IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エスエイチピーピー グローバル テクノロジーズ べスローテン フェンノートシャップの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】3D印刷耐熱性支持材
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/118 20170101AFI20220203BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20220203BHJP
   B29C 64/40 20170101ALN20220203BHJP
【FI】
B29C64/118
B33Y70/00
B29C64/40
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019227354
(22)【出願日】2019-12-17
(65)【公開番号】P2020121554
(43)【公開日】2020-08-13
【審査請求日】2020-04-14
(31)【優先権主張番号】62/781,266
(32)【優先日】2018-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】19154776.9
(32)【優先日】2019-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521320704
【氏名又は名称】エスエイチピーピー グローバル テクノロジーズ べスローテン フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】マルビカ ビハリ
(72)【発明者】
【氏名】ロバート ラッセル ガルーチ
(72)【発明者】
【氏名】ユハ-マッティ レヴァサルミ
(72)【発明者】
【氏名】ポール ディーン シバート
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/191150(WO,A1)
【文献】特開2000-147202(JP,A)
【文献】特表2017-522431(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0226340(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第106661318(CN,A)
【文献】特開2005-029792(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0004296(US,A1)
【文献】特開2015-117307(JP,A)
【文献】国際公開第2018/049365(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00 - 64/40
B33Y 10/00 - 99/00
C08K 3/00 - 13/08
C08L 1/00 -101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3D印刷用フィラメントを含む製品であって、前記3D印刷用フィラメントは、ビスフェノールイソホロンカーボネート単位とビスフェノールAカーボネート単位とを含む非晶質熱可塑性樹脂を含み、前記ビスフェノールイソホロンカーボネート単位は、前記非晶質熱可塑性樹脂中の前記ビスフェノールAカーボネート単位と前記ビスフェノールイソホロンカーボネート単位との合計の30~50モル%であり、前記非晶質熱可塑性樹脂のガラス転移温度が165℃~200℃であり;
前記非晶質熱可塑性樹脂は、
(a)(1)ビスフェノールAカーボネート単位とビスフェノールイソホロンカーボネート単位とのコポリカーボネートと、
(2)ビスフェノールAポリカーボネートホモポリマーと、を含むか、あるいは
(b)ポリカーボネート樹脂と高粘度シリコーンとを合わせた質量に対して、
(1)(i)ビスフェノールAカーボネート単位とビスフェノールイソホロンカーボネート単位とのコポリカーボネート、またはBPIポリカーボネートホモポリマーと、
(ii)任意選択的にビスフェノールAポリカーボネートホモポリマーと、を含むポリカーボネート樹脂を95.5~99.5質量%と、
(2)25℃での動粘性率が600,000~2000万cStである高粘度シリコーンを0.5~4.5質量%と、を含み、
前記高粘度シリコーンは、前記ポリカーボネート樹脂と非混和性であることを特徴とする製品。
【請求項2】
前記非晶質熱可塑性樹脂が、ポリカーボネート樹脂と高粘度シリコーンとを合わせた質量に対して、
(1)(i)ビスフェノールAカーボネート単位とビスフェノールイソホロンカーボネート単位とのコポリカーボネート、またはBPIポリカーボネートホモポリマーと、
(ii)任意選択的にビスフェノールAポリカーボネートホモポリマーと、を含むポリカーボネート樹脂を95.5~99.5質量%と、
(2)25℃での動粘性率が600,000~2000万cStである高粘度シリコーンを0.5~4.5質量%と、を含み、
前記高粘度シリコーンは、ポリカーボネート樹脂と非混和性である請求項1に記載の製品。
【請求項3】
前記高粘度シリコーンが、
(a)ボロ-シリコーンゴムを60~80質量%と、
(b)ヒュームド・シリカを20~40質量%と、を含む請求項1または2に記載の製品。
【請求項4】
前記3D印刷用フィラメントが、
(a)ビスフェノールイソホロンとビスフェノールAとのコポリカーボネート中のビスフェノールイソホロン単位が、前記コポリカーボネート中のビスフェノールA単位とビスフェノールイソホロン単位との合計の55~65モル%であるビスフェノールイソホロンとビスフェノールAとのコポリカーボネートを67~70質量部と、
(b)直鎖ビスフェノールAポリカーボネートを23~26質量部と,
(c)分岐状ビスフェノールAポリカーボネートと4~6質量部と、
(d)高粘度シリコーンを1.5~2.5質量部と、を含み、
前記高粘度シリコーンは、
(i)ボロ-シリコーンゴムを60~80質量%と、
(ii)ヒュームド・シリカを20~40質量%と、を含む請求項1に記載の製品。
【請求項5】
ビスフェノールイソホロンカーボネート単位とビスフェノールAカーボネート単位とを含む非晶質熱可塑性樹脂を含み、前記ビスフェノールイソホロンカーボネート単位が、前記非晶質熱可塑性樹脂中のビスフェノールAカーボネート単位とビスフェノールイソホロンカーボネート単位との合計の30~50モル%であり、前記非晶質熱可塑性樹脂のガラス転移温度が165℃~200℃である支持構造と、
第2の熱可塑性樹脂を含む3次元モデルと、を含み
前記第2の熱可塑性樹脂および高熱樹脂が同じではなく;
前記支持構造の表面の少なくとも一部が、前記3次元モデルの表面の少なくとも一部に接着されており;
前記非晶質熱可塑性樹脂は、
(a)(1)ビスフェノールAカーボネート単位とビスフェノールイソホロンカーボネート単位とのコポリカーボネートと、
(2)ビスフェノールAポリカーボネートホモポリマーと、を含むか、あるいは
(b)ポリカーボネート樹脂と高粘度シリコーンとを合わせた質量に対して、
(1)(i)ビスフェノールAカーボネート単位とビスフェノールイソホロンカーボネート単位とのコポリカーボネート、またはBPIポリカーボネートホモポリマーと、
(ii)任意選択的にビスフェノールAポリカーボネートホモポリマーと、を含むポリカーボネート樹脂を95.5~99.5質量%と、
(2)25℃での動粘性率が600,000~2000万cStである高粘度シリコーンを0.5~4.5質量%と、を含み
前記高粘度シリコーンは、前記ポリカーボネート樹脂と非混和性である製品。
【請求項6】
前記高粘度シリコーンが、
(a)ボロ-シリコーンゴムを60~80質量%と、
(b)ヒュームド・シリカを20~40質量%と、を含む請求項5に記載の製品。
【請求項7】
前記支持構造が、
(a)ビスフェノールイソホロンとビスフェノールAとのコポリカーボネート中のビスフェノールイソホロン単位が、前記コポリカーボネート中のビスフェノールA単位とビスフェノールイソホロン単位との合計の55~65モル%であるビスフェノールイソホロンとビスフェノールAとのコポリカーボネートを67~70質量部と、
(b)直鎖ビスフェノールAポリカーボネートを23~26質量部と,
(c)分岐状ビスフェノールAポリカーボネートと4~6質量部と、
(d)高粘度シリコーンを1.5~2.5質量部と、を含み、
前記高粘度シリコーンは、
(i)ボロ-シリコーンゴムを60~80質量%と、
(ii)ヒュームド・シリカを20~40質量%と、を含む請求項5に記載の製品。
【請求項8】
前記第2の熱可塑性樹脂が、ポリエーテルイミドまたはポリスルホンを含む請求項5~7のいずれか1項に記載の製品。
【請求項9】
第1のフィラメントの一部を溶融して、溶融状態の第1の熱硬化性材料を形成し、3次元モデルを定めるように所定のパターンで前記溶融状態の第1の熱硬化性材料を分注するステップであって、前記第1の熱硬化性材料は、ポリエーテルイミドまたはポリスルホンを含むステップと;
第2のフィラメントの一部を溶融して、溶融状態の第2の熱硬化性材料を形成し、前記第1の熱硬化性材料の分注と連携して、3次元モデルのための支持構造を定めるように前記溶融状態の第2の熱硬化性材料を分注するステップと;を含む溶融フィラメント製造方法であって、
前記第2の熱硬化性材料は、ビスフェノールイソホロンカーボネート単位とビスフェノールAカーボネート単位とを含む非晶質熱可塑性樹脂を含み、前記ビスフェノールイソホロンカーボネート単位は、前記非晶質熱可塑性樹脂中の前記ビスフェノールAカーボネート単位と前記ビスフェノールイソホロンカーボネート単位との合計の30~50モル%であり;
前記非晶質熱可塑性樹脂のガラス転移温度が165℃~200℃であることを特徴とする溶融フィラメント製造方法。
【請求項10】
前記非晶質熱可塑性樹脂は、
(a)(1)ビスフェノールAカーボネート単位とビスフェノールイソホロンカーボネート単位とのコポリカーボネートと、
(2)ビスフェノールAポリカーボネートホモポリマーと、を含むか、あるいは
(b)ポリカーボネート樹脂と高粘度シリコーンとを合わせた質量に対して、
(1)(i)ビスフェノールAカーボネート単位とビスフェノールイソホロンカーボネート単位とのコポリカーボネート、またはBPIポリカーボネートホモポリマーと、
(ii)任意選択的にビスフェノールAポリカーボネートホモポリマーと、を含むポリカーボネート樹脂を95.5~99.5質量%と、
(2)25℃での動粘性率が600,000~2000万cStである高粘度シリコーンを0.5~4.5質量%と、を含み、
前記高粘度シリコーンは、前記ポリカーボネート樹脂と非混和性である請求項9に記載の溶融フィラメント製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
溶融フィラメント製造(「FFF」)は溶融物堆積法としても知られており、FFFプリンタが熱可塑性プラスチックビルド材料の層を堆積させて3Dモデルを創製する付加製造技術である。印刷する間、それぞれの新しい層は、その真下の層によって支持されなければならない。突出または橋かけなどのために、印刷されるべきモデルが、その望ましい形状を維持するのに支持を必要とする場合、モデルが十分に冷えてその構造を維持するまでモデルを支持するために、支持構造の印刷が必要となる可能性がある。
【背景技術】
【0002】
FFFプロセスでは、ビルド材料および支持材が、原料として、フィラメント形態でFFFプリンタに供給される。これらのビルドおよび支持材のフィラメントは、その後、別々に加熱されてそれぞれ液化し、次いで、別々のノズルでそれらを押し出して、モデルおよび支持構造の印刷を可能にする。
【0003】
支持構造は、その後、完成したモデルから、物理的な分離、溶解またはそれら2つの組み合わせによって除去される。
【0004】
理想的な支持材は、多くの異なる、時に矛盾する要件を満たさなければならない。そのような要件としては、容易に押し出されて高度に正確なフィラメントを形成する能力、印刷されて支持構造を形成する能力、および印刷中にビルド材料の支持を可能にするのに十分であるが、最終のモデルからの支持構造の除去を妨げるか、またはモデルからの支持構造の除去の間にそれを損傷するほど大きくはないビルド材料に対する親和性が挙げられる。
【0005】
ポリエーテルイミド樹脂などの高い耐熱性を有するビルド材料を用いて印刷するためには、印刷温度を上昇させることが、これらのビルド材料の印刷に必要である。また、これらの高い耐熱性のビルド材料で印刷する場合、支持材は、これらの温度上昇に対して十分に耐性を有し、十分な剛性を維持して、ビルド材料への構造的な支持をもたらすものでなければならない。これらの特性の改善したバランスを示す耐熱性支持材が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
一実施形態は、3D印刷用フィラメントを含む製品である。該フィラメントは、ビスフェノールイソホロンカーボネート単位とビスフェノールAカーボネート単位とを含む非晶質熱可塑性樹脂を含み、ビスフェノールイソホロンカーボネート単位が、樹脂中のビスフェノールAカーボネート単位とビスフェノールイソホロンカーボネート単位との合計の30~50モル%であり、樹脂のガラス転移温度(Tg)が165℃~200℃である。
【0007】
別の実施形態は製品である。該製品は、(a)ビスフェノールイソホロンカーボネート単位とビスフェノールAカーボネート単位とを含む非晶質熱可塑性樹脂を含み、ビスフェノールイソホロンカーボネート単位が、樹脂中のビスフェノールAカーボネート単位とビスフェノールイソホロンカーボネート単位との合計の30~50モル%であり、樹脂のTgが165℃~200℃である支持構造と、(b)ポリエーテルイミドを含む3次元モデルと、を含み、支持構造の表面の少なくとも一部が、3次元モデルの表面の少なくとも一部に接着されている。
【0008】
さらに別の実施形態は、溶融フィラメント製造方法である。該方法は、第1のフィラメントの一部を溶融して、溶融状態の第1の熱硬化性材料を形成し、3次元物を定めるように所定のパターンで溶融状態の第1の熱硬化性材料を分注するステップと;第2のフィラメントの一部を溶融して、溶融状態の第2の熱硬化性材料を形成し、第1の熱硬化性材料の分注と連携して、3次元物のための支持構造を定めるように溶融状態の第2の熱硬化性材料を分注するステップと;を含み、第1の熱硬化性材料はポリエーテルイミドを含み、第2の熱硬化性材料は、ビスフェノールイソホロンカーボネート単位とビスフェノールAカーボネート単位とを含む非晶質熱可塑性樹脂を含み、ビスフェノールイソホロンカーボネート単位が、樹脂中のビスフェノールAカーボネート単位とビスフェノールイソホロンカーボネート単位との合計の30~50モル%であり、樹脂のTgが165℃~200℃であり;第1の熱硬化性材料のガラス転移温度または融点は、第2の熱硬化性材料のTgの30℃以内の範囲内である。
【0009】
これらのおよび他の実施形態を以下に詳細に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書での用語は、以下の意味を有する。
【0011】
「a」または「an」は1つ以上を意味する。
【0012】
本明細書で、種々の炭化水素含有部分の炭素原子含量は、炭化水素含有部分中の炭素原子の最小数および最大数を指定する接頭辞によって示され得、例えば、接頭辞(C-C)アルキル、およびCa-bアルキルは、整数「a」~「b」個の炭素原子を含むアルキル部分を示す。したがって、例えば、(C-C)アルキルおよびC1-6アルキルは、1~6個の炭素原子のアルキル基を含有することを指す。
【0013】
本明細書で定義される置換基は、熱可塑性樹脂またはシリコーンの親鎖に結合している原子または基である。置換基は、一価または二価であり得る。
【0014】
架橋基、スペーサー、リンカーまたはジイル基は、分子または繰り返し単位の残部中の2つの他の異なる原子に単結合によって連結されている式を有する分子またはポリマーの繰り返し単位のいずれの部分である。
【0015】
「アルキル」は、直鎖または分岐状の脂肪族の、飽和または不飽和の一価置換基を示す。アルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ビニル、アリル、2-メチルプロペニル、2-ブテニル、1,3-ブタジエニル、エチニル、プロパルギル、および同種のものが挙げられる。
【0016】
本明細書で、用語「ヒドロカルビル」は、それ自体、または別の用語の接頭辞、接尾辞、またはフラグメントとして、炭素および水素のみを含む残基を指す。残基は、脂肪族または芳香族、直鎖、環式、二環式、分岐状、飽和、または不飽和であり得る。残基は、脂肪族、芳香族、直鎖、環式、二環式、分岐状、飽和、および不飽和炭化水素部分の組み合わせも含有する。しかしながら、ヒドロカルビル残基が置換されていると記載されている場合、残基は、任意選択的に、置換基残基の炭素員および水素員上に、またはそれらの上でヘテロ原子を含み得る。したがって、置換されていると具体的に記載されている場合、ヒドロカルビル残基は、1つ以上のカルボニル基、アミノ基、ヒドロキシル基、または同種のものも含み得るか、あるいはヒドロカルビル残基の骨格内にヘテロ原子を含み得る。
【0017】
「アルカンジイル」は、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレン、ノニレン、デシレン、およびそれらの異性体などの1~10個の炭素原子を有する二価脂肪族基の飽和または不飽和の架橋基を意味する。
【0018】
「アリール」は、単環式または多環式芳香族炭化水素基、例えば、アントラセニル、フルオレニル、ナフチル、フェナントレニル、フェニル、および同種のものを示す。
「アリーレン」は、単環式または多環式の芳香族炭化水素基から2個の核の水素原子を除去することによって得られるジラジカルを意味する。アリーレンの例としては、フェニレン、トリレン、キシリレン、ナフチレン、ジフェニリレンが挙げられる。
【0019】
「シクロアルキレン」は、1,3-シクロブチレン、1,3-シクロペンチレン、2-メチル-1,3-シクロペンチレン、2-エチル-1,3-シクロペンチレン、1,4-シクロヘキシレン、2-メチル-1,4-シクロヘキシレン、1,3-シクロヘプチレン、1,4-シクロヘプチレン、5-メチル-1,3-シクロヘプチレン、1,3-シクロオクチレン、5-メチル-1,3-シクロオクチレン、1,4-シクロオクチレン、および同種のものなどの単環式または多環式の脂環式の飽和または不飽和の二価の基を意味する。
【0020】
「シクロアルキリデン」は、二重結合によって分子の残余に結合した、単環式または多環式の、飽和または不飽和の、シクロアルキル基を意味する。シクロアルキル基についての本明細書に記載の定義および例示は、適切な改変によってシクロアルキリデン基にも適用される。
【0021】
「アルコキシ」は、コア構造に結合している酸素原子に結合した炭素原子の直鎖または分岐状の一価の飽和または不飽和脂肪族鎖を指す。アルコキシ基の例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、イソ-ブトキシ、および同種のものが挙げられる。
【0022】
「シクロアルキル」は、飽和または不飽和の単環式または多環式シクロアルキル基を指す。シクロアルキル基は、任意選択的に、ベンゼンなどの芳香族炭化水素に縮合して、インダニルおよび同種のものなどの縮合したシクロアルキル基を形成してもよい。シクロアルキル基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、および同種のものが挙げられる。
【0023】
「ハロゲン」または「ハロ」は、クロロ、ブロモ、フルオロ、およびヨードの原子および置換基を表す。
【0024】
本明細書で「溶融」は、非晶質ポリマーをそのガラス転移温度を超えて加熱すること、または、結晶性のポリマーについては、固相から液体相への相転移を引き起こすように加熱することを意味する。
【0025】
繰り返し単位または単位は、それ自体またはコポリマー中の他の繰り返し単位と共に、その繰り返しが、鎖に沿って繰り返し単位を共に連続して連結することによって、完全なポリマー鎖(末端基を除く)を生じるポリマーの一部を意味する。
【0026】
「置換された」は、分子上の水素原子が、異なる原子または分子で置換されていることを意味する。水素原子を置換する原子または分子が置換基とされる。
【0027】
本発明者らは、本明細書に記載の支持フィラメントおよび支持材料が、ポリエーテルイミドなどの耐熱性モデル材料の3D印刷を支持するのに有用であり、現在利用可能な支持材よりも印刷したモデルから容易に分離できることを決定した。
【0028】
一実施形態では、本発明の物品は、3D印刷のための支持構造の形成に有用なフィラメントを含む。典型的には、フィラメントは、標準偏差が±0.1mmである1~5mmの平均直径を有する。
【0029】
このフィラメントは、フィラメント中の熱可塑性樹脂とシリコーンとを組み合わせた質量に対して、Tgが165℃~200℃である非晶質熱可塑性樹脂を95.5~99.5質量%と、動粘性率が600,000~2000万cStである高粘度シリコーンを0.5~4.5質量%と、を含む。
【0030】
フィラメント組成物の一実施形態では、非晶質熱可塑性樹脂は、ビスフェノールAポリカーボネートホモポリマーと、(a)ビスフェノールAカーボネート単位(または「BPA単位」)およびビスフェノールイソホロンカーボネート単位(または「BPI単位」)のコポリカーボネートまたは(b)BPIポリカーボネートホモポリマーと、を含み、BPI単位は、熱可塑性樹脂中のBPA単位とBPI単位との合計の30~50モル%である。別の実施形態では、BPA単位は、式(1a):
【化1】
を有し、BPI単位は、式(1b):
【化2】
を有する。式中、RおよびR独立にHまたはC-C10-アルキルである。別の実施形態では、樹脂のTgが165℃~200℃である。さらなる実施形態では、ビスフェノールAポリカーボネートは、直鎖ポリカーボネート、分岐状ポリカーボネートまたは直鎖ポリカーボネートおよび分岐状ポリカーボネートである。「ポリカーボネート」および「ポリカーボネート樹脂」は、式-C(O)-O-R100-O-(以下「式1c」)の繰り返し単位を有するポリマーを指す。式中、各R100は、独立に、脂肪族基、脂環式基、または芳香族基、またはいずれのそれらの組み合わせなどのいずれの適した有機基を含み得る。特定の実施形態では、R100は、少なくとも1つの部分が芳香族であるC-C24芳香族基であり得る。ポリカーボネートは、は、式-C(O)-O-A-Y-A-O-(以下「式1d」)の繰り返し単位を含み得る。式中、各は、単環式二価アリール基であり、各は同じであっても異なっていてもよい。Yは、O、S、S(O)、S(O)、C(O)、メチレン、シクロヘキシル-メチレン、2-[2.2.1]-ビシクロヘプチリデン、エチリデン、イソプロピリデン、ネオペンチリデン、シクロヘキシリデン、シクロペンタデシリデン、シクロドデシリデン、およびアダマンチリデンなどの各Aを隔てる1個または2個の原子を有する架橋基である。式(1)の繰り返し単位は、WO2015/160957に記載のジヒドロキシ化合物に由来し得る。
【0031】
さらに別の実施形態では、非晶質熱可塑性樹脂は、BPA単位およびBPI単位のコポリマー、直鎖ポリカーボネートおよび分岐状ポリカーボネートを含む。好ましくはRおよびRはすべてHである。
【0032】
BPI単位を含有するコポリマーとしては、APEC(登録商標)コポリカーボネート樹脂(Covestro AG)として市販されているものが挙げられ得る。Covestro AG(~205℃Tg、~55-60mol%BPI)のAPEC2095およびAPEC2097樹脂が特に有用である。
【0033】
代替の実施形態では、分岐剤をBPI/BPコポリマーに追加して、樹脂の粘度を増加させる。種々の末端キャップも使用して、フェノール、p-クミルフェノール、p-tert-ブチルフェノールおよびp-オクチルフェノールおよび同種のものなどの樹脂のMWを制御できる。単官能性の酸または酸塩化物も末端キャップとして使用し得る。
【0034】
本発明のフィラメント組成物は、動粘性率が600,000~2000万cStである高粘度シリコーンも含む。
【0035】
シリコーンは、ポリオルガノシロキサンまたはポリシロキサンとしても既知であり、交互のケイ素原子および酸素原子を骨格構造中に有し、ケイ素結合炭化水素基を含むポリマーであり、炭化水素基は、炭素-ケイ素結合を介して珪素に結合している。ここで、シリコーンは一般式RSiO(4-r/2)を有する。式中、rは0、1、2または3であり、但し、rの平均数値は、1.9~2.1の範囲内であり、Rはそれぞれ独立に水素、ヒドロキシル、または、例えばアルキル基(例えば、メチル、エチル、およびプロピル)などの置換または非置換炭化水素基;アリール基(例えば、フェニル、ナフチル);アルカリル基(例えば、トリル、キシリル);アラルキル基(例えば、ベンジル、フェニル-エチル);アルコキシ、シクロアルキル基(シクロヘキシルなど);および複素環の基である。炭化水素基は、本質的に不活性の置換基、例えば、ハロゲンで置換され得る。シリコーン樹脂は、固まったまたは硬化した場合、3次元架橋した比較的硬い固体ポリマーである。本明細書で、高粘度シリコーンは、広範囲の高分子量のポリシロキサン材料を表し、例えば、粘度が約500,000~100百万cSt、好ましくは約600,000~2000万、より好ましくは約600,000~12百万cStである流体およびゴムを含む。本明細書で述べたすべての範囲は、すべてのサブ範囲、例えば550,000;925,000;3.5百万を含む。
【0036】
適したシリコーンとしては、CLEARCO Products社から入手可能な、粘度が300,000cSt~20,000,000cStの範囲内である高粘度直鎖ポリジメチルシロキサン液;Wacker Chemie AGからGENIOPLAST(登録商標)Gumとして入手可能な、粘度が10~2000万cStである超高分子量ポリジメチルシロキサン;GENIOPLAST(登録商標)Pellet P(メチルビニル官能性ポリジオルガノシロキサン100部と、ヒュームド・シリカを最大200部と、ホウ酸を最大20部との組み合わせからなるベレット形状の超高分子量ポリジメチルシロキサン,Daniel Bergの米国特許第7,897,666号明細書に記載);およびGENIOPLAST(登録商標)ペレットS(ヒュームド・シリカ(30質量%)上にトリメチルシロキシ末端キャップポリ(ジメチルシロキサン-co-ビニルメチルシロキサン)(70質量%)を含み、ホウ酸で処理されてボロ-シリコーンが形成されているペレット形状の超高分子量ポリジメチルシロキサン,Michael Geckらの米国特許第7,250,127号明細書に記載)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
これらの高粘度シリコーンは、多くの場合、約20~100%のシロキサンポリマーからなるシリコーンゴムとして特徴づけられる。「ゴム」は、ゴム様テクスチャを有するシリコーンが得られるほど十分に重合したシリコーンポリマーを意味する。また、シリコーンゴムは、揮発性または非揮発性シリコーンなどのシリコーン相溶性媒体の溶液または分散体の状態でも購入し得る。
【0038】
例示のゴムとしては、ポリ(ジメチルシロキサン)、ジメチルシロキサンおよびメチルビニルシロキサンのコポリマー、ジメチルシロキサンおよびジフェニルシロキサンのコポリマー、ジメチルシロキサン、フェニルメチルシロキサンおよびメチルビニルシロキサンのターポリマー、ジメチルシロキサン、メチルビニルシロキサンおよびメチルトリフルオロプロピルシロキサンのターポリマー、ジメチルシロキサンおよびエチルビニルシロキサンのコポリマーと、ジメチルシロキサンおよびメチルシアノエチルシロキサンのコポリマーが挙げられる。ホモポリマーおよびコポリマーは、例えば、トリメチルシロキサン単位、ジメチルビニルシロキサン単位、ジメチルフェニルシロキサン単位、および同種のものなどのトリオルガノシロキシ単位で末端にてブロックされ得る。好ましくは、ゴムの有機置換基は、メチル、ビニル、フェニルまたはトリフルオロプロピルから選択される。しかしながら、エチル、プロピル、オクタデシル、アリル、シクロヘキセニル、ナフチル、クロモメチル、ブロモフェニル、および同種のものなどの他の有機基も含まれ得る。
【0039】
組成物は、シリコーンゴム技術において慣行のいずれの方法によって、例えば、加熱または高エネルギー放射によって加硫処理され得るか、加硫できるようになる。好ましくは、しかしながら、組成物は、少量であるが効果的な量の加熱反応性加硫触媒を含む。好ましいそのような触媒は、有機ペルオキシドおよび有機ペルエステル、例えば、ベンゾイルペルオキシド、ターシャリーブチルペルアセテート、ジクミルペルオキシド、クミルtert-ブチルペルオキシド、2,5-ジ-tert-ブチルペルオキシ-2,5-ジメチルヘキサン、2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシド、tert-ブチルペルベンゾエート、ヘキシレングリコールペルベンゾエート、および同種のものである。好ましい触媒は、2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシドおよびベンゾイルペルオキシドである。
【0040】
ペレット化したオルガノポリシロキサン材料を製造する1つの方法は、トリアルキルシロキシ基、最も好ましくはトリメチルシロキシ基で末端キャップされ、70~100%、より好ましくは90~100%のジメチルシロキサン単位と、030%、より好ましくは0~10%のアルケニルメチルシロキサン単位、最も好ましくはビニルメチルシロキサン単位とからなり、粘度が好ましくは25℃で10~10cSt、より好ましくは25℃で10~10cStである1つ以上のジポリオルガノシロキサン100部を、100~250℃で、最も好ましくは120~200℃で運転されている混練機内で、好ましくは0~50部、より好ましくは0.1~30部の添加剤(D)と、好ましくは1~200部、より好ましくは30~100部の1種以上の強化または非強化用充填材(B)と、または2つの混合物と混合し、好ましくは10分~12時間、より好ましくは30分~6時間混練する。
【0041】
ポリ(ジオルガノシロキサン)ゴムは、縮合状態、採用した縮合剤、およびゴム製材料製造に使用した開始オルガノポリシロキサンに応じて高粘性の塊またはゴム製の弾性固体である。典型的なゴムは、液体ポリ(オルガノシロキサン)と、1つの周知の縮合剤、例えば、塩化鉄六水和物、フェニルホスホリルクロリド、アルカリ性縮合剤(水酸化カリウム、水酸化ナトリウムおよび同種のものなど)との縮合によって得られる。典型的には有用なゴムは、約95モル%のオクタメチルシクロテトラシロキサンと、約5モル%のデカメチルテトラシロキサンとを、150~175℃の温度で約4時間、約0.01%水酸化カリウムと共に、高粘性ゴムが得られるまで混合することによって調製される
【0042】
さらに、ポリオルガノシロキサンは、強化および/または非強化用充填材を含み得る。強化充填材の例は、ヒュームド・シリカまたは沈降シリカである。強化充填材を使用する場合、BET表面積が少なくとも50m/g、より好ましくは少なくとも100m/gであるヒュームドまたは沈降シリカを使用するのが好ましい。好ましくは、シリコーンは、シリコーンゴムを60~80質量%と、ヒュームド・シリカを20~40質量%と、を含む。
【0043】
非強化用充填材の例としては、石英粉末、珪藻土、ケイ酸カルシウム、ケイ酸ジルコニウム、ゼオライト、金属酸化物粉末(酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化鉄、または酸化亜鉛など)、ケイ酸バリウム、硫酸バリウム、石膏、ポリテトラフルオロエチレンがある。さらに、ガラスおよびプラスチック繊維などの充填材繊維成分として使用できる。
【0044】
一般的に、組成物が充填剤を含む場合、充填剤は、単一の充填剤または充填材の混合物であり得る。好ましい充填材は、比表面積が50~350m/gである微粉強化充填材、例えば、エアロゲルまたはヒュームド・シリカである。珪藻土、研磨した石英、アルカリ土類硫酸塩またはシリケート(例えば、ケイ酸ジルコニウム)、金属酸化物(酸化鉄、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、二酸化チタン、および同種のものなど)、およびカーボンブラックなどの他の充填材(半強化および増量充填材など)も存在し得る。
【0045】
フィラメントは、任意選択的に、熱可塑性プラスチック分野にて既知の添加剤を1種以上さらに含み得る。そのような添加剤としては、例えば、安定化剤、酸化防止剤、染料、顔料、帯電防止剤、鉱油、金属不活性化剤、およびそれらの組み合わせが挙げられ得る。存在する場合、1種以上添加剤の使用量は、フィラメントの質量に対して合計で最大2質量%であり得る。この範囲内で、添加剤量は、最大1質量%、または0.2~1質量%であり得る。
【0046】
第2の実施形態では、本発明の物品は、モデルと支持構造物とを含む構造物を含み、支持構造物の表面の少なくとも一部は、モデルの少なくとも一部の表面に接着しており、モデルは、ビルド材料を含み、支持構造物は、非晶質熱可塑性樹脂と高粘度シリコーンとを含む。
【0047】
さらに、本発明の第3の実施形態は、印刷するビルド材料からのモデル構造物と、非晶質熱可塑性樹脂からのモデルのための支持構造物とを印刷する溶融フィラメント製造方法である。
【0048】
上述した支持フィラメントのそれぞれ、およびそれらの組成物は、物品および方法に適しているが、支持フィラメント中の非晶質熱可塑性樹脂は、ビルド材料中に含まれるものと同じベースポリマーを含まない。一実施形態では支持フィラメントのTgは、ビルド材料のTgまたは融点の30℃以内である。
【0049】
一実施形態では、モデルに適したビルド材料としては、限定されないが、ポリエーテルイミドおよびポリスルホンが挙げられ、ポリエーテルイミドは、ポリエーテルイミドホモポリマー、例えばシロキサンまたはスルホン、およびそれらの組み合わせとのポリエーテルイミドコポリマーと、ポリカーボネートとのブレンドから選択され得る。
【0050】
一実施形態では、ポリエーテルイミドビルド材料は、下記式(2a)のエーテルイミド単位を含むポリマーである。
【化3】
式中、Tは、-O-または式-O-Z-O-の基であり、-O-または-O-Z-O-基の二価の結合は、フタルアミド基の3,3’、3,4’、4,3’、または4,4’位置にあり;Zは、下記式の二価部分である。
【化4】
式中、Qは、-O-、-S-、-C(O)-、-SO-、-SO-、-C2y-(yは1~8)、または-C-(pは1~8およびqは0~15、rは1~16、q+r=2p)であり得る二価部分であり;Rは、それぞれ独立に、6~20個の炭素を有する置換または非置換二価芳香族炭化水素部分、2~20個の炭素を有する直鎖または分岐状鎖アルキレン部分、3~20個の炭素原子を有するシクロアルキレン部分、および一般式(2b)の二価部分からなる群から選択される二価の基である。
【化5】
式中、Q上記の定義の通りである。これに関連して、「置換」は、ハロゲン(すなわち、F、Cl、Br、I)、ヒドロキシル、アミノ、チオール、カルボキシル、カルボキシレート、アミド、ニトリル、スルフィド、ジスルフィド、ニトロ、C-C18アルキル、C-C18アルコキシル、C-C18アリール、C-C18アリールオキシル、C-C18アルキルアリール、またはC-C18アルキルアリールオキシルなどの少なくとも1つの置換基を含むことを意味する。
【0051】
一部の実施形態では、Rのそれぞれは、独立にパラ-フェニレンまたはメタ-フェニレンであり、Tは、下式の二価部分である。
【化6】
【0052】
そのようなポリエーテルイミドの形成方法は、Brent A.Dellacolettaの米国特許第4,910,288号明細書に記載されている。
【0053】
別の実施形態では、ポリエーテルイミドは、式(2a)のエーテルイミド単位と式(1b)のシロキサン単位とのコポリマーである。そのようなコポリマーの形成方法は、例えば、Robert Russell Gallucciらの米国特許第7,847,023号明細書、Hong-Son Ryangの米国特許第4,404,350号明細書、James A.Cellらの米国特許第4,808,686号明細書および米国特許第4,690,997号明細書、およびYashpal Bhandariらの米国特許第8,013,251号明細書に記載されている。一実施形態では、ポリエーテルイミドは、SABICからSILTEM(商標)樹脂として市販されているポリエーテルイミド-ポリシロキサンブロックコポリマーである。
【0054】
ポリエーテルイミドがポリエーテルイミドスルホンコポリマーである実施形態では、コポリマーは、二無水物とジアミンとの反応から生成され得る。典型的な二無水物は、式(2c)を有する。
【化7】
式中、Vは、5~50個の炭素原子を有する置換または非置換、飽和、不飽和または芳香族の単環式および多環式基、1~30個の炭素原子を有する置換または非置換アルキル基、2~30個の炭素原子を有する置換または非置換アルケニル基および前記リンカーの少なくとも1つを含む組み合わせからなる群から選択される四価のリンカーである。適した置換および/またはリンカーとしては、炭素環式基、アリール基、エーテル、スルホン、スルフィドアミド、エステル、および前記の少なくとも1つを含む組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。有用なジアミンとしては、ジアミノジアリールスルホンおよびそれらの組み合わせが挙げられる。ジアミノジアリールスルホン(DAS)は、一般式(2d):
【化8】
を有する。式中、ArおよびArは独立に、単環または多重環を含むアリール基である。いくつかのアリール環が、例えばエーテル結合、スルホン結合または2つ以上のスルホン結合を介して一緒に結合していてもよい。アリール環は縮合していてもよい。一実施形態では、ArおよびArは独立に、5~12個の炭素を含む。そのようなポリエーテルイミドスルホンの形成方法は、Hariharan Ramalingamらの米国特許第9,909,006号明細書に記載されている。
一実施形態では、ポリエーテルイミドスルホンは、式(2e)の構造単位を含む。
【化9】
【0055】
別の実施形態では、ポリエーテルイミドは、ビスフェノールA二無水物と4,4′-ジアミノジフェニルスルホンとの反応生成物である。そのようなポリエーテルイミドスルホンは、SABICからEXTEM(商標)樹脂として市販されている。
【0056】
さらなる実施形態では、ポリエーテルイミドは、ULTEM(商標)9085樹脂としてSABICから入手可能である、ポリエーテルイミドホモポリマーとポリカーボネートとのブレンドである。
【0057】
代替の実施形態では、ビルド材料のポリスルホンは、二価アリールエーテル基および二価スルホン基を含む繰り返し単位を含むものであり、ポリスルホン(PSU)、ポリエーテルスルホン(PES)、およびポリフェニルスルホン(PPSU)およびポリ(ビフェニルエーテルジスルホン)などがある。
【0058】
溶融フィラメント製造方法では、該方法は、第1のフィラメントの一部を溶融して、溶融状態の第1の熱硬化性材料を形成し、3次元物を定めるように所定のパターンで溶融状態の第1の熱硬化性材料を分注するステップと;第2のフィラメントの一部を溶融して、溶融状態の第2の熱硬化性材料を形成し、第1の熱硬化性材料の分注と連携して、3次元物のための支持構造を定めるように溶融状態の第2の熱硬化性材料を分注するステップと;を含み、第1の熱硬化性材料はポリエーテルイミドを含み、第2の熱硬化性材料は、フィラメント中の熱可塑性樹脂とシリコーンとを合わせた質量に対して、(a)ビスフェノールAポリカーボネートホモポリマーと、(a)ビスフェノールAカーボネート単位(または「BPA単位」)およびビスフェノールイソホロンカーボネート単位(または「BPI単位」)のコポリカーボネートまたは(b)BPIポリカーボネートホモポリマーと、を含み、BPI単位は、熱可塑性樹脂中のBPA単位とBPI単位との合計の30~50モル%であり、Tgが165℃~200℃である非晶質の熱可塑性樹脂を95.5~99.5質量%と;(b)動粘性率が600,000~2000万cStである高粘度シリコーンを0.5~4.5質量%と、を含み、シリコーンは熱可塑性樹脂と非混和性であり;第1の熱硬化性材料のガラス転移温度または融点は、第2の熱硬化性材料のTgの30℃以内の範囲内である。
【0059】
本明細書で、「熱硬化性材料」は、溶融した状態から冷却により固化可能な材料である。
【0060】
一実施形態では、第1の熱硬化性材料のガラス転移温度または融点は、第2の熱硬化性材料のTgの30℃以内の範囲内である。
【0061】
該方法は、支持構造の少なくとも一部を3次元モデルから物理的に分離するステップを含む、支持構造の少なくとも一部を3次元モデルから除去するステップをさらに含む。
【0062】
一部の実施形態では、フィラメントまたは支持構造または第2の熱硬化性材料は、非晶質熱可塑性樹脂を含むものとして記載されている。「非晶質熱可塑性樹脂」は、組成物を指し得る。例えば、フィラメントが、ビスフェノールイソホロンカーボネート単位とビスフェノールAカーボネート単位とを含む非晶質熱可塑性樹脂を含む場合、フィラメントは、ビスフェノールイソホロンカーボネート単位とビスフェノールAカーボネート単位とを含む組成物を含み得る。
【0063】
ビスフェノールイソホロンカーボネート単位およびビスフェノールAカーボネート単位は、種々のポリマー形態で存在し得る。一部の実施形態では、ビスフェノールイソホロンカーボネート単位およびビスフェノールAカーボネート単位は、ビスフェノールAカーボネート単位とビスフェノールイソホロンカーボネート単位とを含むコポリカーボネート、またはビスフェノールAポリカーボネートホモポリマーと、ビスフェノールAカーボネート単位とビスフェノールイソホロンカーボネート単位とを含むコポリカーボネートとの組み合わせ、またはビスフェノールAポリカーボネートホモポリマーとビスフェノールイソホロンポリカーボネートホモポリマーとの組み合わせ、またはビスフェノールAポリカーボネートホモポリマーとビスフェノールイソホロンポリカーボネートホモポリマーと、ビスフェノールAカーボネート単位とビスフェノールイソホロンカーボネート単位とを含むコポリカーボネートとの組み合わせの形態で存在する。これらの形態のいずれにおいても、ビスフェノールイソホロンカーボネート単位の合計が、ビスフェノールAカーボネート単位の合計と、ビスフェノールイソホロンカーボネート単位の合計との合計の30~50モル%である。
【0064】
支持フィラメントに関して上記で説明した支持材のバリエーションのすべてが、付加製造方法にも適用される。本発明は、少なくとも以下の実施形態を含む。
【0065】
実施形態1:3D印刷用フィラメントを含む製品であって、3D印刷用フィラメントは、ビスフェノールイソホロンカーボネート単位とビスフェノールAカーボネート単位とを含む非晶質熱可塑性樹脂を含み、
ビスフェノールイソホロンカーボネート単位は、非晶質熱可塑性樹脂中のビスフェノールAカーボネート単位とビスフェノールイソホロンカーボネート単位との合計の30~50モル%であり、
非晶質熱可塑性樹脂のガラス転移温度が165℃~200℃であり、
非晶質熱可塑性樹脂は、
(a)(1)ビスフェノールAカーボネート単位とビスフェノールイソホロンカーボネート単位とのコポリカーボネートと、
(2)ビスフェノールAポリカーボネートホモポリマーと、を含むか、あるいは
(b)ポリカーボネート樹脂と高粘度シリコーンとを合わせた質量に対して、
(1)(i)ビスフェノールAカーボネート単位とビスフェノールイソホロンカーボネート単位とのコポリカーボネート、またはBPIポリカーボネートホモポリマーと、
(ii)任意選択的にビスフェノールAポリカーボネートホモポリマーと、を含むポリカーボネート樹脂を95.5~99.5質量%と、
(2)25℃での動粘性率が600,000~2000万cStである高粘度シリコーンを0.5~4.5質量%と、を含み、
高粘度シリコーンは、ポリカーボネート樹脂と非混和性である製品。
【0066】
実施形態2:非晶質熱可塑性樹脂が、
(b)ポリカーボネート樹脂と高粘度シリコーンとを合わせた質量に対して、
(1)(i)ビスフェノールAカーボネート単位とビスフェノールイソホロンカーボネート単位とのコポリカーボネート、またはBPIポリカーボネートホモポリマーと、
(ii)任意選択的にビスフェノールAポリカーボネートホモポリマーと、を含むポリカーボネート樹脂を95.5~99.5質量%と、
(2)25℃での動粘性率が600,000~2000万cStである高粘度シリコーンを0.5~4.5質量%と、を含み
高粘度シリコーンは、ポリカーボネート樹脂と非混和性である実施形態1の製品。
【0067】
実施形態3:高粘度シリコーンが、シリコーンゴムを含む実施形態1の製品。
【0068】
実施形態4:高粘度シリコーンが、(a)ボロ-シリコーンゴムを60~80質量%と、(b)ヒュームド・シリカを20~40質量%と、を含む実施形態1の製品。
【0069】
実施形態5:非晶質熱可塑性樹脂は、(a)ビスフェノールイソホロンとビスフェノールAとのコポリカーボネート中のビスフェノールイソホロン単位が、該コポリカーボネート中のビスフェノールA単位とビスフェノールイソホロン単位との合計の50~65モル%である、ビスフェノールイソホロンとビスフェノールAとのコポリカーボネートを65~75質量部と、(b)ビスフェノールAポリカーボネートを25~35質量部と、を含む実施形態1~4のいずれか1つの製品。
【0070】
実施形態6:3D印刷用フィラメントが、
(a)コポリカーボネート中のビスフェノールイソホロン単位が、コポリカーボネート中のビスフェノールA単位とビスフェノールイソホロン単位との合計の55~65モル%である、ビスフェノールイソホロンとビスフェノールAとのコポリカーボネートを67~70質量部と、
(b)直鎖ビスフェノールAポリカーボネートを23~26質量部と,
(c)分岐状ビスフェノールAポリカーボネートと4~6質量部と、
(d)高粘度シリコーンを1.5~2.5質量部と、を含み、
高粘度シリコーンが、
(i)ボロ-シリコーンゴムを60~80質量部と、
(ii)ヒュームド・シリカを20~40質量部と、を含む実施形態1の製品。
【0071】
実施形態7:ビスフェノールイソホロンカーボネート単位とビスフェノールAカーボネート単位とを含む非晶質熱可塑性樹脂を含み、ビスフェノールイソホロンカーボネート単位が、樹脂中のビスフェノールAカーボネート単位とビスフェノールイソホロンカーボネート単位との合計の30~50モル%であり、非晶質熱可塑性樹脂のTgが165℃~200℃である支持構造と;第2の熱可塑性樹脂を含む3次元モデルと、を含み、第2の熱可塑性樹脂および高熱樹脂は同じではなく;支持構造の表面の少なくとも一部が、3次元モデルの表面の少なくとも一部に接着されており;
非晶質熱可塑性樹脂は、
(a)(1)ビスフェノールAカーボネート単位とビスフェノールイソホロンカーボネート単位とのコポリカーボネートと、
(2)ビスフェノールAポリカーボネートホモポリマーと、を含むか、あるいは
(b)ポリカーボネート樹脂と高粘度シリコーンとを合わせた質量に対して、
(1)(i)ビスフェノールAカーボネート単位とビスフェノールイソホロンカーボネート単位とのコポリカーボネート、またはBPIポリカーボネートホモポリマーと、
(ii)任意選択的にビスフェノールAポリカーボネートホモポリマーと、を含むポリカーボネート樹脂を95.5~99.5質量%と
(2)25℃での動粘性率が600,000~2000万cStである高粘度シリコーンを0.5~4.5質量%と、を含み
高粘度シリコーンは、ポリカーボネート樹脂と非混和性である製品。
【0072】
実施形態8:非晶質熱可塑性樹脂が、
(b)ポリカーボネート樹脂と高粘度シリコーンとを合わせた質量に対して、
(1)(i)ビスフェノールAカーボネート単位とビスフェノールイソホロンカーボネート単位とのコポリカーボネート、またはBPIポリカーボネートホモポリマーと、
(ii)任意選択的にビスフェノールAポリカーボネートホモポリマーと、を含むポリカーボネート樹脂を95.5~99.5質量%と、
(2)25℃での動粘性率が600,000~2000万cStである高粘度シリコーンを0.5~4.5質量%と、を含み、
高粘度シリコーンは、ポリカーボネート樹脂と非混和性である実施形態7の製品。
【0073】
実施形態9:高粘度シリコーンが、シリコーンゴムを含む実施形態7の製品。
【0074】
実施形態10:高粘度シリコーンが、(a)ボロ-シリコーンゴムを60~80質量%と、(b)ヒュームド・シリカを20~40質量%と、を含む実施形態7の製品。
【0075】
実施形態11:支持構造が、
(a)コポリカーボネート中のビスフェノールイソホロン単位が、コポリカーボネート中のビスフェノールA単位とビスフェノールイソホロン単位との合計の55~65モル%である、ビスフェノールイソホロンとビスフェノールAとのコポリカーボネートを67~70質量部と、
(b)直鎖ビスフェノールAポリカーボネートを23~26質量部と,
(c)分岐状ビスフェノールAポリカーボネートと4~6質量部と、
(d)高粘度シリコーンを1.5~2.5質量部と、を含み、
高粘度シリコーンが、
(i)ボロ-シリコーンゴムを60~80質量%と、
(ii)ヒュームド・シリカを20~40質量%と、を含む実施形態7の製品。
【0076】
実施形態12:第2の熱可塑性樹脂が、ポリエーテルイミドまたはポリスルホンを含む実施形態7~11のいずれか1つの製品。
【0077】
実施形態13:第1のフィラメントの一部を溶融して、溶融状態の第1の熱硬化性材料を形成し、3次元モデルを定めるように所定のパターンで溶融状態の第1の熱硬化性材料を分注するステップであって、第1の熱硬化性材料は、ポリエーテルイミドまたはポリスルホンを含むステップと;
第2のフィラメントの一部を溶融して、溶融状態の第2の熱硬化性材料を形成し、第1の熱硬化性材料の分注と連携して、3次元モデルのための支持構造を定めるように溶融状態の第2の熱硬化性材料を分注するステップと、を含み;
第2の熱硬化性材料は、ビスフェノールイソホロンカーボネート単位とビスフェノールAカーボネート単位とを含む非晶質熱可塑性樹脂を含み、ビスフェノールイソホロンカーボネート単位は、非晶質熱可塑性樹脂中のビスフェノールAカーボネート単位とビスフェノールイソホロンカーボネート単位との合計の30~50モル%であり、非晶質熱可塑性樹脂のガラス転移温度が165℃~200℃である溶融フィラメント製造方法。
【0078】
実施形態14:非晶質熱可塑性樹脂は、
(a)(1)ビスフェノールAカーボネート単位とビスフェノールイソホロンカーボネート単位とのコポリカーボネートと、
(2)ビスフェノールAポリカーボネートホモポリマーと、を含むか、あるいは
(b)ポリカーボネート樹脂と高粘度シリコーンとを合わせた質量に対して、
(1)(i)ビスフェノールAカーボネート単位とビスフェノールイソホロンカーボネート単位とのコポリカーボネート、またはBPIポリカーボネートホモポリマーと、
(ii)任意選択的にビスフェノールAポリカーボネートホモポリマーと、を含むポリカーボネート樹脂を95.5~99.5質量%と、
(2)25℃での動粘性率が600,000~2000万cStである高粘度シリコーンを0.5~4.5質量%と、を含み、
高粘度シリコーンは、ポリカーボネート樹脂と非混和性である実施形態13の方法。
【0079】
実施形態15:支持構造の少なくとも一部を3次元モデルから物理的に分離するステップをさらに含む実施形態13または14の方法。
【0080】
本明細書に開示のすべての範囲は端点を含み、端点は、互いに独立に組み合わせ可能である。本明細書に開示のそれぞれの範囲は、開示されている範囲内にあるいずれの点またはサブ範囲も開示している。
【0081】
本発明を、以下の非限定的な実施例によってさらに例証する。
【実施例
【0082】
比較および典型的なフィラメントの形成に使用した成分を表1に要約する。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【0083】
比較および典型的なフィラメントの調製に使用した組成物を表2に要約する。表2では、成分量は、組成物の合計質量に対する質量%の単位で表されている。フィラメント押出の1日前に、樹脂ペレットを、デシカントドライヤー(Dri-Air;EastWindsor,Connecticut,USA)に充填した。フィラメントを、精密溶融ポンプを備えた押出機(FET,Leeds,UK)によって各組成物を別々に供給することによって押出した。この押出機の軸は、長さ:直径の比が30:1、搬送区域では長さ10D、遷移区域では長さ12D、計量部では長さ8Dであった。溶融温度は、約280℃~300℃に設定した。押出成形物を、ダイのオリフィス内径4mmおよびダイの長さ16mmから垂直に抜き出し、空気冷却しながら延伸してモノフィラメントを形成した。プラーライン(puller line)速度は、最終のフィラメント直径が1.8mmを達成するように調整した。二軸高速および高精度スキャンマイクロメーター(Keyence;Itasca,Illinois,USA)を用いて、オンライン直径測定値を得た。
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【0084】
各フィラメントのガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量測定法(ASTM D3418に準拠,20℃/minの加熱速度)(以下「DSC」)を用いて、TA InstrumentsQ1000示差走査熱量計によって、0~250℃の温度範囲で、20℃/分の加熱速度で、窒素流の下で決定した。
【0085】
表2の組成物それぞれのフィラメントの押出後、これらのフィラメントのそれぞれの品質を評価した。「-」のフィラメント押出評価は、上述した手順を用いて、組成物が目的の直径の+/-0.010mm内に押し出しされなかったか、または0.010mm内の標準偏差を達成できなかったことを示す。「+」の評価は、目的の直径の+/-0.010mm内に、標準偏差0.010mm内で組成物を押出したことを示す。
【0086】
実験構造物は、種々の単純なおよび複雑な配置のモデル構造物と、分離した支持構造とを有し、Stratasys 400mcおよび900mcプリンタを用いて、モデル材料としてULTEM(商標)9085樹脂からから作製されたポリエーテルイミドフィラメントを用いて、表2の各フィラメントを支持材として用いて印刷した。実験対照として、同じ構造設計物を、ULTEM(商標)9085樹脂から作製したポリエーテルイミドの、モデルまたはビルドフィラメント、およびポリスルホン支持フィラメントを用いて印刷した。具体的には、フィラメントは、を含むフェノール、1,1’-スルホニルビス(4-クロロベンゼン)を有する4,4’(1-メチルエチリデン)ビス-ポリマー、(3-クロロプロピル)トリメトキシシラン末端化樹脂(Stratasys Ltdから入手可能)を含み、ULTEM(商標)9085樹脂から作製されたモデルのための分離した支持物として開示されている。実験構造物および支持構造の両方を同時に、ULTEM(商標)9085樹脂から作製されたフィラメントのためのプリンタの支持温度プロファイルを用いて、一緒に印刷した。この温度プロファイルの下で、T16またはT20チップをモデルの印刷に使用し、T16チップを基礎の支持構造の印刷に使用した。
【0087】
印刷する間、T16チップからの各支持材の印刷のにじみおよび品質の程度を評価した。支持材のにじみは、モデルの印刷品質を悪化させ得、印刷されるモデル内への支持材の埋め込みをもたらす計画外の支持材のストランドまたは毛を生じ得る。「はい」の評価は、印刷したモデルの品質を低下させる可能性が高い許容されないレベルのにじみが見られたことを示す。「いいえ」の評価は、モデルの印刷品質に悪影響を与えないわずかなにじみが見られたことを示す。
【0088】
各支持材を用いる支持構造の印刷の品質を、印刷要因:ツール経路追従、自己および交差接着、オーバーハング・キャッチ(overhang catch)(15、30、45、および50°で)、表面品質、設計の支持印刷能力、およびプリンタの詰まりがない一貫性のある印刷に基づいて評価した。「良好」の印刷品質評価は、良好な自己接着、15、30、45、および50°での良好なオーバーハング・キャッチ、良好な表面品質、およびいくつかの設計の良好な支持能力を示す。「劣化」の印刷品質評価は、不十分な突出捕獲、劣化表面品質、先端目詰まり、いくつかの設計の不能、工具経路紛失、過剰充填または充填不全の1つ以上を示す。「中間」の印刷品質評価は、いくらかの充填不全および工具経路のギャップがあることを示す。N.D.の評価は、印刷品質を決定していないことを意味する。
【0089】
モデルおよび支持構造の印刷完了後、異なる支持フィラメントごとに、ULTEM9085樹脂モデルからそれぞれの支持材を容易に壊す能力を、室温で定性的に評価した(柔軟性、粉砕の容易、除去に必要な力、および破片のサイズ)。「良好」の除去の容易評価は、良好な柔軟性、支持構造の粉砕が容易、すべて支持構造の除去が容易、および大きい破片で取れることを示す。また、この評価は、ULTEM(商標)9085樹脂ビルド材料のための商用ポリスルホン支持材と比較して支持材が容易に取れることも示す。「劣化」の評価は、不十分な柔軟性、支持構造の破壊が困難、すべての支持構造の除去が不能、および小さい破片での支持構造の除去の1つ以上を意味する。
【0090】
表2に示すように、支持フィラメント組成物は、フィラメント製造の容易さ、支持材のにじみの緩和、全体の印刷品質および印刷したモデルの後の除去の容易さの点で、特に本実施例で対照として使用したポリスルホン商用支持フィラメント、またはAPEC(登録商標)2097樹脂からなる支持フィラメント(表2のC3)と比較した場合に、顕著に優れていた。対照支持フィラメントは、フィラメント押出、にじみなしおよび印刷品質の点で良好な性能を示すことが見られた。しかしながら、対照フィラメント支持構造を、ULTEM(商標)9085樹脂から作製されたモデルから除去するのが非常に困難であることも見られた。APEC(登録商標)2097樹脂(C3)支持フィラメントは、フィラメント押出および印刷品質の点で良好な性能を示すことが見られた。しかしながら、該支持フィラメントは許容されないレベルのにじみを示し、ULTEM(商標)9085樹脂から作製されたモデルからの除去が困難であった。ここで例示されている支持フィラメント、特に実施例3、実施例4、実施例5、実施例6、実施例7、実施例8、実施例9および実施例10は、フィラメント押出および印刷品質の点で良好な性能を示しつつ、対照およびAPEC(登録商標)2097樹脂フィラメント’性能と比較して予想外の改善を示し、許容されるレベルのにじみおよびULTEM(商標)9085樹脂から作製されたモデルからの除去の良好な緩和も示した。
【0091】
以下の比較実施例は、ビスフェノールAカーボネート単位と3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-フェニルイソインドリン-L-1つの(PPPBP)カーボネート単位とを含むコポリカーボネートをベースとした支持材の劣化性能を例示する。支持フィラメントの組成を表3に要約する。
【0092】
フィラメントを押出し、モデルおよび支持構造を有する物品を上記の通りに印刷した。モデル材料はULTEM(商標)9085樹脂であった。各支持材について、にじみ、印刷品質、および除去の容易を上記の通りに決定した。支持材のぞれぞれが、にじみのレベルが許容されない、印刷品質が中間または劣化である、モデルからの支持材の除去の容易が不十分であるという点で、不十分なものであった。
【表3】