IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 曙ブレーキ工業株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】摩擦材
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/14 20060101AFI20220119BHJP
   F16D 69/02 20060101ALI20220119BHJP
   C01G 49/06 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
C09K3/14 520G
C09K3/14 520L
F16D69/02 B
C01G49/06 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017153092
(22)【出願日】2017-08-08
(65)【公開番号】P2019031616
(43)【公開日】2019-02-28
【審査請求日】2020-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000000516
【氏名又は名称】曙ブレーキ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高田 卓弥
(72)【発明者】
【氏名】宮道 素行
(72)【発明者】
【氏名】大輪 健太郎
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/175284(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/110562(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/110563(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/14
C01G 49/06
F16D 69/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒径が90~300μm、かつ細孔容積が100~300mm/gである造粒へマタイト焼成粒子を含有する、摩擦材。
【請求項2】
前記造粒へマタイト焼成粒子を5~25質量%含有する、請求項1に記載の摩擦材。
【請求項3】
銅成分の含有量が0.5質量%以下である、請求項1又は2に記載の摩擦材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車、鉄道車両及び産業機械等のディスクブレーキパッド、ブレーキライニング及びクラッチフェーシング等に用いられる摩擦材に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今の車両の高性能化及び高速化に伴い、ブレーキへの負荷は大きくなっている。また、車両の軽量化が求められるなかで、摩擦材の高温での耐フェード性及び耐摩耗性が求められている。
【0003】
そこで、特許文献1では、高温時の摩擦係数の維持や耐摩耗性の向上を目的とし、少なくとも強化繊維、結合材、潤滑材、摩擦調整材、及び充填材を含有してなるブレーキ摩擦材において、このブレーキ摩擦材の全体量を100質量%としたとき、スチール繊維を5~10質量%、平均繊維長が2~3mmの銅繊維を5~10質量%、粒径が5~75μmの亜鉛粉を2~5質量%、含有してなることを特徴とするブレーキ摩擦材が開示されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の摩擦材のように銅成分を含有する摩擦材は、制動時に生成する摩耗粉に銅成分を含み、河川、湖及び海洋等を汚染する原因となる可能性が示唆されているため、使用を制限する動きが高まっている。
このような背景から、アメリカのカリフォルニア州やワシントン州では、2024年以降、銅成分を0.5質量%以上含有する摩擦材を使用した摩擦部材の販売及び新車への組み付けを禁止する法案が可決している。
【0005】
一方、銅成分が持つ特性はディスクブレーキパッドに使用される摩擦材には欠かせないものであり、摩擦材から銅成分を排除することにより、異音が発生しやすくなることが明らかになってきた。
【0006】
そこで、異音の発生を低減するための種々の提案がなされている。例えば、特許文献2では、ディスクブレーキパッドに使用される、銅成分を含まないNAO材の摩擦材組成物を成型した摩擦材において、前記摩擦材組成物は、鉄成分を実質的に含まず、チタン酸塩として、非ウィスカー状のチタン酸塩を摩擦材組成物全量に対し15~25重量%と、無機摩擦調整材として、平均粒子径が1.0~4.0μmの酸化ジルコニウムを摩擦材組成物全量に対し15~25重量%と、無機摩擦調整材として劈開性鉱物粒子を摩擦材組成物全量に対し4~6重量%含むことを特徴とする摩擦材が開示されている。
特許文献2に記載の摩擦材は、銅成分の含有量に関する法規を満足しながら、停止際異音の発生を抑制することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2010-77341号公報
【文献】特開2016-35005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、銅成分の有無に関わらず軽負荷制動を一定数以上繰り返した場合でもクリープ発進時のブレーキペダルリリースの際の異音(以降、クリープ異音と称す。)を低減し、かつ十分な耐フェード性を確保し、相手材攻撃性を抑制できる摩擦材を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、摩擦材に特定の造粒へマタイト焼成粒子を含有させることで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は下記<1>~<3>に関するものである。
<1>平均粒径が25~300μm、かつ細孔容積が30~300mm/gである造粒へマタイト焼成粒子を含有する、摩擦材。
<2>前記造粒へマタイト焼成粒子を5~25質量%含有する、<1>に記載の摩擦材。
<3>銅成分の含有量が0.5質量%以下である、<1>又は<2>に記載の摩擦材。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、銅成分の有無に関わらず軽負荷制動を一定数以上繰り返した場合でもクリープ異音を低減し、かつ十分な耐フェード性を確保し、相手材攻撃性を抑制できる摩擦材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳述するが、これらは望ましい実施態様の一例を示すものであり、本発明はこれらの内容に特定されるものではない。
【0013】
本発明の摩擦材は、摩擦調整材、繊維基材、結合材を含有する。
以下、各成分について詳細に説明する。
【0014】
<摩擦調整材>
摩擦調整材は、耐摩耗性、耐熱性、耐フェード性等の所望の摩擦特性を摩擦材に付与するために用いられる。本発明の摩擦材は、特定の平均粒径と細孔容積を有する造粒へマタイト焼成粒子を用いることを特徴とする。
【0015】
(造粒へマタイト焼成粒子)
造粒へマタイト焼成粒子は、ヘマタイト(Fe)を造粒して焼成することにより得られる粒子であり、その粒子内に細孔が形成されている。粒子内に細孔を有することで、高負荷時の温度上昇により摩擦材中の有機成分が分解することで発生するガスを、細孔から摩擦材の外へ適度に逃がすことができるため、耐フェード性を向上させることができる。へマタイト(Fe)の結晶構造としてはα-,β-,γ-,ε-,等が挙げられるが、いずれの構造も原材料として用いることができる。調達性の観点からはα-Feが望ましく用いられる。
【0016】
本発明においては、クリープ異音発生を抑制する観点から、平均粒径が25~300μm、かつ細孔容積が30~300mm/gである造粒へマタイト焼成粒子(以下、本発明の造粒へマタイト焼成粒子ともいう。)を使用する。
【0017】
摩擦によって生成される摩耗粉の平均粒径は、摩擦材の配合成分の平均粒径に依存すると考えられる。一方、軽負荷制動によって生成される摩耗粉は細かく、摩擦材と相手材の摩擦界面に残りやすく、軽負荷制動の繰り返しによって、摩耗粉がすりつぶされ、さらに細かくなり、クリープ異音が発生しやすくなると推測される。
なお、軽負荷制動とは、速度40km/h以下及び減速度1.47m/s以下での制動のことをいう。
【0018】
造粒により平均粒径が25μm以上となった本発明の造粒へマタイト焼成粒子を使用することで、摩耗粉の細分化が起こりにくくなり、クリープ異音発生を抑制することができる。
また、造粒へマタイト焼成粒子の平均粒径が大きくなりすぎると、相手材への攻撃性が大きくなるため、平均粒径が300μm以下のものを使用する。
【0019】
なお、摩擦材を一晩放置する等した際に気温差による結露が発生することがあるが、結露の水分が摺動面に入り込んで、摩耗粉が水で練られるような状態になったとしても、造粒へマタイト焼成粒子の平均粒径が前記範囲内であると、摩耗粉の平均粒径が大きくなり、摩耗粉が摩擦界面から排出されやすくなるため、クリープ異音発生が抑制される。
【0020】
本発明の造粒へマタイト焼成粒子の平均粒径は、摩耗粉排出の観点から、40μm以上が好ましく、また、150μm以下が好ましい。
なお、本発明の造粒へマタイト焼成粒子の平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いてメジアン径D50を測定することで求められる。
【0021】
また、上述のように、造粒へマタイト焼成粒子は粒子内に細孔を有しているため、高負荷時の温度上昇時に摩擦材中の有機成分が分解して発生したガスを、その細孔を通して排出することでフェード現象を抑制できる。
【0022】
本発明の造粒へマタイト焼成粒子の細孔容積が30mm/g以上であることで、発生したガスを排出することができる。また、細孔容積が300mm/gを超えると、造粒へマタイト焼成粒子が摩擦によって崩れやすくなるため、300mm/g以下とする。
【0023】
本発明の造粒へマタイト焼成粒子の細孔容積は、耐フェード性と相手材攻撃性の両立の観点から、100mm/g以上が好ましく、また、200mm/g以下が好ましい。
なお、造粒へマタイト焼成粒子の細孔容積は、水銀ポロシメーターを用いて測定することができる。
【0024】
本発明の造粒へマタイト焼成粒子は、耐フェード性と相手材攻撃性の両立という観点から、見掛密度が2.0g/cm以下であることが好ましい。
なお、造粒へマタイト焼成粒子の見掛密度は、JIS Z 2504:2012に準拠して測定することができる。
【0025】
本発明の造粒へマタイト焼成粒子の摩擦材全体中の含有量は、5~25質量%が好ましく、より好ましくは7~15質量%である。
含有量が5質量%以上であると、クリープ異音を低減し、十分な耐フェード性を確保するといった本発明の効果が向上するため好ましい。
また、含有量が25質量%以下であると、相手材攻撃性を抑制するといった本発明の効果が向上するため好ましく、さらに、研削材や潤滑材等、摩擦材として必要なその他の成分を十分に含有させることができるようになる。
【0026】
なお、本発明の造粒へマタイト焼成粒子は、磁性を有さない点で、一般的に摩擦材で用いられる四三酸化鉄(マグネタイト、Fe)とは区別される。
ここで、本願明細書において、「磁性を有さない」とは、残留磁化(emu/g)の値が、例えば0.1程度である状態をいう。
残留磁化(emu/g)の値は、自動磁化特性測定装置によって測定することができる。
【0027】
本発明の造粒へマタイト焼成粒子は、天然へマタイト鉱石を粉砕し、水並びに必要に応じ分散剤及びバインダー等を添加して混合することによりスラリーとし、粘度調整後、スプレードライにて造粒及び乾燥し、さらに焼成温度800~1100℃で脱バインダー処理することによって得られる。
【0028】
(その他の摩擦調整材)
本発明の摩擦材に含まれる摩擦調整材には、造粒へマタイト焼成粒子以外に、無機充填材、有機充填材、研削材、固体潤滑材等を適宜混合することもできる。本発明の摩擦材における摩擦調整材は摩擦材全体中、好ましくは76~82質量%用いられる。
【0029】
無機充填材としては、チタン酸化合物、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、バーミキュライト、マイカ等の無機材料や、アルミニウム、スズ、亜鉛等の金属粉末が挙げられる。これらは各々単独で、または2種以上組み合わせて用いられる。
【0030】
ここで、チタン酸化合物としては、チタン酸カリウム、チタン酸リチウム、チタン酸リチウムカリウム、チタン酸ナトリウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸マグネシウムカリウム、チタン酸バリウム等が挙げられるが、耐摩耗性が向上する点から、チタン酸カリウム、チタン酸リチウムカリウム、チタン酸マグネシウムカリウムが好ましい。
【0031】
また、チタン酸化合物は、摩擦材の強度を向上させるという観点から、その表面にシランカップリング剤等により表面処理が施されていてもよい。さらに、摩擦材の撥水性を高めるという観点から、その表面に撥水剤により表面処理が施されていてもよい。
【0032】
摩擦材の錆発生を抑制させるという観点から、摩擦材中の硫酸イオン濃度を低減させることが望ましく、硫酸イオンの少ないチタン酸化合物を使用することも可能である。
【0033】
有機充填材としては、各種ゴム粉末(生ゴム粉末、タイヤ粉末等)、カシューダスト、タイヤトレッド、メラミンダスト等が挙げられる。これらは各々単独、または2種以上組み合わせて用いられる。
【0034】
研削材としては、アルミナ、シリカ、マグネシア、ジルコニア、ケイ酸ジルコニウム、酸化クロム、四三酸化鉄(Fe)、クロマイト等が挙げられる。これらは各々単独、または2種以上組み合わせて用いられる。
【0035】
固体潤滑材としては、黒鉛(グラファイト)、三硫化アンチモン、二硫化モリブデン、硫化スズ、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等が挙げられる。また、黒鉛の粒径は1~1000μmが好ましい。これらは各々単独、または2種以上組み合わせて用いられる。
【0036】
なお、本発明の摩擦材全体中の銅成分の含有量は、環境負荷低減の観点から、0.5質量%以下が好ましく、含有しないことがより好ましい。
【0037】
<繊維基材>
本発明の摩擦材に含まれる繊維基材には、通常用いられる繊維基材を通常用いられる量で使用することができ、具体的には、有機繊維、無機繊維、金属繊維が使用されるが、銅成分を含む銅繊維や青銅繊維は使用しない。
【0038】
有機繊維としては、例えば、芳香族ポリアミド(アラミド)繊維、耐炎性アクリル繊維が使用され、無機繊維としては、例えば、セラミック繊維、生体溶解性無機繊維、ガラス繊維、カーボン繊維、ロックウール等が使用され、また、金属繊維としては、例えば、スチール繊維が使用される。これらは各々単独、または2種以上組み合わせて用いられる。
また、摩擦材における繊維基材は摩擦材全体中、好ましくは6~12質量%用いられる。
【0039】
中でも無機繊維としては、生体溶解性無機繊維が人体への影響が少ない点から好ましい。このような生体溶解性無機繊維は、SiO-CaO-MgO系繊維やSiO-CaO-MgO-Al系繊維、SiO-MgO-SrO系繊維等の生体溶解性セラミック繊維や生体溶解性ロックウール等が挙げられる。
【0040】
生体溶解性無機繊維は、繊維径0.1~20μm、繊維長100~5000μmであることが好ましい。
また、生体溶解性無機繊維は、摩擦材の強度を向上させるという観点からその表面にシランカップリング剤等により表面処理が施されていてもよい。
【0041】
<結合材>
本発明の摩擦材に含まれる結合材としては、通常用いられる種々の結合材を用いることができる。具体的には、ストレートフェノール樹脂、エラストマー等による各種変性フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。エラストマー変性フェノール樹脂としては、アクリルゴム変性フェノール樹脂やシリコーンゴム変性フェノール樹脂、ニトリルゴム(NBR)変性フェノール樹脂等が挙げられる。なお、これらの結合材は単独または2種以上組み合わせて用いることができる。
また、摩擦材における結合材は摩擦材全体中、好ましくは6~10質量%用いられる。
【0042】
本発明の摩擦材の製造方法の具体的な態様としては、公知の製造工程により行うことができ、例えば、上記各成分を配合し、その配合物を通常の製法に従って予備成形、熱成形、加熱、研摩等の工程を経て摩擦材を作製することができる。
摩擦材を備えたブレーキパッドの製造における一般的な工程を以下に示す。
【0043】
(a)板金プレスによりプレッシャプレートを所定の形状に成形する工程、
(b)上記プレッシャプレートに脱脂処理、化成処理及びプライマー処理を施し、接着剤を塗布する工程、
(c)繊維基材、摩擦調整材、及び結合材等の原料を配合し、混合により十分に均質化して、常温にて所定の圧力で成形して予備成形体を作製する工程、
(d)上記予備成形体と接着剤が塗布されたプレッシャプレートとを、所定の温度及び圧力を加えて両部材を一体に固着する熱成形工程(成形温度130~180℃、成形圧力30~80MPa、成形時間2~10分間)、
(e)アフターキュア(150~300℃、1~5時間)を行って、最終的に研摩、表面焼き、及び塗装等の仕上げ処理を施す工程。
【実施例
【0044】
以下に実施例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明は何らこれらに限定されるものではない。
【0045】
(実施例1~11、比較例1~4)
<摩擦材の作製>
表1に示す摩擦材配合組成の原材料をミキサーにて4分間混合し、混合物を金型に投入し、圧力20MPaにて10秒間加圧することによって予備成形体を作製した。
得られた予備成形体を熱成形型に投入し、あらかじめ接着剤を塗布した金属板を重ね、圧力40MPa、成形温度150℃にて5分間加熱圧縮成形を行った。
得られた加熱圧縮成形体に230℃で3時間の熱処理を行い、研摩、塗装して、実施例1~11及び比較例1~4の摩擦材を作製した。
【0046】
<摩擦材の評価試験>
上記作製した実施例1~11及び比較例1~4の摩擦材について、瞬時最低摩擦係数、異音、ディスクロータ摩耗量の測定を行った。
【0047】
(瞬時最低摩擦係数)
各摩擦材について、JASO C406に準拠した摩擦性能試験をブレーキダイナモメータで行い、第1フェードにおける瞬時最低摩擦係数(μ)を測定し、下記基準に基づき評価した。結果を表1に示す。
【0048】
瞬時最低摩擦係数(μ)が0.25以上:◎
瞬時最低摩擦係数(μ)が0.23以上0.25未満:○
瞬時最低摩擦係数(μ)が0.21以上0.23未満:△
瞬時最低摩擦係数(μ)が0.21未満:×
【0049】
(異音)
以下の条件にて、実車による異音試験を行った。
車種:SUV AT車
車両重量:2000kg
ブレーキパッド:実施例1~11及び比較例1~4の摩擦材
【0050】
初速度30km/h、制動終速度10km/h、減速度0.98m/s、制動回数4000回の条件で摺り合わせを行い、一晩(15時間)放置後、異音の評価を行った。
異音の評価は、パッド面圧1.0MPaにて停止中の上記車両において、ブレーキペダルを徐々に緩め、車両動力トルク伝達によるクリープ力で発進した際に発生するクリープ異音の音圧を、助手席のヘッドレスト部分に設置したマイクで測定した。この手順を10回繰り返し、最大音圧を測定し、下記基準に基づき評価した。結果を表1に示す。
【0051】
最大音圧が60dB未満:◎
最大音圧が60dB以上65dB未満:○
最大音圧が65dB以上70dB未満:△
最大音圧が70dB以上:×
【0052】
(空転ディスクロータ摩耗量)
実施例1~11及び比較例1~4に係る摩擦材を含むブレーキパッドからテストピースを切り出し、1/7スケールテスターを用いてテストピースを面圧0.06MPaでディスクロータに押し付けて速度60km/hで空転させた際の、40時間後のディスクロータ摩耗量(μm)を測定した。
【0053】
ディスクロータ摩耗量が10μm未満:◎
ディスクロータ摩耗量が10μm以上15μm未満:○
ディスクロータ摩耗量が15μm以上20μm未満:△
ディスクロータ摩耗量が20μm以上:×
【0054】
【表1】
【0055】
表1の結果から明らかなように、平均粒径が25~300μm、かつ細孔容積が30~300mm/gである造粒へマタイト焼成粒子を含有した実施例1~11に係る摩擦材は、比較例1~4に係る摩擦材と比べて、クリープ異音が低減し、かつ十分な耐フェード性を確保し、相手材攻撃性を抑制していることがわかる。