(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】HUD対応ウインドシールドを製造する方法及びウインドシールドのためのユニバーサル楔層
(51)【国際特許分類】
G02B 27/01 20060101AFI20220203BHJP
【FI】
G02B27/01
(21)【出願番号】P 2018563044
(86)(22)【出願日】2017-05-12
(86)【国際出願番号】 EP2017061450
(87)【国際公開番号】W WO2017207248
(87)【国際公開日】2017-12-07
【審査請求日】2020-04-22
(32)【優先日】2016-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】510191919
【氏名又は名称】エージーシー グラス ユーロップ
【氏名又は名称原語表記】AGC GLASS EUROPE
【住所又は居所原語表記】Avenue Jean Monnet 4, 1348 Louvain-la-Neuve, Belgique
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】アヨウブ, パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ヴィヴィエ, ジョナサン
【審査官】横井 亜矢子
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-536009(JP,A)
【文献】特表2011-505330(JP,A)
【文献】国際公開第2015/086234(WO,A1)
【文献】特開平07-195959(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0215610(US,A1)
【文献】特開2007-223883(JP,A)
【文献】特開平03-209210(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01
C03C 27/00-29/00
B32B 17/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
HUD視野(13)を含むHUD対応ウインドシールドを製造する方法であって、前記ウインドシールド(2)は、ユニバーサル楔層(14)から作られる楔層(15)を含み、前記ユニバーサル楔層(14)は、単調に変化する楔角度を有する厚さプロファイルを有する部分(12)を含み、前記プロファイルは、異なるウインドシールドモデルに適合される楔角度値を包含する楔角度の範囲を含み、前記ユニバーサル楔層(14)は、前記ウインドシールドの寸法と異なる寸法を有し、前記方法は、
- 前記ユニバーサル楔層(14)の前記寸法を適合させて前記楔層(15)をサイズ調整するステップであって、
前記ユニバーサル楔層は、ユニバーサルPVB楔層であり、前記ユニバーサルPVB楔層は、最初に前記ウインドシールド(2)よりも小さく、前記寸法の前記適合は、前記PVB楔層をサイズ調整するための前記ユニバーサルPVB楔層の領域の拡張を含み、前記適合は、前記楔層(15)が前記ウインドシールドの前記寸法を有し、及び前記HUD視野の中心(X1、X2)における前記楔角度(W1、W2)が、前記HUD視野(13)の前記中心(X1、X2)における前記ウインドシールド(2)の内面及び外面(8、9)において反射で発生する二重像を補償するために適切であるようなものである、ステップ
と、
- 透明層を張り合わせるステップであって、前記透明層は、前記楔層(15)を含む、ステップと、
- 前記PVB楔層及び前記他の透明層を張り合わせて前記ウインドシールドを形成する後続ステップ
を含むことを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、HUD(ヘッドアップディスプレイ)対応ウインドシールドを製造する方法に関する。
【0002】
本発明は、前記方法によって得られるウインドシールドにも関する。
【背景技術】
【0003】
HUDとしても知られているヘッドアップディスプレイは、ユーザの通常の視点から目をそらすことをユーザに要求することなくデータを示す任意の透明ディスプレイである。HUDは、最初に軍用航空のために開発されたが、現在、HUDは、民間航空機、自動車及び他の主に専門的な用途で使用されている。典型的なHUDは、3つの主な構成要素:投影機ユニット、コンバイナ及び映像生成コンピュータを含む。コンバイナは、一般的に、視認者の直接前に設置されたガラス、例えば車両のウインドシールドの傾斜平片であり、この傾斜平片は、視野及び投影像を同時に見るように投影機から投影像を向け直す。
【0004】
HUDを有する車両において、ウインドシールドの外面及び内面において反射で発生する二重像は、通常、これらの外面及び内面間に適切な楔角度を含むことによって補償される。このような楔角度のため、ウインドシールドの内面及び外面からの反射像は、視認者の眼で実質的に重なり合う。楔角度の適切な値は、ウインドシールドにおけるHUD視野の幾何学的特徴及び位置、投影機の位置、並びに運転者の視点に左右される。一般的に、異なる運転者の高さに対する最良の妥協点と考えられる一定の楔角度値が選択され、ウインドシールドに含められる。異なる運転者の高さにより良く適合するように可変の楔角度も場合により使用される。
【0005】
このような楔角度を有するウインドシールドは、通常、2つのガラスシート間に楔形PVB(ポリビニルブチラール)シートを挟むことによって作られる。このような工程は、例えば、文献米国特許第5013134号明細書に開示されている。このタイプの工程に関する問題は、楔形PVBシートが、ウインドシールドの製造コストに重大な影響を与える高価な製品であることである。更に、すべての自動車モデルは、異なるウインドシールドを潜在的に必要とし、HUD視野の位置及び必要とされる正確な楔角度は、各ウインドシールドに対して異なるため、ウインドシールド製造業者は、すべてのウインドシールドモデルの特定の特徴に対応する多様なPVBシートを注文することになる。必要とされるPVBシートの特徴のこのような多様性は、製造コストの上昇の更なる原因となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、より低いコストでの異なるウインドシールドモデルの大量生産に使用され得るHUD対応ウインドシールドを製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的のために、本願は、HUD視野を含むHUD対応ウインドシールドを製造する方法であって、前記ウインドシールドは、ユニバーサル楔層から作られる楔層を含み、前記ユニバーサル楔層は、単調に変化する楔角度を有する厚さプロファイルを有する部分を含み、前記プロファイルは、異なるウインドシールドモデルに適合される楔角度値を包含する楔角度の範囲を含み、前記ユニバーサル楔層は、前記ウインドシールドの寸法と異なる寸法を有し、前記方法は、
- ユニバーサル楔層の寸法を適合させて前記楔層をサイズ調整するステップであって、前記適合は、前記楔層が前記ウインドシールドの寸法を有し、及びHUD視野の中心における楔角度が、前記HUD視野の中心におけるウインドシールドの外面及び内面において反射で発生する二重像を補償するために適切であるようなものである、ステップ
を含む、方法を提供する。
【0008】
異なるウインドシールドモデルに適合されるとは、楔角度の値が、観察者の所与の位置又は高さに対して、前記HUD視野におけるウインドシールドの外面及び内面において反射で発生する二重像を補償するように適合されることを意味する。HUD視野は、HUDの投影機ユニットによって像が投影されるウインドシールドのゾーンである。HUD視野の位置及びサイズは、当然のことながら、車両により且つ従ってウインドシールドモデルにより変化する。
【0009】
本発明による方法を用いて、ウインドシールド製造業者は、実際に、同じユニバーサル楔層から開始して、多様なHUD対応ウインドシールドモデルを製造することができ、これは、異なるウインドシールドモデルの大量生産に関連するコストを削減する。
【0010】
有利な実装形態において、前記楔角度がウインドスクリーンの下部からウインドスクリーンの上部に進む方向に減少しているように、前記楔層が前記ウインドシールドに位置決めされる。このような実装形態において、楔層の厚さプロファイルは、実際に、様々な運転者の高さで発生する二重像を補償するために異なる運転者の高さにより良く適合するため、有利に位置決めされる。
【0011】
有利な実装形態において、本発明による方法は、透明層を張り合わせるステップを含み、前記透明層は、前記楔層を含む。
【0012】
有利な実装形態において、楔層は、PVB層である。その結果、張り合わせ工程中に2つのガラス層に典型的に挟まれたPVB層は、従って、ユニバーサルPVB楔層から作られる。一実装形態において、前記ユニバーサルPVB楔層は、最初に、製造されるウインドシールドよりも大きく、その結果、ウインドシールドを形成するためにガラス層に張り合わせられる楔層をサイズ調整するために切断される必要がある。別の実装形態において、前記ユニバーサルPVB楔層は、最初に、製造されるウインドシールドよりも小さく、その結果、張り合わせ工程が行われる前に拡張される必要がある。ユニバーサルPVB楔層の表面のこのような拡張は、例えば、超音波溶接又は熱風溶接を用いて、別の平面PVB層をユニバーサルPVB楔層に付けることによって行われ得る。
【0013】
別の有利な実装形態において、楔層は、ガラス層である。張り合わせ工程中にPVB中間層及び別のガラス層に典型的に重ね合わせられたこのようなガラス層は、従って、ユニバーサルガラス楔層から作られる。この実装形態において、ユニバーサルガラス楔層は、最初に、製造されるウインドシールドよりも大きい。一実装形態において、ユニバーサルガラス楔層は、ウインドシールドを形成する前に他の透明層に張り合わせられる楔層を形成するために、ガラスリボン上のフロートレベルでサイズ調整のために切断される。別の実装形態において、切断はまた、ウインドシールド形成ステップであって、ユニバーサルガラス楔層を含む合わせガラスが、ウインドシールドを形成する前にサイズ調整するために切断される、ウインドシールド形成ステップで行われ得る。
【0014】
本発明の別の目的は、上述の方法で使用されるユニバーサル楔層を提供することである。
【0015】
この目的のために、本願は、車両のための高さを有するウインドシールドのためのユニバーサル楔層であって、ある角度だけ傾斜して離間された2つの外面を有し、前記角度が変化するその高さにおいて層の少なくとも中間部分を有する、ユニバーサル楔層において、前記層の寸法及び前記層の前記部分の寸法は、前記部分のいずれかの箇所において、前記変化する角度の適切な値があり、それにより、楔層が切断され且つ任意の車両及び車両の任意の運転者に適合され得るように画定されることを特徴とする、ユニバーサル楔層を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本発明のこれらの態様及び更なる態様を、一例として添付図面を参照してより詳細に説明する。
【0017】
【
図1】楔形ウインドシールドを有する先行技術からの典型的なHUDを示す。
【
図2】本発明による方法を実施した場合の2つの異なるモデルのウインドシールドについて、単調に変化する楔角度プロファイル12を有するユニバーサル楔層部分の位置の変化を表す図を示す。
【
図3-4】本発明の方法による2つの異なるモデルのウインドシールドを製造するためのPVBユニバーサル楔層の寸法の適合を表す。
【0018】
図は、原寸に比例していない。一般的に、同じ構成要素は、図中の同じ参照符号によって示される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、楔角度1、即ちウインドシールドの厚さの非ゼロ導関数がウインドシールド2に含まれる車両におけるHUDの概略図を示す。このようなHUDにおいて、像源5における同じ開始点から発する光線3及び4は、ウインドシールド2の内面8及び外面9で反射される前に、平面鏡6及び非球面鏡7によって反射される。適切な楔角度がなければ、このような反射により、視認者の眼10で2つの別々の像が生成される。適切な楔角度1の存在により、
図1に表すHUDは、これらの2つの別々の像を重ね合わせて単一の虚像11を形成することを可能にする。
【0020】
図2は、本発明による方法を実施した場合の2つの異なるモデルのウインドシールドについて、単調に変化する楔角度プロファイル12を有するユニバーサル楔層部分の位置の変化を表す図である。グラフの横軸は、ウインドシールドの底縁からの距離を表す。X1及びX2は、2つの異なるモデルのウインドシールドに関するHUD視野の中心を表す。各モデルのウインドシールド及び特定のHUD配置の幾何学的特徴の結果、反射で発生する二重像を最適に補償するために、異なる楔角度W1及びW2がこれらのHUD視野の中心で必要となる。
図2の図は、第1のモデルのウインドシールドについて適切な楔角度値W1を正しい位置X1に配置することができる一方、第2のモデルのウインドシールドについて適切な楔角度値W2を正しい位置X2に配置することができることを示し、これは、単調に変化する楔角度を有する部分12を有する同じユニバーサル楔層から始まる。ユニバーサル楔層の寸法を適切に適合させることにより、所望の楔角度値と正しい位置との間の一致が得られる。この適合中、ユニバーサル楔層は、ウインドシールドの寸法を同時に取得し、且つウインドシールドの正しい位置で所望の楔角度値を有するようにサイズ調整される。
【0021】
図2から、前記楔角度がウインドスクリーンの下部からウインドスクリーンの上部に進む方向に減少しているように、前記楔層が前記ウインドシールドに位置決めされることも明らかである。このような実施形態において、楔層の厚さプロファイルは、実際に、様々な運転者の高さで発生する二重像を補償するために異なる運転者の高さにより良く適合するため、有利に位置決めされる。
【0022】
本発明の一実施形態によれば、楔角度は、単調に変化する楔角度ゾーンの前及び後において一定である。
【0023】
図3及び
図4は、本発明の方法による2つの異なるモデルのウインドシールドを製造するための、ここではPVBユニバーサル楔層14の寸法の適合を表す。PVBユニバーサル楔層14は、最初に、製造されるウインドシールドよりも大きく、その結果、前記ウインドシールドの寸法15を有するようにサイズ調整するために切断される必要がある。切断は、更に、HUD視野13の中心の位置X1、X2と、この位置における楔角度W1、W2の所望の値との間の適切な一致を得るように行われる。
【0024】
このような切断後、PVB楔層は、典型的には、3層ウインドシールドを得るために2つのガラスシート間に張り合わされる。従って、PVBは、ウインドシールドに対してその安全性及び防音機能を同時に有し、上述のようにHUDの実装形態にとって適切な楔角度を提供する。
【0025】
最初に、異なるモデルのウインドシールドよりも小さいPVBユニバーサル楔層から開始することにより、本発明による方法を実施することもできる。次に、例えば熱風溶接又は超音波溶接によって少なくとも1つの追加のPVBシートをPVB楔層に付けて、ウインドシールドに対する適切な寸法を得、且つ同時にHUD視野の中心に楔角度の適切な値を位置決めすることにより、PVB楔層が得られる。
【0026】
他の実装形態において、楔層は、ガラス層である。従って、張り合わせ工程中にPVB中間層及び別のガラス層に典型的に重ね合わせられたこのようなガラス層は、ユニバーサルガラス楔層から作られる。この実装形態において、ユニバーサルガラス楔層は、最初に、製造されるウインドシールドよりも大きい。一実装形態において、ユニバーサルガラス楔層は、ウインドシールドを形成する前に他の透明層に張り合わせられる楔層をサイズ調整するために、ガラスリボン上のフロートレベルでサイズ調整のために切断される。別の実装形態において、切断はまた、ウインドシールド形成ステップであって、ユニバーサルガラス楔層を含む合わせガラスが、ウインドシールドを形成する前にサイズ調整するために切断される、ウインドシールド形成ステップで行われ得る。