(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】ブース用の円弧状ドア装置
(51)【国際特許分類】
E05F 5/02 20060101AFI20220119BHJP
E05D 15/06 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
E05F5/02 B
E05D15/06 119
(21)【出願番号】P 2018034451
(22)【出願日】2018-02-28
【審査請求日】2020-10-29
(73)【特許権者】
【識別番号】307038540
【氏名又は名称】三和シヤッター工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085394
【氏名又は名称】廣瀬 哲夫
(74)【代理人】
【識別番号】100165456
【氏名又は名称】鈴木 佑子
(74)【代理人】
【識別番号】100206106
【氏名又は名称】廣瀬 郁夫
(72)【発明者】
【氏名】中川 昌美
(72)【発明者】
【氏名】松原 可菜子
【審査官】秋山 斉昭
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-169327(JP,A)
【文献】特開平11-71923(JP,A)
【文献】実開平5-94490(JP,U)
【文献】特開2009-174200(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 5/02
E05D 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
戸先側、戸尻側の両前面パネル体を備え、両前面パネル体のあいだに出入り口が形成されたブースにおいて、
前記ブースに、出入り口をスライド移動して
出入り口の開閉をする円弧状の戸体と、出入り口の上部からブース内上部に至るよう配され、前記戸体を吊持する状態で
戸体のスライド移動を、
戸体の閉鎖するときの軌跡が出入り口に対してブース室外側から室内側および戸先側に向いた傾斜方向となる円弧軌跡を描いた状態で案内する円弧状の吊りレールと、
戸体が閉鎖したとき戸体の戸先側端縁部が当接して戸体を受け止めるため戸先側の前面パネル体に設けられる戸当りとを備えて構成される円弧状ドア装置を設けた構成にするにあたり、
前記戸当りを、
戸体の略全高さに対応すべく長尺物とし、戸先側
の前面パネル体
のブース室内側面に取付けるための基辺部と、該基辺部から
戸体の円弧軌跡を直角状に横切るようブース奥側および戸尻側に向けて傾斜状に延出していて、閉鎖した戸体の戸先側端縁部を越えて戸尻側且つブース奥側に突出するよう形成された当接辺部とを備えたもので構成すると共に、
該当接辺部
に、閉鎖した戸体の戸先側端縁部が当接する当接面部が、前記円弧軌跡を
直角状に横切るよう
ブース奥側および戸尻側に向けた
傾斜面となって設けられていることを特徴とするブース用の円弧状ドア装置。
【請求項2】
戸先側の前面パネル体の戸尻側端縁部に設けた端部材と閉鎖した戸体の戸先側端縁部とのあいだの隙間は、戸当りによって遮蔽されることを特徴とする請求項1記載のブース用の円弧状ドア装置。
【請求項3】
当接辺部は、前記当接面部が形成される前側辺部と、該前側辺部よりもブース奥側に配される奥側辺部と、前側辺部、奥側辺部の戸尻側端縁部同士を連結する連結辺部とを備えて中空状に形成されていることを特徴とする請求項1
または2の何れか1記載のブース用の円弧状ドア装置。
【請求項4】
戸当りは、戸先側
の前面パネル体の戸尻側端縁部に設けられる端部材のブース奥側辺部の戸先側端縁に、基辺部を戸先側から戸尻側に向けて突き当てることで位置決めされることを特徴とする請求項1乃至
3の何れか1記載のブース用の円弧状ドア装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トイレブースやシャワーブース等の仕切られた(区画された)ブース(部屋)の出入り口に建て付けられるブース用の円弧状ドア装置の技術分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日、トイレブース等の仕切られたブースの出入り口に建て付けられるドア装置として円弧状の戸体を円弧軌跡に沿って左右方向にスライド移動させることで出入り口の開閉をするようにした所謂円弧状ドア装置が提唱されている。このような円弧状ドア装置は、出入り口を開放したときに戸体をブース室内に引き入れた状態にできることから、通常の左右スライド式のドア装置の場合に比して、出入り口の左右幅を広く確保しながらブースの左右幅を小さいものにできる、という利点がある。そしてこの場合に、左右直線状に移動するスライド式のドア装置では、閉鎖時の戸体の負荷を戸先側端縁部に設けた戸当りで受止めることになるが、このためには、戸当りの強度を、受止め負荷に十分耐え得るものにしなければならないが、このことは円弧状ドア装置の戸体においても同様である。
このため円弧状ドア装置において、戸体がブース構成部材である前面パネルと側面パネルとのコーナー部を円弧軌跡に沿って左右スライド移動する構成のものである場合、全閉時の戸先側端縁部の移動方向を、前面パネル体の左右パネル面方向と平行状(同じ方向、接線方向)にすることで、戸体の戸先側端縁部の戸当り角度を直角状にして受けることができる(例えば特許文献1参照。)。
しかしながら出入り口が、前記特許文献1のようにコーナー部でなく、左右に設けられた前面パネル体間に設けられたものである場合、戸体の移動方向は、戸先側の前面パネル体に対してブース内に引き込む(入り込む)方向の円弧軌跡になるため、単純に直線状にスライド移動するドア装置の戸当りをそのまま採用したときに、戸体の戸先側端縁部を好ましい戸当り角度で受け止めることができない。
そこで戸先側の前面パネル体と側面パネル体とのコーナー部を、隣接するブース側に向いた円弧状とし、該円弧状部位に戸当りを設けて閉鎖時の戸体を直角状に受けるようにしたものが提唱されている(例えば特許文献2参照。)が、このものはブースを構成するパネル体が円弧状という特殊な形状にしなければならないことになってブース自体の汎用性が欠ける等の問題がある。
これに対し、戸先側端縁部を、前面パネル体の戸尻側端部から突設した棒状の戸当り部材で受けるようにしたものが提唱されている(特許文献3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開平5-94490号公報
【文献】特開2016-20602号公報
【文献】特開平11-71923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが前記特許文献3のものは、戸先側前面パネル体に設けた棒状の戸当りに対して戸体の戸先側端縁部が当接して受け止めるものであるため、戸当りの戸体の戸先側先端部に対する当接が線状になって安定性に欠け、確実な受け止め支持ができないだけでなく、戸当りに戸体が当接したときの衝撃力を、戸先側前面パネル体の戸当り取付け部位で受けることになり、この結果、該戸当り取付け部位に集中的な負荷が働くことになって、戸先側正面パネル体について、少なくとも該部位の強度アップが図られたものを採用する必要があって汎用性に欠けることになるという問題があり、ここに本発明の解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、戸先側、戸尻側の両前面パネル体を備え、両前面パネル体のあいだに出入り口が形成されたブースにおいて、前記ブースに、出入り口をスライド移動して出入り口の開閉をする円弧状の戸体と、出入り口の上部からブース内上部に至るよう配され、前記戸体を吊持する状態で戸体のスライド移動を、戸体の閉鎖するときの軌跡が出入り口に対してブース室外側から室内側および戸先側に向いた傾斜方向となる円弧軌跡を描いた状態で案内する円弧状の吊りレールと、戸体が閉鎖したとき戸体の戸先側端縁部が当接して戸体を受け止めるため戸先側の前面パネル体に設けられる戸当りとを備えて構成される円弧状ドア装置を設けた構成にするにあたり、前記戸当りを、戸体の略全高さに対応すべく長尺物とし、戸先側の前面パネル体のブース室内側面に取付けるための基辺部と、該基辺部から戸体の円弧軌跡を直角状に横切るようブース奥側および戸尻側に向けて傾斜状に延出していて、閉鎖した戸体の戸先側端縁部を越えて戸尻側且つブース奥側に突出するよう形成された当接辺部とを備えたもので構成すると共に、該当接辺部に、閉鎖した戸体の戸先側端縁部が当接する当接面部が、前記円弧軌跡を直角状に横切るようブース奥側および戸尻側に向けた傾斜面となって設けられていることを特徴とするブース用の円弧状ドア装置である。
請求項2の発明は、戸先側の前面パネル体の戸尻側端縁部に設けた端部材と閉鎖した戸体の戸先側端縁部とのあいだの隙間は、戸当りによって遮蔽されることを特徴とする請求項1記載のブース用の円弧状ドア装置である。
請求項3の発明は、当接辺部は、前記当接面部が形成される前側辺部と、該前側辺部よりもブース奥側に配される奥側辺部と、前側辺部、奥側辺部の戸尻側端縁部同士を連結する連結辺部とを備えて中空状に形成されていることを特徴とする請求項1または2の何れか1記載のブース用の円弧状ドア装置である。
請求項4の発明は、戸当りは、戸先側の前面パネル体の戸尻側端縁部に設けられる端部材のブース奥側辺部の戸先側端縁に、基辺部を戸先側から戸尻側に向けて突き当てることで位置決めされることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1記載のブース用の円弧状ドア装置である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明とすることにより、円弧状の戸体、吊りレールを備えたブース用の円弧状ドア装置において、戸体が閉鎖する際に戸体の戸先側端縁部が当接して受け止めるための戸当りが、戸先側前面パネル体に取付けられる基辺部と、該基辺部から戸体の円弧軌跡を横切るように戸尻側に向けて延出した当接辺部とを備え、該当接辺部に設けられた当接面部に閉鎖する戸体の戸先側端縁部が当接することになり、この結果、円弧軌跡を描きながら閉鎖する戸体の戸先側端縁部を、円弧軌跡を横切る状態の広い面として当接面部が受け止めることになって、安定した確実性のある戸当りが、殊更戸先側前面パネル体を補強することなくできることになる。
しかも当接面部を、戸尻側がブース奥側に傾斜した状態になって戸体の円弧軌跡に対して強度的に有利な戸当り角度を有したものにでき、安定した戸体受止めができることになる。そのうえ、戸当りの基辺部が、戸先側パネル体のブース室内側面に取付けられるため、ブースを前面(正面)側から見たときに、基辺部が見えないことになって外観性が向上する。
請求項2の発明とすることにより、閉鎖戸体の戸先側端縁部と戸先側前面パネル体の戸尻側端縁部とのあいだにある隙間を通してのブース内への視認が、戸体の戸先側端縁部が当接面部に当接することで遮蔽されるため、別途遮蔽部材を用いることなく、防犯性が優れたものになる。
請求項3の発明とすることにより、当接面部が形成される当接辺部が、当接面部が形成される前側辺部と、該前側辺部よりもブース奥側に配される奥側辺部と、前側辺部、奥側辺部の戸尻側端縁部同士を連結する連結辺部とを備えた中空状のもので形成されているため、強度的に強いものになってより安定した戸当りとすることができる。
請求項4の発明とすることにより、戸当りの位置決めされた取付けが簡単になって施工性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】(A)(B)はトイレブースの正面図、側面図である。
【
図3】トイレブースの戸体を省略した概略分解斜視図である。
【
図5】(A)(B)は吊りローラ部位の正面図、戸体部位の縦断面図である。
【
図7】戸体がない状態を示す戸先側部位の平面図である。
【
図8】戸体が閉鎖した状態を示す戸先側部位の平面図である。
【
図10】出入口の寸法が異なる場合の円弧状ドア装置の納まり状態を示す平面図である。
【
図11】出入口の寸法が異なる場合の戸先側部位の戸体が閉鎖した状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図面において、1はトイレブースであって、該トイレブース1は、左右に複数が隣接する状態で設けられたものであり、出入り口(開口)Eを構成すべく前面(正面)に左右間隙を存する状態で設けられる戸先側、戸尻側の前面パネル体2、3と、これら前面パネル体2、3が先端部(前端部)に設けられていてこれら前面パネル体2、3とトイレブース奥端の壁等の躯体面Wとのあいだを仕切る側面パネル体4とを備えることで平面視で矩形状に形成されていること等は何れも従来通りである。
尚、本実施の形態ではトイレブース1が左右に隣接されるものでありこの場合、隣接するトイレブース1間を仕切る側面パネル体4の先端部に設けられる中間の戸先側、戸尻側の前面パネル体2、3同士は左右に連続した一体もので構成され、端側の前面パネル体2、3は各別なもので構成されている。また、本実施の形態では、
図2における左側のトイレブース1の左側面は、側面パネル4ではなく壁等の躯体面Wで形成されているが、これらの構成については必要において適宜実施できるものであることは言うまでもない。
【0009】
5は平面視で円弧形状をした戸体であって、該戸体5は、戸体5の左右上端縁部に設けたブラケット6aから上方に突出する状態でハンガーローラ(吊りローラ)6が設けられるが、該ハンガーローラ6が転動することで移動案内される吊りレール(ハンガーレール、案内レール)7は、前記戸体5の円弧形状に沿うよう円弧状をし、出入り口Eの上方とトイレブース1内に入り込む状態において左右方向一方(戸尻側)の側面パネル4の上端部とに亘るよう配設されている。
そして該吊りレール6は、戸体5が閉鎖するときの軌跡が、図4、8から明らかなように、出入り口Eに対してトイレブース1の室外側から室内側および戸先側に向いた傾斜方向となる円弧軌跡を描いた状態で案内するよう構成されている。
因みに本実施の形態の吊りレール7は、戸先側前面パネル体2に設けたブラケット7a、戸尻側前面パネル体3に設けたブラケット7b、側面パネル体4(あるいは躯体面W)に設けた前後一対のブラケット7c、7dに止着されることで取付けられている。そして前記ハンガーローラ6が吊りレール7を水平方向に転動することにより、戸体5は左右方向にスライド移動して前記出入り口Eを閉鎖する閉鎖姿勢と、トイレブース1の戸尻側側面パネル体4側のトイレブース1内に入り込む状態になって出入り口Eを開放(開口)する開放姿勢とに変姿するようになっている。尚、Tはトイレブース1内に設けられる便器、Sは吊りレール6と戸体5とのあいだの前面側部位を塞ぐ塞ぎ板である。
【0010】
また、戸体5の戸先側端部のブース内外両側パネル面には把手13が設けられ、ブース室内側パネル面には施錠用操作具14が設けられるが、戸体5の閉鎖状態で施錠用操作具14を操作することにより、図示しない施錠体(施錠ロッド、ラッチ)が吊りレール7側に設けた施錠受け(図示せず)に突出係止し、これにより閉鎖姿勢の戸体5の施錠ができるようになっている。尚、施錠受けについては、吊りレール7ではなく、戸当り8に設けることもでき、この場合、施錠受けは、後述する当接面部8nよりもブース奥側に設けられることになる。
さらに戸体5の戸先側端部、戸尻側端部にはそれぞれ戸体5用の端部材(エッジ部材)15、16が設けられ、これら端部材15、16にはゴム質弾性を有した緩衝材15a、16aがさらに設けられている。
【0011】
トイレブース1には、戸体5が閉鎖した際に戸体5の戸先側端縁部が当接して受ける戸当り8、戸体5の下端縁部に形成されたガイド溝(軌道)5aに嵌入(係止)して戸体5の開閉ガイドをするため戸尻側前面パネル体3にブラケット9aを介して設けられる振れ止め用のガイド体(ガイドローラ、振れ止めローラ)9、戸体5が全開するときの衝撃を緩衝するべく吊りレール7の戸尻側端部に配設された後述する緩衝部材10を備えている。尚、緩衝部材10は必要において戸先側に設けてもよいことは勿論である。
【0012】
前記戸当り8は、戸体5の全長(全高さ)に略対応すべく長尺物で構成され、本実施の形態では、上端部が吊りレール7の下面に入り込み、下端部が床面Fに当接する状態で配されたものであるが、これに限定されず、例えば下端部については、戸体5の下端部に対応した長さとして床面Fに当接しないものとしても実施することができる。
そして、基辺部8aの前面が戸先側前面パネル体2のブース室内側面2aに面接触する状態でビス8bを介して固着されることになるが、該戸当り8は、基辺部8aの戸尻側端縁(出入り口E側端縁)8cを、戸先側前面パネル2の戸尻側端縁部に嵌合(外嵌)組込みした端部材(エッジ材)11のブース奥側(室内側)辺部11aの戸先側端11bに対して前記面接触状態で戸尻側に向けて(戸尻側に移動させて)突き当てる(当接する)ようにして戸先側前面パネル体2に取付けることにより、戸当り8の位置決めされた状態での取付けができるように設定されている。
因みに戸当り8は、本実施の形態では、複数のビス8bを介して戸先側前面パネル体2に上下方向略全長に亘って点在的に固定されるものとし、これらよって戸当り8としての強度が確保される設定になっているため、吊りレール7、床面Fに固定しないものとして実施しているが、これらに固定したものであっても勿論よい。
【0013】
戸当り8は、前記基辺部8aの戸尻側端縁部から戸先側に連続する状態で僅かにブース奥内(室内)側に没入(退避)していて、端部材11のブース室内側辺部11aを迂回するように設定された没入辺部8dを備えているが、基辺部8aの戸先側端部と没入辺部8dの戸尻側端縁部とからは、ブース室内側(奥内側)に向けて折曲するようにして延出(起立)する第一、第二の起立辺部8e、8fが形成されており、これにより、両起立辺部8e、8f並びに基辺部8a、没入辺部8dによってブース室内側が開口した凵字形の空間部8gが形成されている。そして戸当り8は、該空間部8gの開口から前記ビス8bを用いての戸先側前面パネル体2への取付ができるようになっている。
さらに第一起立辺部8eは、第二起立片部8fよりも延出長さが短くなっており、これによって空間部8gは、第二起立片部8f側(戸尻側)が深いものとなっていて戸尻側がブース室内側に偏倚した傾斜状の開口を備えたものになっており、この開口は遮蔽板12によって開閉自在に覆蓋されている。
【0014】
戸当り8は、さらに第二起立片部8fのブース室内側先端部8hと、第二起立片部8fの没入辺部8dを越えて戸尻側斜め前方に延出した部位の前側先端部8iとが設けられ、これら先端部8h、8iからは、戸尻側で且つブース奥側(室内側)に向けて斜め傾斜状に延出した前側辺部8jと奥側辺部(室内側辺部)8kとが形成されているが、これら前側辺部8j、奥側辺部8kの戸尻側端縁部同士は円弧状の連結辺部8lによって連結されている。そしてこのように構成することで、戸当り8には、戸体5の後述の円弧軌跡Xを径方向に横切る状態で戸体5よりも前後方向(円弧軌跡Xに直交する方向)に幅広の中空状になった当接辺部8mが基辺部8aからブース奥側および戸尻側に延出する状態で形成されている。
【0015】
そして当接辺部8mを構成する前側辺部8jには、平面視において戸先側が前側に位置し、戸尻側がブース奥側に位置する状態で前記戸体5の円弧軌跡Xを径方向に向いて直角状に横切るようにして傾斜した当接面部(戸当り面)8nが凹陥状に形成されていて、戸体5が閉鎖した場合に、戸先側緩衝材15aが遊嵌状に嵌入する状態で当接している。
一方、戸体5、吊りレール7は、同半径の設定で形成されており、そして戸体5は、トイレブース1内に設定される吊りレール7の円弧中心Oを基準とする円弧軌跡Xに沿って開閉スライド移動をすることになるが、本実施の形態において戸体5の戸先側端縁部となる前記戸先側端部材15に設けた緩衝材15aが、戸当り8の当接面部8nに対して所定の戸当り角度(例えば直角)θの角度をもって当接するように設定されている。
【0016】
叙述の如く構成された本実施の形態において、戸体5は、共に円弧状をした吊りレール7に案内される状態で出入り口Eとトイレブース1の戸尻側部位に入り込んだ部位との間を左右スライド移動して出入り口Eの開閉をすることになるが、戸体5が閉鎖するとき、戸体5の戸先側端縁部は、戸先側前面パネル体2に設けられた戸当り8に当接して受け止められることになる。
この場合において戸当り8は、戸先側前面パネル体2に取付けられる基辺部8aと、該基辺部8aから戸体の円弧軌跡Xを径方向に向いて横切るように戸尻側に向けて延出した当接辺部8mとを備えたものとして構成され、そして該当接辺部8mに形成された当接面部8nに閉鎖する戸体5の戸先側端縁部が当接することになるが、この場合に、円弧軌跡Xを描きながら閉鎖する戸体5の戸先側端縁部を、円弧軌跡Xを横切る状態の広い面としての当接面部8nで受け止めることになって、安定した確実性のある戸当りができることになる。
【0017】
しかもこの場合に、当接面部8nは、戸尻側がブース奥側に傾斜するよう設けられているから、該当接面部8nを、戸体5の戸先側端縁部の円弧軌跡Xに対して強度的に有利な戸当り角度(直角又はこれに近い角度)θを有したものに設定できることになって、安定した戸体5の受止めができることになっている。
【0018】
一方、戸当り8は、基辺部8aが戸先側前面パネル体2のブース室内側面2aに取付けられるため、トイレブース1を室外側(前面側)から見たときに、基辺部8aは戸先側前面パネル体2に隠れた状態となって視認されることがなく、外観性が向上する。
この場合に戸当り8は、戸先側前面パネル体2の戸尻側端縁部に設けられる端部材11のブース室内側辺部11aの戸先側端縁11bに、基辺部8aの戸尻側端縁8cを戸先側から戸尻側に向けて突き当てるようにして取付けることで、位置決めされた状態での取付けができるため、施工性に優れたものになる。
【0019】
このようにして組付けられた戸体5は、閉鎖したときに戸体5の戸先側端縁部と戸先側前面パネル体2の戸尻側端縁部とのあいだに隙間を存し、この隙間を通してトイレブース1内を外側から視認される可能性があるが、この隙間は、戸体5の戸先側端縁部に設けた端部材15が戸体5の全長(全高さ)に亘って当接面部8nに当接している結果、該当接面部8nが設けられた戸当り8によって確実に遮蔽されることなって別途遮蔽部材で塞ぐ必要がないものでありながら防犯性が損なわれることがない。
しかもこのものでは、戸当り8が、戸先側パネル体2に取付けられる基辺部8aから当接辺部8mが延設されたものであるため、この延設部でも前記隙間を塞ぐことになって遮蔽性の優れたものになる。
【0020】
また戸当り8の当接面部8nが形成される当接辺部8mは、該当接面部8nが形成される前側辺部8jと、該前側辺部8jよりもブース奥側に配される奥側辺部8kと、これら前側辺部8j、奥側辺部8kの戸尻側端縁部同士を連結する連結辺部8lとを備えて中空状に形成されているため、戸体5を受ける戸当り8として必要な強度を確保できることになって、単に当接面部8nを存した前側辺部8jに相当するものだけ形成した場合に比して強度的に有利なものとなる。
【0021】
本発明は、前記実施の形態に限定されるものでないことは勿論であり、出入り口Eの開口幅の寸法を種々異ならしめたものについて実施することができるが、この場合に、前記ブース用の円弧状ドア装置を、出入り口Eをスライド移動して開閉する円弧状の戸体5と、出入り口Eの上部からブース内上部に至るよう配され、前記戸体5を吊持する状態で戸体5の開閉スライド移動の案内をする円弧状の吊りレール7とを備えたものとしたときに、それぞれ異なる寸法に対応した円弧状の戸体5および吊りレール7を用いて構成することになるが、この場合、
図10、11に示すように、前記実施の形態の戸体5(5-1)に対して幅広の戸体5-2である場合、戸体5-1(5)、5-2、吊りレール7-1(7)、7-2は、戸体5の当接面部8nに対する戸当り角度θが何れの寸法の場合も略一定の角度になるよう円弧中心O-1(O)、O-2の位置を調節することで円弧軌跡X-1(X)、X―2を描くものとして設ける構成にし、これにより、戸体5および吊りレール7以外のトイレブース1も含めて戸当り8等の部材装置の多くの共通化を図ることができ、部品点数の削減ができることになる。尚、この場合、戸当り角度θは、戸体5の幅が異なった場合において一致させることが好ましいが、多少のずれがあっても実施できることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、トイレブースやシャワーブース等のブース用の円弧状ドア装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0023】
1 トイレブース
2 戸先側前面パネル体
2a 室内側面
3 戸尻側前面パネル体
5、5-1、 5-2 戸体
6 ハンガーローラ
7、7-1、7-2 吊りレール
8 戸当り
8a 基辺部
8j 前側辺部
8k 奥側辺部
8l 連結辺部
8m 当接辺部
8n 当接面部
E 出入り口
O、O-1、O-2 円弧中心
X、X―1、X-2 円弧軌跡
θ 戸当り角度