(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】旋動式破砕機並びに旋動式破砕機の制御装置及び方法
(51)【国際特許分類】
B02C 2/04 20060101AFI20220119BHJP
B02C 25/00 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
B02C2/04 Z
B02C25/00 B
(21)【出願番号】P 2018097289
(22)【出願日】2018-05-21
【審査請求日】2020-07-01
(73)【特許権者】
【識別番号】503245465
【氏名又は名称】株式会社アーステクニカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梶田 信之
(72)【発明者】
【氏名】木島 崇
(72)【発明者】
【氏名】小林 純
【審査官】河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-272375(JP,A)
【文献】特開平09-29117(JP,A)
【文献】特開昭61-263657(JP,A)
【文献】特開平11-253832(JP,A)
【文献】特開2004-141780(JP,A)
【文献】特開平06-182240(JP,A)
【文献】特開昭51-053663(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0001337(US,A1)
【文献】特開平11-226446(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B02C 2/04
B02C 25/00
B01F 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円錐筒状のコンケーブと、
前記コンケーブの内側に配置された円錐台状のマントルと、
前記マントルを偏心旋回運動させる電動モータと、
前記コンケーブと前記マントルとの間に形成された破砕室へ被破砕物を投入するためのホッパと、
前記ホッパへ前記被破砕物を供給する供給装置と、
破砕負荷を直接的又は間接的に表す負荷指標を測定する負荷測定器と、
前記コンケーブと前記マントルとのセットを変化させるために、前記コンケーブと前記マントルのうち一方を他方に対し変位させるセット調整装置と、
前記セット調整装置及び前記供給装置を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記供給装置及び前記セット調整装置の少なくとも一方を操作対象とし、前記操作対象が或る操作量に対応して動作している状態において、前記負荷測定器で測定された前記負荷指標が所定の定常範囲内にあることを監視する負荷監視部と、
前記負荷指標が前記定常範囲を外れたときに、前記操作対象について所定の制御アルゴリズムを利用して前記負荷指標の所定の目標値と測定値との偏差に基づいて新たな操作量を求める操作量演算部と、
前記操作対象を前記新たな操作量に対応して動作させる動作制御部と、
前記操作対象の前記新たな操作量に対応した動作により生じた前記負荷指標の応答評価指標を生成する応答評価指標生成部と、
前記応答評価指標に基づいて応答の良否を評価し、応答の良好でない場合に前記制御アルゴリズムの制御パラメータの少なくとも1つを調整するチューニング部と、を有
し、
前記応答評価指標は、所定のパラメータ調整周期にわたる前記操作対象の動作により生じた前記負荷指標の応答波形の前記目標値からの偏差積算値である、
旋動式破砕機。
【請求項2】
前記応答評価指標生成部は、前記操作対象の動作により生じた前記負荷指標の応答波形を作成し、所定のパラメータ調整周期にわたる前記応答波形の前記目標値からのプラス側偏差積算値とマイナス側偏差積算値とをそれぞれ求め、
前記チューニング部は、前記プラス側偏差積算値及び前記マイナス側偏差積算値に基づいて応答の良否を評価する、
請求項1に記載の旋動式破砕機。
【請求項3】
前記制御アルゴリズムは、比例制御アルゴリズム、比例積分制御アルゴリズム、比例積分微分制御アルゴリズム、及び、比例微分フィードバック(PDF:Proportional-Derivative-feedback)制御アルゴリズムを含む群から選択された一つである、
請求項1又は2に記載の旋動式破砕機。
【請求項4】
前記負荷指標は前記電動モータの消費電力の値である、
請求項1~3のいずれか一項に記載の旋動式破砕機。
【請求項5】
前記マントルに掛かる破砕圧を受ける油圧シリンダを更に備え、
前記負荷指標は前記油圧シリンダの作動油の油圧の値である、
請求項1~3のいずれか一項に記載の旋動式破砕機。
【請求項6】
前記マントルを支持するスラスト軸受を更に備え、
前記負荷指標は前記スラスト軸受の潤滑油の給油圧力の値である、
請求項1~3のいずれか一項に記載の旋動式破砕機。
【請求項7】
円錐筒状のコンケーブと、前記コンケーブの内側に配置された円錐台状のマントルと、前記マントルを偏心旋回運動させる電動モータと、前記コンケーブと前記マントルとの間に形成された破砕室へ被破砕物を投入するためのホッパと、前記ホッパへ前記被破砕物を供給する供給装置と、前記コンケーブと前記マントルとのセットを変化させるために、前記コンケーブと前記マントルのうち一方を他方に対し変位させるセット調整装置とを備えた旋動式破砕機の制御方法であって、
前記供給装置及び前記セット調整装置の少なくとも一方を操作対象とし、前記操作対象が或る操作量に対応して動作している状態において、破砕負荷を直接的又は間接的に表す負荷指標を測定し、当該負荷指標が所定の定常範囲内にあることを監視するステップと、
前記負荷指標が前記定常範囲を外れたときに、前記操作対象について所定の制御アルゴリズムを利用して前記負荷指標の所定の目標値と測定値との偏差に基づいて新たな操作量を求めるステップと、
前記操作対象を前記新たな操作量に対応して動作させるステップと、
前記操作対象の前記新たな操作量に対応した動作により生じた前記負荷指標の応答評価指標を生成するステップと、
前記応答評価指標に基づいて応答の良否を評価し、応答の良好でない場合に前記制御アルゴリズムの制御パラメータの少なくとも1つを調整するステップと、を含
み、
前記応答評価指標は、所定のパラメータ調整周期にわたる前記操作対象の動作により生じた前記負荷指標の応答波形の前記目標値からの偏差積算値である、
旋動式破砕機の制御方法。
【請求項8】
前記応答評価指標を生成するステップは、前記操作対象の動作により生じた前記負荷指標の応答波形を作成し、所定のパラメータ調整周期にわたる前記応答波形の前記目標値からのプラス側偏差積算値とマイナス側偏差積算値とをそれぞれ求めることを含み、
前記制御パラメータの少なくとも1つを調整するステップは、前記プラス側偏差積算値及び前記マイナス側偏差積算値に基づいて応答の良否を評価することを含む、
請求項7に記載の旋動式破砕機の制御方法。
【請求項9】
前記制御アルゴリズムは、比例制御アルゴリズム、比例積分制御アルゴリズム、比例積分微分制御アルゴリズム、及び、比例微分フィードバック制御アルゴリズムを含む群から選択された一つである、
請求項7又は8に記載の旋動式破砕機の制御方法。
【請求項10】
前記負荷指標は前記電動モータの消費電力の値である、
請求項7~9のいずれか一項に記載の旋動式破砕機の制御方法。
【請求項11】
前記負荷指標は前記マントルに掛かる破砕圧である、
請求項7~9のいずれか一項に記載の旋動式破砕機の制御方法。
【請求項12】
円錐筒状のコンケーブと、前記コンケーブの内側に配置された円錐台状のマントルと、前記マントルを偏心旋回運動させる電動モータと、前記コンケーブと前記マントルとの間に形成された破砕室へ被破砕物を投入するためのホッパと、前記ホッパへ前記被破砕物を供給する供給装置と、破砕負荷を直接的又は間接的に表す負荷指標を測定する負荷測定器と、前記コンケーブと前記マントルとのセットを変化させるために、前記コンケーブと前記マントルのうち一方を他方に対し変位させるセット調整装置とを備えた旋動式破砕機の制御装置であって、
前記供給装置及び前記セット調整装置の少なくとも一方を操作対象とし、前記操作対象が或る操作量に対応して動作している状態において、前記負荷測定器で測定された前記負荷指標が所定の定常範囲内にあることを監視する負荷監視部と、
前記負荷指標が前記定常範囲を外れたときに、前記操作対象について所定の制御アルゴリズムを利用して前記負荷指標の所定の目標値と測定値との偏差に基づいて新たな操作量を求める操作量演算部と、
前記操作対象が前記新たな操作量に対応して動作して当該動作により生じた前記負荷指標の応答評価指標を生成する応答評価指標生成部と、
前記応答評価指標に基づいて応答の良否を評価し、応答の良好でない場合に前記制御アルゴリズムの制御パラメータの少なくとも1つを調整するチューニング部と、を備え、
前記応答評価指標は、所定のパラメータ調整周期にわたる前記操作対象の動作により生じた前記負荷指標の応答波形の前記目標値からの偏差積算値である、
旋動式破砕機の制御装置。
【請求項13】
前記応答評価指標生成部は、前記操作対象の動作により生じた前記負荷指標の応答波形を作成し、所定のパラメータ調整周期にわたる前記応答波形の前記目標値からのプラス側偏差積算値とマイナス側偏差積算値とをそれぞれ求め、
前記チューニング部は、前記プラス側偏差積算値及び前記マイナス側偏差積算値に基づいて応答の良否を評価する、
請求項12に記載の旋動式破砕機の制御装置。
【請求項14】
円錐筒状のコンケーブと、前記コンケーブの内側に配置された円錐台状のマントルと、前記マントルを偏心旋回運動させる電動モータと、前記コンケーブと前記マントルとの間に形成された破砕室へ被破砕物を投入するためのホッパと、前記ホッパへ前記被破砕物を供給する供給装置と、前記コンケーブと前記マントルとのセットを変化させるために、前記コンケーブと前記マントルのうち一方を他方に対し変位させるセット調整装置とを備えた旋動式破砕機の制御方法であって、
前記供給装置及び前記セット調整装置の少なくとも一方を操作対象とし、前記操作対象が或る操作量に対応して動作している状態において、破砕負荷を直接的又は間接的に表す負荷指標を測定し、当該負荷指標が所定の定常範囲内にあることを監視するステップと、
前記負荷指標が前記定常範囲を外れたときに、前記操作対象について所定の制御アルゴリズムを利用して前記負荷指標の所定の目標値と測定値との偏差に基づいて新たな操作量を求めるステップと、
前記操作対象を前記新たな操作量に対応して動作して当該動作により生じた前記負荷指標の応答評価指標を生成するステップと、
前記応答評価指標に基づいて応答の良否を評価し、応答の良好でない場合に前記制御アルゴリズムの制御パラメータの少なくとも1つを調整するステップと、を含み、
前記応答評価指標は、所定のパラメータ調整周期にわたる前記操作対象の動作により生じた前記負荷指標の応答波形の前記目標値からの偏差積算値である、
旋動式破砕機の制御方法。
【請求項15】
前記応答評価指標を生成するステップは、前記操作対象の動作により生じた前記負荷指標の応答波形を作成し、所定のパラメータ調整周期にわたる前記応答波形の前記目標値からのプラス側偏差積算値とマイナス側偏差積算値とをそれぞれ求めることを含み、
前記制御パラメータの少なくとも1つを調整するステップは、前記プラス側偏差積算値及び前記マイナス側偏差積算値に基づいて応答の良否を評価することを含む、
請求項14に記載の旋動式破砕機の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、岩石や鉱石などの破砕に利用される旋動式破砕機及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、円錐筒状のコンケーブの内側に配置された円錐台状のマントルを偏心旋回運動させて、被破砕物をコンケーブとマントルとの間に噛み込んで圧砕する旋動式破砕機が知られている。コンケーブとマントルの二つの破砕面の間隙は周期的に変化し、その間隙の最も狭い位置におけるセット(開き)の寸法(クローズドセット)によって、粉砕物の粒度が定まる。旋動式破砕機は、セットを変更する方式によって油圧式と機械式とに種別される。
【0003】
特許文献1には、油圧式の旋動式破砕機が開示されている。この旋動式破砕機は、マントルを旋回駆動する駆動電動機と、固定されたコンケーブに対しマントルを昇降する油圧シリンダとを備える。この旋動式破砕機では、電動モータの消費動力が設定動力を超えると、油圧シリンダから所定時間排油されてマントルが降下する。また。電動モータの消費動力が設定動力より下がると、所定シリンダに所定時間注油されてマントルが上昇する。
【0004】
特許文献2には、油圧式の旋動式破砕機が開示されている。この旋動式破砕機は、破砕室の上方に設けられたホッパへの被破砕物の供給量、ホッパの被破砕物のレベル量、油圧シリンダの油圧圧力、電動モータの電流値、及び、二つの破砕面のセットの相互関係によって、運転が制御される。
【0005】
特許文献3には、油圧式の旋動式破砕機が開示されている。この旋動式破砕機では、レベルセンサで検出されるホッパ内の被破砕物のレベルが一定に保たれるように、ホッパへの被破砕物の供給量が調整される。また、この旋動式破砕機では、運転中に検出された電動モータの負荷電流が設定電流値の上限に達すると、検出された油圧シリンダの降下量が設定昇降値に達するまで油圧シリンダから排油される。
【0006】
特許文献4には、機械式の旋動式破砕機が開示されている。この旋動式破砕機は、マントルと、内側にコンケーブが固定されたコンケーブサポートと、ねじ機構及び電動モータを含み、コンケーブサポートを回転することでコンケーブをマントルに対して昇降させる駆動装置とを備える。この旋動式破砕機では、ねじ機構で昇降させられるコンケーブの移動量に基づいてセットが測定され、その測定値に基づいてセットが遠隔的に操作される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開昭53-137467号公報
【文献】特開昭55-5718号公報
【文献】特開平10-272375号公報
【文献】特開平6-154630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
旋動式破砕機を安定的に運転するためには、コンケーブとマントルの間に形成される破砕室に被破砕物が満充填された状態(チョークフィード)が維持されなければならない。ところが、被破砕物が破砕室を通過するために要する時間は、被破砕物の性状(例えば、被破砕物の粒度や付着水分量など)によって異なることから、被破砕物の定量供給でチョークフィードを維持することが難しい。このような課題に対し、例えば、特許文献3では、ホッパに設けられたレベルスイッチにより、ホッパの被破砕物のレベル量が一定に保持されるように、被破砕物の供給量が調整される。
【0009】
また、旋動式破砕機では、チョークフィードが維持されていても、被破砕物の性状や水分量などの変動によって負荷が変動することがある。更に、旋動式破砕機では、異物の噛み込みや被破砕物のパッキング現象などによって、オーバーロードとなることがある。このような課題に対し、例えば、特許文献2では、油圧シリンダの油圧圧力及び電動モータの電流値に基づいて負荷の大小を判定し、判定結果に基づいてセットの調整が行われる。ここで、セットの検出値が目標値に到達するまで、油圧シリンダへの所定時間の注油(又は、排油)を反復するオンオフ制御が行われる。
【0010】
上記のように旋動式破砕機を安定的に運転するための制御が提案されているが、それであっても安定的な運転を継続することは難しく、結局は熟練の作業者の勘に頼った運転の調整が行われる。本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、安定的な運転の継続を実現し得る旋動式破砕機及びその制御方法を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願の発明者らは、旋動式破砕機のセットと被破砕物の供給量との少なくとも一方を、オンオフ制御ではなく、比例制御(P制御)を含む制御アルゴリズムを用いて制御することを検討している。これにより、オンオフ制御特有のハンチング現象を回避することができる。しかし、被破砕物の性状や水分量などの変動によって適切な制御パラメータが変化することから、チューニングの最中に応答が乱れたり、チューニング後の安定した応答を継続できないなどの課題が生じる。
【0012】
そこで、本発明の一態様に係る旋動式破砕機は、
円錐筒状のコンケーブと、
前記コンケーブの内側に配置された円錐台状のマントルと、
前記マントルを偏心旋回運動させる電動モータと、
前記コンケーブと前記マントルとの間に形成された破砕室へ被破砕物を投入するためのホッパと、
前記ホッパへ前記被破砕物を供給する供給装置と、
破砕負荷を直接的又は間接的に表す負荷指標を測定する負荷測定器と、
前記コンケーブと前記マントルとのセットを変化させるために、前記コンケーブと前記マントルのうち一方を他方に対し変位させるセット調整装置と、
前記セット調整装置及び前記供給装置を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記供給装置及び前記セット調整装置の少なくとも一方を操作対象とし、前記操作対象が或る操作量に対応して動作している状態において、前記負荷測定器で測定された前記負荷指標が所定の定常範囲内にあることを監視する負荷監視部と、
前記負荷指標が前記定常範囲を外れたときに、前記操作対象について所定の制御アルゴリズムを利用して前記負荷指標の所定の目標値と測定値との偏差に基づいて新たな操作量を求める操作量演算部と、
前記操作対象を前記新たな操作量に対応して動作させる動作制御部と、
前記操作対象の前記新たな操作量に対応した動作により生じた前記負荷指標の応答評価指標を生成する応答評価指標生成部と、
前記応答評価指標に基づいて応答の良否を評価し、応答の良好でない場合に前記制御アルゴリズムの制御パラメータの少なくとも1つを調整するチューニング部と、を有し、
前記応答評価指標は、所定のパラメータ調整周期にわたる前記操作対象の動作により生じた前記負荷指標の応答波形の前記目標値からの偏差積算値であることを特徴としている。
【0013】
また、本発明の一態様に係る旋動式破砕機の制御方法は、
円錐筒状のコンケーブと、前記コンケーブの内側に配置された円錐台状のマントルと、前記マントルを偏心旋回運動させる電動モータと、前記コンケーブと前記マントルとの間に形成された破砕室へ被破砕物を投入するためのホッパと、前記ホッパへ前記被破砕物を供給する供給装置と、前記コンケーブと前記マントルとのセットを変化させるために、前記コンケーブと前記マントルのうち一方を他方に対し変位させるセット調整装置とを備えた旋動式破砕機の制御方法であって、
前記供給装置及び前記セット調整装置の少なくとも一方を操作対象とし、前記操作対象が或る操作量に対応して動作している状態において、破砕負荷を直接的又は間接的に表す負荷指標を測定し、当該負荷指標が所定の定常範囲内にあることを監視するステップと、
前記負荷指標が前記定常範囲を外れたときに、前記操作対象について所定の制御アルゴリズムを利用して前記負荷指標の所定の目標値と測定値との偏差に基づいて新たな操作量を求めるステップと、
前記操作対象を前記新たな操作量に対応して動作させるステップと、
前記操作対象の前記新たな操作量に対応した動作により生じた前記負荷指標の応答評価指
標を生成するステップと、
前記応答評価指標に基づいて応答の良否を評価し、応答の良好でない場合に前記制御アルゴリズムの制御パラメータの少なくとも1つを調整するステップと、を含み、
前記応答評価指標は、所定のパラメータ調整周期にわたる前記操作対象の動作により生じた前記負荷指標の応答波形の前記目標値からの偏差積算値であることを特徴としている。
【0014】
上記旋動式破砕機及びその制御方法によれば、制御アルゴリズムに基づく制御の応答が良好でなくなった場合に、つまり、被破砕物の性状の変化などの外乱によってそれまで使用されていた制御パラメータが適切な値ではなくなった場合に、制御パラメータが適切な値に自動的に調整される。これにより、外乱が生じても、旋動式破砕機の安定的な運転の継続を実現することができる。
【0015】
上記旋動式破砕機において、前記応答評価指標生成部は、前記操作対象の動作により生じた前記負荷指標の応答波形を作成し、所定のパラメータ調整周期にわたる前記応答波形の前記目標値からのプラス側偏差積算値とマイナス側偏差積算値とをそれぞれ求め、前記チューニング部は、前記プラス側偏差積算値及び前記マイナス側偏差積算値に基づいて応答の良否を評価してよい。
【0016】
同様に、上記旋動式破砕機の制御方法において、前記応答評価指標を生成するステップは、前記操作対象の動作により生じた前記負荷指標の応答波形を作成し、所定のパラメータ調整周期にわたる前記応答波形の前記目標値からのプラス側偏差積算値とマイナス側偏差積算値とをそれぞれ求めることを含み、前記制御パラメータの少なくとも1つを調整するステップは、前記プラス側偏差積算値及び前記マイナス側偏差積算値に基づいて応答の良否を評価することを含んでいてよい。
【0017】
このように、制御アルゴリズムの制御パラメータの値が適切な値であるか否かを、簡単且つ正確に評価することができる。
【0018】
上記旋動式破砕機及びその制御方法において、前記制御アルゴリズムは、比例(P:Proportional)制御アルゴリズム、比例積分(PI:Proportional-Integrating)制御アルゴリズム、比例積分微分(PID:Proportional-Integral-Derivative)制御アルゴリズム、及び、比例微分フィードバック(PDF:Proportional-Derivative-feedback)制御アルゴリズムを含む群から選択された一つであってよい。
【0019】
上記旋動式破砕機及びその制御方法において、前記負荷指標は前記電動モータの消費電力の値であってよい。
【0020】
或いは、上記旋動式破砕機及びその制御方法において、前記負荷指標は前記マントルに掛かる破砕圧であってよい。この場合、旋動式破砕機は、前記マントルに掛かる破砕圧を受ける油圧シリンダを更に備え、前記負荷指標は前記油圧シリンダの作動油の油圧の値としてよい。或いは、旋動式破砕機は、前記マントルを支持するスラスト軸受を更に備え、前記負荷指標は前記スラスト軸受の潤滑油の給油圧力の値としてよい。
【0021】
上記のように、負荷指標は複数の候補のなかから、旋動式破砕機の具体的構成や被破砕物等に応じて適宜選択することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、安定的な運転の継続を実現し得る旋動式破砕機及びその制御方法を提案することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る旋動式破砕機の概略構成を示す図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す旋動式破砕機の制御系統の構成を示す図である。
【
図3】
図3は、第1例に係る破砕負荷制御の処理の流れを示すフローチャート(前段部)である。
【
図4】
図4は、第1例に係る破砕負荷制御の処理の流れを示すフローチャート(中段部)である。
【
図5】
図5は、第1例に係る破砕負荷制御の処理の流れを示すフローチャート(後段部)である。
【
図6】
図6は、負荷指標の応答波形の一例を示すグラフである。
【
図7】
図7は、第2例に係る破砕負荷制御の処理の流れを示すフローチャート(前段部)である。
【
図8】
図8は、第2例に係る破砕負荷制御の処理の流れを示すフローチャート(中段部)である。
【
図9】
図9は、第2例に係る破砕負荷制御の処理の流れを示すフローチャート(後段部)である。
【
図10】
図10は、変形例に係る旋動式破砕機の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る旋動式破砕機1の概略構成を示す図である。
【0025】
〔旋動式破砕機1の概略構成〕
図1に示すように、旋動式破砕機1は、被破砕物を貯留するホッパ2と、ホッパ2へ被破砕物を供給する供給装置4と、ホッパ2から落下した被破砕物を噛み込んで破砕するマントル13及びコンケーブ14と、マントル13の旋回駆動手段である電動モータ8と、電動モータ8からマントル13へ回転動力を伝達する動力伝達機構80と、マントル13をコンケーブ14に対し昇降させるセット調整装置10と、旋動式破砕機1の動作を司る制御装置9とを備える。
【0026】
旋動式破砕機1は、トップフレーム31及びボトムフレーム32からなるフレーム3を更に備える。トップフレーム31の内周に、円錐筒状のコンケーブ14が設けられている。コンケーブ14の内側には、円錐台状のマントル13が配置されている。間隙を隔てて対峙するコンケーブ14の破砕面とマントル13の破砕面との間に、鉛直断面が楔状をなす破砕室16が形成されている。
【0027】
ホッパ2は、トップフレーム31の上部に配置されている。供給装置4は、例えば、コンベヤ(図示略)等を含み、ホッパ2への被破砕物の供給量が調整可能である。供給装置4の駆動手段である電動モータ41は、可変速モータであって、モータドライバ43によって駆動・制御される。
【0028】
マントル13は、主軸5の上部に固定されたマントルコア12に取り付けられている。主軸5は、その軸心が鉛直方向から傾いた状態で、フレーム3内に配置されている。主軸5の上端は、トップフレーム31の上端部に設けられた上部軸受34に、回転自在に支持されている。主軸5の下部は、インナーブッシュ51に嵌挿されている。インナーブッシュ51は偏心スリーブ52に固定されている。偏心スリーブ52は、ボトムフレーム32に設けられたアウターブッシュ53に嵌挿されている。偏心スリーブ52の下部は、油圧シリンダ6のシリンダチューブ63に設けられた滑り軸受66に支持されている。主軸5の下端は、油圧シリンダ6のラム61に設けられた滑り軸受62に支持されている。
【0029】
電動モータ8は、フレーム3の外に配置されている。電動モータ8には、その回転数を検出する回転数センサ25、その出力トルクを検出するトルクセンサ26が設けられている。電動モータ8は、モータドライバ88によって駆動・制御される。
【0030】
動力伝達機構80は、電動モータ8からマントル13が固定された主軸5へ動力を伝達する。動力伝達機構80は、横軸83、電動モータ8の出力軸81から横軸83へ回転動力を伝達するベルト(又はチェーン)式伝動機構82、偏心スリーブ52、及び、横軸83から偏心スリーブ52へ回転動力を伝達する傘歯車伝動機構84を含む。電動モータ8の出力を受けて偏心スリーブ52が回転すると、偏心スリーブ52に挿嵌された主軸5が偏心旋回する。これにより、マントル13が位置固定されたコンケーブ14に対して偏心旋回運動、いわゆる歳差運動を行う。マントル13の偏心旋回運動によって、マントル13の破砕面とコンケーブ14の破砕面とのセット(開き)は主軸5の旋回位置に応じて変化する。
【0031】
本実施形態に係る旋動式破砕機1は、セット調整装置10としての油圧シリンダ6を備える。油圧シリンダ6の動作により、マントル13がコンケーブ14に対して昇降移動して、コンケーブ14とマントル13の二つの破砕面の間隙の最も狭い位置におけるセット(クローズドセット)を変化させる。この油圧シリンダ6は、マントル13に掛かる破砕圧を受ける受圧手段としての機能も併せ備える。
【0032】
油圧シリンダ6は、シリンダチューブ63、シリンダチューブ63内を摺動するラム61、セットセンサ23、油タンク67、及び、油圧回路7を含む。セットセンサ23は、例えば、ラム61の位置(変位)を検出する接触式又は非接触式の位置センサである。セットセンサ23で検出されたラム61の位置からコンケーブ14に対するマントル13の高さ方向の位置が求まり、コンケーブ14とマントル13との相対的位置関係からセットが求まる。
【0033】
シリンダチューブ63内には、ラム61の変位によって容量の変化する油圧室65が形成されており、この油圧室65に油圧回路7が接続されている。油タンク67の作動油が油圧回路7を通じて油圧室65へ給油されることにより、ラム61が上昇する。また、油圧室65の作動油が油圧回路7を通じて油タンク67へ排油されることにより、ラム61が降下する。
【0034】
油圧回路7は、油圧室65の下部と連通された連通管71、連通管71に設けられたアキュムレータ72(又は、バランスシリンダ)、連通管71と接続された給油管73、及び、給油管73と接続された排油管74を含む。但し、油圧回路7の構成は本実施形態に限定されない。給油管73には、油タンク67から油圧室65への作動油の流れに沿って上流側から順に、ストレーナ75、ギヤポンプ76、チェックバルブ77、及び、ノーマルクローズのシャットオフバルブ78が設けられている。ギヤポンプ76はポンプモータ68によって駆動される。ポンプモータ68は、電動モータであって、モータドライバ69によって駆動・制御される。油圧室65、連通管71、又は給油管73には、油圧室65の作動油の圧力を検出する圧力センサ24が更に設けられている。排油管74は、給油管73においてチェックバルブ77とシャットオフバルブ78との間に接続されている。排油管74には、ノーマルクローズのシャットオフバルブ79が設けられている。
【0035】
〔旋動式破砕機1の制御系統の構成〕
図2は、旋動式破砕機1の制御系統の構成を示す図である。
図2に示すように、制御装置9には、セットセンサ23、圧力センサ24、回転数センサ25、及びトルクセンサ26を含む各種計器が、信号を送受信可能(又は送信可能)に有線又は無線で接続されている。また、制御装置9には、供給装置4の電動モータ41のモータドライバ43、電動モータ8のモータドライバ88、ポンプモータ68のモータドライバ69、シャットオフバルブ78、及びシャットオフバルブ79を含む各種機器が、信号を送受信可能に有線又は無線で接続されている。
【0036】
制御装置9は、いわゆるコンピュータであって、CPU等の演算処理部、ROM、RAM等の記憶部を有している(いずれも図示せず)。記憶部には、演算処理部が実行するプログラム、各種固定データ等が記憶されている。演算処理部は、外部装置とのデータ送受信を行う。また、演算処理部は、各種センサからの検出信号の入力や各制御対象への制御信号の出力を行う。
【0037】
制御装置9は、負荷監視部91、操作量演算部92、動作制御部93、応答評価指標生成部94、及び、チューニング部95の各機能部を含む。動作制御部93は、供給装置4の動作を制御する制御部、セット調整装置10(油圧シリンダ6)の動作を制御する制御部、電動モータ8の動作を制御する制御部を含む。制御装置9では、演算処理部が記憶部に記憶されたプログラム等のソフトウェアを読み出して実行することにより、上記の機能部としての処理が行われる。なお、制御装置9は単一のコンピュータによる集中制御により各処理を実行してもよいし、複数のコンピュータの協働による分散制御により各処理を実行してもよい。また、制御装置9は、マイクロコントローラ、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)等から構成されていてもよい。
【0038】
〔旋動式破砕機1の運転方法〕
ここで、上記構成の旋動式破砕機1の運転方法について説明する。旋動式破砕機1の運転を開始するにあたり、制御装置9は、セット(クローズドセット)が初期設定値となるようにセット調整装置10を動作させる。セットの初期設定値は、被破砕物や破砕物の粒径などに応じて予め設定される。制御装置9は、セットセンサ23の検出値に基づいて、セットが初期設定値となるようにセット調整装置10を動作させる。制御装置9は、セットが初期設定値より大きい場合には、シャットオフバルブ78を開放し、ポンプモータ68を稼働させて、油圧室65へ給油する。また、制御装置9は、セットが初期設定値より小さい場合には、シャットオフバルブ78及びシャットオフバルブ79を開放して、油圧室65から排油する。
【0039】
続いて、制御装置9は、電動モータ8を起動し、供給装置4を起動させる。供給装置4の動作によって被破砕物はホッパ2を通って破砕室16へ投入され、コンケーブ14と偏心旋回運動するマントル13との間で破砕されて、ボトムフレーム32の下方から破砕品として回収される。
【0040】
上記のような旋動式破砕機1の運転中に、被破砕物の性状や水分量、ホッパ2内の被破砕物のレベルの変化などの外乱に起因して破砕負荷が変動する。ここで「破砕負荷」とは、被破砕物の破砕に伴って電動モータ8の出力軸81に掛かる負荷を意味する。なお、電動モータ8は、出力軸81に所定以上の過負荷が発生すると、出力軸81の回転がロックされ、過負荷保護回路の作動によって非常停止する。そこで、旋動式破砕機1では、破砕負荷を直接的又は間接的に表す負荷指標Iを測定する負荷測定器を備え、制御装置9は破砕運転中に測定された負荷指標Iを監視し、負荷指標Iが所定の定常範囲内に維持されるように供給装置4による被破砕物の供給量及びセット調整装置10によるセットの少なくとも一方を調整する破砕負荷制御を行う。
【0041】
破砕負荷は、出力軸81の回転数と出力トルクとの積で表される。よって、破砕負荷を、回転数センサ25で検出された回転数とトルクセンサ26で検出された出力トルクの積として測定することができる。なお、出力軸81の回転数は、横軸83の回転数及び偏心スリーブ52の回転数と対応しているので、回転数センサ25で検出された回転数に代えて、横軸83又は偏心スリーブ52に設けられた回転数センサ(図示略)で検出された回転数が用いられてもよい。
【0042】
破砕負荷は、電動モータ8の駆動電流と相関関係がある。よって、破砕負荷の変化を、電動モータ8の駆動電流の変化に基づいて推定することができる。電動モータ8の駆動電流は、モータドライバ88に含まれる電流センサ88aの検出値として測定することができる。
【0043】
また、破砕負荷は、電動モータ8の消費電力と相関関係がある。よって、破砕負荷の変化を、電動モータ8の消費電力の変化に基づいて推定することができる。電動モータ8の消費電力は、モータドライバ88に含まれる電流センサ88aの検出値と電圧センサ88bの検出値との積として測定することができる。
【0044】
また、破砕負荷は、破砕圧と相関関係がある。よって、破砕負荷の変化を、破砕圧の変化に基づいて推定することができる。破砕圧は、圧力センサ24で検出された油圧室65の圧力として測定することができる。
【0045】
以上から、負荷指標Iとして、回転数と出力トルクとの積の値、電動モータ8の駆動電流の値、電動モータ8の消費電力の値、及び、破砕圧の値のうち少なくとも1つを採用することができる。そして、採用された負荷指標Iに応じて、負荷指標Iを測定又は検出する計器が負荷測定器として選択される。
【0046】
〔制御装置9による破砕負荷制御〕
図3~
図5は、制御装置9による破砕負荷制御の処理の流れを示すフローチャートである。以下、
図3~
図5を用いて、制御装置9による破砕負荷制御の処理の流れを例を挙げて説明する。なお、破砕負荷制御は、旋動式破砕機1が起動したのち、駆動電流値及び破砕圧が各々所定の定常運転値で安定した状態となってから、即ち、定常状態に入ってから開始される。
【0047】
<破砕負荷制御の第1例>
先ず、破砕負荷制御の第1例から説明する。本例では、破砕負荷制御の制御アルゴリズムとして、比例積分微分(PID:Proportional-Integral-Derivative)制御アルゴリズムを採用する。但し、破砕負荷制御の制御アルゴリズムは、本例に限定されず、比例(P:Proportional)制御アルゴリズム、比例積分(PI:Proportional-Integrating)制御アルゴリズム、比例積分微分制御アルゴリズム、及び、比例微分フィードバック(PDF:Proportional-Derivative-feedback)制御アルゴリズムを含む制御アルゴリズム群から選択された一つであればよい。
【0048】
制御装置9には、負荷指標Iと操作対象とが予め設定されており、負荷指標目標値ITや制御アルゴリズムの初期制御パラメータなど含む、制御に利用する各種数値が予め設定されている。なお、負荷指標Iは、前述の通り、破砕負荷を直接的又は間接的に表す測定値であって、回転数と出力トルクとの積の値、電動モータ8の駆動電流の値、電動モータ8の消費電力の値、及び、破砕圧の値のうちいずれか1つであってよい。また、操作対象は、供給装置4及びセット調整装置10のうち少なくとも一方であるが、本例では供給装置4とする。
【0049】
制御装置9の動作制御部93によって、操作対象は或る操作量MVで操作され、操作量MVに対応して動作している(又は、操作量MVに対応した状態にある)。制御装置9は、破砕負荷制御を開始すると、負荷測定器で測定された負荷指標Iを取得し(ステップS1)、負荷指標Iが所定の定常範囲内にあることを監視する(ステップS2)。より詳細には、制御装置9の負荷監視部91は、負荷測定器から負荷指標Iを取得し、負荷指標Iが所定の定常範囲下閾値ILOから所定の定常範囲上閾値IHIまでの範囲にあるかどうか、及び、無負荷状態閾値ILLを下回るかどうかを判断する。制御装置9は、負荷指標Iが定常範囲内であれば、又は、負荷指標Iが無負荷状態閾値ILLを下回れば(ステップS2でYES)、ステップS1へ戻って監視を継続する。
【0050】
一方、制御装置9は、負荷指標Iが定常範囲から外れていれば(ステップS2でNO)、タイマでPID制御時間T1の計測を開始する(ステップS3)。制御装置9は、PID制御時間T1(即ち、時間計測を開始してからの経過時間)が所定のPID制御周期T1s未満であれば(ステップS4でNO)、ステップS1へ戻って監視を継続する。一方、制御装置9は、PID制御時間T1がPID制御周期T1s以上であれば(ステップS4でYES)、PID制御時間T1を0にリセットして(ステップS5)、次のステップS6へ進む。
【0051】
ステップS6において、制御装置9は、負荷指標Iと負荷指標目標値ITとから制御アルゴリズムを利用して新たな操作量MVnを求める。より詳細には、制御装置9の操作量演算部92が、制御アルゴリズムを利用して負荷指標I(制御量)と負荷指標目標値IT(目標値)との偏差en、その積分及び微分の3つの要素によって操作量差分ΔMVnを求め、操作量差分ΔMVnを現在の操作量MVn-1に加えた新たな操作量MVnを求める。
【0052】
更に、制御装置9は、新たな操作量MVnと所定の操作量最大値MVHIとを比較し、新たな操作量MVnが操作量最大値MVHIよりも大きければ(ステップS7でYES)、操作量最大値MVHIを新たな操作量MVnとする(ステップS8)。また、制御装置9は、新たな操作量MVnが所定の操作量最小値MVLO未満であれば(ステップS9でYES)、操作量最小値MVLOを新たな操作量MVnとする(ステップS10)。なお、新たな操作量MVnが操作量最小値MVLO以上且つ操作量最大値MVHI以下の適切な値であれば(ステップS7でNO且つステップS9でNO)、新たな操作量MVnを操作量最小値MVLOや操作量最大値MVHIで代替することはしない。そして、制御装置9は、操作量MVを新たな操作量MVnで更新する(ステップS11)。
【0053】
制御装置9は、新たな操作量MVnに対応して操作対象を動作させる(ステップS12)。より詳細には、制御装置9の動作制御部93は、新たな操作量MVnに基づいて操作対象に動作指令を出力し、操作対象を動作させる。操作対象がセット調整装置10である場合には、油圧シリンダ6の新たな操作量MVnに対応して、セットの値が変化する。また、操作対象が供給装置4である場合には、供給装置4の新たな操作量MVnに対応して、ホッパ2への被破砕物の供給量が変化する。
【0054】
上記のように新たな操作量MVnに対応して操作対象が動作すると、負荷指標Iに新たな操作量MVnの応答が表れる。制御装置9の応答評価指標生成部94は、新たな操作量MVnにより生じた負荷指標Inを負荷測定器から取得して、負荷指標Iの応答波形を作成し(ステップS13)、ステップS1へ戻って監視を継続する。
【0055】
制御装置9は、応答波形を利用して応答評価指標を生成する。
図6は、応答波形の一例を表すグラフであって、このグラフの縦軸は負荷指標Iを表し、横軸は経過時間を表す。なお、
図6の応答波形ではオーバーシュートやハンチングが生じている。
【0056】
制御装置9は、ステップS2と並行して、取得した負荷指標Iが無負荷状態閾値I
LLより大きいかどうかを判断する(ステップS14)。制御装置9は、負荷指標Iが無負荷状態閾値I
LL以下であれば(ステップS14でNO)、処理をステップS33に進め、プラス側偏差積算値Σe
n+及びマイナス側偏差積算値Σe
n-を0にリセット(ステップS33,S34)したうえで、処理をステップS1に戻す。一方、制御装置9は、負荷指標Iが無負荷状態閾値I
LLを超えていれば(ステップS14でYES)、制御装置9の応答評価指標生成部94は、負荷指標Iの応答波形について、偏差積算時間T
2の負荷指標目標値I
Tからのプラス側偏差積算値Σe
n+を計算し、それを更新する(ステップS15)。
図6の応答波形において、プラス側偏差積算値Σe
n+を右上がりハッチング領域の面積で示す。同様に、制御装置9の応答評価指標生成部94は、負荷指標Iの応答波形について、偏差積算時間T
2の負荷指標目標値I
Tからのマイナス側偏差積算値Σe
n-を計算し、それを更新する(ステップS16)。
図6の応答波形において、マイナス側偏差積算値Σe
n-を右下がりハッチング領域の面積で示す。なお、パラメータ調整周期T
2sの途中で負荷指標Iが無負荷状態閾値I
LLを下回った場合は、プラス側偏差積算値Σe
n+及びマイナス側偏差積算値Σe
n-を0がリセット(ステップS33,S34)されたうえで処理がステップS1へ戻され、応答評価指標の生成が中断される。そして、負荷指標Iが再度無負荷状態閾値I
LLを上回った場合に、処理はステップS15に進み、応答評価指標の生成が再開される。
【0057】
制御装置9は、偏差積算時間T2の計測を開始する(ステップS17)。制御装置9は、偏差積算時間T2(即ち、時間計測を開始してからの経過時間)が所定のパラメータ調整周期T2s未満であれば(ステップS18でNO)、ステップS1に戻って処理を繰り返す。一方、制御装置9は、偏差積算時間T2がパラメータ調整周期T2s以上であれば(ステップS18でYES)、偏差積算時間T2を0としたうえで(ステップS19)、次のステップS20,S25,S27へ進んで制御パラメータのチューニングを開始する。
【0058】
制御装置9のチューニング部95は、パラメータ調整周期T2sのプラス側偏差積算値Σen+と所定の第1プラス側閾値E1+とを比較し(ステップS20)、パラメータ調整周期T2sのマイナス側偏差積算値Σen-と所定の第1マイナス側閾値E1-とを比較する(ステップS21)。チューニング部95は、プラス側偏差積算値Σen+が第1プラス側閾値E1+より大きく(ステップS20でYES)、且つ、マイナス側偏差積算値Σen-が第1マイナス側閾値E1-より小さいときには(ステップS21でYES)、ハンチングを検知して、比例ゲインKpを所定の第1比例ゲイン調整量だけ減少させた新たな比例ゲインKpnを生成する(ステップS22)。ここで、チューニング部95は、新たな比例ゲインKpnが所定の比例ゲイン最小値KpLOよりも小さい場合には(ステップS23でYES)、比例ゲイン最小値KpLOを新たな比例ゲインKpnとする(ステップS24)。そして、チューニング部95は、新たな比例ゲインKpnで比例ゲインKpを更新して(ステップS32)、プラス側偏差積算値Σen+及びマイナス側偏差積算値Σen-をゼロとして(ステップS33,S34)、処理をステップS1に戻す。
【0059】
チューニング部95は、マイナス側偏差積算値Σen-と第2マイナス側閾値E2-とを比較する(ステップS25)。チューニング部95は、マイナス側偏差積算値Σen-が第2マイナス側閾値E2-より小さく(ステップS25でYES)、且つ、プラス側偏差積算値Σen+がほぼ0であれば(ステップS26でYES)、定常偏差過大を検知して、比例ゲインKpを所定の第2比例ゲイン調整量だけ増加させた新たな比例ゲインKpnを生成する(ステップS29)。ここで、チューニング部95は、新たな比例ゲインKpnが所定の比例ゲイン最大値KpHIよりも大きい場合には(ステップS30でYES)、比例ゲイン最大値KpHIを新たな比例ゲインKpnとする(ステップS31)。そして、チューニング部95は、新たな比例ゲインKpnで比例ゲインKpを更新して(ステップS32)、処理をステップS33へ進める。
【0060】
チューニング部95は、プラス側偏差積算値Σen+と第2プラス側閾値E2+とを比較する(ステップS27)。チューニング部95は、プラス側偏差積算値Σen+が第2プラス側閾値E2+より小さく(ステップS27でYES)、且つ、マイナス側偏差積算値Σen-がほぼ0であれば(ステップS28でYES)、定常偏差過大を検知して、比例ゲインKpを所定の第2比例ゲイン調整量だけ増加させた新たな比例ゲインKpnを生成する(ステップS29)。ここで、チューニング部95は、新たな比例ゲインKpnが所定の比例ゲイン最大値KpHIよりも大きい場合には(ステップS30でYES)、比例ゲイン最大値KpHIを新たな比例ゲインKpnとする(ステップS31)。そして、チューニング部95は、新たな比例ゲインKpnで比例ゲインKpを更新して(ステップS32)、処理をステップS33へ進める。
【0061】
制御装置9のチューニング部95は、プラス側偏差積算値Σen+が第1プラス側閾値E1+より小さい場合(ステップS20でNO)、又は、マイナス側偏差積算値Σen-が第1マイナス側閾値E1-より大きい場合(ステップS21でNO)は、ハンチングでないと判定する。チューニング部95は、マイナス側偏差積算値Σen-が第2マイナス側閾値E2-より大きい場合(ステップS25でNO)、又は、プラス側偏差積算値Σen+がほぼ0でない場合(ステップS26でNO)は、マイナス側定常偏差過大でないと判定する。チューニング部95は、プラス側偏差積算値Σen+が第2プラス側閾値E2+より小さい場合(ステップS27でNO)、又は、マイナス側偏差積算値Σen-がほぼ0でない場合(ステップS28でNO)は、プラス側定常偏差過大でないと判定する。チューニング部95は、上記ハンチングではない(ステップS20でNO又はステップS21でNO)、マイナス側定常偏差過大ではない(ステップS25でNO又はステップS26でNO)、且つ、プラス側定常偏差過大でない(ステップS27でNO又はステップS28でNO)が成立する場合は、比例ゲインKpの更新を行わずに処理をステップS33へ進める。
【0062】
以上の破砕負荷制御では、チューニング部95で比例ゲインKpが調整されるが、比例ゲインKpに加えて、微分ゲインKd及び積分ゲインKiの少なくとも一方が調整されてよい。
【0063】
<破砕負荷制御の第2例>
続いて、破砕負荷制御の第2例について説明する。前述の第1例では、供給装置4及びセット調整装置10のうち少なくとも一方を操作対象としたが、第2例では、供給装置4及びセット調整装置10を操作対象とする。供給装置4及びセット調整装置10のうち優先的に操作量を変化させる一方を第1操作対象とし、他方を第2操作対象とする。
【0064】
第2例に係る破砕負荷制御の処理の流れは、第1例に係る破砕負荷制御の処理の流れからステップS6~S11が異なり、余のステップは実質的に同一である。以下、第2例に係る破砕負荷制御の処理の流れを
図7~
図9を参照しながら説明するが、前述の第1例に係る破砕負荷制御の処理と重複する内容については第1例を参照して説明を簡略化する。
【0065】
制御装置9の動作制御部93によって、第1操作対象は或る操作量MV1で操作されて操作量MV1に対応して動作しており、第2操作対象は或る操作量MV2で操作されて操作量MV2に対応して動作している。制御装置9は、破砕負荷制御を開始すると、負荷測定器で測定された負荷指標Iを取得し(ステップS41)、負荷指標Iが所定の定常範囲内(又は、無負荷状態)にあることを監視する(ステップS42)。制御装置9の負荷監視部91は、負荷指標Iが定常範囲内(又は、無負荷状態)であれば(ステップS42でYES)、ステップS41へ戻って監視を継続する。
【0066】
一方、制御装置9は、負荷指標Iが定常範囲から外れていれば(ステップS42でNO)、タイマでPID制御時間T1の計測を開始する(ステップS43)。制御装置9は、PID制御時間T1(即ち、時間計測を開始してからの経過時間)が所定のPID制御周期T1s未満であれば(ステップS44でNO)、ステップS41へ戻って監視を継続する。一方、制御装置9は、PID制御時間T1がPID制御周期T1s以上であれば(ステップS44でYES)、PID制御時間T1を0にリセットして(ステップS45)、次のステップS46へ進む。
【0067】
ステップS46において、制御装置9の操作量演算部92は、第1操作対象について負荷指標Iと負荷指標目標値ITとから制御アルゴリズムに則って新たな操作量MV1nを算出する。更に、制御装置9は、新たな操作量MV1nと所定の操作量最大値MV1HIとを比較し、新たな操作量MV1nが操作量最大値MV1HIより大きければ(ステップS47でYES)、第2操作対象について負荷指標Iと負荷指標目標値ITとから制御アルゴリズムに則って新たな操作量MV2nを算出する(ステップS61)。
【0068】
制御装置9は、新たな操作量MV2nと所定の操作量最小値MV2LOとを比較し、新たな操作量MV2nが操作量最小値MV2LO未満である場合は(ステップS62でYES)、操作量最小値MV2LOを新たな操作量とする(ステップS63)。そして、制御装置9は、第2操作対象について新たな操作量MV2nで操作量MV2を更新する(ステップS67)。
【0069】
ステップS47において、制御装置9は、新たな操作量MV1nが操作量最大値MV1HI以下であれば(ステップS47でNO)、新たな操作量MV1nと操作量最小値MV1LOとを比較し、新たな操作量MV1nが操作量最小値MV1LO未満であれば(ステップS48でYES)、第2操作対象について負荷指標Iと負荷指標目標値ITとから制御アルゴリズムに則って新たな操作量MV2nを算出する(ステップS64)。
【0070】
制御装置9は、新たな操作量MV2nと所定の操作量最大値MV2HIとを比較し、新たな操作量MV2nが操作量最大値MV2HIより大きい場合は(ステップS65でYES)、操作量最大値MV2HIを新たな操作量MV2nとする(ステップS66)。そして、制御装置9は、第2操作対象について新たな操作量MV2nで操作量MV2を更新する(ステップS67)。
【0071】
ステップS38において、制御装置9は、新たな操作量MV1nが操作量最小値MV1LO以上であれば(ステップS48でNO)、第1操作対象について新たな操作量MV1nで操作量MV1を更新する(ステップS49)。
【0072】
制御装置9は、新たな操作量MV1n,MV2nで第1操作対象及び第2操作対象を動作させる(ステップS50)。
【0073】
上記のように新たな操作量MV1n,MV2nに対応して第1操作対象及び第2操作対象が動作すると、負荷指標Iに新たな操作量MV1n,MV2nの応答が表れる。制御装置9の応答評価指標生成部94は、新たな操作量MV1n,MV2nにより生じた負荷指標Iを負荷測定器から取得して、負荷指標Iの応答波形を作成し(ステップS51)、ステップS41へ戻って監視を継続する。
【0074】
制御装置9は、応答波形を利用して応答評価指標を生成する。制御装置9は、ステップS42と並行して、取得した負荷指標Iが無負荷状態閾値ILLより大きいかどうかを判断する(ステップS52)。制御装置9は、負荷指標Iが無負荷状態閾値ILL以下であれば(ステップS52でNO)、処理をステップS78に進め、プラス側偏差積算値Σen+及びマイナス側偏差積算値Σen-を0にリセット(ステップS78,S79)したうえで、処理をステップS1に戻す。一方、制御装置9の応答評価指標生成部94は、負荷指標Iが無負荷状態閾値ILLを超えていれば(ステップS52でYES)、負荷指標Iの応答波形について、偏差積算時間T2の負荷指標目標値ITからのプラス側偏差積算値Σen+を計算し、それを更新する(ステップS53)。同様に、制御装置9の応答評価指標生成部94は、負荷指標Iの応答波形について、偏差積算時間T2の負荷指標目標値ITからのマイナス側偏差積算値Σen-を計算し、それを更新する(ステップS54)。
【0075】
制御装置9は、偏差積算時間T2の計測を開始する(ステップS55)。制御装置9は、偏差積算時間T2が所定のパラメータ調整周期T2s未満であれば(ステップS56でNO)、処理をステップS41へ戻す。一方、制御装置9は、偏差積算時間T2が所定のパラメータ調整周期T2s以上であれば(ステップS56でYES)、偏差積算時間T2を0としたうえで(ステップS57)、次のステップS72,S57,S59へ進んで制御パラメータのチューニングを開始する。
【0076】
制御装置9のチューニング部95は、パラメータ調整周期T2sのプラス側偏差積算値Σen+と所定の第1プラス側閾値E1+とを比較し(ステップS72)、パラメータ調整周期T2sのマイナス側偏差積算値Σen-と所定の第1マイナス側閾値E1-とを比較する(ステップS73)。チューニング部95は、プラス側偏差積算値Σen+が第1プラス側閾値E1+より大きく(ステップS72でYES)、且つ、マイナス側偏差積算値Σen-が第1マイナス側閾値E1-より小さいときには(ステップS73でYES)、ハンチングを検知して、比例ゲインKpを所定の第1比例ゲイン調整量だけ減少させた新たな比例ゲインKpnを生成する(ステップS74)。ここで、チューニング部95は、新たな比例ゲインKpnが所定の比例ゲイン最小値KpLOよりも小さい場合には(ステップS75でYES)、比例ゲイン最小値KpLOを新たな比例ゲインKpnとする(ステップS76)。そして、チューニング部95は、新たな比例ゲインKpnで比例ゲインKpを更新して(ステップS77)、プラス側偏差積算値Σen+及びマイナス側偏差積算値Σen-をゼロとして(ステップS78,S79)、処理をステップS41に戻す。
【0077】
チューニング部95は、マイナス側偏差積算値Σen-と第2マイナス側閾値E2-とを比較する(ステップS81)。チューニング部95は、マイナス側偏差積算値Σen-が第2マイナス側閾値E2-より小さく(ステップS81でYES)、且つ、プラス側偏差積算値Σen+がほぼ0であれば(ステップS82でYES)、定常偏差過大を検知して、比例ゲインKpを所定の第2比例ゲイン調整量だけ増加させた新たな比例ゲインKpnを生成する(ステップS85)。ここで、チューニング部95は、新たな比例ゲインKpnが所定の比例ゲイン最大値KpHIよりも大きい場合には(ステップS86でYES)、比例ゲイン最大値KpHIを新たな比例ゲインKpnとする(ステップS87)。そして、チューニング部95は、新たな比例ゲインKpnで比例ゲインKpを更新して(ステップS77)、処理をステップS78へ進める。
【0078】
チューニング部95は、プラス側偏差積算値Σen+と第2プラス側閾値E2+とを比較する(ステップS83)。チューニング部95は、プラス側偏差積算値Σen+が第2プラス側閾値E2+より小さく(ステップS83でYES)、且つ、マイナス側偏差積算値Σen-がほぼ0であれば(ステップS84でYES)、定常偏差過大を検知して、比例ゲインKpを所定の第2比例ゲイン調整量だけ増加させた新たな比例ゲインKpnを生成する(ステップS85)。ここで、チューニング部95は、新たな比例ゲインKpnが所定の比例ゲイン最大値KpHIよりも大きい場合には(ステップS86でYES)、比例ゲイン最大値KpHIを新たな比例ゲインKpnとする(ステップS87)。そして、チューニング部95は、新たな比例ゲインKpnで比例ゲインKpを更新して(ステップS77)、処理をステップS78へ進める。
【0079】
チューニング部95は、プラス側偏差積算値Σen+が第1プラス側閾値E1+より小さい場合(ステップS72でNO)、又は、マイナス側偏差積算値Σen-が第1マイナス側閾値E1-より大きい場合(ステップS73でNO)には、ハンチングでないと判定する。チューニング部95は、マイナス側偏差積算値Σen-が第2マイナス側閾値E2-より大きい場合(ステップS81でNO)、又は、プラス側偏差積算値Σen+がほぼ0でない場合(ステップS82でNO)には、マイナス側定常偏差過大でないと判定する。チューニング部95は、プラス側偏差積算値Σen+が第2プラス側閾値E2+より小さい場合(ステップS83でNO)、又は、マイナス側偏差積算値Σen-がほぼ0でない場合(ステップS84でNO)には、プラス側定常偏差過大でないと判定する。チューニング部95は、上記ハンチングでない(ステップS72でNO又はステップS73でNO)、マイナス側定常偏差過大でない(ステップS81でNO又はステップS82でNO)、且つ、プラス側定常偏差過大でない(ステップS83でNO又はステップS84でNO)が成立する場合には、比例ゲインKpの更新を行わずに処理をステップS78へ進める。
【0080】
以上に説明したように、本実施形態に係る旋動式破砕機1は、円錐筒状のコンケーブ14と、コンケーブ14の内側に配置された円錐台状のマントル13と、マントル13を偏心旋回運動させる電動モータ8と、コンケーブ14とマントル13との間に形成された破砕室16へ被破砕物を投入するホッパ2と、ホッパ2へ被破砕物を供給する供給装置4と、破砕負荷を直接的又は間接的に表す負荷指標Iを測定する負荷測定器と、コンケーブ14とマントル13とのセットを変化させるために、コンケーブ14とマントル13のうち一方を他方に対し変位させるセット調整装置10と、セット調整装置10及び供給装置4を制御する制御装置9とを備える。
【0081】
そして、制御装置9は、供給装置4及びセット調整装置10の少なくとも一方を操作対象とし、操作対象が或る操作量に対応して動作している状態において、負荷測定器で測定された負荷指標Iが所定の定常範囲内にあることを監視する負荷監視部91と、負荷指標Iが定常範囲を外れたときに、操作対象について所定の制御アルゴリズムを利用して負荷指標Iの所定の目標値ITと測定値との偏差に基づいて新たな操作量を求める操作量演算部92と、操作対象を新たな操作量に対応して動作させる動作制御部93と、操作対象の新たな操作量に対応した動作により生じた負荷指標Iの応答評価指標を生成する応答評価指標生成部94と、応答評価指標に基づいて応答の良否を評価し、応答の良好でない場合に制御アルゴリズムの制御パラメータの少なくとも1つを調整するチューニング部95と、を有する。
【0082】
また、本実施形態に係る旋動式破砕機1の制御方法は、供給装置4及びセット調整装置10の少なくとも一方を操作対象とし、操作対象が或る操作量に対応して動作している状態において、破砕負荷を直接的又は間接的に表す負荷指標Iを測定し、当該負荷指標Iが所定の定常範囲内にあることを監視するステップと、負荷指標Iが定常範囲を外れたときに、操作対象について所定の制御アルゴリズムを利用して負荷指標Iの所定の目標値ITと測定値との偏差に基づいて新たな操作量を求めるステップと、操作対象を新たな操作量に対応して動作させるステップと、操作対象の新たな操作量に対応した動作により生じた負荷指標Iの応答評価指標を生成するステップと、応答評価指標に基づいて応答の良否を評価し、応答の良好でない場合に制御アルゴリズムの制御パラメータの少なくとも1つを調整するステップと、を含む。
【0083】
上記旋動式破砕機1及びその制御方法によれば、制御アルゴリズムに基づく制御の応答が良好でなくなった場合に、つまり、被破砕物の性状の変化などの外乱によってそれまで使用されていた制御パラメータが適切な値ではなくなった場合に、制御パラメータが適切な値に自動的に調整される。これにより、外乱が生じても、旋動式破砕機1の安定的な運転の継続を実現することができる。
【0084】
本実施形態に係る旋動式破砕機1では、応答評価指標生成部94は、操作対象の動作により生じた負荷指標Iの応答波形を作成し、所定のパラメータ調整周期T2sにわたる応答波形の目標値ITからのプラス側偏差積算値Σen+とマイナス側偏差積算値Σen-とをそれぞれ求め、チューニング部95は、プラス側偏差積算値Σen+及びマイナス側偏差積算値Σen-に基づいて応答の良否を評価する。
【0085】
同様に、本実施形態に係る旋動式破砕機1の制御方法では、応答評価指標を生成するステップは、操作対象の動作により生じた負荷指標Iの応答波形を作成し、所定のパラメータ調整周期T2sにわたる応答波形の目標値ITからのプラス側偏差積算値Σen+とマイナス側偏差積算値Σen-とをそれぞれ求めることを含み、制御パラメータの少なくとも1つを調整するステップは、プラス側偏差積算値Σen+及びマイナス側偏差積算値Σen-に基づいて応答の良否を評価することを含む。
【0086】
このような手法で応答を評価することにより、制御アルゴリズムの制御パラメータの値が適切な値であるか否かを、簡単且つ正確に評価することができる。
【0087】
上記旋動式破砕機1及びその制御方法において、負荷指標Iは電動モータ8の消費電力の値であってよい。この場合の負荷測定器は、モータドライバ88に設けられた電流センサ88a及び電圧センサ88bとなる。
【0088】
或いは、上記旋動式破砕機1及びその制御方法において、負荷指標Iはマントル13に掛かる破砕圧であってよい。旋動式破砕機1は、マントル13に掛かる破砕圧を受ける油圧シリンダ6を更に備えており、この場合の負荷測定器は油圧シリンダ6の作動油の油圧を検出する圧力センサ24となる。
【0089】
上記のように、制御に使用される負荷指標Iは複数の候補のなかから、旋動式破砕機1の具体的構成や被破砕物等に応じて適宜選択することができる。
【0090】
〔変形例〕
次に、上記実施形態の変形例を説明する。
図10は、変形例に係る旋動式破砕機1Aの概略構成を示す図である。上記実施形態に係る旋動式破砕機1は油圧式のセット調整装置10を備えるが、本変形例に係る旋動式破砕機1Aは機械式のセット調整装置10Aを備える。このような相違点を除いて、両者は実質的に共通する構造を有する。そこで、以下の変形例に係る旋動式破砕機1Aの説明では、前述の実施形態に係る旋動式破砕機1と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略及び簡略化する。
【0091】
図10に示すように、旋動式破砕機1Aは、破砕室16へ被破砕物を投入するホッパ2と、ホッパ2へ被破砕物を供給する供給装置4と、ホッパ2から落下した被破砕物を噛み込んで破砕するマントル13及びコンケーブ14と、マントル13の旋回駆動手段である電動モータ8と、電動モータ8からマントル13へ回転動力を伝達する動力伝達機構80と、コンケーブ14をマントル13に対し昇降させるセット調整装置10Aと、旋動式破砕機1の動作を司る制御装置9とを備える。
【0092】
旋動式破砕機1は、トップフレーム31及びボトムフレーム32からなるフレーム3を更に備える。トップフレーム31の内周に円筒状のコンケーブサポート35が配置されている。コンケーブサポート35の内周には、コンケーブ14が固定されている。コンケーブサポート35の上部にはホッパ2が固定されている。
【0093】
トップフレーム31の内周面に内ねじ31aが形成され、コンケーブサポート35の外周面に外ねじ35aが形成され、これらが螺合している。コンケーブサポート35に外歯35bが形成され、この外歯35bは駆動歯車45と噛合している。駆動歯車45は、電動モータ46の回転動力を受けて回転する。電動モータ46は、トップフレーム31に支持されている。電動モータ46の動作は、制御装置9と接続されたモータドライバ47によって制御される。
【0094】
上記のトップフレーム31の内ねじ31a、コンケーブサポート35の外ねじ35a及び外歯35b、駆動歯車45、電動モータ46、及びモータドライバ47によって、セット調整装置10Aが構成されている。このセット調整装置10Aでは、駆動歯車45の回転するとコンケーブサポート35がトップフレーム31に対し回転する。コンケーブサポート35が回転すると、トップフレーム31の内ねじ31aとコンケーブサポート35の外ねじ35aとの螺合により、トップフレーム31に対してコンケーブサポート35が昇降し、セットが変化する。
【0095】
トップフレーム31又はコンケーブサポート35には、トップフレーム31に対するコンケーブサポート35の変位を検出する接触式又は非接触式のセットセンサ23Aが設けられている。制御装置9は、セットセンサ23Aの検出値からセットを求めることができる。制御装置9は、セットセンサ23Aで検出されたセットの値に基づいて、セット調整装置10Aを動作させる。
【0096】
マントル13は、主軸5の上部に固定されたマントルコア12に取り付けられている。主軸5は、その軸心が鉛直方向から傾いた状態で、フレーム3内に配置されている。主軸5の下部は、インナーブッシュ51に嵌挿されている。インナーブッシュ51は偏心スリーブ52に固定されている。偏心スリーブ52は、ボトムフレーム32に設けられたアウターブッシュ53に嵌挿されている。偏心スリーブ52の下部は、滑り軸受66に支持されている。マントルコア12は、ボトムフレーム32に設けられたスラスト軸受(静圧軸受)55に支持されている。マントルコア12とスラスト軸受55との間には潤滑油による油膜が形成されている。スラスト軸受55の潤滑回路7Aには、潤滑油の給油圧力を検出する圧力センサ24Aが設けられている。マントル13に破砕圧が掛かると、マントルコア12とスラスト軸受55との間に潤滑油を送り出すために更に高い圧力が必要となり、スラスト軸受55へ供給される潤滑油の油圧が上昇する。従って、圧力センサ24Aで検出されるスラスト軸受55の給油圧力は、破砕負荷を間接的に表す測定値であって、負荷指標Iとして用いられてよい。
【0097】
上記構成の旋動式破砕機1Aでは、前述の旋動式破砕機1と同様に、破砕負荷を直接的又は間接的に表す負荷指標Iを測定する負荷測定器を備え、制御装置9は破砕運転中に測定された負荷指標Iを監視し、負荷指標Iが所定の定常範囲内に維持されるように供給装置4による被破砕物の供給量を調整する破砕負荷制御が行う。但し、機械式の旋動式破砕機1Aでは、破砕運転中はセット調整装置10Aに圧力をかけ固定しておく必要があることから、破砕運転中にセットを変更することは困難であり、破砕負荷制御方法としては前述の第1例が採用され、操作対象として供給装置4が選択される。
【0098】
以上に本発明の好適な実施の形態(及び変形例)を説明したが、本発明の思想を逸脱しない範囲で、上記実施形態の具体的な構造及び/又は機能の詳細を変更したものも本発明に含まれ得る。
【符号の説明】
【0099】
1,1A :旋動式破砕機
2 :ホッパ
3 :フレーム
4 :供給装置
5 :主軸
6 :油圧シリンダ
7 :油圧回路
7A :潤滑回路
8 :電動モータ
9 :制御装置
10,10A :セット調整装置
12 :マントルコア
13 :マントル
14 :コンケーブ
16 :破砕室
23,23A :セットセンサ
24,24A :圧力センサ
25 :回転数センサ
26 :トルクセンサ
31 :トップフレーム
32 :ボトムフレーム
34 :上部軸受
35 :コンケーブサポート
41 :電動モータ
43 :モータドライバ
45 :駆動歯車
46 :電動モータ
47 :モータドライバ
51 :インナーブッシュ
52 :偏心スリーブ
53 :アウターブッシュ
55 スラスト軸受
61 :ラム
62 :滑り軸受
63 :シリンダチューブ
65 :油圧室
66 :滑り軸受
67 :油タンク
68 :ポンプモータ
69 :モータドライバ
71 :連通管
72 :アキュムレータ
73 :給油管
74 :排油管
75 :ストレーナ
76 :ギヤポンプ
77 :チェックバルブ
78 :シャットオフバルブ
79 :シャットオフバルブ
80 :動力伝達機構
81 :出力軸
82 :ベルト式伝動機構
83 :横軸
84 :傘歯車伝動機構
88 :モータドライバ
88a:電流センサ
88b:電圧センサ
91 :負荷監視部
92 :操作量演算部
93 :動作制御部
94 :応答評価指標生成部
95 :チューニング部