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特許7010787アルカリ電池用ハイドロゲル、それを含むゲル状電解質及びアルカリ電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】アルカリ電池用ハイドロゲル、それを含むゲル状電解質及びアルカリ電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/26 20060101AFI20220119BHJP
   C08L 33/26 20060101ALI20220119BHJP
   C08F 220/58 20060101ALI20220119BHJP
   C08K 3/10 20180101ALI20220119BHJP
【FI】
H01M10/26
C08L33/26
C08F220/58
C08K3/10
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018142805
(22)【出願日】2018-07-30
(65)【公開番号】P2020021572
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2020-10-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100065248
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(72)【発明者】
【氏名】▲芥▼ 諒
(72)【発明者】
【氏名】岡本 光一朗
【審査官】近藤 政克
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-081714(JP,A)
【文献】特開2017-061668(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/26
C08L 33/26
C08F 220/58
C08K 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子マトリックスと水とを含むハイドロゲルであり、
前記高分子マトリックスが、カルボキシル基と1個のエチレン性不飽和基を有する任意成分としての単官能性モノマーAと、スルホン基とリン酸基とから選択される少なくとも1つの基と1個のエチレン性不飽和基を有する単官能性モノマーBと、2~6個のエチレン性不飽和基を有する多官能性モノマーとの共重合体とを含み、
前記共重合体中のカルボキシル基のモル数(Ma)と、スルホン基及びリン酸基の合計のモル数(Mb)のモル比(Ma/Mb)が0~8.0であり、
前記ハイドロゲルは、その100質量部中に、高分子マトリックスを2~80質量部、水を20~98質量部含み、
前記ハイドロゲルが、それを25℃の温度下1.5MのLiOHと10MのLiClとを含む水溶液に1週間浸漬した場合、70~800%の膨潤度を示すことを特徴とするアルカリ電池用ハイドロゲル。
【請求項2】
前記ハイドロゲルが、それを25℃の温度下1.5MのLiOHと10MのLiClとを含む水溶液に1週間浸漬した場合、20N/cm2以下の30%圧縮応力を示す請求項1に記載のアルカリ電池用ハイドロゲル。
【請求項3】
前記ハイドロゲルが、それを25℃の温度下1.5MのLiOHと10MのLiClとを含む水溶液に1週間浸漬した場合、周波数100kHzにおけるインピーダンスとして、20Ω以下の値を示す請求項1または2に記載のアルカリ電池用ハイドロゲル。
【請求項4】
前記共重合体が、前記単官能性モノマーAに由来する成分と単官能性モノマーBに由来する成分の合計100mol%に対して、前記単官能性モノマーAに由来する成分を0~85mol%及び単官能性モノマーBに由来する成分を15~100mol%含む請求項1~のいずれか1つに記載のアルカリ電池用ハイドロゲル。
【請求項5】
請求項1~のいずれか1つに記載のハイドロゲルと、前記ハイドロゲルに含ませた電解質成分とを含むゲル状電解質。
【請求項6】
請求項1~のいずれか1つに記載のハイドロゲル又は請求項に記載ゲル状電解質を含むアルカリ電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ電池用ハイドロゲル、それを含むゲル状電解質及びアルカリ電池に関する。更に詳しくは、本発明は、濃厚な水系電解質の環境下でも使用可能なハイドロゲル、それを含むゲル状電解質及びアルカリ電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の環境問題を背景に、再生可能エネルギーの活用、ガソリン車から電気自動車への移行やスマートグリッドの活用の流れが加速しており、そのような動きに伴い高エネルギー密度を示す蓄電池(二次電池)の重要性が高まっている。
空気中の酸素を正極活物質として利用する金属空気電池は、電池内に正極活物質を充填する必要がなく、負極活物質を多く充填できる。そのため、金属空気電池は、非常に高いエネルギー密度を有する次世代二次電池として注目されている。金属空気電池として、リチウム空気電池、亜鉛空気電池、アルミニウム空気電池、鉄空気電池、マグネシウム空気電池等が知られている。
しかしながら、金属空気電池では、正極から電解液が蒸散するため電池内が乾燥しやすいことや、電解液として使用する強アルカリ溶液が漏液すること等が問題となっている。
従来のアルカリ二次電池の分野では、イオン伝導性を保ちながら乾燥や液漏れを防止するために、ゲル化した電解質を電池用材料として使用する検討が行われていた。例えば、特開2005-322635号公報(特許文献1)には、ポリビニルアルコールとアニオン性架橋共重合体とからなる重合体組成物に、水酸化アルカリを含有させてなるアルカリ電池用高分子ハイドロゲル電解質が記載されている。また、特開2017-179328号公報(特許文献2)には、ポリアクリル酸系ポリマーの架橋体から構成されるシート状のハイドロゲルが開示されている。
また、リチウムを使用する金属空気電池では、リチウムイオン伝導性固体電解質はアルカリ耐性が低いため、電解液のpHを下げることが望まれている。そこで、特開2012-33490号公報(特許文献3)では、高濃度のリチウムハライドを含む水系電解質を用いることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-322635号公報
【文献】特開2017-179328号公報
【文献】特開2012-33490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1及び2に記載されたハイドロゲルは、特許文献3のような濃厚な水系電解質の環境下では、それを構成するポリマーに結合する官能基の電離が弱まることでポリマーの析出が起こり、保水性の低下とそれに伴う柔軟性の低下や硬化とが生じるため、電池の組立てを困難にしたり、電解質の抵抗増大による電池特性の低下をもたらすといった課題があった。そのため、濃厚な水系電解質の環境下でも使用可能なハイドロゲルを提供することが望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の発明者等は、鋭意検討した結果、ハイドロゲルを構成する高分子マトリックスに含まれる共重合体に、特にスルホン基及び/又はリン酸基を特定量導入することで共重合体の析出を防止し、濃厚な水系電解質の環境下でも使用可能なハイドロゲルを提供できることを見い出し、本発明に至った。
かくして本発明によれば、高分子マトリックスと水とを含むハイドロゲルであり、
前記高分子マトリックスが、カルボキシル基と1個のエチレン性不飽和基を有する任意成分としての単官能性モノマーAと、スルホン基とリン酸基とから選択される少なくとも1つの基と1個のエチレン性不飽和基を有する単官能性モノマーBと、2~6個のエチレン性不飽和基を有する多官能性モノマーとの共重合体とを含み、
前記共重合体中のカルボキシル基のモル数(Ma)と、スルホン基及びリン酸基の合計のモル数(Mb)のモル比(Ma/Mb)が0~8.0であり、
前記ハイドロゲルは、その100質量部中に、高分子マトリックスを2~80質量部、水を20~98質量部含み、
前記ハイドロゲルが、それを25℃の温度下1.5MのLiOHと10MのLiClとを含む水溶液に1週間浸漬した場合、70~800%の膨潤度を示すことを特徴とするアルカリ電池用ハイドロゲルが提供される。
【0006】
更に、本発明によれば、上記ハイドロゲルと、前記ハイドロゲルに含ませた電解質成分とを含むゲル状電解質が提供される。
また、本発明によれば、上記ハイドロゲル又は上記ゲル状電解質を含むアルカリ電池が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ハイドロゲルを構成する高分子マトリックスに含まれる共重合体に、特にスルホン基及び/又はリン酸基を特定量導入することで、ハイドロゲル内に多量の電解質を含有させた環境下(濃厚な水系電解質の環境下)でも、共重合体の析出を防止することにより、柔軟性を保持したハイドロゲルを提供できる。本発明のハイドロゲルは、濃厚な水系電解質の環境下でも柔軟性を保持していることから、アルカリ電池の電極や固体電解質に対して良好な密着性を示すため、界面抵抗を低減できる。
【0008】
また、本発明によれば、以下の構成を有する場合、濃厚な水系電解質の環境下でも、より高い柔軟性を有するハイドロゲルを提供できる。
(1)ハイドロゲルが、それを25℃の温度下1.5MのLiOHと10MのLiClとを含む水溶液に1週間浸漬した場合、70~800%の膨潤度を示す。
(2)ハイドロゲルが、それを25℃の温度下1.5MのLiOHと10MのLiClとを含む水溶液に1週間浸漬した場合、20N/cm以下の30%圧縮応力を示す。
(3)ハイドロゲルが、それを25℃の温度下1.5MのLiOHと10MのLiClとを含む水溶液に1週間浸漬した場合、周波数100kHzにおけるインピーダンスとして、20Ω以下の値を示す。
(4)共重合体が、単官能性モノマーAに由来する成分と単官能性モノマーBに由来する成分の合計100mol%に対して、単官能性モノマーAに由来する成分を0~85mol%及び単官能性モノマーBに由来する成分を15~100mol%含む。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(ハイドロゲル)
ハイドロゲルは、それを25℃の温度下1.5MのLiOHと10MのLiClとを含む水溶液に1週間浸漬した場合、70~800%の膨潤度を示すことが好ましい。膨潤度が70%未満の場合、ハイドロゲルの固形分量が大きくなり、柔軟性の低下や、場合によっては硬化を起こすことがある。800%より大きい場合、膨潤後のハイドロゲルの強度が低いために、取り扱い時にハイドロゲルが破壊されることがある。膨潤度は、70~600%であることがより好ましく、70~500%であることが更に好ましく、更に好ましくは、70~450%であることが好ましい。
ハイドロゲルが、それを25℃の温度下1.5MのLiOHと10MのLiClとを含む水溶液に1週間浸漬した場合、20N/cm以下の30%圧縮応力を示すことが好ましい。30%圧縮応力が20N/cmより大きい場合、ハイドロゲルが硬化していることを意味し、電池を組んだ場合に電極との密着性が低下し、抵抗が増加することがある。30%圧縮応力は、15N/cm以下であることがより好ましく、10N/cm以下であることが更に好ましい。30%圧縮応力の下限は、0.05N/cmであることが好ましい。
ハイドロゲルが、それを25℃の温度下1.5MのLiOHと10MのLiClとを含む水溶液に1週間浸漬した場合、周波数100kHzにおけるインピーダンスとして、20Ω以下の値を示すことが好ましい。交流抵抗の値が20Ωより大きい場合、電解質の抵抗増大によって電池特性の低下をもたらすことがある。交流抵抗の値は、15Ω以下であることがより好ましく、10Ω以下であることが更に好ましい。交流抵抗の値の下限は、0.05Ωであることが好ましい。
ハイドロゲルが、それを25℃の温度下1.5MのLiOHと10MのLiClとを含む水溶液に1週間浸漬した場合、周波数1kHzにおけるインピーダンスとして、20Ω以下の値を示すことが好ましい。交流抵抗の値が20Ωより大きい場合、電解質の抵抗増大によって電池特性の低下をもたらすことがある。交流抵抗の値は、15Ω以下であることがより好ましく、10Ω以下であることが更に好ましい。交流抵抗の値の下限は、0.05Ωであることが好ましい。ハイドロゲルが、それを25℃の温度下1.5MのLiOHと10MのLiClとを含む水溶液に1週間浸漬した場合、周波数100kHzにおけるインピーダンスとして、20Ω以下の値を示すことが好ましい。交流抵抗の値が20Ωより大きい場合、電解質の抵抗増大によって電池特性の低下をもたらすことがある。交流抵抗の値は、15Ω以下であることがより好ましく、10Ω以下であることが更に好ましい。交流抵抗の値の下限は、0.05Ωであることが好ましい。
【0010】
ハイドロゲルは、高分子マトリックスと水とを含む。
(1)高分子マトリックス
高分子マトリックスは、カルボキシル基と1個のエチレン性不飽和基を有する任意成分としての単官能性モノマーAと、スルホン基とリン酸基とから選択される少なくとも1つの基と1個のエチレン性不飽和基を有する単官能性モノマーBと、2~6個のエチレン性不飽和基を有する多官能性モノマーとの共重合体を含む。この共重合体は各種モノマーを重合し架橋することで形成できる。
高分子マトリックスは、ハイドロゲル100質量部中に2~80質量部含まれる。含有量が2質量部未満の場合、ハイドロゲルの強度が低くなり、シート形状を保てなくなることがある。80質量部より多いと、イオンの移動が阻害されてしてしまうため、イオン抵抗が高くなることがある。含有量は、5~70質量部であることが好ましく、10~60質量部であることがより好ましい。
また、高分子マトリックス中の共重合体の含有量は、45質量部以上であることが好ましく、55質量部以上であることがより好ましい。高分子マトリックスは、共重合体のみから構成されていてもよい。
【0011】
(a)共重合体
共重合体は、カルボキシル基と1個のエチレン性不飽和基を有する任意成分としての単官能性モノマーAと、スルホン基とリン酸基とから選択される少なくとも1つの基と1個のエチレン性不飽和基を有する単官能性モノマーBと、2~6個のエチレン性不飽和基を有する多官能性モノマーから構成される。共重合体中のカルボキシル基のモル数(Ma)と、スルホン基及びリン酸基の合計のモル数(Mb)のモル比(Ma/Mb)は、0~8.0であることが好ましい。電離度の高いスルホン基及び/又はリン酸基を共重合体中に所定量導入することによって、高濃度電解液中に浸漬したときのイオン性官能基の電離が安定し、保水性を維持できる。モル比が8.0より大きい場合は、濃厚電解質を含浸させた際、ハイドロゲルを構成するポリマーマトリックスが析出し、ハイドロゲルの柔軟性や保水性が低下することがある。モル比は、0~6.0であることが好ましく、0~5.0であることがより好ましく、0~4.0であることがより好ましく、0~3.0であることが更に好ましい。Ma/Mbは、0、1.0、2.0、3.0、4.0、5.0、6.0、7.0、8.0を取り得る。
単官能性モノマーAは任意成分であるが、共重合体は、単官能性モノマーAを含んでいることが好ましい。
なお、共重合体は、単官能性モノマーと多官能性モノマーに由来する成分からなるが、共重合体製造時の各モノマーの使用量と、共重合体中の各成分の含有量とは、ほぼ同じである。共重合体中の官能基のモル数は、単官能性モノマーと多官能性モノマーの配合量から算出できる。また、共重合体中の多官能性モノマー由来の重合体の含有量は、熱分解GC及び/又はIRにより測定できる。
【0012】
(a-1)単官能性モノマーA
単官能性モノマーAは、カルボキシル基と1個のエチレン性不飽和基を有する限り、特に限定されない。ここでカルボキシル基には、塩の形態で単官能性モノマーA中に存在する場合も含まれる。更に、単官能性モノマーAは、塩の形態でないモノマーと塩の形態のモノマーとの混合物であってもよい。
例えば、単官能性モノマーAは、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ナトリウム、(メタ)アクリル酸カリウム、(メタ)アクリル酸リチウム、ビニル安息香酸、ビニル安息香酸ナトリウム、ビニル安息香酸カリウム、ビニル安息香酸リチウム、ビニル酢酸、ビニル酢酸ナトリウム、ビニル酢酸カリウム、ビニル酢酸リチウム等が挙げられる。
【0013】
(a-2)単官能性モノマーB
単官能性モノマーBは、スルホン基とリン酸基とから選択される少なくとも1つの基と1個のエチレン性不飽和基を有する限り、特に限定されない。ここでスルホン基及びリン酸基には、塩の形態で単官能性モノマーB中に存在する場合も含まれる。更に、単官能性モノマーBは、塩の形態でないモノマーと塩の形態のモノマーとの混合物であってもよい。
例えば、単官能性モノマーBは、
ビニルスルホン酸、ビニルスルホン酸ナトリウム、ビニルスルホン酸カリウム、ビニルスルホン酸リチウム、p-スチレンスルホン酸、p-スチレンスルホン酸ナトリウム、p-スチレンスルホン酸カリウム、p-スチレンスルホン酸リチウム、アリルスルホン酸、アリルスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸カリウム、アリルスルホン酸リチウム、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸ナトリウム、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸カリウム、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸リチウム等のスルホン基含有モノマー、
ビニルホスホン酸、ビニルホスホン酸ナトリウム、ビニルホスホン酸カリウム、ビニルホスホン酸リチウム、ジエチルビニルホスホネート、ジメチルビニルホスホネート、フェニルビニルホスホン酸、フェニルビニルホスホン酸ナトリウム、フェニルビニルホスホン酸カリウム、フェニルビニルホスホン酸リチウム等のリン酸基含有モノマー
が挙げられる。電離度の高いスルホン基及び/又はリン酸基を共重合体中に導入することによって、高濃度電解液中に浸漬したときのイオン性官能基の電離が安定し、保水性を維持できる。電離のしやすさは酸解離定数(pKa)によって判断することもできる。
【0014】
(a-3)単官能性モノマーAに由来する成分と単官能性モノマーBに由来する成分との含有割合
共重合体は、単官能性モノマーAに由来する成分と単官能性モノマーBに由来する成分の合計100mol%に対して、単官能性モノマーAに由来する成分を0~85mol%及び単官能性モノマーBに由来する成分を15~100mol%含むことが好ましい。これら範囲内で両成分を共重合体中に含むことで、濃厚な水系電解質の環境下でも使用可能なハイドロゲルを提供できる。
単官能性モノマーAに由来する成分の含有量は、0mol%、5mol%、10mol%、20mol%、30mol%、40mol%、50mol%、60mol%、70mol%、75mol%、80mol%、85mol%を取り得る。
【0015】
(a-4)多官能性モノマー
多官能性モノマーは、2~6個のエチレン性不飽和基を有する限り、特に限定されない。耐アルカリ性の観点から、エステル結合を保有しないことが好ましい。例えば、多官能性モノマーとしては、ジビニルベンゼン、ジビニルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ジビニルビフェニル、ジビニルスルホン、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル、ジメチルジアリルアンモニウムクロリド、N,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N’-エチレンレンビス(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。より優れたアルカリ耐性をもたせるためには多官能性モノマーはアミド結合を有していないことが好ましい。多官能性モノマーは、1種のみであってもよく、複数種の混合物であってもよい。
多官能性モノマー由来の重合体は、共重合体100質量部に対して、0.1~5質量部の割合で含まれる。多官能性モノマー由来の重合体の割合が0.1質量部未満の場合、架橋密度が低くなることがある。5質量部より多い場合、多官能性モノマー由来の重合体が相分離してしまい、架橋構造が不均一なハイドロゲルとなることがある。割合は0.2~4.5質量部であることが好ましく、0.4~4.0質量部であることがより好ましい。
なお、共重合体は、単官能性モノマーと多官能性モノマーに由来する成分からなるが、共重合体製造時の各モノマーの使用量と、共重合体中の各成分の含有量とは、ほぼ同じである。また、共重合体中の多官能性モノマー由来の重合体の含有量は、熱分解GC及び/又はIRにより測定できる。
【0016】
(b)他の重合体
本発明の効果を阻害しない範囲で、上記単官能性モノマーと多官能性モノマーの共重合体以外の他の重合体が、前記共重合体と重合しない形態で高分子マトリックスに含まれていてもよい。他の重合体としては、ポリビニルスルホン酸系重合体やセルロース誘導体等が挙げられる。高分子マトリックス100質量部中に占める他の重合体の割合は、50質量部未満であることが好ましい。
【0017】
(2)水
水は、ハイドロゲル100質量部中に20~98質量部含まれる。含有量が20質量部未満の場合、電解質成分を含有できる量が少なくなり、電池のゲル電解質として使用した場合、インピーダンスが高く、望む電池特性が得られないことがある。98質量部より多いと、ハイドロゲルの強度が低くなることがある。含有量は、30~95質量部であることがより好ましく、40~90質量部であることが更に好ましい。
(3)電解質成分
水には電解質成分が溶解していてもよい。電解質成分を含むハイドロゲルは、ゲル状電解質として使用できる。電解質成分としては、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化カルシウム(Ca(OH))、水酸化バリウム(Ba(OH))、水酸化リチウム(LiOH)、水酸化ルビジウム(RbOH)、水酸化セシウム(CsOH)、フッ化リチウム(LiF)、塩化リチウム(LiCl)、臭化リチウム(LiBr)、ヨウ化リチウム(LiI)、塩化ナトリウム(NaCl)、臭化ナトリウム(NaBr)、塩化カリウム(KCl)、臭化カリウム(KBr)、塩化カルシウム(CaCl)等が挙げられる。電解質成分の溶解量は、水100質量部に対して、70質量部までの量であることが好ましい。溶解量が70質量部より多い場合、電解質濃度が高くなりすぎるため、インピーダンスが高くなることがある。好ましい溶解量は、4~70質量部である。
【0018】
(4)その他の成分
(a)支持材
ハイドロゲルは、織布、不織布、多孔質シート等の支持材を含んでいてもよい。支持材を含むことで、ハイドロゲルの形状を容易に維持できる。支持材の材質としては、セルロース、絹、麻等の天然繊維やポリエステル、ナイロン、レーヨン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン等の合成繊維、それらの混紡が挙げられる。電解質成分を含ませる場合、電解質成分により分解する成分を持たないレーヨン、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成繊維、それらの混紡が好ましい。支持材は、ハイドロゲルの表面、裏面及び中間のいずれに位置していてもよい。
【0019】
(b)保護フィルム
ハイドロゲルは、その表面及び/又は裏面に保護フィルムを備えていてもよい。保護フィルムをセパレーターとして用いる場合は、離型処理されていることが好ましい。表面及び裏面の両方に保護フィルムを備える場合、表裏異なる剥離強度に調製してもよい。また、保護フィルムを支持材として用いる場合は離型処理の必要はない。
保護フィルムとしては、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリウレタン、紙、樹脂フィルム(例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム)をラミネートした紙等からなるフィルムが挙げられる。離型処理としては、熱又は紫外線で架橋、硬化反応させる焼き付け型のシリコーンコーティングが挙げられる。
【0020】
(c)添加剤
ハイドロゲルは、必要に応じて添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、電解質、防腐剤、殺菌剤、防黴剤、防錆剤、酸化防止剤、消泡剤、安定剤、香料、界面活性剤、着色剤、薬効成分(例えば、抗炎症剤、ビタミン剤、美白剤等)、ゲル強度向上剤(例えば、ポリビニルアルコール系重合体、セルロースナノファイバー)等が挙げられる。
【0021】
(ハイドロゲルの製造方法)
ハイドロゲルは、例えば、
(i)水、カルボキシル基と1個のエチレン性不飽和基を有する任意成分としての単官能性モノマーAと、スルホン基とリン酸基とから選択される少なくとも1つの基と1個のエチレン性不飽和基を有する単官能性モノマーBと、2~6個のエチレン性不飽和基を有する多官能性モノマー及び重合開始剤を含むハイドロゲル前駆体を調製する工程(調製工程)
(ii)単官能性モノマー及び多官能性モノマーを重合させることによりハイドロゲルを得る工程(重合工程)
を経ることにより製造できる。
【0022】
(1)成形工程
この工程での重合開始剤には、熱重合開始剤及び光重合開始剤のいずれも使用できる。この内、重合前後での成分の変化の少ない光重合開始剤を使用することが好ましい。光重合開始剤としては、例えば、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン(製品名:Omnirad 1173,BASF・ジャパン社製)、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(製品名:Omnirad 184,BASF・ジャパン社製)、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-プロパン-1-オン(製品名:Omnirad 2959,BASF・ジャパン社製)、2-メチル-1-[(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン(製品名:Omnirad 907,BASF・ジャパン社製)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オン(製品名:Omnirad 369,BASF・ジャパン社製)等が挙げられる。重合開始剤は、1種のみであってもよく、複数種の混合物であってもよい。
【0023】
重合開始剤の使用量は、全モノマー(単官能性モノマー、多官能性モノマー及び任意に他のモノマー)の合計100質量部に対して、0.05~5質量部であることが好ましい。使用量が0.05質量部未満の場合、重合反応が十分に進行せず、得られたハイドロゲル中に、未重合のモノマーが残存することがある。5質量部より多いと、重合反応後の重合開始剤の残物により、臭気を帯びたり、残物の影響により物性が低下したりすることがある。使用量は、0.06~3質量部であることがより好ましく、0.07~1.5質量部であることが更に好ましい。
【0024】
シート状のハイドロゲルを製造する場合、ハイドロゲル前駆体のシート状への成形は、例えば、(i)ハイドロゲル前駆体を型枠に注入する方法、(ii)保護フィルム間にハイドロゲル前駆体を流し込み、一定の厚みに保持する方法、(iii)保護フィルム上にハイドロゲル前駆体をコーティングする方法、等が挙げられる。方法(i)は、任意の形状のハイドロゲルを得ることができる利点がある。方法(ii)及び(iii)は、比較的薄いハイドロゲルを得ることができる利点がある。支持材を含むハイドロゲルは、方法(i)により製造することが適切である。なお、ハイドロゲル前駆体には、上記の他のモノマー、添加剤等が含まれていてもよい。
【0025】
(2)重合工程
ハイドロゲル前駆体中の単官能性モノマー及び多官能性モノマーを熱付与又は光照射により重合させることにより網目構造を得ることができる。熱付与及び光照射の条件は、網目構造を得ることができる限り、特に限定されず、一般的な条件を採用できる。
(3)その他の工程
その他の工程として、電解質成分含有工程が挙げられる。電解質成分含有工程では、重合後のハイドロゲルを電解質成分水溶液に浸漬することで、ハイドロゲル中の水にアルカリ水溶液中の電解質成分が溶解される。この浸漬は、所望する電解質成分量のハイドロゲルを得るための条件下で行われる。例えば、浸漬温度としては、4~80℃の冷却、常温(約25℃)及び加温下で行うことができる。浸漬時間は、常温下では、6~336時間とすることができる。
浸漬後に、ハイドロゲルを乾燥させることで、含水量の調整を行ってもよい。その調整としては、例えば、浸漬前後のハイドロゲルの質量をほぼ同一にすることが挙げられる。
【0026】
(ハイドロゲルの用途)
ハイドロゲルは、アルカリ電池に使用できる。
ここでのアルカリ電池は、正極及び負極間の電解質層及び/又はセパレーターとしてハイドロゲルを使用し得る二次電池である。そのような二次電池としては、ニッケル-水素二次電池、ニッケル-亜鉛二次電池、亜鉛空気電池、リチウム空気電池、アルミニウム空気電池、マグネシウム空気電池、カルシウム空気電池等が挙げられる。これら二次電池は、電解液としてアルカリ水溶液を使用しているため、二次電池からの液漏れをハイドロゲルにより防止できる。
アルカリ電池の構成は、特に限定されず、一般的な構成をいずれも使用できる。例えば、ニッケル-水素二次電池の正極としてはニッケル又はニッケル合金を、負極としては水素吸蔵合金を、ニッケル-亜鉛二次電池の正極としてはニッケル又はニッケル合金を、負極としては亜鉛又は酸化亜鉛を使用できる。正極及び負極は、ニッケル、アルミニウム等からなる集電体上に形成されていてもよい。
ハイドロゲルが、セパレーターである場合、ハイドロゲルは支持材を備えていることが好ましい。
【実施例
【0027】
以下、実施例によって本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら制限されるものではない。まず、実施例で測定する各種物性の測定方法を記載する。
(膨潤度)
ハイドロゲルを5mm×5mm×2mm厚に切り、計量した。その後、250メッシュのポリエチレン製ティーバッグにハイドロゲルを入れ、ティーバッグを100mLの1.5M LiOHと10M LiClとを含む水溶液に浸漬した。その後、25℃の温度下で、1週間後、10分間水切りをしたものを計量し、1.5M LiOHと10M LiClとを含む水溶液に膨潤させたハイドロゲル入りティーバッグを得た。なお、水切り時にハイドロゲルが柔らかくなってメッシュを通り抜ける場合は、「液状化」したと記載した。膨潤度(%)は、1.5M LiOHと10M LiClとを含む水溶液に浸漬したハイドロゲルが入っていないティーバッグの質量をブランクとし、1.5M LiOHと10M LiClとを含む水溶液に膨潤させたハイドロゲル入りティーバッグの質量から、ブランクの質量を減じた値を、膨潤前のハイドロゲルの質量で除して、100を掛けた値として算出した。
【0028】
(電解液浸漬後の折り曲げ試験)
ハイドロゲルを10mm×30mmにカットし、100mLの1.5M LiOHと10M LiClとを含む水溶液に1週間浸漬した。浸漬後のハイドロゲルの長辺側の両端が接するまで折り曲げた。このとき、ハイドロゲルが割れなかったときを○、割れたときを×として評価した。
【0029】
(交流インピーダンス)
ハイドロゲルを20mm×20mm×2mm厚に切り取り、100mLの1.5M LiOHと10M LiClとを含む水溶液に1週間浸漬し、高濃度電解液浸漬後のハイドロゲルとした。高濃度電解液浸漬後のハイドロゲルを2枚のNi板(幅20mm、長さ40mm、厚み1.0mm)で挟み、試験片とした。25℃の温度下で、FRAインピーダンスアナライザー(Autolab社製 PGSTAT)を用いて、交流振幅を10mV(r.m.s.)、測定周波数範囲を100kHzから100Hzとして、2端子法にて試験片の交流インピーダンスを測定した。得られた測定結果から、周波数100kHzにおけるインピーダンスの実数成分(Z’/Ohm)を周波数100kHzにおけるインピーダンスとし、周波数1kHzにおけるインピーダンスの実数成分(Z’/Ohm)を周波数1kHzにおけるインピーダンスとした。
【0030】
(高濃度電解液浸漬後の30%圧縮応力試験)
ハイドロゲルを30mm×30mm×2mm厚に切り取り、100mLの1.5M LiOHと10M LiClとを含む水溶液に1週間浸漬し、高濃度電解液浸漬後のハイドロゲルとした。高濃度電解液浸漬後のハイドロゲルの厚みをダイヤルシクネスゲージ(新潟精機社製 DS-3010S)で5点計測し、その平均値を高濃度電解液浸漬後の厚みとした。圧縮試験の測定装置として、テクスチャーアナライザー(英弘精機社製、TA.XT Plus)を用いた。
25℃の温度下で、直径10mmのステンレス製円柱測定治具を0.1mm/秒の速度で高濃度電解液浸漬後の厚みに対して変形率が30%になるように圧縮を行った。この測定を5つの試験片について行い、最大応力を算出し、これらの平均を平均応力とした。
高濃度電解液浸漬後の30%圧縮強度は以下のように求めた。
高濃度電解液浸漬後の30%圧縮強度 σ=P/A(N/cm
:平均応力の荷重(N)
:円柱測定治具の断面積(=0.5cm×0.5cm×3.14=0.785cm
【0031】
<実施例1>
2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(MCCユニテック社製)20質量部とジビニルベンゼンスルホン酸ナトリウム(東ソー有機化学社製)0.3質量部、イオン交換水79.6質量部を容器に入れ攪拌した。この溶液に重合開始剤としてOmnirad 1173(BASF・ジャパン社製)0.10質量部を加え、攪拌することでハイドロゲル前駆体を調製した。剥離性PETフィルム上に2mm厚のシリコン枠を置き、枠内にハイドロゲル前駆体を流し込んだ後、ハイドロゲル前駆体上に剥離性PETフィルムを載せた。その後、小型UV重合機(JATEC社製、J-cure1500、メタルハライドランプ型名MJ-1500L)にてコンベアー速度0.4m/分、ワーク間距離150mmの条件でエネルギー7000mJ/cmの紫外線を照射する工程を3回行うことで、2mm厚のシート状のハイドロゲルを作製した。作製したハイドロゲルを膨潤度測定、電解液浸漬後折り曲げ試験、高濃度電解液浸漬後の30%圧縮応力試験、交流インピーダンス測定に付した。
【0032】
<実施例2>
2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(MCCユニテック社製)17.5質量部とジビニルベンゼンスルホン酸ナトリウム(東ソー有機化学社製)0.3質量部、イオン交換水79.6質量部を容器に入れ攪拌した。更にアクリル酸(日本触媒社製)2.5質量部を加え、攪拌した。この溶液に重合開始剤としてOmnirad 1173(BASF・ジャパン社製)0.10質量部を加え、攪拌することでハイドロゲル前駆体を調製した。
上記ハイドロゲル前駆体を使用すること以外は実施例1と同様にして2mm厚のシート状のハイドロゲルを作製した。作製したハイドロゲルを膨潤度測定、電解液浸漬後折り曲げ試験、高濃度電解液浸漬後の30%圧縮応力試験、交流インピーダンス測定に付した。
【0033】
<実施例3>
2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(MCCユニテック社製)を15質量部、アクリル酸(日本触媒社製)を5質量部に変更したこと以外は実施例2と同様にして2mm厚のシート状のハイドロゲルを作製した。作製したハイドロゲルを膨潤度測定、電解液浸漬後折り曲げ試験、高濃度電解液浸漬後の30%圧縮応力試験、交流インピーダンス測定に付した。
【0034】
<実施例4>
2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(MCCユニテック社製)を12.5質量部、アクリル酸(日本触媒社製)を7.5質量部に変更したこと以外は実施例2と同様にして2mm厚のシート状のハイドロゲルを作製した。作製したハイドロゲルを膨潤度測定、電解液浸漬後折り曲げ試験、高濃度電解液浸漬後の30%圧縮応力試験、交流インピーダンス測定に付した。
【0035】
<実施例5>
2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(MCCユニテック社製)を10質量部、アクリル酸(日本触媒社製)を10質量部、重合開始剤を0.13質量部、イオン交換水を79.57質量部に変更したこと以外は実施例2と同様にして2mm厚のシート状のハイドロゲルを作製した。作製したハイドロゲルを膨潤度測定、電解液浸漬後折り曲げ試験、高濃度電解液浸漬後の30%圧縮応力試験、交流インピーダンス測定に付した。
【0036】
<実施例6>
2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(MCCユニテック社製)17.5質量部とジビニルベンゼンスルホン酸ナトリウム(東ソー有機化学社製)0.3質量部、イオン交換水79.6質量部を容器に入れ攪拌した。更にビニル安息香酸(4VBA 東ソー有機化学社製)2.5質量部を加え、攪拌した。この溶液に重合開始剤としてOmnirad 1173(BASF・ジャパン社製)0.10質量部を加え、攪拌することでハイドロゲル前駆体を調製した。
上記ハイドロゲル前駆体を使用すること以外は実施例1と同様にして2mm厚のシート状のハイドロゲルを作製した。作製したハイドロゲルを膨潤度測定、電解液浸漬後折り曲げ試験、高濃度電解液浸漬後の30%圧縮応力試験、交流インピーダンス測定に付した。
【0037】
<実施例7>
2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(MCCユニテック社製)を15質量部、ビニル安息香酸(製品名:4VBA、東ソー有機化学社製)を5質量部に変更したこと以外は実施例6と同様にして2mm厚のシート状のハイドロゲルを作製した。作製したハイドロゲルを膨潤度測定、電解液浸漬後折り曲げ試験、高濃度電解液浸漬後の30%圧縮応力試験、交流インピーダンス測定に付した。
【0038】
<実施例8>
2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(MCCユニテック社製)15質量部とジビニルベンゼンスルホン酸ナトリウム(東ソー有機化学社製)0.3質量部、イオン交換水49.6質量部を容器に入れ攪拌した。これとは別にイオン交換水30質量部に水酸化リチウム一水和物(富士フィルム和光純薬社製)3.03質量部を加えた水溶液を調整した。この水溶液を先ほど調整した2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、ジビニルベンゼンスルホン酸ナトリウムとイオン交換水との混合溶液に対して、冷却しながら加えた。更にこの溶液にアクリル酸(日本触媒社製)5質量部を加え、攪拌した。この溶液に重合開始剤としてOmnirad 1173(BASF・ジャパン社製)0.10質量部を加え、攪拌することでハイドロゲル前駆体を調製した。
上記ハイドロゲル前駆体を使用すること以外は実施例1と同様にして2mm厚のシート状のハイドロゲルを作製した。作製したハイドロゲルを膨潤度測定、電解液浸漬後折り曲げ試験、高濃度電解液浸漬後の30%圧縮応力試験、交流インピーダンス測定に付した。
【0039】
<実施例9>
アクリル酸をアクリル酸カリウム(日本触媒社製)に変更したこと以外は実施例3と同様にして2mm厚のシート状のハイドロゲルを作製した。作製したハイドロゲルを膨潤度測定、電解液浸漬後折り曲げ試験、高濃度電解液浸漬後の30%圧縮応力試験、交流インピーダンス測定に付した。
【0040】
<比較例1>
アクリル酸(日本触媒社製)20質量部、ジビニルベンゼンスルホン酸ナトリウム(東ソー有機化学社製)0.3質量部、イオン交換水79.5質量部を容器に入れ攪拌した。この溶液に重合開始剤としてOmnirad 1173(BASF・ジャパン社製)0.2質量部を加え、攪拌することでハイドロゲル前駆体を調製した。
上記ハイドロゲル前駆体を使用すること以外は実施例1と同様にして2mm厚のシート状のハイドロゲルを作製した。作製したハイドロゲルを膨潤度測定、電解液浸漬後折り曲げ試験、高濃度電解液浸漬後の30%圧縮応力試験、交流インピーダンス測定に付した。
【0041】
<比較例2>
2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(MCCユニテック社製)5質量部とジビニルベンゼンスルホン酸ナトリウム(東ソー有機化学社製)0.3質量部、イオン交換水79.53質量部を容器に入れ攪拌した。更にアクリル酸(日本触媒社製)15質量部を加え、攪拌した。この溶液に重合開始剤としてOmnirad 1173(BASF・ジャパン社製)0.17質量部を加え、攪拌することでハイドロゲル前駆体を調製した。
上記ハイドロゲル前駆体を使用すること以外は実施例1と同様にして2mm厚のシート状のハイドロゲルを作製した。作製したハイドロゲルを膨潤度測定、電解液浸漬後折り曲げ試験、高濃度電解液浸漬後の30%圧縮応力試験、交流インピーダンス測定に付した。
【0042】
<比較例3>
2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(MCCユニテック社製)5質量部とジビニルベンゼンスルホン酸ナトリウム(東ソー有機化学社製)0.3質量部、イオン交換水39.57質量部と可塑剤として多価アルコールのグリセリン 40質量部を容器に入れ攪拌した。更にアクリル酸(日本触媒社製)15質量部を加え、攪拌した。この溶液に重合開始剤としてOmnirad 1173(BASF・ジャパン社製)0.17質量部を加え、攪拌することでハイドロゲル前駆体を調製した。
上記ハイドロゲル前駆体を使用すること以外は実施例1と同様にして2mm厚のシート状のハイドロゲルを作製した。作製したハイドロゲルを膨潤度測定、電解液浸漬後折り曲げ試験、高濃度電解液浸漬後の30%圧縮応力試験、交流インピーダンス測定に付した。
【0043】
<比較例4>
2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(MCCユニテック社製)5質量部、アクリル酸(日本触媒社製)15質量部、ジビニルベンゼンスルホン酸ナトリウム(東ソー有機化学社製)0.3質量部、イオン交換水39.5質量部と可塑剤として多価アルコールのポリエチレングリコール300(富士フィルム和光純薬社製)40質量部を容器に入れ攪拌した。この溶液に重合開始剤としてOmnirad 1173(BASF・ジャパン社製)0.17質量部を加え、攪拌することでハイドロゲル前駆体を調製した。
上記ハイドロゲル前駆体を使用すること以外は実施例1と同様にして2mm厚のシート状のハイドロゲルを作製した。作製したハイドロゲルを膨潤度測定、電解液浸漬後折り曲げ試験、高濃度電解液浸漬後の30%圧縮応力試験、交流インピーダンス測定に付した。
実施例及び比較例の結果を表1に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
表1から、共重合体中のカルボキシル基の官能基モル数(Ma)と、スルホン基の官能基モル数(Mb)の官能基モル比(Ma/Mb)が0~8.0であれば、濃厚な水系電解質の環境下でも使用可能なハイドロゲルを提供できることが分かる。