(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】水性ポリウレタン分散物
(51)【国際特許分類】
C08G 18/00 20060101AFI20220119BHJP
C08G 18/44 20060101ALI20220119BHJP
C08G 18/10 20060101ALI20220119BHJP
C08G 18/08 20060101ALI20220119BHJP
C08G 18/65 20060101ALI20220119BHJP
C09D 175/04 20060101ALI20220119BHJP
C09D 5/02 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
C08G18/00 C
C08G18/44
C08G18/10
C08G18/08 019
C08G18/65 023
C09D175/04
C09D5/02
(21)【出願番号】P 2018554397
(86)(22)【出願日】2017-04-13
(86)【国際出願番号】 EP2017059005
(87)【国際公開番号】W WO2017182393
(87)【国際公開日】2017-10-26
【審査請求日】2020-01-14
(32)【優先日】2016-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513277278
【氏名又は名称】オールネックス オーストリア ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アールツト、アントン
(72)【発明者】
【氏名】ハラー、ロベール
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-78274(JP,A)
【文献】国際公開第2013/077260(WO,A1)
【文献】特開2007-2248(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G、C08L、C09D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水に分散された少なくとも2つのポリウレタンを含み、そのうちの少なくとも1つが、少なくとも10kg/molの質量平均モル質量M
w1を有する水分散性ポリウレタンU1であり、かつ、少なくとも1つが、10kg/mol未満の質量平均モル質量M
w2と、1.4mol/kg~4mol/kgであるヒドロキシル基の比物質量n(-OH)/m(U2)と、0.5mol/kgまでである分枝度と、0.8mol/kg~2mol/kgであるウレア基の比物質量n(-NH-CO-NH-)/m(U2)とを有する水分散性ポリウレタンU2である水性ポリウレタン分散物Uであって、
式III:
HO-(X-O-CO-O-)
m-X-OH (式III)
のヒドロキシ官能性ポリカルボナートが、U1およびU2の合成において使用され(式中、Xは、直鎖状アルキレン基、分岐状アルキレン基または環状アルキレン基であり、mは整数である)、かつ、式IIIの前記ヒドロキシ官能性ポリカルボナートの数平均モル質量M
nが少なくとも400g/molであり、ならびに
U1の前記合成において使用されるポリオールにおけるヒドロキシ官能性ポリカルボナートA1以外の
ポリマージオールA’の質量分率w(A’)
1、および、U2の前記合成において使用されるポリオールにおけるヒドロキシ官能性ポリカルボナートA2以外の
ポリマージオールA’の質量分率w(A’)
2が、
w(A’)
1=m(A’)/[m(A’)+m(A1)]≦2%、かつ、w(A’)
2=m(A’)/[m(A’)+m(A2)]≦2%
(式中、m(A’)は
ポリマージオールA’の質量であり、m(A1)はポリオールA1の質量であり、m(A2)はポリオールA2の質量である)
である、水性ポリウレタン分散物U。
【請求項2】
前記ポリウレタンU2の質量分率w(U2)=m(U2)/[m(U1)+m(U2)]が0.50kg/kg~0.80kg/kgである(式中、m(U1)は分散物UにおけるポリウレタンU1の質量であり、m(U2)は分散物UにおけるポリウレタンU2の質量である)、請求項1に記載の水性ポリウレタン分散物。
【請求項3】
前記水分散性ポリウレタンU1および水分散性ポリウレタンU2の少なくとも一方が、0.1mol/kg~1.8mol/kgの酸基および/または酸アニオン基の比物質量を有する、請求項1および2のいずれかに記載の水性ポリウレタン分散物U。
【請求項4】
式III:
HO-(X-O-CO-O-)
m-X-OH (式III)
の前記ヒドロキシ官能性ポリカルボナートAにおいて、Xが、4個~14個の炭素原子を有する直鎖状アルキレン基、分岐状アルキレン基または環状アルキレン基であり、mが、4~30の整数である、請求項1~3のいずれかに記載の水性ポリウレタン分散物。
【請求項5】
10kg/mol未満の質量平均モル質量M
w2を有する前記少なくとも1つの水分散性ポリウレタンU2が、
1.4mol/kg~3.5mol/kgの、前記ポリウレタンポリマーU2のヒドロキシル基の比物質量n(-OH)/m(U2)、
0.2mol/kg~0.33mol/kgの分枝度、および
1.0mol/kg~1.8mol/kgの、ウレア基の比物質量n(-NH-CO-NH-)/m(U2)
を有する、請求項1~4のいずれかに記載の水性ポリウレタン分散物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載される前記水性ポリウレタン分散物Uを、少なくとも10kg/molの質量平均モル質量M
w1を有する少なくとも1つの水分散性ポリウレタンU1と、10kg/mol未満の質量平均モル質量M
w2を有する少なくとも1つの水分散性ポリウレタンU2とを混合することによって調製するためのプロセスであって、
前記水分散性ポリウレタンU1が、
(a1)-式IIIのヒドロキシ官能性ポリカルボナートA1を提供するステップ
HO-(X-O-CO-O-)
m-X-OH (式III)
(式中、Xは、好ましくは4個~14個の炭素原子を有する直鎖状アルキレン基、分岐状アルキレン基または環状アルキレン基であり、mは整数である)、
(b1)-前記ポリカルボナートA1を、少なくとも2つのヒドロキシル基を分子あたり有し、かつ、モル質量が400g/mol未満である多価アルコールE1と、そして、ヒドロキシ官能性有機酸およびアミノ官能性有機酸からなる群から選択される有機酸B11、ならびに親水性ポリエーテルB2のどちらかまたは両方と混合するステップであって、前記酸B11が、少なくとも1つのヒドロキシル基または第一級もしくは第二級のアミノ基、好ましくは2つのヒドロキシル基または第一級もしくは第二級のアミノ基と、少なくとも1つの酸基とを有し、かつ、前記親水性ポリエーテルB2が、式II:
-O-(-CH
2-CH
2-O-)
n-CH
2-CH
2-O-、(II)
(式中、nは1~100である)
に従うオキシエチレン基に由来する部分と、少なくとも1つのヒドロキシル基、好ましくは2つのヒドロキシル基とを有する、ステップ、
(c11)-ステップ(b1)で調製される前記混合物を、高められた温度において、少なくとも2つのイソシアナート基を分子あたり有する少なくとも1つの多官能性イソシアナートC1と反応させるステップであって、多官能性イソシアナートC1の量が、C1におけるイソシアナート基の、ステップ(b1)で調製される前記混合物に存在するヒドロキシル基に対する比が2:1~1.1:1であるように選ばれる、ステップ、
(d11)-ステップ(c11)の冷却されていてもよい反応生成物に、酸B11がステップ(b1)において使用されたならば、塩基N1を、使用される前記酸B11の前記酸基の少なくとも50%を中和するために十分な物質量で加え、得られた混合物を水に分散し、その後直ちに、脂肪族ジアミンG1aおよび脂肪族ジヒドラジドG1bからなる群から選択される鎖延長剤G1を加え、この混合物を、残留する反応性イソシアナート基と、前記鎖延長剤G1の反応性基とが消費されるまで反応させ、室温(23℃)への冷却のもとで均質化するステップ
を含むプロセスで作製され、
前記反応物A1、B11、B2、C1、G1a、G1bおよびN1の量が、得られたポリウレタンU1が少なくとも10.0kg/molの質量平均モル質量M
w1を有するように選ばれる、プロセス。
【請求項7】
ヒドロキシ官能性酸B11がステップ(b1)において使用され、かつ、ステップ(e11)において、ステップ(d11)の前記反応生成物が、水に分散される前に、または水に分散されている間に、または水に分散された後で、水酸化アルカリ金属、水酸化アルカリ土類金属、アミン、水酸化アンモニウムおよびアルキル化アンモニウム水酸化物から選択される塩基N1を加えることによって中和される、請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
ステップ(c11)が、ステップ(b1)において調製される前記混合物の前記ヒドロキシル基の少なくとも90%が前記多官能性イソシアナートC1との反応によって消費されるまで行われる、請求項6または7のいずれかに記載のプロセス。
【請求項9】
請求項1~5のいずれかに記載される前記水性ポリウレタン分散物Uを、少なくとも10kg/molの質量平均モル質量M
w1を有する少なくとも1つの水分散性ポリウレタンU1と、10kg/mol未満の質量平均モル質量M
w2を有する少なくとも1つの水分散性ポリウレタンU2とを混合することによって調製するためのプロセスであって、
前記水分散性ポリウレタンU1が、
(a1)-式IIIのヒドロキシ官能性ポリカルボナートA1を提供するステップ
HO-(X-O-CO-O-)
m-X-OH (式III)
(式中、Xは、好ましくは4個~14個の炭素原子を有する直鎖状アルキレン基、分岐状アルキレン基または環状アルキレン基であり、mは整数である)、
(b1)-前記ポリカルボナートA1を、少なくとも2つのヒドロキシル基を分子あたり有し、かつ、モル質量が400g/mol未満である多価アルコールE1と、そして、ヒドロキシ官能性有機酸およびアミノ官能性有機酸からなる群から選択される有機酸B11、ならびに親水性ポリエーテルB2のどちらかまたは両方と混合するステップであって、前記酸B11が、少なくとも1つのヒドロキシル基または第一級もしくは第二級のアミノ基、好ましくは2つのヒドロキシル基または第一級もしくは第二級のアミノ基と、少なくとも1つの酸基とを有し、かつ、前記親水性ポリエーテルB2が、式II:
-O-(-CH
2-CH
2-O-)
n-CH
2-CH
2-O-、(II)
(式中、nは1~100である)
に従うオキシエチレン基に由来する部分と、少なくとも1つのヒドロキシル基、好ましくは2つのヒドロキシル基とを有する、ステップ、
(c12)-ステップ(b1)で調製される前記混合物を、好ましくは60℃~150℃である高められた温度において、少なくとも2つのイソシアナート基を分子あたり有する少なくとも1つの多官能性イソシアナートC1と反応させるステップであって、多官能性イソシアナートC1の量が、C1におけるイソシアナート基の、ステップ(b1)で調製される混合物に存在するヒドロキシル基に対する比が好ましくは1.7:1~1.1:1であるように、より好ましくは1.5:1~1.05:1であるように選ばれる、ステップ、
(d12)-ステップ(c12)の冷却されていてもよい反応生成物に、オレフィン不飽和モノマーの混合物Mであって、3個~6個の炭素原子および少なくとも1つのカルボン酸基を有するオレフィン不飽和カルボン酸M11と、1個~15個の炭素原子を有する直鎖状または分枝型の脂肪族アルコールM12とのエステルである少なくとも1つのオレフィン不飽和モノマーM1、ならびに、3個~6個の炭素原子および少なくとも1つのカルボン酸基を有するオレフィン不飽和カルボン酸M21の1モルと、1個~15個の炭素原子および少なくとも2つのヒドロキシル基を有する直鎖状または分枝型の脂肪族アルコールM22の1モルとのエステルであることが好ましい少なくとも1つのヒドロキシ官能性オレフィン不飽和モノマーM2を含む混合物Mを加え、このようにして得られる混合物を均質化し、C1と異なっていてもよい、またはC1と同じであってもよいイソシアナート成分C2のさらなる量をそれに加えることで反応混合物を得るステップであって、前記反応混合物(ステップ(c12)の冷却されていてもよい反応生成物と混合物Mとの混合物を均質化し、イソシアナート成分C2を加えることで得られた反応混合物)におけるイソシアナート基の残留質量分率、
w(-NCO)=m(-NCO)/m(反応混合物)(ここで、m(-NCO)はイソシアナート基の質量を指し、m(反応混合物)は前記反応混合物の質量を指す。)が、反応完了後において0.5%~3%の間であるように化学量論が選ばれる、ステップ、および
e(12)-ステップ(d12)の前記生成物に、第一級アミノ基または第二級アミノ基と、前述のアミノ基とは反応性が異なるアミノ基、またはヒドロキシル基である少なくとも1つのさらなる官能基とを有する連鎖停止剤Fを、好ましくは5分までの期間のうちに加え、均質化し、その後、酸B11が使用されたならば、塩基N1を、使用される前記酸B11の少なくとも50%を中和するために十分な物質量で加え、その後、水を加えて分散物とし、前記分散物に、水溶性ラジカル開始剤の水溶液を加え、前記水性分散物を重合して、アクリル変性ポリウレタン分散物を形成するステップ
を含むプロセスで作製され、
前記反応物A1、B11、B2、C1、C2、E1、F、N1、M1およびM2の量が、得られたポリウレタンU1が少なくとも10.0kg/molの質量平均モル質量M
w1を有するように選ばれる、プロセス。
【請求項10】
ヒドロキシ官能性酸B11がステップ(b1)において使用され、かつ、ステップ(e12)において、ステップ(d12)の前記反応生成物が、水に分散される前に、または水に分散されている間に、または水に分散された後で、水酸化アルカリ金属、水酸化アルカリ土類金属、アミン、水酸化アンモニウムおよびアルキル化アンモニウム水酸化物から選択される塩基N1を加えることによって中和される、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
ステップ(c12)が、ステップ(b1)において調製される前記混合物の前記ヒドロキシル基の少なくとも90%が前記多官能性イソシアナートC1との反応によって消費されるまで行われる、請求項9または請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
オレフィン不飽和モノマーの前記混合物Mが、3個~6個の炭素原子および少なくとも1つのカルボン酸基を有するオレフィン不飽和カルボン酸M11と、1個~15個の炭素原子を有する直鎖状または分枝型の脂肪族アルコールM12とのエステルである少なくとも1つのオレフィン不飽和モノマーM1、ならびに、3個~6個の炭素原子および少なくとも1つのカルボン酸基を有するオレフィン不飽和カルボン酸M21の1モルと、1個~15個の炭素原子および3つ以上のヒドロキシル基を有する直鎖状または分枝型の脂肪族アルコールM22の1モルとのエステルである少なくとも1つのヒドロキシ官能性オレフィン不飽和モノマーM2を含む、請求項9~11のいずれかに記載のプロセス。
【請求項13】
ステップ(d12)が、前記モノマー混合物Mにおける前記ヒドロキシル基の少なくとも90%が前記イソシアナート成分C2との反応によって消費されるまで行われる、請求項9~12のいずれかに記載のプロセス。
【請求項14】
請求項1~5のいずれかに記載の前記水性ポリウレタン分散物Uを、少なくとも10kg/molの質量平均モル質量M
w1を有する少なくとも1つの水分散性ポリウレタンU1と、10kg/mol未満の質量平均モル質量M
w2を有する少なくとも1つの水分散性ポリウレタンU2とを混合することによって調製するためのプロセスであって、
前記水分散性ポリウレタンU2が、
(a2)-式IIIのヒドロキシ官能性ポリカルボナートA2を提供するステップ
HO-(X-O-CO-O-)
m-X-OH (式III)
(式中、Xは、好ましくは4個~14個の炭素原子を有する直鎖状アルキレン基、分岐状アルキレン基または環状アルキレン基であり、mは整数である)、
(b2)-前記ポリカルボナートA2を、少なくとも3つヒドロキシル基を分子あたり有し、かつ、モル質量が400g/mol未満である多価アルコールE3と、そして、ヒドロキシ官能性有機酸およびアミノ官能性有機酸からなる群から選択される有機酸B21と混合するステップであって、前記酸B21が、少なくとも1つのヒドロキシル基または第一級もしくは第二級のアミノ基、好ましくは2つのヒドロキシル基または第一級もしくは第二級のアミノ基と、少なくとも1つの酸基とを有する、ステップ、
(c2)-ステップ(b2)で調製される混合物を、少なくとも2つのイソシアナート基を分子あたり有する少なくとも1つの多官能性イソシアナートC3と反応させるステップであって、多官能性イソシアナートC3の量が、C3におけるイソシアナート基の、ステップ(b2)で調製される前記混合物に存在するヒドロキシル基に対する比が2:1~1.1:1であるように選ばれ、反応が、ステップ(b2)で調製される前記混合物の前記ヒドロキシル基の少なくとも90%が前記多官能性イソシアナートC3との反応によって消費されるまで行われる、ステップ、
(d2)-ステップ(c2)の前記反応混合物を60℃~110℃の間の温度に冷却し、少なくとも1つの第一級アミノ基または第二級アミノ基と、少なくとも1つのヒドロキシル基とを有する少なくとも1つのヒドロキシアミンD、および、使用される前記酸B21の少なくとも50%を中和するために十分な物質量での塩基N2を加え、反応を、フリーのイソシアナート基がもはや検出されなくなるまで行うステップ、および
(e2)-ステップ(d2)の反応生成物を水に分散するステップ
を含むプロセスで作製され、
前記反応物A2、B21、C3、D、N2およびE3の量が、得られたポリウレタンU2が10kg/mol未満の質量平均モル質量M
w2を有するように選ばれる、プロセス。
【請求項15】
ステップ(d2)において、前記ヒドロキシアミン成分Dが、ヒドロキシル基を有する第一級アミンD1と、少なくとも1つのヒドロキシル基を有する第二級アミンD2との混合物を含む、請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
被覆組成物を調製するための、請求項1~5のいずれかに記載される、または請求項6~15のいずれかに調製される前記水性ポリウレタン分散物Uの使用方法であって、前記水性ポリウレタン分散物Uに、湿潤化剤、消泡剤、流れ調整剤、沈降防止剤、均展剤、殺生物剤および融合助剤、任意選択で顔料および着色剤の群から選択される少なくとも1つの添加剤を混合して、バインダー混合物を形成するステップ、そのようにして調製される前記バインダー混合物を、キャップ化イソシアナートおよび非キャップ化イソシアナート、親水性キャップ化されたイソシアナートおよび親水性キャップ化されていないイソシアナート、アミノプラスト架橋剤、アルコキシカルボニルアミノトリアジンおよびフェノプラスト樹脂からなる群から選択される少なくとも1つの架橋剤と一緒にするステップ、バインダーおよび架橋剤の前記混合物を、噴霧、浸漬、刷毛塗り、ブレード塗工、カーテン塗工またはローラー塗りによって基材に塗布するステップ、および前記被覆された基材を任意選択で高められた温度で乾燥させて、被覆薄膜を前記基材上に形成するステップを含む、使用方法。
【請求項17】
前記基材が、ポリカルボナート、またはポリカルボナートとアクリロニトリル・ブタジエン・スチレンターポリマーとのブレンド物に基づく熱可塑性材料である、請求項16に記載の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水性ポリウレタン分散物に関する。本発明はさらに、その調製プロセス、およびそのようにして調製される分散物の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水性ポリウレタン分散物は、水性塗料用のバインダーとして広く使用されている。これらの塗料の中には、水の蒸発によって物理的に乾燥する様々な一液系が知られており、これらの一液系では、薄膜形成が必要に応じて、100℃を超える温度で硬化を開始させる熱活性化された架橋剤(例えば、メラミンホルムアルデヒド架橋剤樹脂またはブロック化イソシアナートなど)の添加によって支援される;二液系もまた知られており、この場合には、ヒドロキシ官能性バインダー成分が塗布直前に非ブロック化イソシアナートと混合され、架橋反応が室温において(または硬化を促進させるためにわずかに高められた温度で)生じる。
【0003】
物理的に乾燥するポリウレタン分散物が従来的には、イソシアナート官能性プレポリマーを水相において、鎖延長剤と呼ばれる、水に溶解された低モル質量の多官能性化合物(例えば、該プレポリマーのイソシアナート基と反応するジアミンまたはジヒドラジドなど)を用いて鎖延長することによって得られている。
【0004】
質量平均モル質量が、ポリスチレン当量質量として測定された場合には20kg/molを超える高モル質量ポリウレタンを含む水性系から得られる被膜(コーティング)が、米国特許第7,157,519号明細書(B2)に開示されている。被膜において使用される好ましいポリオールが、ポリエーテルポリオールおよびポリエステルポリオールである。欧州特許第1493950号明細書(B1)によれば、少なくとも0.6mol/kgであるヒドロキシル基(-OH)の比物質量と、0.01mol/kg~0.5mol/kgである、第三級および/または第四級の脂肪族炭素原子の比物質量として測定される分岐度(degree of branching)(ただし、第三級炭素原子および第四級炭素原子は三価アルコールおよび四価アルコールに由来する)と、それらに加えて、0.8mol/kg~2mol/kgであるポリウレタン中のウレア基>N-CO-N<(式I)の一定量、および、1mol/kg~4mol/kgであるヒドロキシル基(-OH)の比物質量の少なくとも1つとを有するポリウレタンを選ぶときに、硬度、耐薬品性および耐溶剤性を改善させることができる。
【0005】
非常に良好な機械的耐性および薬品耐性の諸特性が実現されているにもかかわらず、基材に対する上記被膜の接着性は、今なお改善される余地がある。したがって、良好な機械的耐性および耐薬品性を有する被覆薄膜をもたらす水性分散ポリウレタン系に基づく被覆組成物であって、被覆された基材(特にプラスチック基材)上での改善された接着性を有する被覆組成物を提供することが、本発明の目的である。
【発明の概要】
【0006】
この目的が、水に分散された少なくとも2つのポリウレタンを含み、そのうちの少なくとも1つが、少なくとも10kg/molの質量平均モル質量Mw1を有する水分散性ポリウレタンU1であり、かつ、少なくとも1つが、10kg/mol未満の質量平均モル質量Mw2と、1.4mol/kg~4mol/kgであるヒドロキシル基の比物質量n(-OH)/m(U2)と、0.5mol/kgまでである分枝度と、0.8mol/kg~2mol/kgであるウレア基の比物質量n(-NH-CO-NH-)/m(U2)とを有する水分散性ポリウレタンU2である水性ポリウレタン分散物Uであって、
式III:
HO-(X-O-CO-O-)m-X-OH (式III)
のヒドロキシ官能性ポリカルボナートが、U1およびU2の合成において使用され(式中、Xは、直鎖状アルキレン基、分岐状アルキレン基または環状アルキレン基であり、mは整数である)、かつ、式IIIのヒドロキシ官能性ポリカルボナートの数平均モル質量Mnが少なくとも400g/molであり、ならびに
U1の合成において使用されるポリオールにおけるヒドロキシ官能性ポリカルボナートA1以外のポリオールA’の質量分率w(A’)1、および、U2の合成において使用されるポリオールにおけるヒドロキシ官能性ポリカルボナートA2以外のポリオールA’の質量分率w(A’)2が、
w(A’)1=m(A’)/[m(A’)+m(A1)]≦2%、かつ、w(A’)2=m(A’)/[m(A’)+m(A2)]≦2%
(式中、m(A’)はポリオールA’の質量であり、m(A1)はポリオールA1の質量であり、m(A2)はポリオールA2の質量である)
である水性ポリウレタン分散物Uによって実現されている。
【0007】
ポリマー物質のモル質量およびその加重平均(数平均モル質量および質量平均モル質量を含む)は、ポリスチレン標準物を使用してサイズ排除クロマトグラフィー(これはまた、ゲル浸透クロマトグラフィーとして示される)によってテトラヒドロフラン溶液に対して求められている。
【0008】
本発明はまた、水に分散された少なくとも2つのポリウレタンを含み、そのうちの少なくとも1つが、少なくとも10kg/molの質量平均モル質量Mw1を有する水分散性ポリウレタンU1であり、かつ、少なくとも1つが、10kg/mol未満の質量平均モル質量Mw2と、1.4mol/kg~4mol/kgであるヒドロキシル基の比物質量n(-OH)/m(U2)と、0.5mol/kgまでである分枝度と、0.8mol/kg~2mol/kgであるウレア基の比物質量n(-NH-CO-NH-)/m(U2)とを有する水分散性ポリウレタンU2である少なくとも1つの水性ポリウレタン分散物Uであって、
式III:
HO-(X-O-CO-O-)m-X-OH (式III)
のヒドロキシ官能性ポリカルボナートが、U1およびU2の合成において使用され(式中、Xは、直鎖状アルキレン基、分岐状アルキレン基または環状アルキレン基であり、mは整数である)、かつ、式IIIのヒドロキシ官能性ポリカルボナートの数平均モル質量Mnが少なくとも400g/molであり、ならびに
U1の合成において使用されるポリオールにおけるヒドロキシ官能性ポリカルボナートA1以外のポリオールA’の質量分率w(A’)1、および、U2の合成において使用されるポリオールにおけるヒドロキシ官能性ポリカルボナートA2以外のポリオールA’の質量分率w(A’)2が、
w(A’)1=m(A’)/[m(A’)+m(A1)]≦2%、かつ、w(A’)2=m(A’)/[m(A’)+m(A2)]≦2%
(式中、m(A’)はポリオールA’の質量であり、m(A1)はポリオールA1の質量であり、m(A2)はポリオールA2の質量である)
である少なくとも1つの水性ポリウレタン分散物Uと、
親水性修飾されていてもよい多官能性イソシアナート架橋剤である、少なくとも1つの水性ポリウレタン分散物Uのための架橋剤Xと
を含む水性二液型被覆組成物に関する。
【0009】
本発明はさらに、少なくとも1つが、少なくとも10kg/molの質量平均モル質量Mw1を有する水分散性ポリウレタンU1であり、かつ、少なくとも1つが、10kg/mol未満の質量平均モル質量Mw2と、1.4mol/kg~4mol/kgであるヒドロキシル基の比物質量n(-OH)/m(U2)と、0.5mol/kgまでである分枝度と、0.8mol/kg~2mol/kgであるウレア基の比物質量n(-NH-CO-NH-)/m(U2)とを有する水分散性ポリウレタンU2である、少なくとも2つの水分散されたポリウレタンであって、
式III:
HO-(X-O-CO-O-)m-X-OH (式III)
のヒドロキシ官能性ポリカルボナートが、U1およびU2の合成において使用され(式中、Xは、直鎖状アルキレン基、分岐状アルキレン基または環状アルキレン基であり、mは整数である)、かつ、式IIIのヒドロキシ官能性ポリカルボナートの数平均モル質量Mnが少なくとも400g/molであり、ならびに
U1の合成において使用されるポリオールにおけるヒドロキシ官能性ポリカルボナートA1以外のポリオールA’の質量分率w(A’)1、および、U2の合成において使用されるポリオールにおけるヒドロキシ官能性ポリカルボナートA2以外のポリオールA’の質量分率w(A’)2が、
w(A’)1=m(A’)/[m(A’)+m(A1)]≦2%、かつ、w(A’)2=m(A’)/[m(A’)+m(A2)]≦2%
(式中、m(A’)はポリオールA’の質量であり、m(A1)はポリオールA1の質量であり、m(A2)はポリオールA2の質量である)である、少なくとも2つの水分散されたポリウレタンと、少なくとも2つの水分散されたポリウレタンのための架橋剤X1であって、ブロック化された多官能性イソシアナート、および、多官能性のアミドまたはアミジンと、アルデヒドとから得られるエーテル化されていてもよい付加物であるアミノプラスト架橋剤からなる群から選択される架橋剤X1と、を含む水性ポリウレタン分散物Uに関する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
好ましい実施形態の詳細な説明
水分散性のポリウレタンは、分子内の親水性部分(例えば、アニオン性基、非イオン性親水性基またはカチオン性基など)を、分散物を凝集に対して安定化する量で含むそのようなポリウレタンである。しばしば、有機ヒドロキシカルボン酸または有機アミノスルホン酸に由来するアニオン性基が、これらの酸をウレタン結合またはウレア結合の形成下においてそれらのヒドロキシル基またはアミノ基を介して多官能性イソシアナート(すなわち、2つ以上の反応性イソシアナート基を有するイソシアナート)と反応させることによってポリウレタンポリマー鎖に組み込まれる。好ましい非イオン性親水性基が、ポリオキシエチレンに由来するポリマー状オキシエチレン基-O-(CH2-CH2-O)n-(式中、nは好ましくは5超である)であり、これは、その末端ヒドロキシル基がウレタン結合形成下において多官能性イソシアナートと反応することによってポリウレタンに組み込まれる。
【0011】
好ましい実施形態において、上記水分散性ポリウレタンの少なくとも1つが、0.1mol/kg~1.8mol/kgである酸基および/または酸アニオン基の比物質量を有する。
【0012】
さらなる好ましい実施形態において、上記水分散性ポリウレタンの少なくとも1つが、1%~25%であるオリゴオキシエチレン基の質量分率を有し、この場合、オリゴオキシエチレン基は、式II:-O-(-CH2-CH2-O-)n-CH2-CH2-O-(式中、nは好ましくは4~100である)に従う。
【0013】
さらなる好ましい実施形態において、上記水分散性ポリウレタンの少なくとも1つが、1%~25%であるオリゴオキシエチレン基の質量分率(この場合、オリゴオキシエチレン基は、式II:-O-(-CH2-CH2-O-)n-CH2-CH2-O-(式中、nは好ましくは4~100である)に従う)と、0.1mol/kg~1.8mol/kgである酸基および/または酸アニオン基の比物質量とを有する。
【0014】
アニオン性基のみを有するポリウレタンが特に好ましい。
【0015】
式III:
HO-(X-O-CO-O-)m-X-OH (式III)
のヒドロキシ官能性ポリカルボナートAにおいて、Xは、好ましくは4個~14個の炭素原子を有する直鎖状アルキレン基、分岐状アルキレン基または環状アルキレン基であり、mは整数であり、好ましくは4~30である。特に好ましくは、アルキレン基は6個~12個の炭素原子を有し、mは5~25である。ポリカルボナートAの数平均モル質量Mnは少なくとも400g/molであり、好ましくは500g/mol~5000g/molであり、特に800g/mol~2000g/molである。
【0016】
特に好ましいアルキレン基Xが、ヘキサン-1,6-ジイル、オクテン-1,8-ジイル、デセン-1,10-ジイル、ドデセン-1,12-ジイル、シクロヘキサン-1,2-ジイル、シクロヘキサン-1,3-ジイルおよびシクロヘキサン-1,4-ジイル、ならびにこれらの混合である。U1の合成において使用される式IIIのヒドロキシ官能性ポリカルボナートA1と、U2の合成において使用される式IIIのヒドロキシ官能性ポリカルボナートA2とは、U1およびU2について同じである場合があり(A1=A2)、またはそれらは異なる場合があり(A1≠A2)、しかし、これらはともに、式IIIにおいてAについて定義されるようなポリカルボナートから選択される。最も良い結果が、ポリカルボナートジオールAのみが、ポリウレタンU1およびポリウレタンU2を製造する際にポリマージオールとして使用されたときに得られている。ポリカルボナートジオールの質量の2%超を、当分野において一般に使用されている他のポリマージオール(例えば、ポリエステルジオール、ポリエーテルジオールまたはアクリルポリオールなど)によって置き換えることは、プラスチック基材(例えば、ポリカルボナートおよびアクリロニトリル・ブタジエン・スチレンターポリマーの熱可塑性ブレンド物に基づくプラスチック基材など)での損なわれた接着性を引き起こす。
【0017】
上記少なくとも1つの水分散性ポリウレタンU1は、質量平均モル質量Mw1が少なくとも10kg/molであり、好ましくは少なくとも15kg/molであり、特に好ましくは少なくとも20kg/molである。上記少なくとも1つの水分散性ポリウレタンU1は好ましくは、酸価が8mg/g~40mg/gであり、より好ましくは12mg/g~30mg/gであり、ヒドロキシル価が0mg/g~50mg/gであり、より好ましくは2mg/g~30mg/gである。
【0018】
上記少なくとも1つの水分散性ポリウレタンU2は、質量平均モル質量Mw2が10kg/mol未満であり、好ましくは8kg/mol未満であり、該ポリウレタンポリマーU2のヒドロキシル基の比物質量n(-OH)/m(U2)が1mol/kg~4mol/kgであり、好ましくは1.4mol/kg~3.5mol/kgである。上記少なくとも1つの水分散性ポリウレタンU2はさらに、分枝度が0.5mol/kgまでであり、好ましくは0.2mol/kg~0.33mol/kgであり、ウレア基の比物質量n(-NH-CO-NH-)/m(U2)が0.8mol/kg~2.0mol/kgであり、好ましくは1.0mol/kg~1.8mol/kgである。
【0019】
水に分散されたポリウレタンを少なくとも2つ含み、そのうちの少なくとも1つが、本明細書中上記で詳述されるような水分散性ポリウレタンU1であり、かつ、少なくとも1つが、本明細書中上記で詳述されるような水分散性ポリウレタンU2である水性ポリウレタン分散物Uは、U1およびU2の別々の分散物を混合することによって製造することができる。混合比は好ましくは、U1およびU2のそれぞれの分散物の混合物におけるポリウレタンU2の質量分率w(U2)=m(U2)/[m(U1)+m(U2)]が0.50kg/kg~0.80kg/kgの間であるようにされる(この場合、m(U1)は分散物の混合物におけるポリウレタンU1の質量であり、m(U2)は分散物の混合物におけるポリウレタンU2の質量である)。質量分率w(U2)が50%未満である場合、水性ポリウレタン分散物Uを用いて作製される被膜の耐薬品性が損なわれ、これに対して、基材に対する接着性が、具体的にはABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレンターポリマー)およびPC(ビスフェノールAに基づくポリカルボナート)のブレンド物を含む基材に対する接着性が、80%を超える質量分率w(U2)の場合には悪くなることが、本発明が基づく実験において見出されている。したがって、特に好ましい範囲が、0.55kg/kg≦w(U2)≦0.78kg/kgであり、とりわけ0.60kg/kg≦w(U2)≦0.77kg/kgであり、最も好ましくは0.65kg/kg≦w(U2)≦0.75kg/kgである。
【0020】
本発明はまた、本発明のポリウレタンU1の水性分散物を調製するためのプロセスであって、下記のステップを含むプロセスに関する:
(a1)-本明細書中上記で定義されるようなヒドロキシ官能性ポリカルボナートA1を提供するステップ、
(b1)-ポリカルボナートA1を、少なくとも2つのヒドロキシル基を分子あたり有し、かつ、モル質量が400g/mol未満である多価アルコールE1と、そして、ヒドロキシ官能性有機酸およびアミノ官能性有機酸からなる群から選択される有機酸B11、ならびに親水性ポリエーテルB2のどちらかまたは両方と混合するステップであって、酸B11が、少なくとも1つのヒドロキシル基または第一級もしくは第二級のアミノ基、好ましくは2つのヒドロキシル基または第一級もしくは第二級のアミノ基と、少なくとも1つの酸基とを有し、かつ、親水性ポリエーテルB2が、式II:
-O-(-CH2-CH2-O-)n-CH2-CH2-O-、(II)
(式中、nは1~100である)
に従うオキシエチレン基に由来する部分と、少なくとも1つのヒドロキシル基、好ましくは2つのヒドロキシル基とを有する、ステップ、
(c11)-ステップ(b1)で調製される混合物を、好ましくは60℃~110℃である高められた温度において、少なくとも2つのイソシアナート基を分子あたり有する少なくとも1つの多官能性イソシアナートC1と反応させるステップであって、多官能性イソシアナートC1の量が、C1におけるイソシアナート基の、ステップ(b1)で調製される混合物に存在するヒドロキシル基に対する比が好ましくは2:1~1.1:1であるように選ばれ、反応が、ステップ(b1)で調製される混合物のヒドロキシル基の好ましくは少なくとも90%が多官能性イソシアナートC1との反応によって消費されるまで行われる、ステップ、
(d11)-ステップ(c11)の冷却された反応生成物に、酸B11がステップ(b1)において使用されたならば、塩基N1を、使用される酸B11の酸基の少なくとも50%を中和するために十分な物質量で加え、得られた混合物を水に分散し、その後直ちに、脂肪族ジアミンG1aおよび脂肪族ジヒドラジドG1bからなる群から選択される鎖延長剤G1を加え、この混合物を、残留する反応性イソシアナート基と、鎖延長剤G1の反応性基とが消費されるまで反応させ、室温(23℃)への冷却のもとで均質化するステップ、
ただし、反応物A1、B11、B2、C1、G1a、G1bおよびN1の量は、得られたポリウレタンU1が少なくとも10.0kg/molの質量平均モル質量Mw1を有するように選ばれる。
【0021】
別の実施形態において、本発明のポリウレタンU1の水性分散物の調製は、下記のステップを含む:
(a1)-本明細書中上記で定義されるようなヒドロキシ官能性ポリカルボナートA1を提供するステップ、
(b1)-ポリカルボナートA1を、少なくとも2つのヒドロキシル基を分子あたり有し、かつ、モル質量が400g/mol未満である多価アルコールE1と、そして、ヒドロキシ官能性有機酸およびアミノ官能性有機酸からなる群から選択される有機酸B11、ならびに親水性ポリエーテルB2のどちらかまたは両方と混合するステップであって、酸B11が、少なくとも1つのヒドロキシル基または第一級もしくは第二級のアミノ基、好ましくは2つのヒドロキシル基または第一級もしくは第二級のアミノ基と、少なくとも1つの酸基とを有し、かつ、親水性ポリエーテルB2が、式II:
-O-(-CH2-CH2-O-)n-CH2-CH2-O-、(II)
(式中、nは1~100である)
に従うオキシエチレン基に由来する部分と、少なくとも1つのヒドロキシル基、好ましくは2つのヒドロキシル基とを有する、ステップ、
(c12)-ステップ(b1)で調製される混合物を、好ましくは60℃~150℃である高い温度において、少なくとも2つのイソシアナート基を分子あたり有する少なくとも1つの多官能性イソシアナートC1と反応させるステップであって、多官能性イソシアナートC1の量が、C1におけるイソシアナート基の、ステップ(b1)で調製される混合物に存在するヒドロキシル基に対する比が好ましくは1.7:1~1.1:1であるように、より好ましくは1.5:1~1.05:1であるように選ばれ、反応が、ステップ(b1)で調製される混合物のヒドロキシル基の好ましくは少なくとも90%が多官能性イソシアナートC1との反応によって消費されるまで行われる、ステップ、
(d12)-ステップ(c12)の冷却された反応生成物に、オレフィン不飽和モノマーの混合物Mであって、3個~6個の炭素原子および少なくとも1つのカルボン酸基を有するオレフィン不飽和カルボン酸M11と、1個~15個の炭素原子を有する直鎖状または分枝型の脂肪族アルコールM12とのエステルである少なくとも1つのオレフィン不飽和モノマーM1、ならびに、3個~6個の炭素原子および少なくとも1つのカルボン酸基を有するオレフィン不飽和カルボン酸M21の1モルと、1個~15個の炭素原子および少なくとも2つのヒドロキシル基を有する直鎖状または分枝型の脂肪族アルコールM22の1モルとのエステルであることが好ましい少なくとも1つのヒドロキシ官能性オレフィン不飽和モノマーM2を含む混合物Mを加え、このようにして得られる混合物を均質化し、C1と異なっていてもよい、またはC1と同じであってもよいイソシアナート成分C2のさらなる量をそれに加え、反応を、モノマー混合物Mにおけるヒドロキシル基の好ましくは少なくとも90%がイソシアナート成分C2との反応によって消費されるまで行うステップであって、反応混合物におけるイソシアナート基の残留質量分率、
w(-NCO)=m(-NCO)/m(反応混合物)が、反応完了後において0.5%~3%の間であり、好ましくは0.7%~2.5%の間であるように化学量論が選ばれる、ステップ、および
e(12)-ステップ(d12)の生成物に、第一級アミノ基または第二級アミノ基と、前述のアミノ基とは反応性が異なるアミノ基、またはヒドロキシル基である少なくとも1つのさらなる官能基とを有する連鎖停止剤Fを、好ましくは5分までの期間のうちに加え、均質化し、その後、酸B11が使用されたならば、塩基N1を、使用される酸B11の少なくとも50%を中和するために十分な物質量で加え、その後、水を加えて分散物とし、分散物に、水溶性ラジカル開始剤の水溶液を加え、水性分散物を重合して、アクリル変性ポリウレタン分散物を形成するステップ、
ただし、反応物A1、B11、B2、C1、C2、E1、F、N1、M1およびM2の量は、得られたポリウレタンU1が少なくとも10.0kg/molの質量平均モル質量Mw1を有するように選ばれる。
【0022】
本発明はまた、本発明のポリウレタンU2の水性分散物を調製するためのプロセスであって、下記のステップを含むプロセスに関する:
(a2)-本明細書中上記で定義されるようなヒドロキシ官能性ポリカルボナートA2を提供するステップ、
(b2)-ポリカルボナートA2を、少なくとも3つヒドロキシル基を分子あたり有し、かつ、モル質量が400g/mol未満である多価アルコールE3と、そして、ヒドロキシ官能性有機酸およびアミノ官能性有機酸からなる群から選択される有機酸B21と混合するステップであって、酸B21が、少なくとも1つのヒドロキシル基または第一級もしくは第二級のアミノ基、好ましくは2つのヒドロキシル基または第一級もしくは第二級のアミノ基と、少なくとも1つの酸基とを有する、ステップ、
(c2)-ステップ(b2)で調製される混合物を、少なくとも2つのイソシアナート基を分子あたり有する少なくとも1つの多官能性イソシアナートC3と反応させるステップであって、多官能性イソシアナートC3の量が、C3におけるイソシアナート基の、ステップ(b)で調製される混合物に存在するヒドロキシル基に対する比が2:1~1.1:1であるように選ばれ、反応が、ステップ(b1)で調製される混合物のヒドロキシル基の少なくとも90%が多官能性イソシアナートC3との反応によって消費されるまで行われる、ステップ、
(d2)-ステップ(c2)の反応混合物に、場合により60℃~110℃の間の温度に冷却した後で、少なくとも1つの第一級アミノ基または第二級アミノ基と、少なくとも1つのヒドロキシル基とを有する少なくとも1つのヒドロキシアミンD、および、使用される酸B21の少なくとも50%を中和するために十分な物質量での塩基N2を加え、フリーのイソシアナート基がもはや検出されなくなるまで反応させるステップ、および
(e2)-ステップ(d2)の反応生成物を水に分散させるステップ、
ただし、反応物A2、B21、C3、D、N2およびE3の量は、得られたポリウレタンU2が10kg/mol未満の質量平均モル質量Mw2を有するように選ばれる。
【0023】
好ましい実施形態において、ポリウレタンU1を製造するための上記プロセスは、有機ヒドロキシ官能性酸B11をステップ(b1)において使用することを含む。この場合、ステップ(c11)またはステップ(c12)の反応生成物が、水に分散される前に、または水に分散されている間に、または水に分散された後で、水酸化アルカリ金属、水酸化アルカリ土類金属、有機アミン、水酸化アンモニウムおよびアルキル化アンモニウム水酸化物から選択されるアルカリ性試薬である塩基N1を加えることによってステップ(d11)またはステップ(d12)において中和される。同様に、ポリウレタンU2を製造するための上記プロセスは、有機ヒドロキシ官能性酸B21をステップ(b2)において使用することを含む。ステップ(c2)の反応生成物が、水に分散される前に、または水に分散されている間に、または水に分散された後で、水酸化アルカリ金属、水酸化アルカリ土類金属、有機アミン、水酸化アンモニウムおよびアルキル化アンモニウム水酸化物から選択されるアルカリ性試薬である塩基N2を加えることによってステップ(d2)において中和される。塩基N1および塩基N2として好ましいものは、両方の場合において第三級アルキルアミンである。
【0024】
さらなる好ましい実施形態において、ステップ(d2)では、ヒドロキシアミン成分Dは、ヒドロキシル基を有する第一級アミンD1と、少なくとも1つのヒドロキシル基、好ましくは2つのヒドロキシル基を有する第二級アミンD2との混合物を含む。D1として好ましいものは、2個~6個の炭素原子を有する直鎖状および分岐状の脂肪族ヒドロキシアミンであり、例えば、エタノールアミン(2-アミノエタノール)、イソプロパノールアミン(1-アミノ-2-プロパノール)、アラニノール(2-アミノ-1-プロパノール)、3-アミノ-1-プロパノール、2-アミノ-1-ブタノール、4-アミノ-1-ブタノールおよび6-アミノ-1-ヘキサノールなどである。D2として好ましいものは、4個~12個の炭素原子を有する直鎖状および分岐状の脂肪族ヒドロキシアミンであり、例えば、ジエタノールアミン(2,2’-イミノジエタノール)およびジイソプロパノールアミン(1,1’-イミノジ-2-プロパノール)などである。そのような混合物は、予想外なことに、そのような混合物がその合成のステップ(d2)において使用されるポリウレタンU2に基づく被覆組成物の加水分解抵抗性を改善することが見出されている。好ましくは、D1およびD2の混合物DにおけるヒドロキシアミンD1の質量分率w(D1)が、0.2kg/kg≦w(D1)≦0.5kg/kgであり、式中、w(D1)は、ヒドロキシアミンD1の質量m(D1)の、ヒドロキシアミンD1およびヒドロキシアミンD2の質量の和(m(D1)+m(D2))に対する比率である。
【0025】
本発明はまた、被覆組成物を調製するための上記水性ポリウレタン分散物Uの使用方法であって、水分散性ポリウレタンUに、湿潤化剤、消泡剤、流れ調整剤、沈降防止剤、均展剤、殺生物剤および融合助剤、任意選択で顔料および着色剤の群から選択される少なくとも1つの添加剤を混合して、バインダー混合物を形成するステップ、そのようにして調製されるバインダー混合物を、キャップ化イソシアナートおよび非キャップ化イソシアナート、アミノプラスト架橋剤、アルコキシカルボニル-アミノトリアジンおよびフェノプラスト樹脂からなる群から選択される少なくとも1つの架橋剤と一緒にするステップ、バインダーおよび架橋剤の混合物を、噴霧、浸漬、刷毛塗り、ブレード塗工、カーテン塗工またはローラー塗りによって基材に塗布するステップ、および被覆された基材を任意選択で高められた温度で乾燥させて、被覆薄膜を上記基材に形成するステップを含む方法に関する。本発明による水性二液型被覆組成物の調製のために、質量平均モル質量Mw1が少なくとも10kg/molであるポリウレタンU1の少なくとも1つの水性分散物と、質量平均モル質量Mw2が10kg/mol未満であるポリウレタンU2の少なくとも1つの水性分散物とが、別々に、または一緒にそのどちらであれ、添加剤および改質剤の少なくとも1つと、そして、親水性修飾されていてもよい多官能性イソシアナート架橋剤である架橋剤Xと混合される。
【0026】
ポリカルボナートポリオールが、ポリエーテルポリオールまたはポリエステルポリオールを上回って、本発明との関連では単独の出発ポリオール材料(遊離体(educt))(A1およびA2)として特に好ましい。本発明において好ましいポリカルボナートポリオールが、2個~14個の炭素原子、好ましくは4個~12個の炭素原子を有する直鎖状または分岐状または環状の脂肪族ジオールのポリカルボナート、例えば、エチレングリコール、1,2-ジヒドロキシプロパン、1,3-ジヒドロキシプロパン、1,4-ジヒドロキシブタン、2,2-ジメチル-1,3-ジヒドロキシプロパン、1,5-ジヒドロキシペンタン、1,6-ジヒドロキシヘキサン、1,2-ジヒドロキシシクロヘキサン、1,4-ジヒドロキシシクロヘキサン、1,8-ジヒドロキシ-オクタン、2,2,4-トリメチル-1,3-ジヒドロキシペンタンおよび1,10-ジヒドロキシデカンなどのポリカルボナートである。ポリウレタンU1およびポリウレタンU2の調製においてポリカルボナートポリオールに加えて使用される他のポリオール(例えば、ポリエステルポリオールなど)の少量さえもが、例において示されるように、低下した接着特性を引き起こす。したがって、ポリカルボナートポリオールA1またはポリカルボナートポリオールA2と一緒に使用される他のポリオールA’の質量分率w(A’)は、
w(A’)1=m(A’)/[m(A’)+m(A1)]≦2%、かつ、w(A’)2=m(A’)/[m(A’)+m(A2)]≦2%
(式中、m(A’)はポリオールA’の質量であり、m(A1)はポリオールA1の質量であり、m(A2)はポリオールA2の質量である)
でなければならない。
【0027】
ポリウレタン樹脂におけるポリオール成分に由来する部分の質量分率(ポリウレタン樹脂の質量によって除される、合成で使用されるA1またはA2の質量)は、通常の場合には15%~80%の間であり、好ましくは30%~60%の間である。
【0028】
少なくとも1つのヒドロキシル基またはアミノ基、好ましくは2つのヒドロキシル基またはアミノ基と、少なくとも1つの酸基とを有するヒドロキシ官能性またはアミノ官能性の酸B1(この定義は独立して、B11およびB21に適用される)は、例えば、米国特許第3,412,054号および同第3,640,924号、ならびにドイツ国特許第2624442号(B2)およびドイツ国特許出願第2744544号(A1)に記載されている(これらは本明細書において参照される)。この点において特に好適であるヒドロキシ官能性酸B1が、少なくとも1つのカルボキシル基を分子あたり有するものであり、一般には1つ~3つのカルボキシル基を分子あたり有するものである。アニオン形成が可能である好適な基にはまた、スルホン酸基も含まれる。そのような化合物の例は、ジヒドロキシカルボン酸であり、例えば、α,α-ジアルキロールアルカン酸、特にα,α-ジメチロールアルカン酸(例えば、2,2-ジメチロール酢酸、2,2-ジメチロールプロピオン酸、2,2-ジメチロール酪酸、2,2-ジメチロールペンタン酸など)、各種酒石酸、同様にポリヒドロキシ酸(例えば、グルコン酸など)である。これらの中で特に好ましいものは、2,2-ジメチロールプロピオン酸および2,2-ジメチロール酪酸である。アミノ基を含有する化合物B1の例は、α,δ-ジアミノ吉草酸および2,4-ジアミノトルエン-5-スルホン酸である。これらの化合物B1の混合物を用いることも可能である。ポリウレタン樹脂における成分B1の質量分率(樹脂の質量によって除される、合成で使用されるB1の質量)は、一般には2%~20%であり、好ましくは4%~10%である。
【0029】
ポリエーテルB2は、式II:
-O-(-CH2-CH2-O-)n-CH2-CH2-O-、(II)
(式中、nは1~100である)
に従うオリゴオキシエチレン基と、少なくとも1つのヒドロキシル基、好ましくは2つのヒドロキシル基とを有し、上記式IIの側方オキシエチレン基または末端オキシエチレン基を含み、かつ、上記式IIの構造を含む少なくとも一価のアルコールまたは少なくとも一価のアミンが、反応混合物に存在するイソシアナート基と反応することによってポリウレタン樹脂に組み込まれる。好ましくは、化合物B2が合成において使用されるならば、化合物B2の質量分率は、ポリウレタン樹脂における式IIの基の質量分率が少なくとも1%であるように、好ましくは少なくとも3%であるように選ばれる。しかしながら、式IIのこれらの基の質量分率は10%を超えてはならず、好ましくは7%を超えてはならない。これは、そのような場合、耐水性および耐湿性が悪影響を受けるであろうからである。成分B1および成分B2の質量分率のより低い範囲が、両方の成分が存在するならば、好ましくは使用される。
【0030】
少なくとも2つのイソシアナート基を分子あたり有する多官能性イソシアナートCは、ジイソシアナート、3つ以上のイソシアナート基を有するイソシアナート、同様に、これらの二官能性イソシアナートまたは多官能性イソシアナートのいずれかに由来するイソシアヌラート、ビウレット、アロファナートおよびウレトジオンからなる群から選択される。好適であるジイソシアナートは、ポリウレタンおよび塗料の分野において知られている化合物(例えば、脂肪族、脂環式または芳香族のジイソシアナートなど)である。これらは好ましくは、式Q(NCO)2(式中、Qは、4個~40個の炭素原子、特に4個~20個の炭素原子を有する二価の炭化水素基であり、好ましくは4個~12個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基、6個~15個の炭素原子を有する脂環式炭化水素基、6個~15個の炭素原子を有する芳香族炭化水素基、または7個~15個の炭素原子を有する芳香脂肪族(araliphatic)炭化水素基である)のものである。好んで用いられることになるそのようなジイソシアナートの例が、テトラメチレンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、ドデカメチレンジイソシアナート、1,4-ジイソシアナトシクロヘキサン、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアナート(イソホロンジイソシアナート)、4,4’-ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン、2,2-(4,4’-ジイソシアナト)ジシクロヘキシルプロパン、1,4-ジイソシアナトベンゼン、2,4-ジイソシアナトトルエンもしくは2,6-ジイソシアナトトルエンまたはこれらの異性体の混合物、4,4’-ジイソシアナトジフェニルメタンまたは2,4’-ジイソシアナトジフェニルメタン、2,2-(4,4’-ジイソシアナト)ジフェニルプロパン、p-キシリレンジイソシアナート、および、α,α,α’,α’-テトラメチル-m-または-p-キシリレンジイソシアナート、ならびに、これらの化合物を含む混合物である。
【0031】
C1、C2およびC3は互いに独立して、本明細書中上記で定義されるような多官能性イソシアナートCのいずれかである。C1、C2およびC3はすべてが同じであることが可能であり、または、すべてが互いに異なることが可能である。
【0032】
多価アルコールEは、少なくとも2個の炭素原子、最大でも40個の炭素原子を有し、少なくとも2つのヒドロキシル基を分子あたり有し、かつ、モル質量が400g/mol未満である脂肪族の直鎖状アルコール、分岐状アルコール状または環状アルコールである。多価アルコールEは好ましくは、2個~40個の炭素原子を有する二価の直鎖状または分岐状の脂肪族アルコールE1から選択され、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオールおよび1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオールおよび1,4-ブタンジオール、ならびに二量体脂肪アルコールなどから選択される。三価アルコールまたは多価アルコールE3の導入は、ポリウレタン樹脂のヒドロキシル価を増大させ、かつ、鎖の分岐をもたらす好都合な手段である。これらは好ましくは、グリセロール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ジグリセロール、ジトリメチロールプロパンおよびジペンタエリトリトールである。
【0033】
連鎖停止剤Fは、1つの第一級アミノ基または第二級アミノ基と、前述のアミノ基とは異なる反応性を有するアミノ基、およびヒドロキシル基からなる群から選択される少なくとも1つのさらなる反応性基とを有する。Fが、異なる反応性を有する少なくとも2つのアミノ基を有する場合、特に有用な化合物には、第一級/第二級アミンの3-アミノ-1-メチルアミノプロパン、3-アミノ-1-エチルアミノプロパン、3-アミノ-1-シクロヘキシルアミノプロパンおよび3-アミノ-1-メチルアミノブタンなどのアミンが含まれる。Fが、第一級アミノ基または第二級アミノ基と、ヒドロキシル基であるさらなる反応性基とを有する場合、Fは、Dと同じ群から独立して選択される。
【0034】
成分G1、いわゆる鎖延長剤には、イソシアナート基との反応性を有し、かつ、好ましくはイソシアナート官能性反応物に関して少なくとも二官能性である化合物が含まれる。これらの例が、水、ヒドラジンおよびその有機誘導体G1b、好ましくは脂肪族のジヒドラジンおよびジヒドラジド(例えば、アジピン酸ジヒドラジドなど)、2つの第一級アミノ基を有する脂肪族ジアミンG1a(例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、1,2-ジアミノプロパンおよび1,3-ジアミノプロパン、イソホロンジアミン、2-メチルペンタンジアミンおよび3-メチルペンタンジアミン、ならびにヘキサメチレンジアミンなど)であり、なお、そのようなアミンはまた、さらなる置換基(例えば、ヒドロキシル基など)を有する場合がある。そのようなポリアミンは、ドイツ国特許出願第3644371号(A1)に記載されている。ポリウレタンU1における、この成分G1に由来する部分の質量分率は、通常の場合には1%~10%の間であり、好ましくは2%~5%の間である。
【0035】
ステップ(c11)におけるプレポリマーの調製において、反応は通常、用いられるイソシアナートの反応性に依存して、60℃~140℃の温度で、好ましくは100℃~130℃の温度で、かつ、概して触媒の非存在下において、しかし、必要に応じて、イソシアナートに対して不活性である溶媒の存在下で行われる。溶媒を使用する場合、上述の温度は、選択されるイソシアナートの反応性に依存して、より低く選ばれることがある。この点での好適な溶媒が具体的には、水との相溶性がある溶媒(例えば、エーテル、ケトンおよびエステル、同様にN-メチルピロリドンまたはN-エチルピロリドンなど)である。この溶媒の量は便宜的には、樹脂またはその遊離体もしくは出発物質の溶液において20%の質量分率を超えてはならず、好ましくは5%~15%の範囲である。ポリイソシアナートを残り成分の溶液に加えることが好都合である。
【0036】
化合物B1(すなわち、B11またはB21)を中和するための塩基N1または塩基N2として、第三級アミンが特に好適であり、例えば、1個~12個の炭素原子、好ましくは1個~6個の炭素原子をそれぞれのアルキル基に有するトリアルキルアミンが特に好適である。これらの化合物の例が、トリメチルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、2-(N,N-ジメチルアミノ)-2-メチル-プロパノール-1、およびトリプロピルアミンである。アルキル基はまた、ジアルキルモノアルカノールアミン、アルキルジアルカノールアミンおよびトリアルカノールアミンの場合のように、例えば、ヒドロキシル基を含有することができる。そのような化合物の一例がジメチルエタノールアミンであり、これもまた、好ましくは中和剤として使用される。
【0037】
用いることができる他の塩基N1または塩基N2にはまた、無機塩基、例えば、アンモニア、あるいは水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムなどが含まれる。
【0038】
塩基N1または塩基N2は通常の場合、プレポリマーの酸基に対して、約0.3mol:1molから1.3mol:1molまでのモル比で、好ましくは約0.5mol:1molから1mol:1molまでのモル比で用いられる。
【0039】
室温と110℃との間で通常の場合には行われる中和は、どのような所望の様式であっても実施することができ、例えば、含水中和剤をポリウレタン樹脂に加えることによって、または逆にポリウレタン樹脂を含水中和剤に加えることによって実施することができる。しかしながら、最初に中和剤をポリウレタン樹脂に加え、次いで水を加えるだけであることもまた可能である。一般に、これは、20%~70%の固形分の質量分率をもたらし、好ましくは30%~50%の固形分の質量分率をもたらす。
【0040】
ポリウレタンU1およびポリウレタンU2の質量分率(これは、ポリウレタンU1およびポリウレタンU2の質量m(U1)および質量m(U2)の合計(m(U1)+m(U2))と、添加剤、顔料、充填剤、増量剤、架橋剤などをさらに含む最終的な水性被覆組成物におけるすべての固形物の質量m(s)との比として計算される)が、一般には5%~40%であり、好ましくは15%~30%である。
【0041】
被覆組成物が、上記水性ポリウレタン分散物Uに、湿潤化剤、消泡剤、流れ調整剤、沈降防止剤、均展剤、殺生物剤および融合助剤、任意選択で顔料および着色剤の群から選択される少なくとも1つの添加剤を混合して、バインダー混合物を形成し、そのようにして調製されるバインダー混合物を、キャップ化イソシアナートおよび非キャップ化イソシアナート、親水性キャップ化されたイソシアナートおよび親水性キャップ化されていないイソシアナート、アミノプラスト架橋剤、アルコキシカルボニルアミノトリアジンおよびフェノプラスト樹脂からなる群から選択される少なくとも1つの架橋剤と一緒にし、バインダーおよび架橋剤の混合物を、噴霧、浸漬、刷毛塗り、ブレード塗工、カーテン塗工またはローラー塗りによって基材に塗布し、被覆された基材を任意選択で高められた温度で乾燥させて、被覆薄膜を上記基材上に形成することによって、上記ポリウレタン分散物Uから調製される。水性ポリウレタン分散物Uを含む被覆組成物は、熱可塑性材料から作製される基材を塗装するために、とりわけ、ポリカルボナートまたはコポリカルボナートまたはポリエステルカルボナート、ならびに、スチレンポリマー、スチレンコポリマーおよびスチレンターポリマー、また、これらの耐衝撃性品(とりわけ、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレンターポリマー)とのそれらのブレンド物に基づく熱可塑性材料から作製される基材を塗装するために特に適している。
【0042】
本発明が下記の例においてさらに説明され、しかし、下記の例は、限定的であるとして解釈してはならない。
【0043】
下記パラメーターが、本発明との関連で使用される。
【0044】
酸価は、DIN EN ISO3682(DIN53402)に従えば、試験を受けているサンプルを中和するために必要とされる水酸化カリウムのそのような質量mKOHと、このサンプルの質量mB、または、溶液もしくは分散物の場合にはサンプル中の固形物の質量との比として定義される;その慣例的な単位が「mg/g」である。
【0045】
ヒドロキシル価は、サンプルと同じ数のヒドロキシル基を有する水酸化カリウムの質量mKOHと、そのサンプルの質量mB(溶液もしくは分散物の場合にはサンプル中の固形物の質量)との比として、DIN EN ISO4629(DIN 53 240)に従って定義される;その慣例的な単位が「mg/g」である。
【0046】
ポリウレタンのモル質量(質量平均Mw)を、ポリスチレン標準物質を使用して、溶媒としてのテトラヒドロフランにおけるポリウレタンの溶液に対するサイズ排除クロマトグラフィーにより求めた。
【0047】
濃度は一般には(別途明記される場合を除いて)、質量分率であり、すなわち、問題としている成分Bの質量mBと、混合物または溶液であってもよいサンプルの質量mとの比であり、これは通常の場合、%またはcg/gで記載される。従って、イソシアナート濃度は、サンプルに存在するイソシアナート基(-N=C=O、モル質量:42.02g/mol)の質量がそのサンプルの質量によって除されたものであり、DIN EN ISO11909に従って測定される。
【0048】
分散物の動的粘度を、別途示されている場合を除き、コーン・プレート型粘度計を使用して23℃および100s-1の剪断速度で測定した。
【0049】
成分または官能基の比物質量b(X)(サンプルの質量mによって除される、サンプルにおける成分または官能基の物質量n(X))が、本明細書ではウレア基>N-CO-N<およびヒドロキシル基-OHについてであるが、簡略化のために「含有量」として示され、通常の場合には、mmol/g、または、SI基本単位の比、すなわち、mol/kgで測定される(これらは、同じ数値を示す)。これらの含有量が水性分散物に対して測定されるとき、これらの計算において使用されるサンプルの質量は常に、当該分散物における固形物の質量である。
【0050】
同様に、質量mを有するポリウレタンにおける分岐度DBは、j個のヒドロキシル基をそれぞれ有するヒドロキシ官能性化合物Ej(ただし、jは3以上である)に由来するこのポリウレタンにおける部分の比物質量n(Ej)/mに、j-2を乗じたものの和として規定され(この場合、jは、それぞれのそのような部分について、化合物Ejにおけるヒドロキシル基の数である)、下記のように計算される:DB=Σj=3
∞[n(Ej)×(j-2)]/m。分岐度(以降、これはまた、「分岐」として示される)を遊離体(出発物質)の量から計算した。ヒドロキシル基含有量およびウレア含有量もまた、遊離体の量から計算した。
【0051】
U2について特に好ましくは、本明細書中上記で定義されるような分岐度DBについての範囲が0.2mol/kg~0.33mol/kgであり、式Iのウレア基(>N-CO-N<)の一定量についての範囲が1.0mol/kg~1.8mol/kgであり、ヒドロキシル基(-OH)の比物質量についての範囲が1.4mol/kg~3.5mol/kgである。
【0052】
特定の化学基X、すなわち、分岐度、ウレア基またはヒドロキシル基についての物質量n(X)の、樹脂の質量m(樹脂)に対する比b(X)(これは、b(X)=n(X)/m(樹脂)によって定義され、これはまた、DIN32625に従って比物質量として示される)に関連するすべてのそのようなパラメーターについて、m(樹脂)は検討中のポリウレタンの質量である。
【0053】
例1 低分子量ポリウレタン分散物PLの調製
2つの異なるポリウレタン分散物(PL1およびPL2)を合成した。
1.1
ポリウレタン分散物PL1については、1,6-ヘキサンジオールに基づくヒドロキシ官能性ポリカルボナート(ヒドロキシル価:110mg/g、モル質量:およそ1kg/mol;これは、Covestro AGからDesmophen(登録商標)XP2586として市販されている)の1020gと、218.4gのα,α-ジメチロールプロピオン酸と、134gのトリメチロールプロパンとの混合物を撹拌とともに60℃に加熱した。1763.5gのm-テトラメチルキシリレンジイソシアナートを加えた。得られた混合物を撹拌し、120℃に加熱した。その温度において、反応を、反応混合物におけるイソシアナートの質量分率が8.3%未満になるまで続けた。その後、混合物を90℃に冷却し、309.5gのジエタノールアミンと、179.8gのエタノールアミンとの混合物を加えた。その後、145.2gのN,N-ジメチルエタノールアミンを加えた。得られた混合物を30分間撹拌した。その後直ちに、反応塊を5292.7gの蒸留水に80℃で分散させ、1時間撹拌した。下記のパラメーターがこの分散物について求められた:
ウレア含量:1.643mmol/g
OH含有量:2.464mmol/g
分岐:0.265mmol/g
固形分の質量分率:39.7%
酸価:26.3mg/g
pH値:7.9
ポリウレタンのモル質量Mw:6450g/mol
【0054】
1.2
ポリウレタン分散物PL2については、第1の反応ステップにおけるヒドロキシ官能性ポリカルボナートの質量の2.5%が、アジピン酸およびヘキサンジオールから作製されるポリエステルであって、ヒドロキシル価が110mg/gであるポリエステルの同じ質量により置き換えられたことを除いて、合成は、PL1の場合と同じであった。分散物におけるポリマーの質量分率が約40%であった。分散物におけるポリウレタンの質量平均モル質量Mmが6600g/molであった。このポリマーの他のすべての特性が上記と同じであった。
【0055】
例2 高分子量ポリウレタン分散物PHの調製
2つの高分子量ポリウレタン分散物(PH1およびPH2)を合成した。
2.1
ポリウレタン分散物PH1については、1,6-ヘキサンジオールに基づくヒドロキシ官能性ポリカルボナート(ヒドロキシル価:110mg/g;これは、Covestro AGからDesmophen(登録商標)XP2586として市販されている)の805gと、41.9gのα,α-ジメチロールプロピオン酸と、37.25gの1,4-ブタンジオールとを一緒に混合し、130℃の温度に達するまで加熱した。均質な混合物を得た後、184.5gのm-テトラメチルキシリレンジイソシアナートを、30分~40分をかけて加えた。反応混合物を、NCO濃度がゼロになるまで130℃で撹拌した。すべてのNCO基が消費された後、生成物を70℃に冷却し、続いて、260.2gのメチルメタクリラート、反応物の質量に基づいて0.05%の質量分率での触媒としてのジブチルスズオキシド、2gの2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノールおよび35.6gのグリセロールモノメタクリラートを加えた。この混合物を15分間にわたって均質化し、306gのm-テトラメチルキシリレンジイソシアナートを5分以内で加えた。その後、温度を、80℃の反応温度に達するようにゆっくりと上げた。この温度において、反応を、1.4%のNCO基の理論的な質量分率が達成されるまで続けた。
【0056】
この反応生成物に対して、57gのジエタノールアミンを速やかに加え、混合物を30分間にわたって均質化した。17.5gのジメチルエタノールアミンを加えた後、撹拌機の速度を増大し、温度が70℃である2850gの蒸留水を加えた。3.3gの過硫酸アンモニウムおよび330gの蒸留水からなる溶液を調製した。この溶液の10%部分を80℃で加え、およそ300gの残量を45分以内で加え、このようにして作製した混合物を80℃でさらに2時間撹拌した。得られた分散物は35%の固形物の質量分率を含み、pHが8.0であり、動的粘度が34mPa・sであった。分散物PH1におけるポリウレタンの質量平均モル質量Mwが28kg/molであり、ウレア基の比含有量が、n(>N-CO-N<)/m=0.31mol/kgであり、ヒドロキシル基の比含有量が、n(OH)/m=0.63mol/kgであり、分岐度がゼロであった。
【0057】
2.2
PH2については、1,6-ヘキサンジオールに基づくヒドロキシ官能性ポリカルボナート(ヒドロキシル価:110mg/g;これは、Covestro AGからDesmophen(登録商標)XP2586として市販されている)の245.4gと、18.3gのα,α-ジメチロールプロピオン酸と、100gのN-エチル-2-ピロリドンと、2.93gの1,6-ヘキサンジオールと、0.04gのジブチルスズオキシドとを仕込み、65℃に加熱し、1時間撹拌し、その結果、混合物は透明な溶液となった。96.7gのイソホロンジイソシアナートをこの溶液に加えた。この反応混合物の温度を100℃に上げた。この混合物を、NCO基の理論的な質量分率が0.65%に達するまでこの温度で撹拌した。その後、混合物を95℃に冷却した。10.8gのトリエチルアミンを加え、得られた混合物を25分間にわたって均質化した。この溶液を、温度が80℃である435gの脱イオン水に10分未満にわたって分散させ、その後直ちに、50gの脱イオン水における1.87gのエチレンジアミンの溶液を加えた。1時間の均質化段階の後、回分反応物を室温(23℃)に冷却した。37.8%の不揮発物の質量分率、(25s-1の剪断速度で測定される)およそ1250mPa・sの動的粘度、および8.1のpHを有する微細な分散物が得られた。分散物PH2におけるポリウレタンの質量平均モル質量Mwは1500kg/molの検出限界を超えており、ウレア基の比含有量が、n(>N-CO-N<)/m=0.17mol/kgであり、ヒドロキシル基の比含有量、および分岐度がゼロであった。
【0058】
例3 低分子量ポリウレタンポリマーおよび高分子量ポリウレタンポリマーを用いたポリマー配合物の調製、ならびに耐溶剤性についての試験
低分子量のPL1またはPL2と、高分子量のPH1またはPH2と、疎水性または親水性の多官能性イソシアナート架橋剤とを用いる配合物1~配合物6を、被覆用途のためのバインダーとして調製した。ヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)三量体と、親水性変性HDI誘導体とを架橋剤として使用した。表1において、HDIの量が、水に分散させたポリウレタンにおけるヒドロキシル基の物質量n(OH)に対するイソシアナート架橋剤におけるイソシアナート基の物質量n(NCO)の比として表される。
【0059】
配合物1~配合物6の組成が、下記の表1に示される。
表1-配合物1~配合物6の組成(質量m、物質量n)
【表1】
【0060】
3.1
配合物1の調製は下記の通りであった:
180gの例1.1のPL1を、86gの例2.1のPH1、1.0gのポリエーテル変性ポリシロキサン湿潤化剤(Additol(登録商標)VXW6503N、Allnex Austria)、0.5gの非イオン性消泡剤(Surfynol(登録商標)104E;等しい質量の2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオールおよびエチレングリコールの混合物;Air Products)、および20gの脱イオン水と混合して、粘度を調節した。その後、ヘキサメチレンジイソシアナートに基づく疎水性三量体ポリイソシアナート(Desmodur(登録商標)N3390、Covestro AG)の65gを加え、混合物を10分間撹拌して、透明な被覆組成物を得た。200μmの湿潤薄膜を、ステップ・ギャップ・フィルムアプリケーターを用いてガラス板に塗布し、10分間フラッシュオフさせた。被膜を80℃で30分間硬化させ、続いて、後硬化ステップを、完全な硬化を保証するために70℃で12時間行った。
【0061】
硬化薄膜のアセトン耐性を、1滴のアセトンを被覆薄膜上に加えて、試験スポットをビーカーで覆うことによって試験した。被覆薄膜を、薄膜が既に柔らかく、粘着性であるかどうかについて30秒毎に調べ、アセトンを、必要ならば、試験期間中に補充した。この試験において、被膜はアセトンの影響下での軟化を9.5分以内に示さず、その後、試験を中止した。同じ試験を、キシレンを溶剤として用いて行った場合、10分を超える耐溶剤性が得られた。
【0062】
3.2
配合物2の調製は下記の通りであった:
180gの例1.1のPL1を、86gの例2.1のPH1、1.0gのポリエーテル変性ポリシロキサン湿潤化剤(上記参照)、0.5gの非イオン性消泡剤(上記参照)、およびおよそ20gの脱イオン水と混合して、粘度を調節した。その後、ヘキサ-メチレンジイソシアナートに基づく親水性オリゴマー状ポリイソシアナート(Bayhydur(登録商標)304;Covestro AG)の70gを加え、混合物を10分間撹拌した。200μmの湿潤薄膜を、ステップ・ギャップ・フィルムアプリケーターを用いてガラス板に塗布し、10分間フラッシュオフさせた。被膜を80℃で30分間硬化させ、続いて、後硬化ステップを、完全な硬化を保証するために70℃で12時間行った。
【0063】
硬化薄膜のアセトン耐性を上記のように試験した。この試験において、被膜はアセトンの影響下での軟化を4.5分以内に示さず、その後、試験を中止した。同じ試験を、キシレンを溶剤として用いて行った場合、10分を超える耐溶剤性が得られた。
【0064】
3.3
配合物3の調製は下記の通りであった:
180gの例1.1のPL1を、86gの例2.2のPH2、1.0gのポリエーテル変性ポリシロキサン湿潤化剤(上記参照)、0.5gの非イオン性消泡剤(上記参照)、および20gの脱イオン水と混合して、粘度を調節した。ヘキサメチレンジイソシアナートに基づく疎水性三量体ポリイソシアナート(上記参照)の65gを加え、混合物を10分間撹拌した。
【0065】
200μmの湿潤薄膜を、ステップ・ギャップ・フィルムアプリケーターを用いてガラス板に塗布し、10分間フラッシュオフさせた。被膜を80℃で30分間硬化させ、続いて、後硬化ステップを、完全な硬化を保証するために70℃で12時間行った。
【0066】
硬化薄膜のアセトン耐性を上記のように試験した。この試験において、被膜はアセトンの影響下での軟化を3.5分以内に示さず、その後、試験を中止した。同じ試験を、キシレンを溶剤として用いて行った場合、10分を超える耐溶剤性が得られた。
【0067】
3.4
配合物4の調製は下記の通りであった:
180gの例1.1のPL1を、86gの例2.2のPH2、1.0gのポリエーテル変性ポリシロキサン湿潤化剤(上記参照)、0.5gの非イオン性消泡剤(上記参照)、およびおよそ20gの脱イオン水と混合して、粘度を調節した。ヘキサメチレンジイソシアナートに基づく親水性オリゴマー状ポリイソシアナート(上記参照)の70gを加え、混合物を10分間撹拌した。200μmの湿潤薄膜を、ステップ・ギャップ・フィルムアプリケーターを用いてガラス板に塗布し、10分間フラッシュオフさせた。その後、被膜を80℃で30分間硬化させ、続いて、70℃で12時間の後硬化ステップを、完全な硬化を保証するために行った。
【0068】
硬化薄膜のアセトン耐性を上記のように試験した。この試験において、被膜はアセトンの影響下での軟化を5分以内に示さず、その後、試験を中止した。同じ試験を、キシレンを溶剤として用いて行った場合、10分を超える耐溶剤性が得られた。
【0069】
3.5
配合物5の調製は下記の通りであった:
180gの例1.2のPL2を、86gの例2.2のPH2、1.0gのポリエーテル変性ポリシロキサン湿潤化剤(上記参照)、0.5gの非イオン性消泡剤(上記参照)、および20gの脱イオン水と混合して、粘度を調節した。その後、ヘキサメチレンジイソシアナートに基づく疎水性三量体ポリイソシアナート(上記参照)の65gを加え、混合物を10分間撹拌した。200μmの湿潤薄膜を、ステップ・ギャップ・フィルムアプリケーターを用いてガラス板に塗布し、10分間フラッシュオフさせた。被膜を80℃で30分間硬化させ、続いて、後硬化ステップを、完全な硬化を保証するために70℃で12時間行った。
【0070】
硬化薄膜のアセトン耐性を上記のように試験した。この試験において、被膜はアセトンの影響下での軟化を3分以内に示さず、その後、試験を中止した。同じ試験を、キシレンを溶剤として用いて行った場合、10分を超える耐溶剤性が得られた。
【0071】
3.6
配合物6の調製:
180gの例1.2のPL2を、86gの例2.2のPH2、1.0gのポリエーテル変性ポリシロキサン湿潤化剤(上記参照)、0.5gの非イオン性消泡剤(上記参照)、および20gの脱イオン水と混合して、粘度を調節した。ヘキサメチレンジイソシアナートに基づく親水性オリゴマー状ポリイソシアナート(上記参照)の70gを加え、混合物を10分間撹拌した。200μmの湿潤薄膜を、ステップ・ギャップ・フィルムアプリケーターを用いてガラス板に塗布し、10分間フラッシュオフさせた。その後、被膜を80℃で30分間硬化させ、続いて、後硬化ステップを、完全な硬化を保証するために70℃で12時間行った。
【0072】
硬化薄膜のアセトン耐性を上記のように試験した。この試験において、被膜はアセトンの影響下での軟化を4分以内に示さず、その後、試験を中止した。同じ試験を、キシレンを溶剤として用いて行った場合、10分を超える耐溶剤性が得られた。
【0073】
例4 熱水耐性
4.1
クリアコート
分散物PL1と分散物PH1との混合物に基づく被覆薄膜は、標準的なポリウレタン分散物から得られる被覆薄膜と比較して、魅力的なプラスチック基材(例えば、ABS/PCブレンド物(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレンターポリマーとポリカルボナートとのブレンド物)など)での改善された熱水耐性を示した。使用された基材は、ポリカルボナートの射出成形品(ビスフェノールAに基づくポリカルボナート、Tecanat(登録商標)、Ensinger GmbH)、ABSの射出成形品(Magnum(商標)3616、Trinseo Europe GmbH)、および、ABS/PCブレンド物の3つの射出成形品(ABS/PC1:Bayblend(登録商標)T65、Vicat軟化温度TVic=119℃(ISO306に従って50K/hで測定された場合);ABS/PC2:Bayblend(登録商標)T65XF、TVic=118℃;ABS/PC3:Bayblend(登録商標)T85、TVic=129℃;すべてが、Covestro AG)であった。
【0074】
配合物1~配合物6を熱水環境(72時間、95%の相対湿度、90℃)で試験し、同じ種類および量の添加剤および疎水性硬化剤を伴う比較用の2液型ポリウレタン分散物(国際公開WO2011/051359A1の例7)に対して評価した。被覆薄膜の接着性を、DIN EN ISO2409に従って熱水試験の前後で調べた。試験結果が表2にまとめられる。(0=完全な接着、5=接着性なし):
表2-熱水試験後での接着性結果
【表2】
熱水試験前での接着性が、試験されたすべての基材に対して0(完全な接着)であった。表2における値は熱水試験の後で測定されている。
*これらの配合物では、ヒドロキシ官能性ポリカルボナートの2.5%がヒドロキシ官能性ポリエステルで置き換えられた例1.2の低分子量ポリウレタン分散物が使用された。すなわち、これらは、2%以下であるポリカルボナートポリオール以外のポリオールについての質量分率の許容限界の範囲外である。
【0075】
4.2
メタリック下塗り
さらなる実験において、熱水耐性を、金属薄片が組み込まれた塗料を用いて試験した。表3には、この試験のために調製される配合物7および配合物8の組成が示される。
【0076】
表3-配合物7および配合物8の組成(質量m、物質量n)
【表3】
*例4.1の場合と同様な比較用PUD
顔料湿潤化剤:アミン中和されたリン酸エステル(Additol(登録商標)XL250、Allnex Austria)
金属薄片懸濁物:ブチルグリコールに分散されたアルミニウム薄片(STAPA(登録商標)Hydrolan 2154、Eckart GmbH)、質量分率w(Al)=60%
湿潤化剤:例3の場合と同様
消泡剤:例3の場合と同様
HDI三量体:例3の場合と同様
【0077】
調製方法:
硬化剤を除いて表8に列挙される成分を、述べられた順序で混合し、室温(23℃)で16時間静置した。その後、イソシアナート硬化剤を加え、得られた組成物を、25s-1の剪断速度および23℃で測定される場合、300mPa・s~400mPa・sの間である噴霧粘度に調節した。このようにして得られる被覆組成物を、スプレーガン(SATA RP 3000、SATA GmbH&Co.KG)を用いて基材としてのプラスチック材料シートに塗布して、15μm~30μmの間の乾燥厚みを、80℃での30分間の硬化、続いて、70℃での12時間の後硬化ステップの後で有する被覆薄膜を形成させた。
【0078】
接着性を、DIN EN ISO2409に従って熱水試験の前後で調べた。試験結果が表4にまとめられる(0=完全な接着、5=接着なし)。
【0079】
表4-熱水試験後での接着性結果
熱水試験前での接着性が、試験されたすべての基材に対して0であった。表9に記載される値は熱水試験の後で測定されている。
【表4】
【0080】
例5 ハンドクリームおよび日焼けローションに対する抵抗性
上記で記載されるような配合物1~配合物6に基づく被膜と、例4.1の場合と同様な比較用PUDに基づく比較用被膜とを、PC、ABS、およびABS/PCブレンド物を含む重要なプラスチック基材での、試験用ハンドクリーム(Thierry GmbH(Stuttgart)から入手可能な、Volkswagen AG test PV 3964(タイプA)に従った試験用クリーム)および試験用日焼けローション(Thierry GmbH(Stuttgart)から入手可能な、Volkswagen AG test PV 3964(タイプB)に従った試験用ローション)に対する耐薬品性について試験した。試験を、1cm2の面積を有するガーゼ細片にクリームまたはローションを染みこませ、余分なクリームまたはローションをスパチュラで除き、このガーゼ細片を塗装面に置き、基材および細片をプラスチックキャップで覆い、オーブンにおいて80℃で24時間加熱することによって行った。接着性を、DIN EN ISO2409に従ってテープ引っ張りを用いたクロスハッチ試験によってこれらのサンプルに対して試験した:「0」=最良(接着性が失われない)、5=最悪(クロスハッチ領域全体が緩んでいる)。
【0081】
配合物1~配合物4は、ABS/PCブレンド物のような重要な基材でさえ、接着性に関して最良の結果を示した。ポリウレタンの合成のために使用されたポリカルボナートジオールの一部がポリエステルジオールによって置き換えられた配合物5および配合物6では、接着性がこれらの試験の後で失われた。類似した結果が、高分子量PUDにおけるポリカルボナートジオールの一部(その質量の2.5%)またはすべてがポリエステルジオールによって置き換えられた場合に得られている。
【0082】
結果が表5に示される。
【0083】
表5-ハンドクリーム「HC」/日焼けローション「SL」試験の後での接着性結果
【表5】
本発明に包含され得る諸態様は、以下のとおり要約される。
[態様1]
水に分散された少なくとも2つのポリウレタンを含み、そのうちの少なくとも1つが、少なくとも10kg/molの質量平均モル質量M
w1
を有する水分散性ポリウレタンU1であり、かつ、少なくとも1つが、10kg/mol未満の質量平均モル質量M
w2
と、1.4mol/kg~4mol/kgであるヒドロキシル基の比物質量n(-OH)/m(U2)と、0.5mol/kgまでである分枝度と、0.8mol/kg~2mol/kgであるウレア基の比物質量n(-NH-CO-NH-)/m(U2)とを有する水分散性ポリウレタンU2である水性ポリウレタン分散物Uであって、
式III:
HO-(X-O-CO-O-)
m
-X-OH (式III)
のヒドロキシ官能性ポリカルボナートが、U1およびU2の合成において使用され(式中、Xは、直鎖状アルキレン基、分岐状アルキレン基または環状アルキレン基であり、mは整数である)、かつ、式IIIの前記ヒドロキシ官能性ポリカルボナートの数平均モル質量M
n
が少なくとも400g/molであり、ならびに
U1の前記合成において使用されるポリオールにおけるヒドロキシ官能性ポリカルボナートA1以外のポリオールA’の質量分率w(A’)
1
、および、U2の前記合成において使用されるポリオールにおけるヒドロキシ官能性ポリカルボナートA2以外のポリオールA’の質量分率w(A’)
2
が、
w(A’)
1
=m(A’)/[m(A’)+m(A1)]≦2%、かつ、w(A’)
2
=m(A’)/[m(A’)+m(A2)]≦2%
(式中、m(A’)はポリオールA’の質量であり、m(A1)はポリオールA1の質量であり、m(A2)はポリオールA2の質量である)
である、水性ポリウレタン分散物U。
[態様2]
前記ポリウレタンU2の質量分率w(U2)=m(U2)/[m(U1)+m(U2)]が0.50kg/kg~0.80kg/kgである(式中、m(U1)は分散物UにおけるポリウレタンU1の質量であり、m(U2)は分散物UにおけるポリウレタンU2の質量である)、上記態様1に記載の水性ポリウレタン分散物。
[態様3]
前記水分散性ポリウレタンU1および水分散性ポリウレタンU2の少なくとも一方が、0.1mol/kg~1.8mol/kgの酸基および/または酸アニオン基の比物質量を有する、上記態様1および2のいずれかに記載の水性ポリウレタン分散物U。
[態様4]
式III:
HO-(X-O-CO-O-)
m
-X-OH (式III)
の前記ヒドロキシ官能性ポリカルボナートAにおいて、Xが、4個~14個の炭素原子を有する直鎖状アルキレン基、分岐状アルキレン基または環状アルキレン基であり、mが、4~30の整数である、上記態様1~3のいずれかに記載の水性ポリウレタン分散物。
[態様5]
10kg/mol未満の質量平均モル質量M
w2
を有する前記少なくとも1つの水分散性ポリウレタンU2が、
1.4mol/kg~3.5mol/kgの、前記ポリウレタンポリマーU2のヒドロキシル基の比物質量n(-OH)/m(U2)、
0.2mol/kg~0.33mol/kgの分枝度、および
1.0mol/kg~1.8mol/kgの、ウレア基の比物質量n(-NH-CO-NH-)/m(U2)
を有する、上記態様1~4のいずれかに記載の水性ポリウレタン分散物。
[態様6]
上記態様1~5のいずれかに記載される前記水性ポリウレタン分散物Uを、少なくとも10kg/molの質量平均モル質量M
w1
を有する少なくとも1つの水分散性ポリウレタンU1と、10kg/mol未満の質量平均モル質量M
w2
を有する少なくとも1つの水分散性ポリウレタンU2とを混合することによって調製するためのプロセスであって、
前記水分散性ポリウレタンU1が、
(a1)-式IIIのヒドロキシ官能性ポリカルボナートA1を提供するステップ
HO-(X-O-CO-O-)
m
-X-OH (式III)
(式中、Xは、好ましくは4個~14個の炭素原子を有する直鎖状アルキレン基、分岐状アルキレン基または環状アルキレン基であり、mは整数である)、
(b1)-前記ポリカルボナートA1を、少なくとも2つのヒドロキシル基を分子あたり有し、かつ、モル質量が400g/mol未満である多価アルコールE1と、そして、ヒドロキシ官能性有機酸およびアミノ官能性有機酸からなる群から選択される有機酸B11、ならびに親水性ポリエーテルB2のどちらかまたは両方と混合するステップであって、前記酸B11が、少なくとも1つのヒドロキシル基または第一級もしくは第二級のアミノ基、好ましくは2つのヒドロキシル基または第一級もしくは第二級のアミノ基と、少なくとも1つの酸基とを有し、かつ、前記親水性ポリエーテルB2が、式II:
-O-(-CH
2
-CH
2
-O-)
n
-CH
2
-CH
2
-O-、(II)
(式中、nは1~100である)
に従うオキシエチレン基に由来する部分と、少なくとも1つのヒドロキシル基、好ましくは2つのヒドロキシル基とを有する、ステップ、
(c11)-ステップ(b1)で調製される前記混合物を、高められた温度において、少なくとも2つのイソシアナート基を分子あたり有する少なくとも1つの多官能性イソシアナートC1と反応させるステップであって、多官能性イソシアナートC1の量が、C1におけるイソシアナート基の、ステップ(b1)で調製される前記混合物に存在するヒドロキシル基に対する比が2:1~1.1:1であるように選ばれる、ステップ、
(d11)-ステップ(c11)の冷却されていてもよい反応生成物に、酸B11がステップ(b1)において使用されたならば、塩基N1を、使用される前記酸B11の前記酸基の少なくとも50%を中和するために十分な物質量で加え、得られた混合物を水に分散し、その後直ちに、脂肪族ジアミンG1aおよび脂肪族ジヒドラジドG1bからなる群から選択される鎖延長剤G1を加え、この混合物を、残留する反応性イソシアナート基と、前記鎖延長剤G1の反応性基とが消費されるまで反応させ、室温(23℃)への冷却のもとで均質化するステップ
を含むプロセスで作製され、
前記反応物A1、B11、B2、C1、G1a、G1bおよびN1の量が、得られたポリウレタンU1が少なくとも10.0kg/molの質量平均モル質量M
w1
を有するように選ばれる、プロセス。
[態様7]
ヒドロキシ官能性酸B11がステップ(b1)において使用され、かつ、ステップ(e11)において、ステップ(d11)の前記反応生成物が、水に分散される前に、または水に分散されている間に、または水に分散された後で、水酸化アルカリ金属、水酸化アルカリ土類金属、アミン、水酸化アンモニウムおよびアルキル化アンモニウム水酸化物から選択される塩基N1を加えることによって中和される、上記態様6に記載のプロセス。
[態様8]
ステップ(c11)が、ステップ(b1)において調製される前記混合物の前記ヒドロキシル基の少なくとも90%が前記多官能性イソシアナートC1との反応によって消費されるまで行われる、上記態様6または7のいずれかに記載のプロセス。
[態様9]
上記態様1~5のいずれかに記載される前記水性ポリウレタン分散物Uを、少なくとも10kg/molの質量平均モル質量M
w1
を有する少なくとも1つの水分散性ポリウレタンU1と、10kg/mol未満の質量平均モル質量M
w2
を有する少なくとも1つの水分散性ポリウレタンU2とを混合することによって調製するためのプロセスであって、
前記水分散性ポリウレタンU1が、
(a1)-式IIIのヒドロキシ官能性ポリカルボナートA1を提供するステップ
HO-(X-O-CO-O-)
m
-X-OH (式III)
(式中、Xは、好ましくは4個~14個の炭素原子を有する直鎖状アルキレン基、分岐状アルキレン基または環状アルキレン基であり、mは整数である)、
(b1)-前記ポリカルボナートA1を、少なくとも2つのヒドロキシル基を分子あたり有し、かつ、モル質量が400g/mol未満である多価アルコールE1と、そして、ヒドロキシ官能性有機酸およびアミノ官能性有機酸からなる群から選択される有機酸B11、ならびに親水性ポリエーテルB2のどちらかまたは両方と混合するステップであって、前記酸B11が、少なくとも1つのヒドロキシル基または第一級もしくは第二級のアミノ基、好ましくは2つのヒドロキシル基または第一級もしくは第二級のアミノ基と、少なくとも1つの酸基とを有し、かつ、前記親水性ポリエーテルB2が、式II:
-O-(-CH
2
-CH
2
-O-)
n
-CH
2
-CH
2
-O-、(II)
(式中、nは1~100である)
に従うオキシエチレン基に由来する部分と、少なくとも1つのヒドロキシル基、好ましくは2つのヒドロキシル基とを有する、ステップ、
(c12)-ステップ(b1)で調製される前記混合物を、好ましくは60℃~150℃である高められた温度において、少なくとも2つのイソシアナート基を分子あたり有する少なくとも1つの多官能性イソシアナートC1と反応させるステップであって、多官能性イソシアナートC1の量が、C1におけるイソシアナート基の、ステップ(b1)で調製される混合物に存在するヒドロキシル基に対する比が好ましくは1.7:1~1.1:1であるように、より好ましくは1.5:1~1.05:1であるように選ばれる、ステップ、
(d12)-ステップ(c12)の冷却されていてもよい反応生成物に、オレフィン不飽和モノマーの混合物Mであって、3個~6個の炭素原子および少なくとも1つのカルボン酸基を有するオレフィン不飽和カルボン酸M11と、1個~15個の炭素原子を有する直鎖状または分枝型の脂肪族アルコールM12とのエステルである少なくとも1つのオレフィン不飽和モノマーM1、ならびに、3個~6個の炭素原子および少なくとも1つのカルボン酸基を有するオレフィン不飽和カルボン酸M21の1モルと、1個~15個の炭素原子および少なくとも2つのヒドロキシル基を有する直鎖状または分枝型の脂肪族アルコールM22の1モルとのエステルであることが好ましい少なくとも1つのヒドロキシ官能性オレフィン不飽和モノマーM2を含む混合物Mを加え、このようにして得られる混合物を均質化し、C1と異なっていてもよい、またはC1と同じであってもよいイソシアナート成分C2のさらなる量をそれに加えるステップであって、前記混合物におけるイソシアナート基の残留質量分率、
w(-NCO)=m(-NCO)/m(混合物)が、反応完了後において0.5%~3%の間であるように化学量論が選ばれる、ステップ、および
e(12)-ステップ(d12)の前記生成物に、第一級アミノ基または第二級アミノ基と、前述のアミノ基とは反応性が異なるアミノ基、またはヒドロキシル基である少なくとも1つのさらなる官能基とを有する連鎖停止剤Fを、好ましくは5分までの期間のうちに加え、均質化し、その後、酸B11が使用されたならば、塩基N1を、使用される前記酸B11の少なくとも50%を中和するために十分な物質量で加え、その後、水を加えて分散物とし、前記分散物に、水溶性ラジカル開始剤の水溶液を加え、前記水性分散物を重合して、アクリル変性ポリウレタン分散物を形成するステップ
を含むプロセスで作製され、
前記反応物A1、B11、B2、C1、C2、E1、F、N1、M1およびM2の量が、得られたポリウレタンU1が少なくとも10.0kg/molの質量平均モル質量M
w1
を有するように選ばれる、プロセス。
[態様10]
ヒドロキシ官能性酸B11がステップ(b1)において使用され、かつ、ステップ(e12)において、ステップ(d12)の前記反応生成物が、水に分散される前に、または水に分散されている間に、または水に分散された後で、水酸化アルカリ金属、水酸化アルカリ土類金属、アミン、水酸化アンモニウムおよびアルキル化アンモニウム水酸化物から選択される塩基N1を加えることによって中和される、上記態様9に記載のプロセス。
[態様11]
ステップ(c12)が、ステップ(b1)において調製される前記混合物の前記ヒドロキシル基の少なくとも90%が前記多官能性イソシアナートC1との反応によって消費されるまで行われる、上記態様9または上記態様10に記載のプロセス。
[態様12]
オレフィン不飽和モノマーの前記混合物Mが、3個~6個の炭素原子および少なくとも1つのカルボン酸基を有するオレフィン不飽和カルボン酸M11と、1個~15個の炭素原子を有する直鎖状または分枝型の脂肪族アルコールM12とのエステルである少なくとも1つのオレフィン不飽和モノマーM1、ならびに、3個~6個の炭素原子および少なくとも1つのカルボン酸基を有するオレフィン不飽和カルボン酸M21の1モルと、1個~15個の炭素原子および3つ以上のヒドロキシル基を有する直鎖状または分枝型の脂肪族アルコールM22の1モルとのエステルである少なくとも1つのヒドロキシ官能性オレフィン不飽和モノマーM2を含む、上記態様9~11のいずれかに記載のプロセス。
[態様13]
ステップ(d12)が、前記モノマー混合物Mにおける前記ヒドロキシル基の少なくとも90%が前記イソシアナート成分C2との反応によって消費されるまで行われる、上記態様9~12のいずれかに記載のプロセス。
[態様14]
上記態様1~5のいずれかに記載の前記水性ポリウレタン分散物Uを、少なくとも10kg/molの質量平均モル質量M
w1
を有する少なくとも1つの水分散性ポリウレタンU1と、10kg/mol未満の質量平均モル質量M
w2
を有する少なくとも1つの水分散性ポリウレタンU2とを混合することによって調製するためのプロセスであって、
前記水分散性ポリウレタンU2が、
(a2)-式IIIのヒドロキシ官能性ポリカルボナートA2を提供するステップ
HO-(X-O-CO-O-)
m
-X-OH (式III)
(式中、Xは、好ましくは4個~14個の炭素原子を有する直鎖状アルキレン基、分岐状アルキレン基または環状アルキレン基であり、mは整数である)、
(b2)-前記ポリカルボナートA2を、少なくとも3つヒドロキシル基を分子あたり有し、かつ、モル質量が400g/mol未満である多価アルコールE3と、そして、ヒドロキシ官能性有機酸およびアミノ官能性有機酸からなる群から選択される有機酸B21と混合するステップであって、前記酸B21が、少なくとも1つのヒドロキシル基または第一級もしくは第二級のアミノ基、好ましくは2つのヒドロキシル基または第一級もしくは第二級のアミノ基と、少なくとも1つの酸基とを有する、ステップ、
(c2)-ステップ(b2)で調製される前記混合物を、少なくとも2つのイソシアナート基を分子あたり有する少なくとも1つの多官能性イソシアナートC3と反応させるステップであって、多官能性イソシアナートC3の量が、C3におけるイソシアナート基の、ステップ(b2)で調製される前記混合物に存在するヒドロキシル基に対する比が2:1~1.1:1であるように選ばれ、反応が、ステップ(b2)で調製される前記混合物の前記ヒドロキシル基の少なくとも90%が前記多官能性イソシアナートC3との反応によって消費されるまで行われる、ステップ、
(d2)-ステップ(c2)の前記反応混合物を60℃~110℃の間の温度に冷却し、少なくとも1つの第一級アミノ基または第二級アミノ基と、少なくとも1つのヒドロキシル基とを有する少なくとも1つのヒドロキシアミンD、および、使用される前記酸B21の少なくとも50%を中和するために十分な物質量での塩基N2を加え、反応を、フリーのイソシアナート基がもはや検出されなくなるまで行うステップ、および
(e2)-ステップ(d2)の反応生成物を水に分散するステップ
を含むプロセスで作製され、
前記反応物A2、B21、C3、D、N2およびE3の量が、得られたポリウレタンU2が10kg/mol未満の質量平均モル質量M
w2
を有するように選ばれる、プロセス。
[態様15]
ステップ(d2)において、前記ヒドロキシアミン成分Dが、ヒドロキシル基を有する第一級アミンD1と、少なくとも1つのヒドロキシル基を有する第二級アミンD2との混合物を含む、上記態様14に記載のプロセス。
[態様16]
被覆組成物を調製するための、上記態様1~5のいずれかに記載される、または上記態様6~15のいずれかに調製される前記水性ポリウレタン分散物Uの使用方法であって、前記水性ポリウレタン分散物Uに、湿潤化剤、消泡剤、流れ調整剤、沈降防止剤、均展剤、殺生物剤および融合助剤、任意選択で顔料および着色剤の群から選択される少なくとも1つの添加剤を混合して、バインダー混合物を形成するステップ、そのようにして調製される前記バインダー混合物を、キャップ化イソシアナートおよび非キャップ化イソシアナート、親水性キャップ化されたイソシアナートおよび親水性キャップ化されていないイソシアナート、アミノプラスト架橋剤、アルコキシカルボニルアミノトリアジンおよびフェノプラスト樹脂からなる群から選択される少なくとも1つの架橋剤と一緒にするステップ、バインダーおよび架橋剤の前記混合物を、噴霧、浸漬、刷毛塗り、ブレード塗工、カーテン塗工またはローラー塗りによって基材に塗布するステップ、および前記被覆された基材を任意選択で高められた温度で乾燥させて、被覆薄膜を前記基材上に形成するステップを含む、使用方法。
[態様17]
前記基材が、ポリカルボナート、またはポリカルボナートとアクリロニトリル・ブタジエン・スチレンターポリマーとのブレンド物に基づく熱可塑性材料である、上記態様16に記載の使用方法。