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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】胆汁鬱滞性疾患の処置の方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/192 20060101AFI20220119BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20220119BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20220119BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20220119BHJP
   A61K 9/02 20060101ALI20220119BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20220119BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20220119BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20220119BHJP
   A61K 9/22 20060101ALI20220119BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
A61K31/192
A61K9/10
A61K9/06
A61K9/20
A61K9/02
A61K9/14
A61K9/48
A61K9/12
A61K9/22
A61P1/16
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018550793
(86)(22)【出願日】2017-03-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-04-11
(86)【国際出願番号】 EP2017057634
(87)【国際公開番号】W WO2017167935
(87)【国際公開日】2017-10-05
【審査請求日】2020-01-16
(31)【優先権主張番号】16305381.2
(32)【優先日】2016-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503067111
【氏名又は名称】ジェンフィ
【氏名又は名称原語表記】GENFIT
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】アンフ,レミィ
【審査官】伊藤 幸司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0197606(US,A1)
【文献】HEPATOLOGY,2013年,58(6),pp.1941-1952
【文献】Therapeutic Advances in Gastroenterology,2016年02月17日,9(3),pp.376-391
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
胆汁鬱滞性疾患を処置するための、エラフィブラノール又はその薬学的に許容し得る塩を含む医薬組成物。
【請求項2】
1回の投与当たり0.01mg~1gの間で変動する用量で投与するための、請求項1に記載の医薬組成物
【請求項3】
1回の投与当たり1mg~150mgで変動する用量で投与するための、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
1回の投与当たり70mg~130mgで変動する用量で投与するための、請求項3に記載の医薬組成物
【請求項5】
射用懸濁剤、ジェル剤、油剤、丸剤、坐剤、粉剤、ジェルキャップ剤、カプセル剤、エアロゾル剤の剤形で、または持続および/もしくは緩徐放出を確保するガレヌス剤形またはデバイスの手段で製剤化されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬組成物
【請求項6】
胆汁鬱滞性疾患が、原発性胆汁性胆管炎(PBC)、原発性硬化性胆管炎(PSC)、妊娠時肝内胆汁鬱滞、進行性家族性肝内胆汁鬱滞、胆管閉鎖、胆石症、感染性胆道炎、ランゲルハンス細胞組織球増殖症を伴う胆管炎、アラジール症候群、非症候性管欠乏、薬物性胆汁鬱滞、および完全非経口栄養法に伴う胆汁鬱滞からなる群より選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の医薬組成物
【請求項7】
胆汁鬱滞性疾患がPBCまたはPSCである、請求項6に記載の医薬組成物
【請求項8】
胆汁鬱滞性疾患がPBCである、請求項7に記載の医薬組成物
【請求項9】
80または120mg/日の用量で1日1回経口投与するための、請求項1~8のいずれか一項に記載の医薬組成物
【請求項10】
PBCを有しかつUDCAへの応答が不適切な患者へ経口投与するための、請求項9に記載の医薬組成物
【請求項11】
別の抗胆汁鬱滞剤と組み合わせて使用するための、請求項1~10のいずれか一項に記載の医薬組成物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療の分野に、特に、胆汁鬱滞性疾患、より具体的にはPBCおよび/またはPSCの処置に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
本発明は、2つの別個の病理学:PBC(原発性胆汁性胆管炎、以前は原発性胆汁性肝硬変と命名されていた(Beuers et al, 2015)および/またはPSC(原発性硬化性胆管炎)によっても主に特徴付けられる、胆汁鬱滞または胆汁鬱滞性疾患に取り組む。
【0003】
肝臓の細胞は、胆汁を産生し、これは肝臓内の管を通って胆嚢へ流れる。胆汁は、肝臓で作られる消化液である。それは、胆管を通って胆嚢および小腸へ移動し、そこで、脂肪および脂肪性ビタミンの消化を助ける。
【0004】
胆汁鬱滞は、胆汁形成または胆嚢および十二指腸(小腸の第一節)への胆汁流の障害から生じる病態である。胆汁鬱滞の影響は、絶大かつ広範で、深刻化する肝疾患および全身疾患、肝不全、および肝移植の必要性を導く。
【0005】
胆汁鬱滞は、肝内性または肝外性として分類され得る。肝内胆汁鬱滞は、毛細胆管および肝内胆管が主に関与する。肝外胆汁鬱滞は、肝外胆管、総肝管または総胆管が関与する。
【0006】
原発性胆汁性胆管炎、またはPBCは、肝臓内の小~中サイズの胆管(胆汁を運ぶ管様構造体)をゆっくり破壊する、慢性炎症性の肝内障害、または長期にわたる肝障害である。PBCを有する患者では、胆管は、炎症によって破壊される。これによって、胆汁が肝臓内に残留し、そこで、緩徐な傷害が、肝細胞に損傷を与え、かつ、肝硬変、または肝臓の瘢痕を引き起こす。
【0007】
PBCは、有病率が100000当たり40例の奇病と見なされる。PBCの診断は、典型的には、30歳~60歳の間に確立される。PBCは、あらゆる人種で発症し、そして、症例の90%が女性で起こる。この疾患は、肝硬変に起因する死亡の2~3%を占める(Boonstra et al, 2012; Zetterman, 2015)。
【0008】
原発性胆汁性胆管炎(PBC)は、以前は原発性胆汁性肝硬変と命名されていたが、世界中の医療当局者は、原発性胆汁性肝硬変の名称を原発性胆汁性胆管炎に変更することを大いに支持している。肝硬変は、後期にのみ生じるため、原発性胆汁性肝硬変という名称は、実際には、病気の初期の患者には間違った名称である。原発性胆汁性胆管炎への名称の変更は、患者にとっても世界の医学界にとってもより良い(Beuers et al, 2015)。
【0009】
遺伝的要因または環境要因がPBCのリスクと関連しているが、その原因はまだ分かっておらず、そして、ほとんどの専門家は、PBCを自己免疫疾患と見なしている。
【0010】
PBCは、ゆっくり進行する。多くの患者は、診断後10~15年以上にわたり活動的かつ生産的な生活を送る。診断の時点で症状を示さない患者は、しばしば、数年間無症状のままである。処置中に正常な肝臓検査を有する患者は、正常な平均余命を有し得る。PBCは、慢性疾患であり、とりわけ肝硬変発症後に、生命を脅かす合併症を導き得る。
【0011】
最初の兆候は、全身性疲労(症例の70%で)ならびに掻痒(pruritus)およびかゆみ(itching)の出現である。しかしながら、患者の大部分は、疾患の初期では無症候性である。診断は、抗ミトコンドリア抗体(AMA、自己免疫性を反映する)、およびアルカリホスファターゼなどの肝酵素の測定を含む、標準的な生物医学的分析によって確立される。
【0012】
ウルソデオキシコール酸(UDCA)およびオベチコール酸(OCA)は、PBCの処置のために、FDAによって承認されている唯一の治療法である(Purohit & Cappell, 2015)。UDCAは、PBCのための第一選択治療であるが、患者の60%にしか効果的でない。他の40%は、処置に対して弱く応答するか、または全く応答しないかであり、それ故、肝硬変、肝不全を発症するリスクが高く、最終的には肝移植が必要となる。
【0013】
原発性硬化性胆管炎(PSC)は、肝外および肝内の胆管にゆっくり損傷を与える慢性疾患、または長期にわたる疾患である。PBCを有する患者では、胆管は、炎症によって破壊され、PSCを有する患者では、胆管は、炎症および劣化に起因して閉塞される。両方の場合に、これによって、胆汁が肝臓内に蓄積し、そこで、肝細胞に徐々に損傷を与え、かつ、肝硬変、または肝臓の損傷を引き起こす。
【0014】
PBCについて記載の通り、原因は、まだ分かっていないが、免疫系が主要な役割を果たしていると考えられる。患者の約70パーセントが男性である。それは、細菌またはウイルス感染にも、免疫系の問題にも関連し得る。遺伝的要因も役割を果たし得る。PSCは、珍しい病気と見なされるが、最近の研究は、PSCが、これまで考えられていたよりも一般的であり得ることを示唆している。この疾患は、しばしば、出血性直腸結腸炎などの腸の炎症性疾患を伴い、この疾患と関連する肝異常の40%を占める。
【0015】
それは、圧倒的に男性に影響を及ぼす(患者の70%)、推定有病率が10000人当たり1~5例の奇病である。
【0016】
PSCは、非常にゆっくり進行する。多くの患者は、症状が発生する前に疾患を数年間患う場合がある。症状は、安定なレベルで留まることも、行ったり来たりすることも、徐々に進行することもある。肝不全は、診断後10~15年で生じ得るが、これは、一部のPSC患者にとってはさらに長い時間を要し得る。PSCを有する多くの人は、最終的には、典型的には疾患を有すると診断された約10年後に、肝移植が必要となる。PSCはまた、胆管癌を導き得る。疾患をモニタリングするために内視鏡検査およびMRI検査が行われ得る。
【0017】
PSCを有する多くの人は、とりわけ疾患の初期には、症状が全く現れない。症状が生じるとき、最も一般的なことは、疲労、掻痒、または皮膚のかゆみ、ならびに黄疸、皮膚および眼の黄変である。これらの症状は、現れては消えることもあるが、これらは時間と共に悪化し得る。疾患が継続するにつれて、胆管は、影響を受けるようになり、発熱、悪寒および腹痛のエピソードを導き得る。
【0018】
多くのPSC患者は症状を有さないので、その疾患は、しばしば、ルーチンな肝臓血液検査の異常な結果を通して発見される。診断は、生化学的解析、組織学的解析および画像解析の組み合わせに基づいて完了する。正式な診断は、通常、胆管造影、胆管への色素の注射を伴うX線検査、またはMRIによってなされる。
【0019】
UDCA処置は、一部の患者にとっては有益であり得るが、現在のところ、死亡リスク、または依然として患者の生存の唯一の解決策として残る肝移植の必要性を大幅に低減する治療法はない。
【0020】
胆汁鬱滞性疾患、特にPSCおよび/またはPBCの管理のための新たな治療選択肢の必要性は、依然として明確でありかつ緊急を要する。
【0021】
非アルコール性脂肪性肝炎の処置のために、エラフィブラノールがGenfitによって開発されている。本発明者らは、ここで、エラフィブラノールのプロファイルがまた、エラフィブラノールがPBCの処置にとって治療上有用なものとなることを示す。
【0022】
発明の概要
臨床研究は、驚くべきことに、患者を1-[4-メチルチオフェニル]-3-[3,5-ジメチル-4-カルボキシジメチルメチルオキシフェニル]プロパ-2-エン-1-オン(エラフィブラノール、かつてはGFT505と呼ばれていた)で処置すると、血漿中の関連する生化学マーカーの低減をもたらすことを示しており、このことは、この化合物が胆汁鬱滞性疾患の処置にとって有利であることを実証している。
【0023】
本発明は、胆汁鬱滞性疾患の処置に使用するためのエラフィブラノールに関する。
【0024】
本発明はまた、胆汁鬱滞性疾患を処置するための医薬組成物の調製におけるエラフィブラノールの使用を提供する。
【0025】
さらなる実施態様において、本発明はまた、胆汁鬱滞性疾患を処置するための医薬の製造におけるエラフィブラノールの使用を開示する。
【0026】
本発明は、さらに、胆汁鬱滞性疾患を処置するためのそれを必要とする被験体における方法であって、治療有効量のエラフィブラノールを投与し、特にそれによって胆汁鬱滞の低減を誘導することを含む方法に関する。
【0027】
本発明の特定の実施態様において、エラフィブラノールは、1回の投与当たり0.01mg~1gの間、優先的には1回の投与当たり1mg~150mg、より好ましくは70mg~130mgで変動する用量で投与される。特定の実施態様において、エラフィブラノールは、1日1回投与される。別の特定の実施態様において、エラフィブラノールは、80または120mgの用量で1日1回投与される。
【0028】
本発明はまた、胆汁鬱滞性疾患を処置するのに使用するための、化合物エラフィブラノールを含む医薬組成物を提供する。
【0029】
本発明によれば、医薬組成物は、注射用懸濁剤、ジェル剤、油剤、丸剤、錠剤、坐剤、粉剤、ジェルキャップ剤、カプセル剤、エアロゾル剤の剤形で、あるいは持続および/または緩徐放出を確保するガレヌス剤形またはデバイスの手段で製剤化され得る。
【0030】
特に、医薬組成物は、化合物エラフィブラノールと薬学的に許容し得る担体および/または賦形剤とを含む。
【0031】
本発明の別の実施態様において、本発明はまた、胆汁鬱滞性疾患を処置するためのまたは胆汁鬱滞性疾患を処置するのに使用するためのキットであって、エラフィブラノールを含むキットを開示する。
【0032】
本発明によれば、開示される方法、化合物、使用、組成物またはキットは、好ましくは、原発性胆汁性胆管炎、原発性硬化性胆管炎、妊娠時肝内胆汁鬱滞、進行性家族性肝内胆汁鬱滞、胆管閉鎖、胆石症、感染性胆道炎、ランゲルハンス細胞組織球増殖症を伴う胆管炎、アラジール症候群、非症候性管欠乏(Nonsyndromic ductal paucity)、薬物性胆汁鬱滞、および完全非経口栄養法に伴う胆汁鬱滞からなる群より選択される胆汁鬱滞性疾患の処置に関係する。
【0033】
好ましい実施態様において、胆汁鬱滞性疾患は、PBCまたはPSCである。
【0034】
別の好ましい実施態様において、胆汁鬱滞性疾患は、PBCである。
【0035】
図面および表の説明
図面、表、および本文において使用される略称:
AE 有害事象
ALP アルカリホスファターゼ
ALT アラニントランスアミナーゼ
AMA 抗ミトコンドリア抗体
ASBTi 頂端側ナトリウム共依存性胆汁酸輸送体阻害剤
AST アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ
BCL6 B細胞リンパ腫6
C4 血清7α-ヒドロキシ-4-コレステン-3-オン
CDCA ケノデオキシコール酸
CK-18 サイトケラチン-18
CPK クレアチンホスホキナーゼ
DCA デオキシコール酸
ECG 心電図
eGFR 推定糸球体濾過量
FDA 米国食品医薬品局
FGF19 線維芽細胞増殖因子19
FXR ファルネソイドX受容体
γGT ガンマ-グルタミル-トランスフェラーゼ
HBV B型肝炎ウイルス
HCB C型肝炎ウイルス
HDL-C 高密度リポタンパク質-コレステロール
HIV ヒト免疫不全ウイルス
IC インフォームドコンセント
ICP 妊娠時肝内胆汁鬱滞
IgM 免疫グロブリンM
IL-6 インターロイキン-6
IRB 治験審査委員会
ITT 治療企図
IVRS 自動音声応答システム
IWRS 自動ウェブ応答システム
LDL-C 低密度リポタンパク質-コレステロール
MELD 末期肝疾患モデル
MRI 核磁気共鳴画像法
NASH 非アルコール性脂肪性肝炎
NF-κB 核内因子カッパーB
NOX NADPHオキシダーゼ
OCA オベチコール酸
PBC 原発性胆汁性胆管炎
PFIC 進行性家族性肝内胆汁鬱滞
PK 薬物動態学
PPAR ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体
PSC 原発性硬化性胆管炎
QOL クオリティ・オブ・ライフ
TG トリグリセリド
TGF-β トランスフォーミング増殖因子ベータ
TIPS 経頸静脈的肝内門脈体循環シャント
TNF-α 腫瘍壊死因子アルファ
TPN 完全非経口栄養法
UDCA ウルソデオキシコール酸
ULN 正常上限
VAS 視覚的アナログスケール
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】アルカリホスファターゼの量 両エラフィブラノール用量(80mgおよび120mg)で処置されたNASH患者は、プラセボ群と比較してアルカリホスファターゼレベルを改善した。図1は、有効性評価セット(n=237)の処置群における肝酵素のベースラインからの変化を示す。結果を、プラセボ(n=77)、エラフィブラノール80mg(n=82)およびエラフィブラノール120mg(n=78)を用いた処置の間のベースラインからの変化の平均値で表す。エラーバーは、95%Clを表す。
図2】γ-GTの量 両エラフィブラノール用量(80mgおよび120mg)で処置されたNASH患者は、プラセボ群と比較してγ-GTレベルを改善した。図2は、有効性評価セット(n=237)の処置群における肝酵素のベースラインからの変化を示す。結果を、プラセボ(n=77)、エラフィブラノール80mg(n=82)およびエラフィブラノール120mg(n=78)を用いた処置の間のベースラインからの変化の平均値で表す。エラーバーは、95%Clを表す。
図3a】C4の量 両エラフィブラノール用量(80mgおよび120mg)で処置されたNASH患者は、プラセボ群と比較してC4レベルを改善した。図3aは、有効性評価セット(n=62)の処置群におけるベースラインからの変化を示す。結果を、プラセボ(n=23)、エラフィブラノール80mg(n=16)およびエラフィブラノール120mg(n=23)を用いた処置の間のベースラインからの変化の平均値で表す。
図3b】C4の量 両エラフィブラノール用量(80mgおよび120mg)で処置された患者は、プラセボに対して報告されるC4レベルを改善した。図3bは、有効性評価セット(n=62)のプラセボ群から処置群への変化を示す。結果を、プラセボ(n=23)、エラフィブラノール80mg(n=16)およびエラフィブラノール120mg(n=23)を用いた処置の間のベースラインからの変化の平均値で表す。
【0037】
発明の詳細な説明
胆汁鬱滞または胆汁鬱滞性疾患は、肝細胞による分泌不全(肝臓の細胞の胆汁鬱滞)にまたは肝内もしくは肝外の胆管を通過する胆汁流の閉塞(閉塞性胆汁鬱滞)に起因する、胆汁流の減少として定義される。臨床業務では、胆汁鬱滞は、肝臓からの胆汁の流れが減速されるかまたは遮断される任意の病態である。
【0038】
胆汁鬱滞性疾患の例は、原発性胆汁性胆管炎(PBC)(かつては原発性胆汁性肝硬変と命名されていた)、原発性硬化性胆管炎(PSC)、妊娠時肝内胆汁鬱滞(ICP)、進行性家族性肝内胆汁鬱滞(PFIC)、胆管閉鎖、胆石症、感染性胆道炎、ランゲルハンス細胞組織球増殖症を伴う胆管炎、アラジール症候群、非症候性管欠乏、薬物性胆汁鬱滞、完全非経口栄養法(TPN)に伴う胆汁鬱滞である。
【0039】
特定の実施態様において、処置されるべき被験体は、PBCを有する。PBCは、多くの血液生化学パラメーターの変化によって特徴付けられる。患者の血清は、アルカリホスファターゼ(ALP)、γ-グルタミルトランスフェラーゼ(ガンマグルタミルトランスペプチターゼ、γ-GT)、5’-ヌクレオチダーゼ(5’-NT)、およびロイシンアミノペプチダーゼ(LAP)の増強された活性、胆汁酸、コレステロール、リン脂質、銅、γ-グロブリン、およびビリルビンのより高いレベル、ならびに主にアルブミン画分を消費した総タンパク質のより低いレベルを示す。PBCでは、肝胆汁部分における胆汁酸、コレステロール、およびレシチンのレベルの低下と肝細胞および血液中のそれらの同時の上昇がある(Reshetnyak, 2015)。胆汁酸前駆体C4(7α-ヒドロキシ-4-コレステン-3-オン)(C4)の変化を評価して、PBCを特徴付けることができる。
【0040】
特定の実施態様において、患者は、PBCを有し、UDCAに少なくとも部分的に応答する。別の実施態様において、患者は、PBCを有し、UDCAには十分に応答しない。特定の実施態様において、エラフィブラノールは、好ましくは経口で、PBCを有しかつUDCAへの応答が不適切な患者に、特に80または120mgの用量で投与される。
【0041】
用語「有効量」または「治療有効量」は、所望の治療結果を産生するのに十分な化合物の量を指し、そして、エラフィブラノールは、所望の効果を呈するのに十分な量で投与される。特定の局面において、所望の効果は、胆汁鬱滞の低減の兆候である、アルカリホスファターゼおよび/またはγ-GTレベルの改善である。したがって、本発明はまた、それを必要とする被験体におけるALPおよび/またはγ-GTレベルの改善において使用するためのエラフィブラノールに関する。特に、エラフィブラノールは、ALPおよび/またはγ-GTの活性を低下させるために投与される。
【0042】
特定の実施態様において、エラフィブラノールは、ALP、アルブミンおよび/またはビリルビンレベルを正常化するためにPBCを有する被験体に投与される。
【0043】
特定の実施態様において、被験体は、PBCを有し、そして、その処置は、1.67×ULN(正常上限)より低いALPのレベルおよび正常範囲内の総ビリルビンをもたらす。総ビリルビンの参照範囲は、0.2~1.2mg/dLである。直接ビリルビンの参照範囲は、0.1~0.4mg/dLである。この実施態様の特定の変形において、エラフィブラノールは、ALPレベルを少なくとも15%減少させるために投与される。
【0044】
別の実施態様において、被験体は、PBCを有し、そして、その処置は、2×ULN(正常上限)より低いALPのレベルおよび正常範囲内の総ビリルビンンをもたらす。この実施態様の特定の変形において、エラフィブラノールは、ALPレベルを少なくとも40%減少させるために投与される。
【0045】
特定の実施態様において、エラフィブラノールは、CDCA、コール酸、リトコール酸およびDCAレベルなどの胆汁酸レベルを改善するために、PBCを有する被験体に投与される。
【0046】
さらなる実施態様において、エラフィブラノールは、Paris I、Paris II、Toronto I、Toronto IIまたはUK-PBCリスクスコアを改善するために投与される。
【0047】
別の実施態様において、エラフィブラノールは、PBCを有する被験体に、以下のために投与される:
-AST、γGT、5’-ヌクレオチダーゼ、総ビリルビン、コンジュゲートビリルビン、ALTおよびアルブミンレベルを改善する;
-脂質パラメーターを改善する
-C4および/またはFGF19レベルを改善する
-IgMレベルを改善する;および
-5D-かゆみスケール、PBC 40 QOL、VASを改善する。
【0048】
用語「処置」または「処置する」は、胆汁鬱滞性疾患のそれを必要とする被験体における治療、予防、または防止を指す。処置は、公表された疾患の進行を予防、治癒、遅延、反転、または減速させて、それによって患者の病態を改善するための、該疾患を有する被験体(例えば、患者)へのエラフィブラノールの投与(例えば、エラフィブラノールを含む医薬組成物の投与を介する)を伴う。処置はまた、健康な被験体または胆汁鬱滞性疾患を発症するリスクのある被験体へも投与され得る。
【0049】
用語「被験体」は、哺乳動物、より特定するとヒトを指す。本発明に係る処置されるべき被験体は、以前のおよび/または現在の薬物処置、関連する病理学、遺伝子型、リスク因子への曝露、ならびに、任意の好適な免疫学的、生化学的、または酵素的方法の手段によって評価できる任意の他の関係のあるバイオマーカーなどの、胆汁鬱滞の病理学的過程と関連する数種の基準に基づいて適切に選択され得る。処置されるべき被験体は、PBCを有するものであり、以下の通り特徴付けられる:
-以下の3つの診断因子の少なくとも2つの存在:
(i)0日目(無作為化来院)前の少なくとも6ヶ月間の上昇したALPレベルの履歴
(ii)陽性抗ミトコンドリア抗体(AMA)力価(免疫蛍光で>1/40または酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)によるM2陽性またはPBC特異的抗核抗体陽性)
(iii)PBCと一致する肝生検
-ALP≧1.67×正常上限(ULN)
-場合により、スクリーニング来院前の少なくとも12ヶ月間UDCAを服用(≧6ヶ月間の安定用量)。
【0050】
エラフィブラノールは、異なる安定な異性体形態を有することができる。
【0051】
エラフィブラノールの合成は、例えば、WO2004/005233の化合物29について記載の通り行うことができる。
【0052】
エラフィブラノールは、エラフィブラノールの有機または無機の塩基または酸から得られるわずかに毒性または無毒の塩である薬学的に許容し得る塩として製剤化することができる。これらの塩は、化合物の最終精製工程の間に、またはその前に精製された化合物に塩を組み込むことによって、得ることができる。
【0053】
胆汁鬱滞性疾患の処置のためのエラフィブラノールを含む医薬組成物は、薬学的状況内で許容し得る1種または数種の賦形剤またはビヒクル(例えば、薬学的使用に適合しかつ当業者に周知の、食塩溶液、生理溶液、等張溶液など)を含むことができる。これらの組成物は、分散剤、可溶化剤、安定剤、保存料などの中から選択される1種または数種の作用物質またはビヒクルを含むことができる。これらの製剤(液体および/または注射用および/または固体)に有用な作用物質またはビヒクルは、特定すると、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリソルベート80、マンニトール、ゼラチン、ラクトース、植物油、アカシア、リポソームなどである。これらの組成物を、注射用懸濁剤、ジェル剤、油剤、丸剤、坐剤、粉剤、ジェルキャップ剤、カプセル剤、エアロゾル剤などの剤形で、最終的には持続および/もしくは緩徐放出を確保するガレヌス剤形またはデバイスの手段で製剤化することができる。この種類の製剤について、セルロース、炭酸塩またはデンプンなどの作用物質を有利に使用することができる。
【0054】
エラフィブラノールは、上に定義した通りの医薬組成物を使用することによって効果的な量で投与され得る。
【0055】
エラフィブラノールを、治療有効量で、前記化合物の投与を可能にする異なる方法および異なる形態で投与することができる。したがって、例えば、それを、全身性の方法で、経口で、非経口経路によって、吸入によって、または注射によって、例えば静脈内に、筋肉内経路によって、皮下経路によって、経皮経路によって、動脈内によってなどで投与することができる。経口投与が、胆汁鬱滞性疾患の処置のためのエラフィブラノールを含む医薬組成物のための投与の優先的な経路である。
【0056】
投与に対する頻度および/または用量を、当業者が、患者の機能、病理学、投与の形態などにおいて適合することができる。典型的には、エラフィブラノールを、1回の投与当たり0.01mg~1gの間、優先的には1回の投与当たり1mg~150mg、より好ましくは70mg~130mgで変動する用量で、胆汁鬱滞性疾患の処置のために投与することができる。投与を、必要に応じて、毎日または一日にさらに数回実施することができる。特定の実施態様において、エラフィブラノールは、1日1回投与される。別の特定の実施態様において、エラフィブラノールは、80または120mgの用量で1日1回投与される。
【0057】
特定の実施態様において、本発明は、少なくとも1つの他の治療活性剤と組み合わせた、胆汁鬱滞性疾患の処置のためのエラフィブラノールの使用に関する。他の活性剤は、特に、UDCAまたはOCAなどの他の抗胆汁鬱滞剤から選択され得る。したがって、本発明はまた、エラフィブラノールとUDCAまたはOCAとの組み合わせに関する。本発明はまた、エラフィブラノールと抗胆汁鬱滞剤との組み合わせに関する。他の抗胆汁鬱滞剤は、非限定的に、以下を含む:
-頂端側ナトリウム共依存性胆汁酸輸送体阻害剤(ASBTi);
-胆汁酸;
-カテプシン阻害剤;
-CCRアンタゴニスト;
-CD40阻害剤;
-CD80阻害剤;
-デュアルNOX(NADPHオキシダーゼ)1&4阻害剤;
-ファルネソイドX受容体(FXR)アゴニスト;
-線維芽細胞増殖因子(FGF)19組み換え体;
-フラクタルカインリガンド阻害剤;
-回腸ナトリウム胆汁酸共輸送体阻害剤;
-モノクローナル抗体;
-PPARアルファアゴニスト;
-PPARガンマアゴニスト;
-PPARデルタアゴニスト;
-PPARアルファ/ガンマアゴニスト;
-PPARアルファ/デルタアゴニスト;
-PPARガンマ/デルタアゴニスト;および
-PPARアルファ/ガンマ/デルタアゴニストまたはPPARパンアゴニスト。
【0058】
例示的な頂端側ナトリウム共依存性胆汁酸輸送体阻害剤は、非限定的に、A-4250;ボリキシバット;マラリキシバット、以前はSHP-625;GSK-2330672;エロビキシバットおよびCJ-14199を含む。
【0059】
例示的な胆汁酸は、非限定的に、オベチコール酸およびウルソジオール(UDCA)を含む。
【0060】
例示的なカテプシン阻害剤は、非限定的に、VBY-376;VBY-825;VBY-036;VBY-129;VBY-285;Org-219517;LY3000328;RG-7236およびBF/PC-18を含む。
【0061】
例示的なCCRアンタゴニストは、非限定的に、セニクリビロック(CCR2/5アンタゴニスト);PG-092;RAP-310;INCB-10820;RAP-103;PF-04634817およびCCX-872を含む。
【0062】
例示的なCD40阻害剤は、非限定的に、FFp-104;xl-050;DOM-0800;XmAb-5485;KGYY-15;FFP-106;TDI-0028およびABI-793を含む。
【0063】
例示的なCD80阻害剤は、非限定的に、RhuDex;FPT-155;ToleriMab;ガリキシマブ;SCH-212394;IGM-001;ASP-2408およびSCH-204698を含む。
【0064】
例示的なデュアルNOX(NADPHオキシダーゼ)1&4阻害剤は、非限定的に、GKT-831(以前はGKT137831)およびGKT-901を含む。
【0065】
例示的なファルネソイドX受容体(FXR)アゴニストは、非限定的に、オベチコール酸;GS-9674;LJN-452;EDP-305;AKN-083;INT-767;GNF-5120;LY2562175;INV-33;NTX-023-1;EP-024297;Px-103およびSR-45023を含む。
【0066】
例示的な線維芽細胞増殖因子19(FGF-19)組み換え体は、非限定的に、NGM-282を含む。
【0067】
例示的なフラクタルカインリガンド阻害剤は、非限定的に、E-6011およびKAN-0440567を含む。
【0068】
例示的な回腸ナトリウム胆汁酸共輸送体阻害剤は、非限定的に、A-4250;GSK-2330672;ボリキシバット;CJ-14199およびエロビキシバットを含む。
【0069】
例示的なモノクローナル抗体は、非限定的に、ベルチリムマブ;NGM-313;IL-20標的化mAb;フレソリムマブ(抗TGFβ)、以前はGC1008;チモルマブ(timolumab)、以前はBTT-1023;ナマシズマブ(namacizumab);オマリズマブ;ラニビズマブ;ベバシズマブ;レブリキズマブ;エプラツズマブ;フェルビズマブ;マツズマブ;モナリズマブ;レスリズマブおよびイネビリズマブ(inebilizumab)を含む。
【0070】
例示的なPPARアルファアゴニストは、非限定的に、フェノフィブラート、シプロフィブラート、ペマフィブラート、ゲムフィブロジル、クロフィブラート、ビニフィブラート(binifibrate)、クリノフィブラート、クロフィブリン酸、ニコフィブラート、ピリフィブラート(pirifibrate)、プラフィブリド、ロニフィブラート、テオフィブラート、トコフィブラートおよびSR10171を含む;
【0071】
例示的なPPARガンマアゴニストは、非限定的に、ピオグリタゾン、重水素化ピオグリタゾン、ロシグリタゾン、エファツタゾン、ATx08-001、OMS-405、CHS-131、THR-0921、SER-150-DN、KDT-501、GED-0507-34-Levo、CLC-3001およびALL-4を含む。
【0072】
例示的なPPARデルタアゴニストは、非限定的に、GW501516(エンデュラボル(Endurabol)または({4-[({4-メチル-2-[4-(トリフルオロメチル)フェニル]-1,3-チアゾール-5-イル}メチル)スルファニル]-2-メチルフェノキシ}酢酸))またはMBX8025(セラデルパル(Seladelpar)または{2-メチル-4-[5-メチル-2-(4-トリフルオロメチル-フェニル)-2H-[l,2,3]トリアゾール-4-イルメチルシルファニル(ylmethylsylfanyl)]-フェノキシ}-酢酸)またはGW0742([4-[[[2-[3-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]-4-メチル-5-チアゾリル]メチル]チオ]-2-メチルフェノキシ]酢酸)またはL165041またはHPP-593またはNCP-1046を含む。
【0073】
例示的なPPARアルファ/ガンマアゴニスト(グリタザールとも命名される)は、非限定的に、サログリタザール(Saroglitazar)、アレグリタザール(Aleglitazar)、ムラグリタザール(Muraglitazar)、テサグリタザール(Tesaglitazar)およびDSP-8658を含む。
【0074】
エラフィブラノールに加えて、例示的なPPARアルファ/デルタアゴニストは、非限定的に、T913659を含む。
【0075】
例示的なPPARガンマ/デルタアゴニストは、非限定的に、リノール酸(CLA)およびT3D-959を含む。
【0076】
例示的なPPARアルファ/ガンマ/デルタアゴニスト(または「PPARパンアゴニスト」)は、非限定的に、IVA337、TTA(テトラデシルチオ酢酸)、ババキニン、GW4148、GW9135、ベザフィブラート、ロベグリタゾン、およびCS038を含む。
【0077】
さらなる実施態様において、本発明は、胆汁鬱滞性疾患を処置する方法であって、エラフィブラノールまたは本発明の組み合わせの、特にこの化合物を含有する医薬組成物の形態での投与を含む方法を提供する。
【0078】
別の実施態様において、本発明はまた、エラフィブラノールを場合により上記の通りの別の抗胆汁鬱滞剤と組み合わせて含む、胆汁鬱滞性疾患を処置するためのキットを提供する。
【0079】
本発明は、以下の非限定例を参照してさらに記載される。
【実施例
【0080】
実施例1:ALPおよびγGTの量
非アルコール性脂肪性肝炎を有する成体被験体(年齢18~75歳)を、1日当たり80mgおよび120mgの用量のエラフィブラノールで52週間にわたって処置した。
【0081】
合計276人のNASH患者を無作為化した:プラセボ群92人、エラフィブラノール80mg群93人およびエラフィブラノール120mg群91人。2人の患者は、試験薬を受けず、そして、残りの274人の患者は、ITT(治療企図)集団を構成する。33人の患者(12%)は、試験中に離脱した。最終肝生検を、237人の患者(プラセボ群、エラフィブラノール80mg群、およびエラフィブラノール120mg群、それぞれ77、82、および78人の患者)において入手可能であった。
【0082】
患者を2ヶ月毎に臨床および実験室評価で追跡した。
【0083】
両エラフィブラノール用量(80mgおよび120mg)で処置された患者は、肝機能検査(ALT、γGTおよびアルカリホスファターゼ)および脂質パラメーター(トリグリセリド、LDLコレステロール、HDL-コレステロール)を改善した。
【0084】
エラフィブラノールは、アルカリホスファターゼ(図1を参照)およびγ-グルタミルトランスペプチターゼ(図2を参照)を用量依存的に低下させたが、このことは、胆汁鬱滞性疾患の処置のためのエラフィブラノールの利益を示している。
【0085】
肝機能に対するエラフィブラノールの有益な効果が、80mg/日のエラフィブラノールで1~3ヶ月処置された全ての患者において一貫して観察された。γGTおよびALPの血中濃度の有意な低減が観察され、プラセボと比較してエラフィブラノール処置群においてγGTで-29%およびALPで-25%に達した。加えて、インスリン抵抗性患者では、エラフィブラノール処置は、ALTの有意な低減(プラセボと比較して-20%)を誘導したが、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)のレベルは変化しなかった。
【0086】
2a相および2b相プログラムでは、エラフィブラノールは、肝酵素、特にALPの有意な減少を一貫して示した。ALPレベルの減少は、PBCの処置のための特に関係性のある代理マーカーとして認識され、この適応症におけるOCAのFDA承認の根拠として最近使用された。
【0087】
被験体は、ALPおよびγGTの減少によって示される通り、それらの疾患における用量関連改善を示す。
【0088】
実施例2:C4の量
エラフィブラノールの効果を、ALPおよびγGTレベルよりも胆汁鬱滞性疾患により直接関連するパラメーターについてさらに試験した。したがって、処置された被験体が、血漿中総胆汁酸の減少を示すかどうかを調査した。血清7α-ヒドロキシ-4-コレステン-3-オン(7α-HCO、または7αC4、またはC4)の測定は、肝コレステロール7α-ヒドロキシラーゼ(胆汁酸の合成における律速および主要調節酵素)の酵素活性をモニタリングする方法である。したがって、C4レベルの減少は、患者における総胆汁酸の減少を反映する。
【0089】
ベースラインで高いALPレベルを有するNASH患者において、エラフィブラノールを、1日当たり80mgまたは120mgのいずれかの用量で52週間にわたって経口投与した。
【0090】
高いALPレベルを有する合計62人のNASH患者を無作為化した:プラセボ群23人、エラフィブラノール80mg群16人およびエラフィブラノール120mg群23人。
【0091】
胆汁酸前駆体レベルが、両エラフィブラノール用量を受けた患者において用量依存的に改善された。
【0092】
実施例3:PBCについての治験
多施設二重盲検無作為化プラセボ対照2相研究治験を、原発性胆汁性胆管炎を有しかつウルソデオキシコール酸への応答が不適切な患者において実行して、経口で12週間与えられるエラフィブラノール(毎日80mgおよび毎日120mg)による処置の有効性および安全性を評価する。
【0093】
第一目的
第一目的は、PBCを有しかつウルソデオキシコール酸(UDCA)への応答が不適切な患者において、血清アルカリホスファターゼ(ALP)の変化に対するエラフィブラノール80mgおよび120mgの毎日の経口投与の効果をプラセボの場合の効果と比較することである。
【0094】
第二目的
第二目的は、以下である:
-複合評価項目に基づいて処置への応答を評価すること:
・ALP<1.67×正常上限(ULN)および正常範囲内の総ビリルビンおよびALPの>15%の減少
・ALP<2×ULNおよび正常範囲内の総ビリルビンおよびALPの>40%の減少
-以下に従って応答を評価すること:
・Paris I、Paris II、Toronto I、Toronto II、UK-PBCリスクスコア
-ALPが正常化された患者のパーセントに基づいて応答を評価すること
-アルブミンが正常化された患者のパーセントに基づいて応答を評価すること
-ビリルビンが正常化された患者のパーセントに基づいて応答を評価すること
-AST、γGT、5’-ヌクレオチダーゼ、総ビリルビン、コンジュゲートビリルビン、ALT、アルブミンのベースラインからの変化を評価すること
-脂質パラメーターのベースラインからの変化を評価すること
-胆汁酸:CDCA、コール酸、リトコール酸、DCAのベースラインからの変化を評価すること
-C4、FGF19のベースラインからの変化を評価すること
-IgMのベースラインからの変化を評価すること
-以下のベースラインからの変化を評価すること:
・5D-かゆみスケール
・PBC 40 QOL
・VAS
-PBCを有する患者におけるエラフィブラノールの耐容性および安全性を評価すること
-PBC患者におけるエラフィブラノール80mgおよび120mgならびにその主要代謝産物の薬物動態学(PK)を評価すること、ならびに曝露-応答関係を調査すること。
【0095】
組み入れ基準
1.書面でのインフォームドコンセント(IC)の提出義務
2.年齢18~75歳の男性または女性
3.以下の3つの診断因子のうち少なくとも2つの存在によって実証される場合の、確定または推定のPBC診断:
・0日目(無作為化来院)前の少なくとも6ヶ月間の上昇したALPレベルの履歴
・陽性抗ミトコンドリア抗体(AMA)力価(免疫蛍光で>1/40または酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)によるM2陽性またはPBC特異的抗核抗体陽性)
・PBCと一致する肝生検
4.ALP≧1.67×正常上限(ULN)
5.スクリーニング来院前の少なくとも12ヶ月間UDCAを服用(≧6ヶ月間の安定用量)
6.避妊:この試験に参加する女性は、下記の通り、出産の可能性のない女性でなければならず、かつ、試験の全期間および処置の終了後1ヶ月間高度に効果的な避妊を用いなければならない:
a)卵巣不全に起因する少なくとも12ヶ月間の月経の停止
b)避妊手術、例えば両側卵巣摘出、子宮摘出、または医学上実証されている卵巣不全
c)地方IRB条例および/または国内法令によって要求される場合、性的禁欲が適切であると見なされる場合もある(性的禁欲の信頼性は、治験の期間および被験体の好ましくかつ通常の生活様式に関して評価される必要がある)
d)高度に効果的な非ホルモン法の避妊(両側卵管閉塞、精管切除パートナーまたは子宮内避妊器具)を使用すること
e)バリアおよび高度に効果的なホルモン法の避妊を用いた二重避妊(排卵の阻害を伴う経口、膣内もしくは経皮の複合エストロゲンおよびプロゲストゲンホルモン避妊、排卵の阻害を伴う経口、注射可能もしくは移植可能なプロゲストゲン単独ホルモン避妊、または子宮内ホルモン放出系)。ホルモン避妊は、無作為化の少なくとも1ヶ月前に開始されなければならない。
7.実施計画書に従うことに同意しなければならない。
【0096】
除外基準:
1.以下を含む他の随伴性肝疾患の病歴または存在:
・B型またはC型肝炎ウイルス(HCV、HBV)感染
・アルコール性肝疾患
・確定的な自己免疫性肝疾患または重複肝炎
・ジルベール症候群(ビリルビンレベルの解釈可能性に起因する)
・アルファ-1抗トリプシン欠乏症の公知の病歴
2.腎炎症候群、慢性腎疾患を含む、重大な腎疾患(腎臓損傷のマーカーまたは60mL/分/1.73m2未満の推定糸球体濾過量[eGFR]を有する患者として定義される)
3.中度または重度肝障害を有する患者(チャイルド・ピューB/Cとして定義される)
4.血小板数<150×10 3/マイクロリットル
5.アルブミン<3.5g/dL
6.以下を含む、PBCまたは臨床的に有意な肝代償不全の臨床合併症の存在:
・肝移植の履歴、肝移植リストの現在の登録、または現在の末期肝疾患モデル(MELD)スコア≧15
・肝硬変/門脈高血庄および合併症(または肝硬変/門脈高血庄の徴候および症状)を有する患者(公知の食道静脈瘤、十分に制御されていないもしくは排尿促進耐性の腹水症、静脈瘤出血の履歴または関連する介入(例えば、静脈瘤バンドまたは経頸静脈的肝内門脈体循環シャント[TIPS]の挿入)、および肝性脳症、特発性細菌性腹膜炎、肝細胞癌の履歴または存在を含む)
・肝腎症候群(I型またはII型)またはスクリーニング血清クレアチニン>2mg/dL(178μmol/L)
7.以下の医薬の投与は、以下に指定するように禁止されている:
・スクリーニングの2ヶ月前および治験を通して(最後の試験来院まで):フィブラートまたはオベチコール酸、グリタゾン
・スクリーニングの3ヶ月前および治験を通して(最後の試験来院まで):アザチオプリン、コルヒチン、シクロスポリン、メトトレキサート、ミコフェノール酸モフェチル、ペントキシフィリン;ブデソニドおよび他の全身性コルチコステロイド;および潜在的に肝毒性を有する薬物(α-メチル-ドパ、バルプロ酸ナトリウム、イソニアジド、またはニトロフラントインを含む)
・組み入れ来院の12ヶ月前および治験を通して(最後の試験来院まで):インターロイキンまたは他のサイトカインもしくはケモカインに対して指向される抗体または免疫治療
8.女性の場合:妊娠が知られているか、または尿妊娠検査陽性(血清妊娠検査陽性によって確認される)を有するか、または授乳している
9.ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染の公知の病歴
10.調査生成物またはその製剤賦形剤のいずれかに対する公知の過敏症。
【0097】
無作為化
全ての適格規準を満たす患者を、以下の群の1つに1:1:1比で無作為化する:
-エラフィブラノール 80mg
-エラフィブラノール 120mg
-プラセボ
【0098】
中央無作為化システムを使用する(自動音声/ウェブ応答システム[IVRS/IWRS])
【0099】
主要評価項目
主要評価項目は、各エラフィブラノール治療群における処置の終了時までのベースラインからの血清ALPのプラセボと比較した相対変化である。
【0100】
副次評価項目
-ULNの1.67倍未満のALPおよび正常範囲内の総ビリルビンおよび>15%のALP低減として定義される応答を伴うエラフィブラノール80mg群および120mg群ならびにプラセボ群における応答率
-ULNの2倍未満のALPおよび正常範囲内の総ビリルビンおよび>40%のALP低減として定義される応答を伴うエラフィブラノール80mg群および120mg群ならびにプラセボ群における応答率
-Paris I、Paris II、Toronto I、Toronto II、UK PBCリスクスコアに従う応答率
-10%、20%および40%減少のアルカリホスファターゼ応答率
-処置の終了時に正常化されたALPを有する患者のパーセントとして定義される応答を伴うエラフィブラノール80mg群および120mg群ならびにプラセボ群における応答率
-処置の終了時に正常化されたビリルビンを有する患者のパーセントとして定義される応答を伴うエラフィブラノール80mg群および120mg群ならびにプラセボ群における応答率
-処置の終了時に正常化されたアルブミンを有する患者のパーセントとして定義される応答を伴うエラフィブラノール80mg群および120mg群ならびにプラセボ群における応答率
-以下のベースラインからの変化:
〇ガンマ-グルタミルトランスフェラーゼ(γGT)
〇アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)
〇アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)
〇5’-ヌクレオチダーゼ
〇ビリルビン(総およびコンジュゲート)
〇アルブミン
〇総コレステロール、LDL-chol、HDL-Chol、トリグリセリド
〇胆汁酸:CDCA、コール酸、リトコール酸、DCA
〇C4、FGF19
〇IgM
〇クオリティ・オブ・ライフ:PBC 40 QOL
〇掻痒:5-D掻痒質問表および視覚的アナログスケール(VAS)
〇炎症および肝繊維症のバイオマーカー:TNF-α、TGF-β、IL-6、CK-18およびリゾホスファチジン酸
-エラフィブラノールおよびその主要代謝産物の血漿濃度ならびに曝露-応答関係
-有害事象(AE)
-心血管パラメーター(12誘導ECG、心拍数、血圧)
-血液学および安全性パラメーター
【0101】
エラフィブラノールが、プラセボ比較して、処置の終了までのベースラインからの血清ALPの有意な低減を誘導することが期待される。加えて、エラフィブラノールが、副次評価項目の少なくとも1つの有意な改善を誘導することが期待される。
【0102】
参考文献
【表1】
図1
図2
図3a
図3b