(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】振動吸収部材、これを備えた建物の仕切構造および振動吸収部材の設置方法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/98 20060101AFI20220119BHJP
E04B 9/00 20060101ALI20220119BHJP
F16F 15/02 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
E04B1/98 A
E04B9/00 A
E04B1/98 L
F16F15/02 C
F16F15/02 Q
(21)【出願番号】P 2018013880
(22)【出願日】2018-01-30
【審査請求日】2020-12-04
(31)【優先権主張番号】P 2017014584
(32)【優先日】2017-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】313012349
【氏名又は名称】旭ファイバーグラス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100168321
【氏名又は名称】山本 敦
(72)【発明者】
【氏名】永松 英夫
(72)【発明者】
【氏名】湯 正明
(72)【発明者】
【氏名】田嶋 大樹
(72)【発明者】
【氏名】藤原 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】津田 幸喜
(72)【発明者】
【氏名】工藤 尚嗣
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-265593(JP,A)
【文献】特開2005-113931(JP,A)
【文献】特開2000-038777(JP,A)
【文献】特開2016-148192(JP,A)
【文献】特開2009-174120(JP,A)
【文献】特開平10-331285(JP,A)
【文献】特開2007-085056(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/62-1/99
E04B 9/00
F16F 15/00-15/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物内の空間を仕切る面材の表面に配置されて当該面材の振動を吸収する振動吸収部材であって、
グラスウールとロックウールの少なくとも一方を含み、前記面材の表面にこれと接触した状態で配置されて当該表面に沿って延びるシート状の弾性部材と、
当該弾性部材の前記面材と反対側の表面に、互いに予め設定された所定の距離以上の間隔をあけて固定された複数の錘とを備え、
前記錘は、前記弾性部材よりも比重の高い錘本体と、当該錘本体と前記弾性部材との間に介在してこれら錘本体と弾性部材とを接着する接着層とを含み、
前記弾性部材の側端面とこれに最も近い錘との離間距離は、前記所定の距離の半分の距離以上に設定されている
とともに、
前記弾性部材の下面に固定された本体部と、前記弾性部材の両側端面から外側に延びる延長部とを含む、係止用シートと、
前記弾性部材から離間した状態で前記延長部に固定されて、前記面材を支持するための支持部材に設けられた係止部に係止される被係止部とを備える、
振動吸収部材。
【請求項2】
請求項1に記載の振動吸収部材において、
前記弾性部材の前記面材と反対側を向く面には、前記弾性部材と同じ密度または前記弾性部材よりも低い密度のグラスウールまたはロックウールで形成されたシート状の吸音部材が配置されている、
振動吸収部材。
【請求項3】
請求項
1または2に記載の振動吸収部材において、
前記弾性部材の上面に前記係止用シートの本体部と平面視で重なるように固定された本体部と、前記弾性部材の両側端面から外側に延びて前記係止用シートの延長部との間で前記被係止部を挟み込む延長部とを含む第2係止用シートをさらに備える、振動吸収部材。
【請求項4】
請求項
3に記載の振動吸収部材において、
前記第2係止用シートの本体部を貫通して前記弾性部材に差し込まれる部分と、前記第2係止用シートの本体部が前記弾性部材から離間する方向に移動するのを規制する部分とを含む連結部材をさらに備える、
振動吸収部材。
【請求項5】
建物内の空間を仕切る面材の表面に配置されて当該面材の振動を吸収する振動吸収部材を備えた建物の仕切構造において、
前記振動吸収部材は、
グラスウールとロックウールの少なくとも一方を含み、前記面材の表面にこれと接触した状態で配置されて当該表面に沿って延びるシート状の弾性部材と、
当該弾性部材の前記面材と反対側の表面に、互いに予め設定された所定の距離以上の間隔をあけて固定された複数の錘と、
前記弾性部材の下面に固定された本体部と、前記弾性部材の両側端面から外側に延びる延長部とを含む、係止用シートと、
前記弾性部材から離間した状態で前記延長部に固定されて、前記面材を支持するための支持部材に設けられた係止部に係止される被係止部とを備え、
前記錘は、前記弾性部材よりも比重の高い錘本体と、当該錘本体と前記弾性部材との間に介在してこれら錘本体と弾性部材とを接着する接着層とを含み、
前記弾性部材の側端面とこれに最も近い錘との離間距離は、前記所定の距離の半分の距離以上に設定されているともに、
前記係止用シートの前記延長部の長さは、前記面材が前記支持部材に取り付けられる前で且つ前記被係止部が前記係止部に係止された状態で前記弾性部材の下面が前記支持部材の下端よりも下方に位置する寸法に設定されており、
前記振動吸収部材は、建物の天井を構成する前記面材の上面に配置されている、
建物の仕切構造。
【請求項6】
請求項
5に記載の建物の仕切構造において、
第1の方向に沿って延び、かつ、当該第1の方向と直交する方向に沿って互いに離間した姿勢で前記面材の表面に配設されて、前記面材を支持する複数の支持部材を備え、
前記振動吸収部材は、隣接する前記支持部材の間に配置されている、
建物の仕切構造。
【請求項7】
請求項
6に記載の建物の仕切構造において、
前記振動吸収部材は、隣接する前記支持部材の間において、前記弾性部材の側端面と前記両支持部材との間に隙間が形成されるように配置されている、
建物の仕切構造。
【請求項8】
建物内の空間を仕切る面材の表面に配置されて当該面材の振動を吸収する振動吸収部材を、所定の方向に並ぶ複数の支持部材により支持されて建物の天井を構成する面材の表面に設置する方法であって、
前記振動吸収部材は、
グラスウールとロックウールの少なくとも一方を含み、前記面材の表面にこれと接触した状態で配置されて当該表面に沿って延びるシート状の弾性部材と、
当該弾性部材の前記面材と反対側の表面に、互いに予め設定された所定の距離以上の間隔をあけて固定された複数の錘とを備え、
前記錘は、前記弾性部材よりも比重の高い錘本体と、当該錘本体と前記弾性部材との間に介在してこれら錘本体と弾性部材とを接着する接着層とを含み、
前記弾性部材の側端面とこれに最も近い錘との離間距離は、前記所定の距離の半分の距離以上に設定されており、
隣接する前記支持部材の間にテープをかけ渡す、テープかけ渡し工程と、
前記複数の錘が前記弾性部材の上面に接着された状態で前記振動吸収部材を前記テープの上面に載置する、仮載置工程と、
前記面材を前記振動吸収部材が載置されたテープの下方から前記面材が支持部材に下方から当接する位置まで押し上げて、前記面材によって前記振動吸収部材を持ち上げる、面材押し上げ工程と、
前記支持部材に前記面材を固定する、固定工程とを備える、
振動吸収部材の設置方法。
【請求項9】
建物内の空間を仕切る面材の表面に配置されて当該面材の振動を吸収する振動吸収部材を、所定の方向に並ぶ複数の支持部材により支持されて建物の天井を構成する面材の表面に設置する方法であって、
前記振動吸収部材は、
グラスウールとロックウールの少なくとも一方を含み、前記面材の表面にこれと接触した状態で配置されて当該表面に沿って延びるシート状の弾性部材と、
当該弾性部材の前記面材と反対側の表面に、互いに予め設定された所定の距離以上の間隔をあけて固定された複数の錘と、
前記弾性部材の下面に固定された本体部と、前記弾性部材の両側端面から外側に延びる延長部とを含む、係止用シートと、
前記弾性部材から離間した状態で前記延長部に固定されて、前記面材を支持するための支持部材に設けられた係止部に係止される被係止部とを備え、
前記錘は、前記弾性部材よりも比重の高い錘本体と、当該錘本体と前記弾性部材との間に介在してこれら錘本体と弾性部材とを接着する接着層とを含み、
前記弾性部材の側端面とこれに最も近い錘との離間距離は、前記所定の距離の半分の距離以上に設定されているともに、
前記係止用シートの前記延長部の長さは、前記面材が前記支持部材に取り付けられる前で且つ前記被係止部が前記係止部に係止された状態で前記弾性部材の下面が前記支持部材の下端よりも下方に位置する寸法に設定されており、
前記振動吸収部材を準備する、準備工程と、
隣接する2つの前記支持部材の一方の前記支持部材に設けられた前記係止部に前記一対の被係止部の一方を係止し、他方の前記支持部材に設けられた前記係止部に他方の前記被係止部を係止して、前記振動吸収部材を前記支持部材に仮止めする、仮止め工程と、
前記面材を、前記支持部材に仮止めされた前記振動吸収部材の下方から、前記面材が支持部材に下方から当接する位置まで押し上げて、前記面材によって前記振動吸収部材を持ち上げる、面材押し上げ工程と、
前記支持部材に前記面材を固定する、固定工程とを備える、ことを特徴とする振動吸収部材の設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物内の空間を仕切る面材の表面に配置されて当該面材の振動を吸収する振動吸収部材、これを備えた建物の仕切構造および振動吸収部材の設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、住宅等の建物において、建物内の区間を仕切る面における遮音性を高めるための振動吸収部材が検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、上層階から下層階へ伝播する衝撃音を抑制するための天井構造が開示されている。この構造は、天井面を構成する天井板と、所定の方向に延びて天井板を支持する複数の野縁と、これら野縁と直交する方向に延びて野縁どうしを連結する複数の野縁受けと、各野縁受けのうち野縁と交差する部分にそれぞれ固定されて質量体と弾性体とを含む複数のダイナミックダンパーとを備える。この構造では、各ダイナミックダンパーによって野縁受けひいては天井板の振動を吸収することができ、天井部分の遮音性を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の構造では、ダイナミックダンパーが野縁受けに固定されており、この野縁受けさらには野縁を介してはじめて天井板の振動がダイナミックダンパーによって吸収される。そのため、天井板の振動を効果的に吸収することができない。また、天井板全体の振動を抑制するべくダイナミックダンパーおよびこれを固定するための野縁受けを天井板全体にわたって設けようとすると、多数の野縁受けを野縁に固定し、さらに、多数のダイナミックダンパーを野縁受けに固定せねばならず、作業が煩雑になる。
【0006】
本発明は、前記のような事情に鑑みてなされたものであり、面材の振動をより効果的に吸収し、かつ、施工時の作業性を良好にすることのできる、振動吸収部材、これを備えた建物の仕切構造および振動吸収部材の設置方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明は、建物内の空間を仕切る面材の表面に配置されて当該面材の振動を吸収する振動吸収部材であって、グラスウールとロックウールの少なくとも一方を含み、前記面材の表面にこれと接触した状態で配置されて当該表面に沿って延びるシート状の弾性部材と、当該弾性部材の前記面材と反対側の表面に、互いに予め設定された所定の距離以上の間隔をあけて固定された複数の錘とを備え、前記錘は、前記弾性部材よりも比重の高い錘本体と、当該錘本体と前記弾性部材との間に介在してこれら錘本体と弾性部材とを接着する接着層とを含み、前記弾性部材の側端面とこれに最も近い錘との離間距離は、前記所定の距離の半分の距離以上に設定されているとともに、前記弾性部材の下面に固定された本体部と、前記弾性部材の両側端面から外側に延びる延長部とを含む、係止用シートと、前記弾性部材から離間した状態で前記延長部に固定されて、前記面材を支持するための支持部材に設けられた係止部に係止される被係止部とを備える、振動吸収部材を提供する。
【0008】
この振動吸収部材では、複数の錘が固定されたシート状の弾性部材が、面材の表面にこれと接触した状態で配置されている。そのため、錘の反力を効果的に面材に伝播させて面
材の振動を抑えることができ、面材の遮音性を高めることができる。
【0009】
しかも、共通のシート状の弾性部材に複数の錘が固定されているため、1の振動吸収部材を設置することで、複数の錘を同時に面材の表面に設置することができる。そのため、錘とこれを固定する弾性部材とを個別に複数設ける場合に比べて、作業性を高めることができる。
【0010】
一方、このように、共通の弾性部材の表面に複数の錘を設けた場合には、錘どうしが干渉して弾性部材の変形が隣接する錘の共振に影響を及ぼし、各錘の反力が面材に適切に伝播されず、各錘によって面材の所望の周波数の振動を吸収させることができないおそれがある。
【0011】
これに対して、この構造では、複数の錘どうしの離間距離が予め設定された所定の距離以上に設定され、弾性部材の側端面とこれに最も近い錘との離間距離が前記所定の距離の半分の距離以上に設定されて、錘どうしおよび錘と弾性部材の側端面とが、面材の所望の周波数の振動を錘本体に伝播するのに必要な距離以上、離間するように配置されている。つまり、各錘および錘本体に、それぞれ、面材の前記所望の周波数の振動を伝播可能な弾性部材の領域が独立して割り当てられている。そのため、各錘本体によって、所望の周波数の振動を適切に吸収させることができる。さらに、錘本体を弾性部材に接着するための接着層も、錘本体と同様に、前記所定の距離以上離間している。そのため、接着層を介して錘本体どうしの振動が干渉するのも抑制することができ、遮音性をより確実に高めることができる。
【0012】
また、この振動吸収部材では、弾性部材が、グラスウールとロックウールの少なくとも一方を含んでいる。そのため、比較的安価に弾性部材を構成することができるとともに、この弾性部材によって面材の断熱性能を高めるという効果も得ることができる。
【0013】
さらに、この振動吸収部材では、弾性部材の下面に固定された本体部と、弾性部材の両側端面から外側に延びる延長部とを含む、係止用シートと、弾性部材から離間した状態で延長部に固定されて、面材を支持するための支持部材に設けられた係止部に係止される被係止部とを備えている。そのため、各被係止部を係止部に係止することで振動吸収部材を支持部材に仮止めし、その後、支持部材に面材を取り付けることにより、面材の支持部材への取付と振動吸収部材の面材の表面への配置とを同時に行うことができる。従って、振動吸収部材を容易に天井に配置することができる。具体的には、天井の上方は空間が狭い場合が多く、天井を構成する面材を取り付けた後に振動吸収部材をこの面材の上面に配置するのは困難である。これに対して、この構成では、天井を構成する面材に振動吸収部材を配置しつつこの面材を支持部材に取付けることができるため、振動吸収部材を天井の上面に容易に配設することができる。しかも、前記被係止部は弾性部材から離間した状態で係止用シートの延長部に固定されているため、弾性部材の動きが被係止部によって規制されるのを抑制でき、面材の振動を弾性部材および錘に適切に伝播させることができる。
【0014】
前記構成において、前記弾性部材の前記面材と反対側の表面には、前記弾性部材と同じ密度または前記弾性部材よりも低い密度のグラスウールまたはロックウールで形成されたシート状の吸音部材が配置されているのが好ましい。
【0015】
この構成によれば、低密度のグラスウールの吸音作用によって、面材の遮音性をより一層高めることができる。
【0016】
前記構成において、前記弾性部材の上面に前記係止用シートの本体部と平面視で重なるように固定された本体部と、前記弾性部材の両側端面から外側に延びて前記係止用シートの延長部との間で前記被係止部を挟み込む延長部とを含む第2係止用シートをさらに備える、のが好ましい。
【0017】
この構成によれば、係止用シートと第2係止用シートとによって被係止部と弾性部材とが強固に連結される。そのため、被係止部が係止部に係止された状態において、安定して弾性部材を支持部材に支持させることができる。
【0018】
前記構成において、前記第2係止用シートの本体部を貫通して前記弾性部材に差し込まれる部分と、前記第2係止用シートの本体部が前記弾性部材から離間する方向に移動するのを規制する部分とを含む連結部材をさらに備える、のが好ましい。
【0019】
この構成によれば、第2係止用シートが弾性部材から剥がれるのを防止でき、第2係止用シートを介した被係止部と弾性部材の連結をより強固にできる。従って、被係止部が係止部に係止された状態において、より安定して弾性部材を支持部材に支持させることができる。
【0020】
また、弾性部材と第2係止用シートとをこれらの厚み方向に挟み込んで連結する場合に比べて、弾性部材の動きが規制されるのを抑制でき、弾性部材に面材の振動を適切に伝播させることができる。
【0021】
また本発明は、建物内の空間を仕切る面材の表面に配置されて当該面材の振動を吸収する振動吸収部材を備えた建物の仕切構造において、前記振動吸収部材は、グラスウールとロックウールの少なくとも一方を含み、前記面材の表面にこれと接触した状態で配置されて当該表面に沿って延びるシート状の弾性部材と、当該弾性部材の前記面材と反対側の表面に、互いに予め設定された所定の距離以上の間隔をあけて固定された複数の錘と、前記弾性部材の下面に固定された本体部と、前記弾性部材の両側端面から外側に延びる延長部とを含む、係止用シートと、前記弾性部材から離間した状態で前記延長部に固定されて、前記面材を支持するための支持部材に設けられた係止部に係止される被係止部とを備え、前記錘は、前記弾性部材よりも比重の高い錘本体と、当該錘本体と前記弾性部材との間に介在してこれら錘本体と弾性部材とを接着する接着層とを含み、前記弾性部材の側端面とこれに最も近い錘との離間距離は、前記所定の距離の半分の距離以上に設定されているともに、前記係止用シートの前記延長部の長さは、前記面材が前記支持部材に取り付けられる前で且つ前記被係止部が前記係止部に係止された状態で前記弾性部材の下面が前記支持部材の下端よりも下方に位置する寸法に設定されており、前記振動吸収部材は、建物の天井を構成する前記面材の上面に配置されている、建物の仕切構造を提供する。
【0022】
この構造においても、上層階から下層階への騒音の伝播を抑制することができる。
【0023】
前記構成において、第1の方向に沿って延び、かつ、当該第1の方向と直交する方向に沿って互いに離間した姿勢で前記面材の表面に配設されて、前記面材を支持する複数の支持部材を備え、前記振動吸収部材は、隣接する前記支持部材の間に配置されているのが好ましい。
【0024】
この構成によれば、振動吸収部材を支持部材の間に配置することで、面材の表面に位置する部材の厚みを小さく抑えることができる。
【0025】
前記構成において、前記振動吸収部材は、隣接する前記支持部材の間において、前記弾性部材の側端面と前記両支持部材との間に隙間が形成されるように配置されているのが好ましい。
【0026】
この構成によれば、振動吸収部材の振動が支持部材によって規制されるのを抑制して、振動吸収部材によって面材の振動をより適切に吸収することができる。
【0027】
また、本発明は、建物内の空間を仕切る面材の表面に配置されて当該面材の振動を吸収する振動吸収部材を、所定の方向に並ぶ複数の支持部材により支持されて建物の天井を構成する面材の表面に設置する方法であって、前記振動吸収部材は、グラスウールとロックウールの少なくとも一方を含み、前記面材の表面にこれと接触した状態で配置されて当該表面に沿って延びるシート状の弾性部材と、当該弾性部材の前記面材と反対側の表面に、互いに予め設定された所定の距離以上の間隔をあけて固定された複数の錘とを備え、前記錘は、前記弾性部材よりも比重の高い錘本体と、当該錘本体と前記弾性部材との間に介在してこれら錘本体と弾性部材とを接着する接着層とを含み、前記弾性部材の側端面とこれに最も近い錘との離間距離は、前記所定の距離の半分の距離以上に設定されており、隣接する前記支持部材の間にテープをかけ渡すテープかけ渡し工程と、前記複数の錘が前記弾性部材の上面に接着された状態で前記振動吸収部材を前記テープの上面に載置する仮載置工程と、前記面材を前記振動吸収部材が載置されたテープの下方から前記面材が支持部材に下方から当接する位置まで押し上げて、前記面材によって前記振動吸収部材を持ち上げる面材押し上げ工程と、前記支持部材に前記面材を固定して支持させる固定工程とを備える、天井施工方法を含む。
【0028】
この方法によれば、面材を支持部材の下方から押し上げてこれを支持部材に固定する作業を行うことで、面材の支持部材への固定と、面材の表面のうち支持部材の間の部分への振動吸収部材、つまり、複数の錘本体の設置とを同時に行うことができる。そのため、作業工数を少なく抑えることができる。また、振動吸収部材をテープの上面であって天井部分により近い位置に仮置きすることができるため、振動吸収部材をより容易に天井部分に押し上げることができ、作業性を高めることができる。
【0029】
また、本発明は、建物内の空間を仕切る面材の表面に配置されて当該面材の振動を吸収する振動吸収部材を、所定の方向に並ぶ複数の支持部材により支持されて建物の天井を構成する面材の表面に設置する方法であって、前記振動吸収部材は、グラスウールとロックウールの少なくとも一方を含み、前記面材の表面にこれと接触した状態で配置されて当該表面に沿って延びるシート状の弾性部材と、当該弾性部材の前記面材と反対側の表面に、互いに予め設定された所定の距離以上の間隔をあけて固定された複数の錘と、前記弾性部材の下面に固定された本体部と、前記弾性部材の両側端面から外側に延びる延長部とを含む、係止用シートと、前記弾性部材から離間した状態で前記延長部に固定されて、前記面材を支持するための支持部材に設けられた係止部に係止される被係止部とを備え、前記錘は、前記弾性部材よりも比重の高い錘本体と、当該錘本体と前記弾性部材との間に介在してこれら錘本体と弾性部材とを接着する接着層とを含み、前記弾性部材の側端面とこれに最も近い錘との離間距離は、前記所定の距離の半分の距離以上に設定されているともに、前記係止用シートの前記延長部の長さは、前記面材が前記支持部材に取り付けられる前で且つ前記被係止部が前記係止部に係止された状態で前記弾性部材の下面が前記支持部材の下端よりも下方に位置する寸法に設定されており、前記振動吸収部材を準備する準備工程と、隣接する2つの前記支持部材の一方の前記支持部材に設けられた前記係止部に前記一対の被係止部の一方を係止し、他方の前記支持部材に設けられた前記係止部に他方の前記被係止部を係止して、前記振動吸収部材を前記支持部材に仮止めする、仮止め工程と、前記面材を、前記支持部材に仮止めされた前記振動吸収部材の下方から、前記面材が支持部材に下方から当接する位置まで押し上げて、前記面材によって前記振動吸収部材を持ち上げる、面材押し上げ工程と、前記支持部材に前記面材を固定する、固定工程とを備える、ことを特徴とする振動吸収部材の設置方法を含む。
【0030】
この方法によっても、支持部材に仮止めされた振動吸収部材の下方から面材を押し上げて、面材を支持部材に固定する作業を行うことで、面材の支持部材への固定と、面材の表面のうち支持部材の間の部分への振動吸収部材、つまり、複数の錘本体の設置とを同時に行うことができる。そのため、作業工数を少なく抑えることができる。
【0031】
また、係止用シートに固定された被固定部を係止部に係止するという簡単な作業で、安定して振動吸収部材を支持部材に支持させることができ、作業性を高めることができる。
【0032】
特に、この方法では、支持部材に振動吸収部材を仮止めするために支持部材の間にテープをかけ渡す必要がないため、振動吸収部材の取付現場での作業量を少なく抑えることができる。
【発明の効果】
【0033】
以上のように、本発明によれば、面材の振動をより効果的に吸収し、かつ、施工時の作業性を良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】
図1は、本発明に係る建物の仕切構造が適用された天井部分を上方から見た概略斜視図である。
【
図2】吸音部材を省略した状態の天井部分を上方から見た概略斜視図である。
【
図5】
図4の一部を拡大し、かつ、吸音部材を除去した状態の図である。
【
図6】(a)~(e)は、天井の施工方法を説明するための図である。
【
図7】第2実施形態に係る振動吸収部材の概略斜視図である。
【
図8】第2実施形態に係る振動吸収部材の概略側面図である。
【
図9】第2実施形態に係る振動吸収部材から蓋部材を取り除いた状態の概略斜視図である。
【
図10】第2実施形態に係る振動吸収部材から蓋部材を取り除いた状態の上面図である。
【
図11】第2実施形態に係る振動吸収部材から蓋部材を取り除いた状態の側面図である。
【
図12】第2実施形態に係る振動吸収部材から蓋部材を取り除いた状態の下面図である。
【
図13】
図12のXIII-XIII線断面図の一部を拡大した図である。
【
図15】(a)~(e)は、第2実施形態に係る天井の施工方法を説明するための図である。
【
図17】振動吸収部材の他の適用例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態に係る振動吸収部材を備えた建物の仕切構造について説明する。
【0036】
(1)天井構造
ここでは、前記仕切構造が天井部分に適用された場合を説明する。
【0037】
図1は、天井部分を上方から見た概略斜視図である。
図2は、
図1に対して後述する吸音部材40の図示を省略した図である。
図3は、
図1のIII-III線断面図である。
図4は、
図1のIV-IV線断面図である。
【0038】
図1および
図2に示すように、天井部分は、天井ボード(面材)10と、複数の野縁(支持部材)20と、複数の振動吸収部材30と、複数の吸音部材40とを備える。
【0039】
天井ボード10は、略水平方向に延びる板状部材であり、天井ボード10の下面が天井面を構成している。天井ボード10は、例えば、石膏ボードからなる。
【0040】
野縁20は、天井ボード10を支持するための部材つまり支持部材である。野縁20は、一方向に延びる部材である。本実施形態では、野縁20は角棒からなる。各野縁20は、建物の梁(不図示)等に固定された野縁受け(不図示)に、その長手方向と直交する方向に沿って互いに離間した姿勢で固定されている。以下では、適宜、
図1等に示すように
、野縁20の長手方向(第1の方向)を前後方向といい、これと直交する方向を左右方向という。本実施形態では、各野縁20は、左右方向にほぼ等間隔に並んでいる。
【0041】
天井ボード10は、野縁20の下面に沿って延びるように配置されており、各野縁20は天井ボード10の上面に配設されている。天井ボード10は、これら野縁20にボルト等で固定されている。なお、天井ボード10は、一枚のボードで構成されてもよいし、複数のボードで構成されてもよい。天井ボード10が、複数のボードからなる場合には、これらボードがそれぞれ野縁20に個別に固定される。
【0042】
図3、
図4等に示すように、各振動吸収部材30は、弾性力を有する1枚のシート状の弾性部材32と、この弾性部材32に固定された複数の錘34とを、それぞれ有する。
【0043】
弾性部材32は、天井ボード10の上面にこれと接触した状態で載置されており、天井ボード10の上面に沿って延びている。本実施形態では、弾性部材32は天井ボード10に固定されておらず、載置されているだけである。本実施形態では、弾性部材32として、グラスウールが圧縮されてシート状に成形されたものが用いられている。また、弾性部材32と、天井ボード10とは固定されておらず、弾性部材32および各振動吸収部材30は天井ボード10の上面に載置されているだけである。
【0044】
各振動吸収部材30において、複数の錘34は、弾性部材32の上面に互いに離間した位置に固定されているとともに、弾性部材32の側端面から離間した位置に固定されている。
【0045】
本実施形態では、錘34は、1つの弾性部材32について、その上面に前後方向に一列に並ぶ状態で固定されている。また、1つの弾性部材32について、この前後方向に延びる錘34の列が一列だけ設けられている。そして、錘34は、弾性部材32の左右方向の中央ライン上に並んでいる。
【0046】
錘34は、弾性部材32よりも比重の高い錘本体34aと、錘本体34aと弾性部材32との間に介在してこれらを接着する接着層34bとを備える。接着層34bは、錘本体34aの弾性部材32側の表面全体に形成されている。この接着層34bは、例えば、錘本体34aの表面に接着剤が塗布された後、弾性部材32上に接着されることで形成される。
【0047】
前記のように、各錘34は、弾性部材32の上面に互いに離間して固定されるとともに、弾性部材32の側端面から離間した位置に固定されており、各錘本体34aは、互いに離間するとともに弾性部材32の側端面から離間するように固定されている。同様に、各接着層34bも互いに離間するとともに弾性部材32の側端面から離間するように配置されている。
【0048】
ここで、このように弾性部材32と比重の高い錘本体34aとを有する振動吸収部材30は、ダイナミックダンパーとして機能して天井ボード10の振動を吸収する。具体的には、各錘本体34aと弾性部材32のうち各錘本体34aの周辺の部分とが、それぞれダイナミックダンパーとして機能し、各錘本体34aが、それぞれ、天井ボード10の振動に伴って振動して天井ボード10の振動を吸収する。
【0049】
ただし、この振動吸収部材30では、共通の弾性部材32に複数の錘本体34aが固定されている。そのため、錘本体34aどうしが干渉して、天井ボード10の共振周波数の振動が各錘本体34aに適切に伝播されないおそれがある。
【0050】
これに対して、本実施形態では、各錘本体34aに、それぞれ、天井ボード10の共振周波数の振動を適切に伝播できる弾性部材32の領域が独立割り当てられている。
【0051】
具体的には、錘34どうしの離間距離d1が、弾性部材32を介して天井ボード10の共振周波数の振動を錘34および錘本体34aに適切に伝播できる距離d_Aとして予め設定された基準距離d_Aの2倍の距離(所定の距離)以上とされている。また、弾性部材32の側端面とこれに最も近い錘34との離間距離d2、d3が、この基準距離d_A以上(所定の距離の半分以上)とされている。詳細には、弾性部材32の左右両端面32e、32eと、各錘34との離間距離d2が、基準距離d_A以上とされるとともに、弾性部材32の前後両端面32f、32fと、前後両端部に位置する錘34との離間距離d3が、基準距離d_A以上とされている。なお、本実施形態では、弾性部材32の前後両端面32f、32fと、前後両端部に位置する錘34との離間距離d3は、前端側と後端側とで同じに設定されている。
【0052】
このようにして、本実施形態では、弾性部材32のうち、少なくとも、前後左右について錘34から基準距離d_Aだけ離間したラインで囲まれた領域が、各錘34にそれぞれ割り当てられている。
【0053】
本実施形態では、子供が走り回ったり飛び跳ねたとき等に発生するいわゆる重量床衝撃音の伝播を振動吸収部材30によって抑制するべく、つまり、この重量床衝撃音を発生させる天井ボード10の低周波数の振動を振動吸収部材30によって吸収するべく、振動吸収部材30の固有振動数が低周波数になるように、基準距離d_A等が設定されている。
【0054】
具体的には、振動吸収部材30の固有振動数は、63Hz帯域に設定されている。そして、これを実現するために、弾性部材32の密度は60kg/m3以上(例えば、85kg/m3)に設定されるとともに、前後方向の寸法が1000mm、左右方向の寸法が200mm、厚み寸法(上下方向の寸法)が12mm程度の弾性部材32に、重さ250gの錘本体34aが7つ固定されている。また、錘本体34aが、鋼製あるいは鉄製とされて、その前後方向の寸法および左右方向の寸法が50mm程度、高さ寸法が12mm程度の直方体形状とされているとともに、基準距離d_Aが30mmに設定されている。そして、錘34どうしの離間距離d1が70mmとされ、弾性部材32の左右両端面32e、32eと錘34との離間距離d2が75mmとされ、弾性部材32の前後両端面32f、32fと前後両端部に位置する錘34との離間距離d3が115mmとされている。
【0055】
図3に示すように、左右方向について、振動吸収部材30は、隣接する野縁20間にそれぞれ1つずつ配置されている。弾性部材32および振動吸収部材30の左右方向の寸法は、隣接する野縁20どうしの離間距離よりも小さい値に設定されており、振動吸収部材30の左右両縁と野縁20との間には、それぞれ隙間Gが形成されている。
【0056】
一方、
図2および
図4に示すように、前後方向については、隣接する野縁20どうしの間の部分に、複数の振動吸収部材30が並設されている。図例では、前後方向について隣接する振動吸収部材30は、互いに当接した状態で配置されている。本実施形態では、野縁20どうしの間の部分全て、つまり、天井ボード10の上面のうち野縁20および前記隙間Gを除く部分のほぼ全体に、振動吸収部材30が配置されている。
【0057】
吸音部材40は、弾性部材32よりも密度の低いグラスウールからなるシート状部材であり、主として、軽量床衝撃音、つまり、物を落下したときや椅子等を引きずったとき等に発生する中高域周波数の振動を吸収するために設けられている。例えば、吸音部材40を構成するグラスウールの密度は、10kg/m3または24kg/m3に設定されている。また、本実施形態では、吸音部材40の厚みは、50mm程度に設定されている。
【0058】
各吸音部材40は、野縁20間の部分において、それぞれ、各弾性部材32の上面に載置されており、弾性部材32との間で錘34を上下方向に挟み込んだ状態で弾性部材32および振動吸収部材30のほぼ全体を上方から覆っている。1つの吸音部材40の左右方向および前後方向の寸法は、1つの弾性部材32のこれらとほぼ同じに設定されており、1つの吸音部材40と1つの弾性部材32とは、平面視で、ほぼ全体が互いに重複するようになっている。吸音部材40は、錘34の上面に接着剤等を介して接合されることで、振動吸収部材30に固定されている。
【0059】
なお、本実施形態では、
図3に示すように、吸音部材40が弾性部材32の上面に載置された状態で、吸音部材40の上面と野縁20の上面とはほぼ同じ高さ位置となっている。
【0060】
吸音部材40は、全ての弾性部材32の上面に載置されており、
図1に示すように、野縁20どうしの間の部分全て、つまり、天井ボード10の上面のうち野縁20および前記隙間G(野縁20と弾性部材32との間の隙間G)を除く部分のほぼ全体に、吸音部材40が敷き詰められている。
【0061】
(2)天井部分の施工方法
次に、前記のように構成された天井部分を施工する方法、つまり、振動吸収部材30を天井に設置する方法について、
図6(a)~(e)を用いて説明する。
図6(a)~(e)は、
図3に対応する図であって、(a)~(e)の順に時間が経過している。
【0062】
まず、
図6(a)に示すように、隣接する野縁20の間に、テープ50を架け渡す(テープかけ渡し工程)。具体的には、隣接する野縁20の間でテープ50が垂れ下がるように、これら野縁20の上面にそれぞれテープ50の両端部を固定する。
【0063】
テープ50は、後述するように吸音部材40が載置された振動吸収部材30を支持可能なものであればどのようなものであってもよい。例えば、テープ50として、ポリエチレンシートからなるテープが用いられる。また、このテープ50として、厚みが0.13mm、幅が50mm程度のものが用いられる。
【0064】
なお、幅が比較的小さいテープ50を用いる場合には、振動吸収部材30を安定して支持するために、前後方向について互いに離間した位置に複数のテープ50を配索する。
【0065】
次に、
図6(b)に示すように、テープ50の上面に、振動吸収部材30を載置する(仮載置工程)。
【0066】
本実施形態では、この工程の前に、振動吸収部材30に吸音部材40が接着されており、この工程では、吸音部材40が接着された振動吸収部材30がテープ50の上面に載置される。
【0067】
次に、
図6(c)に示すように、天井ボード10を、テープ50および振動吸収部材30に下方から押し当てる。そして、
図6(d)に示すように、天井ボード10の上面にこれらが載置された状態で天井ボード10を押し上げて、
図6(e)に示すように、天井ボード10を、野縁20の下方からこれに当接させる(面材押し上げ工程)。
【0068】
その後、
図6(e)に示す状態で、天井ボード10を野縁20に固定する。
【0069】
このようにして、本実施形態では、天井ボード10を野縁20に固定した後に、天井ボ
ード10の上面に振動吸収部材30を設置するのではなく、天井ボード10に振動吸収部材30を設置しながら天井ボード10を野縁20にセットして固定する。
【0070】
なお、テープ50は、その後取り外してもよいし、そのまま野縁20に固定させておいてもよい。テープ50をそのまま残した場合には、振動吸収部材30の一部と天井ボード10との間にはテープ50が介在することになるが、本明細書では、このように一部においてテープ50が介在する場合も、振動吸収部材30と天井ボード10とが接触していることに含まれる。
【0071】
(3)第2実施形態
次に、本発明の第2実施形態に係る振動吸収部材130および第2実施形態に係る天井部分の施工方法について説明する。
【0072】
図7は、第2実施形態に係る振動吸収部材130の概略斜視図である。
図8は、振動吸収部材130の概略側面図である。
図9は、振動吸収部材130から蓋部材160を取り除いた状態の概略斜視図である。
図10、
図11、
図12は、
図9に対応する上面図、側面図、下面図である。なお、
図11等では、構造が明瞭になるように、後述する係止用シート210の厚み、第2係止用シート220の厚み、および被係止部230の厚みを誇張して大きく示している。以下では、
図7に示す前後方向、左右方向を、それぞれ単に前後方向、左右方向という。
【0073】
第2実施形態に係る振動吸収部材130は、第1実施形態に係る振動吸収部材30と同様に、グラスウールが圧縮されてシート状に成形された弾性力を有する弾性部材32と、弾性部材32に固定された複数の錘34と、弾性部材32よりも密度の低いグラスウールからなるシート状の吸音部材40とを有する。第2実施形態においても、錘34は、弾性部材32よりも比重の高い錘本体34aと、錘本体34aと弾性部材32との間に介在してこれらを接着する接着層34bとを備える。
【0074】
1つの弾性部材32の上面には、前後方向に2つの錘34が並ぶ列が、左右に2列設けられており、1つの弾性部材32に合計4個の錘34が配設されている。
【0075】
第2実施形態では、第1実施形態と異なり、吸音部材40は、錘34の上方には配置されておらず、弾性部材32のうち錘34が配置されていない部分の上面に配置されている。
【0076】
具体的には、吸音部材40には、その表裏を貫通する4つの錘収容孔41が形成されている。吸音部材40は、これら錘収容孔41内にそれぞれ1つずつ錘34が収容された状態で弾性部材32の上面に配置されている。錘収容孔41の大きさは、平面視で錘34よりもわずかに大きく、弾性部材32のうち錘34が配置されていない部分の上面の全体に吸音部材40が配置されている。
【0077】
第2実施形態では、吸音部材40の上面(弾性部材32の反対側を向く面)に、吸音部材40よりも十分に厚みが小さいシート状の上蓋部材150が固定されている。上蓋部材150は、平面視で、吸音部材40および弾性部材32の外形と同じ形状を有しており、各錘収容孔41を塞ぎ、各錘34を上方から覆っている。
【0078】
上蓋部材150は、例えば、紙からなり、吸音部材40の上面に接着剤によって接着されている。上蓋部材150のうち各錘収容孔41を塞ぐ部分には複数の貫通孔151が形成されており、上蓋部材150のうちこれら貫通孔151と錘収容孔41とによって吸音作用が生じるようになっている。なお、上蓋部材150の全体に、特定の間隔をあけて複
数の貫通孔151が形成されていてもよい。
【0079】
このように、第2実施形態では、吸音部材40と上蓋部材150とによって、各錘34を弾性部材32の反対側から覆う蓋部材160が構成されている。なお、
図10では、蓋部材160を、弾性部材32に固定されたときに弾性部材32の上面と接触する面を上に向けた状態で示している。
【0080】
この第2実施形態では、吸音部材40の下面が弾性部材32の上面に接着剤によって接着されることで、蓋部材160は弾性部材32に固定されている。
【0081】
詳細には、
図10に破線で示すラインLであって、各錘34をそれぞれ囲む四角形のラインLに沿って接着剤が塗布されており、この接着剤によって弾性部材32と吸音部材40とが接着されている。なお、一部の接着剤は、後述する第2係止用シート220の上面に塗布されており、弾性部材32と蓋部材160とは一部において第2係止用シート220を介して互いに接着されている。
【0082】
ここで、各錘34の各側端面と、ラインLとの離間距離(離間距離のうち最も短い距離)d_Lは、それぞれ基準距離d_A以上に設定されている。例えば、この離間距離d_Lは、ほぼ基準距離d_Aと同じ長さとされている。そして、この第2実施形態では、錘34どうしの離間距離d1は、基準距離d_Aの2倍の距離よりも長い距離とされ、弾性部材32の側端面とこれに最も近い錘34との離間距離d2、d3は、基準距離d_Aよりも長い距離とされている。なお、本実施形態では、各錘34の各側端面とラインLとの離間距離d_Lは、全ての錘34において同一に設定されている。
【0083】
なお、弾性部材32と吸音部材40との連結構造はこれに限らず、弾性部材32の側面と吸音部材40の側面とをテープ等で固定するようにしてもよい。
【0084】
第2実施形態に係る振動吸収部材130は、第1実施形態と異なり、係止用シート210と、第2係止用シート220と、被係止部230とを有する。
【0085】
被係止部230は、野縁20に設けられた係止部313に係止されるものである。被係止部230は、例えば、プラスティック製の略長方形状を有する板状部材である。
【0086】
この第2実施形態では、1つの振動吸収部材130に、4つの被係止部230が含まれている。
【0087】
係止用シート210と第2係止用シート220とは、シート状の部材である。この第2実施形態では、これらシート210、220として、基材の一方の表面に接着剤が塗布されて一方の表面が接着面とされたテープが用いられている。
【0088】
これらシート210、220の厚みは、被係止部230の厚みよりも小さく設定されている。つまり、被係止部230はその厚みが比較的大きく設定されてその剛性が確保される一方、シート210、220の厚みは被係止部230よりも小さく、シート210、220は柔らかく変形容易に構成されている。
【0089】
例えば、弾性部材32の厚み(高さ方向の寸法)は12mm程度であり、被係止部230の厚みは0.5mm程度であり、各シート210、220の厚みはそれぞれ0.2mm程度である。
【0090】
この第2実施形態では、1つの振動吸収部材130に、2本の係止用シート210と2
本の第2係止用シート220とが含まれている。
【0091】
係止用シート210は、その接着面と弾性部材32の下面とが接触するように配置されており、弾性部材32の下面に接着されている。2本の係止用シート210は、平面視で錘34が配置された領域R(
図12参照)の左右方向の両側に配置されており、平面視で2本の係止用シート210と錘34とは重ならないようになっている。この第2実施形態では、2本の係止用シート210は、弾性部材32の左右両縁に沿って前後方向に延びている。
【0092】
各係止用シート210は、それぞれ、弾性部材32の下面に接着される本体部210aと、弾性部材32の前後方向の両側端面から外側に延びる延長部210bとで構成されている。つまり、2本の係止用シート210の両端部分は弾性部材32の前後方向の両側端面よりも外側にはみ出た状態で弾性部材32に接着されている。各係止用シート210は、弾性部材32と平面視で重なる部分全体、つまり、弾性部材32の下面の前後方向全体にわたって、弾性部材32の下面に接着されている。
【0093】
係止用シート210の両端部分つまり延長部210bの上面には、それぞれ1つずつ被係止部230が接着されている。被係止部230は、係止用シート210の延長部210bの上面に、弾性部材32の前後方向の両側端面から離間した状態で接着されている。
【0094】
第2係止用シート220は、その接着面と弾性部材32の上面とが接触するように配置されており、弾性部材32の上面に接着されている。2本の第2係止用シート220は、2本の係止用シート210と平面視で重なるように配置されている。つまり、2本の第2係止用シート220は、平面視で錘34が配置された領域Rの左右方向の両側に配置されており、2本の第2係止用シート220と錘34とは平面視で重ならないようになっている。
【0095】
第2係止用シート220も、弾性部材32の上面に接着される本体部220aと、弾性部材32の前後両側面からそれぞれ外側に延びる延長部220bとを含んでいる。また、各第2係止用シート220も、弾性部材32の上面の前後方向全体にわたってこの上面に接着されている。
【0096】
この第2実施形態では、第2係止用シート220は、前記本体部220aと延長部220bに加えて、これら本体部220aと延長部220bとの間の部分であって弾性部材32の前後方向の両側端面に接着される部分を有している。
【0097】
第2係止用シート220の両端部分つまり延長部220bの下面には、それぞれ1つずつ被係止部230が接着されている。つまり、第2係止用シート220の延長部220bは、係止用シート210の延長部210bとの間で被係止部230を挟み込む状態で被係止部230の上面に接着されている。被係止部230は、弾性部材32の前後方向の両側端面から離間した状態で第2係止用シート220の延長部220bに接着されている。そして、第2係止用シート220の延長部220bと係止用シート210の延長部210bとは、被係止部230から弾性部材32の前後両側面までの領域において、互いに直接接着されている。
【0098】
第2係止用シート220の延長部220bと係止用シート210の延長部210bとの前後方向の長さは同じである。
【0099】
これら延長部220b、210bの前後方向の長さは、天井ボード10が野縁20に取り付けられる前で且つ被係止部230が係止部313に係止された状態で、弾性部材32
の下面が野縁20の下端よりも下側に位置する寸法に設定されている。
【0100】
第2係止用シート220は、さらに、連結部材301を介して弾性部材32に連結されている。
図13は、
図12のXIII-XIII線断面図の一部を拡大した図である。連結部材301は、第2係止用シート220を貫通して弾性部材32に差し込まれた差し込み部301bと、第2係止用シート220の上方(外側)に位置して第2係止用シート220が上方つまり弾性部材32から離間する方向に移動するのを規制する押さえ部301bとを有する。
図13に示した例では、連結部材301は、互いに平行に延びる2本の棒状の差し込み部301aと、これら差し込み部301aの基端部どうしをつなぐ押さえ部301bとを有している。差し込み部301aの先端が下を向く姿勢で、第2係止用シート220の上方から第2係止用シート220および弾性部材32に差し込まれることで、連結部材301は、弾性部材32と第2係止用シート220とを連結する。ここで、押さえ部301bは、前記のように第2係止用シート220が上方に移動するのを規制するとともに、第2係止用シート220が弾性部材32の上面に沿って移動するのを規制する。つまり、押さえ部301bひいては連結部材301は、第2係止用シート220の引張り方向およびせん断方向の移動を規制する。
【0101】
連結部材301は、第2係止用シート220と弾性部材32とが接着された部分のうち弾性部材32の前後方向の両縁付近に取り付けられている。また、各連結部材301は、この接着部分において、左右方向について中央寄りの位置(各シート210、220の左右方向の中央よりも、弾性部材32の左右方向の中央寄りの位置)に取り付けられている。
【0102】
また、弾性部材32と被係止部230との間の部分において、係止用シート210の延長部210bと第2係止用シート220の延長部220bとは、互いに接着されることで連結されるとともに補助連結部材302によっても連結されている。補助連結部材302は、係止用シート210の延長部210bと第2係止用シート220の延長部220bとを互いに近接する方向に挟み込むことでこれらを連結している。補助連結部材302は、例えば、互いに平行に延びる2本の棒状の部分とこれら部分の基端部どうしをつなぐ部分とを有する部材を用いて、棒状部分を延長部210b、220bに差し込み、延長部210b、220bから飛び出た先端側の部分を延長部に沿うように折り曲げることで形成されている。
図12等の例では、補助連結部材302は、第2係止用シート220の延長部220bおよび係止用シート210の延長部210bのうち、左右方向について中央寄りの位置(各シート210、220の左右方向の中央よりも、弾性部材32の左右方向の中央寄りの位置)に取り付けられている。
【0103】
また、
図12等の例では、第2係止用シート220の延長部220bと係止用シート210の延長部210bと被係止部230との接着部分にも補助連結部材302が取り付けられており、補助連結部材302によってこれらが連結されている。
【0104】
このように、第2実施形態では、第2係止用シート220および係止用シート210を介して、被係止部230が、弾性部材32の4隅に、弾性部材32から離間した状態で連結されている。
【0105】
被係止部230と第2係止用シート220(延長部220b)と係止用シート210(延長部210b)とが重なった部分には、それぞれ、これら各部の表裏を貫通する貫通孔232が形成されている。この貫通孔232は、後述する係止部313が挿通される孔である。
【0106】
次に、前記のように構成された振動吸収部材130を天井部分に設置して天井部分を施
工する方法であって、前記(2)で説明したのとは異なる方法(以下、適宜、第2実施形態に係る施工方法という。)について、
図14および、
図15(a)~(d)を用いて説明する。
図15(a)~(d)は、(a)~(d)の順に時間が経過している。
図14は、第2実施形態で用いられる係止部材310を示した概略斜視図である。
【0107】
第2実施形態に係る施工方法では、まず、野縁20に係止部材310を取り付ける(係止部材設置工程)。
【0108】
係止部材310は、被係止部230を係止して振動吸収部材130を野縁20に仮止めするためのものである。
図14に示すように、係止部材310は、所定の方向に延びる基板311と、基板311の両縁からそれぞれ下方に延びる延出部312と、各延出部312の下縁からそれぞれ斜め上方に延びる係止突起(係止部)313とを有する。
【0109】
係止部材310は、各延出部312が野縁20の幅方向の両側面に沿う状態で基板311が野縁20の上面に載置されることで、野縁20に取り付けられる。これにより、係止部313は、野縁20の両側面から斜め上方に延びるように配置される。係止部材設置工程では、野縁20の長手方向に互いに離間するように複数の係止部材310が野縁20に取り付けられる。
【0110】
なお、係止部材の具体的な構成はこれに限らず、例えば、係止部材としてねじを用い、野縁20にねじを上方に突出するように固定してもよい。
【0111】
次に、前記第2実施形態に係る振動吸収部材130を準備する(準備工程)。
【0112】
次に、振動吸収部材130を野縁20に仮止めする(仮止め工程)。
【0113】
仮止め工程では、
図15(a)、(b)に示すように、被係止部230の貫通孔232に係止部313を差し込み、被係止部230を係止部313に係止する。このとき、各シート210、220がそれぞれ隣接する2つの野縁20間にわたって延びる姿勢となるように、各被係止部230を係止部313に係止する。つまり、
図15(b)等に示すように、仮止め工程の後、各シート210、220は、野縁20の長手方向と直交する方向に延びる姿勢とされる。
【0114】
この第2実施形態では、振動吸収部材130に、4つの被係止部230が設けられており、これら全てを係止部313に係止する。これら4つの被係止部230をどの順で係止部313に係止させるかは特に限定されないが、例えば、
図15(a)に示すように、まず、前側の2つの被係止部230を係止部313にそれぞれ係止し、その後、
図15(b)に示すように、後側の2つの被係止部230を係止部313に係止する。
【0115】
このようにして、第2実施形態では、被係止部230と係止部313との係合により、振動吸収部材130が野縁20に近い位置に安定して仮止めされる。
【0116】
前記のように、被係止部230が固定された各シート210、220の延長部210b、220b前後方向の長さは、それぞれ、天井ボード10野縁20に取り付けられる前で且つ被係止部230が係止部313に係止された状態で、弾性部材32の下面が野縁20の下端よりも下側に位置する寸法に設定されている。従って、
図15(b)に示すように、仮止め工程後は、弾性部材32は、その下面が野縁20の下端よりも下となる位置に仮止めされる。
【0117】
次に、
図15(c)に示すように、天井ボード10を、振動吸収部材130に下方から
押し当てる。そして、天井ボード10の上面にこれらが載置された状態で天井ボード10を押し上げて、天井ボード10を、
図15(d)に示すように、野縁20の下方からこれに当接させる(面材押し上げ工程)。
【0118】
ここで、前記のように、被係止部230はその貫通孔232に係止部313が下方から挿通されることでのみこれに係止されており、被係止部230は係止部313に対して容易に上方に移動することができる。つまり、振動吸収部材130は上方に容易に移動可能な状態で野縁20に係止されている。従って、面材押し上げ工程では、天井ボード10によって容易に振動吸収部材30を押し上げることができる。そして、天井ボード10により押し上げられることで、振動吸収部材30は係止部313によって野縁20に支持されていた状態から、天井ボード10によって支持される状態になる。
【0119】
また、前記のように、被係止部230は弾性部材32から離間しており、被係止部230と弾性部材32とは、比較的変形が容易なシート210、220でつながっている。そのため、面材押上げ工程の途中で、被係止部230が係止部313に引っかかり被係止部230の上方へ移動が規制された場合であっても、被係止部230と弾性部材32との間のシート210、220が変形することで、弾性部材32を容易に上方へ押し上げることができる。
【0120】
その後、
図15(d)に示す状態で、天井ボード10を野縁20に固定する。
【0121】
このように、第2実施形態に係る施工方法においても、天井ボード10を野縁20に固定した後に天井ボード10の上面に振動吸収部材30を設置するのではなく、天井ボード10に振動吸収部材30を設置しながら天井ボード10を野縁20にセットして固定する。
【0122】
そして、第2実施形態でも、弾性部材32と天井ボード10とが接触する状態で、振動吸収部材130が天井ボード10に載置される。なお、第2実施形態においても、振動吸収部材130は、振動吸収部材130と野縁20の左右両縁との間に隙間Gが形成されるように天井ボード10に載置される。
【0123】
ここで、弾性部材32の一部と天井ボード10との間には、シート210、220が介在するが、前記のようにシート210、220は非常に薄くまた変形が容易であり、弾性部材32の他の部分は天井ボード10に密着した状態となる。従って、天井ボード10の振動は弾性部材32に適切に伝播される。
【0124】
(4)作用等
以上のように、本実施形態の天井構造では、弾性部材32と天井ボード10とが接触する状態(一部においてテープ50またはシート210、220が介在している状態も含む)で、振動吸収部材30、130が天井ボード10に設けられている。そのため天井ボード10の振動をより直接的に弾性部材32から錘本体34aに伝播させることができ、各錘本体34aによって天井ボード10の振動を効果的に吸収することができる。従って、天井部分の遮音性を高めることができる。特に、本実施形態では、前記のように、振動吸収部材30、130によって、天井ボード10の低周波数の振動および重量床衝撃音を適切に吸収することができる。
【0125】
また、共通の弾性部材32に複数の錘34が固定されていることで、振動吸収部材30、130を天井ボード10の上面に設置することで、複数の錘34を一度に設置することができる。そのため、錘34とこれを固定する弾性部材32とを、個別に複数設けてこれらを設置する場合に比べて、作業時間を短縮することができ、作業性を高めることができ
る。
【0126】
しかも、この構造では、複数の錘本体34aどうしの離間距離d1が前記のように設定された基準距離d_Aの2倍以上とされるとともに、弾性部材32の側端面32e、32e、32f、32fとこれに最も近い錘本体34aとの離間距離d2、d3が、基準距離d_A以上とされており、少なくとも、各錘本体34aから、天井ボード10の共振周波数の振動を錘本体34aに伝播するのに必要な距離d_Aだけ離れた点を結んだ領域が、各錘本体34aに独立して割り当てられている。つまり、天井ボード10の共振を錘本体34aに伝播可能な領域が、各錘本体34aにそれぞれ独立して割り当てられている。そのため、錘本体34aどうしの干渉を防止して、各錘本体34aによって、天井ボード10の共振を適切に吸収させることができる。また、接着層34bも、錘本体34aと同様に配置されているため、接着層34bを介して錘本体34aどうしが干渉するのも抑制することができる。従って、遮音性をより確実に高めることができる。
【0127】
また、本実施形態では、振動吸収部材30、130と野縁20の左右両縁との間に隙間Gが形成されている。そのため、振動吸収部材30、130の振動時に、振動吸収部材30、130と野縁20とが接触するのを防止することができる。つまり、野縁20が振動吸収部材30、130の振動を規制するのを防止することができる。従って、振動吸収部材30、130を適切に振動させてこれにより天井ボード10の振動をより適切に吸収することができる。
【0128】
また、本実施形態では、弾性部材32がグラスウールで構成されている。そのため、この弾性部材32を、前記のように、ダイナミックダンパーの弾性体として機能させつつ断熱材としても機能させることができ、遮音性向上に加えて天井部分の断熱性能を高めることができる。また、グラスウールは比較的安価であるため、これを用いることでコスト面でも有利となる。
【0129】
また、本実施形態では、弾性部材32、132の上面にさらに吸音部材40を載置している。そのため、吸音部材40によっても、騒音を吸収することができ、天井部分の遮音性をより一層高めることができる。特に、前記のように、振動吸収部材30、130によって重量床衝撃音を吸収し、吸音部材40によって軽量床衝撃音を吸収するように構成されているため、高い遮音性を実現することができる。
【0130】
また、第2実施形態に係る振動吸収部材130では、弾性部材32に、係止用シート210および第2係止用シート220を介して被係止部230が連結されている。従って、この被係止部230を野縁20に設けられた係止部313に係止することで、振動吸収部材130を容易に且つ安定して野縁20付近に仮止めすることができ、振動吸収部材130を天井ボード10の表面に容易に設置することができる。
【0131】
しかも、被係止部230は弾性部材32から離間する状態でこれに連結されている。そのため、弾性部材32が天井ボード10の上面に載置された状態において、弾性部材32の動きが係止部313によって規制されるのを抑制することができる。従って、弾性部材32に適切に天井ボード10の振動を伝播させて、弾性部材32および弾性部材32に載置された錘34にこの振動を適切に吸収させることができる。つまり、被係止部230と係止部313とが係合している状態であっても、被係止部230と弾性部材32との間に位置するシート210、220が変形・変位することで、弾性部材32は天井ボード10の振動を受けて自由に変位することができ、弾性部材32には天井ボード10の振動が適切に伝播される。
【0132】
また、前記第2実施形態では、各シート210、220の両端部分が弾性部材32の前
後方向の両側端面から外側に延びるように弾性部材32に固定されており、各シート210は、弾性部材32の前後方向全体にわたって連続して延びている。従って、各シート210、220の両端部分に設けられた被係止部230を係止部313に係止させたときに、係止用シート210を隣接する野縁20間にわたって延びるように配置することができ、係止用シート210によって弾性部材32を安定して支持することができる。また、弾性部材32と各シート210、220との接着面積を多く確保することができ、各シート210、220と弾性部材32とをより強固に固定することができる。
【0133】
特に、前記第2実施形態では、弾性部材32と被係止部230とが、係止用シート210に加えて第2係止用シート220によっても連結されている。そのため、弾性部材32と被係止部230とをより強固に連結することができる。従って、弾性部材32をより安定して係止部313および野縁20に係止することができる。例えば、振動吸収部材130を野縁20に仮止めした際に弾性部材32と被係止部230との連結が解除されると、弾性部材32が野縁20から落下するおそれがあるが、これを防止できる。
【0134】
また、前記第2実施形態では、第2係止用シート220が、弾性部材32の上面のうち錘34が載置されている領域Rの前後方向の両側部分に配置されている。そのため、第2係止用シート220を弾性部材32の上面に固定して弾性部材32と被係止部230との連結を強固にしつつ、第2テープ220に錘34の動きを規制しない加工を施すことや第2係止用シート220の固定を工夫することなく、第2係止用シート220によって錘34の動きが規制されるのを防止して錘34に適切に振動を吸収させることができる。例えば、第2テープ220のうち錘34と接触する部分を錘34と一体に変位可能な部材に変更したり、第2テープ220を錘34から上方に離間するように配置すれば、第2テープ220が錘34の動きを規制するのを抑制しながら第2テープ220を錘34の上方を通るように配置することも可能であるが、これらの場合よりも、容易に第2係止用シート220と錘34との干渉を防止しながら第2係止用シート220を配置することができる。
【0135】
また、前記第2実施形態では、各シート210、220として接着面を備えたテープを用い、これらシート210、220を弾性部材32および被係止部230に接着させており、被係止部230と弾性部材32とを容易に連結することができる。
【0136】
また、前記第2実施形態では、各シート210、220と弾性部材32とが接着された上で、さらに、第2係止用シート220と弾性部材32とが連結部材301によって固定されている。そのため、第2係止用シート220をより強固に弾性部材32に固定することができ、第2係止用シート220を介して弾性部材32と被係止部との連結力を高めることができる。従って、弾性部材32をより一層安定して係止部313および野縁20に係止することができる。
【0137】
ここで、弾性部材32と第2係止用シート220とをより強固に固定する構成としては、これらを上下方向から挟み込む構成も考えられる。しかしながら、この構成では、弾性部材32の上下方向の動きが規制されて天井ボード10の振動が弾性部材32に適切に伝播されないおそれがある。また、弾性部材32と被係止部230との連結力を高めるために、係止用シート210と弾性部材32とを連結部材301で固定することも考えられる。しかしながら、この構成では、弾性部材32と天井ボード10との間に連結部材301(詳細には、連結部材301の押さえ部301b)が介在することになり、天井ボード10の振動が弾性部材32に適切に伝播されないおそれがある。従って、前記のように、連結部材301は、係止用シート210には取付けず第2係止用シート220のみに取付けるのが好ましい。
【0138】
また、前記第2実施形態では、シート210、220どうしが直接接着されている部分
においてこれらシート210、220どうしが補助連結部材302によって固定されている。そのため、一方のシートが、他方のシートひいてはこの他方のシートが固定された被係止部230や弾性部材32から剥がれるのを抑制することができ、弾性部材32と被係止部との連結力をさらに高めることができる。また、シート210、220と被係止部230とが補助連結部材302によって固定されていることで、これらシート210、220と被係止部230との連結力が高められており、これによっても、弾性部材32と被係止部との連結力を高めることができる。従って、弾性部材32をより一層安定して係止部313および野縁20に係止することができる。
【0139】
また、前記第2実施形態では、各シート210、220と被係止部230とに共通の貫通孔232が形成されて、この貫通孔232に係止部313が挿通されるようになっている。そのため、貫通孔232内に係止部313を挿通させるという簡単な手順で、振動吸収部材130を野縁20に仮止めすることができる。また、係止部313に直接各シート210、220を係止させることができるため、被係止部230から各シート210、220が剥がれた場合であっても、各シート210、220によって弾性部材32と係止部313との係合を維持することができる。
【0140】
また、前記第2実施形態では、各シート210、220が、弾性部材32の左右両縁に沿って延びるようにこれに固定されて、弾性部材32の4隅に被係止部230が設けられている。従って、これら4つの被係止部230を係止部313に係止させた状態において、振動吸収部材130を安定して係止部313および野縁20に仮止めすることができる。
【0141】
また、第1実施形態に係る施工方法では、前記のように、野縁20間にテープ50を掛け渡し、吸音部材40が載置された振動吸収部材30をテープ50に載せた後、これを押し上げながら天井ボード10を野縁20に設置している。つまり、天井ボード10と振動吸収部材30ひいては複数の錘34および吸音部材40とを同時に、天井部分に設置している。そのため、これらを個別に設置する場合に比べて、設置作業の作業時間を短くすることができる。また、天井ボード10を野縁20に固定した後に、天井ボード10の上面に振動吸収部材30を設置する場合に比べても、設置作業の時間を短くすることができる。また、野縁20の上方すなわち天井裏での作業を省略あるいはその作業時間を短くすることができる。従って、作業性を高めることができる。また、このように天井裏での作業を省略することができるため、例えば、建物をリフォームする場合等において天井裏に作業者が入り込めない場合であっても、振動吸収部材30および吸音部材40を設置することができ、遮音性の高い天井に交換することが可能となる。
【0142】
また、第2実施形態に係る施工方法においても、係止部313および野縁20に振動吸収部材130を仮止めした後、これを押し上げながら天井ボード10を野縁20に設置している。そのため、設置作業の作業時間を短くすることができるとともに、作業性を高めることができる。
【0143】
特に、第2実施形態では、被係止部230と係止部313との係合によって、振動吸収部材130を安定して野縁20に仮止めすることができ、その後の天井ボード10の押上げ作業の作業性を高めることができる。
【0144】
また、第1実施形態に係る施工方法((2)で説明した方法)では、天井部分を施工する作業現場で複数の野縁20間に複数のテープ50を掛け渡し、さらに、その後、これらテープ50に振動吸収部材30を載置していく必要があるが、第2実施形態に係る施工方法((3)で説明した方法)によれば、予め被係止部230が固定された振動吸収部材130を準備しておけば、作業現場では、野縁20に取り付けられた係止部313に振動吸
収部材130の被係止部230を係止することで振動吸収部材130を仮係止することができ、作業現場での作業性を高めることができる。
【0145】
(5)変形例
前記実施形態では、弾性部材32、132としてグラスウールを用いた場合について説明したが、弾性部材32、132は、グラスウールとロックウールの少なくとも一方を含んでいればよく、例えば、弾性部材32、132をロックウールで形成してもよい。ただし、グラスウールはロックウールよりも圧縮しやすいため、弾性部材32にグラスウールを用いれば、弾性部材32の密度を高くして弾性部材32、132に錘34を安定して配置することができる。
【0146】
また、吸音部材40に代えて、低密度なロックウールシートを用いてもよい。さらには、吸音部材40(あるいは低密度ロックウールシート)は省略してもよい。ただし、前記のように、吸音部材40(あるいは低密度ロックウールシート)を設ければ、天井部分の遮音性をより一層高めることができる。
【0147】
また、吸音部材40の密度は前記に限らない。例えば、吸音部材40として、弾性部材32と同じ密度のグラスウールシートやロックウールシートを用いてもよい。ただし、前記のように設定すれば、吸音部材40によって軽量床衝撃音を吸収でき、天井部分の遮音性を効果的に高めることができる。そして、吸音部材40に代えて、低密度なロックウールシートを用いる場合においても、この密度を、軽量床衝撃音、つまり、中高域周波数の振動を吸収できるように設定すれば、天井部分の遮音性を効果的に高めることができる。
【0148】
天井ボード10、錘本体34aの材質は前記に限定されない。例えば、天井ボード10は、石膏ボード以外の木材等であってもよい。また、錘本体34aは、鋼や鉄以外のステンレス等であってもよい。
【0149】
また、弾性部材32、錘34、吸音部材40の具体的な寸法、密度は前記に限らない。ただし、弾性部材32と錘34の厚みを、野縁20の高さ寸法よりも小さくすれば、振動吸収部材30が野縁20よりも上方に突出するのを回避して、野縁20の上方に配置される野縁受け等の部材と振動吸収部材30との干渉を回避できる。また、同様に、吸音部材40を設ける場合には、この干渉を回避するために、弾性部材32、錘34、吸音部材40の寸法を、吸音部材40の上端が野縁20の上端よりも下方となるように設定するのが好ましい。
【0150】
また、天井部分を施工する方法は前記に限らない。例えば、天井ボード10を野縁20に固定した後に、天井ボード10の上面に振動吸収部材30を載置するようにしてもよい。ただし、前記(2)および(3)で説明した施工方法を用いれば、容易に施工することができるとともに、野縁20の上方すなわち天井裏での作業を省略あるいはその作業時間を短くすることができ、作業性能を高めることができる。
【0151】
また、1つの弾性部材32に固定される錘34の数は、図示したものに限らない。
【0152】
例えば、前記第1実施形態に係る振動吸収部材30において、1つの弾性部材32に、前後方向に沿う錘34の列を複数個設けてもよい。例えば、
図16に示すように、1つの弾性部材32に錘34が2列に並ぶように配設してもよい。ただし、この場合であっても、錘34どうしの離間距離d1は基準距離d_Aの2倍の距離以上とし、弾性部材32の側端面32e、32e、32f、32fとこれと最も近い錘34との離間距離d2、d3は、基準距離d_A以上とする。
【0153】
また、前記第1実施形態では、振動吸収部材30を天井ボード10の上面に載置する場合について説明したが、第1実施形態に係る振動吸収部材30を建物の内壁に設けるようにしてもよい。例えば、
図17に示すように、居室(空間)Aの内側面を構成する内壁材(面材)110の表面(居室Aと反対側の面)に、第1実施形態に係る振動吸収部材30を設けるようにしてもよい。
【0154】
また、前記第2実施形態に係る振動吸収部材130において、蓋部材160を省略してもよい。ただし、蓋部材160を設けておけば、振動吸収部材130を係止部313に係止した際に、仮に錘34が弾性部材32から剥がれても錘34が落下するのを防止できる。また、仮に振動吸収部材130が係止部313から落下しても、錘34が周囲に飛散するのを防止できる。
【0155】
また、前記第2実施形態に係る振動吸収部材130において、第2係止用シート220、連結部材301、補助連結部材302は省略可能である。また、1つの振動吸収部材130に固定する係止用シート210、第2係止用シート220の具体的な数は前記に限らない。また、これらシート210、220は、前記のような接着面を備えるテープに限らない。また、各シート210、220の具体的な固定位置は前記に限らない。また、振動吸収部材130と野縁20とを仮止めするために用いる部材は、前記被係止部230および係止部313に限らない。
【符号の説明】
【0156】
10 天井ボード(面材)
20 野縁(支持部材)
30 振動吸収部材
32 弾性部材
34 錘
34a 錘本体
34b 接着層
40 吸音部材
50 テープ
130 振動吸収部材(第2実施形態)
210 係止用シート
220 第2係止用シート
230 被係止部
301 連結部材
313 係止部