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特許7010820軸方向配置の3次元半導体構造を有する光電子素子
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  • 特許-軸方向配置の3次元半導体構造を有する光電子素子 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】軸方向配置の3次元半導体構造を有する光電子素子
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/24 20100101AFI20220119BHJP
   H01L 31/10 20060101ALI20220119BHJP
   H01L 21/203 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
H01L33/24
H01L31/10 A
H01L21/203 M
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2018527796
(86)(22)【出願日】2016-11-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-01-24
(86)【国際出願番号】 FR2016053122
(87)【国際公開番号】W WO2017093646
(87)【国際公開日】2017-06-08
【審査請求日】2019-11-08
(31)【優先権主張番号】1561589
(32)【優先日】2015-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】510132347
【氏名又は名称】コミサリア ア レネルジ アトミク エ オウ エネルジ アルタナティヴ
(73)【特許権者】
【識別番号】515151273
【氏名又は名称】アレディア
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】ザン シン
(72)【発明者】
【氏名】ドーダン ブリュノ-ジュール
(72)【発明者】
【氏名】ガイラル ブリュノ
(72)【発明者】
【氏名】ジレ フィリップ
【審査官】大西 孝宣
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第02665100(EP,A2)
【文献】特開2003-101069(JP,A)
【文献】特開2012-033893(JP,A)
【文献】国際公開第2006/025407(WO,A1)
【文献】特表2014-512667(JP,A)
【文献】特開2009-076896(JP,A)
【文献】国際公開第2010/044129(WO,A1)
【文献】特開2009-049195(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0223211(US,A1)
【文献】DAUDIN B. et al.,Growth, structural and optical properties of GaN/AlN and GaN/GaInN nanowire heterostructures,Physics Procedia,2012年,Vol. 28,p.5-16,DOI:10.1016/j.phpro.2012.03.662
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00 - 33/64
H01S 5/00 - 5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元半導体構造(2)が載る基板(3)の平面に実質的に直交する長手方向軸(Δ)に沿って延在する少なくとも1つの3次元半導体構造(2)を備える光電子素子(1)であって、
基板(3)の面から長手方向軸(Δ)に沿って延在する第1ドープ部(10)と、
第1ドープ部(10)から長手方向軸(Δ)に沿って延在する、少なくとも1つの量子井戸(32)を有し、不動態化のための保護層(34)を備える活性部(30)と、
活性部(30)から長手方向軸(Δ)に沿って延在する第2ドープ部(20)と
を備え、
活性部(30)の量子井戸(32)は、第1ドープ部(10)のものよりも大きな平均直径を有して保護層(34)により側面を覆われ、
光電子素子(1)は、互いに実質的に平行に延在する、複数の3次元半導体構造(2)を備えることにより、活性部(30)で3次元半導体構造(2)の合体があり、活性部(30)の保護層(34)が相互に接触している
ことを特徴とする光電子素子(1)。
【請求項2】
各活性部(30)の1つ又は複数の量子井戸(32)は、相互に接触する保護層(34)により、隣の活性部(30)の1つ又は複数の量子井戸(32)から分離される
請求項1記載の光電子素子(1)。
【請求項3】
基板(3)の単位領域当たり0.5~1.5×1010cm-2の第1ドープ部(10)の濃度を有し、第1ドープ部(10)は相互に分離し、長手方向軸(Δ)に沿って実質的に一定の平均直径を有する
請求項1又は請求項2記載の光電子素子(1)。
【請求項4】
保護層(34)は、2~15nmの平均厚さを有する
請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の光電子素子(1)。
【請求項5】
第1ドープ部(10)はIII-V族化合物、II-VI族化合物、IV族元素又はIV族化合物で作られ、保護層(34)は第1ドープ部(10)の化合物に含まれる少なくとも1つの元素を有する化合物で作られる
請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の光電子素子(1)。
【請求項6】
1つ又は複数の量子井戸(32)の平均直径が、第1ドープ部(10)の平均直径の115~250%である
請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の光電子素子(1)。
【請求項7】
活性部(30)は、第1ドープ部(10)と第2ドープ部(20)との間に連続して延在して側面を保護層(34)により覆われる単一量子井戸(32)を有する
請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載の光電子素子(1)。
【請求項8】
活性部(30)が、複数の障壁層の間に挿入されて側面を保護層(34)で覆われる量子井戸(32)又は量子ドットを形成するいくつかの層を有する
請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載の光電子素子(1)。
【請求項9】
3次元半導体構造(2)は、主にIII-N化合物を有する材料で作られ、保護層(34)はGaN、AlGaN、AlNから選択される化合物で作られる
請求項1乃至請求項8のいずれか1項記載の光電子素子(1)。
【請求項10】
3次元半導体構造(2)が分子線エピタキシャル成長法により形成される
請求項1乃至請求項9のいずれか1項記載の光電子素子(1)を作るための方法。
【請求項11】
エピタキシャル成長法による複数の3次元半導体構造(2)の形成の次の工程
i.基板(3)の面から長手方向軸(Δ)に沿って延在する第1ドープ部(10)が形成される工程、
ii.第1ドープ部(10)から長手方向軸(Δ)に沿って延在する、少なくとも1つの量子井戸(32)を有する活性部(30)が形成される工程
を有し、
工程ii)では、第1ドープ部(10)のものよりも大きな平均直径を有するように各活性部(30)の量子井戸(32)が形成され
加えて、量子井戸(32)の側面を覆う保護層(34)が形成される
ことを特徴とする請求項10記載の方法。
【請求項12】
保護層(34)の形成が、量子井戸(32)の形成と同時である
請求項11記載の方法。
【請求項13】
3次元半導体構造(2)は主にIII-V族化合物を有し、活性部(30)の形成の工程ii)が、第1ドープ部(10)の形成の工程i)での(T)値未満の小さいエピタキシャル成長温度(T)値で、600~680℃で行われ、V族元素の原子流束に対するIII族元素の原子流束の比率が0.33~0.60で行われる
請求項10乃至請求項12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
第1ドープ部(10)の形成の工程i)は、基板(3)の単位領域当たりの第1ドープ部(10)の濃度が0.5~1.5×1010cm-2となるような成長温度で行われるIII-V族化合物の核形成の補助工程を有する
請求項13項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、発光又は光検出に適したナノワイヤ又はマイクロワイヤのような3次元半導体構造を有する光電子素子(optoelectronic device)の分野である。
【背景技術】
【0002】
ナノワイヤ又はマイクロワイヤの類いの3次元半導体構造を有し、例えば、発光ダイオードを形成する光電子素子が存在する。ナノワイヤ又はマイクロワイヤは一般に、例えば、n型の第1ドープ部と、反対導電型、例えば、p型の第2ドープ部とを有し、それらの間には少なくとも1つの量子井戸を有する活性部が存在する。
【0003】
それらはコア/シェルとも呼ばれる、いわゆる、放射状配置で作られ、そこでは、活性部及びp型第2ドープ部がn型第1ドープ部の周辺に形成されても良い。それらはまた、いわゆる、軸方向配置で作られ、そこでは、活性部及びp型第2ドープ部がn型第1ドープ部の周辺を覆わず、基本的に、エピタキシャル成長の長手方向軸に沿って延在しても良い。
【0004】
軸方向配置のナノワイヤ又はマイクロワイヤは、放射状配置のワイヤ類(wires)のものよりも小さな発光表面領域を有するが、より良い結晶品質を有する半導体材料で作られるという利点を有し、この結果、特に、半導体部間の界面におけるより良い応力緩和のために、より高い内部量子効率を提供する。InGaNで作られる量子井戸の場合、軸方向配置のナノワイヤ又はマイクロワイヤは、例えば、赤色又は緑色で発光するために、より多くのインジウムを取り込むことを可能にする。
【0005】
例として、非特許文献1は、軸方向配置のナノワイヤを有する光電子素子の例を記載し、そこでは、p型第2ドープ部の上部が相互に接触し、ワイヤ類による発光に対して透明な分極性電極を支持する。ここでは、各活性部は、n型第1ドープ部のものと実質的に同一の平均直径を有し、多数の量子井戸を有する。ワイヤ類は、GaNに基づいて、分子線エピタキシャル成長法により作られる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Bavencove AL、外9名、"Submicrometre resolved optical characterization of green nanowire-based light emitting diodes"、Nanotechnology、2011年8月26日、vol. 22、issue 34、p. 345705
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、改善された光学効率を有し、ナノワイヤ又はマイクロワイヤの類いの3次元半導体構造を有する光電子素子を開発する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、先行技術の欠点を少なくとも部分的に改善し、特に、改善された光学効率を有する少なくとも1つの3次元半導体構造を有する光電子素子を提案することを目的とする。この目的のために、本発明は少なくとも1つの3次元半導体構造を有する光電子素子に関し、3次元半導体構造は当該構造が載る基板平面に実質的に直交する長手方向軸に沿って延在し、基板の面から長手方向軸に沿って延在する第1ドープ部と、第1ドープ部から長手方向軸に沿って延在し、少なくとも1つの量子井戸を有する活性部と、活性部から長手方向軸に沿って延在する第2ドープ部とを備える。
【0009】
本発明によれば、活性部の量子井戸は、当該第1ドープ部のものよりも大きい平均直径を有し、側面は保護層(passivating layer)により覆われる。
【0010】
その上、光電子素子は実質的に互いに平行に延在する複数の3次元半導体構造を有し、それらの活性部は相互に接触する。
【0011】
この光電子素子のいくつかの好ましい、しかし、これらに限定されない態様は次の通りである。
【0012】
各活性部の1つ又は複数の量子井戸は、相互に接触する保護層により隣の活性部の1つ又は複数の量子井戸から分離される。
【0013】
光電子素子は、基板の単位領域当たり0.5~1.5×1010cm-2の第1ドープ部の濃度を有し、第1ドープ部は、相互に分離し、長手方向軸に沿って実質的に一定の平均直径を有していても良い。
【0014】
保護層は2nm以上、好ましくは、2~15nmの平均厚さを有していても良い。
【0015】
第1ドープ部はIII-V族化合物、II-VI族化合物、IV族元素又はIV族化合物で作られても良く、保護層は第1ドープ部の化合物に含まれる少なくとも1つの元素を有する化合物で作られても良い。
【0016】
1つ又は複数の量子井戸の平均直径は、第1ドープ部の平均直径の115~250%であっても良い。
【0017】
活性部は、第1ドープ部と第2ドープ部との間に連続して延在して側面を保護層により覆われる単一量子井戸を有していても良い。
【0018】
活性部は、障壁層の間に挿入されて側面を保護層で覆われる量子井戸又は量子ドットを形成するいくつかの層を有していても良い。
【0019】
3次元半導体構造は、主にIII-N化合物を有する材料で作られ、保護層は好ましくはGaN、AlGaN、AlNから選択される化合物で作られても良い。
【0020】
本発明は更に前述の特徴のいずれか1つに係る光電子素子を作るための方法に関し、そこでは、1つ又は複数の3次元半導体構造が分子線エピタキシャル成長法により形成される。
【0021】
当該方法は、エピタキシャル成長法による複数の3次元半導体構造の形成の複数の工程を有していても良く、そこでは、
i.基板の面から長手方向軸に沿って延在する第1ドープ部が形成され、
ii.第1ドープ部から長手方向軸に沿って延在する、少なくとも1つの量子井戸を有する活性部が形成され、
工程ii)では、第1ドープ部のものよりも大きな平均直径を有するように各活性部の量子井戸が形成され、
加えて、量子井戸の側面を覆う保護層が形成される。
【0022】
保護層の形成は、量子井戸の形成と同時であっても良い。
【0023】
3次元半導体構造は主にIII-V族化合物を有して、活性部の形成の工程ii)は、第1ドープ部の形成の工程i)での値T未満のエピタキシャル成長温度値T、好ましくは、600~680℃で行われても良く、V族元素の原子流束に対するIII族元素の原子流束の比率が0.33~0.60で行われても良い。このように、驚くことに、発光ピークの半値全幅が減少した発光スペクトルを有するワイヤダイオードを備えた光電子素子が得られる。このことは、第1ドープ部のものに対する1つ又は複数の量子井戸の、それゆえ、活性部の平均直径の拡大率の115~250%に反映される。
【0024】
第1ドープ部の形成の工程i)は、基板の単位領域当たりの第1ドープ部の濃度が0.5~1.5×1010cm-2となるような成長温度で行われるIII-V族化合物の核形成の補助工程(substep)を有していても良い。
【発明の効果】
【0025】
本発明のその他の態様、目的、利点、特徴は、以下にこれらに限定されない例として与えられる本発明の好ましい実施の形態の詳細な説明を読み、添付された図面を参照することによって、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】活性部が拡大され不動態化(passivate)された軸方向配置の3次元半導体構造を有する、第1の実施の形態に係る光電子素子の概略断面図である。
図2】活性部が単一量子井戸を有する軸方向配置の3次元半導体構造の他の例の概略断面図である。
図3】成長温度T及び名目のIn/III比に応じた活性部の拡大率Rの変化量の例を示す図である。
図4】エネルギー分散X線分光分析(EDX)に基づく、図2に示す3次元半導体構造の活性部の断面に対するインジウム及びガリウムの原子比率の変化量の例を示す。
図5】活性部が相互に接触する、軸方向配置の3次元半導体構造を有する、第2の実施の形態に係る光電子素子の概略断面図である。
図6a】活性部が複数層の形状の多数の量子井戸を有する、軸方向配置の3次元半導体構造の変形例の概略断面図である。
図6b】活性部が複数の量子ドットの形状の多数の量子井戸を有する、軸方向配置の3次元半導体構造の他の変形例の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図面と明細書の残りの部分とにおいて、同じ参照記号は同一又は類似の構成要素を示す。その上、図面の明瞭化を目的として、いろいろな構成要素は縮尺通りに描かれていない。更に、用語「実質的に」、「だいたい」、「約」は「10%以内」を意味すると理解される。
【0028】
本発明は、発光ダイオード又はフォトダイオードを形成するのに適した3次元半導体構造を有する光電子素子に関する。
【0029】
3次元半導体構造は、長手方向軸Δに沿った細長い形状を有している。すなわち、それらの長手方向軸Δに沿った長手方向の大きさは横方向の大きさよりも大きい。そして、3次元半導体構造は「ワイヤ類」、「ナノワイヤ」又は「マイクロワイヤ」と呼ばれる。ワイヤ類の横方向の大きさ、すなわち、長手方向軸Δと直交する平面におけるそれらの大きさは、5nm~5μm、例えば、10~500nm、好ましくは、30~300nmであっても良い。ワイヤ類の高さ、すなわち、長手方向軸Δに沿った長手方向のそれらの大きさは、横方向の大きさよりも大きく、例えば、2倍、5倍、好ましくは、少なくとも10倍大きい。
【0030】
長手方向軸Δと直交する平面におけるワイヤ類の断面は、いろいろな形状、例えば、円形、楕円形、例えば、3角形、正方形、長方形、更に、六角形のような多角形を有していても良い。ここでは、直径は断面の位置におけるワイヤの外周と関連付けられた量として定義される。それは、ワイヤの断面と同じ領域を有する円盤の直径であっても良い。局所直径(local diameter)は、長手方向軸Δに沿ったワイヤの所与の高さにおけるワイヤの直径である。平均直径は、ワイヤ又はワイヤの一部分に沿った局所直径の平均値、例えば、算術平均である。
【0031】
図1は、軸方向のワイヤ発光ダイオードを形成する3次元半導体構造2を有する光電子素子1の第1の実施の形態の部分断面図を概略的に示す。
【0032】
ここで、そして、明細書の残りの部分に関して、3次元正規直交座標系(X,Y,Z)が定義され、そこでは、(X,Y)平面は光電子素子の基板平面に実質的に平行であり、Z軸は基板平面に直交する方向に向けられる。
【0033】
この例では、光電子素子1は、
例えば、半導体材料で作られ、後面3a及び前面3bと呼ばれる互いに対向する2つの面を有する基板3と、
ここでは、基板の後面3aと接触する第1分極性電極(polarization electrode)と、
3次元半導体構造のエピタキシャル成長に適した材料で作られ、基板の前面3bを覆う核形成層5と、
核形成層5から基板3の前面3bの(X,Y)平面に実質的に直交する方向に向く長手方向軸Δに沿って延在する、ここではワイヤ類の形状の3次元半導体構造2であって、各ワイヤ2は、核形成層5と接触する第1ドープ部10と、長手方向軸Δに沿って第1ドープ部10の延長部分に配置された活性部30及び第2ドープ部20とを有する3次元半導体構造2と、
各第2ドープ部20と接触する、第2分極性電極6の層と
を備える。
【0034】
ここでは、各3次元半導体構造2は、その活性部の位置における発光に適する、軸方向配置のワイヤ発光ダイオードを形成する。各活性部30が、長手方向軸Δに実質的に直交する第1ドープ部10の上面11を基本的に覆い、長手方向軸Δに沿って延在する限りにおいて、ワイヤ2は軸方向配置にあると言われる。その上、第2ドープ部20は長手方向軸Δに実質的に直交する活性部30の上面31を基本的に覆い、長手方向軸Δに沿って延在する。それゆえ、ワイヤ2は前述のコア/シェル配置とは異なる軸方向配置を有する。
【0035】
各ワイヤ2は、周期律表のIII族の少なくとも1つの元素とV族の少なくとも1つの元素とを有するIII-V族化合物、II族の少なくとも1つの元素とVI族の少なくとも1つの元素とを有するII-VI族化合物、又は、IV族の少なくとも1つの元素を有するIV族元素又は化合物から選択されても良い少なくとも1つの半導体材料から出発して作られる。例として、III-V族化合物は、GaN、InGaN、AlGaN、AlN、InN又はAlInGaNのようなIII-N化合物、又は、例えば、AsGa又はInPのようなヒ素又はリンの類いのV族の元素を有する化合物であっても良い。その上、II-VI族化合物はCdTe、HgTe、CdHgTe、ZnO、ZnMgO、CdZnO又はCdZnMgOであっても良い。最後に、Si、C、Ge、SiC、SiGe又はGeCのようなIV族元素又は化合物が用いられても良い。3次元構造の半導体材料は、例えば、III-N化合物のn型のドーピング(doping)を提供するシリコン、又は、p型のドーピングを提供するマグネシウムのようなドーパント(dopant)を有していても良い。
【0036】
活性部30は、その位置においてほとんどの光がワイヤから発せられる部分である。それは、第1ドープ部及び第2ドープ部のものよりも小さなバンドギャップエネルギーを有する第2材料で作られて活性部の発光区画に対応する少なくとも1つの量子井戸を有する。量子井戸は厚くても良く、又は、好ましくは2つの障壁層の間に配置された少なくとも1層の薄層から形成されても良く、その結果、電荷担体の閉じ込めを改善する。第2材料は、少なくとも1つの追加元素が取り込まれる第1ドープ部及び第2ドープ部のIII-V族、II-VI族又はIV族化合物を有する。例として、GaNに基づいて作られたワイヤの場合には、量子井戸を形成する第2材料は好ましくはInGaNである。追加元素の原子比率は、ワイヤの求められる光学特性及び発光スペクトルに依存する。後で詳細に説明するように、活性部は第1ドープ部と第2ドープ部との間に延在する半導体材料の一部における単一量子井戸から形成されても良い。代わりに、それは、障壁層の間に挿入された層又はドットの形状のいくつかの量子井戸を有していても良い。
【0037】
好ましい実施の形態によれば、各ワイヤ2はGaNに基づいて作られ、1つ又は複数の量子井戸はInGaNで作られる。第1ドープ部10はGaNから形成されても良く、例えば、n型の第1導電型を用いて、特にシリコンを用いてドープされても良い。第1ドープ部の高さは100nm~10μm、例えば、500nm~5μmであっても良く、特に、実質的に1μmに等しくても良い。
【0038】
活性部30は、例えば、InGaNで作られた1つ以上の量子井戸を有していても良い。活性部は、第1ドープ部10と第2ドープ部20との間で長手方向軸Δに沿って連続的に延在する単一量子井戸を有していても良い。代わりに、それは多数の量子井戸を有していても良く、そして、それは、例えば、InGaNで作られた量子井戸と、例えば、GaNで作られた障壁層との長手方向軸Δに沿った繰り返しから形成される。活性部の高さは20~500nm、例えば、50~200nmであっても良く、特に、実質的に100nmに等しくても良い。
【0039】
第2ドープ部20はGaNから形成されても良く、第1導電型とは反対の、例えばp型の第2導電型を用いて、特に、マグネシウムを用いてドープされても良い。第2ドープ部の高さは50nm~5μm、例えば、100nm~1μmであっても良く、特に、このドープ部と関連付けられた直列抵抗を制限するために、数10nm程度又は数100nm程度であっても良い。このように、高さは実質的に400nmであっても良い。
【0040】
第2ドープ部20は、活性部30との界面に位置する電子遮断層22を有していても良い。電子遮断層は、例えば、AlGaN又はAlInNのような3元III-V族化合物、有利には、p型がドープされた当該化合物から形成されても良い。それは、活性部内の発光性再結合(radiative recombination)の程度を増加させることを可能にする。
【0041】
第2分極性電極6は、ドープ部20の上面21と接触し、ワイヤ2への電荷担体の注入を提供するのに適する。それは、ワイヤが発する光に対して実質的に透明な材料、例えば、インジウムスズ酸化物(ITO)で作られる。それは、数nmから数10nm又は数100nmまでの厚さを有する。
【0042】
その上、各ワイヤ2は、上面3bが核形成層5で覆われても良い基板3に載っている。核形成層5は、核形成及びワイヤ類の成長を促す材料、例えば、窒化アルミニウム(AlN)、酸化アルミニウム(Al)、窒化マグネシウム(Mg)、遷移金属の窒化物又は炭化物、又は、他のいずれかの適した材料で作られる。核形成層の厚さは、数nm又は数10nmの程度であっても良い。この例では、核形成層はAlNで作られる。
【0043】
基板3は一体構造であっても良く、また、SOI(Silicon On Insulator)の類いの基板のような積層から形成されても良い。基板は、半導体材料、例えば、シリコン、ゲルマニウム、炭化シリコン、III-V族又はII-VI族化合物で作られても良い。それは更に、金属材料または絶縁材料で作られても良い。それは、グラフェン、硫化モリブデン(MoS)、セレン化モリブデン(MoSe)又は他のいかなる等価材料の層を有していても良い。この例では、基板は高濃度でドープされたn型単結晶シリコンである。
【0044】
第1分極性電極4は、ここでは導電性の基板3と、例えば、その後面3aの位置で接触する。それは、アルミニウム、又は、他のいかなる適した材料で作られても良い。
【0045】
その結果、電位差が2つの分極性電極を介して順方向でワイヤ2に加えられたときに、ワイヤ2は、1つ又は複数の量子井戸の組成に主に依存する波長に強度ピークを有する発光スペクトルの光を発する。
【0046】
図1に示すように、活性部30は、平均直径が第1ドープ部10の平均直径よりも大きい少なくとも1つの量子井戸32を有する。ここでは、第1ドープ部10は局所直径に実質的に等しい平均直径を有する。第1ドープ部10の平均直径は5nm~5μm、例えば、10~100nmであっても良く、特に、50nmに実質的に等しくても良い。単一量子井戸の場合には、平均直径は、長手方向軸Δに沿ったこの同じ量子井戸の局所直径の平均値である。複数層又は複数ドットの形状の多数の量子井戸の場合には、局所直径は、量子井戸層の直径、又は、全く同一の断面の高さに位置する量子井戸の累積直径(cumulative diameter)である。平均直径は、異なる量子層又は量子ドットの局所直径の平均値である。
【0047】
そして、活性部30は第1ドープ部10の平均直径よりも大きい局所直径を有する。図1の例では、それは更に、第1ドープ部10の上面11の位置における第1ドープ部10の局所直径に実質的に等しい第1値から始まり、活性部30と第2ドープ部20との間の界面の第2最大値まで、第1ドープ部10からの増加する距離に伴って増加する平均直径を有する。そして、活性部30は、第1ドープ部10のものよりも大きい平均直径を有する。
【0048】
このことは、活性部30の位置の(X,Y)平面における各ワイヤ2の拡大に反映される。活性部30の平均直径は第1ドープ部10の平均直径の110~400%であっても良く、より良い結晶品質、及び/又は、発光ピークの半値全幅(FWHM)が減少した発光スペクトルを与えるために、好ましくは、115~250%であっても良い。例として、約50nmの第1ドープ部10の平均直径に対して、活性部30の平均直径は約75nmに等しくても良い。
【0049】
第2ドープ部20は、活性部20からワイヤ2の長手方向軸Δに沿って延在する。この例では、第2ドープ部20の局所直径は、第2ドープ部20が隣のワイヤ2の第2ドープ部20と接触し、その結果、第2ドープ部20の位置において、ワイヤ2の合体を引き起こすまで、徐々に増加する。このように、局所直径は、活性部30の上面31の位置における活性部30の局所直径に実質的に等しい値から、例えば、隣の第2ドープ部20との接触に対応する値にまで増加する。例として、第1ドープ部10の約50nm及び活性部30の約75nmの平均直径に対して、第2ドープ部20の平均直径は約100nmに等しくても良い。代わりに、第2ドープ部20の局所直径は長手方向軸Δに沿って実質的に一定であっても良く、その結果、活性部30の上面31の位置における活性部30の局所直径の値に実質的に等しくても良い。
【0050】
その上、活性部30は、その側壁35の位置にある保護シェルとも呼ばれる、保護層34を備える。保護層34は、1つ又は複数の量子井戸32の外側縁33を、好ましくは、それらの外周に沿って連続的に覆う。量子井戸32の外側縁33は、(X,Y)横断面において、活性部30の側壁35の反対に位置する、量子井戸の表面である。例えば、活性部の拡大と関連がある、考えられる表面状態の効果を制限することを保護層が可能とするように、保護層34は保護層を形成する材料の誘電率又はバンドギャップエネルギーに依存する厚さを有する。これらの表面状態は1つ又は複数の量子井戸における非発光性再結合につながるかもしれない。薄い保護層は、2~15nmの、例えば、5~10nmの厚さを有していても良い。
【0051】
保護層34は、III-V族化合物、II-VI族化合物、IV族化合物又は元素、更には、アルミニウム又はシリコンの窒化物及び酸化物(Al、SiO、Si)のような誘電材料から選択される材料で作られても良い。例として、第1ドープ部及び第2ドープ部がGaNで作られ、量子井戸がInGaNで作られる場合には、保護層は、例えば、意図的にドープされていないGaN、AlN又はAlGaNで作られても良い。
【0052】
保護層が量子井戸のものよりも大きな電気抵抗又はバンドギャップエネルギーを有して1つ又は複数の量子井戸に向かう電荷担体の移動を最適化するように、好ましくは、保護層34の厚さ及び材料が選択される。例として、保護層は、2~15nmの厚さを有するAlN、AlGaN、GaNから形成されても良い。
【0053】
第1ドープ部10及び第2ドープ部20を形成する材料がIII-V族化合物又はII-VI族化合物であるときに、保護層34を形成する材料もそれぞれIII-V族化合物又はII-VI族化合物であり、第1ドープ部及び第2ドープ部の材料としてV族又はVI族の同じ元素を有していても良い。例として、第1ドープ部及び第2ドープ部がGaNで作られ、量子井戸がInGaNで作られる場合には、保護膜はGaN、AlN、AlGaNで作られても良い。
【0054】
後で詳細に示されるが、保護層34は有利には1つ又は複数の量子井戸の形成と同時に形成される。その結果、それは1つ又は複数の量子井戸の外側縁の表面状態を制限し、活性部の内部量子効率を増加するのに役立つ。
【0055】
このように、光電子素子のワイヤは、それぞれ、活性部の拡大及び保護(不動態化)の組み合わされた効果のおかげで、改善された光学効率を有する。ここでは、光学効率は、光電子素子により消耗された電力に対する光電子素子により発せられた光束の比率に対応する。
【0056】
事実、活性部の拡大は、ワイヤ辺りの発光領域の増加と、その結果としてのより大きく発せられた光束とにつながる。その上、活性部の1つ又は複数の量子井戸の外側縁の保護は、量子井戸の外側縁における表面状態の影響を制限することにより、活性部の内部量子効率を増加することを可能にする。事実、活性部の拡大の間に特に出現するかもしれない、例えば、構造欠陥又はダングリングボンドに由来する表面状態は、活性部の非発光性再結合の原因かもしれない。その結果、活性部の保護は、活性部の非発光性再結合の程度を減少し、その結果、ワイヤの活性部の内部量子効率を増加する。
【0057】
活性部の拡大及び活性部の側壁の保護は、それゆえ、各ワイヤの光学効率の増加につながる。
【0058】
図2は、第1変形例に係る光電子素子の3次元半導体構造2の部分概略図であり、3次元半導体構造2は、活性部30が単一量子井戸32を有する軸方向配置のワイヤの形状の発光ダイオードを形成する。この例では、ワイヤ2はGaNに基づいて作られ、量子井戸はInGaNで作られる。
【0059】
活性部30は、追加元素、ここでは、インジウムが取り込まれた第1ドープ部10及び第2ドープ部20のものと同じ化合物GaNを有する第2半導体材料、ここでは、InGaNで作られた単一量子井戸32を有する。第2材料を形成する化合物の元素の原子比率は、好ましくは、量子井戸内部で実質的に均一である。InGaNの単一量子井戸32は、第1ドープ部10と第2ドープ部20との間に延在する部分を形成し、第1ドープ部10の平均直径よりも大きい平均直径を有する。図2に示す通りに、それは、長手方向軸Δに沿って互いに配置された下層部32a及び上層部32bと呼ばれる2つの部分で形成されても良く、下層部32aは、第1ドープ部10と上層部32bとの間に位置し、上面11の位置における第1ドープ部10の局所直径の値から始まって連続的に増加する局所直径を有する。第2部32bはその全ての高さにわたって実質的に一定の局所直径を有する。
【0060】
その上、活性部30はその側壁35の位置に保護層34を有し、保護層34は、第1部32a及び第2部32bの両方の位置においてInGaNで作られた量子井戸32の外側縁33を覆う。それは、ここでは意図的にドープされていない、第1ドープ部及び第2ドープ部の化合物GaNと同一の材料で作られる。代わりに、それはAlN又はAlGaNで形成されても良く、その結果、保護層の電気抵抗又はバンドギャップエネルギーを増加させることを可能にする。ここでは、保護層は2~15nm、例えば、5nmの厚さを有する。
【0061】
活性部30が単一量子井戸32から形成される、図2を参照して説明されたものと3次元半導体構造が同一であるか又は類似する場合の光電子素子を作るための方法の例が次に説明される。この例では、ワイヤ2は分子線エピタキシャル成長法(MBE)により製作され、GaNに基づいて作られる。
【0062】
分子線エピタキシャル成長法において、エピタキシャル成長に影響を及ぼすパラメータは、
・V族の元素の流束に対するIII族の元素の流束の比率として定義される、すなわち、この場合、GaNの第1ドープ部及び第2ドープ部の成長の間のGa/N比である名目のIII/V比、及び、InGaNの量子井戸の成長の間の、金属/N又は(Ga+In)/Nとも呼ばれるIII/N比、
・III族の元素、すなわち、ガリウム及びインジウムの流束に対する追加元素、ここでは、インジウムの流束の比率として定義される、名目のIn/III比率
・ここでは基板の位置で測定される成長温度T
である。
【0063】
第1工程では、第1ドープ部10が、核形成層5の表面から始まるエピタキシャル成長により形成される。このために、成長温度が第1値T、例えば、775~850℃、例えば、845℃にまで上げられる。名目のIII/V比、ここでは、Ga/N比は、いわゆる窒素が多い条件であるために、1未満の(III/V)値を有する。それは、例えば、0.1~0.5であっても良い。第1部のGaN材料はシリコンを用いてn型ドープされている。ここでは、n型第1ドープ部は約1μmの高さと、約50nmの平均直径Dとを有する。このように、長手方向軸Δに沿って延在するワイヤの形状を有する第1ドープ部が得られる。それは、基板と反対側に、結晶軸cに沿って向き、実質的に平坦な上面を有する。
【0064】
第2工程では、活性部30が、n型第1ドープ部10の上面11から始まるエピタキシャル成長により形成される。このために、成長温度が、第1値Tよりも低く、インジウムの取り込みを可能にする温度範囲内の第2値Tにまで上げられる。InGaNの場合には、インジウムの取り込みの範囲は、典型的には560~690℃である。例として、温度値Tはこの場合600~680℃、例えば、約670℃に等しい。その上、名目のIn/III比は、必要とされるInGaN組成に依存して5~70%、好ましくは、10~50%、例えば、約555nmの緑色の発光を得ることを目的として、ここでは28%の(In/III)値を有する。
【0065】
その上、名目のIII/N比は、インジウムの流束のおかげで前述の工程の(III/V)値よりも大きい(III/N)値を有する。名目のGa/N比が0.3で一定であるのに対して、(III/N)値は0.3よりも大きい。それは0.32~1.5であっても良く、より良い結晶品質、及び/又は、発光ピークの半値全幅(FWHM)が減少した発光スペクトルを与えるために、好ましくは、0.33~0.60であっても良い。例えば、ここでは、それは0.42である。その結果、意図的にドープされていない、約28%のインジウムの原子比率を有するInGaNの単一量子井戸を有する活性部が得られ、ワイヤが順方向に分極されたときにおおよそ550nmの光を発することができる。
【0066】
発明者は、名目のIII/N比、例えば、0.33~0.60の増加と組み合わせて、成長温度を、例えば、600~680℃の温度まで低くすることが、n型第1ドープ部のものに対する量子井戸の、それゆえ、活性部の平均直径の拡大、例えば、115~250%の拡大につながることを示した。図3に図表により示すように、DPAが活性部の平均直径であり、Dが第1ドープ部の平均直径であるときの拡大率R=DPA/Dは、成長温度の減少と、名目のIII/N比の増加とに依存する。このように、T値未満の成長温度において、名目のIn/III比、それゆえ、名目のIII/N比を大きくすることは、拡大率Rの増加につながる。その上、(III/N)値よりも大きな名目のIII/N比において、成長温度を低くすることは、拡大率Rの増加につながる。このように、名目のIII/N比の値を与える、必要とされる発光スペクトルに依存して、名目のIII/N比を大きくし、及び/又は、成長温度を低くすることは、ワイヤの光学効率の増加につながる活性部の拡大率Rを得ることを可能にする。600~680℃の成長温度T及び0.33~0.60の(III/N)比に対して、発光スペクトルが発光ピークにおいて削減された半値全幅を有する光を発することができるダイオードが得られることを見ることができる。
【0067】
その上、発明者は、単一量子井戸32を有する活性部30のエピタキシャル成長が、量子井戸の外側縁33を囲う保護層34の同時形成を伴っても良いことを示した。その結果、活性部は、GaNの保護層により不動態化された外側縁を有するInGaNの単一量子井戸から形成される。エネルギー分散X線分光分析(EDX)により得られた活性部の横断プロファイルにおけるインジウム及びガリウムの原子比率に対応する図4に示す通り、約5nmの平均厚さを有するGaNの保護層は、InGaNの量子井戸の外側縁の位置にある。もしも、非発光性再結合に潜在的につながる量子井戸のダングリングボンドと関連付けられた表面状態が保護層により不動態化されるならば、単一量子井戸及び保護層の同時形成は活性層の内部量子効率の増加を可能にする。
【0068】
そして、量子井戸32の外側縁33が不動態化された拡大された活性部30が得られ、そのことは、ワイヤの光学効率の増加を可能にする。活性部は75~100nmの高さと、75~100nmの平均直径とを有していても良い。保護層は、2~約10nmの程度の平均厚さを有していても良い。
【0069】
第3工程では、第2ドープ部20が活性部30の上面31から始まるエピタキシャル成長により形成される。このために、インジウムの流束が停止され、次に、名目のIII/N比、ここではGa/N比の値が、第2工程の(III/N)値よりも大きな(III/N)値、好ましくは、1よりも大きく、例えば、約4/3に等しい値にまで上げられる。その上、成長温度は、第2値Tに等しいか、第2値Tよりも小さいか、第2値Tよりも大きくても良く、しかしながら第1値Tよりも小さいままである、例えば、約670℃に等しいT値を有する。このことは、第2ドープ部の拡大に反映される。第2ドープ部は、約350nmの高さと、約150nmの平均直径とを有していても良い。第2ドープ部の成長は、複数の第2ドープ部の間に相互の接触と合体とがあるまで続けられても良く、その結果、実質的に平坦な上面が形成される。このように、単一量子井戸が不動態化された外側縁を有する拡大された活性部を備えた軸方向配置のワイヤが得られる。ここでは、各p型ドープ部の位置で相互に接触するいくつかのワイヤがこのように得られても良い。
【0070】
最後に、最終工程において、導電性でワイヤによる発光に透明な材料で作られた第2分極性電極6が、第2ドープ部20と接触するように上面21上に成膜される。その結果、2つの分極性電極によりワイヤに順方向の電位差を加えることが、発光スペクトルの特性が活性部の量子井戸の組成に依存するような発光につながる。同等の密度のワイヤにおいて、本発明に係るワイヤは、量子井戸が不動態化された外側縁を有する拡大された活性部を有するという点で、先行技術の前述した例のものに比べて光学効率が増加する。
【0071】
図5は、第2の実施の形態に係る光電子素子1の概略断面図であり、それは、ワイヤ2が活性部30の位置において相互に接触するという点において、図1、2に示したものから本質的に異なる。
【0072】
図1の実施の形態と同一の方法で、光電子素子1は、その前面3b上を核形成層5で覆われ、反対面3aが第1分極性電極4を形成する層で覆われた半導体材料の、例えば、高濃度でドープされたn型シリコンの基板3を備える。
【0073】
3次元半導体構造はここでは図2を参照して説明されたものと同一であるか又は類似する。それらは核形成層から基板の前面の(X,Y)平面に実質的に直交する方向に向く長手方向軸Δに沿って延在する軸方向配置のワイヤの形状を有し、各ワイヤ2は、核形成層5と接触する第1ドープ部10と、長手方向軸Δに沿って第1ドープ部10の延長部分に配置された活性部30及び第2ドープ部20とを有する。
【0074】
ここでは、活性部30は、第1ドープ部10のものよりも大きな平均直径の単一量子井戸32を有し、その外側縁33は保護層34で覆われている。この例では、活性部30は、InGaNの単一量子井戸と、GaNの保護層とを有する。
【0075】
各活性部が1つ以上の隣の活性部と接触するように、ワイヤ2は活性部30の位置で相互に接触する。それは、活性部の位置でのワイヤの合体とも呼ばれる。より正確には、活性部30は保護層34の位置で相互に接触し、各活性部の量子井戸32は、相互に接触する保護層34により隣の活性部の量子井戸32から分離される。第1ドープ部10は相互に接触せず、互いに分離する。
【0076】
ここでは、各活性部30は第1ドープ部10から長手方向軸Δに沿って延在する第1部30aを有し、そこでは、量子井戸の外側縁33を覆う保護層34が隣のワイヤ2の活性部の保護層34と出会うまで量子井戸32の局所直径が増加する。そして、第2部30bは第1部30aから延在し、そこでは、量子井戸32が長手方向軸Δに沿って実質的に一定の局所直径を有し、量子井戸32は、長手方向軸Δに沿って相互に接触する保護層34により隣の量子井戸32から分離される。
【0077】
光電子素子は、活性部の上面31から始まって相互に接触する第2ドープ部20を更に備える。このように、第2ドープ部20は、活性部30の全部を連続的に覆うp型ドープ層を形成する点で、図1を参照して説明されたものとは異なる。ここでは、それは(X,Y)平面における光電子素子の横方向の大きさに沿って実質的に均一の厚さを有する。ここでは、p型ドープ層は活性部30との界面に位置する電子遮断層22を有する。p型ドープ層の上面21は分極性電極6により覆われる。
【0078】
このように、活性部30の位置でのワイヤ2の合体、及び、第2ドープ部20の位置でワイヤ2がもはや単独ではないことは、基板の単位領域当たりの光電子素子の発光領域の最適化につながる。その上、各活性部30の1つ又は複数の量子井戸32は、相互に接触する保護層34により隣の活性部30の1つ又は複数の量子井戸32から分離されるので、非発光性再結合は保護層の合体により形成される粒子境界の位置で制限され、その結果、各ワイヤの内部量子効率を増加させる。そして、光電子素子の光学効率は最適化される。
【0079】
次に、図5に示される実施の形態に係る光電子素子を作るための方法の例が説明される。この例では、ワイヤ2は分子線エピタキシャル成長法(MBE)により作られ、GaNに基づいている。各活性部30は、InGaNの単一量子井戸32を有し、保護層34はこの場合GaNで作られる。前述の通りに、保護層はこの場合にAlN、AlGaNのような他のIII/N材料で作られても良い。
【0080】
ワイヤの活性部30の合体は、基板の単位領域当たりの第1ドープ部10の濃度又は表面濃度を調整し、活性部30の拡大率Rを調整することにより得られる。
【0081】
エピタキシャル成長による第1ドープ部10の形成の第1工程は、第1に、成長温度及び名目のIII/V比、ここでは、Ga/Nが第1ドープ部の十分な表面濃度を得るために調整されることを除いて、前述のものと類似する。例として、840℃と5%以内で等しい成長温度の初期値Tは名目のGa/N比の(III/V)初期値の0.5と組み合わされて、0.5~1.5×1010cm-2、例えば、1.0×1010cm-2に実質的に等しい第1ドープ部の表面濃度につながる。第1ドープ部のこの表面濃度は、活性部の合体を可能にする一方で、良い結晶品質を有し、十分に間隔の空いた複数の第1活性部を得ることを可能にする。第2に、名目Ga/N比の(III/V)値は維持され、又は、0.3程度の値まで小さくされても良く、成長温度のT値は維持されても良い。長手方向軸Δに沿った第1ドープ部のエピタキシャル成長が次に行われる。
【0082】
エピタキシャル成長による活性部30の形成の第2工程は、成長温度及びIII/V比、ここでは、金属/Nが活性部の合体を確実にするのに十分な拡大率Rを得るために調整されることを除いて、前述のものと類似する。例として、115%以上の、例えば、115~250%の拡大率は、特に、第1ドープ部の表面濃度が0.5~1.5×1010cm-2であるときに、活性部の合体を得ることを可能にする。その結果、600~680℃の成長温度値Tは、0.33~0.60の金属/N比の(III/V)値と組み合わされて、各活性部内に取り込まれるインジウムの原子比率の均一性を最適化する一方で、良い結晶品質を有する活性部の合体を確実にする。このように、相互に接触する活性部30が得られ、そこでは、InGaNの各単一量子井戸32が、相互に接触する保護層34により隣の活性部30の量子井戸32から分離される。活性部30の上面31は、そして、その上にドープ層20が成膜されても良い実質的に平坦な表面を形成する。
【0083】
エピタキシャル成長による第2ドープ部20の形成の第3工程は、前述したものと同一であるか又は類似する。インジウムの流束が停止され、次に、名目のIII/N比、ここで再びGa/Nの値が第2工程の(III/N)値以上の(III/N)値にまで、好ましくは、1よりも大きく、例えば、約4/3にまで上げられる。その上、成長温度Tは、第2値Tに等しいか小さいか大きくても良く、しかしながら、この場合に、例えば、約670℃に等しい、第1値Tよりも小さいままである。その結果、ワイヤの活性部を連続的に覆い、実質的に一定の厚さを有するp型ドープ層が得られる。
【0084】
最後に、分極性電極層6がドープ層20の上面21上に成膜される。分極性電極を介してワイヤに順方向の電位差を加えることは、光学効率が最適化された、ワイヤによる発光につながる。
【0085】
図6aは、軸方向ワイヤ配置の光電子素子の3次元半導体構造の断面の概略部分図である。3次元半導体構造は図2を参照して説明されたものと類似するが、それとは活性部30が量子井戸を形成する層と障壁層との繰り返しの形状の多数の量子井戸32を有するという点で本質的に異なる。
【0086】
この例では、ワイヤ2は第1ドープ部10を備え、その上では、障壁層の間に挿入された3層の量子井戸32を有する活性部30が長手方向軸Δに沿って延在する。第2ドープ部20は、活性部30上で長手方向軸Δに沿って延在する。ここでは、ワイヤ2は分子線エピタキシャル成長法により得られ、GaNに基づき、この場合、量子井戸を形成する層はInGaNの層である。
【0087】
ここでは、活性部30は、第1ドープ部10から長手方向軸Δに沿って延在するGaNの障壁層の第1部30aを有し、そこでは、量子井戸の局所直径が第1ドープ部10の上面11の位置における第1ドープ部10の局所直径のものに実質的に等しい第1値から第2値にまで増加する。そして、第2部30bは第1部30aから延在し、実質的に同一の局所直径をそれぞれ有する3つの量子井戸32を有する。
【0088】
各量子井戸32は、その外側縁33の位置で、ここではGaN、AlN又はAlGaNの保護層34を用いて覆われる。この保護層34は、2nm以上の、有利には2~15nmの厚さを有している。この例では、保護層34は、量子井戸の外側縁33と接触し、量子井戸の形成と同時に得られる第1外側部34aを有する。それは有利には、第1保護部34aを覆って活性部の側壁35を形成する第2外側部34bを有する。この第2保護部34bは量子井戸の形成工程で別々に形成される。その結果、この第2保護部34bは活性部の側壁35を形成し、第1ドープ部10の外側縁を覆っても良い。
【0089】
活性部30の第1部30aのエピタキシャル形成は、第1ドープ部の成長のT値未満のT値、例えば、600~800℃、例えば、670℃まで成長温度を下げることにより得られても良い。その上、名目のIII/V比、ここでは、Ga/N比は、第1ドープ部の成長の(III/V)値よりも大きい(III/V)値を有している。活性部30のGaNの第1部30aはこのように形成され、その最大局所直径は温度値及びIII/V比に依存する。そして、活性部は実質的に一定の局所直径を有する。
【0090】
量子井戸を形成する層32のエピタキシャル形成は、ワイヤの発光の必要とされる光学特性に応じて、5~70%、好ましくは、10~50%の名目のIn/III比に従うインジウムの流束を導入することにより得られる。その結果、InGaNの量子井戸とGaNの障壁層を形成する層の繰り返しが形成される。量子井戸の形成と同時に、ここではGaNの保護層34が量子井戸32の外側縁33で形成される。
【0091】
次に、保護層34の第2外側部34bの形成の任意工程が行われても良く、その最中にインジウムの流束が停止される。成長温度は、実質的に、活性部の成長に対応する値以上であっても良い。名目のIII/N比の値は、例えば、1.5に実質的に等しい。保護層の第2外側部は、保護層の第1部を覆い、更に、n型第1ドープ部の外側縁を覆っても良い。
【0092】
電子遮断層を有する第2ドープ部20が、前述の動作条件を採用して次に形成される。
【0093】
図5を参照して説明された実施の形態と同様に、光電子素子は、活性部30の位置で相互に接触する複数の3次元半導体構造2を備えていても良い。そして、全く同一の活性部30の量子井戸32は、保護層34の第1外側部34aにより隣の活性部の量子井戸32から分離される。
【0094】
図6bは、軸方向ワイヤ配置の光電子素子の他の3次元半導体構造の断面の概略部分図である。3次元半導体構造は図6aを参照して説明されたものと類似するが、それとは活性部30が複数の障壁層の間に長手方向軸に沿って挿入された量子ドットの形状の多数の量子井戸32を有するという点で本質的に異なる。
【0095】
この種の3次元半導体構造は、図6aの変形例を参照して説明され、それとはIn/III比がしきい値よりも大きな値を有するという点で本質的に異なる方法により得られても良く、当該値はGaNの障壁層に載るInGaNの量子井戸の場合に20%に実質的に等しい。
【0096】
図5を参照して説明された実施の形態と同様に、光電子素子は、活性部の位置で相互に接触する複数の3次元半導体構造を備えていても良い。そして、全く同一の活性部の量子ドットは、保護層の第1外側部により隣の活性部の量子ドットから分離される。
【0097】
特定の実施の形態を今まで説明した。変形の実施の形態及び修正は、当業者にとって明らかであろう。
【0098】
電気信号から始まる発光に適し、その結果、発光ダイオードを形成する3次元半導体構造を説明した。代わりに、当該構造は入射光を検出し、それに応じて電気信号を生成することに適合されても良く、その結果、フォトダイオードを形成する。応用例は、光電子光学又は光起電力技術の分野に関連しても良い。
図1
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b