(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】浴室ユニット
(51)【国際特許分類】
E04H 1/12 20060101AFI20220203BHJP
【FI】
E04H1/12 301
(21)【出願番号】P 2017240020
(22)【出願日】2017-12-14
【審査請求日】2020-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】313014077
【氏名又は名称】トクラス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082876
【氏名又は名称】平山 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100086807
【氏名又は名称】柿本 恭成
(72)【発明者】
【氏名】松井 悠絵
【審査官】新井 夕起子
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-056380(JP,U)
【文献】特開2016-101871(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 1/12
B60R 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴室空間を形成する内壁面に、水平方向の一方から他方に向かって明度が高くなるグラデーション部を配置した浴室ユニット
であって、
隣接する複数の前記内壁面に亘って、明度が連続して高くなるように前記グラデーション部を配置した、浴室ユニット。
【請求項2】
対向する一対の内壁面に、それぞれ前記グラデーション部を配置し、当該それぞれのグラデーション部の明度上昇方向が一致する、請求項1に記載の浴室ユニット。
【請求項3】
前記一方は前記浴室空間の出入口側であり、前記他方は前記出入口側に対向する奥側である、請求項1
または2に記載の浴室ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は浴室ユニットに関する。詳細には、浴室空間に広がり感を与え、窮屈に感じづらい浴室ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
日本の住宅事情においては、浴室を広くすることが困難な場合が多い。そこで、浴室ユニットは、サイズを維持しながら、広がり感があり、窮屈に感じづらい浴室空間を実現することが求められている。
例えば、特許文献1では、コーナー部の質感をアクセント的に変えて、浴室空間を広く演出している。特許文献2では、鏡の配置を工夫して、圧迫感を減らしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-54543号公報
【文献】特開平7-11788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の技術は、コーナー部に床面から天井に亘って、内壁面とは異素材のコーナー部材を配置する。このため、部品点数や取付作業が多くなり、コスト増加を招いてしまう。
また、特許文献2記載の技術は、洗い場水栓が取り付けられた内壁面に、横長の鏡を幅いっぱいに配置する。このため、浴室空間の全体を広く感じさせることができず、限定的な効果しか得られない。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであって、コスト増加を招くことなく、浴室空間に広がり感を与え、圧迫感を減らすことができる浴室ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、以下の手段を提案する。
本発明に係る浴室ユニットの第一実施態様は、浴室空間を形成する内壁面に、水平方向の一方から他方に向かって明度が高くなるグラデーション部を配置した浴室ユニットであって、隣接する複数の内壁面に亘って、明度が連続して高くなるようにグラデーション部を配置したことを特徴とする。
【0007】
本発明に係る浴室ユニットの第二実施態様は、第一実施態様において、対向する一対の内壁面に、それぞれ前記グラデーション部を配置し、当該それぞれのグラデーション部の明度上昇方向が一致することを特徴とする。
【0009】
本発明に係る浴室ユニットの第三実施態様は、第一または第二実施態様において、前記一方は前記浴室空間の出入口側であり、前記他方は前記出入口側に対向する奥側であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、コスト増加を招くことなく、浴室空間に広がり感を与え、圧迫感を減らすことができる浴室ユニットを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第一実施形態に係る浴室ユニット1を示す図であって、浴室空間Sを天井側から見た俯瞰図である。
【
図2】本発明の第二実施形態に係る浴室ユニット2を示す図であって、浴室空間Sを天井側から見た俯瞰図である。
【
図3】浴室ユニット2の変形例を示す図であって、浴室空間Sを天井側から見た俯瞰図である。
【
図4】グラデーション部31~34の変形例(ドット模様)を示す図である。
【
図5】グラデーション部31~34の変形例(縦縞模様)を示す図である。
【
図6】ドア25等のレイアウトを変更した浴室ユニット1を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0013】
〔第一実施形態〕
図1は、本発明の第一実施形態に係る浴室ユニット1を示す図であって、浴室空間Sを天井側から見た俯瞰図である。
浴室ユニット1は、内壁面11~14、洗い場パネル16、天井パネル(不図示)、浴槽21、ドア25を備える。以下の説明において、これら部材に囲まれた空間を浴室空間Sと呼ぶ。
出入口であるドア25側から見たときに、左側が内壁面11、右側が内壁面12、奥側が内壁面13、手前側が内壁面14である。各内壁面11~14は、1枚のパネルにより構成される場合に限らず、複数枚のパネルにより構成される場合もある。
内壁面11~14は、鋼鈑やFRP(繊維強化プラスティック)、人造大理石などにより形成される。
内壁面13には、水栓22、シャワー器具23、鏡24等が取り付けられる。内壁面14には、ドア25等が取り付けられる。
【0014】
図1に示すように、内壁面11,12の表面には、色の明度が出入口側(一方)から奥側(他方)に向かって高くなるグラデーション部31,32が設けられる。
グラデーション部31は、左側の内壁面11に配置され、グラデーション部32は、右側の内壁面12に配置される。つまり、グラデーション部31,32は、対向配置された左右一対の内壁面11,12に設けられる。
【0015】
グラデーション部31,32は、左右側の内壁面11,12の全面に配置される。グラデーション部31,32は、左右側の内壁面11,12において、出入口側が暗い色にされ、奥側が明るい色にされる。そして、グラデーション部31,32は、出入口側から奥側の間において、色の明度が連続的に変化する。つまり、グラデーション部31,32は、水平方向において、出入口側(一方)から奥側(他方)に向かう方向が明度上昇方向に設定される。明度上昇方向とは、色の明度が低度から高度に上昇する方向をいう。グラデーション部31,32は、明度上昇方向が一致する。
なお、グラデーション部31,32は、垂直方向において、色の明度が一定である。
【0016】
グラデーション部31,32の色相や彩度は任意である。グラデーション部31,32は、同色または同系色であることが好ましい。グラデーション部31,32の色は、有彩色、無彩色のいずれであってもよい。
出入口と対向する奥側の内壁面13は、グラデーション部31,32の奥側の色(明るい色)と同色にされる。出入口側の内壁面14は、グラデーション部31,32の出入口側の色(暗い色)と同色にされる。
【0017】
グラデーション部31,32は、出入口側が暗い色にされ、奥側が明るい色にされ、水平方向において出入口側から奥側に向かって明度が高くなる。これにより、入浴者が浴室空間Sの出入口側から奥側を見たときに、浴室空間Sの水平方向の遠近感が強調されて、浴室空間Sの水平方向の広がりを強く感じるようになる。
つまり、浴室ユニット1は、左右側の内壁面11,12にグラデーション部31,32を設けることにより、浴室空間Sに広がり感を与え、圧迫感を減らすことができる。
なお、快適な入浴時間を過ごすには、浴室ユニット1内に入ったときの心持ちが重要な因子の一つとなる。ゆえに、ドア25を開けて、浴室ユニット1内を見たときの印象が大切である。すなわち、浴室ユニット1内に入るときに浴室空間Sの広がりを強く感じることにより、いい心持ちとなり快適な入浴時間を過ごすことができる。
【0018】
グラデーション部31,32は、インクジェット印刷により内壁面11,12に配置される。すなわち、インクジェット印刷装置から内壁面11,12に向けてインクを吐出して、内壁面11,12の表面にグラデーション部31,32を印刷するインクジェット印刷が用いられる。
【0019】
グラデーション部31,32は、内壁面11,12の全面に配置される場合に限らない。グラデーション部31,32は、内壁面11,12の一部にのみ配置されてもよい。例えば、グラデーション部31,32は、水平方向の長さが内壁面11,12の半分程度であってもよい。また、グラデーション部31とグラデーション部32は、水平方向の長さが異なってもよい。また、内壁面11,12のいずれか一方のみにグラデーション部が設けられてもよい。この場合であっても、上述した効果が得られる。
【0020】
さらにまた、グラデーション部31,32は、内壁面11,12の出入口側(一方)が明るい色にされ、奥側(他方)が暗い色にされてもよい。これにより、入浴者が浴室空間Sの奥側から出入口側を見たときに、浴室空間Sの水平方向の遠近感が強調されて、浴室空間Sの水平方向の広がりを強く感じるようになる。
【0021】
〔第二実施形態〕
図2は、本発明の第二実施形態に係る浴室ユニット2を示す図であって、浴室空間Sを天井側から見た俯瞰図である。本実施形態において、第一実施形態と同一の部材等には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0022】
図2に示すように、左右の内壁面11,12に加えて、奥側の内壁面13にもグラデーション部33,34が設けられる。
【0023】
グラデーション部33は、左側の内壁面11から奥側の内壁面13に亘って配置される。つまり、グラデーション部33は、内壁面11と内壁面13が接するコーナー部C1を含むように配置される。また、グラデーション部33は、色の明度が内壁面11の出入口側から奥側に向かって高くなり、さらに連続して内壁面13の左側から中央に向かって高くなる。なお、内壁面11の奥側と内壁面13の左側は同一の明度である。
グラデーション部34は、右側の内壁面12から奥側の内壁面13に亘って配置される。つまり、グラデーション部34は、内壁面12と内壁面13が接するコーナー部C2を含むように配置される。また、グラデーション部34は、色の明度が内壁面12の出入口側から奥側に向かって高くなり、さらに連続して内壁面13の右側から中央に向かって高くなる。なお、内壁面12の奥側と内壁面13の右側は同一の明度である。
【0024】
グラデーション部33,34は、グラデーション部31,32と同様に形成される。
内壁面13のうち、グラデーション部33,34を除く領域は、グラデーション部33,34の中央側の色(明るい色)と同色にされる。内壁面14は、グラデーション部33,34の出入口側の色(暗い色)と同色にされる。
【0025】
グラデーション部33,34は、水平方向において出入口側(一方)から奥側(他方)に向かって明度が高くなる。つまり、グラデーション部33,34は、出入口側(一方)から奥側(他方)に向かう方向が明度上昇方向に設定される。グラデーション部33,34は、明度上昇方向が一致する。これにより、入浴者が浴室空間Sの出入口側から奥側を見たときに、浴室空間Sの水平方向の遠近感がさらに強調されて、浴室空間Sの水平方向の広がりをより強く感じるようになる。
また、グラデーション部33,34は、隣接する複数枚の内壁面11,13、内壁面12,13に亘って設けられる。グラデーション部33,34がコーナー部C1,C2を含むように配置されるため、コーナー部C1,C2が内壁面11,12,13に同化する。これにより、内壁面11,12,13の一体感が強調されて、浴室空間Sの水平方向の広がりをより強く感じるようになる。
したがって、浴室ユニット2は、内壁面11,12,13にグラデーション部33,34を設けることにより、浴室空間Sに広がり感を与え、圧迫感を減らすことができる。
【0026】
本実施形態のグラデーション部33,34は、第一実施形態のグラデーション部31,32と同様に、インクジェット印刷により内壁面11,12,13に形成される。
【0027】
グラデーション部33,34は、内壁面11,12の全面に配置される場合に限らない。グラデーション部33,34は、内壁面11,12の一部にのみ配置されてもよい。
グラデーション部33,34は、内壁面13の全面に配置されてもよい。つまり、グラデーション部33,34を内壁面13の中央付近で接続してもよい。
また、グラデーション部33とグラデーション部34は、水平方向の長さが異なっていてもよい。
内壁面11,12のいずれか一方のみにグラデーション部が設けられてもよい。
また、
図3に示すように、グラデーション部33,34は、出入口側の内壁面14から左右側の内壁面11,12を経て奥側の内壁面13に亘るように配置されてもよい。
これらの場合であっても、上述した効果が得られる。
【0028】
グラデーション部33,34は、内壁面11,12の出入口側が明るい色にされ、奥側が暗い色にされる場合であってもよい。これにより、入浴者が浴室空間Sの奥側から出入口側を見たときに、浴室空間Sの水平方向の遠近感が強調されて、浴室空間Sの水平方向の広がりを強く感じるようになる。
【0029】
〔グラデーション部31~34の変形例〕
図4および
図5は、グラデーション部31~34の変形例を示す図であり、
図4はドット模様、
図5は縦縞模様である。
グラデーション部31~34は、内壁面11,12等を塗りつぶす場合に限らない。グラデーション部31~34は、ドット模様や縦縞模様により実現してもよい。
【0030】
以下、グラデーション部31をドット模様や縦縞模様で実現する例について説明する。
図4に示すように、グラデーション部31をドット模様で実現する場合は、内壁面11を明るい色にし、その上に暗い色のドット模様を配置する。
ドット模様は、直径が一定であり、内壁面11の出入口側が高密度、奥側が低密度に配置される。または、ドット模様は、内壁面11の出入口側が大径、奥側が小径であり、均一な密度に配置される。これにより、グラデーション部31は、水平方向において出入口側(一方)から奥側(他方)に向かって明度が高くなる。
【0031】
図4の例とは反対に、内壁面11を暗い色にし、その上に明るい色のドット模様を配置する。ドット模様は、直径が一定であり、内壁面11の出入口側が低密度、奥側が高密度に配置される。または、ドット模様は、内壁面11の出入口側が小径、奥側が大径であり、均一な密度に配置される。これにより、グラデーション部31は、水平方向において、出入口側(一方)から奥側(他方)に向かって明度が高くなる。
【0032】
図5に示すように、グラデーション部31を縦縞模様で実現する場合は、内壁面11を明るい色にし、その上に暗い色の縦縞模様を配置する。縦縞模様は、幅が一定であり、内壁面11の出入口側が高密度、奥側が低密度に配置される。または、縦縞模様は、内壁面11の出入口側が幅広、奥側が幅狭であり、均一な密度に配置される。これにより、グラデーション部31は、水平方向において出入口側(一方)から奥側(他方)に向かって明度が高くなる。
【0033】
図5の例とは反対に、内壁面11を暗い色にし、その上に明るい色の縦縞模様を配置する。縦縞模様は、幅が一定であり、内壁面11の出入口側が低密度、奥側が高密度に配置される。または、縦縞模様は、内壁面11の出入口側が幅狭、奥側が幅広であり、均一な密度に配置される。これにより、グラデーション部31は、水平方向において出入口側(一方)から奥側(他方)に向かって明度が高くなる。
【0034】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、実施形態で挙げた具体的な形状や構成等は一例にすぎず、適宜変更が可能である。
【0035】
例えば、
図6に示すように、ドア25や浴槽21などのレイアウトは、任意に変更することができる。最も典型的には、出入口から見て広がり感を呈するように、内壁面11,12にグラデーション部を配することが好ましい。
また、例えば、浴槽21,水栓22,シャワー器具23,鏡24などの設置レイアウトは図示の例に限らない。
【0036】
内壁面13,14にグラデーション部を設けてもよい。このグラデーション部としては、グラデーション部31~34を選択することができる。この場合であっても、上述した効果が得られる。
【0037】
グラデーション部31~34は、例えば、浴室空間Sの浴槽側(一方)から洗い場側(他方)に向けて明度が高くなる場合であってもよい。この場合であっても、上述した効果が得られる。
【0038】
グラデーション部31~34の色の明度の変化は、線形に変化する場合に限らず、非線形に変化してもよい。
グラデーション部31~34は、色の明度が変化する場合に限らない。色の濃淡(明度と彩度の組み合わせ)が変化する場合であってもよい。また、グラデーション部31~34は、色相が変化する場合であってもよい。いわゆる色彩遠近法により赤や黄等の暖色系が前方に迫り出し、青等の寒色系が後方に向かって吸収されていくように感じることを利用してもよい。
【0039】
グラデーション部31~34の形成方法は、インクジェット印刷に限らない。グラデーション部31~34は、ロール印刷や印刷シートを内壁面に貼り付ける方法等によって形成してもよい。
【符号の説明】
【0040】
1,2 浴室ユニット
11~14 内壁面
16 洗い場パネル
21 浴槽
22 水栓
23 シャワー器具
24 鏡
25 ドア
31~34 グラデーション部
C1,C2 コーナー部
S 浴室空間