(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】製管装置
(51)【国際特許分類】
B29C 63/32 20060101AFI20220119BHJP
F16L 1/00 20060101ALI20220119BHJP
F16L 55/28 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
B29C63/32
F16L1/00 J
F16L55/28
(21)【出願番号】P 2018082999
(22)【出願日】2018-04-24
【審査請求日】2021-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【氏名又は名称】原田 三十義
(74)【代理人】
【識別番号】100153800
【氏名又は名称】青野 哲巳
(72)【発明者】
【氏名】久保 善央
【審査官】馳平 憲一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/013636(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/166948(WO,A1)
【文献】特開2006-35596(JP,A)
【文献】特開平9-21488(JP,A)
【文献】特開昭61-182927(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 63/00-63/48
65/00-65/82
F16L 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状部材を既設管の内周に沿って螺旋状に巻回してなる製管済部分の延伸前方側の管端部と、前記帯状部材の未製管の帯部分との互いに対向する縁部どうしを嵌合させながら螺旋状に推進される製管装置であって、
前記管端部の内周側に配置される装置フレームと、
前記装置フレームに設けられ、回転駆動によって前記嵌合及び推進を行なう少なくとも一対の駆動ローラと、
前記装置フレームに支持され、前記製管済部分の帯状部材に対して螺旋状の推進前後方向へスライド可能に係止される係止治具と、
前記推進前後方向と直交する装置幅方向に沿う回転軸まわりに回転可能かつ前記管端部より外周側へ突出されるようにして、前記装置フレームに支持され、前記係止治具又は駆動ローラにおける前記管端部の外周側に配置された部分と前記既設管の内周面との離間距離を取る離間調整コロと、
を備え、前記離間調整コロが、前記装置幅方向の延伸前方側へ向かって縮径されていることを特徴とする製管装置。
【請求項2】
前記離間調整コロが、円錐形状であることを特徴とする請求項1に記載の製管装置。
【請求項3】
前記装置フレームにおける前記推進前後方向に離れた複数箇所にそれぞれ前記離間調整コロが配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の製管装置。
【請求項4】
前記離間調整コロが、前記装置フレームに対して前記推進前後方向及び装置幅方向と直交する方向に沿って位置調節可能であることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の製管装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯状部材から既設管の内周に沿う螺旋管状の更生管を製管する製管装置に関し、特に製管に伴って螺旋状の巻回方向に沿って推進(自走)される自走式の製管装置に関する。
【背景技術】
【0002】
老朽化した下水道管等の埋設管の内周面に沿って帯状部材を巻回して螺旋管状の更生管を製管することによって、前記埋設管を更生する方法は公知である。例えば、特許文献1には、前記更生管を製管するための自走式の製管装置が記載されている。当該製管装置は、環状の内周規制体を含む装置フレームと、該装置フレームの周方向の一箇所に設けられた一対の駆動ローラ(ピンチローラ)を有している。帯状部材から製管された製管済部分の延伸前方側の約一周にわたる管端部が、内周規制体の外周に巻き付けられている。前記帯状部材における未製管の帯部分と前記管端部との互いに対向する縁部どうしが、一対の駆動ローラによって挟み付けられ、かつ前記縁部に設けられた嵌合部どうしが嵌合されることで、製管が進む。製管に伴って、駆動ローラと装置フレームが一体となって螺旋状の巻回方向へ推進(自走)される。装置フレームにおける一対の駆動ローラの近くには、円筒形状の離間調整コロが設けられている。離間調整コロは、外周側の駆動ローラよりも外周側へ突出され、既設管の内周面に沿って転動される。これによって、外周側の駆動ローラが既設管の内周面から離間されている。
【0003】
特許文献2の製管装置においては、一対の駆動ローラが、環状の装置フレームの内周側に配置されている。これら駆動ローラによって未製管の帯部分が製管済の管端部へ向けて押し込まれることで、前記帯部分と管端部との互いに対向する縁部の嵌合部どうしが嵌合される。装置フレームには係止治具と離間調整コロが設けられている。係止治具は、製管済の管端部よりも外周側へ突出して、管端部に対して推進前後方向と直交する装置幅方向に拘束されるとともに推進前後方向へスライド可能に係止される。更に離間調整コロによって、係止治具と既設管の内周面との離間距離が調節される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開WO2011/013636
【文献】特開2016-43555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
既設管には屈曲部や段差が形成されていることがある。かかる既設管を自走式製管装置で更生する場合、円筒形の離間調整コロが前記屈曲部や段差に引っ掛かって製管作業が停止されることがある。
本発明は、かかる事情に鑑み、自走式の製管装置によって既設管の内周に沿う螺旋管状の更生管を製管する際、既設管内の管路に屈曲部や段差があっても製管装置が引っ掛かることなく製管を円滑に行なえるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、帯状部材を既設管の内周に沿って螺旋状に巻回してなる製管済部分の延伸前方側の管端部と、前記帯状部材の未製管の帯部分との互いに対向する縁部どうしを嵌合させながら螺旋状に推進される製管装置であって、
前記管端部の内周側に配置される装置フレームと、
前記装置フレームに設けられ、回転駆動によって前記嵌合及び推進を行なう少なくとも一対の駆動ローラと、
前記装置フレームに支持され、前記製管済部分の帯状部材に対して螺旋状の推進前後方向へスライド可能に係止される係止治具と、
前記推進前後方向と直交する装置幅方向に沿う回転軸まわりに回転可能かつ前記管端部より外周側へ突出されるようにして、前記装置フレームに支持され、前記係止治具又は駆動ローラにおける前記管端部の外周側に配置された部分と前記既設管の内周面との離間距離を取る離間調整コロと、
を備え、前記離間調整コロが、前記装置幅方向の延伸前方側へ向かって縮径されていることを特徴とする。
【0007】
当該製管装置によれば、係止治具又は駆動ローラにおける管端部の外周側に配置された部分と既設管の内周面との間の離間距離を確保することで、係止治具又は駆動ローラの損耗を抑制できる。
既設管に屈曲部が形成されていたときは、延伸前方側へ向かって縮径された離間調整コロが屈曲部の内周面に当たった後、転動しながら該屈曲部に合わせて角度を変えるように案内される。ひいては、製管装置全体が屈曲部より延伸前方側の既設管の管軸に合わせて角度を変える。これによって、更生管が既設管の屈曲部に合わせて屈曲するように製管される。
既設管に上り段差が形成されていたときは、延伸前方側へ向かって縮径された離間調整コロが該段差に当たった後、転動しながら段差に乗り上げるように案内される。ひいては、製管装置が段差より延伸前方側における既設管の内周面に乗り上げる。これによって、更生管が既設管の段差に合わせて変形するように製管される。
したがって、既設管の屈曲部や段差に製管装置が引っ掛かって作業が停止されるのを防止できる。
【0008】
好ましくは、前記離間調整コロは、円錐形状である。これによって、屈曲部や段差を確実に乗り越えることができる。ここで、円錐形状は、円錐台形を含む。離間調整コロの全体が円錐形(円錐台を含む)である必要はなく、例えば離間調整コロの延伸後方側の部分がストレートな円筒形状になっていてもよい。
【0009】
前記装置フレームにおける前記推進前後方向に離れた複数箇所にそれぞれ前記離間調整コロが配置されていることが好ましい。
これによって、係止治具又は駆動ローラを既設管の内周面から安定的に離間させることができる。
好ましくは、離間調整コロは、係止治具又は駆動ローラの近くに配置されている。
隣接する離間調整コロの間に係止治具又は駆動ローラが配置されていてもよい。
【0010】
前記離間調整コロが、前記装置フレームに対して前記推進前後方向及び装置幅方向と直交する方向に沿って位置調節可能であることが好ましい。これによって、離間調整コロの管端部からの突出量を調整でき、係止治具又は駆動ローラと既設管の内周面との間の離間距離を調整できる。
既設管の内周面の曲率半径が小さいときは、前記離間調整コロの管端部からの突出量が比較的小さくても、係止治具又は駆動ローラが既設管の内周面に当たるのを回避できる。
好ましくは、既設管の内周面の曲率半径が大きいときは、前記離間調整コロの管端部からの突出量を大きくする。これによって、係止治具又は駆動ローラが既設管の内周面に当たるのを防止できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、既設管内の管路に屈曲部や段差があっても、製管装置の離間調整コロが引っ掛かるのを防止でき、スムーズに製管を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る製管装置によって更生施工中の既設管を示し、
図2のI-I線に沿う正面断面図である。
【
図2】
図2は、
図1のII-II線に沿う、前記製管装置によって更生施工中の既設管の側面断面図である。
【
図4】
図4は、前記製管装置の製管機構部を延伸前方側から見た正面図である。
【
図8】
図8は、
図8のVIII-VIII線に沿う断面図である。
【
図10】
図10(a)~同図(c)は、推進前方側の離間調整コロを高さ調節する態様を示す解説図である。
【
図11】
図11(a)~同図(c)は、推進後方側の離間調整コロを高さ調節する態様を示す解説図である。
【
図12】
図12は、既設管の段差における製管の様子を示す断面図である。
【
図13】
図13は、既設管の屈曲部における製管の様子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を図面にしたがって説明する。
図1及び
図2に示すように、老朽化した下水道管等の既設の埋設管1の内面に更生管9(螺旋管)がライニングされることで、埋設管1が更生されている。埋設管1としては、下水道管の他、上水道管、農業用水管、水力発電導水管、ガス管などが挙げられる。
【0014】
図3及び
図9に示すように、更生管9は、帯状部材90(プロファイル)によって形成されている。
図9に示すように、帯状部材90は、例えばポリ塩化ビニルなどの樹脂を主帯材91として含む。更に帯状部材90はスチールなどの金属からなる補強帯材92を含んでいてもよい。該帯状部材90が、埋設管1の内周に沿って螺旋状に巻回されて更生管9となっている。帯状部材90における帯幅方向の一端部の凹状の第1嵌合部93と、他端部の凸状の第2嵌合部94との、互いに一周ずれた部分どうしが対向して嵌合されている。かつ帯幅方向の一端部の斜めをなすサブロック部97の先端部と、他端側のリブ95との、互いに一周ずれた部分どうしが係止されている。
なお、サブロック部97は無くてもよい。
図9などにおける帯状部材90の断面形状は例示である。本発明の帯状部材としては、図示した断面形状のものに限られず、種々の形態を適用できる。
【0015】
図1及び
図2に示すように、製管途中の更生管9すなわち帯状部材90の製管済部分9aにおける延伸前方側(
図2において左側)の管端部9eには、製管装置3が設けられている。ここで、管端部9eとは、製管済部分9aの延伸方向前端の約一周部分を言う。
製管装置3は、製管機構部3bと、環状の内周規制体12(リンクローラ)を有している。
内周規制体12は、リンク12aと、ローラ12bを有し、環状に組まれている。内周規制体12の外周に管端部9eが巻き付けられている。内周規制体12によって管端部9eひいては更生管9の直径(周長)ないしは断面形状が規定されている。
【0016】
図1に示すように、内周規制体12ひいては製管装置3の周方向の一箇所に製管機構部3bが設けられている。製管機構部3bは、ボディ11と、駆動ローラ13と、係止治具21,22と、離間調整コロ31,42を含む。
ボディ11は、概略箱状に形成されている。ボディ11の両側部に内周規制体12の周長方向の一端部と他端部がそれぞれ連結されることで、内周規制体12が閉環状になっている。ボディ11と内周規制体12とによって、装置フレーム10が構成されている。
帯状部材90における製管済部分9aに続く未製管の帯部分90bが、ボディ11内に通されている。
【0017】
図4に示すように、ボディ11の内部には、2対(少なくとも一対)の駆動ローラ13が設けられている。駆動ローラ13は、インナーローラ13aとアウターローラ13bとの対になっている。これらローラ13a,13bによって帯部分90bを挟み付けている。図示は省略するが、ボディ11には駆動モータ及びギア群が搭載されている。駆動ローラ13が、ギア群を介して駆動モータに動力伝達可能に接続されている。
【0018】
駆動ローラ13の回転駆動によって帯部分90bが管端部9eへ向けて押し込まれることで、帯部分90bと管端部9eとの互いに対向する嵌合部93,94どうしが嵌合される。これによって製管が進む。製管に伴って、製管装置3が螺旋状の巻回方向(
図1において時計回りかつ紙面手前側)へ推進(自走)される。
【0019】
図4に示すように、装置フレーム10におけるボディ11及びその近くの内周規制体12には、係止治具21,22及び離間調整コロ31,41が設けられている。これら部材21,22,31,41は、装置フレーム10における前記螺旋状の巻回方向に沿う推進前後方向LD(
図4において左右)に互いに離れて配置されている。
【0020】
図6に示すように、推進前方側の係止治具21は、内周側押え部材21aと、外周側規制部材21bと、連結支持部21cを有している。連結支持部21cは、管端部9eより延伸前方側に配置され、かつボディ11から外周方向(
図6において下方)へ突出されている。
内周側規制部材21aと外周側規制部材21bとが連結支持部22cを介して連結されている。
内周側押え部材21aは、板状に形成され、管端部9eの内周面に宛がわれている。内周側押え部材21aは板状に限られず、ロール状であってもよいし、先端にローラーを有していてもよい。
【0021】
外周側規制部材21bは、管端部9eの外周側に配置されている。外周側規制部材21bには、複数の係止突起21d,21fが設けられている。係止突起21dが、管端部9eを構成する帯状部材90の外周側部の溝部96に挿入されている。係止突起21fは、帯状部材90における管端部9eより一周先行する巻き部分のサブロック部97に押し当てられている。これによって、係止治具21が、管端部9eひいては製管済部分9aの帯状部材90に対して推進前後方向LDと直交する装置幅方向WDに拘束されるとともに推進前後方向LDへスライド可能に係止される。なお、係止突起21fがサブロック部97に当たると、サブロック部97が更生管の延伸前方側へ開き、該サブロック部97の先端が帯状部材90における延伸前方側隣りのリブ95に引っ掛かる。
【0022】
図4及び
図8に示すように、推進後方側の係止治具22は、帯規制部材22aと、管端規制部材22bと、連結支持部22cを有している。連結支持部22cが、内周規制体12におけるボディ11よりも推進後方側(
図4において右側)の部分から外周方向へ突出されている。連結支持部22cの中間部に帯規制部材22aが設けられている。帯規制部材22aは、ボディ11から管端部9eまでの間の帯部分90bが外周側へ偏り過ぎないように規制している。
【0023】
連結支持部22cの外周側の端部に管端規制部材22bが連結されて支持されている。管端規制部材22bは、管端部9eの外周側に配置されている。該管端規制部材22bに係止突起22dが設けられている。係止突起22dは、管端部9eを構成する帯状部材90の外周側部の溝部96に挿入されている。これによって、係止治具22が、管端部9eひいては製管済部分9aの帯状部材90に対して推進前後方向LDと直交する装置幅方向WDに拘束されるとともに推進前後方向LDへスライド可能に係止されている。好ましくは、2つ(複数)の係止治具22が、補強帯材92の断面コ字状の胴部92aを両側から挟む。これによって、製管装置3を管端部9eに対して装置幅方向WDへしっかりと位置決めでき、しっかりと係止できる。
【0024】
図4に示すように、装置フレーム10における推進前後方向LDに離れた複数箇所にそれぞれ離間調整コロ31,41が配置されている。好ましくは、離間調整コロ31,41は、係止治具21,22の近くに配置されている。詳しくは、離間調整コロ31は、係止治具21の推進前方側(
図4において左側)に配置されている。離間調整コロ41は、係止治具21,22の間に配置されている。
離間調整コロ31,41の材質は、所要の剛性を有するものであることが好ましく、スチールなどの金属がより好ましい。
【0025】
離間調整コロ31は、次のようにして装置フレーム10に支持されている。
図4及び
図5に示すように、ボディ11の中央部から外周側(
図5において下側)へL字状の連結板32が突出され、更に逆さL字状の軸受板33が突出されている。軸受板33は、当接板部33aと、軸受板部33bを有している。当接板部33aと連結板32がボルト36によって接合されている。軸受板部33bが、当接板部33aから外周側(
図5において下側)へ延びている。軸受板部33bに軸受け部34を介して離間調整コロ31が回転可能に支持されている。離間調整コロ31の回転軸31cは装置幅方向WD(
図5において左右)へ向けられている。離間調整コロ31は、管端部9eより延伸前方側(
図5において左側)に配置され、かつ係止治具21よりも外周側(
図5において下側)へ突出されている。
【0026】
離間調整コロ31は、装置幅方向WDの延伸前方側(
図5において左側)へ向かって縮径する円錐形状になっている。詳しくは、離間調整コロ31は、テーパ部31aと、ストレート部31bを有している。テーパ部31aが円錐形、厳密には円錐台形になっている。テーパ部31aのテーパ角度α
31は、好ましくはα
31=20°~70°程度である。テーパ部31aの小径側の先端部31eは平坦面になっている。テーパ部31aの大径側端部にストレート部31bが連なっている。ストレート部31bは、テーパ部31aの大径側端部と同径、かつテーパ部31aより十分短い軸長の円筒形に形成されている。ストレート部31bから回転軸31cが突出されて軸受板33に回転可能に支持されている。
【0027】
図10に示すように、離間調整コロ31は、装置フレーム10に対して装置高さ方向HD(
図10において上下)に位置調節可能である。例えば、軸受板33を、軸受板部33bの長さが異なる別の軸受板33’に交換したり(
図10(a))、当接板部33aの厚さが異なる別の軸受板33”に交換したり(
図10(b))、あるいは連結板32と軸受板33との間に所望厚さのスペーサ37を挟んだり(
図10(c))することによって、離間調整コロ31を高さ調節できる。
【0028】
離間調整コロ41は、次のようにして装置フレーム10に支持されている。
図4及び
図7に示すように、ボディ11における推進後方側(
図4において右側)の側部から外周側(
図4において下側)へ連結板42が突出され、更に軸受板43が突出されている。軸受板43は、当接板部43aと、軸受板部43bを有している。当接板部43aと連結板42がボルト46によって接合されている。軸受板部43bが、当接板部43aから外周側(
図7において下側)へ延びている。軸受板部43bに軸受け部44を介して離間調整コロ41が回転可能に支持されている。離間調整コロ41の回転軸41cは装置幅方向WD(
図7において左右)へ向けられている。離間調整コロ41は、管端部9eより延伸前方側(
図7において左側)に配置され、かつ係止治具21,22よりも外周側(
図7において下側)へ突出されている。
【0029】
離間調整コロ41は、装置幅方向WDの延伸前方側(
図7において左側)へ向かって縮径する円錐形状になっている。詳しくは、離間調整コロ41は、テーパ部41aと、ストレート部41bを有している。テーパ部41aが円錐形、厳密には円錐台形状になっている。テーパ部41aのテーパ角度α
41は、好ましくはα
41=20°~70°程度である。テーパ部41aの小径側の先端部41eは平坦面になっている。テーパ部41aの大径側端部にストレート部41bが連なっている。ストレート部41bは、テーパ部41aの大径側端部と同径、かつテーパ部41aより十分短い軸長の円筒形に形成されている。ストレート部41bから回転軸41cが突出されて軸受板43に回転可能に支持されている。
【0030】
図11に示すように、離間調整コロ41は、装置フレーム10に対して装置高さ方向HD(
図11において上下)に位置調節可能である。例えば、軸受板43を、軸受板部43bの長さが異なる別の軸受板43’に交換したり(
図11(a))、当接板部43aの厚さが異なる別の軸受板43”に交換したり(
図11(b))、あるいは連結板42と軸受板43との間に所望厚さのスペーサ47を挟んだり(
図11(c))することによって、離間調整コロ41を高さ調節できる。
好ましくは、複数の離間調整コロ31,41の高さを揃える。
【0031】
更生管9の製管時には、製管装置3の推進に伴って、離間調整コロ31,41が既設管1の内周面に沿って転動される。離間調整コロ31,41によって係止治具21,22と既設管1の内周面との間の離間距離を確保できる。これによって、係止治具21,22の損耗を抑制することができる。離間調整コロ31,41を推進前後方向LDの複数箇所に設けることで、係止治具21,22を既設管1の内周面から安定的に離間させることができ、係止治具21,22の損耗をより確実に防止できる。
更に、離間調整コロ31,41を装置高さ方向HD(
図4において上下)に位置調節することによって、係止治具21,22と既設管1の内周面との間の離間距離を調整できる。
【0032】
好ましくは、既設管1の内周面の曲率半径が比較的小さいときは、離間調整コロ21の外周側(
図4において下方)への突出量を小さくする。これによって、更生管9を既設管1の内周にできるだけ近づけて製管できる。突出量が比較的小さくても、係止治具21,22が既設管1の内周面に当たるのを回避できる。
好ましくは、既設管1の内周面の曲率半径が比較的大きいときは、離間調整コロ21の外周側(
図4において下方)への突出量を大きくする。これによって、係止治具21,22が既設管1の内周面に当たるのを確実に防止できる。
【0033】
図2に示すように、老朽化した既設管1には、屈曲部1cや段差1dが形成されていることがある。
図12に示すように、製管装置3が段差1dに達すると、離間調整コロ31,41のテーパ部31a,41aが段差1dに当たる(
図12の二点鎖線)。更に、離間調整コロ31,41が転動しながらテーパ部31a,41aの案内作用によって段差1dに乗り上げる(
図12の実線)。ひいては、製管装置1が段差1dを乗り越えて、段差1dより延伸前方(
図12において左側)へ移行される。これによって、
図2の二点鎖線にて示すように、更生管9が段差1dに合わせて変形するように製管される。
【0034】
図13に示すように、製管装置3が屈曲部1cに達すると、離間調整コロ31,41が既設管1の屈曲部1cより延伸前方の内周斜面1bに当たる(
図13の二点鎖線)。更に離間調整コロ31,41は、転動しながらテーパ部31a,41aの案内作用によって内周斜面1bに合わせて角度を変える(
図13の実線)。ひいては、製管装置3が屈曲部1cより延伸前方側(
図13において左側)の既設管1の管軸に合わせて角度を変えながら、屈曲部1cより延伸前方側へ移行される。これによって、
図2の三点鎖線にて示すように、更生管9が屈曲部1cに合わせて屈曲するように製管される。
この結果、既設管1に屈曲部1cや段差1dがあっても、製管装置1が屈曲部1cや段差1dで停止させられることなく、製管作業を円滑に進めることができる。
なお、
図13の屈曲部1cの屈曲角度は誇張されている。
【0035】
実際に、図面に示す製管装置3と実質的に同構造の製管装置を用い、離間調整コロ31,41のテーパ角をα31=α41=22.5°とし、高さ25mmの段差1dを有する管の内周に沿って内径1090mm~1350mm程度の更生管9を製管したところ、上り段差を支障なく乗り越えることができた。
また、同じ製管装置を用い、5°程度の屈曲部1cを有する管の内周に沿って内径1090mm~1350mm程度の更生管9を製管したところ、屈曲部1cを支障無く通過できた。
【0036】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の改変をなすことができる。
例えば、離間調整コロは、装置幅方向WDの延伸前方側へ向かって縮径されていればよく、円錐形状(円錐台を含む)に限られず、半球状などの部分球体状であってもよい。
実施形態においては、インナーローラ13aはもちろん、アウターローラ13bについても管端部9eの内周側に配置されているが、アウターローラ13bが管端部9eの外周側に配置されていてもよい(特許文献1参照)。該アウターローラ13bが、離間調整コロによって既設管1の内周面から離間されていてもよい。
内周規制体12(リンクローラ)を省略してもよい。管端部9eの周方向におけるボディ11の配置部分以外の部分を内周側へ解放させた状態で製管されるようになっていてもよい。
係止治具21,22は、製管済部分9aの延伸前方側の管端部9eにではなく、管端部9eより延伸後方側の帯状部材90に係止させてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、例えば下水道管、農業用水管等の既設管を更生管のライニングによって構成する既設管更生技術に適用できる。
【符号の説明】
【0038】
LD 推進前後方向
WD 装置幅方向
HD 装置高さ方向(推進前後方向及び装置幅方向と直交する方向)
α31,α41 テーパ角度
1 既設管
1c 屈曲部
1d 段差
3 製管装置
9 更生管
9a 製管済部分
9e 管端部
10 装置フレーム
13 駆動ローラ
21 係止治具
21b 外周側規制部材(係止治具における管端部の外周側に配置された部分)
22 係止治具
22b 管端規制部材(係止治具における管端部の外周側に配置された部分)
31 離間調整コロ
31a テーパ部
41 離間調整コロ
41a テーパ部
90 帯状部材
90b 未製管の帯部分