(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】塩化水素液体混合物から不純物を分離および処理するための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
C01B 7/07 20060101AFI20220119BHJP
C07C 261/02 20060101ALI20220119BHJP
C02F 1/66 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
C01B7/07 B
C07C261/02
C02F1/66 510L
C02F1/66 530B
(21)【出願番号】P 2018568226
(86)(22)【出願日】2017-06-30
(86)【国際出願番号】 EP2017066354
(87)【国際公開番号】W WO2018002342
(87)【国際公開日】2018-01-04
【審査請求日】2020-06-25
(31)【優先権主張番号】201610527670.8
(32)【優先日】2016-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】515266223
【氏名又は名称】コベストロ、ドイチュラント、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】COVESTRO DEUTSCHLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100151448
【氏名又は名称】青木 孝博
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100203035
【氏名又は名称】五味渕 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【氏名又は名称】今藤 敏和
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】リッターマイヤー,アンドレ
(72)【発明者】
【氏名】ヘルミッシュ,レイナー
(72)【発明者】
【氏名】ソーペ,アルフレ-ト
(72)【発明者】
【氏名】ウー,リューアン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ミッキー
(72)【発明者】
【氏名】レーナー,ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ビットナー,ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】シュテフェンス,フリードヘルム
(72)【発明者】
【氏名】フィンク,ヘンリケ
(72)【発明者】
【氏名】ヤーコブス,エリック
【審査官】印出 亮太
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-529939(JP,A)
【文献】特表2005-523226(JP,A)
【文献】特表2009-536913(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 7/01 - 7/075
B01D 1/00 - 8/00
C02F 1/66
C07C 261/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化水素液体混合物から不純物を分離および処理する方法であって、
前記塩化水素液体混合物を分離のために気液分離カラムに送り、前記気液分離カラムの底部で、塩化アンモニウムを含む不純物を含む液相流を生成する工程;
不純物を含む前記液相流を前記気液分離カラムの底部から液相流管路L1を通じて中和タンクに流入させ、前記中和タンク中で、不純物を含む前記液相流をアルカリ液で中和して中和液を生成する工程;ならびに
前記中和液を処理のために前記中和タンクから廃液処理装置に送る工程
を含む、方法。
【請求項2】
前記中和タンクが、前記気液分離カラムの下方に配置され、前記中和タンクの圧力が、前記気液分離カラム中の圧力以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記気液分離カラムと前記中和タンクとの間にバッファタンクをさらに配置することによって、不純物を含む前記液相流が、前記気液分離カラムの底部から前記液相流管路L1を通って、前記バッファタンクに順次流入し、次いで、前記バッファタンクから液相流管路L2を通って前記中和タンクに流入する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記バッファタンクが、前記気液分離カラムの下方に配置され、前記中和タンクが、前記バッファタンクの下方に配置され、前記バッファタンク中の圧力が、前記気液分離カラム中の圧力以下であり、前記中和タンク中の圧力が、前記バッファタンク中の圧力以下である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記バッファタンク中で緩衝された不純物を含む前記液相流の容量が、前記バッファタンクの容量の90%を超えない、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
不純物を含む前記液相流が前記液相流管路を通って流れた後、前記液相流管路が、不活性ガスでパージされる、請求項1~4
のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記中和液のpH値が8以上である、請求項1~4
のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記方法が、ホスゲン化によりイソシアネートを調製するためのプロセスから前記塩化水素液体混合物を得る工程をさらに含む、請求項1~4
のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
塩化水素液体混合物から不純物を分離および処理するためのシステムであって、
前記塩化水素液体混合物を受け取りおよび分離して、塩化アンモニウムを含む不純物を含む液相流を生成するための気液分離カラム;
不純物を含む前記液相流を受け取るための中和タンクであって、不純物を含む前記液相流が、前記気液分離カラムの底部から液相流管路L1を通って前記中和タンクに流入し、不純物を含む前記液相流を前記中和タンク中のアルカリ液で中和して中和液を生成する、中和タンク;ならびに
前記中和タンクからの前記中和液を受け取りおよび処理するための廃液処理装置
を備える、システム。
【請求項10】
前記中和タンクが、前記気液分離カラムの下方に配置され、前記中和タンクの圧力が、前記気液分離カラム中の圧力以下である、請求項
9に記載のシステム。
【請求項11】
前記気液分離カラムと前記中和タンクとの間に、不純物を含む前記液相流を緩衝するためのバッファタンクがさらに配置され、不純物を含む前記液相流が、前記気液分離カラムから前記中和タンクに流入し、不純物を含む前記液相流が、前記気液分離カラムの底部から前記液相流管路L1を通って、前記バッファタンクに順次流入し、次いで、前記バッファタンクから液相流管路L2を通って前記中和タンクに流入する、請求項
9に記載のシステム。
【請求項12】
前記バッファタンクが、前記気液分離カラムの下方に配置され、前記中和タンクが、前記バッファタンクの下方に配置され、前記バッファタンク中の圧力が、前記気液分離カラム中の圧力以下であり、前記中和タンク中の圧力が、前記バッファタンク中の圧力以下である、請求項
11に記載のシステム。
【請求項13】
不純物を含む前記液相流が前記液相流管路を通って流れた後に、前記液相流管路を不活性ガスでパージするための不活性ガスパージ装置をさらに備える、請求項
9~
12のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
ホスゲン化によりイソシアネートを調製する方法であって、
ホスゲン化反応プロセスからイソシアネート生成物および塩化水素を含むガス混合物を得る工程;
塩化水素を含む前記ガス混合物を処理して塩化水素液体混合物を生成する工程;ならびに
請求項1~
8のいずれか一項に記載の方法に従って前記塩化水素液体混合物を分離および処理する工程
を含む、方法。
【請求項15】
ホスゲン化によりイソシアネートを調製するためのシステムであって、
ホスゲン化反応を行ってイソシアネート生成物および塩化水素を含むガス混合物を生成するためのホスゲン化反応ユニット;
塩化水素を含む前記ガス混合物を処理して塩化水素液体混合物を生成するための塩化水素含有ガス混合物処理ユニット;ならびに
請求項
9~
13のいずれか一項に記載のシステムに従って前記塩化水素液体混合物を分離および処理するための塩化水素液体混合物分離および処理ユニット
を備える、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩化水素液体混合物から不純物を分離および処理するための方法および装置に関し、詳細には、ホスゲン化によりイソシアネートを調製するためのプロセスから製造された塩化水素液体混合物から不純物を分離および処理する方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ホスゲン化によりイソシアネートを調製するためのプロセスは、塩化水素を含むガス混合物を製造する。塩化水素を含有するこれらのガス混合物は、通常、さらなる部分液化、例えば塩化水素ガスおよび塩化水素液体混合物を生成するための精留カラム部分液化処理を必要とする。塩化水素ガスは、再利用のためにホスゲン化反応ユニットに戻り、塩化水素液体混合物は、処理され焼却に送られる。
【0003】
塩化水素液体混合物を処理するためのプロセスは、一般に、不純物を含む塩化水素液体混合物を気液分離カラムに送ること、塩化水素ガスを含む気相流および不純物を含む液相流を生成するために蒸発および分離すること、ならびに不純物を含む液相流を焼却のための焼却炉に送ることを含む。不純物を分離および処理するこの方法では、閉塞は、気液分離カラム、液相流管路、およびバルブの出口でしばしば起こり、これは、結果としてメンテナンスのための塩化水素液体混合物分離および処理ユニットの頻繁な運転停止をもたらし、それによって、ホスゲン化によりイソシアネートを調製するためのシステムの頻繁な運転停止をもたらす。
【0004】
塩化水素液体混合物から不純物を分離および処理するプロセスにおいて、液体流管路、バルブ、および気液分離カラムの閉塞を引き起こす原因を突き止め、頻繁な運転停止を必要としない方法を得るための解決策を提供することが業界において緊急に必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的のうちの1つは、塩化水素液体混合物から不純物を分離および処理する方法を提供することである。
【0006】
本発明の別の目的は、塩化水素液体混合物から不純物を分離および処理するためのシステムを提供することである。
【0007】
本発明のさらなる目的は、ホスゲン化によりイソシアネートを調製するためのプロセスを提供することである。
【0008】
本発明の別の目的は、ホスゲン化によりイソシアネートを調製するためのシステムを提供することである。
【0009】
本発明は、ホスゲン化によりイソシアネートを調製するためのプロセスによって製造された塩化水素液体混合物が塩化アンモニウム不純物を含むことを発見した。塩化アンモニウム不純物は、気液分離カラム、液相流管路、およびバルブの出口に常に堆積し、閉塞を引き起こす。メンテナンスのために塩化水素液体混合物分離および処理ユニットを運転停止することがしばしば必要とされ、結果としてホスゲン化によるイソシアネートを調製するためのシステムの頻繁な運転停止をもたらす。
【0010】
本発明は、メンテナンスのために頻繁な運転停止を必要とせず、不純物の堆積による液相流管路、バルブ、および気液分離カラムの閉塞の問題を解決し、塩化水素液体混合物分離および処理ユニットのメンテナンスのための運転停止頻度を低減する、塩化水素液体混合物から不純物を分離および処理するための方法およびシステムを提供する。
【0011】
「流入する」という用語は、一般に、重力以外の外力が加えられず、液相流管路が曲がっていない場合に、不純物を含む液相流がより高い位置からより低い位置へ排出されると理解するべきである。液相流管路は、液相流管路、バルブ、および気液分離カラム中の不純物を含む液相流の堆積を低減するためにできるだけ垂直であることが好ましい。
【0012】
「下方に」という用語は一般に、真下または斜め下と理解するべきである。
【0013】
本発明は、塩化水素液体混合物から不純物を分離および処理する方法であって、
前記塩化水素液体混合物を分離のために気液分離カラムに送り、前記気液分離カラムの底部で、塩化アンモニウムを含む不純物を含む液相流を生成する工程;
不純物を含む前記液相流を前記気液分離カラムの底部から液相流管路L1を通じて中和タンクに流入させ、前記中和タンク中で、不純物を含む前記液相流をアルカリ液で中和して中和液を生成する工程;ならびに
中和液を処理のために前記中和タンクから廃液処理装置に送る工程
を含む、方法を開示する。
【0014】
前記中和タンクは、前記気液分離カラムの下方に配置され、前記中和タンク中の圧力は、前記気液分離カラム中の圧力以下であることが好ましく、前記気液分離カラム中の圧力未満であることがより好ましい。前記中和タンク中の圧力は、好ましくは大気圧である。
【0015】
前記気液分離カラムと前記中和タンクとの間にバッファタンクをさらに配置してもよい。前記バッファタンクの一端は、気液分離カラムの底部に接続され、バッファタンクの他端は、中和タンクに接続されることにより、不純物を含む液相流は、前記気液分離カラムの底部から前記液相流管路L1を通って前記バッファタンクに順次流入し、次いで、前記バッファタンクから液相流管路L2を通って中和タンクに流入する。
【0016】
前記気液分離カラムと中和タンクとの間にバッファタンクをさらに配置する場合、前記バッファタンクを気液分離カラムの下方に配置することが好ましい。前記バッファタンク中の圧力は、気液分離カラム中の圧力以下であることが好ましく、前記中和タンク中の圧力は、前記バッファタンク中の圧力以下であることが好ましく;前記中和タンク中の圧力は、前記気液分離カラム中の圧力未満であることがさらに好ましく、大気圧がより好ましい。
【0017】
前記バッファタンク中で緩衝された不純物を含む前記液相流の容量は、前記バッファタンクの容量の90%を超えないことが好ましい。
【0018】
不純物を含む前記液相流が前記液相流管路L1および/または液相流管路L2を通って流れた後、液相流管路は、さらに不活性ガスでパージされる。
【0019】
前記不活性ガスは、好ましくは窒素である。
【0020】
前記中和液のpH値は、好ましくは8以上、より好ましくは10以上である。
【0021】
前記アルカリ液は、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物からなる群のうちの1つ以上、好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウムからなる群のうちの1つ以上から選択される。
【0022】
前記アルカリ液は、不純物を含む前記液相流が中和タンクに流入する前に予め中和タンクに入れられてもよく、またはさらに不純物を含む前記液相流が中和タンクに流入する間もしくは後に中和タンクに添加されてもよい。前記アルカリ液は、不純物を含む前記液相流が中和タンクに流入する前に予め中和タンクに入れられていることが好ましく、前記中和タンクに入れられたアルカリ液の容量は、前記中和タンクの容量の10%以下であることが好ましい。
【0023】
前記アルカリ液の濃度は、中和反応により得られた中和液が結晶析出を起こさないような濃度であることが好ましい。
【0024】
塩化水素液体混合物は、塩化水素、塩化アンモニウム、ホスゲン、およびクロロベンゼン化合物を含み得る。好ましくは、前記塩化水素液体混合物は、ホスゲン化によりイソシアネートを調製するためのプロセスから得られた塩化水素を含むガス混合物を処理することによって得られる。
【0025】
塩化水素ガスを含む気相流は、前記気液分離カラムの頂部で得られ得る。塩化水素ガスを含む前記気相流は、塩化水素ガスおよびホスゲンを含む。塩化水素ガスは、水またはアルカリ液に吸収され、ホスゲンは、分解除去される。
【0026】
前記廃液処理装置は、廃液焼却炉であってもよい。
【0027】
前記方法は、連続操作またはバッチ操作である。
【0028】
前記中和反応の開始温度は、0~80℃、好ましくは室温、さらに好ましくは中和反応により放出された反応熱をできるだけ中和液によって吸収することができる温度である。
【0029】
前記方法は、ホスゲン化によりイソシアネートを調製するためのプロセスから前記塩化水素液体混合物を得る工程をさらに含み得る。
【0030】
本発明はまた、塩化水素液体混合物から不純物を分離および処理するためのシステムであって、
前記塩化水素液体混合物を受け取りおよび分離して、塩化アンモニウムを含む不純物を含む液相流を生成するための気液分離カラム;
不純物を含む前記液相流を受け取るための中和タンクであって、不純物を含む前記液相流が、前記気液分離カラムの底部から液相流管路L1を通って前記中和タンクに流入し、不純物を含む前記液相流を前記中和タンク中のアルカリ液で中和して中和液を生成する、中和タンク;ならびに
前記中和タンクからの前記中和液を受け取りおよび処理するための廃液処理装置
を備える、システムを開示する。
【0031】
前記中和タンクは、前記気液分離カラムの下方に配置されている。前記中和タンク中の圧力は、気液分離カラム中の圧力以下であることが好ましく、気液分離カラム中の圧力未満であることがより好ましく、大気圧が最も好ましい。
【0032】
不活性ガスパージ装置および排気排出装置も、不純物を含む前記液相流が前記液相流管路L1を通って流れた後に前記液相流管路L1を不活性ガスでパージするために前記液相流管路L1上に配置され得る。
【0033】
前記気液分離カラムと前記中和タンクとの間には、不純物を含む前記液相流を緩衝するためのバッファタンクをさらに配置することができ、不純物を含む前記液相流が、前記気液分離カラムから前記中和タンクに流入し、不純物を含む前記液相流が、前記気液分離カラムの底部から前記液相流管路L1を通って前記バッファタンクに順次流入し、次いで、バッファタンクから液相流管路L2を通って中和タンクに流入する。
【0034】
前記システムがバッファタンクをさらに備える場合、前記バッファタンクは、前記気液分離カラムの下方に配置され、前記中和タンクは、前記バッファタンクの下方に配置される。前記バッファタンク中の圧力は、前記気液分離カラム中の圧力以下であることが好ましく、前記中和タンク中の圧力は、前記バッファタンク中の圧力以下であることが好ましく;前記中和タンク中の圧力は、前記気液分離カラム中の圧力未満であることがさらに好ましく、大気圧がより好ましい。
【0035】
不活性ガスパージ装置および排気排出装置も、不純物を含む前記液相流が前記液相流管路L2を通って流れた後に前記液相流管路L2を不活性ガスでパージするために前記液相流管路L2上に配置され得る。
【0036】
前記不活性ガスは、好ましくは窒素である。
【0037】
前記バッファタンクには、前記バッファタンク中で緩衝された不純物を含む液相流の容量が、確実に前記バッファタンクの容量の90%を超えないようにするための液面制御装置が設けられている。前記液面制御装置は、業界で一般的に使用されている液面制御装置であり得る。
【0038】
前記アルカリ液は、不純物を含む前記液相流が中和タンクに流入する前に予め中和タンクに入れられてもよく、または不純物を含む前記液相流が中和タンクに流入する間もしくは後に中和タンクに添加されてもよい。前記アルカリ液は、不純物を含む前記液相流が中和タンクに流入する前に予め中和タンクに入れられていることが好ましく、前記中和タンク中に入れられたアルカリ液は、前記中和タンクの容量の10%を超えない容量を有することが好ましい。
【0039】
前記中和タンクは、アルカリ液を中和タンク内部で循環させ続けるために液体循環ポンプを備えていてもよい。
【0040】
前記中和タンクは、中和反応によって発生した熱を除去するための冷却器を備えていてもよい。
【0041】
塩化水素ガスを含む気相流は、前記気液分離カラムの頂部で得ることができる。
【0042】
本発明のシステムは、塩化水素吸収カラム、ホスゲン分解器、および中央熱酸化装置をさらに備える。塩化水素吸収カラムは、気液分離カラムの頂部から得られる塩化水素ガスを含む気相流中の塩化水素ガスを吸収するために使用される。ホスゲン分解器および中央熱酸化装置は、塩化水素ガスを含む気相流中のホスゲンを分解するために使用される。
【0043】
廃液処理装置は、廃液焼却炉であってもよい。
【0044】
本発明は、ホスゲン化によりイソシアネートを調製する方法であって、
ホスゲン化反応プロセスからイソシアネート生成物および塩化水素を含むガス混合物を得る工程;
塩化水素を含む前記ガス混合物を処理して塩化水素液体混合物を生成する工程;ならびに
本発明に開示されているように、塩化水素液体混合物から不純物を分離および処理する方法に従って、前記塩化水素液体混合物を分離および処理する工程
を含む、方法をさらに開示する。
【0045】
塩化水素を含むガス混合物を処理して塩化水素液体混合物を生成する方法は、部分液化または業界において周知の他の方法であり得る。
【0046】
前記気液分離カラム中の圧力は、好ましくは5~25バールゲージ圧、最も好ましくは7~15バールゲージ圧であり;温度は、好ましくは0~150℃、より好ましくは15~100℃、最も好ましくは15~80℃である。
【0047】
前記バッファタンク中の圧力は、好ましくは0~10バールゲージ圧、最も好ましくは0~5バールゲージ圧である。
【0048】
本発明は、ホスゲン化によりイソシアネートを調製するためのシステムであって、
ホスゲン化反応を行ってイソシアネート生成物および塩化水素を含むガス混合物を生成するためのホスゲン化反応ユニット;
塩化水素を含有する前記ガス混合物を処理して塩化水素液体混合物を生成するための塩化水素含有ガス混合物処理ユニット;ならびに
本発明に開示されるように塩化水素液体混合物から不純物を分離および処理するためのシステムに従って、前記塩化水素液体混合物を分離および処理するための塩化水素液体混合物分離および処理ユニット
を備える、システムをさらに開示する。
【0049】
前記塩化水素含有ガス混合物処理ユニットの処理方法は、部分液化、または業界において周知の他の方法であり得る。
【0050】
本発明は、不純物を含む液相流をアルカリ液と中和反応させることによって、以下の利点を有し、不純物、特にその中の塩化アンモニウムが液相流管路、バルブ、および気液分離カラム中に堆積して閉塞するのを防止する。本発明はまた、装置間の相対位置を調整することによって液相流の円滑な流れを実現し、堆積を低減する。さらに、本発明は、不活性ガスパージ装置を気液分離カラム、バッファタンク、および中和タンクの間の液相流管路上に配置して、液相流管路から不純物を含む液相流をパージし除去することによって、不純物が液相流管路およびバルブ中に堆積および閉塞するのを防止し、ホスゲン化によりイソシアネートを調製するためのシステムをメンテナンスするための運転停止頻度を低減する。
【0051】
本発明の図面および実施例は、限定的ではなく例示的である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【
図1】本発明の一実施例による塩化水素液体混合物から不純物を分離および処理する方法の例示的なフローチャートである。
【
図2】本発明の一実施例による塩化水素液体混合物から不純物を分離および処理する方法の例示的なフローチャートである。
【
図3】本発明の一比較例による塩化水素液体混合物から不純物を分離および処理する方法の例示的なフローチャートである。
【
図4】本発明の一実施例による塩化水素液体混合物から不純物を分離および処理するためのシステムの例示的な図である。
【
図5】本発明の一実施例によるホスゲン化によりイソシアネートを調製するためのシステムの例示的な図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下の図面および実施形態を用いて本発明をさらに詳細に説明する。
【0054】
本発明は、塩化水素液体混合物から不純物を分離および処理するための方法およびシステムを開示する。
【0055】
本発明に記載されるような塩化水素液体混合物から不純物を分離および処理する方法に関して、不純物を含む塩化水素液体混合物は、ホスゲン化によりイソシアネートを調製するためのシステムから生じてもよく、また塩化アンモニウム不純物を含む塩化水素液体混合物を製造することができる他のシステムから生じてもよい。
【0056】
図1は、本発明の一実施例による塩化水素液体混合物から不純物を分離および処理する方法の例示的なフローチャートである。ステップS110において、塩化水素液体混合物は、分離のために気液分離カラムに入り、不純物を含む液相流を生成する。ステップS120において、不純物を含む液相流は、気液分離カラムの底部から液相流管路L1を通って中和タンクに流入し、中和タンク中のアルカリ液と中和反応して中和液を生成する。ステップS130において、中和液は、中和タンクから廃液処理装置に入り処理される。
【0057】
図2は、本発明の一実施例による塩化水素液体混合物から不純物を分離および処理する方法の例示的なフローチャートである。ステップS110において、塩化水素液体混合物は、分離のために気液分離カラムに入り、不純物を含む液相流を生成する。ステップS115において、不純物を含む液相流は、気液分離カラムの底部から液相流管路L1を通ってバッファタンクに流入する。ステップS125において、不純物を含む液相流は、バッファタンクから液相流管路L2を通って中和タンクに流入し、中和タンクに入れられたアルカリ液と中和反応して中和液を生成する。ステップS130において、中和液は、中和タンクから廃液処理装置に入り処理される。
【0058】
図3は、本発明の一比較例による塩化水素液体混合物から不純物を分離および処理する方法の例示的なフローチャートである。ステップS210において、塩化水素液体混合物は、分離のために気液分離カラムに入り、不純物を含む液相流を生成する。ステップS220において、不純物を含む液相流は、焼却のために廃液焼却装置に入る。
【0059】
図4は、本発明の一実施例による塩化水素液体から不純物を分離および処理するためのシステムの例示的な図である。気液分離カラム10は、気液分離カラム10から中和タンク30に液相流を流入させる、上部排出バルブ21および下部排出バルブ22を備えた液相流管路L1を通じて中和タンク30に接続されている。液相流管路L1は、窒素パージバルブ23および排気排出バルブ24をさらに備えており、不純物を含む液相流が液相流管路L1を通って流れた後、液相流管路L1中に残留する不純物を含む液相流をパージして除去するために使用される。中和タンク30は、アルカリ液を添加するためのアルカリ液供給バルブを備えている。中和タンク30は、中和タンク30中の中和液を廃液処理装置に入れて処理させるための排液バルブ32をさらに備えている。
【0060】
図5は、本発明の一実施例によるホスゲン化によりイソシアネートを調製するためのシステムの例示的な図である。ホスゲン化反応プロセスによって得られた塩化水素を含むガス混合物は、塩化水素精留カラム50に入る。塩化水素精留カラム50は、気液分離カラム10と接続されている。気液分離カラム10は、液相流管路L1を通じてバッファタンク20と縦方向に接続されている。気液分離カラム10は、気液分離カラム10の圧力を制御するための圧力制御バルブ11を備えている。液相流管路L1は、気液分離カラム10からバッファタンク20へ液相流を流入させる排出バルブ13を備えている。バッファタンク20は、気液分離カラム10とバッファタンク20との圧力をバランスのとれた状態で保持するための圧力バランスバルブ12を備えている。バッファタンク20は、バッファタンク20を減圧するための圧力リリーフバルブ14を備えている。バッファタンク20は、液相流管路L2を通じて中和タンク30と長手方向に接続されている。液相流配管L2は、バッファタンク20から中和タンク30へ液相流を流入させる上部排出バルブ21および下部排出バルブ22を備えている。液相流管路L2は、不純物を含む液相流が液相流管路L2を通って流れた後、液相流管路L2中に残留する不純物を含む液相流をパージして除去するために使用される、窒素パージバルブ23および排気排出バルブ24をさらに備えている。中和タンク30は、アルカリ液を添加するためのアルカリ液供給バルブを備えている。中和タンク30は、中和タンク30中の中和液を廃液処理装置に入れて処理させるための排液バルブ32をさらに備えている。
【0061】
本発明に記載の気液分離カラム、バッファタンク、中和タンク、および廃液処理装置は、業界で一般的なものであり得、市場で入手可能である。
【0062】
[実施例]
本発明をさらに説明するために、以下の実施例を提供する。
【0063】
[実施例1]
図1に示すプロセスによれば、大気圧の塩化水素液体混合物が気液分離カラム10に入った。気液分離カラム10中の塩化水素液体混合物を50℃に加熱し、不純物を含む液相流を得た。不純物を含む液相流は、垂直液相流管路L1を通って20g/L以上の濃度を有する水酸化ナトリウム溶液を含有する中和タンク30に流入した。中和タンク30において、不純物を含む液相流を水酸化ナトリウム溶液と中和反応させて中和液を得た。中和液のpHが10以上の値で安定したところで、排液バルブ32を開き、中和液を焼却炉に入れて焼却した。装置が半年間作動した後、気液分離カラム10、液相流管路、およびバルブに明らかな堆積は観察されなかった。
【0064】
[実施例2]
図4によれば、15バールのゲージ圧で塩化水素液体混合物が気液分離カラム10に入った。気液分離カラム10中の塩化水素液体混合物を80℃に加熱して、塩化水素液体混合物を分離し、塩化水素ガスを含む気相流および不純物を含む液相流を得た。上部排出バルブ21および下部排出バルブ22を開いて、不純物を含む液相流を垂直液相流管路L1を通じて中和タンク30に流入させた。上部排出バルブ21を閉じ、窒素パージバルブ23を開いて液相流管路L1を通して窒素を流し、液相流管路に残留した不純物を含む液相流をパージし除去した。次いで、下部排出バルブ22を閉じて排気排出バルブ24を開けた後、窒素パージバルブ23および排気排出バルブ24を閉じた。アルカリ液供給バルブ31を開き、濃度20g/L以上の水酸化ナトリウム溶液を中和タンク30に導入した。中和タンク30において、不純物を含む液相流を水酸化ナトリウム溶液と中和反応させて中和液を得た。中和液のpHが8以上の値で安定した後、排液バルブ32を開き、中和液を焼却炉に入れて焼却した。装置が半年間作動した後、気液分離カラム10、液相流管路、およびバルブに明らかな堆積は観察されなかった。
【0065】
[実施例3]
図5によれば、15バールのゲージ圧で塩化水素液体混合物が気液分離カラム10に入った。気液分離カラム10中の塩化水素液体混合物を80℃に加熱し、分離して、不純物を含む液相流を得た。不純物を含む液相流は、気液分離カラム10の底部に蓄積した。気液分離カラム10の液面が30%に到達したところで、圧力バランスバルブ12を開き、気液分離カラム10とバッファタンク20との圧力を釣り合わせた。排出バルブ13を開いて、不純物を含む液相流を垂直液相流管路L1を通じてバッファタンク20に流入させた。圧力バランスバルブ12および排出バルブ13を閉じた。バッファタンク20の圧力を3.5bargまでゆっくりと減圧するために圧力リリーフバルブ14を開き、次いで圧力リリーフバルブ14を閉じた。アルカリ液供給バルブ31を開き、濃度20g/L以上の水酸化ナトリウム溶液を中和タンク30に導入した。下部排出バルブ22および上部排出バルブ21を開いて不純物を含む液相流を垂直液相流管路L2を通じて中和タンク30に流入させ、中和タンク30中の水酸化ナトリウム溶液と中和反応させて中和液を得た。中和液のpHが8以上の値で安定した後、排液バルブ32を開き、中和液を焼却炉に入れて焼却した。装置が半年間作動した後、気液分離カラム10、液相流管路、およびバルブに明らかな堆積は観察されなかった。
【0066】
[実施例4]
図5によれば、ホスゲン化プロセスによって、イソシアネート生成物および不純物を含む塩化水素ガス混合物を得た。塩化水素を含むガス混合物が塩化水素精留カラム50に入り、塩化水素液体混合物を得た。塩化水素精留カラム50からの-10℃の温度および18bargの圧力を有する塩化水素液体混合物の圧力を圧力制御バルブ11によって15bargに減圧した。塩化水素液体混合物は、気液分離カラム10に入った。気液分離カラム10中の塩化水素液体混合物を80℃に加熱して、塩化水素液体混合物を塩化水素ガスを含む気相流と不純物を含む液相流とに分離した。不純物を含む液相流は、気液分離カラム10の底部に蓄積した。気液分離カラム10の液面が60%に到達したところで、圧力バランスバルブ12を開き、気液分離カラム10とバッファタンク20との圧力を釣り合わせた。排出バルブ13を開き、気液分離カラム10から不純物を含む液相流を縦型液相流管路L1を通じてバッファタンク20に流入させた。圧力バランスバルブ12および排出バルブ13を閉じた。バッファタンク20の圧力を3.5bargまでゆっくりと減圧するために圧力リリーフバルブ14を開き、次いで圧力リリーフバルブ14を閉じた。アルカリ液供給バルブ31を開き、濃度20g/L以上の水酸化ナトリウム溶液を中和タンク30に導入した。次いで、下部排出バルブ22および上部排出バルブ21を開いて、バッファタンク20から不純物を含む液相流を垂直液相流管路L2を通じて中和タンク30に流入させた。上部排出バルブ21を閉じ、窒素パージバルブ23を開いて窒素ガスを液相流管路L2に通過させ、液相流管路L2に残留した不純物を含む液相流をパージし除去した。次いで、下部排出バルブ22を閉じて排気排出バルブ24を開けた後、窒素パージバルブ23および排気排出バルブ24を閉じた。中和タンク30において、不純物を含む液相流を水酸化ナトリウム溶液と中和反応させて中和液を得た。中和液のpHが8以上の値で安定した後、排液バルブ32を開き、中和液を焼却炉に入れて焼却した。塩化水素ガスを含む気相流は、塩化水素吸収カラムによって精製され、次いで使用のためにホスゲン化反応器に再循環された。装置が半年間作動した後、気液分離カラム10、液相流管路、およびバルブに明らかな堆積は観察されなかった。
【0067】
本発明の上記の実施例の塩化水素液体混合物から不純物を分離および処理するためのシステムによれば、液相流管路、バルブ、および気液分離カラムは、あまり不純物堆積を含有せず、メンテナンスのための運転停止頻度を低減する。
【0068】
本発明は、上記のように比較的良好な実施例を開示したが、それらは、本発明を限定するために使用されるものではない。この技術における当業者は、本発明の趣旨および範囲から逸脱しない限り、変更および修正を加えることができる。したがって、本発明の保護範囲は、特許保護のために求められる特許請求の範囲に基づくものとする。