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  • 特許-油圧嵌め用ハブのシール機構 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】油圧嵌め用ハブのシール機構
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/04 20060101AFI20220119BHJP
   F16D 3/79 20060101ALI20220119BHJP
   F16D 3/74 20060101ALI20220119BHJP
   F16D 1/091 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
F16J15/04 Z
F16D3/79 Z
F16D3/74 Z
F16D1/091
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018157312
(22)【出願日】2018-08-24
(65)【公開番号】P2020029940
(43)【公開日】2020-02-27
【審査請求日】2021-02-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000101879
【氏名又は名称】イーグル工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179970
【弁理士】
【氏名又は名称】桐山 大
(74)【代理人】
【識別番号】100071205
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 陽一
(72)【発明者】
【氏名】橋本 広行
(72)【発明者】
【氏名】古川 泰成
(72)【発明者】
【氏名】徳永 雄一郎
【審査官】山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/101937(WO,A1)
【文献】実開昭63-027723(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/00-15/14
F16D 3/79
F16D 3/74
F16D 1/091
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着部材と前記装着部材の外周側に設けられたテーパー面に油圧嵌めするハブとの間に供給する圧油の漏洩を抑制するシール機構であって、
前記ハブの端面に環状の凹部を設けることにより前記凹部の内周側に設けられた環状の凸部を備え、
前記凸部は、その内周面の少なくとも一部に、凸部先端へ向けて内径寸法が徐々に縮小する向きのテーパー部を備え
前記テーパー部は、前記装着部材の軸方向に対する傾斜角度を、前記ハブの内周側のテーパー面の前記軸方向に対する傾斜角度よりも大きく形成している、
ことを特徴とする油圧嵌め用ハブのシール機構。
【請求項2】
請求項1記載のシール機構において、
前記凸部は、その内周面の全長に亙って前記テーパー部を備えることを特徴とする油圧嵌め用ハブのシール機構。
【請求項3】
請求項1記載のシール機構において、
前記凸部は、その軸方向中間位置に折り曲げ部を備え、
前記凸部の根元部から前記折り曲げ部へかけて前記テーパー部が設けられ、
前記折り曲げ部から凸部先端へかけて内径寸法が徐々に拡大する向きの先端テーパー部が設けられていることを特徴とする油圧嵌め用ハブのシール機構。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載のシール機構において、
前記ハブは、ダイアフラムを介してセンターチューブに連結されるダイアフラムカップリング用ハブとして用いられることを特徴とする油圧嵌め用ハブのシール機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装着部材と前記装着部材の外周側に油圧嵌めするハブとの間に供給する圧油の漏洩を抑制する油圧嵌め用ハブのシール機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から例えば図6に示すダイアフラムカップリング1が知られており、このダイアフラムカップリング1は、ハブ11からダイアフラム31を介してセンターチューブ41に連なる、或いは反対にセンターチューブ41からダイアフラム31を介してハブ11に連なる回転トルク伝達経路を備えている。
【0003】
ハブ11は、円筒状を呈するハブ本体12を備え、このハブ本体12の軸方向一方の端部にダイアフラム31を保持するためのフランジ部13が一体に設けられている。
【0004】
また、ハブ11は、その内周側に挿入する出力軸または入力軸等の装着部材51に連結される。
【0005】
装着部材51とハブ11との連結は、いわゆる油圧嵌めにより行われる。
【0006】
すなわち油圧嵌めは、装着部材51とハブ11とを油圧を利用して嵌合するもので、装着部材51とハブ11とを嵌合するとき、またはハブ11から装着部材51を引き抜くときに、装着部材51とハブ11との嵌合面に圧油を供給してハブ11を拡径させることにより、嵌合および引き抜きを可能としている。
【0007】
このため、装着部材51の外周面にテーパー面54が設けられるとともに対応してハブ11の内周面にテーパー面14が設けられている。また装着部材51の内部に圧油の供給路55が設けられ、供給路55は装着部材51の外周面に開口している。したがって供給路55から装着部材51とハブ11との嵌合面に圧油を供給すると(矢印A)、ハブ11が油圧で拡径するので、装着部材51とハブ11とを嵌合することが可能とされ、またハブ11から装着部材51を引き抜くことが可能とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2010-185525公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら上記油圧嵌め構造によると、装着部材51とハブ11との間に供給する圧油が両部品11,51間の軸方向端部から漏洩することがあり(矢印B)、圧油が多量に漏洩すると、ハブ11の拡径量が不足して油圧嵌めが円滑に行われなかったり、或いは漏洩した圧油がダイアフラム31等の周辺部品を汚損したりすることが懸念される。
【0010】
本発明は以上の点に鑑みて、装着部材とハブとの間に供給する圧油が両部品間の軸方向端部から漏洩するのを抑制することができる油圧嵌め用ハブのシール機構を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
着部材と前記装着部材の外周側に設けられたテーパー面に油圧嵌めするハブとの間に供給する圧油の漏洩を抑制する油圧嵌め用ハブのシール機構であって、前記ハブの端面に環状の凹部を設けることにより前記凹部の内周側に設けられた環状の凸部を備え、前記凸部は、その内周面の少なくとも一部に、凸部先端へ向けて内径寸法が徐々に縮小する向きのテーパー部を備え、前記テーパー部は、前記装着部材の軸方向に対する傾斜角度を、前記ハブの内周側のテーパー面の前記軸方向に対する傾斜角度よりも大きく形成している。
【0012】
また、実施の態様として、上記記載のシール機構において、前記凸部は、その内周面の全長に亙って前記テーパー部を備えることを特徴とする。
【0013】
また、実施の態様として、上記記載のシール機構において、前記凸部は、その軸方向中間位置に折り曲げ部を備え、前記凸部の根元部から前記折り曲げ部へかけて前記テーパー部が設けられ、前記折り曲げ部から凸部先端へかけて内径寸法が徐々に拡大する向きの先端テーパー部が設けられていることを特徴とする。
【0014】
また、実施の態様として、上記記載のシール機構において、前記ハブは、ダイアフラムを介してセンターチューブに連結されるダイアフラムカップリング用ハブとして用いられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、ハブの端面に環状の凹部が設けられることにより凹部の内周側に環状の凸部が設けられ、凸部の内周面に凸部先端へ向けて内径寸法が徐々に縮小する向きのテーパー部が設けられているため、このテーパー部を堰状シールとして圧油をシールすることが可能とされる。したがって圧油が多量に漏洩するのを抑制することができ、これによりハブの拡径量が不足して油圧嵌めが円滑に行われなかったり、或いは漏洩した圧油がダイアフラム等の周辺部品を汚損したりするのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施の形態に係るシール機構を備える油圧嵌め用ハブの断面図
図2】同ハブの要部拡大断面図であって図1におけるC部拡大図
図3】他の実施の形態に係るシール機構を備える油圧嵌め用ハブの要部断面図
図4】他の実施の形態に係るシール機構を備える油圧嵌め用ハブの要部断面図
図5】他の実施の形態に係るシール機構を備える油圧嵌め用ハブの要部断面図
図6】従来例に係る油圧嵌め用ハブを備えるダイアフラムカップリングの断面図
図7】比較例に係るシール機構を備える油圧嵌め用ハブの要部断面図
図8】同ハブの要部拡大断面図であって図7におけるD部拡大図
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1に示すように、ハブ11は、円筒状を呈するハブ本体12を備え、このハブ本体12の軸方向一方(図では左方)の端部にフランジ部13が一体に設けられている。ハブ11は例えば、ダイアフラム31(図6)を介してセンターチューブ41(図6)に連結されるダイアフラムカップリング用のハブとして用いられる。
【0018】
ハブ11は、その内周側に挿入する出力軸または入力軸等の装着部材51に連結される。ハブ11および装着部材51は何れも金属製の部品である。
【0019】
装着部材51とハブ11との連結は、油圧嵌めにより行われる。
【0020】
油圧嵌めは、装着部材51とハブ11とを油圧を利用して嵌合するものであって、すなわち装着部材51とハブ11とを嵌合するとき、またはハブ11から装着部材51を引き抜くときに、装着部材51とハブ11との嵌合面に圧油を供給してハブ11を拡径させることにより、嵌合および引き抜きを可能としている。
【0021】
このため、装着部材51の外周面に、軸方向一方(フランジ側)から軸方向他方(図では右方、反フランジ側))へかけて外径寸法が徐々に拡大する向きのテーパー面54が設けられるとともに、対応してハブ11の内周面に、軸方向一方から軸方向他方へかけて内径寸法が徐々に拡大する向きのテーパー面14が設けられている。また装着部材51の内部に圧油の供給路55が設けられ、供給路55は装着部材51の外周面に開口している。したがって供給路55から装着部材51とハブ11との嵌合面に圧油が供給されると(矢印A)、このときハブ11が油圧で拡径するので、装着部材51とハブ11とを嵌合することが可能とされ、またハブ11から装着部材51を引き抜くことが可能とされる。装着部材51はその外周面にテーパー面54が設けられているので、テーパー軸と称されることがある。
【0022】
上記構成の油圧嵌め構造では、装着部材51とハブ11との間に供給する圧油が両部品11,51の軸方向一方の端部から漏洩することがあり、圧油が多量に漏洩して油圧が低下すると、ハブ11の拡径量が不足して油圧嵌めが円滑に行われなかったり、或いは漏洩した圧油がダイアフラム31等の周辺部品を汚損したりすることが懸念される。そこで当該実施の形態では、以下のような圧油に対するシール機構が設けられている。
【0023】
すなわち図2に拡大して示すように、ハブ11の軸方向一方の端面15に環状の凹部16が設けられ、これによりこの凹部16の内周側に環状の凸部17が設けられている。凸部17はその径方向幅よりも軸方向長さのほうが大きく形成されている。
【0024】
凸部17はその内周面に、凸部先端17aへ向けて内径寸法が徐々に縮小する向きのテーパー部18が設けられるとともに、その外周面にも同じ方向に傾斜するテーパー部19が設けられており、これにより凸部17はその全体がリップ状とされ、凸部先端17aが装着部材51の外周面に接触することにより圧油に対してシール作用を発揮する堰状シールないしリップ状シールとして作動することが可能とされている。
【0025】
凸部17は、図7および図8の比較例に示すように、ハブ11の軸方向一方の端面15に切削加工を施して凹部16を形成することにより凹部16と同時に形成されるが、このようにハブ11の軸方向一方の端面15に切削加工を施すだけでは、凸部17の内周面がハブ11の内周面(テーパー面14)の延長線上であってハブ11の内周面に対し角度を持たないため、凸部17は堰状シールないしリップ状シールとして装着部材51の外周面に接触することができない。そこで、切削加工に加えて、凸部17を径方向内方へ向けて斜めに押圧加工ないし絞り加工することにより凸部17を塑性変形させ、これにより凸部17をリップ状とし、凸部17が堰状シールないしリップ状シールとして装着部材51の外周面に接触するようにする。
【0026】
尚、上記したようにハブ11の内周面にはテーパー面14が設けられているので、凸部17の内周面に設けるテーパー部18はその傾斜角度θをハブ11の内周面に設けるテーパー面14の傾斜角度θより大きく形成し(θ>θ)、これにより凸部17が堰状シールないしリップ状シールとして装着部材51の外周面に接触するようにする。
【0027】
上記構成のシール機構によれば、ハブ11の軸方向一方の端面15に環状の凹部16が設けられることによりこの凹部16の内周側に環状の凸部17が設けられ、凸部17の内周面に凸部先端17aへ向けて内径寸法が徐々に縮小する向きのテーパー部18が設けられているため、この凸部17が圧油に対する堰状シールないしリップ状シールとして作動し、圧油をシールすることが可能とされる。したがって圧油が多量に漏洩するのを抑制することができ、これによりハブ11の拡径量が不足して油圧嵌めが円滑に行われなかったり、或いは漏洩した圧油がダイアフラム31等の周辺部品を汚損したりするのを抑制することができる。
【0028】
また、圧油をシールするには装着部材51とハブ11との間にOリング等のシール専用部品を介装することが考えられるが、この場合には、シール専用部品の組み付けに手間がかかったり、シール専用部品が油と接触することにより早期に劣化したりする不都合が生じることがある。これに対し上記構成のシール機構によればシール専用部品を用いることなくシール作用を発揮するため、上記不都合が生じるのを未然に防止することができる。
【0029】
本発明において、凸部17の断面形状は、凸部17の内周面の少なくとも一部に凸部先端17aへ向けて内径寸法が徐々に縮小する向きのテーパー部18を備えるものであれば、とくに限定されない。
【0030】
すなわち上記図2の例では、凸部17の内周面の全長に亙ってテーパー部18が設けられているが、凸部17の内周面の一部のみにテーパー部18が設けられていても良い。
【0031】
図3ではその一例として、凸部17の軸方向中間位置に折り曲がった形状の折り曲げ部17bが設けられ、凸部17の根元部17cから折り曲げ部17bへかけての内周面にテーパー部18が設けられ、折り曲げ部17bから凸部先端17aへかけての内周面に内径寸法が徐々に拡大する向きの先端テーパー部(逆テーパー部)20が設けられた形状とされている。
【0032】
また、上記実施の形態では、ハブ11の軸方向一方の端部に凸部17によるシール機構が設けられているが、ハブ11の軸方向他方の端部に凸部によるシール機構を設けるようにしても良い。
【0033】
図4ではその一例として、ハブ11の軸方向他方の端面21に環状の凹部22が設けられ、これによりこの凹部22の内周側に環状の凸部23が設けられている。凸部23はその内周面に、凸部先端23aへ向けて内径寸法が徐々に縮小する向きのテーパー部24が設けられるとともに、その外周面にも同じ方向に傾斜するテーパー部25が設けられており、これにより凸部23はその全体がリップ状とされ、凸部先端23aが装着部材51の外周面に接触することにより圧油に対してシール作用を発揮する堰状シールないしリップ状シールとして作動することが可能とされている。
【0034】
尚、この場合、図5に示すように、凸部23の外周面は、軸方向にストレートな円筒面26として形成されても良い。
【0035】
更にまた、上記のように塑性変形される凸部17,23は、装着部材51の外周面に接触することなく、装着部材51の外周面との間に微小な径方向間隙を形成する非接触式のシールを形成するものとしても良い。また、凸部先端23aが係合可能な環状の溝や段差部、端面部などを装着部材51の外周面に設けることも考えられる。
【符号の説明】
【0036】
1 ダイアフラムカップリング
11 ハブ
12 ハブ本体
13 フランジ部
14,54 テーパー面
15,21 端面
16,22 凹部
17,23 凸部
17a 凸部先端
17b 折り曲げ部
17c 凸部根元部
18,19,24,25 テーパー部
26 円筒面
20 先端テーパー部
31 ダイアフラム
41 センターチューブ
51 装着部材
55 圧油供給路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8