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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】トンネル更生方法及びロックボルト
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/04 20060101AFI20220119BHJP
   E21D 20/00 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
E21D11/04 Z
E21D20/00 J
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017137397
(22)【出願日】2017-07-13
(65)【公開番号】P2019019505
(43)【公開日】2019-02-07
【審査請求日】2020-02-10
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(72)【発明者】
【氏名】北山 康
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-027482(JP,A)
【文献】特開2001-336148(JP,A)
【文献】特開平06-180097(JP,A)
【文献】特開2006-181862(JP,A)
【文献】特開平07-034799(JP,A)
【文献】特開2008-127793(JP,A)
【文献】特開2001-323797(JP,A)
【文献】特開平08-232333(JP,A)
【文献】特開2009-041335(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103321657(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/04
E21D 11/15
E21D 20/00
E03F 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地山に建設されたトンネルを更生するトンネル更生方法であって、
前記トンネルの内側に更生管を形成するステップと、
前記更生管の内側から前記地山にロックボルトを打設するステップと、
前記更生管と前記トンネルとの間、及び、前記ロックボルトと前記地山との間に裏込め材を注入するステップと、
前記更生管を押圧する方向に前記ロックボルトを締めることによって、前記更生管の形状を調整するステップとを含む、トンネル更生方法。
【請求項2】
地山に建設されたトンネルを更生するトンネル更生方法であって、
前記トンネルの内側に更生管を形成するステップと、
前記更生管の内側から前記地山にロックボルトを打設するステップと、
前記更生管と前記トンネルとの間、及び、前記ロックボルトと前記地山との間に裏込め材を注入するステップとを含み、
前記ロックボルトの内部には、前記裏込め材を通流させる中空部が形成されており、
前記ロックボルトを打設するステップは、
前記更生管の内側から前記地山を削孔することによって孔を形成するステップと、
貫通孔を有するクッション材を前記孔に挿入するステップと、
前記ロックボルトを前記貫通孔に挿入するステップとを有し、
前記裏込め材を注入するステップは、
前記中空部に前記裏込め材を通流させることによって、前記ロックボルトと前記孔との間に前記裏込め材を注入するステップと、
前記ロックボルトが前記孔に定着した後に、前記更生管と前記トンネルとの間に前記裏込め材を注入するステップとを有する、トンネル更生方法。
【請求項3】
地山に建設されたトンネルを更生するトンネル更生方法であって、
前記トンネルの内側に更生管を形成するステップと、
前記更生管が形成された後、前記更生管から前記地山に向けて削孔を形成し、前記更生管の内側から前記地山の削孔にロックボルトを打設するステップと、
前記ロックボルトと前記地山との間に裏込め材を注入するステップと、
前記ロックボルトと前記地山との間に注入された裏込め材が硬化した後に、前記更生管と前記トンネルとの間に裏込め材を注入するステップと
を含む、トンネル更生方法。
【請求項4】
前記更生管は、帯状材を前記トンネルの内面に沿うように配置することによって形成される、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のトンネル更生方法。
【請求項5】
前記ロックボルトは、隣接する他の前記ロックボルトと腹起材を介して連結される、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のトンネル更生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル更生方法及びロックボルトに関し、特に、地山に建設されたトンネルを更生するトンネル更生方法、及び、該トンネル更生方法に用いられるロックボルトに関する。
【背景技術】
【0002】
特表2008-522058号公報(特許文献1)は、先支保トンネル工法を開示する。この先支保トンネル工法においては、最終的なトンネルの掘削ラインに向けて複数の先支保材が施工される。複数の先支保材の各々にピース版が取り付けられ、最終的なトンネルの掘削ラインに沿ってライニングが形成される。そして、ピース版を貫通した先支保材に支圧版を当てて、定着具を締め付けることによって、支圧版及びピース版が地山側に加圧される。(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2008-522058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1においては、新たなトンネルを容易に掘削可能なトンネル工法が開示されている。一方、既設のトンネルを更生することによって、トンネルを延命するという課題がある。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、より効果的にトンネルを延命することが可能なトンネル更生方法、及び、該トンネル更生方法に用いるロックボルトを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある局面に従うトンネル更生方法は、地山に建設されたトンネルを更生する方法である。このトンネル更生方法は、トンネルの内側に更生管を形成するステップと、更生管の内側から地山にロックボルトを打設するステップと、更生管とトンネルとの間、及び、ロックボルトと地山との間に裏込め材を注入するステップとを含む。
【0007】
このトンネル更生方法においては、更生管の内側から地山にロックボルトが打設され、更生管とトンネルとの間、及び、ロックボルトと地山との間に裏込め材が注入される。したがって、このトンネル更生方法によれば、更生管、トンネル及び地山がロックボルトを介して機械的に一体化されるため、トンネルのみならず地山も安定化させることができる。その結果、トンネルの耐力が向上するとともに、地山からトンネルに作用する外圧が低下するため、より効果的にトンネルを延命することができる。
【0008】
好ましくは、上記トンネル更生方法において、更生管は、帯状材をトンネルの内面に沿うように配置することによって形成される。
【0009】
好ましくは、上記トンネル更生方法は、更生管を押圧する方向にロックボルトを締めることによって、更生管の形状を調整するステップをさらに含む。
【0010】
このトンネル更生方法においては、ロックボルトを締めることによって、更生管の形状が調整される。したがって、このトンネル更生方法によれば、特別に支保等を用意しなくても更生管を所望の形状にすることができる。
【0011】
好ましくは、上記トンネル更生方法において、ロックボルトは、隣接する他のロックボルトと腹起材を介して連結される。
【0012】
このトンネル更生方法においては、互いに隣接する2本のロックボルトが腹起材を介して連結される。したがって、このトンネル更生方法によれば、更生管、トンネル及び地山の機械的な一体化をより強固にすることができる。
【0013】
好ましくは、上記トンネル更生方法において、ロックボルトの内部には、裏込め材を通流させる中空部が形成されている。ロックボルトを打設するステップは、更生管の内側から地山を削孔することによって孔を形成するステップと、貫通孔を有するクッション材を孔に挿入するステップと、ロックボルトを貫通孔に挿入するステップとを有する。裏込め材を注入するステップは、中空部に裏込め材を通流させることによって、ロックボルトと孔との間に裏込め材を注入するステップと、ロックボルトが孔に定着した後に、更生管とトンネルとの間に裏込め材を注入するステップとを有する。
【0014】
このトンネル更生方法においては、ロックボルトが挿入された場合に、ロックボルトと地山との間の空間と、更生管とトンネルとの間の空間とがクッション材によって仕切られる。したがって、このトンネル更生方法によれば、ロックボルトから裏込め材を注入した場合に、ロックボルトと地山との間の空間から更生管とトンネルとの間の空間に裏込め材が逆流することを抑制することができる。
【0015】
本発明の別の局面に従うロックボルトは、ロックボルト本体と、弾性突起物とを備える。ロックボルト本体は、一端から他端に向けて貫通した中空部が内部に形成されている。弾性突起物は、ロックボルトの外周面に形成されている。
【0016】
このロックボルトが更生管の内側から地山に打設されると、ロックボルトと地山との間の空間と、更生管とトンネルとの間の空間とが弾性突起物によって仕切られる。したがって、このロックボルトによれば、ロックボルトから裏込め材を注入した場合に、ロックボルトと地山との間の空間から更生管とトンネルとの間の空間に裏込め材が逆流することを抑制することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、より効果的にトンネルを延命することが可能なトンネル更生方法、及び、該トンネル更生方法に用いるロックボルトを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】トンネルの断面図である。
図2】実施の形態1におけるトンネルの更生手順を示すフローチャートである。
図3】内側に更生管が形成されたトンネルの断面図である。
図4】ロックボルトが打設されたトンネルの断面図である。
図5】ロックボルトの締め込み途中におけるトンネルの断面図である。
図6】仕上げ加工が施されたトンネルの断面図である。
図7】ロックボルトの打設手順を示すフローチャートである。
図8】更生管等の削孔によって形成される孔を示す図である。
図9】孔にクッション材が挿入された状態を示す図である。
図10】クッション材の貫通孔にロックボルトが挿入された状態を示す図である。
図11】裏込め材の注入手順を示すフローチャートである。
図12】裏込め材が流れる経路を示す図である。
図13】実施の形態2に従うトンネル更生方法によって更生されたトンネルの内側からトンネルの上方を見た図である。
図14】支保材を介してロックボルトが打設された場合のトンネルの断面図である。
図15】実施の形態4において用いられるロックボルトの構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0020】
[1.実施の形態1]
<1-1.トンネル更生>
図1は、トンネル10の断面図である。図1に示されるように、トンネル10は、地山20中に建設された既設のトンネルであり、Z軸方向に延びている。
【0021】
トンネル10の完成から長期間が経過し、トンネル10が老朽化すると、トンネル10において漏水等の問題が生じる可能性がある。このような場合に、トンネル10を更生することによって、漏水等の問題を解決し、トンネル10を延命することができる。以下、本実施の形態1に従うトンネル更生方法について詳細に説明する。
【0022】
<1-2.トンネルの更生手順>
図2は、本実施の形態1におけるトンネル10の更生手順を示すフローチャートである。図3は、内側に更生管30が形成されたトンネル10の断面図である。図2,3を参照して、まず、作業者は、トンネル10の内側に更生管30を形成する(ステップS100)。
【0023】
更生管30は、樹脂製(たとえば、硬質塩化ビニル材製)のプロファイルによって構成される。プロファイルとは、長尺帯状のライニング材(帯状材)のことをいう。更生管30は、たとえば、プロファイルを螺旋状に巻回し、隣り合うプロファイルを接合することによって製管される。すなわち、更生管30は、プロファイルをトンネル10の内面に沿うように配置することによって形成される。より詳細に説明すると、プロファイルの一端には、プロファイルに沿って凹溝が設けられ、他端にはプロファイルに沿って凸条が設けられている。製管装置や作業者が、隣り合うプロファイルの凸条と凹溝とを嵌合することでプロファイルを接合する。これによって、更生管30が製管される。更生管30は、トンネル10に沿ってZ軸方向に延びている。更生管30は、樹脂製であるため、腐食又は摩耗しにくい。
【0024】
図4は、ロックボルト40が打設されたトンネル10の断面図である。図2,4を参照して、更生管30が形成されると、次に、作業者は、更生管30の内側から地山20にロックボルト40を打設する(ステップS110)。
【0025】
ロックボルト40は、トンネル10のコンクリート層を貫通し、地山20の岩盤に到達する。これにより、更生管30、トンネル10及び地山20が機械的に一体となる。ロックボルト40は、たとえば、更生管30の全周に渡って打設される。また、ロックボルト40は、Z軸方向においては、1~5mの所定間隔おきに打設される。ステップS110の詳細、及び、ロックボルト40の詳細については後程説明する。
【0026】
ロックボルト40の打設が完了すると、作業者は、ロックボルト40を締め込み、更生管30をトンネル10側に押圧する(ステップS120)。各ロックボルト40の締め込み量を調整することによって、更生管30の形状及び寸法が調節される。すなわち、本実施の形態1においては、特別に支保等を用意しなくても更生管30を所望の形状にすることができる。
【0027】
図5は、ロックボルト40の締め込み途中におけるトンネル10の断面図である。図5を参照して、ロックボルト40の頭部には、支圧版42を介してボルト44が取り付けられている。ボルト44が締め込まれると、支圧版42が更生管30側に押圧され、結果的に、更生管30がトンネル10側に押圧される。
【0028】
図5と共に、再び図2を参照して、ロックボルト40の締め込みが完了すると、次に、作業者は、ロックボルト40と地山20との間(孔60)、及び、トンネル10と更生管30との間に裏込め材(モルタル)を注入する(ステップS130)。なお、孔60は、各ロックボルト40の周囲に形成されている。これにより、トンネル10の更生(トンネル10と更生管30との間への裏込め材注入)と、周辺地盤の安定化(ロックボルト40と地山20との間への裏込め材注入)とを一気に実現することができる。ステップS130の詳細については後程説明する。
【0029】
注入された裏込め材が硬化すると、作業者は、更生管30の内部において仕上げ加工を行なう(ステップS140)。たとえば、作業者は、更生管30の内部において突出しているロックボルト40の頭部等を切断する。
【0030】
図6は、仕上げ加工が施されたトンネル10の断面図である。図6に示されるように、更生管30の内部において、ロックボルト40の頭部は切断されている。なお、ロックボルト40の頭部は、必ずしも完全に切断される必要はなく、少し残されてもよい。この場合に、少し残された頭部を突起量の少ないボルトによって締め付けてもよい。これにより、更生管30を確実に固定することができる。
【0031】
このように、本実施の形態1に従うトンネル更生方法が施されると、更生管30、トンネル10及び地山20がロックボルト40を介して機械的に一体化されるため、トンネル10のみならず地山20も安定化する。内部に更生管30が形成されることでトンネル10の耐力が向上するとともに、地山20が安定することによって地山20からトンネル10に作用する外圧が低下する。その結果、本実施の形態1に従うトンネル更生方法によれば、より効果的にトンネル10を延命することができる。
【0032】
次に、ロックボルト40の打設手順(ステップS110)、及び、裏込め材の注入手順(ステップS130)の詳細について順に説明する。
【0033】
<1-3.ロックボルトの打設手順>
図7は、ロックボルト40の打設手順を示すフローチャートである。図8は、更生管30等の削孔によって形成される孔60を示す図である。図7,8を参照して、まず、作業者は、更生管30側から削孔を行なう(ステップS200)。これにより、孔60が形成される。孔60は、更生管30及びトンネル10を貫通し、地山20に達している。
【0034】
図9は、孔60にクッション材50が挿入された状態を示す図である。図7,9を参照して、孔60が形成されると、作業者は、孔60にクッション材50を挿入する(ステップS210)。
【0035】
クッション材50は、スポンジ等のクッション性を有する材料で構成されている。クッション材50は、たとえば円柱状であり、内部に貫通孔52が形成されている。クッション材50の外周形状は、孔60の外周に嵌まる形状である。
【0036】
図10は、クッション材50の貫通孔52にロックボルト40が挿入された状態を示す図である。図7,10を参照して、孔60にクッション材50が挿入されると、作業者は、クッション材50の貫通孔52にロックボルト40を挿入する(ステップS220)。
【0037】
ロックボルト40の内部には、中空部46が形成されている。ロックボルト40の一端(基部)側と他端(先端)側、具体的には両端で中空部46は開口部を通じて外部につながっている。すなわち、中空部46は、ロックボルト40の一端から他端に向かって貫通している。中空部46は、裏込め材が通流可能に構成されている。基部側開口から注入された裏込め材は、先端側開口から吐出する。貫通孔52にロックボルト40が挿入された状態で、トンネル10と更生管30との間の空間と、ロックボルト40と地山20との間の空間とは、クッション材50によって仕切られる。
【0038】
<1-4.裏込め材の注入手順>
図11は、裏込め材の注入手順を示すフローチャートである。図12は、裏込め材が流れる経路を示す図である。図11,12を参照して、孔60にロックボルト40が挿入された状態で、まず、作業者は、中空部46を介して裏込め材を注入する(ステップS300)。
【0039】
ロックボルト40、地山20及びクッション材50によって密閉された空間は、中空部46に流し込まれた裏込め材によって充填される。なお、中空部46に流し込まれた裏込め材は、クッション材50によってせき止められるため、更生管30とトンネル10との間の空間には流入しない。
【0040】
ステップS300において注入された裏込め材が硬化すると、作業者は、孔60(ロックボルト40と更生管30との隙間)から更生管30とトンネル10との間の空間に裏込め材を注入する(ステップS310)。そして、更生管30とトンネル10との間の空間は、裏込め材によって充填される。
【0041】
このように、本実施の形態1に従うトンネル更生方法においては、ロックボルト40の中空部46を介して裏込め材が注入され、この際にロックボルト40が支保材の役割を果たす。したがって、このトンネル更生方法によれば、たとえば、更生管30とトンネル10との間に裏込め材を注入するために、別途支保材を用意する必要がない。
【0042】
また、本実施の形態1に従うトンネル更生方法においては、ロックボルト40が孔60に挿入された場合に、ロックボルト40と地山20との間の空間と、更生管30とトンネル10との間の空間とがクッション材50によって仕切られる。したがって、このトンネル更生方法によれば、ロックボルト40の中空部46を介して裏込め材を注入した場合に、裏込め材が更生管30とトンネル10との間の空間に逆流することを抑制することができる。また、たとえば、裏込め材として粘性の高い自立性の注入材を用いれば、裏込め材の逆流をより効果的に抑制することができる。
【0043】
<1-5.特徴>
以上のように、本実施の形態1に従うトンネル更生方法は、トンネル10の内側に更生管30を形成するステップと、更生管30の内側から地山20にロックボルト40を打設するステップと、更生管30とトンネル10との間、及び、ロックボルト40と地山20との間に裏込め材を注入するステップとを含んでいる。
【0044】
このトンネル更生方法によれば、更生管30、トンネル10及び地山20がロックボルト40を介して機械的に一体化されるため、トンネル10のみならず地山20も安定化する。その結果、このトンネル更生方法によれば、より効果的にトンネル10を延命することができる。
【0045】
[2.実施の形態2]
上記実施の形態1においては、複数のロックボルト40の各々が独立して打設された。しかしながら、たとえば、各ロックボルト40は、腹起材によって連結されてもよい。
【0046】
図13は、本実施の形態2に従うトンネル更生方法によって更生されたトンネル10の内側からトンネル10の上方を見た図である。図13に示されるように、X軸方向に互いに隣接するロックボルト40は、腹起材48によって連結されている。
【0047】
すなわち、本実施の形態2に従うトンネル更生方法においては、更生管30の内側からロックボルト40が打設される場合に、腹起材48が挟み込まれる。したがって、本実施の形態2に従うトンネル更生方法によれば、更生管30、トンネル10及び地山20の機械的な一体化をより強固にすることができる。その結果、トンネル10をより効果的に延命することができる。
【0048】
なお、図13においては、X軸方向に隣接するロックボルト40が腹起材48によって連結されたが、連結されるロックボルト40の組み合わせはこれに限定されない。たとえば、Z軸方向に隣接するロックボルト40が腹起材48によって連結されてもよいし、X軸方向に隣接するロックボルト40、及び、Z軸方向に隣接するロックボルト40の各々が腹起材48によって連結されてもよい。また、3以上のロックボルト40を腹起材48で連結してもよい。
【0049】
[3.実施の形態3]
上記実施の形態1においては、ロックボルト40の打設後にロックボルト40を締め込むことによって、更生管30の形状が調節された。しかしながら、更生管30の形状の調節は、必ずしもロックボルト40の締め込みによって行なわれる必要はない。たとえば、目標とする更生管30の形状と近似したリング状の支保材を用いることによって、更生管30の形状を調節してもよい。
【0050】
図14は、支保材を介してロックボルト40が打設された場合のトンネル10の断面図である。図14に示されるように、ロックボルト40は、リング状の支保材70を介して更生管30に打設されている。ロックボルト40の打設完了後に、支保材70は、解体され、取り外される。これにより、更生管30の形状は、支保材70の形状に近似した形状となる。
【0051】
すなわち、本実施の形態3に従うトンネル更生方法によれば、ロックボルト40の締め込みによる更生管30の形状調節が難しい場合であっても、更生管30を所望の形状に調節することができる。
【0052】
[4.実施の形態4]
上記実施の形態1においては、ロックボルト40の打設時に、作業者は、孔60にクッション材50(図7,9)を挿入した。しかしながら、作業者は、必ずしも孔60にクッション材50を挿入する必要はない。たとえば、ロックボルト40の構造を工夫することによって、クッション材50を用いる必要がなくなる。
【0053】
図15は、本実施の形態4において用いられるロックボルト40Aの構造を示す図である。図15を参照して、上半分はロックボルト40Aの外観構成を示し、下半分はロックボルト40Aの断面構成を示す。
【0054】
ロックボルト40Aにおいては、ロックボルト本体の内部に中空部46が形成されている。ロックボルト40Aの一端(基部)側と他端(先端)側、具体的には両端で中空部46は開口部を通じて外部につながっている。すなわち、中空部46は、ロックボルト40Aの一端から他端に向かって貫通している。中空部46は、裏込め材が通流可能となっている。基部側開口から注入された裏込め材は、先端側開口から吐出する。
【0055】
ロックボルト40Aにおいて、ロックボルト本体の外周面には、逆流防止機構49が形成されている。逆流防止機構49は、ゴムシール等の弾性突起物で構成されている。この弾性突起物は、ロックボルト40Aの全周に渡って形成されており、左右方向から見た場合に円形である。また、図15においては、弾性突起物が左右方向に5段形成されているが、1段以上形成されていればよい。また、図15において、各弾性突起物は、ロックボルト40Aの外周方向に尖っているが、必ずしも尖っている必要はない。たとえば、弾性突起物は、クッション材50(図9)のような形状であってもよい。
【0056】
ロックボルト40Aが孔60(図8)に挿入されると、逆流防止機構49が孔60をふさぐ(逆流防止機構49が孔60に嵌まる)。その結果、中空部46を介して注入された裏込め材が、孔の外側(トンネル10と更生管30との間の空間)に逆流することが抑制される。すなわち、ロックボルト40Aを用いることによって、クッション材50を用いなくても裏込め材の逆流を抑制することができる。
【0057】
[5.変形例]
以上、実施の形態1-4について説明したが、本発明は、上記実施の形態1-4に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。以下、変形例について説明する。但し、以下の変形例は適宜組合せ可能である。
【0058】
<5-1>
上記実施の形態1-4においては、裏込め材がロックボルト40,40Aから注入された。しかしながら、裏込め材の注入は、必ずしもロックボルト40,40Aから行なわれる必要はない。たとえば、更生管30に裏込め材を注入するための注入口を設け、該注入口から裏込め材を注入してもよい。
【0059】
<5-2>
上記実施の形態1-4において、更生管30は、たとえば、プロファイルを螺旋状に嵌合させることによって製管されるとした。このように、更生管30は、螺旋管の製管工法を用いることによって製管されることが好ましい。しかしながら、更生管30の製管方法は、必ずしもプロファイル(帯状材)を螺旋状に巻回し、隣り合うプロファイルを接合して更生管を形成する工法には限られない。たとえば、更生管30の製管方法は、帯状又は短冊状のライニング材をトンネルの周方向又は軸方向に並べて連結することで更生管を形成する方法であってもよい。
【0060】
ロックボルトの両端に設けられた開口の間に、中空部につながる開口をさらに設けてもよい。この開口は更生管30とトンネル10との間の空間に面する位置に設ける。そうすることで基部側開口から注入された裏込め材は、更生管30とトンネル10との間の空間と、孔60とへ同時に供給される。
【符号の説明】
【0061】
10 トンネル、20 地山、30 更生管、40,40A ロックボルト、42 支圧版、44 ボルト、46 中空部、48 腹起材、49 逆流防止機構、50 クッション材、52 貫通孔、60 孔、70 支保材。
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