(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】無線電力伝送システムにおける異物検知
(51)【国際特許分類】
H02J 50/60 20160101AFI20220119BHJP
H02J 50/12 20160101ALI20220119BHJP
【FI】
H02J50/60
H02J50/12
(21)【出願番号】P 2018558396
(86)(22)【出願日】2017-05-02
(86)【国際出願番号】 EP2017060319
(87)【国際公開番号】W WO2017194338
(87)【国際公開日】2017-11-16
【審査請求日】2020-04-30
(32)【優先日】2016-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】特許業務法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ファン ヴァーヘニンゲン アンドリース
(72)【発明者】
【氏名】スターリング アントニウス エイドリアン マリア
(72)【発明者】
【氏名】エテス ウィルヘルムス ゲラルドゥス マリア
(72)【発明者】
【氏名】フリッセン ペトルス カロルス マリア
(72)【発明者】
【氏名】メヘンデール アディチャ
(72)【発明者】
【氏名】ポットゼ ウィレム
【審査官】右田 勝則
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-054596(JP,A)
【文献】特開2011-120425(JP,A)
【文献】特開2015-159690(JP,A)
【文献】特開2011-244624(JP,A)
【文献】国際公開第2008/032746(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0084857(US,A1)
【文献】特開2013-027245(JP,A)
【文献】特表2010-525785(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103875159(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/60
H02J 50/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線電力伝送システムのための電力送信機であって、前記無線電力伝送システムは無線誘導電力伝送信号を介して前記電力送信機からの電力伝送を受信するための電力受信機を含み、前記電力送信機は、
前記無線誘導電力伝送信号を生成するための送信電力コイルを備える電力出力回路と、
磁気テスト信号を生成するためのテスト信号コイルと、
前記テスト信号コイルに結合され、テスト信号を前記テスト信号コイルに供給して前記磁気テスト信号の生成をもたらすテスト信号生成器と、
複数の空間的に分散配置された検知コイルと、
前記磁気テスト信号によって前記複数の空間的に分散配置された検知コイルに誘起された信号を反映する測定値の組を生成するための測定ユニットと、
前記測定値の測定空間分布を求めるためのプロセッサであって、前記測定空間分布は前記検知コイルの位置を反映している、プロセッサと、
基準空間分布に対する前記測定空間分布の比較に応じて異物の存在を検知する異物検知器であって、前記異物検知器は
、電力受信デバイスから受信されたデータに応じて前記基準空間分布を求める、異物検知器と
を備える、電力送信機。
【請求項2】
無線電力伝送システムのための電力送信機であって、前記無線電力伝送システムは無線誘導電力伝送信号を介して前記電力送信機からの電力伝送を受信するための電力受信機を含み、前記電力送信機は、
前記無線誘導電力伝送信号を生成するための送信電力コイルを備える電力出力回路と、
磁気テスト信号を生成するためのテスト信号コイルと、
前記テスト信号コイルに結合され、テスト信号を前記テスト信号コイルに供給して前記磁気テスト信号の生成をもたらすテスト信号生成器と、
複数の空間的に分散配置された検知コイルと、
前記磁気テスト信号によって前記複数の空間的に分散配置された検知コイルに誘起された信号を反映する測定値の組を生成するための測定ユニットと、
前記測定値の測定空間分布を求めるためのプロセッサであって、前記測定空間分布は前記検知コイルの位置を反映している、プロセッサと、
基準空間分布に対する前記測定空間分布の比較に応じて異物の存在を検知する異物検知器であって、前記異物検知器は、前記比較の前に、前記測定空間分布及び前記基準空間分布のうちの少なくとも一方の幾何学的変換を行うことによって前記測定空間分布と前記基準空間分布とを幾何学的に位置合わせする、異物検知器と
を備える、電力送信機。
【請求項3】
前記基準空間分布は、異物が存在しないシナリオを表す、請求項1又は2に記載の電力送信機。
【請求項4】
前記基準空間分布は、電力受信デバイスが存在するシナリオを表す、請求項1
から3のいずれか一項に記載の電力送信機。
【請求項5】
前記異物検知器は、前記測定空間分布の複製を記憶し、記憶された前記測定空間分布を将来の比較のための前記基準空間分布として使用する、請求項1
から4のいずれか一項に記載の電力送信機。
【請求項6】
前記幾何学的変換は、平行移動及び回転のうちの少なくとも一方を含む、
請求項2、又は請求項2に従属する請求項3から5のいずれか一項に記載の電力送信機。
【請求項7】
ユーザ出力ユニットを更に備え、前記異物検知器は
、幾何学的変換のパラメータの指標のユーザ出力を生成する、請求項1又は2に記載の電力送信機。
【請求項8】
前記測定ユニットは、異なる周波数の前記磁気テスト信号に対して複数組の測定値を生成し、前記プロセッサは、測定値の各組に対して測定空間分布を生成することによって、複数の測定空間分布を生成し、前記異物検知器は、少なくとも1つの基準空間分布に対する前記複数の測定空間分布の比較に応じて、前記異物の存在を検知する、請求項1
から7のいずれか一項に記載の電力送信機。
【請求項9】
前記複数の空間的に分散配置された検知コイルのうちの少なくともいくつかは、20mmを超えない最大寸法を有し、前記複数の空間的に分散配置された検知コイルは、20個以上の検知コイルを含む、請求項1又は2に記載の電力送信機。
【請求項10】
前記測定ユニットは、前記複数の空間的に分散配置された検知コイルの誘起された信号を順次に測定することによって前記測定値の組を生成し、前記順次に測定することは、前記複数の空間的に分散配置された検知コイルのサブセットを個別に測定することを有する、請求項1又は2に記載の電力送信機。
【請求項11】
電力送信機と、無線誘導電力伝送信号を介して前記電力送信機からの電力伝送を受信するための電力受信デバイスとを備える無線電力伝送システムであって、前記電力送信機は、
前記無線誘導電力伝送信号を生成するための送信電力コイルを備える電力出力回路と、
磁気テスト信号を生成するためのテスト信号コイルと、
前記テスト信号コイルに結合され、テスト信号を前記テスト信号コイルに供給して前記磁気テスト信号の生成をもたらすテスト信号生成器と、
複数の空間的に分散配置された検知コイルと、
前記磁気テスト信号によって前記複数の空間的に分散配置された検知コイルに誘起された信号を反映する測定値の組を生成するための測定ユニットと、
前記測定値の測定空間分布を求めるためのプロセッサであって、前記測定空間分布は前記複数の空間的に分散配置された検知コイルの位置を反映している、プロセッサと、
基準空間分布に対する前記測定空間分布の比較に応じて異物の存在を検知する異物検知器であって、前記異物検知器は、前記比較の前に、前記測定空間分布及び前記基準空間分布のうちの少なくとも一方の幾何学的変換を行うことによって前記測定空間分布と前記基準空間分布とを幾何学的に位置合わせする、異物検知器と
を備える、無線電力伝送システム。
【請求項12】
電力送信機と、無線誘導電力伝送信号を介して前記電力送信機からの電力伝送を受信するための電力受信デバイスとを備える無線電力伝送システムであって、前記電力送信機は、
前記無線誘導電力伝送信号を生成するための送信電力コイルを備える電力出力回路と、
磁気テスト信号を生成するためのテスト信号コイルと、
前記テスト信号コイルに結合され、テスト信号を前記テスト信号コイルに供給して前記磁気テスト信号の生成をもたらすテスト信号生成器と、
複数の空間的に分散配置された検知コイルと、
前記磁気テスト信号によって前記複数の空間的に分散配置された検知コイルに誘起された信号を反映する測定値の組を生成するための測定ユニットと、
前記測定値の測定空間分布を求めるためのプロセッサであって、前記測定空間分布は前記複数の空間的に分散配置された検知コイルの位置を反映している、プロセッサと、
基準空間分布に対する前記測定空間分布の比較に応じて異物の存在を検知する異物検知器と
を備え、
前記電力受信デバイスは、前記基準空間分布を前記電力送信機に送信し、前記電力送信機は、前記基準空間分布を前記電力受信デバイスから受信する、無線電力伝送システム。
【請求項13】
電力送信機と、無線誘導電力伝送信号を介して前記電力送信機からの電力伝送を受信するための電力受信デバイスとを備える無線電力伝送システムのための動作の方法であって、前記電力送信機は、
前記無線誘導電力伝送信号を生成するための送信電力コイルを備える電力出力回路と、
磁気テスト信号を生成するためのテスト信号コイルと、
複数の空間的に分散配置された検知コイルと
を備える、方法において、前記方法は、前記電力送信機が、
テスト信号を前記テスト信号コイルに供給して前記磁気テスト信号の生成をもたらすステップと、
前記複数の空間的に分散配置された検知コイル
に磁界信号によって誘起された信号を反映する測定値の組を生成するステップと、
前記測定値の測定空間分布を求めるステップであって、前記測定空間分布は前記複数の空間的に分散配置された検知コイルの位置を反映している、ステップと、
基準空間分布に対する前記測定空間分布の比較に応じて異物の存在を検知するステップであって、前記比較の前に、前記測定空間分布及び前記基準空間分布のうちの少なくとも一方の幾何学的変換を行うことによって、前記測定空間分布と前記基準空間分布とを幾何学的に位置合わせすることを有する、ステップと
を行う、方法。
【請求項14】
電力送信機と、無線誘導電力伝送信号を介して前記電力送信機からの電力伝送を受信するための電力受信デバイスとを備える無線電力伝送システムのための動作の方法であって、前記電力送信機は、
前記無線誘導電力伝送信号を生成するための送信電力コイルを備える電力出力回路と、
磁気テスト信号を生成するためのテスト信号コイルと、
複数の空間的に分散配置された検知コイルと
を備える、方法において、前記方法は、前記電力送信機が、
テスト信号を前記テスト信号コイルに供給して前記磁気テスト信号の生成をもたらすステップと、
前記複数の空間的に分散配置された検知コイル
に磁界信号によって誘起された信号を反映する測定値の組を生成するステップと、
前記測定値の測定空間分布を求めるステップであって、前記測定空間分布は前記複数の空間的に分散配置された検知コイルの位置を反映している、ステップと、
基準空間分布に対する前記測定空間分布の比較に応じて異物の存在を検知するステップとを有し、
前記電力受信デバイスが、前記基準空間分布を前記電力送信機に送信するステップと、前記電力送信機が、前記基準空間分布を前記電力受信デバイスから受信するステップとを更に有する、方法。
【請求項15】
無線電力伝送システムの電力送信機のための動作の方法であって、前記無線電力伝送システムは無線誘導電力伝送信号を介して前記電力送信機からの電力伝送を受信するための電力受信デバイスも備える、方法において、前記電力送信機は、
前記無線誘導電力伝送信号を生成するための送信電力コイルを備える電力出力回路と、
磁気テスト信号を生成するためのテスト信号コイルと、
前記テスト信号コイルに結合され、テスト信号を前記テスト信号コイルに供給して前記磁気テスト信号の前記生成をもたらすテスト信号生成器と、
複数の空間的に分散配置された検知コイルと、
前記磁気テスト信号によって前記複数の空間的に分散配置された検知コイルに誘起された信号を反映する測定値の組を生成するための測定ユニットと、
前記測定値の測定空間分布を求めるためのプロセッサであって、前記測定空間分布は前記検知コイルの位置を反映している、プロセッサと、
基準空間分布に対する前記測定空間分布の比較に応じて異物の存在を検知する異物検知器とを備え、
前記比較の前に、前記測定空間分布及び前記基準空間分布のうちの少なくとも一方の幾何学的変換を行うことによって前記測定空間分布と前記基準空間分布とを幾何学的に位置合わせするステップを有する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導電力伝送システムにおける異物検知に関し、特には、非排他的にではあるが、無線電力伝送システムのためのQi仕様に適合する要素を使用して誘導電力伝送を提供する電力送信機のための異物検知に関する。
【背景技術】
【0002】
大部分の今日のシステムは、外部の電力供給装置から電力供給されるために専用の電気的接触を必要とする。しかしながら、これは得てして非実際的であり、ユーザが、物理的にコネクタを挿入するか又は他のやり方で物理的な電気的接触を確立する必要がある。典型的には、電力要件も著しく異なり、現在、大部分のデバイスは、それらに専用の電力供給装置を備え、その結果、典型的なユーザは、多数の異なる電力供給装置を有し、各電力供給装置は特定のデバイスに専用のものである。内部バッテリの使用により、使用中は電力供給装置への有線接続の必要性が回避されるが、バッテリは再充電(又は交換)が必要であるので、内部バッテリの使用は、部分的な解決を提供するだけである。バッテリの使用はまた、大幅に重量を増加させ、潜在的にはデバイスのコスト及びサイズも増加させる。
【0003】
著しく向上したユーザ体験を提供するために、電力送信機デバイスの送信機インダクタから個々のデバイスの受信機コイルに電力が誘導伝送される無線電力供給装置を使用することが提案されている。
【0004】
磁気誘導を介した電力送信はよく知られた概念であり、主に、一次送信機インダクタと二次受信機コイルとの間に密結合を有する変圧器に適用されている。2つのデバイスの間で一次送信機インダクタと二次受信機コイルとを分離することによって、疎結合変圧器の原理に基づき、これらの間での無線電力伝送が可能になる。
【0005】
このような構成は、いかなるワイヤも必要とすることなく、又は物理的電気接続がなされることも必要とすることなくデバイスへの無線電力伝送を可能にする。実際には、この構成において、デバイスは、外部から再充電又は電力供給されるために、単に送信機インダクタに隣接して、又はその上に置かれるだけでよい。例えば、電力送信機デバイスは水平面を備えるように構成され、電力供給されるためには、デバイスは単にその水平面上に置かれるだけでよい。
【0006】
更には、このような無線電力伝送構成は、有利には、電力送信機デバイスが、ある範囲の電力受信機デバイスとともに使用され得るように設計される。特には、Qi仕様として知られる無線電力伝送手法が定められ、現在ますます発展している。この手法は、Qi仕様を満たす電力送信機デバイスが、これもQi仕様を満たす電力受信機デバイスとともに、これらが同じ製造者からのものであること又は互いに対して専用のものであることを必要とすることなく、使用されることを可能にする。Qi規格は、動作が特定の電力受信機デバイスに適合されること(例えば、特定の電力排出に基づいて)を可能にするいくつかの機能を更に有する。
【0007】
Qi仕様は、Wireless Power Consortiumによって開発され、更なる情報は、例えば彼らのウェブサイト、http://www.wirelesspowerconsortium.com/index.htmlにおいて見つけることができ、特には、このウェブサイトでは、定められた仕様書を見つけることができる。
【0008】
無線電力伝送の潜在的な問題は、電力送信機の近傍に偶然存在する、例えば、金属製物体に、電力が意図せず伝送されてしまうことである。例えば、もしも電力受信機を受け止めるように構成された電力送信機のプラットフォーム上に、例えばコイン、鍵、指輪などの異物が置かれていたならば、送信機コイルによって生成された磁束が、金属物体に渦電流を生み出し、この渦電流は物体を昇温させる。熱の上昇は、極めて著しく且つ非常に不都合になり得る。
【0009】
このようなシナリオが発生するリスクを減少させるために、電力送信機が異物の存在を検知し、肯定的な検知が起こったときには、送信電力を減少させ、及び/又はユーザへの警告を生成することが可能になる異物検知を導入することが提案されている。例えば、Qiシステムは、異物を検知し、異物が検知されたならば、電力を減少させるための機能を有する。具体的には、Qi仕様バージョン1.2.1、セクション11が異物を検知する様々な方法を説明している。
【0010】
このような異物を検知するための1つの方法は、例えばWO2012127335において開示されているような、使途不明な電力損失を求めることによるものである。電力受信機及び電力送信機の両者が自身の電力を測定し、受信機はその測定された受信電力を電力送信機に通信する。電力送信機が、送信機によって送信された電力と受信機によって受信された電力との間に著しい差を検知したとき、不所望の異物が潜在的に存在し、安全のために電力伝送は減少され、又は中止される。この電力損失による方法は、電力送信機及び電力受信機によって行われる同期した正確な電力測定を必要とする。
【0011】
例えば、Qi電力伝送規格において、電力受信機は、例えば、整流電圧及び電流を測定し、それらを乗算し、電力受信機における内部電力損失(例えば、整流器、受信コイル、受信機の一部である金属部品などの損失)の推定値を加算することによって、その受信電力を推定する。電力受信機は、求められた受信電力を、例えば4秒ごとの最小レートで電力送信機に報告する。
【0012】
電力送信機は、例えば、インバータのDC入力電圧及び電流を測定し、それらを乗算し、例えばインバータ、一次コイル、及び電力送信機の一部である金属部品における推定電力損失など、送信機における内部電力損失の推定値を減算することによって結果を修正することによって、その送信電力を推定する。
【0013】
電力送信機は、送信電力から、報告された受信電力を減算することによって電力損失を推定することができる。この差分が閾値を超えたならば、送信機は、非常に多くの電力が異物において散逸されたと仮定し、次いで電力伝送を終了し得る。
【0014】
或いは、一次及び二次コイル並びに対応する静電容量及び抵抗によって形成される共振回路の品質又はQファクタを測定することが提案されている。測定されたQファクタの減少は、異物が存在することを示す。
【0015】
実際上は、Qi仕様に説明されている方法を使用して十分な検知精度を達成することは困難である傾向がある。この困難さは、特定の現在の動作条件についてのいくつもの不確定性によって悪化する。
【0016】
例えば、親和的金属(friendly metal)(すなわち、電力受信機を含むデバイスの金属部品)の潜在的な存在が特に問題であり、というのは、これらの磁気的及び電気的な性質は未知であり、それ故、補償することが困難であるからである。更には、典型的には、電力受信機と電力送信機との間の空間的配列は未知であるが、これは測定された値に大幅に影響する。また、典型的には、生成された磁界の横方向の範囲は未知であり、種々の電力送信機の間で大幅に異なる。
【0017】
更に、比較的少ない量の電力であっても金属的異物において散逸すると、不所望の加熱が生じる。それ故、送信電力と受信電力との間の小さな電力不一致であっても検知する必要があるが、これは、電力伝送の電力レベルが上昇したとき、特に困難である。
【0018】
電力送信機及び電力受信機の両者の電力推定は、典型的には、およそ±1%の精度を有する。15Wの負荷の電力受信機では、受信電力は、典型的には16W以上であり、それ故、このような例における典型的な電力推定は、およそ±160mWの不確定性を有する。故に、推定された電力差/損失は、±320mWの不確定性を有し、640mWの範囲に及ぶ。従って、正しい電力損失が500mW未満であるかを判定することは困難なタスクとなる。
【0019】
Qファクタの低下による手法は、多くのシナリオにおいて、金属物体の存在を検知するためにより良好な感度を有する。しかしながら、それでも十分な精度は提供できず、例えば、やはり親和的金属の影響を受ける。
【0020】
電力レベルが上昇すると、問題は大きくなり、それ故、既存の手法は、将来的に予想されるより大きな電力レベルには適さない。
【0021】
具体的には、電力損失推定の不確定性は、より高い電力レベルでは大幅に大きくなる。しかしながら、検知はやはり、同じ絶対電力レベルにおいて必要となる(例えば、異物における500mWの(又はそれより小さな)電力損失が検知されなければならないことが必要となる)。
【0022】
別の問題は、電力レベルがより高くなると、より高いレベルの電力を効果的に伝送するために物理的により大きなコイルを必要とする傾向があることである。例えば、およそ1W~30Wの電力レベルのためのQiシステムにおけるコイルは、例えば約20mm~60mmの直径を有する傾向があり、一方、200W~2kWの範囲の電力レベルのためのシステムにおけるコイルは、約100mm~2500mmの典型的な直径を有する。しかしながら、このようなより大きなコイルは、電力差及びQ低下のどちらの手法の検知性能にも影響を与える。このことは、例えば小さなコインの検知など、より小さな異物の検知について特に当てはまる。
【0023】
別の問題は、いくつかの事例において、電力受信機が受信電力についての情報を提供できないことであり、又は、名目上の若しくは期待される電力受信機と大幅に異なる特性を有することである。例えば、電力受信機は、直接的な誘導加熱のために磁界を使用する電力受信デバイスであることがある。例えば、これは、例えば水又は食物を料理するために、電力伝送信号によって誘起された渦電流によって金属板を昇温させるデバイスの場合に当てはまる。このようなデバイスの親和的金属は、測定に多大な影響を与え、一見したところ、親和的金属と金属異物とを見分けることはほとんど不可能である。また、このような電力受信機は、非常に単純であり、電力受信機に対する受信電力を効果的に測定し、報告するための機能を有さないことがある。
【0024】
故に、現在のアルゴリズムは、次善のものである傾向があり、いくつかのシナリオ及び例において、最適とは言えない性能を提供する。特には、それらは、検知されないが存在する異物や、又は存在しない異物の誤検知(false detection)をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
従って、向上した物体検知が有利であり、特には、向上した柔軟性、低減されたコスト、低減された複雑さ、向上した物体検知、誤検知及び未検知(missed detection)の減少、及び/又は向上した性能を可能にする手法が有利である。
【0026】
故に、本発明は、上述の欠点のうちの1つ又は複数を単独で、又は任意の組み合わせにおいて、好適に軽減、緩和又は除去しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明の一態様によると、無線電力伝送システムのための電力送信機であって、無線電力伝送システムは無線誘導電力伝送信号を介して電力送信機からの電力伝送を受信するための電力受信機を含み、電力送信機は、無線誘導電力伝送信号を生成するための送信電力コイルを備える電力出力回路と、磁気テスト信号を生成するためのテスト信号コイルと、テスト信号コイルに結合され、テスト信号をテスト信号コイルに供給して磁気テスト信号の生成をもたらすように構成されたテスト信号生成器と、複数の空間的に分散配置された検知コイルと、磁気テスト信号によって複数の空間的に分散配置された検知コイルに誘起された信号を反映する測定値の組を生成するための測定ユニットと、測定値の測定空間分布を求めるためのプロセッサであって、測定空間分布は検知コイルの位置を反映している、プロセッサと、基準空間分布に対する測定空間分布の比較に応じて異物の存在を検知するように構成された異物検知器であって、異物検知器(219)は、電力受信デバイス(105)から受信されたデータに応じて基準空間分布を求めるように構成される、異物検知器とを備える、電力送信機が提供される。
【0028】
本発明の別の態様によると、無線電力伝送システムのための電力送信機であって、無線電力伝送システムは無線誘導電力伝送信号を介して電力送信機からの電力伝送を受信するための電力受信機を含み、電力送信機は、無線誘導電力伝送信号を生成するための送信電力コイルを備える電力出力回路と、磁気テスト信号を生成するためのテスト信号コイルと、テスト信号コイルに結合され、テスト信号をテスト信号コイルに供給して磁気テスト信号の生成をもたらすように構成されたテスト信号生成器と、複数の空間的に分散配置された検知コイルと、磁気テスト信号によって複数の空間的に分散配置された検知コイルに誘起された信号を反映する測定値の組を生成するための測定ユニットと、測定値の測定空間分布を求めるためのプロセッサであって、測定空間分布は複数の空間的に分散配置された検知コイルの位置を反映している、プロセッサと、基準空間分布に対する測定空間分布の比較に応じて異物の存在を検知するように構成された異物検知器であって、異物検知器は、比較の前に、測定空間分布及び基準空間分布のうちの少なくとも一方の幾何学的変換を行うことによって測定空間分布と基準空間分布とを幾何学的に位置合わせするように構成される、異物検知器とを備える、電力送信機が提供される。
【0029】
本発明は、多くの実施形態及びシナリオにおいて、向上した異物検知を提供する。特には、この手法は、多くの実施形態において、異物の誤検知のリスクを減少させ及び/又は異物の未検知のリスクを減少させる。
【0030】
この手法の特定の利点は、多くの実施形態及びシナリオにおいて、電力受信デバイスが存在するときであっても効率的な異物検知が行われることを可能にすることである。この手法は、多くの実施形態において、親和的金属(典型的には、電力受信デバイスの一部であり、従って、存在することが意図される)と異物の異なる金属(電力受信デバイスの一部ではない)との間で差別化がなされることを可能にする。このことは、多くのシナリオにおいて、著しく効果的で信頼性の高い異物検知を提供し、及び/又は、向上したユーザ経験が提供されることを可能にする。
【0031】
幾何学的な位置合わせは、多くの実施形態において、検知精度を大幅に向上させる。これは、向上した柔軟性を提供し、多くの実施形態において、電力送信機が現在のシナリオ及び構成に適合することを可能にする。この手法は、多くの実施形態において、電力受信機の設置における向上した自由度を提供する。例えば、これは、ユーザが、例えばキッチン器具などの電力受信デバイスを、所与のエリア内のどこにでも、どのような向きにも、位置付けることを可能にする。
【0032】
測定値の空間分布は、測定された値及び測定の空間的位置の両者を示すデータを含む。位置の指標は、相対位置の指標であり、例えば、他の測定値に対する位置を示す。空間的位置データは、互いに対する測定値の位置又は配置によって示される。例えば、空間分布は、測定値のデータ構造によって表わされ、そこでは、データ構造における測定値の場所が、その測定値の空間的位置情報を表わす。具体的には、データ構造における測定値の相対的順番は、その測定値に対応する検知コイル間での空間的関係に対応する。
【0033】
検知コイルは、具体的には、平面的アレイ状に配置される。平面的アレイは、電力受信デバイスを受け止めるように構成された電力送信機の電力伝送面をカバーする。
【0034】
テスト信号コイル及び送信電力コイルは、同一のコイルでよく、すなわち、送信電力コイルがテスト信号コイルとしても使用されてよい。
【0035】
本発明の任意選択的な特徴によると、基準空間分布は、異物が存在しないシナリオを表す。
【0036】
これは、多くの実施形態において、向上した異物検知を提供する。
【0037】
多くの実施形態において、基準空間分布は、物体が存在しないシナリオを表す。
【0038】
本発明の任意選択的な特徴によると、基準空間分布は、電力受信デバイスが存在するシナリオを表す。
【0039】
これは、多くの実施形態において、向上した異物検知を提供する。この手法は、特には、多くの実施形態において、電力受信デバイスが存在するときの異物検知を可能にし、促進し又は向上させる。
【0040】
本発明の任意選択的な特徴によると、異物検知器は、測定空間分布の複製を記憶し、記憶された測定空間分布を将来の比較のための基準空間分布として使用するように構成される。
【0041】
これは、異物検知を促進及び/又は向上させる。特にこれは、異物検知に適した、且つ特定の電力送信機及び、場合により、電力受信デバイス用にカスタマイズされた、信頼性の高い基準空間分布を生成するための効率的な手法を提供する。
【0042】
異物検知器は、具体的には、異物が存在しないこと、又は、例えば、多くの実施形態において、電力受信デバイスが存在するが異物は存在しないことを示すユーザ入力指標に応じて測定空間分布を記憶するように構成される。
【0043】
本発明の一態様によると、異物検知器は、電力受信デバイスから受信されたデータに応じて基準空間分布を求めるように構成される。
【0044】
これは、電力送信機の複雑さを比較的低くすることを可能にしつつ、より柔軟な手法を提供する。例えば、これは、特定の電力受信デバイス用に特にカスタマイズされた異物検知を、この電力受信デバイスの特性を前もって電力送信機が必ずしも分かっていることを必要とすることなく、具体的には、この電力受信デバイスのために基準空間分布が電力送信機によって記憶されることを必要とすることなく、提供する。
【0045】
異物検知器は、比較の前に、測定空間分布及び基準空間分布のうちの少なくとも一方の幾何学的変換を行うことによって測定空間分布と基準空間分布とを幾何学的に位置合わせするように構成される。
【0046】
これは、多くの実施形態において、異物検知を向上させ、特には、現在の条件への検知の向上した適合を提供する。
【0047】
本発明の任意選択的な特徴によると、幾何学的変換は、平行移動及び/又は回転を含む。異物検知器は、具体的には、測定空間分布及び基準空間分布を、それらの間の一致が最大化(差分測定の値の最小化に対応する)されるように位置合わせするように構成される。
【0048】
本発明の任意選択的な特徴によると、電力送信機は、ユーザ出力ユニットを更に備え、異物検知器は、幾何学的変換のパラメータの指標のユーザ出力を生成するように構成される。
【0049】
これは、例えば、ユーザが電力受信デバイスをより最適な位置に移動させ、それによって電力伝送動作を向上させることを可能にする指標を、ユーザに提供する。
【0050】
本発明の任意選択的な特徴によると、測定ユニットは、異なる周波数の磁気テスト信号に対して複数組の測定値を生成するように構成され、プロセッサは、測定値の各組に対して測定空間分布を生成することによって、複数の測定空間分布を生成するように構成され、異物検知器は、少なくとも1つの基準空間分布に対する複数の測定空間分布の比較に応じて、異物の存在を検知するように構成される。
【0051】
これは、多くのシナリオにおいて、より正確な異物検知を可能にする。
【0052】
いくつかの実施形態において、テスト信号生成器は、異なる周波数を有する複数のテスト信号を生成して異なる周波数を有する複数の磁気テスト信号をもたらすように構成され、測定ユニットは、複数組の測定値を生成するように構成され、測定値の各組は1つのテスト信号に対応し、プロセッサは、測定値の組の各々に対して測定空間分布を生成することによって、複数の測定空間分布を生成するように構成され、異物検知器は、複数の比較に応じて、異物の存在を検知するように構成され、各比較は、複数の測定空間分布のうちの1つの測定空間分布と基準空間分布との間のものである。
【0053】
本発明の任意選択的な特徴によると、複数の空間的に分散配置された検知コイルのうちの少なくともいくつかは、20mmを越えない最大寸法を有し、複数の空間的に分散配置された検知コイルは、20個以上の検知コイルを含む。
【0054】
これは、多くの実施形態において、特に有利な動作を提供し、具体的には、複雑さと検知性能との間の有利なトレードオフを提供する。
【0055】
本発明の任意選択的な特徴によると、測定ユニットは、複数の空間的に分散配置された検知コイルの誘起された信号を順次に測定することによって測定値の組を生成するように構成され、順次に測定することは、複数の空間的に分散配置された検知コイルのサブセットを個別に測定することを有する。
【0056】
これは、多くの適用例において、電力送信機の複雑さを減少させる。
【0057】
本発明の一態様によると、電力送信機と無線誘導電力伝送信号を介して電力送信機からの電力伝送を受信するための電力受信デバイスとを備える無線電力伝送システムであって、電力送信機は、無線誘導電力伝送信号を生成するための送信電力コイルを備える電力出力回路と、磁気テスト信号を生成するためのテスト信号コイルと、テスト信号コイルに結合され、テスト信号をテスト信号コイルに供給して磁気テスト信号の生成をもたらすように構成されたテスト信号生成器と、複数の空間的に分散配置された検知コイルと、磁気テスト信号によって複数の空間的に分散配置された検知コイルに誘起された信号を反映する測定値の組を生成するための測定ユニットと、測定値の測定空間分布を求めるためのプロセッサであって、測定空間分布は複数の空間的に分散配置された検知コイルの位置を反映している、プロセッサと、基準空間分布に対する測定空間分布の比較に応じて異物の存在を検知するように構成された異物検知器であって、異物検知器は、比較の前に、測定空間分布及び基準空間分布のうちの少なくとも一方の幾何学的変換を行うことによって測定空間分布と基準空間分布とを幾何学的に位置合わせするように構成される、異物検知器とを備える、無線電力伝送システムが提供される。
【0058】
本発明の任意選択的な特徴によると、電力受信デバイスは、基準空間分布を電力送信機に送信するように構成され、電力送信機は、基準空間分布を電力受信デバイスから受信するように構成される。
【0059】
本発明の一態様によると、電力送信機と無線誘導電力伝送信号を介して電力送信機からの電力伝送を受信するための電力受信デバイスとを備える無線電力伝送システムのための動作の方法であって、電力送信機は、無線誘導電力伝送信号を生成するための送信電力コイルを備える電力出力回路と、磁気テスト信号を生成するためのテスト信号コイルと、複数の空間的に分散配置された検知コイルとを備え、方法は、電力送信機が、テスト信号をテスト信号コイルに供給して磁気テスト信号の生成をもたらすステップと、複数の空間的に分散配置された検知コイルに磁界信号によって誘起された信号を反映する測定値の組を生成するステップと、測定値の測定空間分布を求めるステップであって、測定空間分布は複数の空間的に分散配置された検知コイルの位置を反映している、ステップと、基準空間分布に対する測定空間分布の比較に応じて異物の存在を検知するステップであって、比較の前に、測定空間分布及び基準空間分布のうちの少なくとも一方の幾何学的変換を行うことによって、測定空間分布と基準空間分布とを幾何学的に位置合わせすることを有するステップとを行う方法が提供される。
【0060】
本発明の任意選択的な特徴によると、方法は、電力受信デバイスが、基準空間分布を電力送信機に送信するステップと、電力送信機が、基準空間分布を電力受信デバイスから受信するステップとを更に有する。
【0061】
本発明の一態様によると、無線電力伝送システムの電力送信機のための動作の方法であって、無線電力伝送システムは無線誘導電力伝送信号を介して電力送信機からの電力伝送を受信するための電力受信デバイスも備える、方法において、電力送信機は、無線誘導電力伝送信号を生成するための送信電力コイルを備える電力出力回路と、磁気テスト信号を生成するためのテスト信号コイルと、テスト信号コイルに結合され、テスト信号をテスト信号コイルに供給して磁気テスト信号の生成をもたらすように構成されたテスト信号生成器と、複数の空間的に分散配置された検知コイルと、磁気テスト信号によって複数の空間的に分散配置された検知コイルに誘起された信号を反映する測定値の組を生成するための測定ユニットと、測定値の測定空間分布を求めるためのプロセッサであって、測定空間分布は検知コイルの位置を反映している、プロセッサと、基準空間分布に対する測定空間分布の比較に応じて異物の存在を検知するように構成された異物検知器とを備え、比較の前に、測定空間分布及び基準空間分布のうちの少なくとも一方の幾何学的変換を行うことによって測定空間分布と基準空間分布とを幾何学的に位置合わせするステップを有する、方法が提供される。
【0062】
本発明のこれらの及び他の態様、特徴及び利点は、以下に説明される実施形態から明らかであり、これらを参照して解明されるであろう。
【0063】
図面を参照して、本発明の実施形態が、単なる例示として説明される。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【
図1】本発明のいくつかの実施形態による電力伝送システムの要素の例を示す図である。
【
図2】本発明のいくつかの実施形態による電力伝送システムの要素の例を示す図である。
【
図3】本発明のいくつかの実施形態による電力送信機におけるコイルの構成の例を示す図である。
【
図4】本発明のいくつかの実施形態による電力送信機のコイル構成の断面の例を示す図である。
【
図5】2つの金属製物体が存在する状態における
図2の電力伝送システムの磁界の例を示す図である。
【
図6】本発明のいくつかの実施形態による電力伝送システムの要素の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0065】
以下の説明は、Qi仕様から知られるものなどの電力伝送手法を利用した無線電力伝送システムに適用可能な本発明の実施形態に焦点を当てている。しかしながら、本発明はこの適用例に限定されるものではなく、多くの他の無線電力伝送システムに適用されることは理解されよう。
【0066】
図1は、本発明のいくつかの実施形態による電力伝送システムの例を示す。電力伝送システムは、送信機コイル/インダクタ103を含む(又はそれに結合された)電力送信機101を備える。システムは、受信機コイル/インダクタ107を含む(又はそれに結合された)電力受信デバイス105を更に備える。
【0067】
システムは、電力送信機101から電力受信デバイス105への無線誘導電力伝送を提供する。具体的には、電力送信機101は、無線誘導電力伝送信号(電力伝送信号又は誘導電力伝送信号とも称される)を生成し、これは、送信機コイル又はインダクタ103によって磁束として伝播される。電力伝送信号は、典型的には、およそ20kHzからおよそ500kHzの間の周波数を有し、及び、しばしば、Qi仕様適合システムについては、典型的には、95kHzから205kHzの範囲の周波数を有する(又は、例えば、高パワーキッチン適用例では、周波数は、例えば、典型的には、20kHzから80kHzの範囲にある)。送信機コイル103及び電力受信コイル107は疎結合され、従って、電力受信コイル107は、電力送信機101からの電力伝送信号(の少なくとも一部)をピックアップする。従って、電力送信機101から電力受信デバイス105へと、送信機コイル103から電力受信コイル107への無線誘導結合を介して、電力が伝送される。電力伝送信号という用語は、送信機コイル103と電力受信コイル107との間の誘導信号/磁界(磁束信号)を指すために主に使用されるが、同義的に、送信機コイル103に提供、又は電力受信コイル107によってピックアップされる電気信号を指すものとしても考えられ、使用されることは理解されよう。
【0068】
本例においては、電力受信デバイス105は、具体的には、受信コイル107を介して電力を受信する電力受信機である。しかしながら、他の実施形態において、電力受信デバイス105は、金属製加熱要素などの金属製要素を備え、このような事例では、電力伝送信号は、要素の直接的な加熱をもたらす渦電流を誘起する。
【0069】
システムは、相当な電力レベルを伝送するように構成され、具体的には、多くの実施形態において、電力送信機は、500mW、1W、5W、又は50Wを超える電力レベルをサポートする。例えば、Qi対応の適用例では、電力伝送は、典型的には、低電力適用例では1~5Wの電力範囲にあり、例えばキッチンでの適用例などの高電力適用例では、100Wを超え、最大1000W超にまで至る。
【0070】
以下において、電力送信機101及び電力受信デバイス105の動作が、Qi仕様による(本明細書において説明される(又は結果的な)修正及び拡張を除く)実施形態、又は、Wireless Power Consortiumによって策定されたより高電力のキッチン仕様に適した実施形態を具体的に参照して説明される。特には、電力送信機101及び電力受信デバイス105は、実質的にQi仕様バージョン1.0、1.1、又は1.2に適合する(本明細書において説明される(又は結果的な)修正及び拡張を除く)。
【0071】
無線電力伝送システムにおいて、異物(典型的には、電力伝送信号から電力を抽出するが、電力受信デバイス105の一部ではない導電性要素、すなわち、意図されない、不所望の、及び/又は電力伝送の障害となる要素)の存在は、電力伝送中に著しく不都合である。このような不所望の物体は、当分野においては、異物として知られる。
【0072】
異物は、動作に電力損失を加えることによって効率性を減少させるだけでなく、電力伝送動作自体を劣化もさせる(例えば、電力伝送効率を損なうこと、又は例えば電力伝送ループによって直接的に制御されない電力を抽出することによる)。加えて、異物における電流の誘起(具体的には、異物の金属部分における渦電流)が、しばしば非常に不所望な異物の加熱をもたらす。
【0073】
このようなシナリオに対処するために、Qiなどの無線電力伝送システムは、異物検知のための機能を有する。具体的には、電力送信機は、異物が存在するかを検知しようとする機能を有する。もしも異物が存在するならば、電力送信機は、例えば電力伝送を終了し、又は伝送され得る最大電力量を減少させる。
【0074】
Qi仕様によって提案される現在の手法は、(送信電力と報告された受信電力とを比較することによる)電力損失の検知、又は出力共振回路の品質Qにおける劣化の検知に基づいている。しかしながら、これらの手法は、多くのシナリオにおいて、次善の性能を提供するものであることが分かっており、具体的には、それらは不正確な検知につながり、未検知、及び/又は異物が、そのような物体が存在しないにもかかわらず、検知される誤った肯定的な検知をもたらす。
【0075】
図1のシステムは、異物検知に対して異なる手法を使用する。この手法は、複数の空間的に分散配置された検知コイルを使用し、テスト信号コイルに供給されるテスト信号によって生成された磁気テスト信号によってこれらの検知コイルに誘起された信号の測定の値の空間分布を生成することに基づく。この空間分布は、多くの実施形態において、磁気的画像として認識され、テスト信号コイルによって生成される磁界に影響を与える近隣の物体を反映している。
【0076】
例として、この手法は、磁気テスト信号、従ってテスト磁界を生成するために個別のテスト信号コイルを使用し、小さな検知コイルのアレイによって、テスト信号コイルによって生成された磁界における金属物体の影響を測定することに基づいて異物検知を行う。検知コイルは、典型的には、マトリックス配置に配置される。測定は、具体的には、検知コイルの各々に対する、適切な時間に実施される信号レベル測定である。このような測定の空間分布は、画像のピクセルを表す各検知コイルの磁気的画像に対応すると考えられ得る。従って、空間分布は、測定値の二次元的配置であり、具体的には、異なる検知コイルからの測定値の二次元的アレイ又はマトリックスである。具体的には、測定値の空間分布は、検知コイルの位置を反映している。このように、空間分布は、個々の測定の値が生成された位置を反映し、従ってテスト磁界の空間分布又はばらつき(具体的には、テスト信号コイルに供給されるテスト信号から(直接的又は間接的に)もたらされる磁界の強さなど)を表す。
【0077】
従って、例示的な手法は、ピクセルに相当する各検知コイルによって磁気的画像を生成する磁気的カメラを実現するコイルを含む電力送信機とみなされ得る。
【0078】
本例においては、テスト信号コイル209及び送信機電力コイル103は、個別の独立したコイルとして示され、説明されている。これは、特定の目的のために、個々のコイルの個々の最適化を可能にする。しかしながら、他の実施形態において、テスト信号コイル209及び送信機電力コイル103は同一のコイルであり、すなわち、同一のコイルが、電力伝送信号を生成するため、及び磁気テスト信号を生成するために使用される。例えば、2つの信号が、時分割手法を使用して時間領域において分離され、又は、代替的に、例えば、異なる周波数を有する信号によって周波数領域において分離される。これは、いくつかのシナリオにおいて、より少ないコストでの実現を可能にする。
【0079】
空間分布は、異物が存在しないが、電力受信デバイス105が存在している可能性があるシナリオを反映する基準空間分布と比較され、すなわち、空間分布は、異物が存在しない状況に対応する基準磁気的画像と比較される。もしも生成された磁気的画像が、基準磁気的画像に十分に類似しているならば、異物検知器は、異物が存在しないと判断し、十分に類似していないならば、その相違は潜在的に存在する異物に起因すると判断する。
【0080】
例えば、電力送信機は、磁気的ピクチャを撮影し、それを物体が存在しない状況と比較することによって、その表面上の金属物体の存在を検知できる。もしも少なくとも1つのピクセルが十分に大きな相違を示すならば、金属物体が検知されたと判定される。
【0081】
図2は、
図1のシステムの要素の例をより詳細に示す。
【0082】
電力送信機101は、ドライバ201と送信機コイル103とを含む電力出力回路を備える。ドライバ201は電力駆動信号を生成し、これは送信機コイル103に供給されて、送信機コイル103による磁気的/誘導電力伝送信号の生成をもたらす。ドライバ201は、特定の電力伝送動作に十分な電力の駆動信号を生成するように構成される。いくつかの実施形態において、電力範囲は、ほぼ数10ワット程度になるが、他の実施形態においては、これより大幅に大きくなり、実際には1kWよりも大きくなり得る。
【0083】
ドライバ201は、例えば、当業者に知られているように、フル又はハーフブリッジスイッチ構成の形態の出力ステージを備える。
図2では、ドライバ201が送信機コイル103を直接的に駆動するものとして示されているが、送信機コイル103は、典型的には、送信機コイル103に対して直列又は並列の共振キャパシタを更に備える共振回路の一部であることも理解されよう。
【0084】
ドライバ201は、電力送信機101の動作を制御するように、具体的には、適当な(例えば、所望の電力レベルを有した)駆動信号を提供するようにドライバ201を制御するように構成された電力送信機コントローラ203に結合される。加えて、電力送信機コントローラ203は、電力送信機101が適切な仕様又は規格に従って動作するために必要とされる所望の機能を行うように電力送信機101を制御するように構成される。具体的な例において、電力送信機コントローラ203は、Qi仕様に従って動作するように電力送信機101を制御する(本明細書において説明される変更を除く)。
【0085】
従って、電力送信機101は、そこから電力受信デバイスが電力を抽出し得る電力伝送信号を生成することによって無線電力伝送をサポートし得る。
図2の例において、電力受信デバイス105は、電力受信機回路205に結合された電力受信コイル107を備えるものとして示されている。電力受信回路205は、誘起された信号を電力受信コイル107から受信し、外部又は内部の負荷に供給可能な電力を抽出するように構成される。電力受信回路205は、例えば、当技術分野において知られているように、整流回路、電圧安定回路などを含む。
【0086】
電力受信回路205は更に、電力受信機105が適切な仕様又は規格に従って動作するために必要とされる所望の機能を行うように電力受信機105の動作を制御するように構成された電力受信機コントローラ207に結合される。具体的な例において、電力受信機コントローラ207は、Qi仕様に従って動作するように電力受信機105を制御する(本明細書において説明される変更を除く)。このような動作は、電力送信機101との適当な通信を確立及び維持すること、例えば、電力制御ループなどの確立をサポートすることを含む。
【0087】
図1及び
図2では、電力受信回路205に結合された電力受信コイル107による電力の抽出が示されているが、他の実施形態において、電力は他の手段によって抽出されることは理解されよう。例えば、いくつかの実施形態において、電力受信デバイス105は、渦電流の誘起によって電力が直接的に結合される金属製加熱要素を備える。このような例において、電力受信機コントローラ207は、例えば、送信される電力レベルを制御して所望の温度をもたらすために電力制御ループを使用する。
【0088】
電力送信機101は、異物検知のための機能を更に有する。従って、電力送信機101は、電力受信デバイス105以外の物体が電力伝送ゾーンに存在するかを検知するための機能を有する。従って、異物検知は、電力伝送信号から電力を抽出する電力受信デバイス105以外の物体である異物を検知しようとするものである。
【0089】
異物検知は、磁気テスト信号の生成に基づき、故に、電力送信機101は、テスト信号生成器211に結合されたテスト信号コイル209を備える。テスト信号生成器211は、テスト信号コイル209に供給されて磁気テスト信号の生成をもたらす電気テスト信号を生成する。すなわち、テスト信号生成器211はテスト磁界を生成する。異なる実施形態において、テスト信号生成器211からのテスト信号は、例えば、短い時間間隔の周期的信号(例えば、サイン波、矩形波、三角波信号など)、連続的な周期信号であり、又は、例えば、短いパルスである。かくして、対応する時間変化磁気テスト信号が生成される。
【0090】
電力送信機101は、複数の検知コイル213を更に含み、これは、磁気テスト信号によって検知コイル213に電圧が誘起されることによって磁気テスト信号を検知するように構成される。検知コイルは、空間的に分散配置され、具体的には、平面的エリアに空間的に分散配置される。従って、検知コイル213は、具体的には、電力受信デバイス105を受け止めるための電力送信機101の電力伝送エリアであるエリア全体、又は電力伝送エリアを含むエリア全体に分散配置される。
【0091】
検知コイル213は、生成された磁気テスト信号が、少なくとも異物が存在しない場合に、検知コイル213に電圧を(及びその結果として電流を)誘起するように、テスト信号コイル209に対して位置決めされる。
【0092】
検知コイル213は、磁気テスト信号によって空間的に分散配置された検知コイルに誘起された信号を反映する測定値の組を生成するための測定を行うように構成された測定ユニット215に結合される。測定ユニット215は、具体的には、検知コイル213の各々の電流又は電圧を測定し、対応する検知コイル213の位置における磁気テスト信号のレベルを反映する測定の値を生成する。
【0093】
具体的な例として、検知コイル213の各々は、測定ユニット215において高オーム抵抗器によって終端処理され、測定ユニット215は、抵抗器の両端の電圧をサンプリングするA/D変換器を含む。サンプルは、例えば磁気テスト信号の信号強度を反映する測定の値を生成するために使用される。いくつかの実施形態において、測定の値は、例えば、磁気テスト信号の例えば少なくとも1つの時間周期にわたる平均化を含む。他の実施形態において、測定の値は、例えば、適切な時間に行われたサンプルである。例えば、検知コイル213の信号のサンプリングは、テスト信号コイル209に供給されるテスト信号に対して適当な位相オフセットを有する。
【0094】
従って、測定ユニット215は、個々の検知コイル213によって表される異なる位置における磁気テスト信号の磁束密度を反映する測定値の組を生成する。検知コイル213は、具体的には、平面的アレイ配置(又は、具体的にはマトリックス配置)に配置され、故に、測定値の組は、各ピクセルが検知コイル213のうちの1つに対応する磁気的画像として効果的に見なされる。
【0095】
測定ユニット215はプロセッサに結合され、このプロセッサは、これ以降、空間的プロセッサ217と称される。空間的プロセッサ217には、測定の値の組が供給されるとともに、空間的プロセッサ217は、空間分布が検知コイル213の位置を反映する測定値の測定空間分布を求めるように構成される。
【0096】
空間分布は、例えば、検知コイル213の物理的な空間的配置に従って、データ構造に測定の値を配置することによって生成される。例えば、隣り合う検知コイル213からの測定の値が互いに隣接するように配置されたデータ構造が使用される。具体的には、測定ユニット215は、生成された測定値のマトリックスとして空間分布を生成し、生成された測定値は検知コイル213のマトリックス配置に一致するように配置されている。従って、具体的には、空間的プロセッサ217は、例えば測定された順番で測定ユニット215から測定値を受信し、これに応じて、測定結果と測定の値に対応する位置との両者を反映する空間分布を生成する。
【0097】
従って、測定値の組は、測定値のみを有し、空間的な情報を有さないが、測定値の空間分布は、測定値及び検知コイル213の位置の両者を反映する。従って、空間分布は、測定の値及びそれらが測定された場所の両者を反映する。
【0098】
空間分布が測定値及びこれらの間の空間的関係性の両者を反映するようにするために使用される具体的な手法は、個々の実施形態の個々の選好及び要件に依存する。例えば、いくつかの実施形態において、空間分布は、測定値及び空間的配置を反映する構造におけるこれらの配置に対応する値を含むデータ構造によって表される。具体的には、測定値は、検知コイル213のマトリックスの位置付けに対応するマトリックス構造に記憶される。他の実施形態において、空間分布は、例えば、順序不同に2つの成分値によって表され、第1の成分は測定値を反映し、第2の成分は対応する検知コイル213の位置を反映する。
【0099】
図2は、測定を行い、空間分布を生成する異なる実体を示しているが、いくつかの実施形態において、これらは一体となった動作として行われることは理解されよう。例えば、測定値は、マトリックスデータ構造に直接的に記憶されるなど、適当なデータ構造の適切な位置に直接的に記憶される。
【0100】
空間的プロセッサ217は、空間的プロセッサ217によって生成された測定空間分布に応じて異物の存在を検知するように構成された異物検知器219に結合される。具体的には、異物検知器219は、測定空間分布を基準空間分布と比較し、この比較に応じて検知を行うように構成される。
【0101】
例えば、もしも比較の結果、類似度基準が満たされたならば、異物検知器219は異物が検知されなかったという指標を生成する。しかしながら、もしも類似度基準が満たされず、従って、現在の磁気的画像が基準磁気的画像から十分に異なっているならば、異物検知器219は異物が実際に検知されたという指標を生成する。
【0102】
異物検知結果は、検知結果に従って電力送信機101の動作を制御する電力送信機コントローラ203に供給される。例えば、検知は、電力伝送動作の初期化の一部として行われ、もしも検知が異物が存在しないことを示したならば、システムは次に電力伝送を初期化する。しかしながら、もしも異物が検知されたならば、電力送信機コントローラ203は次に、電力伝送が開始されないように、即座に初期化を終了する。
【0103】
従って、この手法は、例えば、異物が存在するシナリオにおける電力伝送の初期化を防止する。これは、例えば、安全への事前対策を増し、例えば、電力伝送エリアに放置された例えばコイン又は1組の鍵などの不所望の加熱をもたらす恐れのある電力伝送が開始されないことを確実にする。
【0104】
個々の検知コイル213の正確な物理的配置、並びにテスト信号コイル209及び送信機コイル103の正確な物理的配置は、個々の実施形態の選好及び要件に依存する。同様に、個々のコイルの物理的寸法及び性質も、個々の実施形態の選好及び要件に依存する。
【0105】
しかしながら、多くの実施形態において、検知コイル213は、平面的アレイ配置(又はマトリックス配置)に配置される。具体的には、検知コイル213は等距離グリッド状に配置され、検知コイル213は、所与の検知エリア内のグリッドのノードに位置付けられる(いくつかの実施形態において、ノードのサブセットのみが検知コイル213の位置に対応する)。このような配置の例が、
図3に示される。図から分かるように、検知コイル213は、検知コイル213によってカバーされたエリアを形成する。検知コイル213は、グリッド又はマトリックスを形成し、従って、対応する測定の値は、磁気テスト信号に対応する磁界の空間的なばらつきを反映する磁気的画像を生成すると考えられ得る。
【0106】
本例において、送信機電力コイル103は、比較的大型であり、比較的大きな電力伝送エリアを定める。従って、この比較的大きな電力伝送エリアに位置付けられた電力受信デバイス105は、電力受信デバイス105が相当な電力を抽出することを可能にする潜在的に強力な電力伝送磁界に晒される。
【0107】
検知コイル213は電力伝送エリアをカバーし、従って、電力伝送エリアの効果的な磁気的画像を生成し、それによって電力伝送エリアに存在する任意の物体を反映した磁気的画像を生成するために使用され得る。
【0108】
効率的な異物検知を可能にする妥当な空間的解像度を得るために、比較的多くの数の検知コイル213を有することがしばしば有利である。これを達成するために、検知コイル213は、しばしば、比較的小さいこと、特には、送信機電力コイル203と比較して小さいことが選択される。これは、より高い空間的解像度を提供するので、より小さな物体の検知も可能にする。
【0109】
多くの実施形態において、検知コイル213の数は、典型的には、20個以上である。これは、多くの実施形態において、十分に小さい物体の信頼性の高い物体検知に適した解像度を提供する。多くの実際的実施態様では、検知コイル213は、20mmを超えない(及び、しばしば、10~15mmの範囲の)最大寸法(典型的には、円形状のコイルの直径、又は矩形状のコイルの対角線の長さ)を有する。このような手法は、例えばQi仕様に適合するシステムなど多くの実際的実施態様において、特に効率的な異物検知を提供することが分かっている。更に、検知コイル213の寸法を十分に小さく保つことは、例えばコインなどの比較的小さな異物の検知を可能にする。
【0110】
しかしながら、多くの実施形態において、検知コイル213の個数は、500個、200個、又は100個のコイルを超えることはない。従って、多くの実施形態において、測定の値の数(従って、磁気的画像におけるピクセルの数)は比較的少ないままである。これは、コスト及び複雑さを低減し、且つ異物検知の処理を容易にする。しかしながら、多くの実施形態において、これは非常に信頼性の高い異物検知をなおも可能にすることが分かっている。
【0111】
図3の具体的な例においては、総計52個の検知コイルが使用されている。
図3は、電力送信機の電力伝送エリアの上面図を表す。52個の検知コイル213のアレイが電力伝送エリアをカバーし、そこでは送信機コイル103が高い磁界強度を提供し得る。
【0112】
図3は、テスト信号コイル209も示す。具体的な例において、テスト信号コイル209は、検知コイル213のアレイの周りに位置付けられ、すなわち、検知コイル213を取り囲んでいる。従って、この例において、テスト信号コイル209の大きさは、検知コイル213を組み合わせた大きさよりも大きく、更には、テスト信号コイル209が検知コイル213を包囲するように位置付けられている。これは、多くの実施形態において、効率的な磁気テスト信号を提供する。
【0113】
図4は、電力送信機の断面、具体的には、検知コイル213、テスト信号コイル209、及び送信機コイル103のそれぞれの配置の断面を示す。ここでもやはり具体的な配置は実施形態によって異なるが、多くのシナリオにおいて、検知コイル213は、電力受信デバイス105を受け止めるための表面401の比較的近くに位置付けられる。これは、多くの実施形態において、向上した磁気的画像が生成されることをもたらす。
【0114】
測定値の組を生成するために測定が行われているとき、テスト信号生成器211は先ずテスト信号を生成し、これを送信機コイル103に供給する。テスト信号の正確な特性、従ってその結果としての磁気テスト信号の正確な特性は、個々の実施形態の特性に依存する。しかしながら、テスト信号生成器211は、時間変化する信号としてテスト信号を生成し、その結果、時間変化する磁気テスト信号をもたらし、故にこれは検知コイル213に電圧を(直接的又は間接的に)誘起する。
【0115】
いくつかの実施形態において、テスト信号は、単純にサイン波信号又は矩形波信号(例えば、特定のテスト期間の間)として生成され、これは対応して変化する磁界(及び、具体的には、変化する束密度B)をもたらす。もしも磁気的又は導電性の要素が存在しないならば、この変化する磁界は対応する電圧を検知コイル213に誘起する。
【0116】
測定ユニット215は、結果的な誘起信号レベルを、例えば電流を整流し、結果的な平均値を測定することによって測定する。これは、かなり平滑で均一な空間分布を典型的には反映する測定値の組をもたらす。換言すれば、均一な磁気的画像がもたらされる。
【0117】
しかしながら、もしも電磁的要素が存在するならば、これは、結果的な磁界に影響を与え、磁界におけるばらつきにつながる。変化は空間的なばらつきを有し、電磁的要素の存在は、効果的に、異なる検知コイル213の測定値における変化をもたらす。電磁的要素は、もはや均一に変化することなく、むしろ、電磁的要素の存在を反映する空間的なばらつきを呈する電磁的画像を効果的にもたらす。実際には、多くの実施形態において、電磁的要素は磁気的画像に効果的に痕跡(imprint)を残す。
【0118】
例えば、もしも強磁性又はフェリ磁性の要素が電力伝送面上に、従って、1つ又は複数の検知コイル213を横断するように位置付けられたならば、磁気テスト信号は、元の磁界と位置の合った、磁気的要素の磁気的領域をもたらす磁界に対応し、要素の磁化を生じさせ、磁気的な要素がそこに存在しないときと比較して増加した磁束密度をもたらす。従って、検知コイル213を通る磁束密度は、要素が存在しないときとは異なり、具体的には、より高い電圧(又はemf)が要素の近位にある検知コイル213に誘起される。
【0119】
導電性物体、具体的には金属製物体が電力伝送面上に位置付けられたときも同様の結果が生じるが、この効果はわずかに異なる仕組みによって起こされる。具体的には、磁気テスト信号における変化は、変化する磁束密度をもたらし、金属製物体に渦電流を誘起させる。しかしながら、次いで、これらの渦電流は、磁界をもたらし(すなわち、それらは、磁気テスト信号からもたらされるものと結合する磁束密度をもたらす)、物体の周りの磁界/磁束密度を典型的には変化させる。これは、近位の検知コイル213の測定の値によって反映される異なるレベルの誘起電圧ももたらす傾向がある。具体的には、このシナリオにおいて、金属製物体に誘起された(渦)電流は、反転した磁界を生じさせ得、物体の近くの磁界を弱める。次いで、磁界の強さが低下したこのようなエリアが検知され得る。
【0120】
2つの金属製物体が存在する磁界の例が、
図5に示される。
【0121】
多くの実施形態において、測定値は、磁気テスト信号によって、対応する検知コイル213に誘起(直接的又は間接的に、すなわち、磁気テスト信号によって誘起された渦電流によって生じた磁束密度のばらつきに起因する誘起を含む)される電圧のレベルを示すように生成される。いくつかの実施形態において、測定値は、例えば、ローパスフィルタリングされた(平均化された)レベル値として生成される。例えば、検知コイル213の各々は、整流回路に接続され、ローパスフィルタがそれに続き、ローパスフィルタの出力が、例えばテスト信号の生成開始に続く適切な遅延の後に、測定される。別の例として、いくつかの実施形態において、測定はピーク検知器を含み、測定値は、磁気テスト信号が生成された期間中の誘起された電圧のピーク値である。
【0122】
なおも別の例として、測定値は、特定の時点において誘起された電圧の値を測定することによって生成され、具体的には、検知コイル213の電圧のサンプリングが使用される。このような例において、測定/サンプリングのタイミングは、例えばテスト信号とサンプリング時間制御信号との間に位相オフセット又は時間オフセットを設定することによって、慎重に制御される。このような手法は、ふるまいの変化をもたらす磁気的機構が元の信号からの位相変化をもたらすこと(例えば、電圧の誘起は磁束密度の導関数に依存しており、従ってサイン波信号成分の位相シフトを生ぜしめる)を反映している。実際には、いくつかの実施形態において、測定値は、テスト信号/磁気テスト信号と誘起された信号との間の位相差を反映する。上述の仕組みによって、この位相は、異物が存在しない場合と、例えば金属製物体が存在する場合とで異なる(というのは、追加的な磁束の寄与をもたらす渦電流を誘起するプロセスは、追加的な位相シフトも生ぜしめるからである)。
【0123】
従って、測定値は、例えば1つの鍵又は1組の鍵などの導電性物体が存在するか否かに依存する傾向がある。更に、効果は局所的である傾向があるので、システムによる空間的評価は、異物検知において使用され得る追加的な情報を提供可能である。従って、単に潜在的な電力損失又は品質(Q)の低下の大きさを考慮するだけでなく、システムは、より一層正確な検知を可能にする空間的情報も考慮する。
【0124】
実際には、異物が存在すると考えられる否かを判定する比較は、測定値の空間分布を考慮することに基づき、すなわち、検知は、測定値だけでなく、これらの値の関連する位置も考慮する。
【0125】
異物は、測定空間分布と称される測定値の空間分布の基準空間分布に対する比較に基づいて判定される。従って、異物検知器219は、実際の測定結果を基準と比較し、例えば、これらが過度に異なるならば、すなわち、測定空間分布と基準空間分布とが所与の類似度基準を満たさなかったならば、異物の検知を生成する。
【0126】
異物検知は、具体的には、測定空間分布を、異物が存在しないシナリオを反映、実際上はいくつかの状況においては、電力受信デバイス105も存在しないシナリオを反映する基準空間分布と比較することに基づく。
【0127】
例えば、基準空間分布は、物体が存在しない状態で測定された値に対応する基準測定値から成るように生成される。これらの値は、生成されたテスト信号の具体的な特性、並びにテスト信号コイル209及び検知コイル213の、これらの間の幾何学的関係などの、特性に依存する。いくつかの実施形態において、このような基準空間分布、又は画像は、実際には、電力送信機101の物理的性質の分析評価によって生成され得る。
【0128】
このような事例においては、基準空間分布は、比較的平滑で小さなばらつきを有する傾向がある。実際には、多くの状況において、基準空間分布は、空間的に一定な分布にほぼ対応し、すなわち、測定値は、全ての検知コイル213で実質的に同一である。他の実施形態において、磁気テスト信号の磁束密度は、テスト信号コイル209及び検知コイル213の配置の特性に起因して、検知コイル213が広がるエリアにおいて若干異なる(例えば、
図3の例においては、テスト信号コイル209の中心にある検知コイル213では、テスト信号コイル209の周辺の方の検知コイル213よりもわずかに低い)。従って、このようなシナリオにおいては、基準空間分布は、例えば、テスト信号コイル209の中心ではわずかに低く、次いでテスト信号コイル209に向かって緩やかに減少する基準測定値を含む。
【0129】
このような事例では、異物検知器219は、例えば、各検知コイル213の実際の測定値と対応する基準測定値との間の差分を(例えば、分布における異なる平均値を補償するスケーリングの後に)求めることによって比較を行う。もしも異物が現在存在しないならば、差分の平滑な空間的ばらつきがもたらされるはずであり、この差分は、更には、小さいものであると見込まれ、理想的にはゼロである。しかしながら、測定値のサブセット、具体的には、測定値のうちの1つが大きな差分測定の値をもたらしたならば、これは異物が実際に存在することを示す。空間分布は、更に考慮される。例えば、差分値が求められ、差分が閾値を超えた全ての検知コイル213が特定される。次いで、これらが、(検知されていない)異物に対応する見込みがあるために十分な程度に小さい1つ又は複数のエリアの一部であるか否かが評価される。もしもそうであるならば、異物検知器219は、異物が存在すると判定し、異物が存在することを示す検知結果を生成する。
【0130】
いくつかの実施形態において、基準空間分布は、電力受信デバイス105が存在するシナリオを反映する。具体的には、基準空間分布は、電力受信デバイス105が電力伝送面上に存在する状況を反映する。基準空間分布は、例えば、電力受信デバイス105の磁気的形状又は痕跡を反映する測定の値のパターンを有する。
【0131】
例えば、電力受信デバイス105は、いくつかの金属製要素を備えるデバイスであり、故に、磁気テスト信号は、これらの金属製要素の近くの検知コイル213ではより高い測定値をもたらす。故に、電力受信デバイス105は、上記の平均値を有する測定値の特定のパターンをもたらす。いくつかの実施形態において、基準空間分布は、電力受信デバイス105の磁気的パターンを反映し、従って、測定空間分布を基準空間分布と比較するとき、この比較は、より高い値を有する測定の値のパターンが存在することの考慮又は予期を含む。
【0132】
具体的な例として、基準空間分布は、電力受信デバイス105が存在するときに検知コイル213によって測定される(測定されることを期待される)基準測定値を含む。もしもその後に電力受信デバイス105が実際に存在するときに測定空間分布が生成されるならば、基準空間分布との比較は、これを補償し、電力受信デバイス105の存在に起因する異物の誤検知は回避され得る。具体的には、差分値が生成されたならば、これらは、電力受信デバイス105の存在に起因してより大きな値が計測された検知コイル213についても低くなる。
【0133】
測定空間分布と基準空間分布との比較は、測定空間分布と基準空間分布との位置合わせを含み、すなわち、測定の値及び基準磁気的画像は、互いに対して比較される前に(又は比較の一部として)位置合わせされる。
【0134】
例えば、2つの空間分布は、差分値が生成される前に、互いに対してシフトされる。この手法は、異なる方向及び値に対してなど、いくつもの異なるオフセットに対して繰り返される。次いで、測定空間分布と基準空間分布との間の最も小さい全体的差分をもたらす位置合わせが選択され、異物検知は、この位置合わせに対する差分値に基づく。
【0135】
別の例として、2つの空間分布は、差分値が生成される前に、互いに対して回転される。この手法は、いくつもの異なる回転に対して繰り返され、次いで、測定空間分布と基準空間分布との間の最も小さい全体的差分をもたらす回転位置合わせが選択され、異物検知は、この位置合わせに対する差分値に基づく。
【0136】
多くの実施形態において、回転及びシフトの両者が考慮される。例えば、各オフセット又はシフトに対して、いくつもの差分値が、異なる回転に対して求められる。最も小さい差分値が特定され、そのオフセットのための差分値として使用される。これは、いくつもの異なるオフセットに対して繰り返され、その後、最も小さい差分値をもたらすオフセットが選択され、異物検知のために使用される。
【0137】
いくつかの実施形態において、追加的な又は代替的な幾何学的変換が考慮される。例えば、いくつかの実施形態において、空間分布のうちの1つのミラーリング(しばしば回転及び平行移動とともに)が適用される。これは、例えば、電力受信機が非対称的な形状を有し、例えば電力送信機上に逆さまにも位置付けられ得る実施形態において適切である。このような例において、電力受信機は、デバイスがどちらを上にして位置付けられたかに依存してミラー電磁的足跡(mirror electromagnetic footprints)を有する。
【0138】
多くの実施形態において、異物検知器219は、幾何学的変換を測定空間分布又は基準空間分布のどちらか(又はその両者)に、これらを互いに対して比較する前に(又は比較中に)、適用するように構成される。平易さ及び簡潔さのために、以下の例は、測定空間分布に適用される幾何学的変換に焦点を当てる。
【0139】
幾何学的変換は、測定空間分布の座標を新しい座標に変換する数学的関数として表され、比較はこの新しい座標に基づく。幾何学的変換は、いくつものパラメータに依存する。
【0140】
例えば、測定空間分布は、空間的に分散配置された検知コイルの測定の値を含み、各測定の値は2次元的座標に関連付けられる。同様に、基準空間分布の各値は2次元的座標に関連付けられる。比較は、測定空間分布及び基準空間分布の値をペアにして分け、各ペアについて値の間の差分を求めることを含む。次いで、検知は、これらの差分値に基づいて行われる。例えば、全体的な差分値は、例えば、ペアの差分値の合計又は平均として計算される。
【0141】
ペアリングは、しばしば、ペアにされた値の座標間の幾何学的距離が最小化されるという要件に基づく。しかしながら、元の測定空間分布及び基準空間分布の座標間の距離を求めるよりもむしろ、距離評価の前に(又はその一部として)、(例えば測定空間分布の)座標は、幾何学的に変換される。次いで、幾何学的変換が、全体的な差分値を最小化するために決定される。
【0142】
幾何学的変換は、例えば、値αだけシフトを行い、これに続いて所与の角度φだけ回転(例えばよく知られたサイン及びコサイン回転関数を使用する)を行う関数である。値α、φは、最小化された差分値をもたらすように決定され(例えば、α及びφによる変換によって変換されたパラメータに依存する値をペアにすることによって決定される)、これは、物体検知を行うために使用される。
【0143】
幾何学的変換のパラメータの決定は、例えば、差分値を最小化するために測定空間分布に適用される後処理として行われるが、多くの他の選択肢が可能であることは理解されよう。例えば、いくつかの実施形態において、例えば計算された差分値をエラー信号として使用して幾何学的変換パラメータの値を制御する制御ループが実現される。
【0144】
いくつかの実施形態において、基準空間分布は、検知コイル213によってカバーされたエリアのサブセットのみを反映する部分的な空間分布である。例えば、基準空間分布は、電力受信デバイス105に対応する表現のみを含み、従って、具体的には、電力受信デバイス105の磁気的パターンを反映する。異物検知器219は、パターンの相対位置を特定することによって、このパターンを測定空間分布と位置合わせし、パターンと測定空間分布との間で最良の合致をもたらす。次いで、電力受信デバイス105が存在していることの影響が補償された補償空間分布を生成するために、対応する測定値からこのパターンが減算される。次いで、結果的な補償空間分布は、異なる測定値のエリアが更に見つけられ得るかを検知するために評価される。代替的に、いくつかの実施形態において、異物検知器219は、(パターン合致によって示されるように)電力受信デバイス105によってカバーされたエリア内にあると考えられる測定値を単に無視する。
【0145】
説明された手法の特定の有利な側面は、異物検知が単に任意の物体が存在するか否かについての全体的な又は組み合わされた評価に基づくのではなく、むしろ、より洗練された手法の使用を可能にすることにあり、この洗練された手法は、具体的には、電力受信デバイス105の存在と(追加的な又はそれに代わる)異物の存在とを差別化することを可能にする。従って、この手法は、例えば電力受信デバイス105の金属と金属異物との間の差別化を可能にする。更には、この手法は、この差別化が高い信頼性を持ち、それにより信頼性の高い異物検知を提供することを可能にする。
【0146】
例えば、基準空間分布は、電力受信デバイス105が存在する状態での電力伝送面の磁気的画像を表すように生成される。故に、基準空間分布は、電力受信デバイス105の「輪郭(profile)」/「識別特性(signature)」/「明示的特徴(fingerprint)」を含む。故に、電力送信機101は、このシナリオを現在の状況と比較して、異物が存在するか否かを推定し得る。例えば、電力送信機101は、ピクセルのうちの少なくとも1つが十分に異なっているかを考慮し、金属異物が検知される。
【0147】
例として、器具の誘導無線電力供給に基づくコードレスキッチンシステムは、電力伝送のために生成された磁界に不注意で置かれた金属異物を意図せず加熱するリスクを犯している。それ故、システムがこのような物体の存在を検知し、それに応じて、例えば電力伝送を停止することが望ましい。問題なのは、電力を受信しようとする器具が、例えば加熱目的で器具内で意図的に使用される金属(「親和的金属」)を含む場合があることである。それ故、金属異物と親和的金属とを区別可能であることが望ましい。説明された手法は、異物検知器219が確実にこのような差別化を行うことを可能にする。
【0148】
異なる実施形態において、基準空間分布を生成するために異なる手法が使用されることは理解されよう。例えば、いくつかの実施形態において、異なる検知コイル213の測定値は、理論計算又はシミュレーションによって推定される。
【0149】
しかしながら、多くの実施形態において、異物検知器219は、測定空間分布の複製を記憶し、これを将来の比較のための基準空間分布として使用するように構成される。記憶される測定空間分布は、具体的には、異物が存在しないとき、具体的には、多くの実施形態において、異物が存在しないが電力受信デバイス105が存在するときに作成されたものである。
【0150】
例えば、ユーザは、電力受信デバイス105を電力伝送面に位置付け、異物が存在しないことを確認した後、電力送信機101に手動の入力を提供する。この起動動作に応じて、電力送信機101は次に、異物検知のためのものと同じ手法を使用して測定空間分布を生成する。従って、結果的な測定空間分布は、電力受信デバイス105のみが存在する状況を反映し、異物検知器219は次に、測定空間分布を基準空間分布として記憶する。この基準空間分布は、後に基準空間分布として使用される。
【0151】
電力送信機101は、いくつもの異なる電力受信デバイスを潜在的にサポートし、故に、複数の基準空間分布を記憶できることは理解されよう。例えば、上述の手動の手法がいくつもの異なる電力受信デバイスに対して行われ、結果として、複数の基準空間分布が記憶される。後に異物検知を行うとき、異物検知器219は、測定空間分布を全ての記憶された基準空間分布と比較して、近しい合致が見つかるかを検知する。
【0152】
いくつかの実施形態において、代替的に又は追加的に、異物検知器219は、電力受信デバイス105から受信したデータに応じて基準空間分布を求めるように構成される。
【0153】
大部分の無線電力伝送手法において、システムは、電力受信機と電力送信機との間でデータを通信(しばしば双方向通信)するための機能を有する。例えば、Qi仕様は、電力受信機が、電力伝送信号を負荷変調することによって電力送信機にデータを通信することを可能にする。代替的に又は追加的に、通信は、例えば個別の通信コイルを使用する専用の通信機能によってサポートされる。例えば、いくつかのシナリオにおいて、電力送信機及び電力受信機は、帯域外通信を使用して互いに通信し、具体的には専用の近距離通信手法を使用する。
【0154】
図6は、
図1のシステムを示すが、このような専用の通信機能を更に含んでいる。具体的には、電力送信機101は、専用の通信コイル601と通信ユニット603とを備える。同様に、電力受信デバイス105は、専用の通信コイル605と通信ユニット607とを備える。2つの通信ユニット603、607は、2つの通信コイル601、605を使用して交換される信号を介してデータを通信できる。具体的には、通信は、例えばBluetooth(登録商標)又はNear Field Communicationなどの標準的な近距離通信信号を使用して実現される。
【0155】
このような実施形態において、電力受信デバイス105は電力送信機101にデータを送信し、これは、電力送信機101がそれに応じて基準空間分布を生成することを可能にする。いくつかの実施形態において、電力受信デバイス105は、基準空間分布を完全に記述するデータを明示的に通信する。他の実施形態において、電力受信デバイス105は、例えば、電力送信機101が、例えば複数の所定の基準空間分布から基準空間分布を選択することを可能にする識別データを通信する。このような所定の基準分布は、例えばローカルに記憶され、又は例えば中央サーバに記憶される。
【0156】
例えば、新しいタイプの電力受信デバイスが開発されたときはいつでも、基準空間分布が決定され、製造者によって、例えばインターネットを介してアクセス可能な中央サーバに登録される。基準空間分布は、関連付けられたアイデンティティとともに記憶される。電力受信デバイス105が後に電力送信機101とともに使用されるとき、電力受信デバイス105はアイデンティティを電力送信機101に通信する。これに応じて、電力送信機101は、受信したアイデンティティを使用して中央サーバにアクセスし、こうして、異物検知のために使用する適切な基準空間分布を取り込む。
【0157】
別の例として、電力受信デバイス105は、電力送信機101の存在を検知したときにいつでも(又は、例えば、電力伝送動作の初期化の一部として)、ローカルに保存された基準空間分布を電力送信機に通信する。
【0158】
このような手法は、いくつかの実施形態において、より効率的である。具体的には、これは、電力送信機が考え得る全ての電力受信デバイスのために基準空間分布をローカルに記憶する必要を無くす。これは更に、開発及び市場導入された新しい電力受信デバイスのための異物検知を効果的にサポートする。
【0159】
従って、基準空間分布を記憶する物理的場所を実現するために様々な手法が使用され得ることは理解されよう。第1の選択肢は、これを電力送信機において記憶することである。第2の選択肢は、これを電力受信機において記憶することである。第3の選択肢は、これを電力伝送システムの外部の記憶サービス(例えば、インターネットを介して連絡可能なサーバ)において記憶することである。これらの選択肢は全て、基準空間分布がどこで生成されるか、すなわち、基準空間分布が、電力送信機によって生成されるか、電力受信デバイスの製造者によって生成されるかなどとは独立して使用され得ることも理解されよう。このような手法の組み合わせが使用され得る(例えば、中央サーバが大部分の基準空間分布を提供するが、中央サーバに提示されていない電力受信デバイスについては電力送信機がローカルで基準空間分布を生成し、記憶する)ことも理解されよう。
【0160】
前述のように、測定空間分布と基準空間分布との比較は、概して、測定空間分布と基準空間分布との幾何学的な位置合わせを含む。この位置合わせは、幾何学的変換を測定空間分布又は基準空間分布のどちらか(又はその両者)に適用することによって行われる。幾何学的変換は、平行移動及び/又は回転を含む。多くの実施形態において、幾何学的変換は、適切な最小化基準を使用して測定空間分布と基準空間分布との間の差分を最小化することによって決定される。例えば、最も小さい二乗差をもたらす変換が決定され、比較において適用される。
【0161】
いくつかの実施形態において、電力送信機101は、ユーザ出力ユニット、例えばディスプレイなどを更に備える。このような事例では、ユーザ出力は、幾何学的変換に基づいて生成される。
【0162】
例えば、基準空間分布が、電力受信デバイス105のための最適な電力伝送位置に対応するように生成される。比較の一部として、幾何学的変換が決定される。幾何学的変換は、具体的には、基準空間分布及び測定空間分布がそれらの間の差分を最小化するために互いに対してシフトされるべきベクトルを反映する(例えば、電力受信機の磁気的画像パターンは回転しても不変であると仮定する)。しかしながら、このような事例において、ベクトルは、電力受信デバイス105の現在位置と電力受信デバイス105の(電力伝送の観点から見た)最適な位置との間のオフセットの有効な指標も提供する。故に、異物検知器219は、最適な電力伝送を達成するために電力受信デバイス105がどのように移動されるべきかを示すベクトルを示すように出力表示を制御する。
【0163】
以前の例において、異物検知は、1つの測定空間分布(及び基準空間分布)のみに基づいていた。しかしながら、他の実施形態において、検知は複数組の測定の値に基づくことは理解されよう。
【0164】
具体的には、いくつかの実施形態において、電力送信機101は、複数の異なる周波数のテスト信号に対して説明された動作を行うように構成される。具体的には、テスト信号は、一定の持続時間の間アクティブである周期信号である。従って、この間隔の間、テスト信号は、所与の繰り返し周波数を有する。例えば、テスト時間間隔中に、サイン波又は矩形波信号が生成され、結果として検知コイル213に誘起される電圧が測定される。
【0165】
いくつかの実施形態において、この手法は、異なる周波数を有するテスト信号(従って、磁気テスト信号)に対して繰り返される。各周波数に対して、測定空間分布が生成され、基準空間分布と比較される。異物検知は、複数のこれらの比較に基づく。例えば、各周波数に対して、測定空間分布と基準空間分布との間の差分を示す差分測定の値が生成される。次いで、組み合わされた差分測定の値が、例えば個々の差分測定の値を平均化又は加算することによって、求められる。もしもこの組み合わされた差分測定の値が閾値を超えたならば、異物検知器219は、異物が検知されたことを示し、超えないならば、異物が検知されなかったことを示す。
【0166】
従って、いくつかの実施形態において、テスト信号生成器は、異なる周波数を有する複数のテスト信号を生成して異なる周波数を有する複数の磁気テスト信号をもたらすように構成される。これらのテスト信号の各々に対して、測定ユニットは、測定値の組を生成し、それによって複数組の測定値を生成する。その後、測定値の各組に対して、測定空間分布が生成される。
【0167】
次いで、異物検知器は、複数の比較に基づいて異物検知推定値を求める。各比較は、複数の測定空間分布のうちの1つの測定空間分布と基準空間分布との間のものである。多くの実施形態において、基準空間分布は、異なる周波数ごとに異なり、それによって、異なる周波数に起因する基準シナリオにおける相違を反映する。
【0168】
多くの実施形態及びシナリオにおいて、このような手法は向上した性能を提供する。特には、磁界上の金属物体の影響は、典型的には磁界の(従ってテスト信号の)周波数に依存する。故に、異なる周波数で追加的な測定を行うことは、検知性能を向上させる追加的な情報を提供する。
【0169】
いくつかの実施形態において、測定ユニット215は、全ての検知コイル213について同時に、誘起された電圧の測定を行うように構成される。従って、平行測定動作が行われる。
【0170】
しかしながら、この手法は、測定が必ず同時であることに依存せず、又はこのことを必要としない。むしろ、いくつかの実施形態において、測定ユニット215は、複数の空間的に分散配置された検知コイルの誘起された信号を順次に測定することによって測定値の組を生成する。順次に測定することは、複数の空間的に分散配置された検知コイルのサブセットを個別に測定することを有する。例えば、測定値の組は、同一の測定回路が順次に、1つずつ、個別に検知コイル213の電圧を測定することによって生成される。いくつかの実施形態において、複数の平行測定ユニットが使用され、従って、順次の測定は、各反復において例えば2つの検知コイル213を含む。
【0171】
これは、多くの実施形態において、電力送信機101の複雑さを減少し、それによりコストの減少をもたらすことを可能にする。特には、多くの実施形態において、これは必要とされる測定ハードウェアの量を減少させる。
【0172】
上記の説明は、明確さのために、種々の機能回路、ユニット及びプロセッサを参照して本発明の実施形態を説明したことは理解されよう。しかしながら、本発明を損ねることなく種々の機能回路、ユニット又はプロセッサの間での任意の適切な機能の分散が使用され得ることは明らかであろう。例えば、個別のプロセッサ又はコントローラによって行われると示された機能は、同一のプロセッサ又はコントローラによって行われ得る。従って、特定の機能ユニット又は回路への言及は、厳密な論理的又は物理的な構造又は組織を示すものではなく、説明された機能を提供するための適切な手段への単なる言及と見なされるべきである。
【0173】
本発明は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はこれらの任意の組み合わせを含む任意の適切な形態で実現され得る。本発明は、任意選択的に、少なくとも部分的に、1つ又は複数のデータプロセッサ及び/又はデジタル信号プロセッサ上で動作するコンピュータソフトウェアとして実現され得る。本発明の一実施形態の要素及びコンポーネントは、物理的、機能的、及び論理的に、任意の適切なやり方で実現され得る。実際には、機能は、単一のユニットにおいて、複数のユニットにおいて、又は他の機能ユニットの一部として実現され得る。このように、本発明は、単一のユニットにおいて実現され得、又は異なるユニット、回路及びプロセッサの間で物理的及び機能的に分散され得る。
【0174】
本発明は、いくつかの実施形態と関連して説明されたが、本明細書において記載された特定の形態に限定されることが意図されるものではない。むしろ、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。加えて、特定の実施形態に関連して特徴が説明されているように見えるが、当業者は、説明された実施形態の様々な特徴は、本発明に従って組み合わせられ得ることを認識されよう。特許請求の範囲において、「備える、含む、有する(comprising)」という用語は、他の要素又はステップの存在を排除しない。
【0175】
更には、個々に列挙されているが、複数の手段、要素、回路、又は方法のステップは、例えば単一の回路、ユニット、又はプロセッサによって実現され得る。加えて、個々の特徴が異なる請求項に含まれていることがあるが、これらは場合により有利に組み合わされ得、異なる請求項に含まれていることは、特徴の組み合わせが可能及び/又は有利でないことを意味するものではない。また、特許請求の範囲の1つのカテゴリに特徴が含まれていることは、このカテゴリへの限定を意味するものではなく、むしろ、その特徴は、必要に応じて、特許請求の範囲の他のカテゴリにも同様に適用可能であることを示す。更には、請求項における特徴の順序は、特徴が実施されるべき任意の特定の順序を意味するものではなく、特に、方法の請求項における個々のステップの順序は、これらのステップがこの順序で行われなければならないことを意味するものではない。むしろ、ステップは任意の適当な順序で行われ得る。加えて、単数での言及は複数性を排除しない。従って、「1つの(a)、(an)」、「第1の」、「第2の」などの言及は、複数性を除外しない。特許請求の範囲における参照符号は、単なる明瞭化のための例として提供されており、決して特許請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。