(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】超音波検査システム
(51)【国際特許分類】
G01N 29/30 20060101AFI20220119BHJP
G01N 29/07 20060101ALI20220119BHJP
G01B 17/02 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
G01N29/30
G01N29/07
G01B17/02 Z
(21)【出願番号】P 2018112535
(22)【出願日】2018-06-13
【審査請求日】2021-01-15
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】特許業務法人開知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田村 明紀
(72)【発明者】
【氏名】河野 尚幸
(72)【発明者】
【氏名】松井 哲也
(72)【発明者】
【氏名】大城戸 忍
(72)【発明者】
【氏名】花木 洋
(72)【発明者】
【氏名】岡澤 周
【審査官】岩本 太一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-78910(JP,A)
【文献】特公昭50-15596(JP,B1)
【文献】特開昭59-119210(JP,A)
【文献】米国特許第5095754(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 17/00-17/08
G01N 29/00-29/52
A61B 8/00- 8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を送受信する圧電素子と校正片を備えた超音波センサと、
前記校正片内を伝播した超音波の伝播時間と前記校正片の音速に基づいて時間軸を校正し、被検体内を伝播した超音波の伝播時間と前記被検体の音速に基づいて前記被検体の厚さを演算する制御装置と、を備えた超音波検査システムにおいて、
前記校正片は、
前記圧電素子の前記被検体側とは反対側の表面に沿って延在する伝播部と、
前記伝播部の延在方向の一方側に形成され、前記圧電素子の前記表面に接触媒質を介し接続された伝播方向転換部とを有しており、
前記伝播方向転換部は、前記圧電素子の前記表面に垂直な方向にて傾けられた傾斜面を有し、前記圧電素子から前記伝播方向転換部に入射された超音波を、前記傾斜面で反射して前記伝播部へ出射すると共に、前記伝播部の延在方向の他方側の端面で反射されて前記伝播部から前記伝播方向転換部に入射された超音波を、前記傾斜面で反射して前記圧電素子へ出射するように構成されたことを特徴とする超音波検査システム。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波検査システムにおいて、
前記校正片の前記伝播部は、前記伝播方向転換部の前記傾斜面からの超音波の伝播距離が互いに異なる第1端面及び第2端面を有しており、
前記制御装置は、
前記校正片の前記伝播部の前記第1端面で反射された超音波の伝播時間及び伝播距離から前記校正片の音速を演算し、前記校正片の音速に基づいて前記被検体の音速を補正し、
前記校正片の前記伝播部の前記第2端面で反射された超音波の伝播時間及び伝播距離と前記校正片の音速に基づいて時間軸を校正することを特徴とする超音波検査システム。
【請求項3】
請求項1に記載の超音波検査システムにおいて、
前記校正片は、前記伝播部を少なくとも2つ有し、更に、前記伝播部の間に配置された少なくとも1つの伝播方向変化部を有しており、
前記伝播方向変化部は、前記圧電素子の前記表面に平行な方向にて傾けられた傾斜面を有し、一方の伝播部から前記伝播方向変化部に入射された超音波を、前記傾斜面で反射して他方の伝播部へ出射すると共に、前記他方の伝播部から前記伝播方向変化部に入射された超音波を、前記傾斜面で反射して前記一方の伝播部へ伝播するように構成されたことを特徴とする超音波検査システム。
【請求項4】
超音波を送受信する圧電素子と校正片を備えた超音波センサと、
前記校正片内を伝播した超音波の伝播時間と前記校正片の音速に基づいて時間軸を校正し、被検体内を伝播した超音波の伝播時間と前記被検体の音速に基づいて前記被検体の厚さを演算する制御装置と、を備えた超音波検査システムであって、
前記校正片は、
前記圧電素子の前記被検体側とは反対側の表面に沿って延在する伝播部と、
前記伝播部の延在方向の一方側に形成され、前記圧電素子の前記表面に接触媒質を介し接続された第1の伝播方向転換部と、
前記伝播部の延在方向の他方側に形成され、前記圧電素子の前記表面に接触媒質を介し接続された第2の伝播方向転換部とを有しており、
前記第1の伝播方向転換部は、前記圧電素子の前記表面に垂直な方向にて傾けられた第1の傾斜面を有し、前記圧電素子から前記第1の伝播方向転換部に入射された超音波を、前記第1の傾斜面で反射して前記伝播部へ出射するように構成されており、
前記第2の伝播方向転換部は、前記圧電素子の前記表面に垂直な方向にて傾けられた第2の傾斜面を有し、前記伝播部から前記第2の伝播方向転換部に入射された超音波を、前記第2の傾斜面で反射して前記圧電素子へ出射するように構成されたことを特徴とする超音波検査システム。
【請求項5】
請求項4に記載の超音波検査システムにおいて、
前記校正片は、前記伝播部を少なくとも2つ有し、更に、前記伝播部の間に配置された少なくとも1つの伝播方向変化部を有しており、
前記伝播方向変化部は、前記圧電素子の前記表面に平行な方向にて傾けられた傾斜面を有し、一方の伝播部から前記伝播方向変化部に入射された超音波を、前記傾斜面で反射して他方の伝播部へ出射するように構成されたことを特徴とする超音波検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体の厚さを計測する超音波検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
非破壊検査技術のひとつである超音波検査は、低コスト性、適用の容易性などの特徴から幅広い分野で採用されている。原子力プラント、火力プラントや化学プラントなどでは、配管や容器などの健全性を担保するため、その肉厚を計測する超音波検査が定期的に実施されている。具体的には、配管や容器などから保温材を取り外した後、予め規定された検査点に超音波センサを押し付けて、超音波検査を実施する。そのため、検査前後で保温材の着脱が必要であり、検査箇所が高所であれば、検査前後で足場の組み立て・撤去も必要となる。また、配管や容器などに超音波センサを手動で押し当てるため、超音波の伝播方向が適切となるように、超音波センサを注意深く配置する必要がある。原子力プラントなどでは、多数の配管や容器などを検査することが規定されており、多大な労力や時間を要する。
【0003】
そこで、例えば保温材下の配管の表面に、超音波センサを予め固定しておく手法が提案されている。これにより、保温材の着脱なしに超音波検査を実施することができる。また、プラントの運転中に超音波検査を実施することで、定期検査の負荷を低減することが可能となる。しかしながら、本手法では、保温材下の配管の表面に超音波センサを固着するため、従来のように校正板を別途用意して、計測前後で機器を校正することが困難となる。そこで、材質及び厚さが既知である校正板を、超音波センサに組み込む方法が開示されている(例えば特許文献1)。
【0004】
特許文献1の超音波計測装置は、配管の表面に固定された超音波センサと、探傷器本体とを備えている。例えば特許文献1の
図7で示されるように、超音波センサは、超音波を送受信する圧電素子と、圧電素子の上面(言い換えれば、配管側とは反対側の面)に固着された校正板とを備えている。探傷器本体は、配管の内面(言い換えれば、圧電素子側とは反対側の表面)で1回反射された超音波の伝播時間に基づいて、配管の肉厚を演算する。また、校正板の厚さ及び材質が既知であるから、探傷器本体は、校正板の上面(言い換えれば、圧電素子側とは反対側の表面)で1回反射された超音波の伝播時間に基づいて時間軸を校正する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の従来技術には、次のような課題が存在する。例えば特許文献1の
図8(B)で示されるように、校正板が比較的薄い場合は、校正板の上面で1回反射された超音波の受信タイミングが、配管の内面で1回反射された超音波の受信タイミングより早くなる。そのため、校正板の表面で複数回反射された超音波(いわゆる多重反射波)の受信タイミングが、配管の内面で1回反射された超音波の受信タイミングと重なるか若しくは近くなって、前者の超音波が後者の超音波に影響を及ぼす可能性がある。したがって、超音波センサの薄型化を図ることができるものの、配管の厚さの計測精度が損なわれる。
【0007】
一方、例えば特許文献1の
図8(A)で示されるように、校正板が比較的厚い場合は、校正板の上面で1回反射された超音波の受信タイミングが、配管の内面で1回反射された超音波の受信タイミングより遅くなる。そのため、校正板の表面で複数回反射された超音波の受信タイミングが、配管の内面で1回反射された超音波の受信タイミングより更に遅くなって、前者の超音波が後者の超音波に影響を及ぼさない。したがって、配管の厚さの計測精度を確保することができるものの、超音波センサの薄型化が損なわれる。
【0008】
本発明は、上記事柄に鑑みてなされたものであり、その目的は、超音波センサに校正片を組み込みながら、超音波センサの薄型化と被検体の厚さの計測精度を両立することができる超音波検査システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、代表的な本発明は、超音波を送受信する圧電素子と校正片を備えた超音波センサと、前記校正片内を伝播した超音波の伝播時間と前記校正片の音速に基づいて時間軸を校正し、被検体内を伝播した超音波の伝播時間と前記被検体の音速に基づいて前記被検体の厚さを演算する制御装置と、を備えた超音波検査システムにおいて、前記校正片は、前記圧電素子の前記被検体側とは反対側の表面に沿って延在する伝播部と、前記伝播部の延在方向の一方側に形成され、前記圧電素子の前記表面に接触媒質を介し接続された伝播方向転換部とを有しており、前記伝播方向転換部は、前記圧電素子の前記表面に垂直な方向にて傾けられた傾斜面を有し、前記圧電素子から前記伝播方向転換部に入射された超音波を、前記傾斜面で反射して前記伝播部へ出射すると共に、前記伝播部の延在方向の他方側の端面で反射されて前記伝播部から前記伝播方向転換部に入射された超音波を、前記傾斜面で反射して前記圧電素子へ出射するように構成される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、超音波センサに校正片を組み込みながら、超音波センサの薄型化と被検体の厚さの計測精度を両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1の実施形態における超音波検査システムの構成を、被検体である配管と共に表す概略図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態における超音波センサの構造を表す上面図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態における受信波形の具体例を表す図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態における制御装置の処理手順を表すフローチャートである。
【
図6】本発明の第1の実施形態における校正片の伝播方向転換部の傾斜面の傾斜角を説明するための図である。
【
図7】本発明の第2の実施形態における超音波センサの構造を表す上面図である。
【
図9】本発明の第2の実施形態における受信波形の具体例を表す図である。
【
図10】本発明の第2の実施形態における制御装置の処理手順を表すフローチャートである。
【
図11】本発明の第3の実施形態における超音波センサの構造を表す上面図である。
【
図14】本発明の第4の実施形態における超音波センサの構造を表す上面図である。
【
図16】本発明の第5の実施形態における超音波センサの構造を表す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の第1の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0013】
図1は、本実施形態における超音波検査システムの構成を、被検体である配管と共に表す概略図である。
図2は、本実施形態における超音波センサの構造を表す上面図であり、
図3は、
図2中矢印III方向から見た図である。
【0014】
本実施形態の被検体である配管20は、例えば炭素鋼製もしくはステンレス鋼製であって、プラントの運転中に液体もしくは気体が流れて高温となる。そのため、例えばケイ酸カルシウム製、ロックウール製、グラスウール製、無定形水練製、もしくは硬質ウレタンフォーム製の保温材21で覆われている。
【0015】
本実施形態の超音波検査システムは、超音波センサ1、制御装置2、及び表示装置3(ディスプレイ)を備えている。超音波センサ1は、保温材21下の配管20の表面に耐熱性接着剤4(接触媒質)を介し固定されている。
【0016】
超音波センサ1は、圧電素子5と、圧電素子5の上面(言い換えれば、被検体側とは反対側の表面)に固着された校正片6とを備えている。圧電素子5は、例えばチタン酸ジルコン酸鉛などの圧電セラミックス製である。校正片6の材質は、配管20の材質(炭素鋼もしくはステンレス鋼)と同じにすることが好ましいものの、例えばアルミ、鉛、チタン、黄銅、もしくはアルミナなどのセラミックであってもよい。
【0017】
校正片6は、圧電素子5の上面に沿う一方向(
図2及び
図3中左右方向)に延在する四角柱形状の伝播部7と、伝播部7の延在方向の一方側(
図2及び
図3中左側)に形成され、圧電素子5に耐熱性接着剤4(後述の
図6参照)を介し接続された三角柱形状の伝播方向転換部8とを有している。なお、
図3において、校正片6の伝播部7は、圧電素子5の上面から離間されているものの、これに限られない。すなわち、校正片6の伝播部7と圧電素子5の上面が隣接していても、それらの間に極わずかでも空気層が存在すれば超音波が伝播しないので、それらの間に接触媒質がなければよい(後述する他の実施形態の伝播部も同様)。
【0018】
伝播方向転換部8は、圧電素子5の上面に垂直な方向にて傾けられた傾斜面9を有している。そして、
図2及び
図3中矢印A1で示すように、圧電素子5から伝播方向転換部8に入射された超音波を、傾斜面9で反射して伝播部7へ出射し、
図2及び
図3中矢印A2で示すように、伝播部7の延在方向の他方側(
図2及び
図3中右側)の端面10で反射されて伝播部7から伝播方向転換部8に入射された超音波を、傾斜面9で反射して圧電素子5へ出射するようになっている。
【0019】
制御装置2は、パルサ11、レシーバ12、信号処理部13、及び記憶部14を有している。なお、信号処理部13は、プログラムに従って処理を実行するプロセッサ等で構成され、記憶部14は、ハードディスクやメモリ等で構成されている。
【0020】
超音波センサ1の圧電素子5は、制御装置2のパルサ11からの駆動信号(電気信号)によって厚さ方向に振動して、校正片6及び配管20に超音波を送信する。また、圧電素子5は、
図3中矢印A1,A2で示すように校正片6の端面で1回反射された超音波Aと、
図3中矢印B1,B2で示すように配管20の内面で1回反射された超音波Bを受信する。そして、受信した超音波A,Bを波形信号(電気信号)に変換して制御装置2のレシーバ12へ出力する。
【0021】
制御装置2の信号処理部13は、レシーバ12を介して得られた波形信号に対し、所定の処理(詳細には、アナログ信号からデジタル信号への変換処理等)を実行する。これにより、
図4で示すように、超音波A,Bの波形データを取得する。そして、波形データを記憶部14へ出力して記憶させると共に、表示装置3へ出力して表示させる。
【0022】
本実施形態の制御装置2の処理内容について説明する。
図5は、本実施形態における制御装置2の処理手順を表すフローチャートである。
【0023】
ステップS1にて、制御装置2のパルサ11は、超音波センサ1の圧電素子5に駆動信号を出力して、圧電素子5から超音波を送信させる。その後、圧電素子5は、上述した超音波A,Bを受信し、波形信号に変換して制御装置2のレシーバ12へ出力する。制御装置2の信号処理部13は、レシーバ12を介して得られた波形信号に対し所定の処理を実行して、超音波A,Bの波形データを取得する。そして、例えば駆動信号の出力タイミングを起点とし、各超音波の振幅(補間値)が最大となるタイミングを終点として、超音波Aの伝播時間ta及び超音波Bの伝播時間tbを計測する。
【0024】
その後、ステップS2に進み、信号処理部13は、超音波Aの伝播時間ta、校正片6内の超音波の伝播距離、及び校正片6の音速に基づいて、時間軸(詳細には、伝播時間の起点)を校正する。具体的には、例えば、校正片6内の超音波の伝播距離及び校正片6の音速から、超音波Aの伝播時間ta’を演算する。そして、超音波の伝播時間の計測値taと演算値ta’との差分が許容範囲内にあるかどうかを判定する。差分が許容範囲内にない場合は、差分が小さくなるように、時間軸を校正する。すなわち、上述のステップS1で計測した超音波Bの伝播時間tbを補正する。
【0025】
その後、ステップS3に進み、信号処理部13は、上述のようにして得られた超音波Bの伝播時間tbと配管20の縦波音速vから、配管20の肉厚Hを演算する。信号処理部13は、算出した配管20の肉厚Hを記憶部14へ出力して記憶させると共に、表示装置3へ出力して表示させる。
【0026】
以上のように構成された本実施形態の作用効果を説明する。本実施形態の校正片6は、超音波の伝播方向を圧電素子5の上面に沿う方向に転換する伝播方向転換部8を有している。これにより、圧電素子5の上面に垂直な方向における校正片6の高さでなく、圧電素子5の上面に平行な方向における校正片6の長さを大きくして、校正片6の端面10で1回反射された超音波Aの受信タイミングを、配管20の内面で1回反射された超音波Bの受信タイミングより遅らせることができる(
図4参照)。したがって、超音波センサ1に校正片6を組み込みながら、超音波センサ1の薄型化と配管20の肉厚の計測精度を両立することができる。
【0027】
本実施形態の校正片6の設計方法を補足する。
【0028】
図6で示すように、校正片6の伝播方向転換部8の傾斜面9の傾斜角α(詳細には、圧電素子5の上面と傾斜面9との間の角度)は、圧電素子5からの超音波が傾斜面9に入射する入射角と同じである。伝播方向転換部8の傾斜面9で反射された超音波は、伝播部7の延在方向(すなわち、圧電素子5の上面に平行な方向)に伝播させることが好ましい。そのため、圧電素子5からの超音波が傾斜面9で反射された反射角をβとすれば、α+β=90°となることが好ましい。
【0029】
例えば、圧電素子5から傾斜面9に入射する超音波として縦波を用い、傾斜面9で反射された超音波として縦波を用いる場合は、α=βであるため、α=45°となる。
【0030】
一方、例えば、圧電素子5から傾斜面9に入射する超音波として縦波を用い、傾斜面9で反射されて変換された超音波として横波を用いる場合は、下記の式(1)を用いて傾斜角αを演算する。式中のvlは校正片6の縦波音速、vsは校正片6の横波音速である。
sinα/sin(90°-α)=vl/vs ・・・(1)
【0031】
校正片6の材質に応じて、縦波音速vl及び横波音速vsが異なるため、傾斜角αが変化する。校正片6の材質がアルミナである場合は、傾斜角α=59°となる。校正片6の材質が炭素鋼もしくはステンレス鋼である場合は、傾斜角α=62°となる。校正片6の材質がチタンである場合は、傾斜角α=63°となる。校正片6の材質がアルミである場合は、傾斜角α=64°となる。校正片6の材質が黄銅である場合は、傾斜角α=65°となる。校正片6の材質が鉛である場合は、傾斜角α=72°となる。
【0032】
予備検討によると、伝播方向転換部8の傾斜面9の傾斜角αが、上記の式(1)を用いて算出された最適値に対し±5°程度ずれても、傾斜面9で反射された超音波が十分なSN比で伝播部7に伝播することが分かっている。そのため、例えば、圧電素子5から傾斜面9に入射する超音波として縦波を用い、傾斜面9で反射された超音波として縦波を用いる場合は、傾斜角α=40°としてもよい。また、例えば、圧電素子5から傾斜面9に入射する超音波として縦波を用い、傾斜面9で反射された超音波として横波を用いる場合であって、かつ、校正片6の材質が鉛である場合は、傾斜角α=77°としてもよい。したがって、傾斜角αは、40°~77°の範囲内となる。
【0033】
図3で示すように、圧電素子5の上面と校正片6の傾斜面9(ここでは、代表的な位置として、校正片6の高さ方向及び長さ方向における傾斜面9の中心位置とする。以下、同様)の間の超音波の片道伝播距離をL1とし、校正片6の傾斜面9と端面10の間の超音波の片道伝播距離をL2としたときに、校正片6内の超音波の伝播距離は(L1+L2)×2で表される。別の言い方をすれば、校正片6内の超音波の伝播距離は(伝播方向転換部8の高さ/2+伝播方向転換部8の長さ/2+伝播部7の長さ)×2で表される。
【0034】
L1が小さいのでL1=0と仮定し、校正片6の傾斜面9と端面10の間で伝播する超音波として縦波を用いるのであれば、校正片6内の超音波の伝播時間taはL2×2/vlで表される。一方、校正片6の傾斜面9と端面10の間で伝播する超音波として横波を用いるのであれば、校正片6内の超音波の伝播時間taはL2×2/vsで表される。配管20内の超音波の伝播時間tbはH×2/vで表される。
【0035】
したがって、校正片6の傾斜面9と端面10の間で伝播する超音波として縦波を用いるのであれば、ta>tbの関係を満たすために、L2>H×vl/vの条件を満たすことが好ましい。一方、校正片6の傾斜面9と端面10の間で伝播する超音波として横波を用いるのであれば、ta>tbの関係を満たすために、L2>H×vs/vの条件を満たすことが好ましい。このような観点により、
図2及び
図3中左右方向における伝播部7の長さも、H×vl/vより大きくなる条件か、若しくは、H×vs/vより大きくなる条件を満たすことが好ましい。一般的に、vl<vsであるから、後者の条件を満たせば、前者の条件も満たす。
【0036】
なお、
図4においては、圧電素子5の上面と校正片6の傾斜面9の間で伝播する超音波として縦波を用い、校正片6の傾斜面9と端面10の間で伝播する超音波として横波を用いる場合であって、校正片6の材質が炭素鋼であり、傾斜角αが62°に設定されている。また、配管20の材質が校正片6の材質と同じであり、配管20の肉厚Hが8.5mm、校正片6の伝播部7の長さが6.5mmに設定されている。
【0037】
本発明の第2の実施形態を、
図7~
図10を用いて説明する。なお、本実施形態において、上記実施形態と同等の部分は同一の符号を付し、適宜、説明を省略する。
【0038】
図7は、本実施形態における超音波センサの構造を表す上面図であり、
図8は、
図7中矢印VIII方向から見た図である。
【0039】
本実施形態の校正片6の伝播部7は、その延在方向の他方側(
図7及び
図8中右側)の端面10A,10Bを有している。校正片6の傾斜面9と端面10Aの間の超音波の片道伝播距離をL3とし、校正片6の傾斜面9と端面10Bの間の超音波の片道伝播距離をL4としたときに、L3<L4である。
【0040】
なお、校正片6の傾斜面9と端面10A,10Bの間で伝播する超音波として縦波を用いるのであれば、L3>H×vl/vの条件を満たすことが好ましい。一方、校正片6の傾斜面9と端面10A,10Bの間で伝播する超音波として横波を用いるのであれば、L3>H×vs/vの条件を満たすことが好ましい。このような観点により、端面10Aからの伝播部7の長さも、H×vl/vより大きくなる条件か、若しくは、H×vs/vより大きくなる条件を満たすことが好ましい。一般的に、vl<vsであるから、後者の条件を満たせば、前者の条件も満たす。
【0041】
また、校正片6の傾斜面9と端面10A,10Bの間で伝播する超音波として縦波を用いるのであれば、校正片6の縦波波長をλlとしたときに、(L4-L3)>λlの条件を満たすものとする。一方、校正片6の傾斜面9と端面10A,10Bの間で伝播する超音波として横波を用いるのであれば、校正片6の横波波長をλsとしたときに、(L4-L3)>λsの条件を満たすものとする。
【0042】
圧電素子5は、
図8中矢印B1,B2で示すように配管20の内面で1回反射された超音波Bと、
図7及び
図8中矢印C1,C2で示すように校正片6の端面10Aで1回反射された超音波Cと、
図7及び
図8中矢印D1,D2で示すように校正片6の端面10Bで1回反射された超音波Dを受信する。そして、受信した超音波B,C,Dを波形信号に変換して制御装置2のレシーバ12へ出力する。
【0043】
制御装置2の信号処理部13は、レシーバ12を介して得られた波形信号に対し、所定の処理を実行する。これにより、
図9で示すように、超音波B,C,Dの波形データを取得する。そして、波形データを記憶部14へ出力して記憶させると共に、表示装置3へ出力して表示させる。
【0044】
本実施形態の制御装置2の処理内容について説明する。
図10は、本実施形態における制御装置2の処理手順を表すフローチャートである。
【0045】
ステップS1にて、制御装置2のパルサ11は、超音波センサ1の圧電素子5に駆動信号を出力して、圧電素子5から超音波を送信させる。その後、圧電素子5は、上述した超音波B,C,Dを受信し、波形信号に変換して制御装置2のレシーバ12へ出力する。制御装置2の信号処理部13は、レシーバ12を介して得られた波形信号に対し所定の処理を実行して、超音波B,C,Dの波形データを取得する。そして、例えば駆動信号の出力タイミングを起点とし、各超音波の振幅(補間値)が最大となるタイミングを終点として、超音波Bの伝播時間tb、超音波Cの伝播時間tc、及び超音波Dの伝播時間tdを計測する。
【0046】
その後、ステップS4に進み、信号処理部13は、校正片6の端面10Aで反射された超音波Cの伝播時間tc及び伝播距離から、校正片6の音速を演算する。具体的には、例えば、校正片6の端面10Aで反射された超音波Cの伝播距離として(L1+L3)×2で表されるものを用い、圧電素子5の上面と校正片6の傾斜面9の間で伝播する超音波として縦波を用い、校正片6の傾斜面9と端面10Aの間で伝播する超音波として縦波を用いるのであれば、超音波Cの伝播時間tc及び伝播距離から、校正片6の縦波音速vlを演算する。
【0047】
あるいは、例えば、L1=0と仮定して、校正片6の端面10Aで反射された超音波Cの伝播距離としてL3×2で表されるものを用い、校正片6の傾斜面9と端面10の間で伝播する超音波として縦波を用いるのであれば、超音波Cの伝播時間tc及び伝播距離から、校正片6の縦波音速vlを演算する。また、例えば、L1=0と仮定して、校正片6の端面10Aで反射された超音波Cの伝播距離としてL3×2で表されるものを用い、校正片6の傾斜面9と端面10の間で伝播する超音波として横波を用いるのであれば、超音波Cの伝播時間tc及び伝播距離から、校正片6の横波音速vsを演算する。
【0048】
信号処理部13は、算出した校正片6の音速(詳細には、縦波音速vlまたは横波音速vs)に基づいて配管20の縦波音速vを補正する。詳しく説明すると、校正片6の材質と配管20の材質が同じである場合、校正片6の温度と配管20の温度が同じとみなせるから、配管20の縦波音速vは、算出した校正片6の縦波音速vlと同じである。あるいは、予め作成された校正片6の横波音速vsと縦波音速vlとの関係式を用いて、算出した校正片6の横波音速vsから縦波音速v1を演算すれば、配管20の縦波音速vは、算出した校正片6の縦波音速vlと同じである。
【0049】
校正片の材質と配管20の材質が異なる場合、予め作成された校正片6の音速と校正片6の温度との関係式を用いて、算出した校正片6の音速から校正片6の温度を演算し、この校正片6の温度と配管20の温度が同じとみなす。そして、予め作成された配管20の温度と配管20の縦波音速vとの関係式を用いて、算出した配管20の温度から配管20の縦波音速vを演算する。
【0050】
その後、ステップS2に進み、信号処理部13は、校正片6の端面10Bで反射された超音波Dの伝播時間td及び伝播距離と校正片6の音速に基づいて、時間軸(詳細には、伝播時間の起点)を校正する。具体的には、例えば、校正片6の端面10Bで反射された超音波Dの伝播距離(詳細には、例えば(L1+L4)×2で表されるものか、若しくは、L4×2で表されるもの)と校正片6の音速から、超音波Dの伝播時間td’を演算する。そして、超音波の伝播時間の計測値tdと演算値td’との差分が許容範囲内にあるかどうかを判定する。差分が許容範囲内にない場合は、差分が小さくなるように、時間軸を校正する。すなわち、上述のステップS1で取得した超音波Bの伝播時間tbを補正する。
【0051】
その後、ステップS3に進み、信号処理部13は、上述のようにして得られた超音波Bの伝播時間tbと配管20の縦波音速vから、配管20の肉厚Hを演算する。信号処理部13は、算出した配管20の肉厚Hを記憶部14へ出力して記憶させると共に、表示装置3へ出力して表示させる。
【0052】
以上のように構成された本実施形態の作用効果を説明する。本実施形態の校正片6も、第1の実施形態と同様、超音波の伝播方向を圧電素子5の上面に沿う方向に転換する伝播方向転換部8を有している。これにより、圧電素子5の上面に垂直な方向における校正片6の高さでなく、圧電素子5の上面に平行な方向における校正片6の長さを大きくして、校正片6の端面10Aで1回反射された超音波Cの受信タイミングと校正片6の端面10Bで1回反射された超音波Dの受信タイミングを、配管20の内面で1回反射された超音波Bの受信タイミングより遅らせることができる(
図9参照)。したがって、超音波センサ1に校正片6を組み込みながら、超音波センサ1の薄型化と配管20の肉厚の計測精度を両立することができる。
【0053】
また、本実施形態では、校正片6や配管20の温度を検出する温度センサを用いなくとも、校正片6や配管20の音速を補正することができる。したがって、簡素な構成でありながら、配管20の肉厚の計測精度を高めることができる。
【0054】
本発明の第3の実施形態を、
図11~
図13を用いて説明する。なお、本実施形態において、上記実施形態と同等の部分は同一の符号を付し、適宜、説明を省略する。
【0055】
図11は、本実施形態における超音波センサの構造を表す上面図である。
図12は、
図11中矢印XII方向から見た図であり、
図13は、
図11中矢印XIII方向から見た図である。
【0056】
本実施形態の校正片6は、圧電素子5の上面に沿う一方向(
図11及び
図12中左右方向)に延在する四角柱形状の伝播部7Aと、圧電素子5の上面に沿う他の方向(
図11中上下方向、
図13中左右方向)に延在する四角柱形状の伝播部7Bと、伝播部7A,7Bの間に配置された三角柱形状の伝播方向変化部15と、伝播部7Aの延在方向の一方側(
図11及び
図12中左側)に形成され、圧電素子5に耐熱性接着剤4を介し接続された三角柱形状の伝播方向転換部8とを有している。
【0057】
伝播方向転換部8は、圧電素子5の上面に垂直な方向にて傾けられた傾斜面9を有し、伝播方向変化部15は、圧電素子5の上面に平行な方向にて傾けられた傾斜面16を有している。そして、
図11及び
図12中矢印E1,E2で示すように、圧電素子5から伝播方向転換部8に入射された超音波を、傾斜面9で反射して伝播部7Aへ出射し、伝播部7Aから伝播方向変化部15に入射された超音波を、傾斜面16で反射して伝播部7Bへ出射するようになっている。また、
図11及び
図13中矢印E3,E4で示すように、伝播部7Bの延在方向の他方側(
図11中上側、及び
図13中右側)の端面10で反射されて伝播部7Bから伝播方向変化部15に入射された超音波を、傾斜面16で反射して伝播部7Aへ出射し、伝播部7Aから伝播方向転換部8に入射された超音波を、傾斜面9で反射して圧電素子5へ出射するようになっている。
【0058】
校正片6の傾斜面9と傾斜面16の間及び傾斜面16と端面10の間で伝播する超音波として縦波を用いるのであれば、校正片6の傾斜面9と傾斜面16(ここでは、代表的な位置として、校正片6の幅方向及び長さ方向における傾斜面16の中心位置とする。以下、同様)の間の超音波の片道伝播距離をL5とし、校正片6の傾斜面16と端面10の間の超音波の片道伝播距離をL6としたときに、(L5+L6)>H×vl/vの条件を満たすことが好ましい。一方、校正片6の傾斜面9と傾斜面16の間及び傾斜面16と端面10の間で伝播する超音波として横波を用いるのであれば、(L5+L6)>H×vs/vの条件を満たすことが好ましい。
【0059】
圧電素子5は、
図12及び
図13中矢印B1,B2で示すように配管20の内面で1回反射された超音波Bと、
図11~
図13中矢印E1~E4で示すように校正片6の端面10で1回反射された超音波Eとを受信する。そして、受信した超音波B,Eを波形信号に変換して制御装置2のレシーバ12へ出力する。
【0060】
制御装置2は、第1の実施形態と同様、校正片6内を伝播した超音波Eの伝播時間と校正片6の音速に基づいて時間軸を校正し、配管20内を伝播した超音波Bの伝播時間と配管20の縦波音速vに基づいて配管20の肉厚Hを演算する。そして、算出した配管20の肉厚Hを記憶部14へ出力して記憶させると共に、表示装置3へ出力して表示させる。
【0061】
以上のように構成された本実施形態の作用効果を説明する。本実施形態の校正片6も、第1の実施形態と同様、超音波の伝播方向を圧電素子5の上面に沿う方向に転換する伝播方向転換部8を有している。これにより、圧電素子5の上面に垂直な方向における校正片6の高さでなく、圧電素子5の上面に平行な方向における校正片6の長さを大きくして、校正片6の端面10で1回反射された超音波Eの受信タイミングを、配管20の内面で1回反射された超音波Bの受信タイミングより遅らせることができる。したがって、超音波センサ1に校正片6を組み込みながら、超音波センサ1の薄型化と配管20の肉厚の計測精度を両立することができる。また、本実施形態では、第1の実施形態と比べ、超音波センサ1の小型化を図ることができる。
【0062】
なお、第3の実施形態において、校正片6の伝播部7Bは、第1の実施形態と同様、一つの端面10を有する場合を例にとって説明したが、これに限られず、第2の実施形態と同様、2つの端面10A,10Bを有してもよい。そして、制御装置2は、第2の実施形態と同様の処理を実行してもよい。
【0063】
本発明の第4の実施形態を、
図14及び
図15を用いて説明する。なお、本実施形態において、上記実施形態と同等の部分は同一の符号を付し、適宜、説明を省略する。
【0064】
図14は、本実施形態における超音波センサの構造を表す上面図である。
図15は、
図14中矢印XV方向から見た図である。
【0065】
本実施形態の校正片6は、圧電素子5の上面に沿う一方向(
図14及び
図15中左右方向)に延在する四角柱形状の伝播部7と、伝播部7の延在方向の一方側(
図14及び
図15中左側)に形成され、圧電素子5に耐熱性接着剤4を介し接続された三角柱形状の伝播方向転換部8Aと、伝播部7の延在方向の他方側(
図14及び
図15中右側)に形成され、圧電素子5に耐熱性接着剤4を介し接続された三角柱形状の伝播方向転換部8Bとを有している。
【0066】
伝播方向転換部8A,8Bは、圧電素子5の上面に垂直な方向にて傾けられた傾斜面9A,9Bをそれぞれ有している。そして、
図14及び
図15中矢印F1で示すように、圧電素子5から伝播方向転換部8Aに入射された超音波を、傾斜面9Aで反射して伝播部7へ出射し、伝播部7から伝播方向転換部8Bに入射された超音波を、傾斜面9Bで反射して圧電素子5へ出射するようになっている。また、
図14及び
図15中矢印F2で示すように、圧電素子5から伝播方向転換部8Bに入射された超音波を、傾斜面9Bで反射して伝播部7へ出射し、伝播部7から伝播方向転換部8Aに入射された超音波を、傾斜面9Aで反射して圧電素子5へ出射するようになっている。
【0067】
校正片6の傾斜面9Aと傾斜面9Bの間で伝播する超音波として縦波を用いるのであれば、圧電素子5の上面と校正片6の傾斜面9A又は9Bの間の超音波の片道伝播距離をL1とし、校正片6の傾斜面9Aと傾斜面9Bの間の超音波の片道伝播距離をL7としたときに、L7>H×2×vl/vの条件を満たすことが好ましい。一方、校正片6の傾斜面9Aと傾斜面9Bの間で伝播する超音波として横波を用いるのであれば、L7>H×2×vs/vの条件を満たすことが好ましい。
【0068】
圧電素子5は、
図15中矢印B1,B2で示すように配管20の内面で1回反射された超音波Bと、
図14及び
図15中矢印F1,F2で示すように校正片6内を伝播した超音波Fとを受信する。そして、受信した超音波B,Fを波形信号に変換して制御装置2のレシーバ12へ出力する。
【0069】
制御装置2は、第1の実施形態と同様、校正片6内を伝播した超音波Fの伝播時間と校正片6の音速に基づいて時間軸を校正し、配管20内を伝播した超音波Bの伝播時間と配管20の縦波音速vに基づいて配管20の肉厚Hを演算する。そして、算出した配管20の肉厚Hを記憶部14へ出力して記憶させると共に、表示装置3へ出力して表示させる。
【0070】
以上のように構成された本実施形態の作用効果を説明する。本実施形態の校正片6は、超音波の伝播方向を圧電素子5の上面に沿う方向に転換する伝播方向転換部8A,8Bを有している。これにより、圧電素子5の上面に垂直な方向における校正片6の高さでなく、圧電素子5の上面に平行な方向における校正片6の長さを大きくして、校正片6内を伝播した超音波Fの受信タイミングを、配管20の内面で1回反射された超音波Bの受信タイミングより遅らせることができる。したがって、超音波センサ1に校正片6を組み込みながら、超音波センサ1の薄型化と配管20の肉厚の計測精度を両立することができる。
【0071】
本発明の第5の実施形態を、
図16~
図18を用いて説明する。なお、本実施形態において、上記実施形態と同等の部分は同一の符号を付し、適宜、説明を省略する。
【0072】
図16は、本実施形態における超音波センサの構造を表す上面図である。
図17は、
図16中矢印XVII方向から見た図であり、
図18は、
図16中矢印XVIII方向から見た図である。
【0073】
本実施形態の校正片6は、圧電素子5の上面に沿う一方向(
図16及び
図17中左右方向)に延在する四角柱形状の伝播部7Aと、圧電素子5の上面に沿う他の方向(
図16中上下方向、
図18中左右方向)に延在する四角柱形状の伝播部7Bと、伝播部7A,7Bの間に配置された三角柱形状の伝播方向変化部15と、伝播部7Aの延在方向の一方側(
図16及び
図17中左側)に形成され、圧電素子5に耐熱性接着剤4を介し接続された三角柱形状の伝播方向転換部8Aと、伝播部7Bの延在方向の他方側(
図16中上側、
図18中右側)に形成され、圧電素子5に耐熱性接着剤4を介し接続された三角柱形状の伝播方向転換部8Bとを有している。
【0074】
伝播方向転換部8A,8Bは、圧電素子5の上面に垂直な方向にて傾けられた傾斜面9A,9Bをそれぞれ有し、伝播方向変化部15は、圧電素子5の上面に平行な方向にて傾けられた傾斜面16を有している。そして、
図16~
図18中矢印G1,G2で示すように、圧電素子5から伝播方向転換部8Aに入射された超音波を、傾斜面9Aで反射して伝播部7Aへ出射し、伝播部7Aから伝播方向変化部15に入射された超音波を、傾斜面16で反射して伝播部7Bへ出射し、伝播部7Bから伝播方向転換部8Bに入射された超音波を、傾斜面9Bで反射して圧電素子5へ出射するようになっている。また、
図11~
図13中矢印G3,G4で示すように、圧電素子5から伝播方向転換部8Bに入射された超音波を、傾斜面9Bで反射して伝播部7Bへ出射し、伝播部7Bから伝播方向変化部15に入射された超音波を、傾斜面16で反射して伝播部7Aへ出射し、伝播部7Aから伝播方向転換部8Aに入射された超音波を、傾斜面9Aで反射して圧電素子5へ出射するようになっている。
【0075】
校正片6の傾斜面9Aと傾斜面16の間及び傾斜面16と傾斜面9Bの間で伝播する超音波として縦波を用いるのであれば、圧電素子5の上面と校正片6の傾斜面9A又は9Bの間の超音波の片道伝播距離をL1とし、校正片6の傾斜面9Aと傾斜面16の間の超音波の片道伝播距離をL8とし、校正片6の傾斜面16と傾斜面9Bの間の超音波の片道伝播距離をL9としたときに、(L8+L9)>H×2×vl/vの条件を満たすことが好ましい。一方、校正片6の傾斜面9Aと傾斜面16の間及び傾斜面16と傾斜面9Bの間で伝播する超音波として横波を用いるのであれば、(L8+L9)>H×2×vs/vの条件を満たすことが好ましい。
【0076】
圧電素子5は、
図17及び
図18中矢印B1,B2で示すように配管20の内面で1回反射された超音波Bと、
図16~
図18中矢印G1~G4で示すように校正片6内を伝播した超音波Gとを受信する。そして、受信した超音波B,Gを波形信号に変換して制御装置2のレシーバ12へ出力する。
【0077】
制御装置2は、第1の実施形態と同様、校正片6内を伝播した超音波Gの伝播時間と校正片6の音速に基づいて時間軸を校正し、配管20内を伝播した超音波Bの伝播時間と配管20の縦波音速vに基づいて配管20の肉厚Hを演算する。そして、算出した配管20の肉厚Hを記憶部14へ出力して記憶させると共に、表示装置3へ出力して表示させる。
【0078】
以上のように構成された本実施形態の作用効果を説明する。本実施形態の校正片6も、第4の実施形態と同様、超音波の伝播方向を圧電素子5の上面に沿う方向に転換する伝播方向転換部8A,8Bを有している。これにより、圧電素子5の上面に垂直な方向における校正片6の高さでなく、圧電素子5の上面に平行な方向における校正片6の長さを大きくして、校正片6内を伝播した超音波Gの受信タイミングを、配管20の内面で1回反射された超音波Bの受信タイミングより遅らせることができる。したがって、超音波センサ1に校正片6を組み込みながら、超音波センサ1の薄型化と配管20の肉厚の計測精度を両立することができる。
【0079】
なお、第3及び第5の実施形態において、校正片6は、2つの伝播部7A,7Bと、伝播部7A,7Bの間に配置された1つの伝播方向変化部15とを有する場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、校正片6は、3つ以上の伝播部と、伝播部の間に配置された2つ以上の伝播方向変化部とを有してもよい。
【符号の説明】
【0080】
1 超音波センサ
2 制御装置
4 耐熱性接着剤(接触媒質)
5 圧電素子
6 校正片
7,7A,7B 伝播部
8,8A,8B 伝播方向転換部
9,9A,9B 傾斜面
10,10A,10B 端面
15 伝播方向変化部
16 傾斜面
20 配管(被検体)