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特許7010652ノイズ除去回路およびノイズ除去方法ならびにモータ制御装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】ノイズ除去回路およびノイズ除去方法ならびにモータ制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 7/06 20060101AFI20220119BHJP
   G01R 19/00 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
H02P7/06 G
G01R19/00 L
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017200793
(22)【出願日】2017-10-17
(65)【公開番号】P2019075900
(43)【公開日】2019-05-16
【審査請求日】2020-04-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】100102853
【弁理士】
【氏名又は名称】鷹野 寧
(72)【発明者】
【氏名】柳田 雄一
(72)【発明者】
【氏名】内田 拓弥
【審査官】安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-094178(JP,A)
【文献】米国特許第06323732(US,B1)
【文献】特開2015-211636(JP,A)
【文献】実開平05-023798(JP,U)
【文献】特開平06-244745(JP,A)
【文献】特開2015-184142(JP,A)
【文献】特開平10-123053(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 7/06
H03G 3/30
G01R 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気信号からスパイク状の波形のノイズを除去するノイズ除去回路であって、
前記電気信号が入力され、前記電気信号を増幅する信号増幅部と、
前記電気信号の電圧に基づいて、前記信号増幅部における前記電気信号の増幅率を制御し、前記電気信号の電圧が大きくなるほど前記信号増幅部の増幅率が小さくなるように制限する増幅制御部と、を有し、
前記信号増幅部は、前記電気信号を増幅して出力する差動増幅回路を有し、
前記増幅制御部は、前記電気信号に基づいて形成された制御信号を電流信号に変換する信号変換部と、該信号変換部からの前記電流信号に基づいて前記差動増幅回路の制御電流を変化させ、前記信号増幅部の増幅率を制御するカレントミラー回路と、を有し、前記差動増幅回路の出力が所定値を超えないように、前記カレントミラー回路によって前記制御電流を制御して前記信号増幅部の増幅率を制限し、
前記ノイズ除去回路の前段には、
前記電気信号から、そのリップル成分の中心値を電気信号の変化成分として抽出して出力する制御電圧発生回路と、
前記制御電圧発生回路の出力信号の波形を上下反転させて出力する信号反転回路と、が設けられ、
前記制御信号は、前記信号反転回路から出力され、前記信号変換部に入力されることを特徴とするノイズ除去回路。
【請求項2】
請求項1記載のノイズ除去回路において、
前記増幅制御部は、前記電気信号の電圧が所定値以上になると予見された場合、前記信号増幅部の増幅率を低減させることを特徴とするノイズ除去回路。
【請求項3】
電気信号からスパイク状の波形のノイズを除去するノイズ除去回路を用いたノイズ除去方法であって、
前記ノイズ除去回路は、
前記電気信号が入力され、該電気信号を増幅して出力する差動増幅回路を有する信号増幅部と、
前記電気信号に基づいて形成された制御信号を電流信号に変換する信号変換部と、
該信号変換部からの前記電流信号に基づいて前記差動増幅回路の制御電流を変化させ、前記信号増幅部の増幅率を制御するカレントミラー回路と、を有し、
前記差動増幅回路の出力が所定値を超えないように、前記電気信号の電圧が大きくなるほど前記信号増幅部の増幅率が小さくなるよう前記カレントミラー回路によって前記差動増幅回路の制御電流を制御して前記差動増幅回路の増幅率を制限し、
前記ノイズ除去回路の前段には、
前記電気信号から、そのリップル成分の中心値を電気信号の変化成分として抽出して出力する制御電圧発生回路と、
前記制御電圧発生回路の出力信号の波形を上下反転させて出力する信号反転回路と、が設けられ、
前記制御信号は、前記信号反転回路から出力され、前記信号変換部に入力されることを特徴とするノイズ除去方法
【請求項4】
直流モータの電機子電流を検知し、その変化を電圧変化信号として出力する電流検出部と、該電流検出部の後段に配され、前記電機子電流に含まれるスパイク状の波形のノイズを除去するノイズ除去回路と、を有するモータ制御装置であって、
前記ノイズ除去回路は、
前記電圧変化信号を増幅する信号増幅部と、
前記電圧変化信号に基づいて形成された制御信号が入力され、前記電圧変化信号の電圧に基づいて、前記信号増幅部における前記電圧変化信号の増幅率を制御し、前記電圧変化信号の電圧が大きくなるほど前記信号増幅部の増幅率が小さくなるように制限する増幅制御部と、を有し、
前記信号増幅部は、前記電圧変化信号を増幅して出力する差動増幅回路を有し、
前記増幅制御部は、前記制御信号を電流信号に変換する信号変換部と、該信号変換部からの前記電流信号に基づいて前記差動増幅回路の制御電流を変化させ、前記信号増幅部の増幅率を制御するカレントミラー回路と、を有し、
前記ノイズ除去回路の前段には、
前記電圧変化信号から、そのリップル成分の中心値を電圧変化信号の変化成分として抽出して出力する制御電圧発生回路と、
前記制御電圧発生回路の出力信号の波形を上下反転させて出力する信号反転回路と、が設けられ、
前記制御信号は、前記信号反転回路から出力され、前記信号変換部に入力されることを特徴とするモータ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気信号のノイズ除去技術に関し、特に、アナログ信号に混入するスパイク状のノイズの除去に好適なノイズ除去回路およびノイズ除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、パルス信号や通信信号、音声信号、制御信号などの各種アナログ信号では、そこに混入するスパイク状の尖った波形のノイズ(以下、スパイクノイズと称する)を除去するため、ローパスフィルタなどのノイズフィルタが使用されている。たとえば、特許文献1には、ブラシ付きDCモータにおいて、いわゆるセンサレスポジショニングを行うに際し、ローパスフィルタを用いて電流リップル信号のノイズ除去を行う構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-211636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、スパイクノイズの除去に際し、たとえばコンデンサのように時定数を持った素子を用いたフィルタを使用すると、元の信号波形がその時定数により鈍化し形が変化してしまうという問題があった。また、ツェナーダイオードやバリスタ等のパッシブなノイズ除去素子を用いた場合も、これらが持つ容量成分や非線形な特性により、波形が変化してしまうという場合があった。このように、フィルタにより元の信号から波形が変化してしまうと、スパイクノイズは除去できるものの、センシングに用いる波形の品質が劣化し、センシング精度が低下してしまうおそれがあった。
【0005】
本発明の目的は、電気信号に含まれるスパイクノイズを元の波形形状を極力損なうことなく除去し得るノイズ除去回路およびノイズ除去方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のモータのノイズ除去回路は、電気信号からスパイク状の波形のノイズを除去するノイズ除去回路であって、前記電気信号が入力され、前記電気信号を増幅する信号増幅部と、前記電気信号の電圧に基づいて、前記信号増幅部における前記電気信号の増幅率を制御し、前記電気信号の電圧が大きくなるほど前記信号増幅部の増幅率が小さくなるように制限する増幅制御部と、を有し、前記信号増幅部は、前記電気信号を増幅して出力する差動増幅回路を有し、前記増幅制御部は、前記電気信号に基づいて形成された制御信号を電流信号に変換する信号変換部と、該信号変換部からの前記電流信号に基づいて前記差動増幅回路の制御電流を変化させ、前記信号増幅部の増幅率を制御するカレントミラー回路と、を有し、前記差動増幅回路の出力が所定値を超えないように、前記カレントミラー回路によって前記制御電流を制御して前記信号増幅部の増幅率を制限し、前記ノイズ除去回路の前段には、前記電気信号から、そのリップル成分の中心値を電気信号の変化成分として抽出して出力する制御電圧発生回路と、前記制御電圧発生回路の出力信号の波形を上下反転させて出力する信号反転回路と、が設けられ、前記制御信号は、前記信号反転回路から出力され、前記信号変換部に入力されることを特徴とする。
【0007】
本発明にあっては、電気信号の電圧が大きいとき、増幅制御部により、信号増幅部の増幅率を制限するので、電気信号にスパイクノイズが含まれている場合には増幅率が抑えられ、スパイクノイズ部分の増幅量が小さくなる。これにより、信号増幅部から出力される信号ではスパイクノイズが小さく抑えられ、元の波形を劣化させることなく、スパイクノイズが除去された状態の信号が形成される。
【0010】
さらに、前記電気信号の電圧が所定値以上になると予見された場合には、前記増幅制御部により、前記信号増幅部の増幅率を低減させるようにしても良い。
【0011】
本発明のモータのノイズ除去方法は、電気信号からスパイク状の波形のノイズを除去するノイズ除去回路を用いたノイズ除去方法であって、前記ノイズ除去回路は、前記電気信号が入力され、該電気信号を増幅して出力する差動増幅回路を有する信号増幅部と、前記電気信号に基づいて形成された制御信号を電流信号に変換する信号変換部と、該信号変換部からの前記電流信号に基づいて前記差動増幅回路の制御電流を変化させ、前記信号増幅部の増幅率を制御するカレントミラー回路と、を有し、前記差動増幅回路の出力が所定値を超えないように、前記電気信号の電圧が大きくなるほど前記信号増幅部の増幅率が小さくなるよう前記カレントミラー回路によって前記差動増幅回路の制御電流を制御し前記差動増幅回路の増幅率を制限し、前記ノイズ除去回路の前段には、前記電気信号から、そのリップル成分の中心値を電気信号の変化成分として抽出して出力する制御電圧発生回路と、前記制御電圧発生回路の出力信号の波形を上下反転させて出力する信号反転回路と、が設けられ、前記制御信号は、前記信号反転回路から出力され、前記信号変換部に入力されることを特徴とする。
【0012】
本発明にあっては、電気信号の電圧が大きいとき、カレントミラー回路により、差動増幅回路の制御電流を変化させて差動増幅回路の増幅率を制限するので、電気信号にスパイクノイズが含まれている場合には増幅率が抑えられ、スパイクノイズ部分の増幅量が小さくなる。これにより、差動増幅回路から出力される信号ではスパイクノイズが小さく抑えられ、元の波形を劣化させることなく、スパイクノイズが除去された状態の信号が形成される。
【0013】
また、本発明のモータ制御装置は、直流モータの電機子電流を検知し、その変化を電圧変化信号として出力する電流検出部と、該電流検出部の後段に配され、前記電機子電流に含まれるスパイク状の波形のノイズを除去するノイズ除去回路と、を有するモータ制御装置であって、前記ノイズ除去回路は、前記電圧変化信号を増幅する信号増幅部と、前記電圧変化信号に基づいて形成された制御信号が入力され、前記電圧変化信号の電圧に基づいて、前記信号増幅部における前記電圧変化信号の増幅率を制御し、前記電圧変化信号の電圧が大きくなるほど前記信号増幅部の増幅率が小さくなるように制限する増幅制御部と、を有し、前記信号増幅部は、前記電圧変化信号を増幅して出力する差動増幅回路を有し、前記増幅制御部は、前記制御信号を電流信号に変換する信号変換部と、該信号変換部からの前記電流信号に基づいて前記差動増幅回路の制御電流を変化させ、前記信号増幅部の増幅率を制御するカレントミラー回路と、を有し、前記ノイズ除去回路の前段には、前記電圧変化信号から、そのリップル成分の中心値を電圧変化信号の変化成分として抽出して出力する制御電圧発生回路と、前記制御電圧発生回路の出力信号の波形を上下反転させて出力する信号反転回路と、が設けられ、前記制御信号は、前記信号反転回路から出力され、前記信号変換部に入力されることを特徴とする。
【0014】
本発明にあっては、ノイズ除去回路において、電圧変化信号の電圧が大きいとき、増幅制御部により信号増幅部の増幅率を制限するので、電圧変化信号にスパイクノイズが含まれている場合には増幅率が抑えられ、スパイクノイズ部分の増幅量が小さくなる。これにより、信号増幅部から出力される信号ではスパイクノイズが小さく抑えられ、元の波形を劣化させることなく、スパイクノイズが除去された状態の信号が形成される。
【発明の効果】
【0016】
本発明のノイズ除去回路によれば、電気信号の電圧を増幅する信号増幅部と、電気信号の電圧に基づいて信号増幅部の増幅率を制御する増幅制御部と、を設け、電気信号の電圧が大きくなるほど信号増幅部の増幅率が小さくなるように制限するようにしたので、電気信号にスパイクノイズが含まれている場合には増幅率が抑えられ、スパイクノイズ部分の増幅量を小さくすることができる。このため、信号増幅部から出力される信号ではスパイクノイズが小さく抑えられ、元の波形を劣化させることなく、スパイクノイズを除去することが可能となる。
【0017】
本発明のノイズ除去方法によれば、電気信号の電圧を増幅する差動増幅回路と、電気信号に基づいて形成された制御信号を電流信号に変換する信号変換部と、信号変換部からの電流信号に基づいて差動増幅回路の制御電流を変化させ、信号増幅部の増幅率を制御するカレントミラー回路と、を使用し、カレントミラー回路により、電気信号の電圧が大きくなるほど信号増幅部の増幅率が小さくなるように、差動増幅回路の制御電流を変化させて差動増幅回路の増幅率を制限するようにしたので、電気信号にスパイクノイズが含まれている場合には増幅率が抑えられ、スパイクノイズ部分の増幅量を小さくすることができる。このため、差動増幅回路から出力される信号ではスパイクノイズが小さく抑えられ、元の波形を劣化させることなく、スパイクノイズを除去することが可能となる。
【0018】
本発明のモータ制御装置によれば、直流モータの電機子電流を検知し、その変化を電圧変化信号として出力する電流検出部と、電流検出部の後段に配され記電機子電流に含まれるスパイク状の波形のノイズを除去するノイズ除去回路と、を有するモータ制御装置にて、ノイズ除去回路に、電圧変化信号を増幅する信号増幅部と、電圧変化信号の電圧に基づいて信号増幅部の増幅率を制御する増幅制御部と、を設け、電圧変化信号の電圧が大きくなるほど信号増幅部の増幅率が小さくなるように、信号増幅部の増幅率を制限するようにしたので、電圧変化信号にスパイクノイズが含まれている場合には増幅率が抑えられ、スパイクノイズ部分の増幅量を小さくすることができる。このため、信号増幅部から出力される信号ではスパイクノイズが小さく抑えられ、元の波形を劣化させることなく、スパイクノイズを除去することができ、モータの制御精度の向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態であるノイズ除去回路の構成を示すブロック図である。
図2】電流検出部からの出力信号の一例である。
図3】制御電圧発生回路における処理を示す説明図である。
図4】CV反転回路おける処理を示す説明図である。
図5】ノイズ除去回路の作用を示す説明図である。
図6】ノイズ除去回路の内部構成を示す説明図である。
図7】ノイズ除去回路における実際のノイズ除去処理効果を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態であるノイズ除去回路1の構成を示すブロック図であり、本発明によるノイズ除去方法も当該回路にて実施される。ノイズ除去回路1は、例えば、車両のパワーウインド用モータの動作制御装置に使用され、モータ電流(電機子電流)に含まれるスパイクノイズを元の波形形状を維持しつつ除去する。これにより、モータ電流中から精度良く電流リップルをデジタル信号化して抽出できるようになり、ホールIC等の回転検出部材を用いることなく、DCモータの回転数や回転方向等を検出することが可能となる。
【0021】
ノイズ除去回路1は、電源2からブラシ付きDCモータ3(以下、モータ3と略記する)に電力を供給する電源ライン4上に配置される。電源ライン4にはシャント抵抗5が設けられており、ノイズ除去回路1は、シャント抵抗5の前後(電源2側とモータ3側)に接続される。ノイズ除去回路1の後段には、たとえば、スパイクノイズが除去された電流リップル信号からリップル成分のみを抽出し、矩形波の形で出力する図示しないリップル検出装置が接続される。モータ3の駆動制御装置は、ノイズ除去回路1や前述のリップル検出装置などを備え、リップル検出装置から出力された矩形波に基づき、モータ3の回転数や回転方向等を算出し、モータ3の動作を制御する。
【0022】
図1に示すように、ノイズ除去回路1の前段には、シャント抵抗5との間に、電流検出部(信号検出部)6と、制御電圧(CV:Control Voltage)発生回路7およびCV反転回路(信号反転回路)8が設けられている。ノイズ除去回路1には、電流検出部6から電圧変化信号S1が、また、CV反転回路8からゲイン制御信号CVinがそれぞれ入力される。ノイズ除去回路1は、ゲイン制御信号CVinを用いて、電圧変化信号S1からスパイクノイズを除去した上でそれを増幅し、波形調整信号Voutとして出力する。なお、ノイズ除去回路1の前段の制御電圧発生回路7およびCV反転回路(信号反転回路)8、または、これらと電流検出部6を含む構成をノイズ除去回路と考えても良い。
【0023】
電流検出部6は、シャント抵抗5の前後の電圧差(電圧降下)を検出してモータ駆動電流の電圧を検知する一方、その変化を電圧変化信号(電気信号)S1として出力する。図2は、電流検出部6からの出力信号の一例である。電流検出部6では、電源電圧に基づくバイアス電圧Voff1を基準として、シャント抵抗5の前後の電圧差が差動増幅された形で出力される。図2に示すように、電圧変化信号S1には、スパイクノイズなどのノイズ成分と電流リップル成分が含まれた状態となっており、電流検出部6からはこの状態の電圧信号が出力され、ノイズ除去回路1と制御電圧発生回路7に送られる。
【0024】
図3は制御電圧発生回路7における処理を示す説明図、図4はCV反転回路8おける処理を示す説明図である。制御電圧発生回路7は、ローパスフィルタ21を用いることにより、電流検出部6より入力された電圧変化信号S1(図2)から、電流リップル成分の中心値をモータ駆動電流の変化成分として抽出し(図3のfv(t))、元制御電圧CVとして出力する。元制御電圧CVはCV反転回路8に入力され、図4に示すように、信号の上下が反転され、ゲイン制御信号CVinが出力される。元制御電圧CVを上下反転させたゲイン制御信号CVin(電圧Vcvの)は、その後、ノイズ除去回路1に入力される。
【0025】
ここで、図5に示すように、電圧変化信号S1をそのまま増幅して矩形波信号を形成すると、スパイクノイズも同様に増幅され、図5(a)のような信号が形成されてしまう。その際、前述のように、時定数を持ったフィルタ等を使用すると、スパイクノイズは除去されるが信号波形が鈍化し、信号継続時間が正確に把握できない。そこで、ノイズ除去回路1では、元制御電圧CVを反転させたゲイン制御信号CVinを用い、ノイズ除去回路1内に配した可変利得増幅回路を制御し、元の波形形状を維持しつつスパイクノイズを除去する。
【0026】
図6は、ノイズ除去回路1の内部構成を示す説明図である。ノイズ除去回路1は、図1,6に示すように、電圧変化信号S1が入力される差動増幅回路部(信号増幅部)11と、差動増幅回路部11における増幅率(利得)を制御する増幅制御部12とから構成されている。差動増幅回路部11は、増幅制御部12によって、差動増幅回路に流れるテール電流(制御電流)を制御することにより、その増幅率が調整可能な可変利得増幅回路である。増幅制御部12には、制御電圧CVinが入力されるV/I変換部(信号変換部)13と、カレントミラー回路部14と、が設けられており、カレントミラー回路部14への入力電流を制御することにより、差動増幅回路部11の利得(ゲイン)を調整する。また、ノイズ除去回路1には、差動増幅回路部11の後段に、スパイクノイズが除去された信号を増幅し波形調整信号Voutとして出力する増幅出力回路部15が設けられている。
【0027】
ノイズ除去回路1に入力されたゲイン制御信号CVinは、V/I変換部13にて電流信号に変換され、カレントミラー回路部14に入力される。この場合、ゲイン制御信号CVin(Vcv)は、元制御電圧CVを上下反転させた形となっており、元制御電圧CVが大きい場合は小さく、小さい場合は大きい信号となっている。したがって、カレントミラー回路部14に入力される電流値も、元制御電圧CVが大きいほど小さく、小さいほど大きくなる。このため、差動増幅回路部11のテール電流Ic(図6参照)も同様に増減し、差動増幅回路部11におけるゲインは、元制御電圧CVが大きいときは抑えられ、小さいときは増加する。
【0028】
ノイズ除去回路1において、図5(a)の信号から所定値を超えるノイズを除去したい場合、その閾値となるレベル(図5のΔV limit:所定値)と、それを制御するためのテール電流Ic(Ic limit,図6参照)の関係は次のように近似される。
ΔV limit =(Ic limit/2)× Rc ・・・・・(1)
(Rc:差動増幅回路部11の電源(Vcc)側抵抗,図6参照)
なお、ΔV limitは、本来の信号に影響がないように、ΔV+/-との関係をΔV limit > ΔV+/- となるように調整することが好ましい。
【0029】
一方、テール電流Icは、ゲイン制御信号CVin(Vcv)をV/I変換部13にて変換した電流信号と同値であり(カレントミラー回路部14の作用)、次のように表される。
Ic limit = Vcv/Rf・・・・・・・・・・・・(2)
(Rf:V/I変換部13のカレントミラー回路部前段の抵抗,図6参照)
【0030】
上記(1)(2)式より、ΔV limitは次のように表すことができる。
ΔV limit =Vcv × Rc/(2Rf)
したがって、ΔV limitは、Vcvによって変化し、Vcvが小さい場合(スパイクノイズを含み、電圧変化信号S1の電圧が大きく、元制御電圧CVが大きくなる場合)は、ΔV limitが小さくなり、ゲインが抑えられる。つまり、ノイズ除去回路1では、差動増幅回路部11の出力がΔV limitよりも大きくならないように、Ic limitによって差動増幅回路部11の増幅率が制限される。また、この場合のΔV limitは、元制御電圧CVが大きくなるほど小さくなるように制御される。これにより、電圧変化信号S1におけるスパイクノイズ部分のみゲインが絞られ、形成される矩形波信号も図5(b)のような形となり、元の波形形状を維持しつつスパイクノイズが除去される。
【0031】
図3に示すように、電圧変化信号S1は、ノイズが大きくなると、電流リップル成分の中心値を抽出した元制御電圧CV図3のfv(t))も大きくなる。また、スパイクノイズは、電流値が大きいが現出しやすい傾向がある。そこで、このような電圧変化信号S1をノイズ除去回路1に入力すると、元制御電圧CVが大きいほど、すなわち、スパイクノイズが多く含まれノイズが大きい場合ほどゲインが抑えられる。一方、元制御電圧CVが小さいとき、すなわち、ノイズが少ないときはゲインが増大する。したがって、ノイズ除去回路1から出力される信号ではスパイクノイズは小さく抑えられ、波形調整信号Voutとしてスパイクノイズが除去された形の信号が出力される。
【0032】
このように、本発明によるノイズ除去回路1では、通常、定電流にて使用されることが多いカレントミラー回路をアクティブに使用し、差動増幅回路部11に流れるテール電流Icの電流量を制限し、差動増幅回路部11のゲインを制御する。その際、カレントミラー回路部14に対し、ゲイン制御信号CVinとして、制御対象となる電圧変化信号S1から抽出した元制御電圧CVの反転信号を入力する。これにより、電圧変化信号S1に応じてテール電流Icが変化し、差動増幅回路部11のゲインが制御される。そして、電圧変化信号S1にスパイクノイズが含まれている場合、テール電流Icを小さくして増幅率を制限する。
【0033】
このため、スパイクノイズが含まれている場合には、そのときのゲインが抑えられ、スパイクノイズ部分の増幅量が小さくなる一方、スパイクノイズがない部分は増幅量が保持され、結果的に、図5(b)のようなスパイクノイズが除去された信号が形成される。図7は、ノイズ除去回路1を用いた場合の実際のノイズ除去処理効果を示す説明図であり、図7(b)では、同図(a)の波形を損なうことなく、そこに含まれていたスパイクノイズが除去されていることが分かる。したがって、本発明のノイズ除去回路1を用いることにより、電気信号である電圧変化信号S1に含まれるスパイクノイズを、元の波形形状を極力損なうことなく除去することができ、波形の劣化を防止することが可能となる。その結果、モータ電流中から精度良く電流リップルをデジタル信号化して抽出できるようになり、モータの制御精度の向上を図ることが可能となる。
【0034】
本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
たとえば、前述の実施の形態では、ゲイン制御信号CVinとして、元制御電圧CVの反転信号を使用しているが、元制御電圧CVそのものを使用することも可能である。その場合は、元制御電圧CVが大きいとき差動増幅回路部11のゲインが小さくなるように、V/I変換部13の出力を反転させたり、テール電流Icに対する差動増幅回路部11の動作を逆にしたりするなどの措置を行う。
【0035】
また、前述の実施の形態では、ゲイン制御信号CVinの変化に応じてテール電流Icを変化させているが、ゲイン制御信号CVinの変化からその増減を予測し、スパイクノイズが含まれる可能性が予見される場合は、アクティブにテール電流Icを制御しスパイクノイズを除去しても良い。たとえば、ゲイン制御信号CVinが所定値以上となった場合や、ゲイン制御信号CVinの微小時間における変化量が閾値を超えた場合(CVinの微分係数が所定値以上となった場合など)には、スパイクノイズが入ってくる可能性が高いと判断し、別途設けた制御装置などによりテール電流Icを低下させるようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明によるノイズ除去回路およびノイズ除去方法は、モータの動作制御のみならず、電気信号におけるスパイクノイズ除去に広く適用可能である。たとえば、前述の実施の形態のようなパワーウインド用モータの動作制御のみならず、ワイパやパワーシート等の他の車載電動装置や、ブラシ付きモータを用いた家庭用電気製品等にも本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0037】
1 ノイズ除去回路
2 電源
3 ブラシ付きDCモータ
4 電源ライン
5 シャント抵抗
6 電流検出部
7 制御電圧発生回路
8 CV反転回路
11 差動増幅回路部
12 増幅制御部
13 V/I変換部
14 カレントミラー回路部
15 増幅出力回路部
21 ローパスフィルタ
CV 元制御電圧
CVin ゲイン制御信号
Ic テール電流
S1 電圧変化信号
Vcv ゲイン制御信号電圧
Vout 波形調整信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7