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特許7010782ポリスチレン系樹脂積層発泡シート及び容器
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  • 特許-ポリスチレン系樹脂積層発泡シート及び容器 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】ポリスチレン系樹脂積層発泡シート及び容器
(51)【国際特許分類】
   B32B 5/18 20060101AFI20220203BHJP
   B29C 44/00 20060101ALI20220203BHJP
   B29C 44/24 20060101ALI20220203BHJP
   B29C 48/21 20190101ALI20220203BHJP
   B29C 51/10 20060101ALI20220203BHJP
   B65D 1/00 20060101ALI20220203BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
B32B5/18 101
B29C44/00 E
B29C44/24
B29C48/21
B29C51/10
B65D1/00 111
B65D1/00 120
B65D65/40 D
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018137020
(22)【出願日】2018-07-20
(65)【公開番号】P2020011495
(43)【公開日】2020-01-23
【審査請求日】2021-03-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000131810
【氏名又は名称】株式会社ジェイエスピー
(74)【代理人】
【識別番号】100109601
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 邦則
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 良成
(72)【発明者】
【氏名】岩本 晃
【審査官】増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-100459(JP,A)
【文献】特開平11-42747(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B29C 48/18
B29C 48/32
B29C 48/89
B29C 44/00
B29C 51/10
B65D 1/00
B65D 65/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリスチレン系樹脂発泡層と、
該発泡層の一方の面に共押出により積層接着されているポリスチレン系樹脂層Aと、
該発泡層の他方の面に積層接着されている熱可塑性樹脂フィルムBとを有するポリスチレン系樹脂積層発泡シートであり、
該ポリスチレン系樹脂積層発泡シートの全体見掛け密度が0.05~0.14g/cmであり、全体坪量が100~200g/mであり、平均厚みが0.5~3.0mmであり、
該ポリスチレン系樹脂層Aの坪量が3~18g/mであり、
該熱可塑性樹脂フィルムBの坪量が14g/m以上であり、
該ポリスチレン系樹脂発泡層の押出方向に対して垂直な断面における、該発泡層と該ポリスチレン系樹脂層Aとの界面から厚み方向に50μmまでの部分に存在する気泡についての気泡1個あたりの断面積の平均値(AAS)が7000μm/個以上であることを特徴とする、ポリスチレン系樹脂積層発泡シート。
【請求項2】
前記積層発泡シートにおける、前記熱可塑性樹脂フィルムBの表面から厚み方向に200μmまでの部分である、表層部Bの見掛け密度が0.20g/cm以上であることを特徴とする、請求項1に記載のポリスチレン系樹脂積層発泡シート。
【請求項3】
前記ポリスチレン系樹脂発泡層の押出方向に対して垂直な断面における、該発泡層全体の気泡についての気泡1個あたりの断面積の平均値(A)が20000~60000μm/個であり、該断面積の平均値Aに対する、前記断面積の平均値AASの比(AAS/A)が0.3以上0.5以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載のポリスチレン系樹脂積層発泡シート。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂フィルムBが、前記ポリスチレン系樹脂発泡層に熱ラミネーションにより積層接着されていることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリスチレン系樹脂積層発泡シート。
【請求項5】
前記ポリスチレン系樹脂発泡層の押出方向に対して垂直な断面における、該発泡層と前記熱可塑性樹脂フィルムBとの界面から厚み方向に50μmまでの部分に存在する気泡についての気泡1個あたりの断面積の平均値(ABS)が4000μm/個以上7000μm/個未満であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリスチレン系樹脂積層発泡シート。
【請求項6】
前記ポリスチレン系樹脂発泡層の押出方向に対して垂直な断面における、該発泡層全体の気泡についての気泡1個あたりの断面積の平均値(A)が20000~60000μm/個であり、該断面積の平均値Aに対する、前記断面積の平均値ABSの比(ABS/A)が0.1以上0.3未満であることを特徴とする、請求項5に記載のポリスチレン系樹脂積層発泡シート。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のポリスチレン系樹脂積層発泡シートを熱成形してなる容器であり、該容器の外側に前記ポリスチレン系樹脂層Aが位置することを特徴とする、容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリスチレン系樹脂積層発泡シート、及び該発泡シートの熱成形により得られた容器に関し、詳しくは、軽量であるにもかかわらず、容器開口部を水平方向に圧縮した場合の強度が大きいと共に、水平方向に圧縮した場合に破壊するまでのたわみ量が大きい容器を熱成形可能なポリスチレン系樹脂積層発泡シート、及び該発泡シートの熱成形により得られた容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリスチレン系樹脂発泡シートにポリエチレン系樹脂フィルム等が積層接着されたポリスチレン系樹脂積層発泡シートを熱成形することにより得られる成形体は、トレーや弁当箱などの食品容器としてスーパーマーケットやコンビニエンスストアなどで汎用されている。
【0003】
容器の低価格化の観点から、このような容器を熱成形するための積層発泡シートの坪量は小さいことが好ましい。しかし、坪量の小さい積層発泡シートから得られる軽量な熱成形容器は機械的強度(特にコシ強度)が低下しやすい。そのため、従来においては、例えば、発泡シートの押出時において、ダイから押出された直後の発泡体に冷却エアーを吹き付け、発泡シートの表層部の密度を高くすることにより、得られる容器の機械的強度を向上させることが行われてきた。
【0004】
例えば、特許文献1には、厚みが1.0~2.0mm、全体密度が0.06~0.11g/cmの範囲内であるポリスチレン系樹脂発泡シートにおいて、サーキュラーダイより押出された後の円筒状シートに冷却エアーを吹き付けて発泡シートの表層の密度を高め、表層の密度を0.10~0.15g/cmの範囲内、表層の平均気泡径を20~60μmの範囲とすることにより、軽量でありながら、天地圧縮強度や突刺し強度の要求性能を満たす容器を成形可能なポリスチレン系樹脂発泡シートが得られることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-209449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、引用文献1などの従来技術における発泡シートや積層発泡シートには、熱成形により得られた容器の開口部を水平方向に圧縮した場合に割れ易い傾向があった。
例えば、積層発泡シートの熱成形により得られた容器は、自動包装機等によりシュリンクフィルムで包装される場合がある。詳しくは、食品製造会社が食品を製造し、得られた食品を自動包装機による容器への包装(以下、単に自動包装ともいう。)を行って最終的な商品とし、この商品を小売店等に出荷する、アウトパックの販売形態が広く行われている。この自動包装を行う際、包装後のフィルムの張り状態を強くし、容器の見栄えをよくするために、容器の開口部を水平方向に一定量圧縮した状態で、容器をフィルムで包装することが行われる。しかしながら、特許文献1で開示されているような発泡シートを熱成形してなる容器を自動包装により包装すると、開口部を一定量圧縮する際の変形に容器が耐え切れず、割れてしまうことがあった。
【0007】
本発明は、前記従来技術の問題点に鑑みなされたものであって、軽量であるにもかかわらず、容器の開口部を水平方向に圧縮する際の圧縮強度が大きい共に、圧縮破壊するまでのたわみ量が大きい容器を熱成形可能なポリスチレン系樹脂積層発泡シートを得ることを、その課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、次に示すポリスチレン系樹脂積層発泡シート、該ポリスチレン系樹脂積層発泡シートの熱成形によって得られる容器が提供される。
〔1〕 ポリスチレン系樹脂発泡層と、
該発泡層の一方の面に共押出により積層接着されているポリスチレン系樹脂層Aと、
該発泡層の他方の面に積層接着されている熱可塑性樹脂フィルムBとを有するポリスチレン系樹脂積層発泡シートであり、
該ポリスチレン系樹脂積層発泡シートの全体見掛け密度が0.05~0.14g/cmであり、全体坪量が100~200g/mであり、平均厚みが0.5~3.0mmであり、
該ポリスチレン系樹脂層Aの坪量が3~18g/mであり、
該熱可塑性樹脂フィルムBの坪量が14g/m以上であり、
該ポリスチレン系樹脂発泡層の押出方向に対して垂直な断面における、該発泡層と該ポリスチレン系樹脂層Aとの界面から厚み方向に50μmまでの部分に存在する気泡についての気泡1個あたりの断面積の平均値(AAS)が7000μm/個以上であることを特徴とする、ポリスチレン系樹脂積層発泡シート。
〔2〕 前記積層発泡シートにおける、前記熱可塑性樹脂フィルムBの表面から厚み方向に200μmまでの部分である、表層部Bの見掛け密度が0.20g/cm以上であることを特徴とする、前記1に記載のポリスチレン系樹脂積層発泡シート。
〔3〕 前記ポリスチレン系樹脂発泡層の押出方向に対して垂直な断面における、該発泡層全体の気泡についての気泡1個あたりの断面積の平均値(A)が20000~60000)μm/個であり、該断面積の平均値Aに対する、前記断面積の平均値AASの比(AAS/A)が0.3以上0.5以下であることを特徴とする、前記1または2に記載のポリスチレン系樹脂積層発泡シート。
〔4〕 前記熱可塑性樹脂フィルムBが、前記ポリスチレン系樹脂発泡層に熱ラミネーションにより積層接着されていることを特徴とする、前記1~3のいずれか一項に記載のポリスチレン系樹脂積層発泡シート。
〔5〕 前記ポリスチレン系樹脂発泡層の押出方向に対して垂直な断面における、該発泡層と前記熱可塑性樹脂フィルムBとの界面から厚み方向に50μmまでの部分に存在する気泡についての気泡1個あたりの断面積の平均値(ABS)が、4000μm/個以上7000μm/個未満であることを特徴とする、前記1~4のいずれか一項に記載のポリスチレン系樹脂積層発泡シート。
〔6〕 前記ポリスチレン系樹脂発泡層の押出方向に対して垂直な断面における、該発泡層全体の気泡についての気泡1個あたりの断面積の平均値(A)が、20000~60000μm/個であり、該断面積の平均値Aに対する、前記断面積の平均値ABSの比(ABS/A)が0.1以上0.3未満であることを特徴とする、前記5に記載のポリスチレン系樹脂積層発泡シート。
〔7〕 前記1~6のいずれか一項に記載のポリスチレン系樹脂積層発泡シートを熱成形してなる容器であり、該容器の外側に前記ポリスチレン系樹脂層Aが位置することを特徴とする、容器。
【発明の効果】
【0009】
本発明のポリスチレン系樹脂積層発泡シートは、ポリスチレン系樹脂発泡層と、該発泡層の一方の面に共押出により積層接着されているポリスチレン系樹脂層Aと、該発泡層の他方の面に積層接着されている熱可塑性樹脂フィルムBとを有するポリスチレン系樹脂積層発泡シートであり、ポリスチレン系樹脂層A、該熱可塑性樹脂フィルムBを特定の坪量とし、ポリスチレン系樹脂発泡層の押出方向に対して垂直な断面における、該発泡層とポリスチレン系樹脂層Aとの界面から厚み方向に50μmまでの部分に存在する気泡についての気泡1個あたりの断面積の平均値(A)が特定値以上であることにより、軽量であるにもかかわらず、容器の開口部を水平方向に圧縮した際に座屈するまでの強度(以下、容器水平方向における圧縮強度ともいう。)が高いと共に、容器の開口部を水平方向に圧縮した際に座屈するまでのたわみ量(以下、容器水平方向における圧縮破壊時のたわみ量ともいう。)が大きい容器を熱成形により得ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1(a)は、容器の開口部を横方向に圧縮する座屈試験の様子を側面から見た説明図である。図1(b)は、容器の開口部を横方向に圧縮する座屈試験の様子を正面から見た説明図である。
図2図2は、実施例1で得られた積層発泡シートについて作成した線画を表す図面である。
図3図3は、比較例1で得られた積層発泡シートについて作成した線画を表す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のポリスチレン系樹脂積層発泡シートについて詳細に説明する。
本発明のポリスチレン系樹脂積層発泡シート(以下、積層発泡シートともいう。)は、ポリスチレン系樹脂発泡層(以下、単に発泡層ともいう。)と、該発泡層の一方の面に共押出により積層接着されているポリスチレン系樹脂層A(以下、単に樹脂層Aともいう。)と、該発泡層の他方の面に積層接着されている熱可塑性樹脂フィルムB(以下、単にフィルムBともいう。)とを有するものである。
【0012】
ポリスチレン系樹脂発泡層を構成する基材樹脂はポリスチレン系樹脂である。該ポリスチレン系樹脂は、スチレン系単量体成分単位を50重量%以上含む樹脂を意味し、例えば、ポリスチレン、ゴム変性ポリスチレン(耐衝撃性ポリスチレン)、スチレン-αメチルスチレン共重合体、スチレン-pメチルスチレン共重合体、スチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体、スチレン-メタクリル酸メチル共重合体、スチレン-メタクリル酸エチル共重合体、スチレン-アクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリル酸エチル共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、ポリスチレンとポリフェニレンエーテルとの混合物等が挙げられる。なお、ポリスチレン系樹脂には、ジビニルベンゼンや多分岐状マクロモノマーなどの多官能モノマー成分単位が含まれていても良い。
【0013】
また、該発泡層を構成する基材樹脂は、これらのポリスチレン系樹脂の2種以上の混合物、またはこれらのポリスチレン系樹脂と他の成分との混合物であってもよい。他の成分としては、プロピレン単独重合体、エチレン-プロピレン共重合体等のポリプロピレン系樹脂、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン等のポリエチレン系樹脂、スチレン-共役ジエンブロック共重合体やその水添物等の熱可塑性エラストマー、エチレン-プロピレンゴム、ブタジエンゴム等のゴム等が挙げられる。
【0014】
発泡層を構成するポリスチレン系樹脂のメルトフローレイト(MFR)は0.1~5g/10分が好ましく、より好ましくは1~2g/10分である。該MFRがこの範囲内であることにより、独立気泡構造を有し、機械的強度に優れる発泡シートを広い製造条件範囲に亘って製造することができる。
なお、本明細書におけるメルトフローレイトは、JIS K 7210(1999)の試験方法A法により測定されるメルトマスフローレイトを意味し、試験温度200℃、荷重5kgの条件を採用する。
【0015】
ポリスチレン系樹脂層Aを構成する基材樹脂はポリスチレン系樹脂である。該ポリスチレン系樹脂としては、前記発泡層を構成するポリスチレン系樹脂と同じものが挙げられる。
その中でも、ポリスチレンとスチレン-共役ジエンブロック共重合体やその水添物等の熱可塑性エラストマーとの混合物や、耐衝撃性ポリスチレンを用いることが好ましい。これらの樹脂は押出温度域における溶融粘度が低く、発泡適性温度での共押出が容易となり、発泡層の樹脂層A側の表層近傍の気泡を十分に成長させることができるので、所望される気泡構造を有する発泡層を形成しやすくなる。加えて、樹脂層Aが柔軟なので、得られる積層発泡シートの樹脂層A側の表面が柔軟となる。その結果、熱成形により得られる容器の、容器水平方向における圧縮破壊時のたわみ量を大きくすることができる。
【0016】
樹脂層Aとして、ポリスチレンと熱可塑性エラストマーとの混合物を用いる場合、基材樹脂中の熱可塑性エラストマーの含有量は、概ね10~50重量%であることが好ましく、より好ましくは20~40重量%である。
【0017】
所望される気泡構造を有する発泡層を形成しやすくなる観点から、ポリスチレン系樹脂層Aを構成するポリスチレン系樹脂のメルトフローレイト(MFR)は5~30g/10分であることが好ましく、より好ましくは7~20g/10分である。
【0018】
前記樹脂層Aの坪量は3~18g/mである。該坪量が小さすぎると、共押出により発泡層に樹脂層Aを積層する際に、樹脂層Aを構成する溶融樹脂の熱量が小さすぎて、押出発泡時に発泡層の樹脂層A側の表層近傍の気泡を十分に成長させることができなくなり、得られる容器の容器水平方向における圧縮破壊時のたわみ量が小さくなるおそれがある。一方、該坪量が大きすぎると、共押出により発泡層に樹脂層Aを積層する際に、樹脂層Aを形成する溶融樹脂の熱量が大きすぎて、押出発泡時に発泡層の表層近傍の気泡が破泡し易くなることや、得られる発泡シートの表面状態が悪化しやすくなることにより、良好な積層発泡シートが得られなくなるおそれがある。かかる観点から、フィルムAの坪量は5~15g/mであることが好ましい。
【0019】
本発明の積層発泡シートにおいては、発泡層の他方の面(前記一方の面とは反対側の面)に熱可塑性樹脂フィルムB(以下、単にフィルムBともいう。)が積層接着されている。
該フィルムBを構成する基材樹脂としては、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂等、ポリスチレン等のポリスチレン系樹脂が挙げられる。また、これらの樹脂を用いたフィルムが複数枚積層された多層フィルムを用いることもできる。
【0020】
前記フィルムBの坪量は14g/m以上である。該フィルムBの坪量がこの範囲であれば、得られる容器の容器水平方向における圧縮破壊強度を高めることができる。かかる観点から、該坪量は15g/m以上であることが好ましく、より好ましくは16g/m以上である。該坪量の上限は、概ね50g/mであることが好ましく、より好ましくは40g/m、更に好ましくは30g/mである。
【0021】
なお、一般的には、発泡層の両面に樹脂層AやフィルムBなどを積層すると強度が向上するので、発泡層の坪量を小さくしても発泡シートの強度を高めることができる。しかし、前記したように、容器の開口部を一定量圧縮した場合に容器が割れやすくなるという問題は、従来の発泡層の両面に樹脂層やフィルムを積層接着する方法では、解決することができなかった。
この問題は、次に説明するように、発泡層の表面近傍の気泡構造を調整することにより初めて解決することができた。
【0022】
本発明における発泡層は、その表面近傍において特徴的な気泡構造を有するものである。次に、該気泡構造について、発泡層と樹脂層Aとの界面から厚み方向に50μmまでの部分に存在する気泡構造、発泡層の全体の気泡構造、発泡層とフィルムBとの界面から厚み方向に50μmまでの部分に存在する気泡構造の順で説明する。
本発明においては、発泡層の押出方向に対して垂直な断面(TD断面)における、発泡層とポリスチレン系樹脂層Aとの界面(以下、界面Aともいう。)から厚み方向に50μmまでの部分に存在する気泡についての気泡1個あたりの断面積の平均値(AAS)が、7000μm/個以上である。該平均値(AAS)が小さすぎると、得られる容器の容器水平方向における圧縮破壊時のたわみ量が小さくなるおそれがある。
かかる観点から、該平均値(AAS)は、8000μm/個以上であることが好ましく、より好ましくは9000μm/個以上であり、さらに好ましくは10000μm/個以上である。
一方、該平均値(AAS)は、概ね14000μm/個以下であることが好ましく、より好ましくは13000μm/個以下である。該平均値(AAS)が、この範囲内であれば、得られる容器の樹脂層A側の外観が良好になる。
【0023】
以上説明したように、該平均値(AAS)を7000μm/個以上とする構成を採用することにより、容器開口部を水平方向に圧縮した場合に、容器が圧縮により破壊するまでのたわみ量が大きくなり、前記自動包装を問題なく行うことができるようになった。
【0024】
本発明の積層発泡シートにおいては、前記発泡層の押出方向に対して垂直な断面(TD断面)における、発泡層の全体の気泡についての気泡1個あたりの断面積の平均値(A)が20000~60000μm/個であることが好ましい。該平均値(A)がこの範囲内であれば、積層発泡シートは熱成形性に優れるものとなり、熱成形により得られる容器は、軽量であるにもかかわらず、機械的強度に優れるものとなる。かかる観点から、該平均値(A)の下限は、22000μm/個であることがより好ましく、更に好ましくは24000μm/個、特に好ましくは26000μm/個である。また、該平均値(A)の上限は、50000μm/個であることがより好ましく、更に好ましくは45000μm/個、特に好ましくは40000μm/個である。
【0025】
また、前記平均値Aに対する、前記平均値AASの比(AAS/A)は概ね0.3以上0.5以下であることが好ましく、より好ましくは0.3以上0.4以下である。該比(AAS/A)がこの範囲内であれば、得られる容器は、水平方向における圧縮破壊時のたわみ量が大きいと共に、外観がより良好なものとなる。
【0026】
また、発泡層の押出方向に対して垂直な断面(TD断面)における、発泡層と熱可塑性樹脂フィルムBとの界面(以下、界面Bともいう。)から厚み方向に50μmまでの部分に存在する気泡についての気泡1個あたりの断面積の平均値(ABS)は、4000μm/個以上8000μm/個以下であることが好ましく、より好ましくは4000μm/個以上7000μm/個未満であり、さらに好ましくは5000μm/個以上7000μm/個未満である。該断面積の平均値(ABS)がこの範囲内であれば、得られる容器の機械的物性を高めることができる。
同様な観点から、前記断面積の平均値Aに対する、断面積の平均値ABSの比(ABS/A)は、0.1以上0.3未満であることが好ましく、より好ましくは0.2以上0.3未満である。
【0027】
前記平均値(AAS)は、次のようにして求める。
まず、積層発泡シートを発泡層の押出方向に対して垂直に切断し、積層発泡シートの発泡層の押出方向に対して垂直な断面(TD断面)を切り出す。得られたTD断面の拡大写真を撮影し、拡大写真に基づいた気泡構造(気泡膜)の線画をCADソフトを用いて作成する。線画の一例を図2に示す。なお、図2においては、樹脂層A、フィルムBは図示省略しており、図中、最も下側に位置する曲線が界面A、最も上側に位置する曲線が界面Bである。
得られた線画上に、積層発泡シートの発泡層と樹脂層Aとの界面Aに沿うように、界面Aの両端を結ぶ直線a1を引くと共に、界面Aから厚み方向に50μm離れた位置に、直線a1に平行する直線a2を引き、且つ厚み方向に平行すると共に、発泡層幅方向に所定の間隔を有する二本の直線c1、c2を引き、前記線画から四本の直線a1、a2、c1、c2で定まる枠で囲まれた部分を切り出す。切り出された部分から積層シートの厚み方向と平行する直線c1、c2と交わる気泡を除いた領域を抽出する。抽出した領域内に存在する気泡を測定対象として定める。なお、直線a1、a2と交わる気泡は測定対象とする。即ち、測定対象として定められた気泡に、該枠内より外に出ている部分がある場合、外に出ている部分も断面積測定の対象となる。
このように定められた領域における各気泡について気泡全体の断面積を測定し、さらに該気泡の数を測定する。
このようにして測定された気泡が占める断面積を、気泡の数で除することで、界面Aから厚み方向に50μmまでの部分に存在する気泡についての気泡1個あたりの断面積を算出する。上記測定を無作為に選択された積層発泡シートの20箇所以上に対して行い、各測定において算出された気泡1個あたりの断面積の算術平均値を、発泡層の押出方向に対して垂直な断面(TD断面)における、発泡層とポリスチレン系樹脂層Aとの界面Aから厚み方向に50μmまでの部分に存在する気泡についての気泡1個あたりの断面積の平均値(AAS)とする。
【0028】
また、前記平均値(ABS)は、次のようにして求める。
前記平均値(AAS)の測定と同様に線画を作成し、得られた線画上に、発泡層とフィルムBとの界面Bに沿うように、界面Bの両端を結ぶ直線b1を引くと共に、界面Bから厚み方向に50μm離れた位置に、直線b1に平行する直線b2を引き、且つ厚み方向に並行すると共に所定の間隔を有する二本の直線c1、c2を引き、前記線画から四本の直線b1、b2、c1、c2で定まる枠で囲まれた部分を切り出す。切り出された部分から積層シートの厚み方向と平行する直線c1、c2と交わる気泡を除いた領域を抽出する。抽出した領域内に存在する気泡を測定対象として定める。なお、直線b1、b2と交わる気泡は測定対象とする。即ち、測定対象として定められた気泡に、該枠内より外に出ている部分がある場合、外に出ている部分も断面積測定の対象となる。
このように定められた領域における気泡全体の断面積を測定し、さらに該気泡の数を測定する。このようにして測定された気泡が占める面積を、気泡の数で除することで、界面Bから厚み方向に50μmまでの部分に存在する気泡についての気泡1個あたりの断面積を算出する。上記測定を無作為に選択された積層発泡シートの20箇所以上に対して行い、各測定において算出された気泡1個あたりの断面積の算術平均値を、発泡層の押出方向に対して垂直な断面(TD断面)における、発泡層と樹脂層Bとの界面Bから厚み方向に50μmまでの部分に存在する気泡についての気泡1個あたりの断面積の平均値(ABS)とする。
【0029】
また、前記平均値(A)は次のようにして求める。
前記平均値(AAS)の測定と同様に線画を作成し、得られた線画上に、厚み方向に平行すると共に所定の間隔を有する二本の直線を引き、線画から界面A、界面B、二本の直線で定まる枠で囲まれた部分を切り出す。切り出された部分から積層シートの厚み方向と平行する直線と交わる気泡を除いた領域を抽出する。抽出した領域における、全気泡が占める断面積と、気泡の数を測定し、全気泡が占める面積を気泡の数で除することで、発泡層の押出方向に対して垂直な断面における、気泡1個あたりの断面積を算出する。
上記測定を無作為に選択された積層発泡シートの10箇所以上に対して行い、各測定において算出された気泡1個あたりの断面積の算術平均値を、平均値(A)とする。
【0030】
なお、線画の作成においては、CADソフト等によるベクトルデータでの処理を行い、描画される線の太さが測定される気泡の面積に影響を及ぼさない方式を採用するものとする。
【0031】
次に、本発明の積層発泡シートの一般的な各種物性について説明する。
本発明の積層発泡シートにおいては、前記フィルムBの表面から厚み方向に200μmまでの部分である表層部Bの見掛け密度が、0.20g/cm以上であることが好ましく、より好ましくは0.22g/cm以上である。表層部Bの見掛け密度を前記範囲とすることで、得られる容器の容器水平方向における圧縮強度をより高めることができる。
なお、軽量性や熱成形性の観点から、上記表層部Bの見掛け密度は、概ね0.32g/cm未満であることが好ましく、より好ましくは0.30g/cm以下である。
【0032】
前記表層部Bの見掛け密度の測定は次のように行なう。
積層発泡シートを、フィルムBの表面から厚み方向に200μmまでスライスし、所定寸法の試験片を切り出すと共に、該試験片の重量を測定する。試験片の重量を試験片の体積で割算し、単位換算することで表層密度を求める。
【0033】
該積層発泡シートの全体坪量は100~200g/mである。該全体坪量が、この範囲内であれば、軽量な積層発泡シートとなり、得られる容器の軽量化が達成できる。かかる観点から、該全体坪量は、110~180g/mであることが好ましく、より好ましくは120~170g/mである。
【0034】
積層発泡シートの全体坪量の測定は、次のように行う。
積層発泡シートから所定寸法(例えば、800mm×100mm)の試験片を切り出して該試験片の重量を測定し、試験片の重量を試験片の寸法から求めた面積で割算し、単位換算することにより求める。
樹脂層Aの坪量は、積層発泡シートの全体坪量と、押出時の発泡層と樹脂層Aとの吐出量の比とから求めることができる。
フィルムBの坪量は、積層発泡シートのからフィルムBを切り分けて該フィルムBの重量を測定し、フィルムBの重量をフィルムBの寸法から求めた面積で割算することにより求めることができる。
【0035】
本発明の積層発泡シートの平均厚みは0.5~3.0mmである。該厚みが小さすぎると、得られる容器の機械的強度が低下するおそれがある。該厚みが大きすぎると、積層発泡シートの熱成形性が低下するおそれがある。前記観点から、積層発泡シートの平均厚みは0.5~2.5mmであることが好ましく、より好ましくは0.5~2.3mmである。
【0036】
該積層発泡シートの全体見掛け密度は0.05~0.14g/cmである。該全体見掛け密度が小さすぎると、得られる容器の機械的強度が低下するおそれがある。該全体見掛け密度が大きすぎると、容器の軽量性が失われるおそれがある。かかる観点から、該全体見掛け密度は、0.06~0.13g/cmであることが好ましく、より好ましくは0.06~0.12g/cmである。
【0037】
積層発泡シートの平均厚みの測定は、次のように行う。
まず、積層発泡シートから、押出方向と直交する幅方向(TD)の長さで、押出方向(MD)の長さが所定寸法(例えば、100mm)の帯状体を切り出し、さらに帯状体の長手方向の両端部を切除し、積層発泡シートの幅方向中央部の部分を試験片として切り出す。
この試験片をさらに幅方向に10等分し、切り出した試験片それぞれの中央付近の厚みをマイクロメータにより測定し、各試験片における厚みを算術平均した値を積層発泡シートの平均厚みとする。
【0038】
該全体見掛け密度の測定は、次のように行う。積層発泡シートから所定寸法の試験片(例えば、800mm×100mm×積層発泡シートの厚み)を切り出して該試験片の重量(g)を測定し、試験片の重量を試験片の寸法から求めた面積で除し、単位換算することで坪量(g/m)を求める。次いで、求められた試験片の坪量(g/m)を試験片の厚み(mm)で除した値を単位換算し、積層発泡シートの全体見掛け密度(g/cm)とする。
【0039】
次に、本発明の積層発泡シートの製造方法について説明する。
本発明の積層発泡シートは、例えば、次のようにして得ることができる。
発泡層形成用押出機の出口に共押出用ダイが取り付けられ、その共押出用ダイに樹脂層A形成用押出機が連結された装置を用いて、共押出発泡法により、発泡層に樹脂層Aが積層された発泡シートを製造し、得られた発泡シートのフィルムAが積層された面とは反対側の面に、熱ラミネーション等によりフィルムBを積層接着することで、本発明の積層発泡シートを得ることができる。
【0040】
本発明の積層発泡シートにおいては、前記したように、界面Aから厚み方向に50μmまでの部分に存在する気泡についての気泡1個あたりの断面積の平均値(AAS)が7000μm/個以上であることを要する。このような表層近傍に大きな気泡を有する気泡構造は、共押出発泡法を採用することにより形成することができる。即ち、樹脂層A側の表層近傍の気泡が大きい気泡構造を有する発泡シートは、押出時において、発泡層と樹脂層Aとを同時に押出すこと(共押出すること)により、樹脂層Aが積層される発泡層の表層近傍の気泡を、樹脂層Aの熱量により十分に成長させることにより形成することができる。
発泡シートの片面に樹脂層Aを積層接着することにより、このような気泡構造を形成し、さらに他方の面に熱可塑性フィルムBを積層することにより、強度を向上させた積層発泡シートとすることができる。ここに本発明の特徴がある。該積層発泡シートを熱成形して得られる容器は、適度なコシ強度を有すると共に、容器水平方向における圧縮破壊時(座屈時)のたわみ量が大きい容器である。
【0041】
共押出発泡法により積層発泡シートを製造する方法には、共押出用フラットダイを用いて各層形成用の樹脂溶融物を共押出することで積層発泡シートとする方法や、共押出用環状ダイを用いて各層形成用の樹脂溶融物を共押出し、筒状の積層発泡体を得て、次いで該筒状発泡体を切り開くことで積層発泡シートとする方法等がある。これらの中では、共押出用環状ダイを用いる方法が、幅が1000mm以上の幅広の積層発泡シートを容易に製造することができるので、好ましい。
【0042】
以下、前記環状ダイを用いた共押出発泡法により積層発泡シートを製造する場合について詳細に説明する。
まず、発泡層形成用押出機に発泡層形成用のポリスチレン系樹脂と、必要に応じて気泡調整剤等の添加剤を供給して加熱、溶融、混練した後、物理発泡剤を圧入して更に混練し、発泡適正温度に調整して発泡層形成用樹脂溶融物とする。
その一方で、樹脂層A形成用押出機に樹脂層A形成用のポリスチレン系樹脂を供給して加熱、溶融、混練した後、必要に応じて揮発性可塑剤を圧入して更に混練し、押出適正温度に調整して樹脂層A形成用樹脂溶融物とする。
次に、発泡層形成用樹脂溶融物と樹脂層A形成用樹脂溶融物とを、共押出用環状ダイに導入し、発泡層形成用樹脂溶融物に樹脂層A形成用樹脂溶融物を積層した後、該ダイから大気中に筒状に共押出して発泡層形成用樹脂溶融物を発泡させる。この筒状積層発泡体を筒状の冷却装置(以下、マンドレルともいう。)に沿わせて引取りながら冷却しつつ、切り開いてシート状にすることで、発泡層の片面に樹脂層Aが積層接着された積層発泡シートを得ることができる。
【0043】
本発明においては、前記したように、界面Aから厚み方向に50μmまでの部分に存在する気泡についての気泡1個あたりの断面積の平均値(AAS)が、7000μm/個以上となるように押出発泡時に気泡を成長させる必要がある。そのためには、樹脂層Aを構成する樹脂として、ポリスチレンとスチレン-共役ジエンブロック共重合体やその水添物等の熱可塑性エラストマーとの混合物や、耐衝撃性ポリスチレン等、押出温度域における溶融粘度が低い樹脂を用いて共押出を行うことが好ましい。
【0044】
また、共押出ダイから筒状に押出発泡された筒状体は、冷却エアーを吹き付けることにより冷却することが好ましい。この際、冷却エアーの風量の設定は、発泡シート(発泡層)片面に対して概ね1.0~4.0m/mの範囲で行うことが好ましい。このようにすると、積層発泡シートの樹脂層A側の表層近傍の気泡を適度に成長させやすくなる。また、フィルムB積層面側の発泡シートの表層密度や表層近傍の気泡の大きさを所望とする範囲に調整しやすくなる。
【0045】
前記発泡層形成用樹脂溶融物に添加される物理発泡剤としては、例えば、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ノルマルヘキサン、イソヘキサン等の脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素、塩化メチル、塩化エチル等の塩化炭化水素、1,1,1,2-テトラフロロエタン、1,1-ジフロロエタン等のフッ化炭化水素等の有機系物理発泡剤、窒素、二酸化炭素、空気、水等の無機系物理発泡剤が挙げられる。前記した物理発泡剤は、2種以上を併用することが可能である。これらのうち、良好な発泡シートが得られやすいという観点から有機系物理発泡剤を用いることが好ましく、ノルマルブタン、イソブタン、又はこれらの混合物を用いることがより好ましい。
【0046】
物理発泡剤の添加量は、発泡剤の種類、目的とする見掛け密度に応じて調整される。また気泡調整剤の添加量は、目的とする気泡径に応じて調節される。例えば、発泡剤としてイソブタン30重量%とノルマルブタン70重量%との混合ブタンを用いて前記見掛け密度範囲の積層発泡シートを得る場合、混合ブタンの添加量は、基材樹脂100重量部当たり概ね1~10重量部であることが好ましく、より好ましくは1.5~8重量部であり、さらに好ましくは2~5重量部である。
【0047】
前記発泡層形成用樹脂溶融物に添加される添加剤の主要なものとして、通常、気泡調整剤が添加される。気泡調整剤としては有機系のもの、無機系のもののいずれも使用することができる。無機系気泡調整剤としては、ホウ酸亜鉛、ホウ酸マグネシウム、硼砂等のホウ酸金属塩、塩化ナトリウム、水酸化アルミニウム、タルク、ゼオライト、シリカ、炭酸カルシウム、重炭酸ナトリウム等が挙げられる。また、有機系気泡調整剤としては、リン酸-2,2-メチレンビス(4,6-tert-ブチルフェニル)ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カルシウム、安息香酸アルミニウム、ステアリン酸ナトリウム等が挙げられる。またクエン酸と重炭酸ナトリウム、クエン酸のアルカリ塩と重炭酸ナトリウム等を組み合わせたもの等も気泡調整剤として用いることができる。これらの気泡調整剤は2種以上を混合して用いることもできる。
気泡調整剤の添加量は、基材樹脂100重量部当たり概ね0.01~3重量部であることが好ましく、より好ましくは0.03~1重量部である。
【0048】
共押出発泡時において、樹脂層A形成用樹脂溶融物に揮発性可塑剤を添加することが好ましい。揮発性可塑剤を樹脂溶融物に添加することにより、ポリスチレン系樹脂の溶融粘度を適度に低下させることができるので、特に本発明の狙いとする見掛け密度の積層発泡シートを共押出する際に、樹脂層A形成用樹脂溶融物の押出温度を発泡層形成用樹脂溶融物の押出温度に近づけることができるため有効である。これにより、共押出時に樹脂層Aの熱によって発泡層の表層近傍の気泡が破泡しにくくなると共に、表層近傍の気泡を成長させやすくなるため、外観が良好で、表層近傍の気泡が大きい積層発泡シートを安定して得ることができる。
【0049】
前記揮発性可塑剤としては、例えば、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、シクロブタン、シクロペンタン等の脂肪族炭化水素、塩化メチル、塩化エチル、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、1,1-ジフルオロエタン等のハロゲン化脂肪族炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等の脂肪族アルコール、又はメチルエチルエーテル、ジメチルエーテル等の脂肪族エーテル等から選択される1種、又は2種以上で構成されるものが好ましく用いられる。これらの中でも、ノルマルブタン、イソブタン又はこれらの混合物を主成分とするものを好適に用いることができる。
【0050】
押出成形時の取扱い性がよく、良好な発泡シートを得ることが容易になるという観点から、揮発性可塑剤の沸点は80℃以下であることが好ましく、60℃以下であることがより好ましい。該沸点の下限値は、概ね-50℃である。
揮発性可塑剤は、樹脂層A形成用のポリスチレン系樹脂100重量部に対して概ね2~10重量部添加することが好ましい。
【0051】
樹脂層A形成用樹脂溶融物には、本発明の目的を阻害しない範囲において該溶融物を形成する樹脂に各種の添加剤を添加してもよい。各種の添加剤としては、例えば、酸化防止剤、熱安定剤、耐候剤、紫外線吸収剤、着色剤、充填剤、抗菌剤等が挙げられる。添加剤を使用する場合、その添加量の合計量は、添加剤の目的、効果に応じて適宜定められるが、前記基材樹脂100重量部に対して概ね10重量部以下であることが好ましく、5重量部以下であることがより好ましい。
【0052】
前記共押出環状ダイ、押出機等の製造装置は、従来押出発泡の分野で用いられてきた公知のものを用いることができる。
【0053】
本発明の積層発泡シートは、前記共押出発泡方法により得られた積層発泡シートの樹脂層Aが積層接着された面とは反対側の面に、前記フィルムBを積層接着することにより得ることができる。
フィルムBを積層接着する方法としては、例えば、加熱したロール等により発泡シートとフィルムBとを熱融着させる熱ラミネーション方式、発泡シートに溶融樹脂を介してフィルムBを積層接着する押出ラミネーション方式、また、フィルムBの片面に接着剤をコーティングして発泡シートに積層接着する方式が挙げられる。これらのなかでも、坪量の小さいフィルムBを積層でき、積層発泡シートの全体坪量を小さくできる観点から、熱ラミネーション方式を用いることが好ましい。
【0054】
次に、積層発泡シートの熱成形及び熱成形により得られる、本発明の容器、即ちポリスチレン系樹脂発泡層と、該発泡層の一方の面に積層接着されているポリスチレン系樹脂層Aと、該発泡層の他方の面に積層接着されている熱可塑性樹脂フィルムBとを有する容器について説明する。
本発明の容器は、前記積層発泡シートを従来公知の成形方法によって成形することにより得ることができる。成形方法としては、真空成形、圧空成形や、これらの応用として、フリードローイング成形、プラグ・アンド・リッジ成形、リッジ成形、マッチド・モールド成形、ストレート成形、ドレープ成形、リバースドロー成形、エアスリップ成形、プラグアシスト成形、プラグアシストリバースロード成形等やこれらを組合せた方法等が採用される。
【0055】
該容器の全体見掛け密度は、容器としての機械的強度と軽量性とのバランスに優れているという観点から、0.04~0.13g/cmであることが好ましく、より好ましくは0.05~0.12g/cmであり、0.06~0.10g/cmである。
【0056】
該容器の平均厚みは、容器としての機械的強度と軽量性とのバランスに優れているという観点から、1.0~3.5mmであることが好ましく、より好ましくは1.5~3.0mmである。
【0057】
該容器の全体見掛け密度は次のようにして求めることができる。
まず、発泡容器の、フランジ部や特殊形状の部分以外の平坦な部分から所定寸法の試験片を切り出す。次に、試験片の質量と厚みを測定する。次に、その質量を試験片の面積で除し、単位換算して試験片の坪量を求める。次に、試験片の坪量を試験片の厚みで除し、単位換算することで容器の見掛け密度を求めることができる。
【0058】
容器の平均厚みは次のようにして求める。まず、容器を、容器の底面を通ると共に容器の側面を該底面に対して垂直に立ち上がる線に沿って切断して二等分し(以下、この容器の切断の仕方を、単に「容器を切断して二等分」するという。)、切断した容器の一方の切断面に沿って、一方の縁部から他方の縁部に向かって等間隔に10箇所の容器の厚みを測定し、測定した厚みの算術平均値を容器の平均厚みとする。
なお、容器を二等分する際には、切断された二つの容器の重量が同等になるように容器を切断するものとする。
【0059】
該容器における樹脂層Aの平均厚みは、2~18μmであることが好ましい。該樹脂層Aの平均厚みがこの範囲であれば、容器水平方向における圧縮強度を高めることができる。かかる観点から、該平均厚みは、3~16μmであることが好ましい。
【0060】
該容器における熱可塑性樹脂フィルムBの平均厚みは13μm以上であることが好ましい。該フィルムBの平均厚みがこの範囲であれば、容器水平方向における圧縮強度を高めることができる。かかる観点から、該坪量は14μm以上であることが好ましく、より好ましくは16μm以上、さらに好ましくは18μm以上であるである。該坪量の上限は、概ね45μmであることが好ましく、より好ましくは40μm、さらに好ましくは30μmである。
【0061】
樹脂層AおよびフィルムBの平均厚みは、次のように測定する。
まず、容器を、切断して二等分する。
次に、切断した容器の一方の切断面の拡大写真を、無作為に10箇所以上撮影する。前記のようにして撮影した各拡大写真から樹脂層AあるいはフィルムBの厚みを測定し、これらの算術平均値を容器の樹脂層AあるいはフィルムBの平均厚みとする。なお、前記測定は、容器のなるべく平坦な部分に対して行うものとする。また、容器を二等分する際には、切断された二つの容器の重量が同等になるように容器を切断するものとする。
【0062】
本発明の容器においては、容器を、切断して二等分した断面における、発泡層とポリスチレン系樹脂層Aとの界面(以下、界面A2ともいう。)から厚み方向に50μmまでの部分に存在する気泡についての気泡1個あたりの断面積の平均値(AAS)が、7000μm/個以上である。該平均値(AAS)が小さすぎると、得られる容器の容器水平方向における圧縮破壊時のたわみ量が小さくなるおそれがある。
かかる観点から、該平均値(AAS)は、8000μm/個以上であることが好ましく、より好ましくは9000μm/個以上であり、さらに好ましくは10000μm/個以上である。
一方、該平均値(AAS)は、概ね15000μm/個以下であることが好ましく、より好ましくは14000μm/個以下であり、さらに好ましくは13000μm/個以下である。該平均値(AAS)がこの範囲内であれば、容器の樹脂層A側の外観を良好にすることができる。
【0063】
容器を切断して二等分した断面における、発泡層全体の気泡についての気泡1個あたりの断面積の平均値(A)は20000~60000μm/個であることが好ましい。該平均値(A)がこの範囲内であれば、軽量であると共に、機械的強度が良好な容器となる。かかる観点から、該平均値(A)は、より好ましくは25000~50000μm/個であり、さらに好ましくは30000~45000μm/個である。
【0064】
また、前記平均値Aに対する、前記平均値(AAS)の比(AAS/A)は、概ね0.3以上0.5以下であることが好ましく、より好ましくは0.3以上0.4以下である。該比(AAS/A)がこの範囲内であれば、容器水平方向における圧縮破壊時のたわみ量が大きくなり、外観も良好な容器となる。
【0065】
また、容器を切断して二等分した断面における、発泡層と熱可塑性樹脂フィルムBとの界面(以下、界面B2ともいう。) から厚み方向に50μmまでの部分に存在する気泡についての気泡1個あたりの断面積の平均値(ABS)は、4000μm/個以上8000μm/個以下であることが好ましく、より好ましくは5000μm/個以上7000μm/個未満である。該平均値(ABS)がこの範囲内であれば、容器の機械的物性を大きくすることができる。
【0066】
同様な観点から、前記断面積の平均値Aに対する、前記断面積の平均値ABSの比(ABS/A)は概ね0.1以上0.3未満であり、より好ましくは0.1以上0.2以下である。
【0067】
なお、容器における、界面A2から厚み方向に50μmまでの部分に存在する気泡についての気泡1個あたりの断面積の平均値(AAS)、界面B2から厚み方向に50μmまでの部分に存在する気泡についての気泡1個あたりの断面積の平均値(ABS)、発泡層の全体における平均値(A)は、前記積層発泡シートにおける、各断面積の平均値の測定と同様な方法で求めることができる。
なお、容器における各断面積の平均値(AAS)、(ABS)、(A)の測定箇所は、次のように定める。容器を、切断して二等分し、切り分けた容器の一方の切断面に沿って、一方の縁部から他方の縁部に向かって、等間隔に20箇所測定を行うこととする。また、容器を二等分する際には、切断された二つの容器の重量が同等になるように容器を切断するものとする。
【0068】
本発明の容器は、前記のような気泡構造を有すると共に、その一方の面には樹脂層Aが他方の面にはフィルムBが積層されているので、適度なコシ強度を有し、容器水平方向における圧縮破壊時のたわみ量が大きい容器である。
【0069】
本発明の容器においては、容器の外側に前記ポリスチレン系樹脂層Aが位置する。即ち、熱成形の際に、樹脂層Aが容器外側に位置するように熱成形されている。
樹脂層Aが容器外側に位置していると、前記容器水平方向における圧縮強度(座屈強度)が高く、圧縮破壊時(座屈時)のたわみ量が大きいという効果をより顕著に発現させることができる。この理由としては、以下のようなことが考えられる。
【0070】
樹脂層Aを容器外側に位置させた場合、容器が前記界面A近傍の特徴的な気泡構造を有することにより、容器の開口部に水平方向の圧縮荷重が加わった際に、樹脂層A側の表層近傍の気泡が柔軟に変形しやすくなる。そのため、容器に圧縮荷重が加わった際、容器のたわみ変形に対して、容器外側(容器の界面A近傍の発泡層)が伸びることができる。これにより、特に容器の底部と側壁部との境付近における、容器内側(容器の界面B近傍の発泡層)に生じる圧縮応力の急激な増加を抑制することができ、容器水平方向における圧縮破壊時のたわみ量が大きくなると考えられる。
【0071】
本発明の積層発泡シートを用いて成形される容器としては、トレー、丼状、コップ形状、納豆容器などが挙げられる。容器の形状は特に限定されず、例えば、角形、円形、楕円形、半円形、扇形などの種々の形状が挙げられる。
【実施例
【0072】
以下、実施例、比較例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。但し、本発明は実施例により限定されるものではない。
【0073】
発泡層の形成に、次のポリスチレン系樹脂を使用した。
(1)「PSジャパン」製ポリスチレン「GX154」(MFR:1.5g/10min)
【0074】
物理発泡剤及び揮発性可塑剤として、ノルマルブタン70重量%とイソブタン30重量%とからなる混合ブタンを用いた。
【0075】
気泡調整剤として、タルク(松村産業株式会社製商品名「ハイフィラー#12」)を35重量%含む気泡調整剤マスターバッチを用いた。
【0076】
実施例、比較例においてポリスチレン系樹脂フィルムAの形成に使用した、ポリスチレン系樹脂、熱可塑性樹脂エラストマーを次に示す。
(1)略称「PS1」:PSジャパン(株)製ポリスチレン「679」(MFR:18g/10min)
(2)略称「PS2」:PSジャパン(株)製耐衝撃性ポリスチレン「408」(MFR:7g/10min)
(3)略称「PS3」:旭化成ケミカルズ(株)製スチレン・ブタジエンブロック共重合体「フレックス835」(MFR:5g/10min)
前記MFRは、JIS K7210-1999に基づき、条件H(200℃、荷重5kg)で測定された値である。
【0077】
発泡層形成用の押出機として、直径115mmの第一押出機と直径180mm第二押出機からなるタンデム押出機を用い、樹脂層A形成用の押出機として直径65mm、L/D=50の第三押出機を用いた。更に、共押出用環状ダイに、第二押出機と第三押出機の夫々の出口を連結し、夫々の樹脂溶融物を共押出用環状ダイ内で積層可能にした。
【0078】
実施例1~5
前記発泡層形成用のポリスチレン系樹脂と、該ポリスチレン系樹脂100重量部に対して1.2重量部の気泡調整剤マスターバッチとを第一押出機の原料投入口に供給し、加熱、溶融、混練し、約200℃の樹脂溶融物とした。次に、該樹脂溶融物に、4.7重量部の混合ブタンを圧入し、次いで前記第一押出機の下流側に連結された第二押出機に樹脂溶融物を移送した。次に、押出樹脂温度を148℃に調節して発泡層形成用樹脂溶融物とし、該発泡層形成用樹脂溶融物を吐出量328kg/hrで前記の共押出用環状ダイに導入した。
【0079】
一方、表1に示す種類のポリスチレン系樹脂等を第三押出機に供給して加熱、溶融、混練し、揮発性可塑剤として混合ブタンをポリスチレン系樹脂100重量部に対して4.0重量部圧入し、樹脂溶融物とした。その後、該樹脂溶融物を更に混練し、押出樹脂温度を169℃に調節して樹脂層A形成用樹脂溶融物とした。次に、該樹脂層A形成用樹脂溶融物を吐出量17kg/hrで共押出用環状ダイに導入した。
【0080】
共押出用環状ダイ内で発泡層形成用樹脂溶融物の外側に、樹脂層A形成用樹脂溶融物を積層し、溶融物の積層体をリップ径180mmのダイから大気中に押出した。押出された樹脂層A/発泡層からなる2層構成の筒状積層発泡体を拡幅(ブローアップ比:3.7)し、マンドレルに沿わせて表1に示す引取り速度で引き取り、切開くことで、発泡層の片面(マンドレル面に沿って引取られた面とは反対側の面)に樹脂層Aが積層接着された積層発泡シートを得た。
【0081】
なお、共押出用環状ダイから押出された直後の筒状積層発泡体の外側(樹脂層A積層側)に風量2.5m/min(20℃)で冷却エアー(外エアー)を吹付けると共に、筒状積層発泡体の内側(樹脂層A非積層側)に風量3.2m/min(30℃)で冷却エアーを吹付けることで、積層発泡シートを冷却した。
【0082】
次に、得られた発泡シートを25℃の温度下で30日間養生した後、発泡シートの樹脂層Aが積層接着されている面とは反対側の面に、表3に示す坪量のポリスチレンフィルム(大石産業製、無延伸インフレーションフィルム)を200℃に温調した加熱ロールにて20m/minの速度で熱融着することで積層し、積層発泡シートを得た。
なお、実施例5においては、得られた積層発泡シートの樹脂層A側に、さらに坪量21g/mのポリスチレンフィルムを熱ラミネーションにより積層接着した。
【0083】
比較例1
樹脂層Aを積層しないこと以外は、実施例1と同様にして、発泡層(単層の発泡シート)を押出した。得られた発泡シートを25℃の温度で30日間養生した後、得られた発泡シートのマンドレル面に沿って引取られた面に、表2に示す坪量のポリスチレン系樹脂フィルムBを熱ラミネーションにより積層接着して積層発泡シートを得た。次に、得られた積層発泡シートのフィルムBが積層接着されている面とは反対側の面に、表2に示す坪量の無延伸ポリスチレン系樹脂フィルム(CPSフィルム:樹脂層Aに相当)を熱ラミネーションにより積層接着して、両面にフィルムが積層された積層発泡シートを得た。
なお、熱ラミネーションは、実施例1におけるポリスチレンフィルムの熱ラミネーションの条件と同様にして行った。
【0084】
比較例2
樹脂層Aを積層しないこと以外は実施例1と同様にして、発泡層(単層の発泡シート)を押出した。得られた発泡シートを25℃の温度で30日間養生した後、得られた発泡シートのマンドレル面に沿って引取られた面に、表3に示す坪量の無延伸ポリスチレン系樹脂フィルムBを熱ラミネーションにより積層接着して、フィルムBのみが積層接着された積層発泡シートを得た。
【0085】
比較例3
樹脂層Aの坪量を20g/mにした以外は実施例1と同様にして、樹脂層Aが積層接着された積層発泡シートを押出した。得られた発泡シートを25℃の温度で30日間養生した後、発泡シートの樹脂層Aが積層接着されている面とは反対側の面に、表3に示す坪量の無延伸ポリスチレン系樹脂フィルムBを熱ラミネーションにより積層接着して、フィルムBのみが積層接着された積層発泡シートを得た。
【0086】
比較例4
フィルムBを積層しないこと以外は実施例1と同様にして、樹脂層Aのみが積層接着された積層発泡シートを得た。
【0087】
次に、実施例1~5、比較例1~4で得られた積層発泡シートを25℃の温度で3日間養生した後、浅野研究所製の成形機(品番 FKS-0631-10)を用いてマッチモールド真空成形により、容器の外側に樹脂層Aが位置するようにして熱成形し、フランジ部を有する上面視正方形状の容器(食品トレー)を得た。該容器の外形寸法は、容器の長辺×短辺(上面視)が18cm×18cm、容器の高さが3cm、容器の厚み(成形後の積層発泡シートの厚み)が2.8mmである。なお、加熱条件はヒータ温度330℃、加熱時間8秒±1秒の条件とした。
【0088】
得られた積層発泡シートの諸物性を表2、得られた容器の諸物性を表3に示した。
なお、比較例3においては、樹脂層A側の表面状態が悪く、外観が良好な積層発泡シートを得ることができなかった。また、比較例3においては、フィルムBを熱ラミネーションに積層した際に、樹脂層A側の発泡層がつぶれ、気泡構造が悪化した。そのため、比較例3の積層発泡シートでは、外観が良好な容器が得られなかった。
【0089】
【表1】
【0090】
【表2】
【0091】
【表3】
【0092】
積層発泡シートの平均厚みの測定は、次のように行った。
まず、積層発泡シートから、押出方向と直交する幅方向(TD)の長さで、押出方向(MD)の長さが100mmの帯状体を切り出し、さらに帯状体の長手方向の両端部を25mmずつ切除し、積層発泡シートの幅方向中央部800mmの部分を試験片として切り出した。
この試験片をさらに幅方向に10等分し、切り出した試験片それぞれの中央付近の厚みをマイクロメータにより測定した。各試験片における厚みを算術平均した値を積層発泡シートの厚みとした。
【0093】
積層発泡シートの全体坪量の測定、樹脂層Aの坪量は、次のように行った。
前記厚みの測定において、切り出した試験片の質量を測定し、その質量を試験片の面積(具体的には、800mm×100mm)で除し、g/mに単位換算して求めた。
【0094】
また、樹脂層Aの坪量は、樹脂層Aが積層接着された発泡シートの坪量を、発泡層と樹脂層Aとの吐出量の比で配分することにより求めた。
【0095】
積層発泡シートの全体見掛け密度は、前記したように積層発泡シートの全体坪量を積層発泡シートの厚みで割算し、単位換算することにより求めた。
【0096】
前記表層部Bの見掛け密度は、具体的には、次のように測定した。
積層発泡シートのフィルムBの表面(比較例4においては、樹脂層Aとは反対側の発泡シートの表面)から厚み方向に200μmまでの部分をスライスし、長さ(シートの押出方向)20mm×幅(シートの幅方向)5mmの試験片に切り揃え、得られた試験片の質量を測定し、厚みをゲージにより測定した。試験片の質量を試験片の体積(幅×長さ×厚み)で除し、単位換算して試験片の見掛け密度を求めた。上記測定を、積層発泡シートの幅方向にわたって等間隔に10箇所に対して行い、それらの算術平均値を、表層部Bの見掛け密度とした。
【0097】
界面Aから厚み方向に50μmまでの部分に存在する気泡の断面積の平均値(AAS)は、前記方法により、測定した。
なお、TD断面の拡大写真(倍率:100~200倍)は、キーエンス製「VHX-6000(レンズ:VH-Z20R)」を用いて撮影し、「CADソフト:JwCAD」を用いて拡大写真に基づいた気泡構造(気泡膜)の線画を作成した。線画の例として、実施例1で得られた積層発泡シートについて作成した線画を図2に、比較例1で得られた積層発泡シートについて作成した線画を図3に示す。なお、図2、3においては、樹脂層A、フィルムBを図示省略している。
次に、該線画上に界面Aに沿うように、界面Aの両端を結ぶ直線a1を引き、さらに界面Aから厚み方向に50μm離れた位置に、直線a1に平行する直線a2を引き、さらに厚み方向に平行すると共に、実寸で2.0mmの間隔を有する二本の直線c1、c2を引き、線画から四本の直線a1、a2、c1、c2で定まる枠で囲まれた部分を切り出し、前記したように測定対象を特定し、さらに前記したように気泡が占める断面積と気泡の数を測定し、該断面積を該気泡の数で除し、界面Aから厚み方向に50μmまでの部分に存在する気泡についての気泡1個あたりの断面積を算出した。さらに、前記したように、
この測定を無作為に選択された積層発泡シートの20箇所に対して行い、得られた各測定値の算術平均値を、平均値(AAS)とした。
なお、比較例2においては、発泡層のフィルムBが積層された面とは反対側の面の表面(界面Aに相当)から厚み方向に50μmまでの部分に存在する気泡について、同様な方法で測定対象を定めた。
【0098】
界面Bから厚み方向に50μmまでの部分に存在する気泡の断面積の平均値(ABS)は、前記平均値(AAS)の測定と同様に、測定対象を特定し、特定された気泡が占める面積と、該気泡の数を測定し、平均値(ABS)を求めた。なお、比較例4においては、樹脂層Aが積層された発泡層の面とは反対側の面(界面Bに相当)から厚み方向に50μmまでの部分に存在する気泡について、測定を行った。
【0099】
積層発泡シート全体の気泡の断面積の平均値(A)は、キーエンス製「VHX-6000(レンズ:VH-Z20R)」を用いて、前記したように、TD断面の拡大写真(倍率:100~200倍)を撮影し、「CADソフト:JwCAD」を用いて、前記したように、気泡1個あたりの断面積を算出し、この測定を、無作為に選択された積層発泡シートの10箇所に対して行い、各測定において算出された測定値の平均値を平均値(A)とした。
なお、線画における発泡シートの幅方向の長さは、実寸で2.0mmとなるようにした。
【0100】
容器の平均厚みは、前記のように測定した。
【0101】
容器の全体見掛け密度は、前記のようにして求めた。なお、測定試料は、発泡容器の、フランジ部や特殊形状の部分以外の平坦な部分から「50mm×50mm×容器厚み」の試験片を切り出したものを用いた。
【0102】
容器における樹脂層AおよびフィルムBの平均厚みは、前記のように測定した。
【0103】
容器における、前記平均値(AAS)、前記平均値(ABS)、前記平均値(A)は、前記のように測定した。
【0104】
容器水平方向における圧縮強度、及び圧縮破壊時のたわみ量は「ORIENTEC製 TENSILON 万能試験機 RTG-1310」を用いて、次のようにして測定した。
図1に示すように、容器1を上側ジグ2と下側ジグ3とで初期荷重0.2Nとなるように挟み、容器水平方向(容器の高さ方向に対して垂直な方向)に圧縮できるように、容器を測定装置に取り付けた。初期荷重0.2N、圧縮速度500mm/minで容器を容器水平方向に圧縮し、容器が座屈するまでの圧縮による変位に対する容器の圧縮強度の変化を測定した。この測定において、容器が座屈した時点での変位を圧縮破壊時のたわみ量、容器が座屈した時点での強度を圧縮強度とした。また、変位が10mmとなった時点での容器の圧縮強度を10mm圧縮強度とした。
なお、上記測定においては、容器を構成する積層発泡シートの押出方向に対して、容器を圧縮する方向が垂直になるようにして容器を取り付けた。また、上記測定はN=5で行い、これらの算術平均値を採用した。
【0105】
上記測定において、次の基準を全て満たす場合を合格とした。
10mm圧縮強度:5.5N以上
容器水平方向における圧縮強度:16N以上
容器水平方向における圧縮破壊時のたわみ量:30mm以上
なお、10mm圧縮強度が5.5N以上であると、コシ強度に優れた容器となる。
【符号の説明】
【0106】
1 容器
2 上側ジグ
3 下側ジグ



図1
図2
図3