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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】駆動制御装置、駆動制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60L 15/20 20060101AFI20220119BHJP
【FI】
B60L15/20 S
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018018920
(22)【出願日】2018-02-06
(65)【公開番号】P2019140711
(43)【公開日】2019-08-22
【審査請求日】2020-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 卓
(72)【発明者】
【氏名】細谷 義勝
(72)【発明者】
【氏名】橋本 量太
(72)【発明者】
【氏名】廣田 憲
(72)【発明者】
【氏名】阿久津 智一
【審査官】清水 康
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-117017(JP,A)
【文献】特開2016-107766(JP,A)
【文献】特開昭48-027410(JP,A)
【文献】特開2005-184978(JP,A)
【文献】特開平06-094772(JP,A)
【文献】米国特許第05743347(US,A)
【文献】特開平02-133005(JP,A)
【文献】特開2002-095115(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00 - 3/12
B60L 7/00 - 13/00
B60L 15/00 - 58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右の後輪のそれぞれに駆動モータが設けられた駆動輪と、前輪である操舵輪とを有する車両の前記前輪を操舵するハンドルの操舵角を検出する操舵角検出部と、
前記操舵角が予め定められた操舵角基準値を超えたか否かを判定する操舵角判定部と、
前記操舵角が前記操舵角基準値を超えたと判定した場合に、操舵角の方向に対応する前記後輪の駆動モータに供給する出力を停止させ、もう一方の後輪に対応する駆動モータに対する出力を制限するモータ制御部と、
を有する駆動制御装置。
【請求項2】
前記モータ制御部は、
前記操舵角が、前記操舵角基準値よりも大きな角度の基準値である切れ角基準値を超えた後に、前記操舵角基準値未満に到達した場合には、前記駆動モータへの出力を供給する
請求項に記載の駆動制御装置。
【請求項3】
前記操舵角基準値の範囲内となる領域に対応して設けられるエリア提示部と、
前記ハンドルに連結され当該ハンドルの操舵に応じて操舵方向に移動可能な連結部材に設けられ、前記操舵角が前記エリア提示部の領域に対応する位置にあるか否かを検出するエリア検出部を有し、
前記操舵角判定部は、前記エリア検出部の検出結果に基づいて、前記操舵角が前記エリア提示部の領域内にない場合に、前記操舵角基準値を超えたと判定する
請求項1または請求項2に記載の駆動制御装置。
【請求項4】
前記操舵角基準値よりも大きな角度の基準値である切れ角基準値に対応する領域に設けられる切れ角基準位置提示部と、
前記ハンドルに連結され当該ハンドルの操舵に応じて操舵方向に移動可能な連結部材に設けられる操舵角提示部とを有し、
前記操舵角判定部は、前記操舵角基準値を超えた後に前記切れ角基準位置提示部と前記操舵角提示部とが対応する位置に到達した場合に、前記操舵角が前記切れ角基準値を超えたと判定する
請求項に記載の駆動制御装置。
【請求項5】
操舵角検出部が、左右の後輪のそれぞれに駆動モータが設けられた駆動輪と、前輪である操舵輪とを有する車両の前記前輪を操舵するハンドルの操舵角を検出し、
操舵角判定部が、前記操舵角が予め定められた操舵角基準値を超えたか否かを判定し、
モータ制御部が、前記操舵角が前記操舵角基準値を超えたと判定した場合に、操舵角の方向に対応する前記後輪の駆動モータに供給する出力を停止させ、もう一方の後輪に対応する駆動モータに対する出力を制限す
駆動制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動制御装置、駆動制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
駆動モータによって車輪を駆動させる電動車両がある。例えば、特許文献1には、左右の前輪にそれぞれ駆動モータを設け、1輪の後輪によって操舵する電動車両が開示されている。このような電動車両に対して、駆動モータを後輪に設け、前輪を操舵輪とされた車両も求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-184978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、駆動モータが後輪に設けられ、前輪を操舵輪とされた車両では、ハンドルの操舵角が一定角度を超えると、内輪差によって、内輪側の駆動モータに負荷が生じる。そうすると、外側の駆動輪は、内側の駆動輪側に回される形になり、速度フィードバック制御を行なっている場合には、駆動モータに供給される出力を停止してしまう。このように、外側の駆動輪の出力低下が生じることも影響し、内側の駆動輪は高負荷となり、さらに内輪側の駆動輪の駆動モータには大電流が流れることになり、過電流が生じたり過熱状態となる問題がある。場合によっては、駆動モータを制御するコントローラが破損する。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、操舵角が一定以上を超えても操舵された方向における状態、すなわち駆動輪が高負荷の状態において、駆動モータに大電流が流れないようにすることができる駆動制御装置、駆動制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明は、左右の後輪のそれぞれに駆動モータが設けられた駆動輪と、前輪である操舵輪とを有する車両の前記前輪を操舵するハンドルの操舵角を検出する操舵角検出部と、前記操舵角が予め定められた操舵角基準値を超えたか否かを判定する操舵角判定部と、前記操舵角が前記操舵角基準値を超えたと判定した場合に、操舵角の方向に対応する前記後輪の駆動モータに供給する出力を停止させ、もう一方の後輪に対応する駆動モータに対する出力を制限するモータ制御部と、有する。
【0007】
また、本発明は、操舵角検出部が、左右の後輪のそれぞれに駆動モータが設けられた駆動輪と、前輪である操舵輪とを有する車両の前記前輪を操舵するハンドルの操舵角を検出し、操舵角判定部が、前記操舵角が予め定められた操舵角基準値を超えたか否かを判定し、モータ制御部が、前記操舵角が前記操舵角基準値を超えたと判定した場合に、操舵角の方向に対応する前記後輪の駆動モータに供給する出力を停止させ、もう一方の後輪に対応する駆動モータに対する出力を制限する駆動制御方法である。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように、この発明によれば、操舵角の方向に対応する後輪の駆動モータに供給する出力を低減させることで、操舵角が一定以上を超えても操舵された方向における駆動輪が高負荷の状態において、大電流が流れることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態による駆動制御装置10を適用した電動車両1の上方側から見た構成の概略を表す概略構成図である。
図2】操舵角がいずれのエリアにあるかの判定に用いられる検出機構について説明する概略構成図である。
図3】駆動制御装置10の機能を表す概略機能ブロック図である。
図4】受光部53、ホールIC56、ホールIC58のそれぞれの検出結果と、各エリアと、制御内容との関係を説明する図である。
図5】駆動制御装置10の動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態による駆動制御装置について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態による駆動制御装置10を適用した電動車両1の上方側から見た構成の概略を表す概略構成図である。
電動車両1は、例えば、最高速度が概ね歩行速度程度までであって低速域で走行し、1名あるいは2名程度の乗員が搭乗可能な車両である。電動車両1は、例えば、電動カート、シルバーカー等であり、歩行が困難な人や健常者が利用可能である。
駆動制御装置10は、電動車両1に搭載される。
駆動輪20、駆動輪21は、電動車両1の後輪として設けられる。駆動輪20は、左側の後輪であり、駆動輪21は、右側の後輪である。
駆動モータ30は、駆動輪20に設けられ、駆動モータ31は、駆動輪21に設けられ、それぞれ、駆動制御装置10からの制御信号に応じて個別に駆動する。
操舵輪40は、電動車両1の前輪として設けられる。この図において操舵輪は1輪である場合について説明するが、前輪の右側と左側の2輪であってもよい。
ハンドル50は、操舵輪40に連結され、搭乗者の操作に応じて電動車両1を操舵可能に設けられる。ハンドル50は、棒状のハンドルであってもよいし、円環状のハンドル(ステアリングホイール)であってもよい。
連結部材51は、ハンドル50に連結して設けられる板状部材であり、ハンドル50の操舵方向に対応した略水平方向において周方向に沿って移動する。さらに説明すると、連結部材51は、ハンドル50が左側に操舵された場合には、周方向において左側に移動し、ハンドル50が右側に操舵された場合には、周方向において右側に移動する。
【0011】
判定対象エリア60は、ハンドル50の操舵角の大きさに応じて予め設定されている。
判定対象エリア60には、センターエリア61、左舵角エリア62、左切れ角エリア63、右舵角エリア64、右切れ角エリア65が含まれており、それぞれのエリアがお互いに干渉しないように設定される。
センターエリア61は、電動車両1を概ね直進方向に進めるための操舵角の範囲に対して設定されており、直進方向と、当該直進方向を含む左側及び右側方向への一定範囲が設定される。センターエリア61は、操舵角基準値の範囲内となる領域である。
【0012】
左舵角エリア62は、センターエリア61に対して操舵角が左側の方向において、当該センターエリア61に隣接して設定される。
左切れ角エリア63は、左舵角エリア62に対して操舵角が左側の方向において、当該左舵角エリア62に隣接して設定される。
右舵角エリア64は、センターエリア61に対して操舵角が右側の方向において、当該センターエリア61に隣接して設定される。
右切れ角エリア65は、右舵角エリア64に対して操舵角が右側の方向において、当該右舵角エリア64に隣接して設定される。
【0013】
左舵角エリア62と右舵角エリア64は、ハンドルを左側あるいは右側に操舵された場合に、内輪差が生じても駆動モータ30あるいは駆動モータ31に大電流を流すことなく走行可能な操舵角の範囲に対応して設定されている。
左切れ角エリア63と右切れ角エリア65は、左舵角エリア62あるいは右舵角エリア64からさらに左側あるいは右側に操舵された場合に、内輪差によって駆動モータ30あるいは駆動モータ31に大電流が流れる可能性がある操舵角の範囲に対応して設定されている。
【0014】
図2は、操舵角がいずれのエリアにあるかの判定に用いられる検出機構について説明する概略構成図である。この図においては、電動車両1の搭乗者から前方側をみた見た場合における検出機構の断面について図示している。連結部材51の下面において、中央部には、発光部52、受光部53が設けられ、車両進行方向に対して左側(連結部材の左側端)には、磁石55が設けられ、車両進行方向に対して右側(連結部材の右側端)には、磁石57が設けられる。この連結部材51がハンドル50の操舵に応じて左側あるいは右側に移動することに伴い、発光部52、受光部53、磁石55、磁石57も左側あるいは右側に移動する。
発光部52は、発光することで、例えば赤外線を出射する。受光部53は、発光部52から出射された光を受光する。この発光部52と受光部53としては、例えば、赤外線センサを用いることができる。
反射板54は、連結部材51とは独立して電動車両1に設けられており、センターエリア61に対応する領域において面方向に延びるように配置される板状部材である。この反射板54は、操舵角基準値の範囲の領域に対応して設けられることで、エリア提示部として機能する。また、この反射板54は、ハンドル50の操舵に応じて移動することはない。
ハンドル50の操舵角が、操舵角基準値の範囲内である場合には、連結部材51の発光部52及び受光部53は、操舵角基準値の範囲内(センターエリア61)にあるため、操舵角基準値の範囲に反射板54が設けられていることで、受光部53は、反射板54によって反射される発光部52からの光を受光することができる。操舵角基準値の範囲を超えた操舵がなされた場合には、発光部52及び受光部53は、反射板54が設けられた領域の外に位置することになり、これにより、受光部53は、発光部52からの光を受光することができない。このように、受光部53が発光部52からの光を受光できるか否かに基づいて、ハンドル50の操舵角がセンターエリア61(操舵角基準値の範囲内)にあるか否かを把握可能である。
【0015】
ホールIC56は、左側に操舵された場合における切れ角基準値に対応する領域に設けられ、切れ角基準位置提示部として機能する。このホールIC56は、反射板54の端部から水平方向において左側に離間して取付けられており、左舵角エリア62と左切れ角エリア63との境界に対応する位置に設けられる。
ホールIC58は、右側に操舵された場合における切れ角基準値に対応する領域に設けられ、切れ角基準位置提示部として機能する。このホールIC58は、反射板54の端部から水平方向において右側に離間して取付けられており、右舵角エリア64と右切れ角エリア65との境界に対応する位置に設けられる。
ホールIC56、ホールIC58は、操舵角提示部として機能する。また、ホールIC56、ホールIC58は、例えば磁気センサを用いることができる。
【0016】
ハンドル50の操舵角が、センターエリア61、左舵角エリア62は、右舵角エリア64のいずれかにある場合には、連結部材51の磁石55及び磁石57は、いずれも、センターエリア61、左舵角エリア62は、右舵角エリア64のいずれかにあるため、連結部材51の磁石55及び磁石57は、ホールIC56、ホールIC58の磁気が検出可能な範囲に到達しない。左舵角エリア62、あるいは右舵角エリア64のいずれかのエリアを越えてさらに左側にハンドル50が操舵された場合には、磁石55がホールIC56の磁気が検出可能な範囲到達し、あるいは右側にハンドル50が操舵された場合には、磁石57がホールIC58の磁気が検出可能な範囲到達する。これにより、ホールIC56によって磁石55の近接が検出された場合には、ハンドル50の操舵角が左舵角エリア62に到達したことが検出可能であり、ホールIC58によって磁石57の近接が検出された場合には、ハンドル50の操舵角が右舵角エリア64に到達したことが検出可能である。
【0017】
この図に示すように、発光部52、受光部53、磁石55、磁石57は、反射板54、ホールIC56、ホールIC58に対してハンドル50の操舵に応じて水平方向に相対移動することが可能となっている。
なお、この図においては、ホールIC56またはホールIC58が磁気を検出する場合には、必ず受光部53において受光されないように配置されている。
また、この図において、発光部52と受光部53は、連結部材51の移動方向に並ぶように配置された場合について説明したが、発光部52によって発光され反射板54によって反射された光が受光部53によって受光しうる位置に配置されていれば、この配置に限られるものではない。例えば、発光部52と受光部53は、電動車両1の搭乗者から前方側をみた見た場合において手前側と奥側となるように並べて配置されていてもよい。
【0018】
図3は、駆動制御装置10の機能を表す概略機能ブロック図である。駆動制御装置10は、操舵角検出部11、操舵角判定部12、モータ制御部13を含んで構成される。
操舵角検出部11は、ハンドルの操舵角が、センターエリア61、左舵角エリア62、左切れ角エリア63、右舵角エリア64、右切れ角エリア65のうちいずれのエリアにあるかを検出することで、内輪差の発生の有無を検出する。操舵角検出部11は、例えば3組のセンサが用いられ、ここでは、発光部52と受光部53と反射板54との組み合わせ(舵角センサ)、磁石55とホールIC56との組み合わせ(切れ角センサ)、磁石57とホールIC58(切れ角センサ)との組み合わせから構成することができる。
【0019】
操舵角判定部12は、操舵角が予め定められた操舵角基準値を超えたか否かを判定する。
モータ制御部13は、操舵角が操舵角基準値を超えたと判定した場合に、操舵角の方向に対応する後輪の駆動モータに供給する出力を低減させる。
【0020】
操舵角判定部12は、操舵角が操舵角基準値よりも大きな角度の基準値である切れ角基準値を超えたか否かを判定する。
操舵角判定部12は、受光部53の検出結果に基づいて、操舵角が反射板54の面上に対応する領域内にない場合に、操舵角基準値を超えたと判定する。
操舵角判定部12は、操舵角基準値を超えた後にホールIC56と磁石55とが対応する位置に到達した場合、または、ホールIC58と磁石57とが対応する位置に到達した場合、操舵角が切れ角基準値を超えた、すなわち、左切れ角エリア63または右切れ角エリア65に到達したと判定する。
【0021】
モータ制御部13は、操舵角が切れ角基準値を超えた場合に駆動モータの出力を停止させる。
モータ制御部13は、操舵角が切れ角基準値を超えた後に、操舵角基準値未満に到達した場合には、駆動モータへの出力を供給する。
【0022】
次に、図4図5を用いて駆動制御装置10の動作を説明する。図4は、受光部53、ホールIC56、ホールIC58のそれぞれの検出結果と、各エリアと、制御内容との関係を説明する図、図5は、駆動制御装置10の動作を説明するフローチャートである。
駆動制御装置10の操舵角判定部12は、電動車両1の運転が開始されると、舵角センサがOFFであるかすなわち、受光部53の受光結果が発光部52からの光を検出していないOFFを示しているか否かを判定する(図5;ステップS101)。受光部53の検出結果がOFFではない場合、すなわち、反射板54によって反射された発光部52からの光を受光することで検出結果がONである場合(図4;センターエリア61において受光部53がON、図5;ステップS101-NO)、操舵角判定部12は、ハンドル50の操舵角がセンターエリア61にあると判定し、判定結果をモータ制御部13に出力する。モータ制御部13は、操舵角がセンターエリア61にあることを示す判定結果が得られると、駆動モータ30、駆動モータ31に対して、アクセルの操作量に応じた出力を供給する通常制御を行なう(図4;符号102、図5;ステップS102)。
モータ制御部13は、通常制御を行なうことで、アクセルの開度に応じて駆動モータ30、駆動モータ31を駆動させるための出力を供給する。この出力の供給は、駆動モータ30、駆動モータ31を駆動させることを示す電圧レベルや電流値に応じた制御信号の供給であってもよい。
【0023】
一方、受光部53の検出結果がOFFである場合、すなわち、反射板54によって反射された発光部52からの光を受光していないことに伴い検出結果がOFFである場合(ステップS101-YES)、操舵角判定部12は、切れ角センサ右側がOFFであるか否か、すなわち、ホールIC58がOFFであるか否かを判定する(図5;ステップS103)。
操舵角判定部12は、ホールIC58がOFFではなくONである場合(図4;右切れ角エリア65においてホールIC58がON、図5;ステップS103-NO)、ハンドル50の操舵角が右切れ角エリア65に到達していると判定し、判定結果をモータ制御部13に出力する。このような場合、ハンドル50の操舵角は、センターエリア61から右舵角エリア64に移行してさらに右切れ角エリア65に移行した場合に相当する。
モータ制御部13は、操舵角が右切れ角エリア65に到達していることを示す判定結果が得られると、駆動モータ31(右側駆動輪)に対する出力を停止し、かつ、駆動モータ30(左側駆動輪)に対する出力を制限することで、出力を低下させる(図4;符号104、図5;ステップS104)。ここでは、駆動モータ31に対する出力を停止することで、駆動モータ31をフリーにすることができる。これにより、駆動モータ31に対して制御信号等が供給されないため、駆動モータ31に対して大電流が供給されることを防止することができるため、駆動制御装置10における過電流や過熱の状態が発生しないようにすることができる。また、駆動モータ30に対する出力を制限することで、旋回時における速度が増加してしまうことを防止することができる。
【0024】
次に、操舵角判定部12は、舵角センサがOFFであるかすなわち、受光部53の受光結果が発光部52からの光を検出していないOFFを示しているか否かを判定する(図5;ステップS105)。受光部53の受光結果がOFFを示している場合(図5;ステップS105-YES)、操舵角判定部12は、一定時間であるウエイト時間が経過した後、再度ステップS105の判定を行なう。
一方、受光部53の受光結果がOFFを示していない(ONを示している)場合(図5;ステップS105-NO)、操舵角判定部12は、受光部53の受光結果がONを示していることを表す判定結果をモータ制御部13に出力する。ここでは、ハンドル50の操舵角が、右切れ角エリア65から右舵角エリア64を通過してセンターエリア61に戻された場合に、受光部53の受光結果がONとなる。
モータ制御部13は、受光部53の受光結果がONである場合、通常制御に移行する(図4;符号102、図5;ステップS102)。通常制御に移行することで、電動車両1は、駆動モータ30、駆動モータ31に対しての出力が低下せずにアクセルの操作量に応じた出力が供給され、前方方向に進行することができる。
【0025】
一方、ステップS103において、操舵角判定部12は、ホールIC58がOFFである場合、ホールIC56がOFFであるか否かを判定する(図5;ステップS107)。ホールIC56がOFFではない(ONである)場合(図4;左切れ角エリア63においてホールIC56がON、図5;ステップS107-NO)、ハンドル50の操舵角が左切れ角エリア63に到達していると判定し、判定結果をモータ制御部13に出力する。
モータ制御部13は、操舵角が左切れ角エリア63に到達していることを示す判定結果が得られると、駆動モータ30(左側駆動輪)に対する出力を停止し、かつ、駆動モータ31(右側駆動輪)に対する出力を制限することで、出力を低下させる(図4;符号108、図5;ステップS108)。ここでは、駆動モータ30に対する出力を停止することで、駆動モータ30をフリーにすることができる。これにより、駆動モータ30に対して制御信号等が供給されないため、駆動モータ30に対して大電流が供給されることを防止することができるため、駆動制御装置10における過電流や過熱の状態が発生しないようにすることができる。また、駆動モータ31に対する出力を制限することで、旋回時における速度が増加してしまうことを防止することができる。
【0026】
次に、操舵角判定部12は、舵角センサがOFFであるかすなわち、受光部53の受光結果が発光部52からの光を検出していないOFFを示しているか否かを判定する(図5;ステップS105)。受光部53の受光結果がOFFを示している場合(図5;ステップS105-YES)、操舵角判定部12は、一定時間であるウエイト時間が経過した後、再度ステップS105の判定を行なう。
一方、受光部53の受光結果がOFFを示していない(ONを示している)場合(図5;ステップS105-NO)、操舵角判定部12は、受光部53の受光結果がONを示していることを表す判定結果をモータ制御部13に出力する。ここでは、ハンドル50の操舵角が、左切れ角エリア63から左舵角エリア62を通過してセンターエリア61に戻された場合に、受光部53の受光結果がONとなる。
モータ制御部13は、受光部53の受光結果がONである場合、通常制御に移行する(図4;符号102、図5;ステップS106)。通常制御に移行することで、電動車両1は、駆動モータ30、駆動モータ31に対しての出力が低下せずにアクセルの操作量に応じた出力が供給され、前方方向に進行することができる。
【0027】
一方、ステップS107において、操舵角判定部12は、ホールIC56がOFFである場合(図5;ステップS107-YES)、ハンドル50の操舵角が左舵角エリア62または右舵角エリア64のいずれかにあることを表す判定結果をモータ制御部13に出力する。このような場合、ハンドル50の操舵角は、センターエリア61から左舵角エリア62に移行した場合、または、センターエリア61から右舵角エリア64に移行した場合に相当する。
モータ制御部13は、操舵角が左舵角エリア62または右舵角エリア64のいずれかにあることを表す判定結果が得られると、駆動モータ30(左側駆動輪)と駆動モータ31(右側駆動輪)に対する出力を制限することで、出力を低下させる(図4;符号109a,符号109b、図5;ステップS109)。ここでは、駆動モータ30及び駆動モータ31に対する出力を制限することで、旋回時における速度の増加を抑制することができる。
【0028】
以上説明した実施形態において、ステップS104において操舵角が右切れ角エリア65に到達したことにより駆動モータ31に対する出力が停止された場合、または、ステップS108において操舵角が左切れ角エリア63に到達したことにより駆動モータ30に対する出力が停止された場合、受光部53が再度ON(舵角センサが再度ON)するまでは、出力の停止を継続するようにした。これにより、仮に、磁石55がホールIC56に対応する位置に到達したあとさらに左側に移動してホールIC56がOFFになった場合、または、磁石57がホールIC58に対応する位置に到達したあとさらに右側に移動してホールIC58がOFFになった場合であっても、引き続き駆動モータ30あるいは駆動モータ31に対する出力を停止することができる。そのため、左切れ角エリア63または右切れ角エリア65の領域全体を検出対象として検出する必要がなく、操舵角が、左舵角エリア62と左切れ角エリア63との境界を越えて左切れ角エリア63に到達したこと、右舵角エリア64と右切れ角エリア65との境界を越えて右切れ角エリア65に到達したことを検出するだけで済む。これにより、左切れ角エリア63、右切れ角エリア65のセンシングエリアを小さくすることができる。これにより、センサから得られる検出結果がONであるかOFFであるかに基づいて、操舵角がいずれのエリアにあるかを判断することができるため、必ずしも、角度センサや高性能なCPU等を用いる必要がない。そのため、これらセンサの構成を簡略化することができ、コストを低減することができる。特に、歩行者と同等の速度で走行するシニアカー(ハンドル型電動車いす、電動カートとも称する場合がある)や、自動車等の車両より低速で走行するパーソナルモビリティ等に対しては、価格面におけるコストを低減しつつも十分に効果がある。
【0029】
また、受光部53の検出結果のみOFFである領域については、操舵角が左側に操舵されているか右側に操舵されているか識別しなくても、駆動モータ30、駆動モータ31に対する出力制限を行なうことができる。これにより、これらセンサの構成を簡略化することができ、コストを低減することができる。
【0030】
なお、上記実施形態において、発光部52、受光部53をホールICにし、反射板54を板状の磁石としてもよい。この場合、連結部材に取付けられる磁石55、磁石57の磁気を検知しない距離となるように離間して、ホールICを設けることが好ましい。
また、磁石55を連結部材51に設け、ホールIC56を電動車両1に設けるようにしたが、磁石55を電動車両1に設け、ホールIC56を連結部材51に設けるようにしてもよいし、磁石57を電動車両1に設け、ホールIC58を連結部材51に設けるようにしてもよい。
【0031】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0032】
1 電動車両
10 駆動制御装置
20、21 駆動輪
30、31 駆動モータ
40 操舵輪
50 ハンドル
51 連結部材
52 発光部
53 受光部
54 反射板
55、57 磁石
56、58 ホールIC
60 判定対象エリア
61 センターエリア
62 左舵角エリア
63 左切れ角エリア
64 右舵角エリア
65 右切れ角エリア
図1
図2
図3
図4
図5