(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】歯科製品を生産するための高強度三次元製作材料系及び方法
(51)【国際特許分類】
A61C 13/08 20060101AFI20220119BHJP
A61C 5/77 20170101ALI20220119BHJP
A61C 13/00 20060101ALI20220119BHJP
A61C 13/10 20060101ALI20220119BHJP
B29C 64/124 20170101ALI20220119BHJP
B29C 64/277 20170101ALI20220119BHJP
【FI】
A61C13/08
A61C5/77
A61C13/00 Z
A61C13/10
B29C64/124
B29C64/277
(21)【出願番号】P 2018568691
(86)(22)【出願日】2017-06-30
(86)【国際出願番号】 US2017040166
(87)【国際公開番号】W WO2018005900
(87)【国際公開日】2018-01-04
【審査請求日】2020-06-19
(32)【優先日】2016-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515304558
【氏名又は名称】デンツプライ・シロナ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】サン,ベンジャミン ジェー.
(72)【発明者】
【氏名】リックス,アンドリュー エム.
【審査官】沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-505525(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0067921(US,A1)
【文献】特表平07-509188(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0113293(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 13/08
A61C 5/77
A61C 13/00
A61C 13/10
B29C 64/124
B29C 64/277
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元歯科コンポーネントを形成するための方法であって、
(a)キャリア及び
第1のビルドプレートを設けるステップと、
前記
第1のビルドプレートは透明部材を備え、前記透明部材は第1のビルド表面を備え、前記第1のビルド表面と前記キャリアとの間に第1のビルド領域が画定され、
(b)前記第1のビルド領域に第1の重合性の液体を充填するステップと、
前記第1の重合性の液体は前記第1のビルド表面と接触する状態であり、
(c)前記
第1のビルドプレートを通して前記第1のビルド領域に
放射線を照射し、前記第1のビルド領域において前記第1の重合性の液体から
第1の固体の重合した領域を生成する、
放射線を照射するステップと、
(d)、前記キャリアをそれに付着した前記第1の
固体の重合した領域と共に
、前記
第1のビルドプレート上の前記第1のビルド表面から離れる方へ前進させ、前記
第1の固体の重合した領域と前記第1のビルド表面との間に後続の第1のビルド領域を生成する、前記キャリアを前進させるステップと、
(e)前記ステップ(c)及び(d)を繰り返し、前記キャリアに付着した第1の表面及び第2の表面を有する三次元オブジェクトを形成する、前記ステップ(c)及び(d)を繰り返すステップと、
前記三次元オブジェクトの第1の表面は、前記第1のビルド表面と前記三次元オブジェクトの第2の表面との間に位置決めされ、
(f)
前記第1のビルドプレートと同一又は異なる第2のビルドプレートを設け、前記第2のビルドプレートの底面は第2のビルド表面を備え、第2のビルド領域に第2の重合
性の液体を充填するステップと、
前記第2の重合
性の液体の露出された上面と
前記第2のビルド表面との間に第2のビルド領域が画定され、前記第2の重合性の液体は前記第1の重合性の液体とは異なり、
(g)前記第2の重合性の液体の露出された上面と前記第2のビルド表面との間に前記三次元オブジェクトの第1の表面が位置決めされるように前記三次元オブジェクトを再位置決めするステップと
(h)前記第2のビルド領域に
放射線を照射し、前記第2のビルド領域において前記第2の重合性の液体から第2の固体の重合した領域を生成する、前記第2のビルド領域に
放射線を照射するステップと、
(i)前記キャリアを前記三次元オブジェクト及び前記三次元オブジェクトに付着した前記第2の
固体の重合した領域と共に
、前記第2の重合性の液体の露出された上面から離れる方へ前進させ、前記第2の
固体の重合した領域と前記
第2の重合性の液体の露出された上面との間に後続の第2のビルド領域を生成する、前記キャリアを前進させるステップと、
(j)前記ステップ(h)及び(i)を繰り返し、前記三次元歯科コンポーネントを形成する、前記ステップ(h)及び(i)を繰り返すステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記三次元オブジェクトの第1の表面が、前記三次元
オブジェクトの第2の表面に相対する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記再位置決めするステップ(g)において、前記キャリアが、それに付着した
前記三次元オブジェクトの第2の表面と共に、前記第2のビルド表面と前記三次元オブジェクトの第1の表面との間に位置決めされる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記再位置決めするステップ(g)において、前記三次元オブジェクトが
前記第2のビルド表面に対して90度から270度の間だけ回転される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ステップ(c)及び/又は(h)の
放射線の照射のための少なくとも1つの放射線源を設けるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの放射線源が、第1の放射線源と前記第1のビルド表面との間に
前記透明部材が設けられるように第1の放射線源を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記透明部材が半透過性の部材である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの放射線源が、第2の放射線源と前記第2のビルド表面との間に前記第2の重合性の液体の露出された表面が設けられるように第2の放射線源を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの放射線源が
、第1の放射線源と前記第1のビルド表面との間に前記透明部材が設けられるような第1の位置から
、第2の放射線源と前記第2のビルド表面との間に前記第2の重合性の液体の露出された表面が設けられるような第2の位置へ移動可能である、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つの放射線源が、第1の放射線源と前記第1のビルド表面との間に前記透明部材が設けられるように前記ステップ(c)の
放射線の照射のための第1の放射線源を含み、前記少なくとも1つの放射線源が、第2の放射線源と前記第2のビルド表面との間に前記第2の重合性の液体の露出された表面が設けられるように前記ステップ(h)の
放射線の照射のための第2の放射線源を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項11】
前記ステップ(e)の後であって前記ステップ(f)の前に、残っている前記第1の重合性の
液体が前記
第1のビルドプレートから除去される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記充填するステップ(f)において、前記
第1のビルドプレートに前記第2の重合性の
液体が充填される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第1のビルドプレートとは異なる第2のビルドプレートを設けるステップをさらに含み、前記充填するステップ(f)において、第2のビルドプレートに前記第2の重合性の
液体が充填される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記第2のビルドプレートは、前記ステップ(i)中に前記キャリアが前記第2のビルドプレートの底面の方へ前進するような底面を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記再位置決めするステップ(g)において、前記三次元オブジェクトが
前記第2のビルド表面に対して135度から225度の間だけ回転される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記
三次元歯科コンポーネントが義歯であり、前記第1の
固体の重合した領域が前記義歯の義歯床の部分を形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記第2の
固体の重合した領域が前記義歯の歯の部分を形成する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第1の
固体の重合した領域が前記第2の
固体の重合
した領域よりも高い降伏応力を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記キャリアが、前記第1の重合性の液体の露出された上面と接触する第1の位置から、前記露出された上面よりも上にあり上面と接触しない第2の位置へ移動可能である、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記キャリアが、前記第2の重合性の液体内の第3の位置から、前記第2の重合性の液体の露出された上面からさらに離れた前記第2の重合性の液体内の第4の位置へ移動可能である、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本特許出願は、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる、2016年6月30に出願された米国特許仮出願第62/356,711号の利益及び優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、一般に、例えば、人工歯、義歯、スプリント、ベニヤ、インレー、アンレー、矯正装置、アライナー、コーピング、フレームパターン、クラウン及びブリッジ、モデル、器具などの歯科デバイスを作製するためのラピッドプロトタイピングシステムに関する。より具体的には、光造形法又はDLP(デジタル光投影)又は他のエネルギー源を用いて、本発明の新規な高強度/靭性の液体レジンから三次元オブジェクトとして歯科デバイスをビルドアップする。DLPシステムは、デジタル光プロセッサ(DLP)プロジェクタを用いて順次ボクセル平面を液体レジンに投影し、これにより液体レジンを硬化させることによって三次元オブジェクトをビルドする。レーザビームを用いるSLAは、各層の形状を描き出し、槽(リザーバ又は浴)内の感光性レジンを硬化させる。
【背景技術】
【0003】
一般に、ラピッドプロトタイピングは、パーツを作製するのに用いられる従来の製造プロセスを指し、この場合、パーツは、硬化する材料の層を用いて層ごとにビルドされる。この技術によれば、製造されるパーツは、一緒に組み合わされたときに三次元構造体を構成する一連の個別の断面領域と考えられる。パーツの層ごとのビルドアップは、金属又はプラスチック片が所望の形状にカット及びドリルされる従来の機械加工技術とは大きく異なる。ラピッドプロトタイピング技術では、パーツは、コンピュータ支援設計(CAD)又は他のデジタルイメージから直接生産される。デジタルイメージを薄い断面層にスライスするのにソフトウェアが用いられる。次いで、プラスチック又は他の硬化する材料の層を積み重ねていくことによってパーツが構築される。構造をなす材料の層を組み合わせるのに用いることができる多くの異なる技術が存在する。材料の層を十分に硬化させるために最終硬化ステップが必要とされる場合がある。
【0004】
インクジェットプリンティング技術は、三次元オブジェクトを製作するのに用いることができるラピッドプロトタイピング法である。マサチューセッツ工科大学で開発された1つの周知のインクジェットプリンティング法では、Sachsらの米国特許第5,204,055号で説明されるように、粉末床の粉末微粒子の層上にバインダ材料を吐出するのにプリンタヘッドが用いられる。粉末状の層は、生産されることになるオブジェクトのデジタル方式で重ね合わされる区域に対応する。バインダは、粉末粒子を選択された領域において互いに融合させる。これは結果的に、プラットフォーム上に形成されるオブジェクトの融合した断面セグメントをもたらす。ステップは、所望のオブジェクトが達成されるまで各新しい層に関して繰り返される。最終ステップにおいて、レーザビームがオブジェクトをスキャンすることで粉末状の層を焼結し互いに融合させる。別のインクジェットプリンティングプロセスでは、Sandersの米国特許第5,506,607号及び第5,740,051号で説明されるように、三次元オブジェクトを形成するべく1つのインクジェットプリンティングヘッドを通じて低融点熱可塑性材料が分注される。第2のインクジェットプリンタヘッドが、三次元オブジェクトのための支持体を形成するべくワックス材料を分注する。オブジェクトが製造された後で、ワックス支持体が除去され、必要に応じてオブジェクトが仕上げられる。
【0005】
Leydenらの米国特許第6,660,209号及び第6,270,335号は、放射線により硬化可能なホットメルト材料の液滴を基板上に選択的に射出するための複数のオリフィス(ジェット)を有する市販のプリントヘッドを用いるインクジェットプリンティング法を開示する。各オリフィスは、電流が印加されるときに材料を通して圧力波を伝搬させる圧電要素を備えることができる。プリントヘッドは、スキャン経路に沿って移動し、流動性の材料を基板上に選択的に堆積させる。その後のステップにおいて、材料を硬化させるのに光放射が用いられる。
【0006】
Yamaneらの米国特許第5,059,266号は、光硬化性又は熱硬化性レジンを材料の飛行通路に沿ってステージに噴射することにより材料をステージ上に積層し、飛行通路に沿った材料の噴射方向及び材料の噴射量のうちの少なくとも1つを変化させることにより材料の噴射動作を制御し、積層された材料を光に曝すことで材料を硬化させ、これにより物品を形成する、インクジェット法を開示する。
【0007】
Bredtらの米国特許第5,902,441号は、活性化可能な接着剤を含有する粉末粒子の層を、下方へ割出しすることができる平坦面上に適用することを含む、別のインクジェットプリンティング法を説明する。インクジェットプリンタが、活性化流体を粒子の層上に所定のパターンで導入する。流体は、混合物中の接着剤を活性化し、粒子を本質的に固体の層に互いに付着させる。物品の第1の断面部分が形成された後で、可動面を下方へ割出しすることができる。粒子の混合物の連続する層が、所望の物品を形成するべく同じ様態で適用される。
【0008】
Oriakhiらの米国特許出願公開US2005/0082710は、反応性グラスアイオノマー微粒子と、ポリビニルピロリドン-コ-ポリアクリル酸を含む架橋可能なポリ酸微粒子と、ナノコンポジットとの微粒子ブレンドが製作ビン内で分散される、インクジェットプリンティング法を開示する。インクジェットプリンタが、微粒子ブレンドの所定の領域上に水相バインダを適用して水和セメントを形成する。グラスアイオノマーの化学反応が水和セメントを硬化させる。
【0009】
Kapserchikらの米国特許出願公開US2004/0094058は、酸-塩基セメントを用いるインクジェットプリンティングシステムを開示する。粉末微粒子の層が平坦面上に堆積される。粉末は、金属酸化物又はアルミノシリケートガラスなどの塩基、ポリマー酸又は他の酸を含む。インクジェットプリンタが水性バインダを分注する。塩基性粉末が水の存在下で酸と相互作用することにより、イオンで架橋したヒドロゲル塩が形成される。架橋したヒドロゲルの形成は、混合物の固化を引き起こす。
【0010】
より具体的には、三次元歯科製品を作製するためのインクジェットプリンティング法が開発されており、特許文献で説明されている。
【0011】
例えば、Mosznerらの米国特許第6,939,489号は、三次元プロット技術を用いて歯科修復及び置換パーツのための三次元歯形片を製作するためのプロセスを開示する。三次元プロッターノズルから吐出された微小液滴又は微小コードを切り取ることによりオブジェクトが層状の様態で生産される。吐出された材料は、用いられる材料のタイプに応じて様々な機構により硬化させることができる。これは、溶融した材料の冷却、重縮合、重付加、又は熱による硬化、及び光放射を含む。’489特許では、三次元プロット技術は、従来のラピッドプロトタイピング(選択的レーザ焼結、3Dプリンティング、及び光造形法)とは異なるものとして説明されている。
【0012】
Rheinbergerらの米国特許第7,189,344号は、前述のMITにより開発されたインクジェットプリンティング法で用いられるインクジェットプリンタを用いて完全な又は部分的な歯科補綴物などの三次元歯科修復パーツを生産するためのプロセスを開示する。プロセスは、重合性の材料をベース支持体上に層ごとの様態でスプレーすることを含む。材料の各層は、次の層の適用の前に光源により重合される。重合性の材料は、70重量%までの重合性のモノマー及びオリゴマーのうちの少なくとも1つと、0.01~10重量%の重合開始剤と、少なくとも20重量%のワックス状の流動性のモノマー及び着色顔料のうちの選択された1つを有する混合物とを有するワックス状として説明されている。
【0013】
Feenstraの米国特許第6,921,500号及び第6,955,776号は、液体バインダ及び粉末床を用いてクラウンなどの歯科要素を作製するためのインクジェットプリンティングプロセスを開示する。要素は、インクジェットプリンタを用いて粉末の連続する層を適用し、層上に液体バインダを吐出することにより生産される。バインダは、好ましくは、それらの表面に重合性の及び/又は重縮合可能な有機基を有するナノメートルの無機固体粒子を含む。バインダが最後の粉末層に適用された後で、過剰な未結合の粉末が除去される。次いで、粉末層が、約400~800℃の範囲内の温度に加熱することにより焼結される。焼結ステップは、粉末粒子間にネックのみが形成されるように行われる。得られた焼結された歯科要素に、歯科要素の材料よりも低い温度で溶融するガラス-セラミック又はポリマーなどの第2相材料を浸透させる。これは歯科要素の多孔率を低減させる。
【0014】
Bordkinらの米国特許第6,322,728号は、粉末層にバインダをプリンティングすることにより歯科修復物を作製するためのインクジェットプリンティングプロセスを開示する。このプロセスは、セラミック又は複合粉末材料の層を粉末床上に堆積させることを含む。修復物のデザインは、CAD表現に基づいている。セラミック又は複合層上にバインダ材料が適用される。この粉末/バインダ材料の適用は、修復物の所望の形状を生み出すために数回繰り返される。層形成プロセスが完了した後で、粒子の結合をさらに促進するべく構造体が硬化される。
【0015】
本発明は、デジタル光プロセッサ(DLP)プロジェクタ又は光造形法を用いて三次元歯科デバイスを製作するための新規な高強度/靭性の液体レジン系を提供する。DLP法又は光造形法及び高強度/靭性の材料は、本明細書では主としてスプリント、アライナー、完全な及び部分的な義歯、義歯床、及び人工歯を作製するのに用いられるものとして説明されるが、これは単に例示する目的のためであることを理解されたい。高強度/靭性の材料を用いるDLP法又は光造形法は、例えば、人工歯、義歯、矯正装置、スプリント、ベニヤ、インレー、アンレー、コーピング、フレームパターン、クラウン及びブリッジなどの任意の歯科デバイスを作製するのに用いることができる。我々は、高強度/靭性の材料系を用いるこれらの方法の概要を以下のように提供した。(歯科デバイスを作製するのに用いられる方法及び高強度/靭性の材料のより詳細な説明を以下に記載する。)
【0016】
この方法では、重合性の液体レジン材料又は加熱されたレジン材料が液体としてDLP法、光造形法、又はDLP法と光造形法の組み合わせに基づく3Dプリンタのレジン浴に充填される。DLP法を用いる場合には、順次ボクセル平面を液体レジン(又は加熱された液体レジン)へ投影し、これが重合して固体になることにより3Dオブジェクトをビルドする。デバイスが完全に製作されるまで、重合した材料の連続する層がこのように付加される。複数の光(又はレーザ)源がこれらの方法で用いられ得る。第1のオブジェクトが第1の重合した材料の連続する層でビルドされると、後続の第2の重合した材料の連続する層が、これらの方法により第1の重合したオブジェクトに付加されてよい。同様に、最終デバイスを形成するために、2つの重合した材料を有するオブジェクトの上にさらなる重合した材料をビルドすることができる。次いで、デバイス、例えば、義歯が、洗浄され、仕上げられ、必要であれば十分に最終硬化される。十分に硬化され研磨された義歯は、患者により使用される準備ができている。アライナー又はスプリントの場合には、重合性の液体レジン材料のクリアな槽が用いられ、デバイスが層ごとにビルドアップされてよい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明では、歯科デバイスを製造するのにいくつかの材料系及び方法が用いられる。本発明の高強度/靭性の材料は、歯科用途に適しており、優れた機械的強度に硬化され、優れた物理的特性を有する。さらに、これらの材料は、歯科用途に理想的となる良好な生体適合性を有する。本発明のいくつかの新規な3Dプリンティング法によるこれらの独自の高強度/靭性の重合性の材料の使用により、複数のシェード付きの歯科デバイスを容易に作製することができる。
【0018】
一態様では、本発明は、歯科コンポーネントを形成するための方法であって、(a)キャリア及びビルドプレートを設けるステップと、前記ビルドプレートは透明部材を備え、前記透明部材は第1のビルド表面を備え、前記第1のビルド表面と前記キャリアとの間に第1のビルド領域が画定され、(b)前記第1のビルド領域に第1の重合性の液体を充填するステップと、前記第1の重合性の液体は前記第1のビルド表面と接触する状態であり、(c)前記第1のビルド領域において前記第1の重合性の液体から固体の重合した領域を生み出すべく、前記ビルドプレートを通して前記第1のビルド領域に照射するステップと、(d)前記重合した領域と前記第1のビルド表面との間に後続の第1のビルド領域を生み出すべく、前記キャリアをそれに付着した前記第1の重合した領域と共に前記ビルドプレート上の前記第1のビルド表面から離れる方へ前進させるステップと、(e)前記キャリアに付着した第1の表面及び第2の表面を有する三次元オブジェクトを形成するべくステップ(c)及び(d)を繰り返すステップと、三次元オブジェクトの第1の表面は、第1のビルド表面と三次元オブジェクトの第2の表面との間に位置決めされ、(f)第2のビルド領域に第2の重合液体を充填するステップと、第2の重合液体の露出された上面と第2のビルド表面との間に第2のビルド領域が画定され、第2の重合性の液体は第1の重合性の液体とは異なり、(g)第2の重合性の液体の露出された上面と第2のビルド表面との間に三次元オブジェクトの第1の表面が位置決めされるように三次元オブジェクトを再位置決めするステップと、(h)前記第2のビルド領域において前記第2の重合性の液体から第2の固体の重合した領域を生み出すべく第2のビルド領域に照射するステップと、(i)前記第2の重合した領域と前記第2のビルド表面との間に後続の第2のビルド領域を生み出すべく、前記キャリアを三次元オブジェクト及び三次元オブジェクトに付着した前記第2の重合した領域と共に前記第2の重合性の液体の露出された上面から離れる方へ前進させるステップと、(j)前記三次元歯科コンポーネントを形成するべくステップ(h)及び(i)を繰り返すステップとを含む方法に向けられる。
【0019】
別の態様では、本発明の態様のいずれかは、以下の特徴、すなわち、三次元オブジェクトの第1の表面が三次元表面の第2の表面に相対し、再位置決めするステップ(g)において、キャリアが、それに付着した第2の表面と共に、第2のビルド表面と三次元オブジェクトの第1の表面との間に位置決めされ、再位置決めするステップ(g)において、三次元オブジェクトが90度から270度の間だけ回転され、ステップ(c)及び/又は(h)の照射のための少なくとも1つの放射線源を設けるステップをさらに含み、少なくとも1つの放射線源が、第1の放射線源と第1のビルド表面との間に透明部材が設けられるように第1の放射線源を含み、透明部材が半透過性の部材であり、少なくとも1つの放射線源が、第2の放射線源と第2のビルド表面との間に第2の重合性の液体の露出された表面が設けられるように第2の放射線源を含み、少なくとも1つの放射線源が、第1の放射線源と第1のビルド表面との間に透明部材が設けられるような第1の位置から、第2の放射線源と第2のビルド表面との間に第2の重合性の液体の露出された表面が設けられるような第2の位置へ移動可能であり、少なくとも1つの放射線源が、第1の放射線源と第1のビルド表面との間に透明部材が設けられるようにステップ(c)の照射のための第1の放射線源を含み、少なくとも1つの放射線源が、第2の放射線源と第2のビルド表面との間に第2の重合性の液体の露出された表面が設けられるようにステップ(h)の照射のための第2の放射線源を含み、ステップ(e)の後であってステップ(f)の前に、残っている第1の重合性の材料がビルドプレートから除去され、充填するステップ(f)において、ビルドプレートに第2の重合性の材料が充填され、第2のビルドプレートを設けるステップをさらに含み、充填するステップ(f)において、第2のビルドプレートに第2の重合性の材料が充填され、第2のビルドプレートは、ステップ(i)中にキャリアが第2のビルドプレートの底面の方へ前進するような底面を含み、再位置決めするステップ(g)において、三次元オブジェクトが135度から225度の間だけ回転され、歯科コンポーネントが義歯であり、第1の重合した領域が義歯の義歯床の部分を形成し、第2の重合した領域が義歯の歯の部分を形成し、第1の重合した領域が第2の重合性の領域よりも高い降伏応力を有し、キャリアが、第1の重合性の液体の露出された上面と接触する第1の位置から、露出された上面よりも上にあり上面と接触しない第2の位置へ移動可能であり、キャリアが、第2の重合性の液体内の第3の位置から、第2の重合性の液体の露出された上面からさらに離れた第2の重合性の液体内の第4の位置へ移動可能である、又はこれらの任意の組み合わせ、のうちの1つ又はいずれかの組み合わせによってさらに特徴付けられ得る。
【0020】
上記で言及した態様及び例は、本明細書に示され説明されるように、本発明と共に他のものが存在するので限定するものではないことを理解されたい。例えば、本発明の上記の態様又は特徴のいずれかは、本明細書で説明され、図面で実証されるように、又はその他の方法で、他の独自の構成をなすように組み合わされてよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図2】
図1の実施形態を用いる方法により形成された三次元オブジェクトの斜視図である。
【
図4】
図1~
図3の実施形態を用いる方法により形成された三次元歯科コンポーネントの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
プリント可能な重合性の材料
プリント可能な重合性の材料が、本発明の方法に従って歯科製品を作製するのに用いられる。本明細書で用いられる場合の「プリント可能な」という用語は、周囲温度よりも低い温度で、周囲温度で、及び周囲温度よりも高い温度で流動性の材料(流体)を意味する。
【0023】
流動性の材料は、-30℃~140℃の範囲内の流動可能温度を有する。本発明に係るプリント可能な重合性の材料を調製するのに以下の成分を用いることができる。
重合性のアクリル化合物
本発明の組成物に用いることができる重合性のアクリル化合物は、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、メタクリル酸、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4-tert-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、n-ヘキシルアクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ステアリルアクリレート、アリルアクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、o-フェニルフェノールエチル(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジアクリレート、オクタデシルイソシアネートと2-ヒドロキシエチルメタクリレートとの反応生成物、オクタデシルイソシアネートとカプロラクトン2-(メタクリロイルオキシ)エチルエステルとの反応生成物、オクタデシルイソシアネートと2-ヒドロキシエチルアクリレートとの反応生成物;オクタデシルイソシアネートとヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートとの反応生成物;オクタデシルイソシアネートと2-ヒドロキシプロピル2-(メタクリロイルオキシ)-エチルフタレートとの反応生成物;オクタデシルイソシアネートと2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレートとの反応生成物;オクタデシルイソシアネートとグリセロールジメタクリレートとの反応生成物;オクタデシルイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートとの反応生成物;シクロヘキシルイソシアネートと2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応生成物;ベンジルイソシアネートと2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応生成物;1,14-テトラデカンジメタクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、グリセロールジアクリレート、グリセロールトリアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-プロパンジオールジアクリレート、1,3-プロパンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,2,4-ブタントリオールトリメタクリレート、1,4-シクロヘキサンジオールジアクリレート、1,4-シクロヘキサンジオールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシ-3-アクリロイルオキシプロポキシ)フェニル]プロパン;2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシ-3-メタクリロイルオキシプロポキシ)フェニル]プロパン(Bis-GMA);Bis-GMAとオクタデシルイソシアネートとの反応生成物;Bis-GMAとシクロヘキシルイソシアネートとの反応生成物;2,2-ビス[4-(アクリロイルオキシ-エトキシ)フェニル]プロパン;2,2-ビス[4-(メタクリロイルオキシ-エトキシ)フェニル]プロパン(又はエトキシル化ビスフェノールA-ジメタクリレート)(EBPADMA);ウレタンジ(メタ)アクリレート(UDMA)、ジウレタンジメタクリレート(DUDMA)、4,13-ジオキソ-3,14-ジオキサ-5,12-ジアザヘキサデカン-1,16-ジオールジアクリレート;4,13-ジオキソ-3,14-ジオキサ-5,12-ジアザヘキサデカン-1,16-ジオールジメタクリレート、4,19-ジオキソ-3,20-ジオキサ-5,18-ジアザヘキサデカン-1,22-ジオールジアクリレート;4,19-ジオキソ-3,20-ジオキサ-5,18-ジアザヘキサデカン-1,22-ジオールジメタクリレート;トリメチル1,6-ジイソシアネートヘキサンとビスフェノールAプロポキシレートと2-ヒドロキシエチルメタクリレート(TBDMA)との反応生成物;1,6ジイソシアネートヘキサンと水で変性された2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HDIDMA)との反応生成物;1,6ジイソシアネートヘキサンと水で変性された2-ヒドロキシエチルアクリレート(HDIDA)との反応生成物;1,6-ジイソシアネートヘキサン、1,2-デカンジオール、1,10-デカンジオール、及び2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの反応生成物;1,6-ジイソシアネートヘキサン、3-ヒドロキシ2,2-ジメチルプロピル3-ヒドロキシ-2,2-ジメチルプロピオネート、1,10-デカンジオール、及び2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの反応生成物;1,6-ジイソシアネートヘキサン、1,10-デカンジオール、及び2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの反応生成物;1,6-ジイソシアネートヘキサン、1,2-デカンジオール、1,10-デカンジオール、3-ヒドロキシ2,2-ジメチルプロピル3-ヒドロキシ-2,2-ジメチルプロピオネート、及び2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの反応生成物;1,6-ジイソシアネートヘキサン、トリメチル1,6-ジイソシアネートヘキサン、1,10-デカンジオール、及び2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの反応生成物;1,6-ジイソシアネートヘキサン、トリメチル1,6-ジイソシアネートヘキサン、3-ヒドロキシ2,2-ジメチルプロピル3-ヒドロキシ-2,2-ジメチルプロピオネート、1,10-デカンジオール、及び2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの反応生成物;1,6-ジイソシアネートヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオール、及び2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの反応生成物;1,6-ジイソシアネートヘキサン、4,4’-イソプロピリデンジシクロヘキサノール、及び2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの反応生成物;1,6-ジイソシアネートヘキサン、1,2-デカンジオール、1,10-デカンジオール、3-ヒドロキシ2,2-ジメチルプロピル3-ヒドロキシ-2,2-ジメチルプロピオネート、及び2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの反応生成物;2-イソシアネートエチルメタクリレートとジオールとの反応生成物;ポリウレタンジメタクリレート(PUDMA);アルコキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレート;ポリカーボネートジメタクリレート(PCDMA);ポリエチレングリコールのビス-アクリレート及びビス-メタクリレート;(メタ)アクリレート修飾シリコーン;光硬化性エポキシド;エポキシメタクリレート(又はアクリレート)、メタクリレート(又はアクリレート)化合物又はそれらの組み合わせ;種々のジオールと組み合わせた種々のエポキシド[例えば、1,3-ビス(3-グリシジルオキシプロピル)テトラメチルジソキサン、ビスフェノールAプロキシレートジグリシジルエーテル、ビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、1,10デカンジオール、1,6-ヘキサンジオール、分岐ジオール、芳香族ジオール、ビスフェノールA、プロキシル化ビスフェノールAなど[開環重合により重合したエポキシ化合物は、相変換からの体積膨張に加えて開環重合プロセスに関連する排除された自由体積の増加に起因してあまり収縮しない];及びアクリレート化モノマーとアクリレート化オリゴマーの共重合性の混合物などのモノ-、ジ-、又はポリ-アクリレート及びメタクリレートを含むがこれらに限定されない。例えば、本発明の3Dプリンティングレジン系でのゴム耐衝撃性改良剤の使用は、調製されたレジン系の破壊靭性を顕著に増加させた。メチルメタクリレートと置き換えるためのエチルメタクリレートの使用も、調製された3Dプリンティングレジン系の破壊靭性を顕著に増加させた。しかしながら、メチルメタクリレートと置き換えるためのエチルメタクリレートの使用は、対応するレジンの曲げ強さ及びモジュラスを減少させた。
【0024】
重合系
本発明の高強度/靭性のプリント可能な重合性の歯科材料及び組成物は、それらを即座に硬化させるべく1つ以上の開始系を含んでよい。光重合性の歯科組成物又は複合材は、好ましくは、光増感剤、例えば、活性化波長の光に曝すと重合を開始させるカンファーキノン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、又はメチルベンゾイン;及び/又は還元性の化合物、例えば、第三級アミンを含む。
【0025】
一実施形態では、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイン及びそれらの誘導体、又はアルファ-ジケトン及びそれらの誘導体などの光活性剤が、組成物を光硬化性にするために組成物に添加される。好ましい光重合開始剤は、カンファーキノン(CQ)である。カチオン性重合開始剤、ジアリールヨードニウム、及び4-オクチルオキシ-フェニル-フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート(OPPI)などのトリアリールスルホニウム塩も用いることができ、これは、開環重合並びに相変化からの体積膨張を開始して重合収縮を減少させる。多核芳香族化合物、それらの置換類縁体、カルバゾール、フェノチアジン、クルクミン、及びチタン錯体フリーラジカル開始剤などの電子伝達光増感剤も添加することができる。さらに、種々のUV光開始剤も用いることができる。光重合は、好ましくは約400~約500nmの範囲内の波長を有する青色の可視光を組成物に照射することにより開始することができる。標準的な歯科青色光硬化ユニットを、組成物に照射するのに用いることができる。カンファーキノン(CQ)化合物は、約400から約500nmの間に光吸収極大を有し、この範囲内の波長を有する光が照射されたときに重合のためのフリーラジカルを発生する。アシルホスフィンオキシドのクラスから選択された光開始剤も用いることができる。これらの化合物は、例えば、モノアシルホスフィンオキシド誘導体、ビスアシルホスフィンオキシド誘導体、及びトリアシルホスフィンオキシド誘導体を含む。例えば、光重合開始剤として2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキシド(TPO)を用いることができる。
【0026】
光活性剤に加えて、本発明の材料は、例えば、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、ベンゾキノン、クロラニル、フェノール、ブチルヒドロキシアナリン(BHA)、第三級ブチルヒドロキノン(TBHQ)、トコフェロール(ビタミンE)などの重合抑制剤を含んでよい。好ましくは、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)が、重合抑制剤として用いられる。重合抑制剤は、組成物中のフリーラジカルを捕捉して材料の貯蔵寿命を延ばすべく捕捉剤として作用する。
【0027】
一実施形態では、カンファーキノン(CQ);ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT);N,N-ジメチルアミノネオペンチルアクリレート、ガンマ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、及びメタクリル酸を含む「ALF」と呼ばれる材料を組成物に用いることができる。
【0028】
フィラー
天然に存在するもの又は合成とすることができる無機フィラーなどの従来のフィラー材料を、プリント可能な重合性の歯科材料及び組成物に添加することができる。このような材料は、シリカ、二酸化チタン、酸化鉄、窒化ケイ素、ガラス、例えばカルシウム、鉛、リチウム、セリウム、スズ、ジルコニウム、ストロンチウム、バリウム、及びアルミニウムベースのガラス、ホウケイ酸ガラス、ホウケイ酸ストロンチウム、珪酸バリウム、珪酸リチウム、リチウムアルミナシリケート、カオリン、石英、及びタルクを含むがこれらに限定されない。好ましくは、シリカは、シラン化処理フュームドシリカの形態である。好ましいガラスフィラーは、シラン化バリウムホウ素アルミノシリケート及びシラン化フッ化バリウムホウ素アルミノシリケートである。好ましくは、これらの表面処理された無機フィラーは、プリント可能な重合性のレジンに懸濁させることができる。最も好ましくは、それらは均一な混合物を形成する。ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、高度に架橋したPMMAビーズ、ポリ(メチル/エチルメタクリレート)、ポリ(メチル/ブチルメタクリレート)、ゴム変性PMMA、ゴム耐衝撃性改良剤、架橋ポリアクリレート、熱可塑性及び架橋ポリウレタン、粉砕した本発明の重合した化合物、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、及びポリエポキシドなどの有機粒子も、フィラーとして用いることができる。これらの有機フィラーは、前述のプリント可能な重合性のレジンに添加することができる。好ましくは、これらの有機フィラーは、プリント可能な重合性のレジンに溶解する又は懸濁させることができる。最も好ましくは、それらは均一なコロイドを形成する。重合した歯科複合材などの複合フィラーを粉砕し、本発明の調製物に用いることができる。合成又は粉砕からの、表面処理された又はされていないナノ粒子、微細ガラス粒子、又は他の無機含浸/変性PMMA又は架橋ポリマービーズ/粒子も用いることができる。これらの複合フィラーは、最良の混和性及び最良の結合のために特定のプリンティングレジン系に基づいて選択することができる。
【0029】
無機フィラー粒子は、粒子とレジンマトリクスとの結合を改善するためにシラン化合物又は他のカップリング剤で表面処理することもできる。適切なシラン化合物は、ガンマ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ガンマ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、ガンマ-アミノプロピルトリメトキシシラン、及びその組み合わせを含むがこれらに限定されない。
【0030】
顔料
本発明のプリント可能な重合性の顔料入りの高強度/靭性の材料は、着色剤又はシェーディング剤として1つ以上の顔料を含有する。顔料は、無機顔料及び有機顔料を含む。顔料は、分散性を増加させるために修飾されてよい。例えば、シラン基、重合性のシラン基、ジアルキルアミノメチル基、又はジアルキルアミノエチルスルホン酸基を有する修飾された顔料が好ましく用いられる。さらなる例では、無機顔料は、粒子とレジンマトリクスとの結合を改善するため、並びに、プリント可能材料中の分散を強化するために、シラン化合物、他のカップリング剤、界面活性剤、又はポリマーで表面処理することができる。適切なシラン化合物は、ガンマ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ガンマ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、ガンマ-アミノプロピルトリメトキシシラン、及びその組み合わせを含むがこれらに限定されない。顔料を本発明のレジンマトリクスに分散させるために、いくつかの機械的な方法、超音波分散方法などを含む多くの方法が用いられてよい。
【0031】
無機顔料の例は、限定はされないが、黒色酸化鉄、黄色酸化鉄、群青、褐色酸化鉄、酸化チタン、亜鉛華、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、タルク、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、弁柄、コバルトクロムグリーン、アルメニアブルー、カーボンブラック、マイカ、コバルトバイオレット、モリブデンレッド、チタンコバルトグリーン、モリブデンオレンジなどを含む。有機顔料の例は、クロモフタールレッド-BRN 2-ナフタレンカルボキシアミド、アゾ顔料、ポリアゾ顔料、アゾメチン顔料、イソインドリン顔料、アントラキノン顔料、フタロシアニン顔料、ベンズイミダゾロン顔料などを含む。より重要には、種々の顔料を微細なPMMAポリマービーズにカプセル化し、コアシェル構造体を形成することにより、PMMAベースの顔料系を開発することができ、この場合、顔料粒子は、レジンマトリクス、特に、MMAベースの高強度/靭性の重合性の液体中で安定なPMMAポリマービーズ内に包まれる。レジンベースの顔料系はまた、種々の顔料を微細な重合レジンビーズにカプセル化することにより開発することができる。これらのポリマービーズは、エマルジョン重合又は懸濁液重合により調製することができる。代替的に、顔料が高濃度なレジン又はMMAベースのレジンを重合し、次いで、微粉へ粉砕し、その後、コロイド又は望ましい懸濁液を形成するべく重合性の液体中で用いることができる。
【0032】
顔料入りの材料は、優れたシェード安定性を有し、UV光照射に耐えるので望ましい。本発明は、沈降を防ぐべく粒子を溶液により良好に分散させることにより、そして、粒子をより小さいサイズへミリングすることにより、歯科レジンからの可能性のある顔料の分離を克服した。顔料を液体中で効果的に安定化させ、懸濁させるために、選択されたマトリクス中に細かく分散された顔料及びポリマー添加剤に機械的な方法も適用した。本発明は、ナノ分散される微細な無機顔料及び有機顔料を用いることにより、歯科レジンからの可能性のある顔料の分離をさらに克服した。ナノ分散された有機顔料がここで好ましく用いられる。
【0033】
「顔料」という用語は、対象材料中に可溶性ではないが微粒子として懸濁又は分散される可視材料を指す。好ましい固体顔料は、黒色酸化鉄(Black Iron Oxide)7053、黄色酸化鉄(Yellow Iron Oxide)7055、二酸化チタン、クロモフタールレッド-BRN 2-ナフタレンカルボキシアミド、N,N’-(2-クロロ-1,4-フェニレン)ビス{4-{(2,5-ジクロロフェニル)アゾ}-3-ヒドロキシ-}、群青、及び褐色酸化鉄420などの微粒子の顔料である。さらに、Lumilux Blue LZ蛍光剤(ジヒドロキシテレフタレート酸エステル)などの蛍光剤が含まれ得る。本発明の重合性の高強度/靭性の材料は、液体槽内により良好に懸濁される小さい粒径を有する顔料を使用する。顔料粒子は液体槽内で沈殿する傾向があるが、我々が発明した顔料入りの重合性の材料の混和性は、周囲温度又は高い温度での使用中のこの可能性のある分離を防ぐ。顔料の表面は、レジン又はMMAベースのマトリクスへのその混和性を改善するために有機修飾されてよい。
【0034】
本発明のプリント可能な重合性の高強度/靭性の歯科材料組成物は、種々の無機及び有機フィラー、顔料、開始剤、触媒、安定剤、種々の調整剤、界面活性剤、抗菌剤、UV吸収剤、チキソトロピー剤、可塑剤、耐衝撃性改良剤、抗真菌剤、ファイバ、又はそれらの組み合わせを含んでよい。好ましい安定剤は、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)及びヒドロキノンのメチルエーテル(MEHQ)などである。材料に放射線不透過性を導入する化合物も含まれ得る。
【0035】
本発明のプリント可能な重合性の高強度/靭性の歯科材料は、光照射時に迅速に凝固することができる。
【0036】
方法
DLPシステム、光造形法、又は類似の光照射、並びにそれらの組み合わせを用いる3Dプリンティング
一般に、これらの2つの一般的手法(DLP型プリンタ又は光造形法型プリンタ)を、本発明の高強度/靭性の材料を用いる三次元オブジェクトの製作に用いることができる。しかしながら、他の光照射法、並びにDLP、光造形法、又は他の光照射法の組み合わせに基づくさらなる方法も用いられてよい。異なる角度での複数のDLP光源、異なる角度からのレーザビーム又は類似の光照射、又は異なる角度からのそれらの異なる光源の組み合わせを用いて三次元オブジェクトを製作するのに3Dプリンタが好ましい。より好ましくは、光ビーム(又はレーザ)は、光ビーム(又はレーザ)が水平方向から垂直方向の状態でオブジェクトの周りに360度照射することができる。光ビーム(又はレーザ)は、光ビーム(又はレーザ)が水平方向から垂直方向に360度から照射される状態でオブジェクトの周りを360度移動できることも好ましい。光ビーム(又はレーザ)は、光ビーム(又はレーザ)が水平方向から垂直方向にオブジェクトの周りに360度から照射される状態で槽内の液体レジンの水位に基づいて垂直位置又はビーム方向を感知又は/及び調節できることも好ましい。
【0037】
プリント可能な重合性の材料は、流動性である、又は重合の前に流動性の液体を形成するべく加熱される。本発明のこれらの手法のそれぞれの後に、プリンタが、義歯又は他の歯科デバイスを形成するべくビルディング平面上に光を投影又は照射し、硬化させることにより、重合性の材料の連続する層をビルドする。本発明のこれらの高強度/靭性の材料からビルドされた結果的に得られる義歯又は他の歯科デバイスは、優れた機械的特性及び物理的特性、種々のシェード及び色特性を呈するはずである。複数の槽内の複数のシェード付きの重合性の材料から複数のシェード付きの義歯又は他の歯科デバイスをビルドすることができる。
【0038】
異なるシェード及び色を有するいくつかのプリント可能な重合性の高強度/靭性の材料を調製し、別個の浴に入れることができる。義歯をビルドする場合、義歯床は、義歯床のシェード付きの浴から層ごとにビルドされることになる。この義歯床は、洗浄され、義歯床上に義歯の歯の象牙質部分を層ごとにビルドするべく象牙質のシェード付きの浴へ移され、そこで第1のシェード付きの義歯床の表面上に層ごとにビルドアップできるように光ビームが異なる角度から照射された(360度まで移動可能であってよく、水平方向から垂直方向に最高360度から照射されてよい)。複数の光源(又はビーム)並びに異なる光源(又はビーム)が単一のプリンティングユニットで用いられてよい。所望の場合、これは、洗浄し、前にビルドされた形状の表面上にさらなる象牙質層をビルドするべく別の象牙質のシェード付きの浴へ移すことができる。洗浄され、エナメル質浴へ移された後で、そこでエナメル質層が前にビルドされた形状の表面上に層ごとにビルドされ、義歯床上に一体の歯を有する最終義歯デバイスを形成する。さらなるシェードが望まれる場合、異なる象牙質及びエナメル質のシェード又は義歯床及びキャラクタライズされた義歯床のシェード付きのさらなる層を、前述したのと同様にビルドすることができる。しかし、義歯は、最初に歯又はエナメル質がビルドされ、次いで、義歯床がビルドされる、逆のステップによりビルドされてよい。
【0039】
3Dオブジェクトをビルドするために通例用いられる層ごとの方法に加えて、時間的な方法、強度的な方法、又は時間的な方法と強度的な方法の組み合わせも、3Dの幾何学的形状を制御するべく硬化の深さを制御するのに用いることができ、これは、3Dオブジェクトをビルドするためのより速い且つより効率的な方法を可能にする。時間的な方法は、種々の形状及び勾配を得るために設計に従って異なるスポットで異なる硬化の深さが達成されるように、異なるスポット(ドット)が、異なるシェード及び硬化深さの要件に基づいて異なる時間の長さで適用される光照射を有することを意味する。強度的な方法は、種々の形状及び勾配を得るために設計に従って異なるスポットで異なる硬化の深さが達成されるように、異なるスポット(ドット)が、異なるシェード及び硬化深さの要件に基づいて適用される異なる光の強さを有することを意味する。時間又は/及び強度的な方法は、種々の形状及び勾配を得るために設計に従って異なるスポットで異なる硬化の深さがより効率よく達成されるように、異なるスポット(ドット)が、異なるシェード及び硬化深さの要件に基づいて異なる時間の長さで適用される異なる光の強さを有することを意味する。異なるスポットに関して、変化した厚さの層が異なるスポットでビルドされることになるように異なる光の強さ又は/及び照射時間が適用され得る。この方法は、前に製作されたオブジェクトの上部(表面上)に異なる厚さを有する異なるシェード付きの材料の層をビルドすることを可能にする。プリンティングプロセスは、3Dオブジェクトを製作するのに層ごとの方法と時間又は/及び強度的な方法とを組み合わせて用いることが好ましい。より詳細には、義歯は、層ごとの方法と時間又は/及び強度的な方法とを組み合わせることにより製作することができる。義歯床は、光照射に基づく3Dプリンティングを用いて義歯床液体の槽内で層ごとにビルドすることができる。取り出して洗浄した後で、この義歯床を、象牙質のシェード付きの液体が入っている第2の槽へ挿入することができる。その後、変化した厚さを有する歯の床層をビルドするために、時間又は/及び強度的な方法、層ごとの方法、又はそれらの組み合わせの方法が、この義歯床に適用される。その後、層が、層的に(層ごとに)、時間又は/及び強度的に、又はそれらの組み合わせ的にビルドされてよい。さらなるシェード付きの象牙質が望まれる場合、この義歯を取り出して洗浄することができ、次いで、異なる象牙質のシェード付きの液体が入っている第3の槽へ挿入することができる。その後、変化した厚さを有する歯の床層をビルドするために、時間又は/及び強度的な方法、層ごとの方法、又はそれらの組み合わせの方法が、第1の層に関するこの義歯床に適用され、その後、層が、層的に、時間又は/及び強度的に、又はそれらの組み合わせ的にビルドされてよい。さらなるシェードが望まれる場合、この義歯を取り出して洗浄することができ、次いで、エナメル質のシェード付きの液体が入っている第4の槽へ挿入することができる。その後、変化した厚さを有する歯のエナメル質層をビルドするために、時間又は/及び強度的な方法が、第1の層に関するこの義歯床に適用され、その後、層が、層的に、時間又は/及び強度的に、又はそれらの組み合わせ的にビルドされてよい。さらなる象牙質及びエナメル質のシェードを、前述したのと同様にビルドすることができる。しかし、義歯は、最初に歯又はエナメル質がビルドされ、次いで、義歯床がビルドされる、逆のステップによりビルドされてよい。
【0040】
義歯の歯の大量生産の場合、最初に義歯の歯の複数の歯頸部分を歯頸レジン浴内で形成し、義歯の歯の本体部分を本体レジン浴内で付加し、最後に義歯の歯のエナメル質部分をエナメル質レジン浴内でビルドし、最終的に硬化させて複数の義歯の歯を形成することにより、複数の歯をビルドすることができる。しかし、最初にエナメル質層がビルドされている状態で義歯の歯をビルドするために逆のステップが用いられてよい。複数のシェードをビルドするため、及び、形成された歯科デバイスの望ましい美観を達成するために、要望に応じて周囲雰囲気又は高い温度での複数の浴が用いられてよい。層ごとの方法、時間又は/及び強度的な方法、又はそれらの組み合わせが、これらの義歯の歯をビルドするのに用いられてよい。
【0041】
一時的な又は長期のクラウン及びブリッジの大量生産の場合、最初にクラウン及びブリッジの複数の象牙質部分をオペークデンティンレジン浴及び象牙質レジン浴内で形成し、最後にクラウン及びブリッジのエナメル質部分をエナメル質レジン浴内でビルドし、最終的に硬化させて複数のクラウン及びブリッジを形成することにより、複数のクラウン及びブリッジをビルドすることができる。しかし、最初にエナメル質層がビルドされている状態でクラウン及びブリッジをビルドするために逆のステップが用いられてよい。複数のシェードをビルドするため、及び、形成された歯科デバイスの望ましい美観を達成するために、要望に応じて周囲雰囲気又は高い温度での複数の浴が用いられてよい。層ごとの方法、時間又は/及び強度的な方法、又はそれらの組み合わせが、これらのクラウン及びブリッジをビルドするのに用いられてよい。
【0042】
歯列矯正アライナーの製作の場合には、単一の浴が用いられることになる。層ごとの方法、時間又は/及び強度的な方法、又はそれらの組み合わせが、このアライナーをビルドするのにも用いられてよい。時間又は/及び強度的な方法又は層ごとの方法との組み合わせは、より速いビルド速度を与え得る。
【0043】
好ましくは、高強度/靭性の歯科製品が本発明の方法により生産される。好ましい実施形態において、高強度の歯科製品を生産するために、プリンタからプリント可能な重合性の高強度/靭性の材料(補強フィラーなし)を硬化させることができる。本明細書で用いられる場合の「高強度」という用語は、製品が、少なくとも200,000psiの曲げ弾性率、少なくとも5,000psiの曲げ強さ、又は少なくとも1.0MPa*m1/2の最大応力拡大係数Kmax、及び少なくとも300J/m2の全破壊仕事Wfを有することを意味する。より好ましくは、製品は、少なくとも300,000psiの曲げ弾性率、少なくとも8,000psiの曲げ強さ、又は少なくとも1.9MPa*m1/2の最大応力拡大係数Kmax、及び少なくとも900J/m2の全破壊仕事Wfを有する。最も好ましくは、製品は、少なくとも350,000psiの曲げ弾性率、少なくとも12,000psiの曲げ強さ、又は少なくとも2.2MPa*m1/2の最大応力拡大係数Kmax、及び少なくとも1200J/m2の全破壊仕事Wfを有する。本明細書で用いられる場合の「曲げ強さ及び曲げ弾性率」は、ASTM D790方法(1997)に従って測定した特性を指す。本明細書で用いられる場合の最大応力拡大係数Kmax及び全破壊仕事Wfは、ISO20795-1方法(2012)に従って測定した特性を指す。
【0044】
以下の実施例で説明するように、3Dプリンティングデバイスで用いるためのプリント可能な重合性の高強度/靭性の材料の種々の調製物を調製することができる。調製物は、それらを容易に取り扱うことができ且つ硬化したデバイスを液体レジン浴(リザーバ又は槽)から容易に取り出すことができるように、十分に低い粘度を有することが重要である。同時に、調製物は、生物適合性であって、十分な機械的強度及び一体性を有する歯科製品を生産することができなければならない。異なる用途のための種々のシェードを有する、いくつかの流動性のプリント可能な重合性の高強度/靭性の材料を調製した。流動性のプリント可能な重合性の高強度/靭性の材料は、種々の3Dオブジェクトを形成するために上手く局所的に硬化された。いくつかの選択された実施例が実施例の項目に示される。本発明の材料は、このように層ごとに、時間又は/及び強度的に、又はそれらの組み合わせで硬化され、3Dプリンタの浴内の残りの液体レジンから分離することができる3D歯科オブジェクトを形成した。さらに、3D歯科オブジェクトから未硬化のレジンを除去し、最終的に硬化させるために、洗浄溶媒(例えば、酢酸エチル、アルコール、アセトン、THF、ヘプタンなど、又はそれらの組み合わせ)が用いられてよい。それらの機械的特性及び物理的特性並びにそれらの性能を強化するために熱処理が用いられてよい。最終硬化の前に空気バリアコーティング、シーラ、又は本発明の高強度/靭性のシーラが用いられてよい。歯科デバイスの最終硬化又は製造環境での歯科デバイス(例えば、義歯の歯、義歯床、クラウン及びブリッジ、スプリント、矯正装置、アライナーなど)の大量生産のために、密閉されたビルディングチャンバ又は不活性ガスブランケット内で不活性雰囲気が用いられてよい。
【0045】
代替的に、本発明の材料は、3Dオブジェクトをビルドするための他の手段により作製することができる。さらに、本発明で開発されたレジン系は、航空宇宙、アニメーション及びエンターテイメント、アーキテクチャ及び芸術、自動車、消費財及び包装、教育、電子装置、補聴器、スポーツ用品、宝飾品、医療、製造などの他の産業で用いることができる。
【0046】
実施例
実施例1
オリゴマーの調製
反応器に乾燥窒素流下で1176グラムのトリメチル-1,6-ジイソシアネートヘキサン(5.59mol)及び1064グラムのビスフェノールAプロポキシレート(3.09mol)を入れ、窒素陽圧下で約65℃に加熱した。この反応混合物に、10滴の触媒ジブチル錫ジラウレートを加えた。反応混合物の温度を65℃から140℃の間の温度に約70分間維持し、その後さらに10滴の触媒ジブチル錫ジラウレートを加えた。粘稠なペースト状のイソシアネート基が末端に導入された中間生成物が形成され、これを100分間攪拌した。この中間生成物に、662グラム(5.09mol)の2-ヒドロキシエチルメタクリレート及び抑制剤としての7.0グラムのBHTを、反応温度を68℃から90℃の間の温度に維持しながら70分間にわたって加えた。70℃で約5時間の攪拌後に、加熱をオフにし、反応器から半透明の可撓性の固体としてオリゴマーを収集し、乾燥雰囲気内で保管した。
【0047】
実施例2
ウレタンモノマー(UCDPMAA)の調製
500mLフラスコに乾燥窒素流下で38.8グラム(0.200mol)の1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンを入れ、窒素陽圧下で約60℃に加熱した。この反応混合物に、3滴の触媒ジブチル錫ジラウレートを加えた。22.7グラムの2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレートと、26.6グラム(0.204mol)の2-ヒドロキシエチルメタクリレートと、11.5グラム(0.099mol)の2-ヒドロキシエチルアクリレートと、抑制剤としての0.10グラムのBHTとの混合物を、反応温度を56℃から78℃の間の温度に維持しながら70分間にわたって加えた。約4時間の攪拌後に、加熱をオフにし、フラスコから粘稠な液体としてモノマーを収集し、乾燥雰囲気内で保管した。
【0048】
実施例3
有機フィラー材料
実施例1の手順に従って作製した30.65グラムのオリゴマーと、20グラムの実施例2の化合物と、40グラムのメチルメタクリレートと、9グラムのゴム耐衝撃性改良剤S2006(三菱レイヨン株式会社から)と、0.35グラムの2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(BASFにより作製されたLucirin TPO)との液体混合物を85℃で攪拌することによって重合性の歯科材料を調製した。この材料を光硬化し、その後、約1~約150マイクロメートルの範囲内の平均粒径を有する粒子を含有する微粒子粉末を形成するべく粉砕した。代替的に、これらのポリマービーズは、懸濁液重合又はエマルジョン重合により作製することができる。
【0049】
実施例4
複合フィラー材料
実施例1の手順に従って作製した5.65グラムのオリゴマーと、12.0グラムの実施例2の化合物と、6.0グラムのトリエチレングリコールジメタクリレートと、約0.1~約1.5マイクロメートルの平均粒径を有する62グラムのシラン化バリウムアルミノフルオロシリケートガラス粒子BAFGと、約1~約10マイクロメートルの平均粒径を有する14グラムのシラン化バリウムアルミノフルオロシリケートガラス粒子BAFGと、0.10グラムの2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(BASFにより作製されたLucirin TPO)と、13.3%のカンファーキノン(CQ)、23.0%のメタクリル酸(MAA)、1.3%のブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、46%のN,N-ジメチルアミノエチルネオペンチルアクリレート、及び16.3%のγ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを含有する0.25グラムの可視光開始溶液との液体混合物を85℃で攪拌することによって重合性の歯科複合材料を調製した。この材料を光硬化し、その後、約1~約150マイクロメートルの範囲内の平均粒径を有する粒子を含有する微粒子粉末を形成するべく粉砕した。代替的に、これらの複合ビーズは、懸濁液重合又はエマルジョン重合により作製することができる。
【0050】
プリント可能な重合性の組成物
歯科オブジェクトを製作するために3Dプリンタの3Dビルディングレジン浴内でプリント可能な重合性の組成物を用いる。これらの組成物は、アクリレート又はメタクリレートモノマー又はオリゴマー、ポリマー、フィラー、触媒、種々の調整剤、抗菌剤、UV吸収剤、チキソトロピー剤、可塑剤、抗真菌剤、ファイバ、耐衝撃性改良剤、顔料、安定剤、及び光硬化性開始剤などを含有してよい。好ましくは、これらのレジンは、周囲温度又は高い温度で流動性の液体を形成し、本発明で開示された方法を用いて3Dオブジェクトを形成するのに異なるレジンに必要とされる温度で迅速に硬化することになる。これは結果的に、即座に形成される、形状が安定している三次元オブジェクトをもたらす。
【0051】
実施例5
歯科材料
実施例1の手順に従って作製した35グラムのオリゴマーと、46グラムのメチルメタクリレート(MMA)と、10グラムの2-フェノキシエチルアクリレート(SartomerからのSR339)と、7.5グラムのゴム耐衝撃性改良剤S2006(三菱レイヨン株式会社から)と、0.5グラムの2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(BASFから入手可能なLucirin TPO)と、13.3%のカンファーキノン(CQ)、23.0%のメタクリル酸(MAA)、1.3%のブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、46%のN,N-ジメチルアミノエチルネオペンチルアクリレート、及び16.3%のγ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを含有する1.0グラムの可視光開始溶液との液体混合物を周囲温度で攪拌することによって重合性の歯科材料を調製した。
【0052】
実施例6
歯科材料
実施例1の手順に従って作製した35グラムのオリゴマーと、48.5グラムのメチルメタクリレート(MMA)と、5グラムのGenomer 4256(Rahnから)と、10.0グラムのゴム耐衝撃性改良剤S2006(三菱レイヨン株式会社から)と、0.5グラムの2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(BASFから入手可能なLucirin TPO)と、13.3%のカンファーキノン(CQ)、23.0%のメタクリル酸(MAA)、1.3%のブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、46%のN,N-ジメチルアミノエチルネオペンチルアクリレート、及び16.3%のγ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを含有する1.0グラムの可視光開始溶液との液体混合物を周囲温度で攪拌することによって重合性の歯科材料を調製した。
【0053】
実施例7
歯科材料
実施例1の手順に従って作製した35グラムのオリゴマーと、30グラムのメチルメタクリレート(MMA)と、16グラムのエチルメタクリレート(EMA)と、10グラムの2-フェノキシエチルアクリレート(SartomerからのSR339)と、7.5グラムのゴム耐衝撃性改良剤S2006(三菱レイヨン株式会社から)と、1.0グラムの2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(BASFから入手可能なLucirin TPO)と、13.3%のカンファーキノン(CQ)、23.0%のメタクリル酸(MAA)、1.3%のブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、46%のN,N-ジメチルアミノエチルネオペンチルアクリレート、及び16.3%のγ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを含有する0.5グラムの可視光開始溶液との液体混合物を周囲温度で攪拌することによって重合性の歯科材料を調製した。
【0054】
実施例8
歯科材料
実施例1の手順に従って作製した30グラムのオリゴマーと、53グラムのメチルメタクリレート(MMA)と、5グラムのSR368*[Sartomerからの、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート]と、9グラムのゴム耐衝撃性改良剤S2006(三菱レイヨン株式会社から)と、2.0グラムの2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(BASFから入手可能なLucirin TPO)と、13.3%のカンファーキノン(CQ)、23.0%のメタクリル酸(MAA)、1.3%のブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、46%のN,N-ジメチルアミノエチルネオペンチルアクリレート、及び16.3%のγ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを含有する1.0グラムの可視光開始溶液との液体混合物を周囲温度で攪拌することによって重合性の歯科材料を調製した。
【0055】
実施例9
歯科材料
この実施例の調製物は、空気阻害層なしに迅速に硬化させることができる、歯科デバイス上に適用するための高強度/靭性のシーラとして用いることができる。30.0グラムのSR368*[Sartomerからの、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート]と、52.25グラムのメチルメタクリレート(MMA)と、9.0グラムのゴム耐衝撃性改良剤S2006(三菱レイヨン株式会社から)と、3.5グラムのSR399*(Sartomerからの、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート)と、1.0グラムのBKY-UV3530(ポリエーテル変性アクリル官能性ポリジメチルシロキサン)と、3.5グラムの2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(BASFから入手可能なLucirin TPO)と、13.3%のカンファーキノン(CQ)、23.0%のメタクリル酸(MAA)、1.3%のブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、46%のN,N-ジメチルアミノエチルネオペンチルアクリレート、及び16.3%のγ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを含有する0.75グラムの可視光開始溶液との液体混合物を周囲温度で攪拌することによって重合性の歯科材料を調製した。
【0056】
実施例10
歯科材料
実施例1の手順に従って作製した35グラムのオリゴマーと、16グラムのメチルメタクリレート(MMA)と、20グラムのシクロヘキシルメタクリレート(CHMA)と、20グラムの2-フェノキシエチルアクリレート(SartomerからのSR339)と、7.5グラムのゴム耐衝撃性改良剤S2006(三菱レイヨン株式会社から)と、1.0グラムの2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(BASFから入手可能なLucirin TPO)と、13.3%のカンファーキノン(CQ)、23.0%のメタクリル酸(MAA)、1.3%のブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、46%のN,N-ジメチルアミノエチルネオペンチルアクリレート、及び16.3%のγ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを含有する0.5グラムの可視光開始溶液との液体混合物を周囲温度で攪拌することによって重合性の歯科材料を調製した。
【0057】
実施例11
歯科材料
実施例1の手順に従って作製した35グラムのオリゴマーと、16グラムのエチルメタクリレート(EMA)と、20グラムのシクロヘキシルメタクリレート(CHMA)と、20グラムの2-フェノキシエチルアクリレート(SartomerからのSR339)と、7.5グラムのゴム耐衝撃性改良剤S2006(三菱レイヨン株式会社から)と、1.0グラムの2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(BASFから入手可能なLucirin TPO)と、13.3%のカンファーキノン(CQ)、23.0%のメタクリル酸(MAA)、1.3%のブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、46%のN,N-ジメチルアミノエチルネオペンチルアクリレート、及び16.3%のγ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを含有する0.5グラムの可視光開始溶液との液体混合物を周囲温度で攪拌することによって重合性の歯科材料を調製した。
【0058】
実施例12
歯科材料
実施例1の手順に従って作製した35グラムのオリゴマーと、54.5グラムのメチルメタクリレート(MMA)と、7.5グラムのゴム耐衝撃性改良剤S2006(三菱レイヨン株式会社から)と、2.0グラムの2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(BASFから入手可能なLucirin TPO)と、13.3%のカンファーキノン(CQ)、23.0%のメタクリル酸(MAA)、1.3%のブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、46%のN,N-ジメチルアミノエチルネオペンチルアクリレート、及び16.3%のγ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを含有する1.0グラムの可視光開始溶液との液体混合物を周囲温度で攪拌することによって重合性の歯科材料を調製した。
【0059】
実施例13
歯科材料
実施例1の手順に従って作製した35.0グラムのオリゴマーと、52.0グラムのメチルメタクリレート(MMA)と、10.0グラムのSR368*[Sartomerからの、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート]と、2.0グラムの2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(BASFから入手可能なLucirin TPO)と、13.3%のカンファーキノン(CQ)、23.0%のメタクリル酸(MAA)、1.3%のブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、46%のN,N-ジメチルアミノエチルネオペンチルアクリレート、及び16.3%のγ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを含有する1.0グラムの可視光開始溶液との液体混合物を周囲温度で攪拌することによって重合性の歯科材料を調製した。
【0060】
実施例14
歯科材料
実施例1の手順に従って作製した35.0グラムのオリゴマーと、52.0グラムのメチルメタクリレート(MMA)と、10.0グラムのエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)と、2.0グラムの2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(BASFから入手可能なLucirin TPO)と、13.3%のカンファーキノン(CQ)、23.0%のメタクリル酸(MAA)、1.3%のブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、46%のN,N-ジメチルアミノエチルネオペンチルアクリレート、及び16.3%のγ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを含有する1.0グラムの可視光開始溶液との液体混合物を周囲温度で攪拌することによって重合性の歯科材料を調製した。
【0061】
実施例15
歯科材料
実施例1の手順に従って作製した35.0グラムのオリゴマーと、52.0グラムのメチルメタクリレート(MMA)と、10.0グラムのシクロヘキシルメタクリレート(CHMA)と、2.0グラムの2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(BASFから入手可能なLucirin TPO)と、13.3%のカンファーキノン(CQ)、23.0%のメタクリル酸(MAA)、1.3%のブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、46%のN,N-ジメチルアミノエチルネオペンチルアクリレート、及び16.3%のγ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを含有する1.0グラムの可視光開始溶液との液体混合物を周囲温度で攪拌することによって重合性の歯科材料を調製した。
【表1】
【0062】
実施例16(仮想例)
進歩したSLAベースの3Dプリンタ
市販のSLAベースの3Dプリンティングマシンをレーザビームがチルトした状態に改造し、レーザ光源を硬化チャンバの周りで回転することができるように改造した。
【0063】
実施例17(仮想例)
進歩したDLPベースの3Dプリンタ
市販のDLPベースの3Dプリンティングマシンを、硬化チャンバの周りで回転することができるように改造された、硬化チャンバの方へチルトしたSLAベースのレーザビームの追加により改造した。
【0064】
実施例18(仮想例)
進歩したSLAベースの3Dプリンタ
市販のSLAベースの3Dプリンティングマシンを、硬化チャンバの周りで回転することができるように改造された、硬化チャンバの方へチルトした別のSLAベースのレーザビームの追加により改造した。
【0065】
実施例19(仮想例)
進歩したSLAベースの3Dプリンタ
進歩したSLAベースの3Dプリンティングマシンを、硬化チャンバの周りで回転することができ、且つ、異なる深さに硬化する必要に応じてその強度及び照射時間を調節することができる、硬化チャンバの方へチルトした少なくとも1つのSLAベースのレーザビームを備えるように作製した。レーザビーム強度及び硬化時間は、材料の硬化深さ及びシェードの必要に基づいて調節されることになる。
【0066】
実施例20(仮想例)
歯科製品の製作
実施例5の義歯床のシェード付きの材料が、顔料を添加して作製され、実施例13の象牙質及びエナメル質のシェード付きの材料が、顔料を添加して作製される。それらを3つの別個のリザーバに充填する。実施例16のSLAベースの3Dプリンタを用い、レーザビームが、義歯床又はいくつかの義歯床を形成するべく、各層の形状を描き出し、上記の義歯床のシェード付きの液体レジンをコンピュータによりデザイン及び制御される場合の層的な様態に硬化させる。この形成された義歯床(単数又は複数)を、この義歯床浴から取り出し、洗浄し、乾燥させる。この形成された義歯床(単数又は複数)を、上記の調製した象牙質のシェード付きの液体レジン浴に入れ、予めマークされたロケータ及び義歯デザインに従って位置決めする。チルトしたレーザビームを義歯床の周りで回転させ、各象牙質層の形状を描き出し、義歯床上に象牙質形状を形成するべく上記の象牙質のシェード付きの液体レジンをコンピュータによりデザイン及び制御される場合の層的な様態に硬化させる。形成された人工歯の象牙質部分を有する義歯床(単数又は複数)をこの浴から取り出す。溶媒ですすぎ、乾燥させた後で、人工歯の象牙質部分を有する義歯床(単数又は複数)をエナメル質浴に浸漬し、予めマークされたロケータ及び義歯デザインに従って位置決めする。チルトしたレーザビームを義歯床の周りで回転させ、各エナメル質層の形状を描き出し、象牙質上にエナメル質形状を形成するべく上記のエナメル質のシェード付きの液体レジンをコンピュータによりデザイン及び制御される場合の層的な様態に硬化させる。義歯床上の人工義歯の歯のビルドが完了すると、浴から取り出し、洗浄し、最終的に硬化させる。研磨され仕上げられた後で、義歯は患者へ送達される。このプロセスは、義歯及び他の歯科デバイスを大量生産するのに用いることができる。
【0067】
実施例21(仮想例)
歯科製品の製作
実施例6の義歯床のシェード付きの材料が、顔料を添加して作製され、実施例15の象牙質のシェード付きの材料及び実施例14のエナメル質のシェード付きの材料が、顔料を添加して作製される。それらを3つの別個のリザーバに充填する。実施例17のDLP/SLAベースの3Dプリンタを用い、義歯床又はいくつかの義歯床を形成するべく、順次ボクセル平面を第1の義歯床液体レジンに投影し、上記の義歯床のシェード付きの液体レジンをコンピュータによりデザイン及び制御される場合の層的な様態に硬化させる。この形成された義歯床(単数又は複数)を、この義歯床浴から取り出し、洗浄し、乾燥させる。この形成された義歯床(単数又は複数)を、上記の調製した象牙質のシェード付きの液体レジン浴に入れ、予めマークされたロケータ及び義歯デザインに従って位置決めする。この3Dプリンタのチルトしたレーザビームを義歯床の周りで回転させ、各象牙質層の形状を描き出し、義歯床上に象牙質形状を形成するべく上記の象牙質のシェード付きの液体レジンをコンピュータによりデザイン及び制御される場合の層的な様態に硬化させる。形成された人工歯の象牙質部分を有する義歯床(単数又は複数)をこの浴から取り出す。溶媒ですすぎ、乾燥させた後で、人工歯の象牙質部分を有する義歯床(単数又は複数)をエナメル質浴に浸漬し、予めマークされたロケータ及び義歯デザインに従って位置決めする。チルトしたレーザビームを義歯床の周りで回転させ、各エナメル質層の形状を描き出し、象牙質上にエナメル質形状を形成するべく上記のエナメル質のシェード付きの液体レジンをコンピュータによりデザイン及び制御される場合の層的な様態に硬化させる。義歯床上の人工義歯の歯のビルドが完了すると、浴から取り出し、洗浄し、最終的に硬化させる。研磨され仕上げられた後で、義歯は患者へ送達される。このプロセスは、義歯、人工歯、クラウン及びブリッジ、及び他の歯科デバイスを大量生産するのに用いることができる。
【0068】
実施例22(仮想例)
歯科製品の製作
2つの象牙質及び1つのエナメル質のシェード付きの材料が、実施例15及び14の調製物への顔料を添加して作製される。それらを3つの別個のリザーバに充填する。実施例18のSLAベースの3Dプリンタを用い、2つのレーザビームが、人工歯の第1の象牙質部分を形成するべくコンピュータにより制御される場合の層的な様態に各層の形状をトレースアウトする。形成された人工歯の第1の象牙質部分をこの浴から取り出す。溶媒ですすぎ、乾燥させた後で、これらの第1の象牙質部分を第2の象牙質レジン浴に浸漬し、予めマークされたロケータ及び義歯デザインに従って位置決めする。改造した3Dプリンタのオリジナルのレーザビーム及び第1の象牙質部分の周りで回転する追加した回転可能なチルトしたレーザビームが、各第2の象牙質層の形状を描き出し、2つの異なるシェードを有する最終象牙質形状を形成するべく上記の第2の象牙質のシェード付きの液体レジンをコンピュータによりデザイン及び制御される場合の層的な様態に硬化させる。形成された人工歯の象牙質部分をこの浴から取り出す。溶媒ですすぎ、乾燥させた後で、人工歯の象牙質部分をエナメル質浴に浸漬し、予めマークされたロケータに従って位置決めする。改造した3Dプリンタのオリジナルのレーザビーム及び象牙質部分の周りで回転する追加した回転可能なチルトしたレーザビームが、各エナメル質層の形状を描き出し、最終人工歯を得るために象牙質部分上にエナメル質形状を形成するべく上記のエナメル質のシェード付きの液体レジンをコンピュータによりデザイン及び制御される場合の層的な様態に硬化させる。最後に、人工歯を浴から取り出し、洗浄し、最終的に硬化させる。研磨され仕上げられた後で、これらの人工歯は、義歯及び他の歯科デバイスを作製するのに用いることができる。このプロセスは、義歯、クラウン及びブリッジ、及び他の歯科デバイスを大量生産するのに用いることができる。
【0069】
実施例23(仮想例)
歯科製品の製作
実施例15の材料をリザーバに充填する。リラインする必要があった義歯をスキャンし、このロケータ付きのリザーバに浸漬した。実施例19のSLAベースの3Dプリンタを用い、レーザビームが、各層の形状を、特に第1の層のスポット毎の厚さに基づいて層的な様態で描き出し、この場合、リラインされた義歯を形成するべくコンピュータにより制御される場合の異なるスポットで異なる厚さを有する層に従って光の強さ及び照射時間が変化する。
【0070】
実施例24(仮想例)
歯科製品の製作
実施例12の義歯床のシェード付きの材料が、顔料を添加して作製され、実施例14の象牙質のシェード付きの材料及び実施例13のエナメル質のシェード付きの材料が、顔料を添加して作製される。それらを3つの別個のリザーバに充填する。実施例19のSLAベースの3Dプリンタを用い、義歯床又はいくつかの義歯床を形成するべく、レーザビームを義歯床のシェード付きの液体レジンへ照射し、上記の義歯床のシェード付きの液体レジンをコンピュータによりデザイン及び制御される場合の層的な様態に硬化させる。この形成された義歯床を、この義歯床浴から取り出し、洗浄し、乾燥させる。この形成された義歯床(単数又は複数)を、上記の調製した象牙質のシェード付きの液体レジン浴に入れ、予めマークされたロケータ及び義歯デザインに従って位置決めする。この3Dプリンタのレーザビームが、各象牙質層の形状を描き出し、特に第1の層のスポット毎の厚さに基づいて義歯床上に象牙質形状を形成するべく上記の象牙質のシェード付きの液体レジンをコンピュータによりデザイン及び制御される場合の層的な様態に硬化させ、この場合、光の強さ及び照射時間が適宜変化する。比較的厚い第1の象牙質層は、適切に硬化される必要があり得る。形成された人工歯の象牙質部分を有する義歯床(単数又は複数)をこの浴から取り出す。溶媒ですすぎ、乾燥させた後で、人工歯の象牙質部分を有する義歯床(単数又は複数)をエナメル質浴に浸漬し、予めマークされたロケータ及び義歯デザインに従って位置決めする。この3Dプリンタのレーザビームは、各エナメル質層の形状を描き出し、象牙質上にエナメル質形状を形成するべく上記のエナメル質のシェード付きの液体レジンをコンピュータによりデザイン及び制御される場合の層的な様態に硬化させ、この場合、光の強さ及び照射時間が適宜変化する。義歯床上の人工義歯の歯のビルドが完了すると、浴から取り出し、洗浄し、最終的に硬化させる。研磨され仕上げられた後で、義歯は患者へ送達される。このプロセスは、義歯、人工歯、クラウン及びブリッジ、及び他の歯科デバイスを大量生産するのに用いることができる。