付与することにより、湾曲ガラスの湾曲形状に中間膜を一致させることが容易になる。
【0178】
上記合わせガラスの製造方法は特に限定されない。例えば、上記第1の合わせガラス部材と上記第2の合わせガラス部材との間に、中間膜を挟んで、押圧ロールに通したり、又はゴムバッグに入れて減圧吸引したりして、上記第1の合わせガラス部材と上記第2の合わせガラス部材と中間膜との間に残留する空気を脱気する。その後、約70~110℃で予備接着して積層体を得る。次に、積層体をオートクレーブに入れたり、又はプレスしたりして、約120~150℃及び1~1.5MPaの圧力で圧着する。このようにして、合わせガラスを得ることができる。上記合わせガラスの製造時に、第1の層と第2の層と第3の層とを積層してもよい。
【0179】
上記中間膜及び上記合わせガラスは、自動車、鉄道車両、航空機、船舶及び建築物等に使用できる。上記中間膜及び上記合わせガラスは、これらの用途以外にも使用できる。上記中間膜及び上記合わせガラスは、車両用又は建築用の中間膜及び合わせガラスであることが好ましく、車両用の中間膜及び合わせガラスであることがより好ましい。上記中間膜及び上記合わせガラスは、自動車のフロントガラス、サイドガラス、リアガラス又はルーフガラス等に使用できる。上記中間膜及び上記合わせガラスは、自動車に好適に用いられる。上記中間膜は、自動車の合わせガラスを得るために用いられる。
【0180】
透明性により一層優れた合わせガラスを得る観点からは、合わせガラスの上記可視光線透過率は、好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上である。合わせガラスの可視光線透過率は、JIS R3211(1998)に準拠して測定できる。本発明の合わせガラス用中間膜を、JIS R3208に準拠した、厚さ2mmの2枚のグリーンガラス(熱線吸収板ガラス)の間に挟み込むことにより得られた合わせガラスの可視光線透過率は70%以上であることが好ましい。可視光線透過率は、より好ましくは75%以上である。
【0181】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明する。本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0182】
(ポリビニルアセタール樹脂)
下記の表1~4に示すポリビニルアセタール樹脂を適宜用いた。用いたポリビニルアセタール樹脂では全て、アセタール化に、炭素数4のn-ブチルアルデヒドが用いられている。
【0183】
ポリビニルアセタール樹脂に関しては、アセタール化度(ブチラール化度)、アセチル化度及び水酸基の含有率はJIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法により測定した。なお、ASTM D1396-92により測定した場合も、JIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」に準拠した方法と同様の数値を示した。
【0184】
(可塑剤)
トリエチレングリコールジ-2-エチルヘキサノエート(3GO)
【0185】
(フィラー)
種類(1)(下記表において(1)と記載する):Nipgel AZ201(シリカ粒子、東ソー・シリカ社製、BET法による比表面積300m/g)
種類(2)(下記表において(2)と記載する):AEROSIL380(シリカ粒子、日本アエロジル社製、BET法による比表面積380±30m/g)
種類(3)(下記表において(3)と記載する):Nipgel AZ204(シリカ粒子、東ソー・シリカ社製、BET法による比表面積300m/g)
種類(4)(下記表において(4)と記載する):SYLYSIA 310P(シリカ粒子、富士シリシア化学社製、BET法による比表面積300m/g)
【0186】
(紫外線遮蔽剤)
Tinuvin326(2-(2’-ヒドロキシ-3’-t-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、BASF社製「Tinuvin326」)
【0187】
(酸化防止剤)
BHT(2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール)
【0188】
(実施例1)
第1の層及び第3の層を形成するための組成物の作製:
下記の表1に示す種類のポリビニルアセタール樹脂100重量部と、可塑剤(3GO)31重量部と、紫外線遮蔽剤(Tinuvin326)0.2重量部と、酸化防止剤(BHT)0.2重量部とを混合し、第1の層及び第3の層を形成するための組成物を得た。
【0189】
第2の層を形成するための組成物の作製:
下記の表1に示す種類のポリビニルアセタール樹脂100重量部と、可塑剤(3GO)60重量部と、フィラー(Nipgel AZ201)20重量部と、紫外線遮蔽剤(Tinuvin326)0.2重量部と、酸化防止剤(BHT)0.2重量部とを混合し、第2の層を形成するための組成物を得た。
【0190】
中間膜の作製:
第1の層及び第3の層を形成するための組成物と、第2の層を形成するための組成物とを、共押出機を用いて共押出しすることにより、第1の層(厚み340μm)/第2の層(厚み100μm)/第3の層(厚み340μm)の積層構造を有する中間膜(厚み780μm)を作製した。
【0191】
なお、共押出の条件は以下のとおりであった。共押出機に使用する金型出口と、金型に最も近い第1ロールの接触点との距離を12cm、金型出口と第1ロールとの間の中間膜の線速を0.6m/分、中間膜の温度を175℃となるように調整した。第1ロール及び第2ロール(冷却用ロール)を通過させることにより、中間膜の温度を25℃に冷却した。更に、中間膜を、第3ロール(温度調整ロール)を通過させることにより、中間膜の温度が90℃となるように調整し、135℃に温度調整された第4ロール(例えば、エンボス賦型用ロール)を通過させた。第3ロールに対する第4ロールの速度比を1.45倍に調整した。第4ロールを通過した後に、中間膜を、第5ロール(冷却用ロール)を通過させることにより、中間膜の温度を25℃に調整した後に、中間膜を線速0.9m/分で芯に巻き取った。なお、中間膜を芯に巻き取る前に、TD方向の長さが150cmであった中間膜のそれぞれの端部を、それぞれの端部から25cm切断し、TD方向の長さが100cmである中間膜を芯に巻き取った。
【0192】
(実施例2~4)
第1の層及び第3の層を形成するための組成物、第2の層を形成するための組成物の配合成分の種類及び配合量、並びに、第1の層、第2の層及び第3の層の厚みを下記の表1に示すように設定し、第1の層、第2の層及び第3の層の厚みを下記の表1に示すように設定したこと以外は実施例1と同様にして、中間膜を作製した。
【0193】
(比較例1)
第3ロールを中間膜が通過した際に、中間膜の温度が100℃となるように調整し、第3ロールに対する第4ロールの速度比を1.48倍とした以外は実施例1と同様の条件で中間膜を得た。
【0194】
(実施例5~15、21~26)
第1の層及び第3の層を形成するための組成物、第2の層を形成するための組成物の配合成分の種類及び配合量、並びに、第1の層、第2の層及び第3の層の厚みを下記の表2~4に示すように設定したこと以外は実施例1と同様にして、中間膜を作製した。なお、共押出の条件は、実施例1と同じである。
【0195】
(実施例16~20)
第1の層及び第3の層を形成するための組成物、第2の層を形成するための組成物の配合成分の種類及び配合量を下記の表3~4に示すように設定し、中間膜を作製するための組成物を作製した。
【0196】
なお、共押出の条件は以下のとおりとし、第1の層、第2の層及び第3の層の厚みを下記の表3~4に示すように設定した中間膜を作製した。共押出機に使用する金型出口と、金型に最も近い第1ロールの接触点との距離を12cm、金型出口と第1ロールとの間の中間膜の線速を0.6m/分、中間膜の温度を175℃となるように調整した。第1ロール及び第2ロール(冷却用ロール)を通過させることにより、中間膜の温度を25℃に冷却した。更に、中間膜を、第3ロール(温度調整ロール)を通過させることにより、中間膜の温度が90℃となるように調整し、135℃に温度調整された第4ロール(例えば、エンボス賦型用ロール)を通過させた。第3ロールに対する第4ロールの速度比を1.2倍に調整した。第4ロールを通過した後に、中間膜を、第5ロール(冷却用ロール)を通過させることにより、中間膜の温度を25℃に調整した後に、第5ロールを通過した後に、中間膜を110℃で2分間アニールした。中間膜を線速0.7m/分で芯に巻き取った。なお、中間膜を芯に巻き取る前に、TD方向の長さが150cmであった中間膜のそれぞれの端部を、それぞれの端部から25cm切断し、TD方向の長さが100cmである中間膜を芯に巻き取った。
【0197】
なお、表1~4では、紫外線遮蔽剤及び酸化防止剤の含有量の記載を省略した。実施例2~26及び比較例1では、第1の層及び第3の層を形成するための組成物において、ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して、実施例1と同じ紫外線遮蔽剤及び酸化防止剤を0.2重量部で配合し、第2の層を形成するための組成物において、ポリビニルアセタール樹脂100重量部に対して、実施例1と同じ紫外線遮蔽剤及び酸化防止剤を0.2重量部で配合した。
【0198】
(評価)
(1)軟化点及びガラス転移温度
得られた中間膜を温度23℃、湿度30%で1ヶ月間保管した後に、表面層(第1の層及び第3の層)を剥がすことによって単離し、プレス成型機でプレス成型した測定対象物について、TAINSTRUMENTS社製「ARES-G2」を用いて測定を行った。治具として、直径8mmのパラレルプレートを用い、3℃/分の降温速度で100℃から-10℃まで温度を低下させる条件、及び周波数1Hz及び歪1%の条件で測定した。得られた測定結果において、損失正接のピーク温度をガラス転移温度Tg(℃)とした。また、100℃からTg(℃)の間の温度領域において損失正接の値が極小となる温度を軟化点とした。なお、単離された表面層をプレス成型機でプレス成型する際に測定対象物の厚みを800μmに制御しても同様の結果が得られた。
【0199】
(2)熱収縮率
上述した方法により、TD方向の一端から内側に向かって0.05Xの距離部分である5cm角の部分の中間膜A1(試験片)、TD方向の他端から内側に向かって0.05Xの距離部分である5cm角の部分の中間膜A2(試験片)、及び、中間膜のTD方向の一端及び他端のそれぞれから内側に向かって0.5Xの距離部分である5cm角の部分の中間膜A3(試験片)を得て、上述した方法により熱収縮率を測定した。
【0200】
(3)空隙の形成
得られた中間膜を、2枚のクリアガラス(縦2.5cm×横30.5cm×厚み2mm)(縦方向が中間膜のMD方向に対応)の間に挟み込み、積層体を得た。中間膜のトリム部分が5mmとなるように、中間膜を切断した。このとき、2枚のクリアガラスと中間膜との中心、縦方向(MD方向)及び横方向(TD方向)は揃っていた。なお、得られた中間膜のTD方向における中心部分が、2枚のクリアガラスの横方向の中心部分と一致するように積層した。次に、中間膜を切断した後の積層体を、ニッパーロール法により、80℃で2分間加熱して、予備圧着した。予備圧着後に、積層体をオートクレーブに入れ、通常のオートクレーブ条件で、合わせガラスを得た。得られた合わせガラスの角部分を観察して、中間膜が欠けた空隙の形成を下記の基準で判定した。
【0201】
[空隙の形成の判定基準]
○:合わせガラスの角部分に空隙がない
×:合わせガラスの角部分の少なくとも1か所に空隙がある
【0202】
詳細及び結果を下記の表1~4に示す。なお、下記の表1~4では、ポリビニルアセタール樹脂、可塑剤及びフィラー以外の配合成分の記載は省略した。
【0203】
【表1】
【0204】
【表2】
【0205】
【表3】
【0206】
【表4】
【符号の説明】
【0207】
1…第1の層
1a…外側の表面
2…第2の層
2a…第1の表面
2b…第2の表面
3…第3の層
3a…外側の表面
11,11A…中間膜
11a…第1の表面
11b…第2の表面
21…第1の合わせガラス部材
22…第2の合わせガラス部材
31,31A…合わせガラス
図1
図2
図3
図4
図5