(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】バルーンカテーテル
(51)【国際特許分類】
A61M 25/10 20130101AFI20220119BHJP
【FI】
A61M25/10 510
(21)【出願番号】P 2017552788
(86)(22)【出願日】2015-12-24
(86)【国際出願番号】 US2015000440
(87)【国際公開番号】W WO2016105556
(87)【国際公開日】2016-06-30
【審査請求日】2018-12-20
(32)【優先日】2014-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517222580
【氏名又は名称】チューター,ティモシー,エー.エム
【氏名又は名称原語表記】CHUTER,Timothy,A.M
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】チューター,ティモシー,エー.エム
【審査官】胡谷 佳津志
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-515567(JP,A)
【文献】特表2012-520743(JP,A)
【文献】特表2010-506655(JP,A)
【文献】国際公開第2007/065137(WO,A2)
【文献】特開昭63-077461(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0318029(US,A1)
【文献】特表2001-504359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療処置を実行する管状装置において、
近位端と、患者の体内に導入するように寸法設定された遠位端と、近位端と遠位端との間に延びるルーメンとを含んで、前記近位端と遠位端との間に延在する長手方向軸を画定する細長い管状部材と、
前記遠位端にある膨張可能部材であって、実質的に密閉された内部空間を取り囲む内面を有する外側不透過性膜を備える膨張可能部材と、
前記内面に連結された前記内部空間内のファイバ網であって、前記ルーメンから前記内部空間に膨張媒体が移動されて前記膜が膨張態様に膨張されるときに、前記膜の膨張を制限するように構成されたファイバ網と、を備え、
前記ファイバ網が
複数のファイバを含み、各ファイバが前記内面に連結された両端を
有して、前記複数のファイバの中間領域が前記内部空間を横断して延在しており、
前記膜が膨張態様に膨張されたときに、前記複数のファイバが、前記膜を、前記膨張態様において、前記長手方向軸とほぼ平行に延在する1以上のほぼ平坦な壁を画定する長方形またはその他の形状となるように制限することを特徴とする管状装置。
【請求項2】
医療処置を実行する管状装置において、
近位端と、患者の体内に導入するように寸法設定された遠位端と、近位端と遠位端との間に延びるルーメンとを含んで、前記近位端と遠位端との間に延在する長手方向軸を画定する細長い管状部材と、
前記遠位端にある膨張可能部材であって、実質的に密閉された内部空間を取り囲む内面を有する外側不透過性膜を備える膨張可能部材と、
前記内面に連結された前記内部空間内のファイバ網であって、前記ルーメンから前記内部空間に膨張媒体が移動されて、前記膜が膨張態様で非円形形状に膨張されるときに、前記膜の膨張を制限するように構成されたファイバ網と、を備え、
前記ファイバ網が
複数のファイバを含み、各ファイバが前記内面の互いにほぼ対向する位置に連結された両端を有して、前記複数のファイバの中間領域が前記内部空間を横断して延在しており、
前記膜が膨張態様に膨張されたときに、前記複数のファイバが、前記膜を、前記膨張態様において、前記膨張可能部材の対向する第1および第2の端部の間で前記長手方向軸とほぼ平行に延在する1以上のほぼ平坦な壁を画定する長方形またはその他の形状となるように制限することを特徴とする管状装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の管状装置において、
前記膜が、膨張態様において、少なくとも1の実質的に平面状の表面を有することを特徴とする管状装置。
【請求項4】
医療処置を実行する管状装置において、
近位端と、患者の体内に導入するように寸法設定された遠位端と、近位端と遠位端との間に延びるルーメンとを含んで、前記近位端と遠位端との間に延在する長手方向軸を画定する細長い管状部材と、
前記遠位端にある膨張可能部材であって、実質的に密閉された内部空間を取り囲む内面を有する外側不透過性膜を備える膨張可能部材と、
前記内面に連結された前記内部空間内のファイバ網であって、
当該ファイバ網は、膨張媒体が前記内部空間内に移動して前記膜を膨張態様へと膨張させるときに膜の膨張を制限するように構成され、
前記膜が前記膨張態様に膨張したときに、各ファイバが前記内面に連結された両端を有して、前記複数のファイバの中間領域が前記内部空間を横断して延在しており、前記ファイバ網のファイバが、互いにほぼ平行に延在して、前記膨張可能部材の膨張を、前記長手方向軸とほぼ平行に延在する1以上のほぼ平坦な壁を画定する長方形またはその他の形状に制限するファイバ網と、を備えることを特徴とする管状装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の管状装置において、
前記ファイバ網が、前記内部空間を実質的に占めることを特徴とする管状装置。
【請求項6】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の管状装置において、
前記膜が膨張態様へと膨張したときに前記ファイバが互いにほぼ平行に延び、それにより、前記ファイバの長手軸に沿う方向への前記膜の1またはそれ以上の壁の膨張を制限することを特徴とする管状装置。
【請求項7】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の管状装置において、
前記複数のファイバが、実質的に非弾性の材料から形成されていることを特徴とする管状装置。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか一項に記載の管状装置において、
前記膜が、弾性材料から形成されていることを特徴とする管状装置。
【請求項9】
請求項1乃至7の何れか一項に記載の管状装置において、
前記膜が、実質的に非弾性の材料から形成されていることを特徴とする管状装置。
【請求項10】
請求項1乃至5の何れか一項に記載の管状装置において、
前記ファイバ網が、互いに直交するように向けられた第1セットのファイバおよび第2セットのファイバを含み、それにより、少なくとも2つの寸法において前記膜の膨張を制限することを特徴とする管状装置。
【請求項11】
請求項10に記載の管状装置において、
前記第1セットのファイバが、前記膜の内面の第1および第2の対向面に連結された第1の複数のファイバを含み、前記膜が膨張態様に膨張したときに、前記第1の複数のファイバが、第1軸と実質的に平行に互いにほぼ平行に延びることを特徴とする管状装置。
【請求項12】
請求項11に記載の管状装置において、
前記第2セットのファイバが、前記膜の内面の第3および第4の対向面に連結された第2の複数のファイバを含み、前記膜が膨張態様に膨張したときに、前記第2の複数のファイバが、第2軸と実質的に平行に互いにほぼ平行に延びることを特徴とする管状装置。
【請求項13】
請求項12に記載の管状装置において、
前記第2軸が前記第1軸に対してほぼ垂直であることを特徴とする管状装置。
【請求項14】
請求項1乃至13の何れか一項に記載の管状装置において、
前記近位端に連結された真空源をさらに備え、前記真空源が前記ルーメンを介して前記内部空間に通じ、前記真空源が、前記内部空間に十分な真空を与えて、前記膜および前記ファイバ網を患者の体内に導入するために圧縮態様に圧縮するように動作可能であることを特徴とする管状装置。
【請求項15】
請求項14に記載の管状装置において、
真空が切り離されたときに、前記ファイバ網が、膨張態様へと前記膜を付勢するように構成されていることを特徴とする管状装置。
【請求項16】
請求項14または15に記載の管状装置において、
前記近位端に連結された膨張媒体源をさらに備え、前記膨張媒体源が前記ルーメンを介して前記内部空間に通じ、前記膨張媒体源が、膨張媒体を前記内部空間内に移動させて内部圧力を増加させるとともに前記膜を膨張状態に膨張させるように動作可能であることを特徴とする管状装置。
【請求項17】
請求項16に記載の管状装置において、
前記真空源および前記膨張媒体源が同じ装置であることを特徴とする管状装置。
【請求項18】
医療処置を実行する管状装置において、
近位端と、患者の体内に導入するように寸法設定された遠位端と、近位端と遠位端との間に延びるルーメンとを含んで、前記近位端と遠位端との間に延在する長手方向軸を画定する細長い管状部材と、
前記遠位端にある膨張可能部材であって、実質的に密閉された内部空間を取り囲む内面を有する外側不透過性膜を備える膨張可能部材と、
前記内面に連結された前記内部空間内のファイバ網であって、前記ルーメンから前記内部空間に膨張媒体が移動されて前記膜が膨張態様に膨張されるときに、前記膜の膨張を制限するように構成されたファイバ網とを備え、
前記ファイバ網が、互いに直交するように向けられた第1セットのファイバおよび第2セットのファイバを含み、それにより、少なくとも2つの寸法において前記膜の膨張を制限し、前記膨張可能部材が、当該膨張可能部材の第1端部と第2端部との間で前記長手方向軸とほぼ平行に延在する複数の平坦な壁を規定するようになって
おり、
各ファイバが前記内面に連結された両端を有して、前記複数のファイバの中間領域が前記内部空間を横断して延在していることを特徴とする管状装置。
【請求項19】
請求項1乃至17のいずれか1項に記載の管状装置を製造する方法において、
膜材料の1以上のセクションを形成して膜の1以上の側壁を画定することにより、膜を作成するステップと、
各ファイバの両端を前記膜の内面に取り付けるステップであって、前記ファイバの中間領域が前記内部空間を横断して延びるように取り付けるステップと、
長手方向軸を画定する管状部材の遠位端の周りにバルーンを設けるステップであって、前記ファイバが、前記膜を、膨張態様において前記長手方向軸とほぼ平行に延在する1以上のほぼ平坦な壁を画定する長方形またはその他の形状となるように制限するものであるステップと、を含むことを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法において、前記ファイバの両端を前記膜の内面に取り付けるステップが、
接着剤の層を前記内面に塗布して、前記ファイバの端部を前記内面に取り付けるステップと、
前記ファイバを互いに結合または連結してファイバの塊を形成し、次いでファイバの塊を前記膜の内部空間に挿入して前記内面に集合的に結合させるステップと、
多孔質材料内でファイバを互いに付着させて内包されたファイバ網を形成し、多孔質材料が、前記膜の内面に取り付けられるファイバ網の外面を提供するものであるステップと、の1つを含むことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテル、およびカテーテルの製造方法および使用方法に関する。より詳細には、本発明は、内部支持を有するバルーンおよび/または非円形の輪郭へと膨張するバルーンを含むカテーテル、並びに、そのようなバルーンを含むカテーテルを製造および使用する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
バルーンは、体内管腔の大部分が円形の断面形状を有するため、大部分のバルーンと同様に、そのような管腔の壁に実質的に均一な力を提供するのに優れている。実際には、膨張時に、円形断面形状を有する円筒形状以外のその他の形状を取るバルーンを形成することは困難である。何故なら、そのような形状は、一般に、表面積に対する体積の比を最大にすることによって壁張力を最小にするからである。
【0003】
バルーンが非円形の表面に力を加えるために使用される場合、バルーンが円形形状になろうとする性質が問題になる。当接する表面の形状がバルーンの形状(すなわち、円形)と一致する場合にのみ、圧力が均一に加えられる。管腔の境界の外側における多くの圧迫用途においては、一定の非円形の膨張形状を有するバルーンが必要とされる。
【0004】
このため、非円形の輪郭へと膨張させることができるバルーンが有用であろう。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、カテーテル、およびカテーテルの製造方法および使用方法を対象とする。より詳細には、本発明は、内部支持を有するバルーンおよび/または非円形の輪郭に膨張するバルーンを含むカテーテル、並びに、そのようなバルーンを含むカテーテルを製造および使用する方法を対象とする。
【0006】
バルーンの壁に剛性要素を置くことにより膨張したバルーンに非円形の輪郭を付ける幾つかの方法が存在するが、それら要素を非侵襲的挿入のために薄型の態様に圧縮するのは容易ではない。
【0007】
代替的なアプローチは、複数のバルーンを使用するもので、その各々が、膨張したときに円形の断面形状を取るが、組み合わせた複合バルーン構造は異なる形状を有することができる。しかしながら、バルーンの表面は、必然的に、個々のバルーンの曲面を反映した凹凸のある表面を有することになる。構成バルーンの数を増やせば、凹凸は減少するが、体積が増加する。
【0008】
さらに、内部バルーンのすべての壁は、表面層におけるバルーンの外向きの動きを抑制する役割しか果たさないが、それは、内部のファイバ網によって同様に良好に行わせることができる一機能である。ファイバ網は、バルーン外皮の外側への膨張に抵抗する役割を果たすのみであるため、多くの形態を取ることができる。ファイバが実質的に非弾性で相互連結されている場合、ファイバの塊の最大に拡張した形状は、その外面にしっかりと接着されたバルーン外皮の最大膨張形状になる。例示的な実施形態では、ファイバの塊は、相互接続された可撓性ポリマーまたは可撓性金属ワイヤのストランドで作られたスポンジまたはスクラブパッドに類似するものとしてもよい。
【0009】
例示的な実施形態によれば、医療処置を実行するための管状装置が提供され、この管状装置が、近位端と、患者の体内に導入するように寸法設定された遠位端と、近位端と遠位端との間に延びるルーメンとを含む細長い管状部材と、前記遠位端上にある膨張可能部材であって、実質的に密閉された内部空間を取り囲む内面を有する外側不透過性膜を備える膨張可能部材と、前記内面に連結された前記内部空間内のファイバ網であって、前記ルーメンから前記内部空間に膨張媒体が移動されて前記膜が膨張態様に膨張されるときに、前記膜の膨張を制限するように構成されたファイバ網とを備える。
【0010】
別の例示的な実施形態によれば、患者の体内で医療処置を実行するための方法が提供され、この方法が、膨張可能部材を管状装置の遠位端に提供するステップであって、膨張可能部材が、実質的に密閉された内部空間を取り囲む内面を有する外側膜と、前記内面に連結された前記内部空間内のファイバ網とを備える、ステップと、前記膨張可能部材を圧縮態様に圧縮するステップと、前記遠位端を圧縮態様の前記膨張可能部材とともに患者の体内に導入するステップと、患者の体内の身体構造に隣接して前記膨張可能部材を配置するステップと、前記膨張可能部材を膨張態様に膨張させて身体構造と接触させるステップであって、前記ファイバ網が前記膜の膨張を制限する、ステップとを備える。
【0011】
本発明の必要性および使用を含むその他の態様および特徴は、添付の図面と併せて以下の説明を考慮することにより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図面に示す例示的な装置は、図示された実施形態の様々な態様および特徴を図示することに重点を置いて、必ずしも一定の縮尺で描かれていないことが理解されよう。以下の図面は例示的な実施形態を示している。
【
図1】
図1は、遠位端に担持された非円形バルーンを含むカテーテルの例示的な実施形態の斜視図である。
【
図2】
図2Aおよび
図2Bは、
図1のカテーテルに設けることができる膨張態様の内部ファイバ網を含む非円形バルーンの例示的な実施形態のそれぞれ斜視図および断面図である。
図2Cおよび
図2Dは、圧縮態様にある
図2Aおよび
図2Bのバルーンのそれぞれ斜視図および断面図である。
【
図4】
図4は、内部支持されたバルーンが管状プロテーゼを支持する例示的な実施形態の断面図である。
【
図5】
図5は、管状プロテーゼ内で膨張した従来のバルーンの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面を参照すると、
図1は、管状部材または本体10と、その上に担持されたバルーン20とを含むカテーテル8の例示的な実施形態を示している。本明細書の他の箇所でさらに説明するように、バルーン20は、概して(例えば、
図2A-
図2Dに示すような)内部ファイバ網30を含み、この内部ファイバ網が、所定の方法でバルーン20の膨張を制限し、当該バルーン20を非円形または非円筒形の形状、例えば1またはそれ以上の実質的に平面状の壁を規定する矩形またはその他の形状に膨張させる。
【0014】
全体として、管状部材10は、例えば、ハンドルまたはハブ50を含む近位端12と、患者の体内に導入するようなサイズおよび/または形状とされた遠位端14と、それらの間に延びて、概して長手方向軸18を規定する1またはそれ以上のルーメン16とを含む。例えば、膨張ルーメン16aを設けることができ、この膨張ルーメンは、ハブ50の側部ポート52aから延び、膨張媒体の供給源、例えばシリンジ(生理食塩水などの膨張ガスまたは流体で満たされている:図示省略)とバルーン20の内部との間を連通する。任意選択的には、1またはそれ以上の追加ルーメン、例えば、近位端のポート52bと遠位端14の出口17(図示省略)との間に延びるガイドワイヤまたは器具用のルーメンを設けるようにしてもよい。
【0015】
一実施形態では、カテーテル8は、近位端12と遠位端14との間に実質的に均質な構造を有することができる。代替的には、構造は、カテーテル8の長さに沿って変化して、所望の特性を提供するものであってもよい。例えば、近位端12に隣接する管状部材10の近位部分は、実質的に剛性または半剛性とすることができ、例えば、カテーテル8の遠位端14を押圧するか又は近位端12から操作するのに十分なコラム強さを提供する一方で、遠位部分24は実質的に可撓性とすることができる。
【0016】
図1に示すように、バルーン20は、例えば管状部材10がテーパ状および/またはその他の非侵襲性の遠位先端15で終端となるように、遠位端14の周りに取り付けられるものであってもよい。代替的には、バルーン20は、例えば
図2A-2Dに示す実施形態と同様に、バルーン20が部分的にまたは全体的に遠位端14を遠位側に越えて延びるように、遠位先端に取り付けられるものであってもよい。
【0017】
図2A-
図2Dは、バルーン20の例示的な実施形態を示しており、このバルーンは、外側バルーン膜22と、内部支持構造、例えば、複数のファイバ32を含むファイバ網30とを含む。膜22は、全体として、内面24および外面26を含み、実質的に囲まれた内部空間28を規定する。概して、バルーン20は、(例えば、
図2Cおよび
図2Dに示すような)圧縮または送達態様と、(例えば、
図2Aおよび
図2Bに示すような)膨張態様との間で膨張可能である。
【0018】
ファイバ網30は、例えば膨張されたときにバルーン20を所定の形状に構成するために、膜22の膨張および/または変形を制限するように構成されている。例えば、ファイバ32は、実質的に非弾性の材料から形成されてもよく、その長さは、バルーンが膨張態様に膨張されたときにファイバ32に張力をかけるように設定されてもよい。ファイバ網30は、ファイバ32の優勢な方向に実質的に平行である任意の方向に、バルーンの膨張を最も制限することができる。
【0019】
例えば、
図2Bに示すように、ファイバ32は、第1の内面24aから内部空間28を横切って第2の対向する内面24bへと延在する。このようにして、ファイバ網30は、
図1Aおよび
図1Bにおいて見ることができるように、バルーン20が膨張してファイバ32が引張荷重を受けたときに、例えばファイバ32の長手方向軸に沿って単一方向にバルーン20の膨張を制限するように構成することができる。
【0020】
任意選択的には、ファイバ網30は、例えば
図3A-
図3Cに示すように、バルーン20の膨張を複数の方向に制限する複数のファイバセット(図示省略)を含むことができる。
【0021】
図3Aに示すように、1つの層のみが存在し、その層のすべてのファイバ32aが同じ方向に(例えば、x軸に沿って)延びている場合、ファイバの方向に(x軸に沿って)膨張が最も制限される。
図3Bに示すように、特定の層内のファイバ32a、32b、32cが複数の方向に(例えば、x軸、y軸または両軸に沿って)延びる場合、膨張は、その層の平面内にあるすべての方向に制限される。さらに、
図3Cに示すように、多層ファイバ網は、層に垂直な方向(z軸に沿った方向)よりも、層に平行な(x軸およびy軸に沿った)平面内で膨張バルーンの形状および寸法に厳しい制限を課すことがある。層状多方向(x軸、y軸およびz軸)ファイバ網の面内膨張は、ファイバの弾性に大きく依存するが、z軸方向の膨張は、弾性、剛性、相互接続距離に依存する。
【0022】
膜30は、バルーン20が柔軟(compliant)または半柔軟(semi-compliant)であることが意図されるかどうかに応じて、かつ/または意図される形状および圧力の要件に応じて、実質的に弾性またはその他の不浸透性材料から形成されるものであってもよい。バルーン20の全体的な形状は、バルーン20によって圧迫および/または係合される身体構造の対応する形状に基づいて、構成することができる。例えば、バルーン20は、医療処置中に圧迫される身体構造と同様の、膨張態様における圧迫面26bを提供するように構成されるものであってもよい。
【0023】
図2A-
図2Dに戻ると、内面24上に接着剤層を含む膜22と、ファイバ網30を提供するファイバ32の矩形の塊とを含む矩形のバルーン20が示されている。さらに、バルーン20は、内部空間28と連通する膨張ポート40を含み、
図2Cおよび
図2Dに示す圧縮態様と
図2Aおよび
図2Bに示す膨張態様との間でバルーン20を移行させ、それにより圧迫面26bを提供する。膨張したときに、内部圧力は、圧迫される身体構造の凹凸にもかかわらず、圧迫面に亘って均等に分配される。
【0024】
バルーン20は、圧縮と吸引との複合効果によって、圧縮態様に潰れることができる。例えば、シリンジおよび吸引ラインなど(図示省略)のような真空源は、(
図1に示す側部ポート52aを介して)膨張ポート40に連結され、流体が内部空間28から吸い出され、それにより、膜22が内側に潰れて、ファイバ網30のファイバ32を圧縮し、または折り曲げる。例えば、ファイバ32が実質的に非弾性的であるが可撓性である場合は、膜22が内向きに引っ張られる間に張力が除去されるときにファイバ32が単に弛緩するだけであってもよく、あるいは、多次元網が提供される場合は、スポンジの圧縮と同様に、ファイバが内向きに縮むものであってもよい。
【0025】
反対に、バルーン20が拡張されるとき、膨張媒体の供給源、例えば、同じシリンジおよび流体ラインなど(図示省略)が、膨張ポート40に連結されるものであってもよく、流体が内部空間28内に供給されて、膜22を膨張させることができる。膜22が十分に膨張すると、ファイバ32は引っ張り力を受けることがあり、例えば、ファイバが実質的に非弾性である場合、膜22のさらなる膨張を防止する。
【0026】
バルーン20を作製するために、ファイバ網のファイバ32は、膜22の内面24に結合されるか、または別の方法で取り付けられる。一実施形態では、接着剤の層(図示省略)を内面24に塗布し、ファイバ32の端部を内面24に付着させて、ファイバ32が所望の態様で内部空間28を横断して延在するようにしてもよい。例えば、ファイバ32の両端部は、内面24の異なる位置に、例えば互いにほぼ対向するように、またはファイバを所望の軸に沿って配向させるように取り付けることができる。
【0027】
代替的には、ファイバ32を互いに結合または連結してファイバの塊を形成した後、それを膜20の内部空間28内に挿入して内面24にまとめて結合させるようにしてよい。さらなる代替例では、例えば布地などの多孔質材料(図示省略)内でファイバ32を互いに付着させて、閉じ込められたファイバ網30を形成し、多孔質材料が、膜20の内面24に取り付けることができるファイバ網30の外面を提供するものであってもよい。
【0028】
さらなる代替例では、バルーン20の内部空間28は、バルーン20の所望の外側寸法に対応する所定の弛緩形状を有するが本明細書に記載のファイバ網と同様に内方向に弾性的に圧縮可能であるスポンジまたはその他の同様の充填材料で実質的に充填されるものであってもよい。例えば、充填材料は、弛緩した形状を越えて膨張するのを防止するとともに、充填材料を内方向に圧縮することを可能にする実質的に非弾性の材料から形成することができる。この代わりに、充填材料の外面が、充填材料からの膜の分離を防止するために、膜22の内面に取り付けられるものであってもよい。したがって、膜22の膨張を、充填材料の所定の弛緩形状によって制限することができる。
【0029】
得られたバルーン20は、患者の体内への導入を可能にするために、
図1に示すカテーテル8のようなカテーテルまたはその他の管状部材に取り付けることができる。例えば、バルーン20は、例えば、カテーテル8の遠位端14がバルーン20の一端で終端となるように、管状部材10の遠位端14に取り付け、例えば
図2A-
図2Dに示す膨張ポート40を提供するようにしてもよい。
【0030】
代替的には、管状部材10の遠位端14は、例えば、
図1に示すように、バルーン20を通って延びることができる。例えば、膜22は、カテーテルの遠位端14に取り付けられた近位端および遠位端を含み、それら端部が互いに離間するものであってもよい。この代替例では、ファイバ網30は、カテーテルの遠位端14を取り囲む膜22の内部空間28内に配置することができる。任意選択的には、ファイバ網30のファイバを、膜22の内面24に結合するのに加えて、カテーテルの遠位端14の壁に結合するようにしてもよい。
【0031】
別の代替例では、管状部材10の遠位端14を膜22の近位端に連結するとともに、別個の先端部材(図示省略)を膜22の遠位端に連結して、当該遠位端から延ばすようにしてもよい。
【0032】
バルーン20を作製するために、例えば、単一の部品として成形し、複数のシートを形成し、次いで、例えば、接着、音波溶接、融着などによる結合でそれらを互いに付着させることにより、膜材料の1またはそれ以上のセクションを形成して、膜22の1またはそれ以上の側壁を規定するようにしてもよい。内部空間28へのアクセスを可能にするために、例えば端壁の1つを省き、膜22の残りの部分を形成することによって、1またはそれ以上の側壁を形成した後に、ファイバ網30を膜22の内部28に配置することができる。接着剤の層は、膜22の1またはそれ以上の内面、例えば対向する側壁に塗布することができ、ファイバ網30は、ファイバ32の端部が接着剤により内面に結合されるように、内部空間28に配置することができる。一実施形態では、個々のファイバ32を配置して内面に結合させることができる。別の実施形態では、例えば
図3A-
図3Cに示すように、複数のファイバ32を互いに集めて、内部空間28にまとめて挿入し、端部が所望の内面に結合されるようにしてもよい。その後、残りの側壁を付着させて完全な膜22を形成することができる。別の実施形態では、例えば、膜材料が供給される金型内にファイバ網30を配置してファイバ網30のすぐ周りに膜22を形成することによって、膜20が最初に形成されるときにファイバ網30を内部空間28に配置することができる。別の代替例では、膜20を形成した後、側壁の1つの開口部、例えば膜20を管状部材10の遠位端14に接続するために使用されるネック部またはその他の開口部を介して、内部空間28にアクセスすることができる。
【0033】
使用中、バルーン20は、圧縮態様で患者の体内に導入され、例えばバルーン20の1またはそれ以上の側壁を対応する形状の身体構造と整列させるような所望の位置に配置されるようにしてもよい。例えば、遠位端14は、アクセス部位から治療部位内に予め配置されたアクセスシース、ガイドワイヤまたはその他の器具(図示省略)を介して、管腔または内腔に導入されるものであってもよい。必要に応じて、遠位端14は、バルーン20の側壁を治療部位の身体構造の方に向けるように、回転および/またはその他の方法で操作されるものであってもよい。任意選択的には、遠位端14および/またはバルーン20は、蛍光透視法などの外部イメージングを使用してバルーン20を操作するのを助けるために、1またはそれ以上のマーカ、例えば放射線不透過性マーカなど(図示省略)を含むことができる。
【0034】
バルーン20は、適切に配置されたら、例えばバルーン20の側壁を身体構造に押し付けるように、膨張態様に膨張させることができる。例示的な実施形態では、バルーン20は、身体構造の同様の形状の表面に実質的に均一な圧力を加える不規則な形状の側壁を用いて、身体構造に圧力を加えるために使用することができる。さらに、バルーン20は、例えば、1またはそれ以上の薬物または薬品を側壁から身体構造に送達し、バルーン20を介してエネルギーを送達するなど、追加の治療を提供するために、身体構造との付着または接触を強化することができる。例えば、バルーン20は、追加の治療を提供するために使用することができる1またはそれ以上の治療要素、例えば、コーティング、多孔質部材、電極、送達装置など(図示省略)を担持することができる。
【0035】
柔軟なバルーン20内に内部支持構造30を設けることにより、バルーン20の形状および/またはサイズ形状が膨張態様において制限され、従来の柔軟なバルーンと比較してバルーン20を相対的に高い圧力まで膨張させることができる。内部支持がなければ、柔軟なバルーンの高圧膨張により、体内の管腔が最も広くまたは最も弱いあらゆる部位において、バルーンが制御できないほど膨張する可能性があり、かつ/またはバルーンが破裂する危険性がある。
【0036】
図4および
図5に示すように、別の用途では、管状の移植片またはステントを支持するために、本明細書中のバルーンおよび/またはカテーテルを用いることができる。
図4は、内部支持バルーン120の例示的な実施形態を示しており、このバルーンは、本明細書中の実施形態の何れかと同様に構成することができるとともに、体内の管腔内に移植するように構成されたステント、ステント移植片またはその他の管状デバイスなどの管状プロテーゼ110内で、膨張させることができる。
【0037】
幾つかの現在の装置は、例えば、1またはそれ以上のリング160を含む
図5のバルーン150によって示されるように、構造的支持を提供してシーリングを強化する膨張可能なリングまたは螺旋を使用している。すべてのバルーンと同様に、各リング160は、その長さ(プロテーゼの長軸に平行な長さ)と一致する深さ(外壁から内壁)を有する円形断面形状を有する。内腔衝突を最小にするには、リング160は比較的細くなければならない。
【0038】
これに対して、
図4に示すように、バルーン120の内部にファイバ支持構造130が存在することにより、円形の断面形状を矩形にすることが可能になる。その結果得られる支持環状体は、その深さよりも長くなり、内腔衝突を最小にしながら接触領域の長さを最大にする。したがって、バルーン120の全体の長さおよび厚さは、例えば支持されるプロテーゼ110に対応するように、内部支持構造を使用して、必要に応じて設定することができる。
【0039】
本発明は、様々な変更および代替形態が可能であるが、その特定の例が図面に示されており、本明細書において詳細に記載されている。本発明は、開示された特定の形態または方法に限定されるものではなく、反対に、本発明は、添付の特許請求の範囲に含まれるすべての変更、均等物および代替物を包含するものであることを理解されたい。