(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】酸素気密性プラスチック、及び酸素気密性プラスチックから製造された包装材料
(51)【国際特許分類】
C08J 3/20 20060101AFI20220203BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20220203BHJP
C08L 29/04 20060101ALI20220203BHJP
B65D 65/02 20060101ALI20220203BHJP
C08L 101/16 20060101ALN20220203BHJP
【FI】
C08J3/20 Z CEX
C08L101/00 ZBP
C08L29/04 C
B65D65/02 E BRQ
C08L101/16
(21)【出願番号】P 2018539112
(86)(22)【出願日】2017-02-01
(86)【国際出願番号】 EP2017052137
(87)【国際公開番号】W WO2017134096
(87)【国際公開日】2017-08-10
【審査請求日】2019-08-19
(31)【優先権主張番号】102016201498.6
(32)【優先日】2016-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】518261423
【氏名又は名称】クール,ノルベルト
(73)【特許権者】
【識別番号】518261434
【氏名又は名称】ヴァスマー,マルティン
(74)【代理人】
【識別番号】100109553
【氏名又は名称】工藤 一郎
(72)【発明者】
【氏名】クール,ノルベルト
(72)【発明者】
【氏名】ヴァスマー,マルティン
【審査官】加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-118541(JP,A)
【文献】特開平06-263954(JP,A)
【文献】特開平05-125266(JP,A)
【文献】特開2012-149114(JP,A)
【文献】特開2015-227517(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/20
C08L 101/00
C08L 29/04
B65D 65/02
C08L 101/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス透過性が低い包装材料を製造するためのポリマーブレンドであって、
前記ポリマーブレンドは、ポリビニルアルコール(PVOH)と、更なるプラスチックとを含み:
質量ベースの混合比率は、15~70%w/wのポリビニルアルコール(PVOH)と、30~85%w/wの更なるプラスチックとであり;
前記更なるプラスチックは、EN13432及び/又はEN14995に準拠して堆肥化でき、グルコース、リグニン、又はセルロースから製造され
、前記ポリビニルアルコール(PVOH)及び前記更なるプラスチックを、混合、融合及び圧縮して、溶融状態の均質な混合物を得ることによって得られることを特徴とする、ポリマーブレンド。
【請求項2】
前記均質な混合物は、押出成形機又は射出成形機のスクリュを用いて製造できる、請求項1に記載のポリマーブレンド。
【請求項3】
前記均質な混合物は、続いて顆粒化又は一次成形プロセスに供することができる、請求項1又は2に記載のポリマーブレンド。
【請求項4】
前記ポリマーブレンドは、顆粒材料として存在する、請求項1~3のいずれか1項に記載のポリマーブレンド。
【請求項5】
ポリマーブレンド、特に請求項1~4のいずれか1項に記載のポリマーブレンドの製造方法であって、
前記方法は、以下のステップ:
(a)ポリビニルアルコール(PVOH)と更なるプラスチックとを混合するステップであって、前記更なるプラスチックと、PVOHとの、質量ベースの混合比は、85:15~30:70である、ステップ;
(b)前記ステップ(a)で得られた混合物を融合、混合及び圧縮して、均質な混合物を得るステップ
を含む、方法。
【請求項6】
(c)前記ステップ(b)で得られた前記均質な混合物を押出成形するステップを更に含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
(d)前記ステップ(c)で得られた押出成形物を顆粒化するステップを更に含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
(e)前記均質な混合物、前記押出成形物又は顆粒材料を、一次成形するステップを更に含む、請求項5~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
ガス透過性が低い包装材料を製造するための、請求項1~4のいずれか1項に記載のポリマーブレンドの使用。
【請求項10】
射出成形、ディープドロー及び/又は牽引によって包装材料を使用するための、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
前記ガス透過性は、ISO15105‐2に従って測定した場合に、0.1~1×10
‐4
cm
3
/m
2
/日、特に0.15~0.9×10
‐4
cm
3
/m
2
/日である、請求項9又は10に記載の使用。
【請求項12】
前記包装材料は生分解性であり、特にEN13432及び/又はEN14995に準拠して堆肥化できる、請求項9~11のいずれか1項に記載の使用。
【請求項13】
請求項1~4のいずれか1項に記載のポリマーブレンドから少なくともある程度製造された、包装材料。
【請求項14】
一次成形によって、特に射出成形、ディープドロー及び/又は牽引によって製造される、請求項13に記載の包装材料。
【請求項15】
前記包装材料は生分解性であり、特にEN13432及び/又はEN14995に準拠して堆肥化できる、請求項13又は14に記載の包装材料。
【請求項16】
前記包装材料は、ISO15105‐2に従って測定した場合に、0.1~1×10
‐4
cm
3
/m
2
/日、特に0.15~0.9×10
‐4
cm
3
/m
2
/日である、ガス透過性、特に酸素透過性を有する、請求項13~15のいずれか1項に記載の包装材料。
【請求項17】
前記包装材料は、特に食品コンテナとして設計された、食品用の包装材料である、請求項13~16のいずれか1項に記載の包装材料。
以上
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1によるポリマーブレンド、請求項7によるポリマーブレンドの製造方法、請求項11による包装材料を製造するためのポリマーブレンドの使用、及び請求項15による包装材料に関する。
【背景技術】
【0002】
しかしながら、本発明による包装材料は、排他的ではないが特に、食品の包装に好適なものとすることができ、また特に、例えばプラスチック製のコーヒー若しくは茶のカプセルの一部として、液体状、ペースト状、固体状、粉末状、粒子に粉砕された、若しくは注ぐことのできる食品を受承するための、又は乳製品若しくはコーヒー、茶、インスタント飲料若しくはインスタントスープといった抽出製品を受承するための、食品コンテナとして提供できる。しかしながら、本発明による包装材料はとりわけ、医薬製品、医療製品、特に滅菌医療製品の包装に好適なものとすることもでき、これらのために無菌包装に好適なものとすることもでき、又はプリンター若しくはコピーのためのトナー若しくはインクの包装といった、包装材料のガス透過性が低いことが望まれる他の製品のため、若しくは空気感受性電気若しくは電子デバイス等のために提供できる。
【0003】
多くの製品を包装するために、包装材料は、ガス透過性が低く、特に酸素透過性が低い必要がある。例えばこれは、例示的な応用範囲として後に詳細に記載される食品の包装に当てはまるが、本発明による包装材料はこのような応用範囲に限定されず、上述のように、包装材料のガス透過性が低いことが望ましい様々な他の製品にも好適である。
【0004】
原則として、プラスチック包装は不透過性又は気密性ではなく、特に、包装される物品と相互作用し得る酸素の流入に対して密閉性ではない。従って、プラスチック包装を特に酸素感受性食品用の食品コンテナとして使用する場合、上記包装が受承する品物(食品)が酸素に曝露されることによる品質の低下を最小限まで低減するか又は防止するために、上記プラスチック包装は、気密性、耐水性、芳香遮断性、及び場合によっては食品安全性のバリア層を備える必要がある。更に上記バリア層は、プラスチック包装が受承した食品が、比較的長期間が経過した後でもその芳香を失わないことを保証する、芳香遮断性を提供する。例えば排他的なものではないが、プラスチック包装を抽出品受承ユニットとして使用する場合、このような食品コンテナ又はその蓋のフィルム又はバリア層の水溶性物質が貯蔵及び/又は抽出プロセス中に溶媒和又は溶解しないことを保証するために、水蒸気バリアを追加で設けなければならない。
【0005】
特許文献1から、コーヒー、茶等の抽出用材料を受承するためのカプセルが公知である。このカプセルはプラスチックから、特にPBTから、又はPBTファミリーのプラスチックから形成される。特許文献1は、ガスバリア層として、酸素気密性を達成するための表面コーティングを、及び更に、とりわけケイ素を用いたプラズマ蒸発プロセスによってガスバリア層を適用することを提案している。このようなプラズマ蒸発プロセスは、高電圧によって電気的に生成されたアークを用いて(高)真空下で蒸発させられる酸化ケイ素を用い、酸化ケイ素の蒸気は更に、特に真空チャンバ内にある物品、カプセル上に沈着する。食品包装コンテナをコーティングするための上記方法に関して、特許文献2は、酸化ケイ素SiOxをこの目的で使用し、ここでxは2未満、好ましくは0.9未満の数とすることを要求している。酸素気密性を達成するための更なるコーティング方法として、特許文献2はとりわけ、好ましくはオルガノシランが使用されるプラズマ重合を提案している。これらの方法は全て、極めてコストがかかるものでもある、技術的に複雑なプロセスを記述しているため、不利である。更に、例えば比較的長い最低貯蔵寿命を達成するために好適な酸素不透過性を達成するための費用は比較的高く、従って、コーヒーカプセルを更に包装することによって必要な最低貯蔵寿命を達成できる酸素気密性包装バッグに比べて経済的でない場合が多い。
【0006】
特許文献3は、ポリビニルアルコールの酸素不透過性中央層を備える、生分解性包装材料を開示しており、上記酸素不透過性中央層は、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシバレレート又はこれらのコポリマーの水蒸気不透過性層を両側に備え、セルロース誘導体及び/又は紙の層が、これら2つの水蒸気不透過性層それぞれの上に配設される。これは、ポリビニルアルコールの酸素不透過性中央層の両側に、水蒸気不透過性層が設けられ、上記水蒸気不透過性層が、セルロース誘導体及び/又は紙の層で被覆されていることを意味する。従ってこれは、中央にポリビニルアルコールの酸素不透過性中央層を有する、5コート層構造体である。
【0007】
特許文献4は、飲料を調製するためのアルミニウムカプセルを開示しており、これは特に粉砕されたコーヒーで充填でき、またハウジング本体及び閉鎖要素を有する。閉鎖要素は、複数の層、特にPVOHで作製でき、かつPLAの層とセルロース又はPLAのキャリア層との間に配設される、酸素不透過性バリア層を有する、積層フィルムである。更に、酸素不透過性バリア層と上記層との間に、接着層が設けられる。
【0008】
特許文献5は、ガス不透過性が改善された包装材料を製造するために、オレフィン‐ビニルアルコールコポリマーを添加することによって、特にEVOHを添加することによって、ポリブチレンテレフタレート(PBT)のガスバリア特性を改善する。PBT及びEVOHのいずれも、食品包装としての使用に関して議論されていない。
【0009】
従って、食品コンテナ(又は食品コンテナの少なくとも一部)自体を、別個のガスバリア層を適用する必要なく、又は他のいずれの複雑な製造方法を必要とすることなく、製造できる、ガス透過性が低い包装のための材料に対する需要が存在する。特に、例えば、コスト効率が高い方法、特に射出成形、ディープドロー又は牽引といった一次成形法によって、ガス透過性が低い(特に単層の)食品コンテナを、基本的に直接製造できる、プラスチック材料に対する需要が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】国際公開特許第2014/067507号
【文献】独国公開特許第102011052149号
【文献】欧州公開特許第0603876号
【文献】国際公開特許第2015/177591号
【文献】(PCT国内移行)独国特許第68907387号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って本発明が対処する課題は、包装材料又は包装を簡潔かつコスト効率が高い方法で製造できるプラスチック材料を提供することである。更なる実施形態では、上記プラスチック又は上記プラスチックから製造された包装は更に、生分解性であり、特にEN13432及び/又はEN14995に準拠して堆肥化できる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この課題は、請求項1によるポリマーブレンド、及び請求項18による包装材料によって解決される。ポリマーブレンドの好ましい実施形態は、請求項1の従属請求項において開示される。包装材料の好ましい実施形態は、請求項18の従属請求項において開示される。本発明による課題は更に、請求項10によるポリマーブレンドの製造方法、及び請求項14による包装材料を製造するためのポリマーブレンドの使用によって解決され、請求項10及び14の従属請求項はここでも、好ましい実施形態を開示する。
【0013】
本発明によるポリマーブレンドは、15~70%w/wのポリビニルアルコール(PVOH)及び/又はPVOHコポリマー、並びに30~85%w/wの更なるポリマーを含む。
【0014】
本発明によるポリマーブレンドの製造方法は、以下のステップ:(a)ポリビニルアルコール(PVOH)及び/又はPVOHコポリマーと更なるポリマーとを混合するステップであって、上記更なるポリマーとPVOH及び/又はPVOHコポリマーとの質量ベースの混合比は、85:15~30:70である、ステップ;(b)ステップ(a)で得られた混合物を融合、混合及び圧縮して、均質な混合物を得るステップを含む。更なるステップ(c)では、ステップ(b)で得られた上記均質な混合物を押出成形でき、更なるステップ(d)では押出成形物を顆粒化できる。ステップ(b)で得られた均質な混合物、及びステップ(c)で得られた押出成形物又はステップ(d)で製造された顆粒材料は、直接かつ即座に、例えば射出成形、ディープドロー又は牽引といった一次成形プロセスに供することができる。本発明による方法は、本発明によるポリマーブレンドの製造に特に好適である。
【0015】
本発明は更に、ガス透過性が低い包装材料の製造、特に本発明による包装材料の製造のための、本発明によるポリマーブレンドの使用に関する。
【0016】
本発明による包装材料は、少なくともある程度、本発明によるポリマーブレンドから作製される。以下、本発明の更なる詳細及び本発明の更なる実施形態を説明する。しかしながら本発明は以下の詳細な説明に限定されず、以下の詳細な説明は、本発明による教示の例示としての役割のみを果たす。
【0017】
例示的実施形態又は例示的な対象に関連して説明される特徴は、他の全ての例示的実施形態又は他の全ての例示的な対象と組み合わせることができることに留意しなければならない。特に、特段明記されていない限り、本発明によるポリマーブレンドのある例示的実施形態に関連して説明される特徴は、本発明によるポリマーブレンドの他の全ての例示的実施形態、及び本発明による方法の全ての例示的実施形態、本発明による使用、又は本発明による包装材料の全ての例示的実施形態と組み合わせることができ、その逆も成り立つ。
【0018】
特段明記されていない限り、ある用語が「a」、「an」及び「the」等の不定冠詞又は定冠詞を用いて単数形で表されている場合、これは上記用語の複数形も含み、またその逆も成り立つ。本明細書虫で使用される用語「・・・を備える(to comprise)」は、「・・・を含む(to include)」又は「・・・を含有する(to comprise)」の意味を含むだけでなく、「・・・からなる(made of)」及び「本質的に・・・からなる(essentially made of)」も意味することができる。
【0019】
以下では用語「プラスチック」は、用語「ポリマー」と同義としても使用されるものとする。
【0020】
本発明の枠組みにおいて、ポリマー混合物として知られることも多いポリマーブレンドは、特に、少なくとも2つの(異なる)ポリマーの、固体状態での、これら2つのポリマーの間に化学反応が発生しない又はしなかった混合物を指す。このような純粋に物理的な混合物では、使用されるプラスチックの大分子間に化学結合が形成されない。本発明によるポリマーブレンドの例は、PE/PVOH又はPS/PVOHであり、これら2つのプラスチックの名称の間のスラッシュは、これがポリマーブレンドであることを示す。しかしながら、2つの上述の非PVOHプラスチックであるポリエチレン(PE)及びポリスチレン(PS)に加えて、例えばポリプロピレン(PP)又はポリアミド(PA)、及び他の熱可塑性物質を、特に射出成形できる、本発明によるポリマーブレンドからの包装材料の製造のために使用できる。
【0021】
ポリマーブレンド中のPVOH又はPVOHコポリマーの重量比率が15%超である場合、これらから作製されたポリマーブレンドにおいて、酸素気密性の好適な上昇が検出され、酸素気密性は上記重量比率の上昇と共に上昇する。酸素気密性の上昇により、例えば食品である包装された製品の、より長い最低貯蔵寿命を達成でき、これに付随して、包装された食品の品質がより長期間にわたって維持される。PVOHの重量比率を上昇させると、酸素気密性を更に上昇させることができ、非PVOH成分をおよそ70%の重量比率で使用することによって、酸素気密性はある一定の飽和状態に到達する。ポリマーブレンドは、特に20~65%w/w、特に25~60%w/w、特に50%w/w、特に30~50%w/w、例えばおよそ35~40%w/wのPVOH及び/又はPVOHコポリマーを含むことができる。
【0022】
ポリマーブレンドの使用により、単一材料の熱可塑性物質を射出成形のためのベース材料として使用する場合よりも、本発明による包装材料の物理的特性に影響を及ぼす、又は上記物理的特性を制御するのが容易になる。更なる追加のプラスチック層としてPVOHを混合せずに使用しても、酸素気密性食品コンテナが得られるが、このようなPVOH層は水溶性であり、水蒸気バリアで保護しなければならない。これは本発明に比べて、本発明が回避しようとしている多大な追加コストにつながる。更にこのようなPVOH層の機械的特性、例えばその材料硬度は、多くの用途において不十分である。
【0023】
上述のように、ポリマーブレンドは、PVOH又はPVOHコポリマーに加えて少なくとも1つの更なるポリマーを含有する。この更なるポリマーの、ポリマーブレンド中での量的比率(ポリマーが2つ以上である場合には、複数の更なるポリマーの量的比率の合計)は、30~85%w/w、特に35~80%w/w、特に40~75%w/w、特に50~75%w/w、特に50~70%w/w、例えばおよそ60~65%w/wである。
【0024】
上記更なるポリマーに関して、非PVOH又はPVOHコポリマー成分、特に熱可塑性物質又は射出成形可能なプラスチック、例えばポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、ポリアミド(PA)、ポリプロピレン(PP)、又はこれらのポリマーを含有する混合物を使用できる。
【0025】
本発明の更なる好ましい実施形態では、本発明によるポリマーブレンドの上記更なるポリマーは、生分解性ポリマー、特にEN13432及び/又はEN14995に準拠して堆肥化できるプラスチックである。上記更なるポリマーは特に、再生可能な原材料で作製されたバイオポリマーとすることができる。しかしながら、生分解性ポリマーは必ずしも再生可能な原材料から作製しなければならないわけではなく、例えば生分解性の粗油系ポリマーとすることもできる。生分解性ポリマーを本発明によるポリマーの上記更なるポリマーとして使用することは、本発明によるポリマーブレンドで作製された包装材料を堆肥化する場合に特に好ましく、これは、食品等の包装された製品が包装と共に廃棄される場合に特に有利である。例えば、包装材料をコーヒー又は茶のカプセルとして使用した場合、このような場合の使用済みのコーヒー又は茶のカプセルは、その内容物(抽出済みのコーヒー粉末又は抽出済みの茶)と共に、生物系廃棄物中又は(工業用若しくは家庭用)コンポスト中に廃棄できる。その結果、一部の消費者が、エコロジー的観点から、コーヒー又は茶のカプセルといったこのような商品を、差し控えるのを抑制でき、又はこのような製品の受容を増進して、これらのための新たな市場を開拓できる。
【0026】
生分解性ポリマーは、脂肪族及び脂肪族芳香族ポリエステル、ポリエステルアミド、ポリ乳酸、ポリヒドロキシ脂肪酸、デンプン及びその誘導体、タンパク質、リグニン、並びにセルロース誘導体からなる群から選択できる。しかしながら本発明によると、セルロース等の他の天然ポリマー、又は再生可能な原材料をベースとした他のプラスチックも、本発明によるポリマーブレンドの成分として使用できる。本発明によると、生物系ポリマーも使用でき、これは例えば、デンプン、スクロース又はグルコースといった有機化合物から製造される。更に、生物系ポリマーとしては、リグニン系の熱可塑性物質、又は例えば亜麻仁油若しくはヤシ油である油系のエポキシアクリレートも挙げられる。これらのバイオポリマーもまた、本発明の概念に含まれる。生分解性の粗油系ポリマーも、本発明によるポリマーブレンド中の上記更なるポリマーとして使用できる。生分解性の粗油系ポリマーの例としては、特定のポリエステル(特に脂肪族及び脂肪族芳香族ポリエステル)が挙げられるが、ポリビニルアルコール及びポリブチレンアジピン酸テレフタレート(PBAT)、ポリブチレンスクシネート(PBS)、ポリカプロラクトン(PCL)又はポリグリコリド(PGA)も挙げられる。本発明において生物系ポリマーと呼ばれるプラスチックとしては、例えばポリヒドロキシアルカノエート、ポリヒドロキシブチレート、ポリカプロラクトン、ポリエステル、デンプン、Ingeo TM、リグニン、天然樹脂、天然蝋、天然油、天然脂肪酸、セルロース、タンパク質又はグルコースが挙げられる。本発明に従って使用できる生分解性プラスチックの上記リストは、排他的なものとなることを意図したものではない。更に、複数の生分解性ポリマーの組み合わせを使用することもできる。
【0027】
生分解性ポリマー及びPVOHで作製された本発明によるポリマーブレンドを用いて、酸素気密性かつ生分解性の包装材料を製造でき、これは、最低貯蔵寿命の延長及びゴミの削減の両方に寄与する。本発明によるポリマーブレンド中で使用される生分解性ポリマーは好ましくは、EN13432又はEN14995に準拠した生分解性を有し、すなわちこれらのポリマーの生分解は、工業用堆肥製造プラントで行うことができる。これは、分解を工業用堆肥製造プラントの条件下で行うことができるため、すなわち分解が、高温、高湿度及び所定の酸素含有量において数週間で行われるため、有利である。
【0028】
更なる実施形態では、上記更なるポリマーは、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド(PA)及びポリスチレン(PS)並びにこれらの組み合わせからなる群、又は包装産業において一般的な別のプラスチックから選択できる。上記更なるポリマーのためのこれらの材料は、包装材料の生分解性が必要とされていないか、更には望ましくない応用範囲に特に好適である。しかしながら、これらのポリマーは、使用される上記更なるポリマーによっては、加工、耐水蒸気性、機械的特性、コスト等に関する利点を伴うことができる。同時に、酸素気密性の向上が、本発明によるポリビニルアルコール(PVOH)及び/又はPVOHコポリマーの添加によって達成される。
【0029】
一実施形態では、本発明によるポリマーブレンドは、ポリビニルアルコール(PVOH)及び/又はPVOHコポリマーと更なるポリマーとを第1のステップにおいて混合することによって得ることができ、少なくともある程度は時間的に並行して実施できる第2のステップでは、更なる混合下での融合及び圧縮を行い、溶融状態の均質な混合物を得る。特に溶融物としての、この均質な混合物は、例えば射出成形、ディープドロー又は牽引プロセスである一次成形プロセスに直接供給できる。特に本発明によるポリマーブレンドは、以下で更に詳細に記載するような、本発明によるポリマーブレンドの製造方法によって得ることができる。
【0030】
一実施形態では、本発明によるポリマーブレンドは顆粒材料として存在する。ポリマーブレンドの、この管理が容易な形態により、例えば射出成形、ディープドロー、牽引等による、例えば包装材料への上記ポリマーブレンドの更なる加工が容易になる。またこの実施形態により、ポリマーブレンドの、製造場所からこれを更に加工する場所への輸送が容易になり、またポリマーブレンドの貯蔵も容易になる。
【0031】
本発明によるポリマーブレンドの製造方法は、以下のステップを含む:(a)ポリビニルアルコール(PVOH)及び/又はPVOHコポリマーと更なるポリマーとを混合するステップであって、上記更なるポリマーと、PVOH及び/又はPVOHコポリマーとの、質量ベースの混合比は、85:15~30:70である、ステップ;(b)ステップ(a)で得られた混合物を融合、(更に連続的に)混合、及び圧縮して、均質な混合物を製造するステップ。更なるステップでは、ステップ(b)で得られた上記均質な混合物を押出成形に供することができ、得られた押出成形物を更なるステップ(d)で顆粒化できる。本発明による方法は、本発明によるポリマーブレンドの製造に特に好適である。
【0032】
一実施形態では、ステップ(a)による混合及び/又はステップ(b)による融合は例えば、場合によっては改造された、射出成形機のスクリュ、又は二重スクリュ押出成形機で実行できる。その結果、ポリマー成分の特に均質な混合を維持しながら、更に強力な相互混合を達成でき、これは、本方法の産物として得られたポリマーブレンドから作製された包装材料の、一様に低いガス透過性につながる。
【0033】
理論に縛られることを望むものではないが、本発明の発明者らは、ポリマーブレンドの製造中に使用されるポリマー間に化学的化合物が略形成されず、その代わりに、これら2つの異なるポリマーのポリマー鎖が絡み合って互いを担持することにより、得られるポリマー化合物のガス透過性が低下し、特に酸素気密性が改善されると考えている。
【0034】
本発明による方法の一実施形態では、上記更なるポリマーとPVOH及び/又はPVOHコポリマーとの混合比率は、特に80:20~35:65、特に75:25~40:60、特に75:25~50:50、70:30~50:50、特に65:35~60:40とすることができる。
【0035】
本発明によるポリマーブレンドは、特にガス透過性が低い包装材料の製造のため、特に酸素透過性が低い本発明による包装材料の製造のために使用できる。特に、本発明によるポリマーブレンドは、射出成形、ディープドロー及び/又は牽引による包装材料の製造のために使用できる。
【0036】
本発明の枠組みにおいて、用語「低いガス透過性(low gas permeability)」は特に、ISO15105‐2に従って測定した場合に0.1~1×10‐4cm3/m2/日である、ガス透過性、特に酸素透過性を指すことができる。この測定は特に、1バールの大気圧で、すなわちおよそ0.21バールの酸素分圧で、ガス透過性が測定される試料の厚さ0.5mmにおいて行うことができる。
【0037】
よって、本発明によるポリマーブレンドは、ISO15105‐2に従って測定したガス透過性が0.1~1×10‐4cm3/m2/日、特に0.15~0.9×10‐4cm3/m2/日、特に0.2~0.8×10‐4cm3/m2/日である包装材料を製造するために使用できる。
【0038】
更なる実施形態では、本発明によるポリマーブレンドは、EN13432及び/又はEN14995に準拠して堆肥化できる生分解性包装材料を製造するために使用できる。この目的のために、本発明によるポリマーブレンドは、PVOH及び/又はPVOHコポリマーに加えて、上記更なるポリマーとして、例えば上で詳述したような特定の生分解性ポリマーを含有する。
【0039】
本発明による包装材料は少なくとも部分的に、本発明によるポリマーブレンドから作製される。特に、包装として役立てることができる少なくとも1つのコンテナ及び/又は1つの蓋等の、本発明による包装材料の少なくとも一部を、本発明によるポリマーブレンドから作製できる。しかしながら、本発明によるポリマーブレンドに加えて、本発明による包装材料を、1つ又は複数の更なる成分から作製することも可能である。しかしながら、更なる実施形態では、包装材料は、本発明によるポリマーブレンドのみから作製される。
【0040】
本発明による包装材料は、特に射出成形、ディープドロー及び/又は牽引によって、ポリマーブレンドから製造できる。一実施形態では、包装材料は、物品を受承又は包装するためのコンテナ、又はその他の3次元成形された本体として設計され、上記成形本体は、射出成形及び/又はディープドローによって、本発明によるポリマーブレンドから製造できる。更なる実施形態では、包装材料はフィルムの形状を有することができ、これは物品のラッピング、収縮ラッピング又は包装に好適なものとすることができ、また例えば牽引によって製造できる。
【0041】
本発明による包装材料は好ましくは、ガス透過性が低い。特に本発明による包装材料は、ISO15105‐2に従って測定したガス透過性が0.1~1×10‐4cm3/m2/日、特に0.15~0.9×10‐4cm3/m2/日、特に0.2~0.8×10‐4cm3/m2/日であるものとすることができる。
【0042】
更なる実施形態では、本発明による包装材料は、生分解性、特にEN13432及び/又はEN14995に準拠して堆肥化できるものとすることができる。この目的のために、本発明による包装材料は好ましくは、PVOH及び/又はPVOHコポリマーに加えて、上記更なるポリマーとして、例えば上で詳述したような特定の生分解性ポリマーを含有する、本発明によるポリマーブレンドから製造される。
【0043】
本発明による包装材料は例えば、食品用の包装材料とすることができる。特に本発明による包装材料は、食品コンテナとして設計できる。しかしながら冒頭で言及したように、本発明による包装材料は、医薬製品、医療製品、特に滅菌医療製品といった空気感受性製品のための包装材料とすることもでき、これらのために無菌包装に好適なものとすることもできる。しかしながら、本発明による包装材料は、プリンター若しくはコピーのための空気感受性トナー若しくはインクの包装のため、又は空気感受性電気若しくは電子デバイス等のためにも使用できる。
【0044】
本発明を、具体的な実施形態及び実施例を用いて説明した。しかしながら本発明は、上述の実施形態及び実施例に限定されず、その様々な修正が、本発明の範囲を超えることなく可能である。