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特許7010925血管から閉塞性凝血塊を除去するための凝血塊回収システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】血管から閉塞性凝血塊を除去するための凝血塊回収システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/22 20060101AFI20220119BHJP
【FI】
A61B17/22
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019504107
(86)(22)【出願日】2017-07-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-09-26
(86)【国際出願番号】 EP2017068759
(87)【国際公開番号】W WO2018019829
(87)【国際公開日】2018-02-01
【審査請求日】2020-06-30
(31)【優先権主張番号】16181338.1
(32)【優先日】2016-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】62/474,383
(32)【優先日】2017-03-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515248931
【氏名又は名称】ニューラヴィ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ブレディー・エイモン
(72)【発明者】
【氏名】ベイル・デビッド
(72)【発明者】
【氏名】ギルバリー・マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ケーシー・ブレンダン
(72)【発明者】
【氏名】ホーリー・マルト
(72)【発明者】
【氏名】シディキ・アドナン
【審査官】家辺 信太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/151209(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0060888(US,A1)
【文献】特開平09-053568(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管から閉塞性凝血塊を除去するためのシステムであって、
近位端部及び遠位端部を含むカテーテル、並びに
拍動真空力を発生させて、前記カテーテルの前記遠位端部にて圧力勾配を律動的に送るための装置、を含み、
前記装置が、真空ポンプ及びパルス発生器を備え、
前記パルス発生器が前記真空ポンプから分離されており、
前記真空ポンプと前記カテーテルの前記近位端部との間に、弾性の管材を備え、
前記パルス発生器が前記弾性の管材に取り付けられており、
前記パルス発生器が、前記弾性の管材を押圧して圧縮させる圧縮具を備え、前記圧縮具の往復運動、又は、前記圧縮具の偏心軸を中心とした回転によって、前記圧縮具による前記弾性の管材の圧縮および非圧縮が繰り返されることにより、前記拍動真空力を発生させる、システム。
【請求項2】
前記圧縮具が、往復運動可能なプランジャ、又は、前記偏心軸を中心として回転可能なカムである、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記圧縮具が、それぞれの偏心軸を中心として回転可能な複数のカムであり、
前記複数のカムが、前記弾性の管材が延在する方向に並んでおり、前記複数のカムの内で前記真空ポンプに最も近いカムが回転して、前記真空ポンプに前記最も近いカムが前記弾性の管材を封止し、前記複数のカムの内で前記真空ポンプに最も近い前記カム以外のカムが回転することで、前記真空ポンプに最も近い前記カム以外の前記カムが、前記弾性の管材を圧縮するが封止せず、これにより前記拍動真空力を発生させる、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記圧縮具が、前記偏心軸を中心として回転可能なカムであり、前記カムは、カム本体、及び、前記カム本体を取り囲む外輪を有し、前記外輪は前記カム本体に対して摺動可能であり、前記カム本体が前記偏心軸を中心として回転した際に、前記外輪は回転せずに前記弾性の管材に対して静止状態を維持する、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記圧縮具が、前記偏心軸を中心として回転可能なカム、及び、前記カムとの間で前記弾性の管材を挟む支持プレートであり、前記カムが回転した際に、前記カムおよび前記支持プレート間で前記弾性の管材を変形させることにより、前記弾性の管材を圧縮させる、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記真空ポンプは、第2の管材を介して、前記閉塞性凝血塊を捕捉する受容部に連結されており、前記受容部は、第3の管材を介して、弁機構に連結されており、前記弁機構が前記弾性の管材の近位端に連絡されており、
前記圧縮具が、前記偏心軸を中心として回転可能なカムであり、
前記弁機構を開いた状態から閉じた状態に変化させることで前記真空ポンプから前記弾性の管材を遮断させ、前記カムを回転させて前記弾性の管材を圧縮し、前記カムを更に回転させて前記弾性の管材の圧縮を解除し、それから前記弁機構を閉じた状態から開いた状態に変化させるとの動作を繰り返すことで、前記拍動真空力を発生させる、請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管から急性の遮断物を除去することを目的とした装置に関する。急性の閉塞物としては、凝血塊、誤配置された装置、移動された装置、大きな塞栓などが挙げられてよい。血栓塞栓症は、血栓の一部又は全てが血管壁から剥離した場合に発生する。この凝血塊(ここでは、塞栓と呼ぶ)は次に、血流の方向に運ばれる。虚血発作は、脳の血管系内に凝血塊が留まった場合に結果として生じ得る。肺塞栓症は、凝血塊が静脈系で又は心臓の右側で発生し、かつ肺動脈又はその支脈内に留まる場合に、結果として生じ得る。凝血塊はまた、解放されずに塞栓の形状で発達して血管を局所的に遮断し得るが、この機序は、冠状動脈の遮断物の形成において一般的である。本発明は特に、急性虚血発作(AIS)に苦しむ患者の大脳動脈から、心筋梗塞(MI)に苦しむ患者の本来の血管又は移植血管から、肺塞栓症(PE)に苦しむ患者の肺動脈から、並びに凝血塊が閉塞を引き起こしているその他の末梢動脈及び静脈から、凝血塊を除去するのに適している。
【背景技術】
【0002】
血液凝固カスケード、及び生化学、及びヒトにおける血栓の病因学に関する文献における豊富な情報にもかかわらず、本物質の物理的特性及び機械的特性において利用可能な情報が、著しく少ない。これらの特性は、血栓物質により閉塞された血管の機械的血栓摘出術中の、血栓と、凝血塊回収カテーテル及び装置及び周囲の血管系との間の相互作用に、非常に関連がある。血栓物質への広範な実験及び研究を通して、本発明者らは、これらの凝血塊の回収がなぜ特に難題であるのかの説明を手助けする、特性の態様、及び特定の凝血塊/血栓の種類の挙動を発見した。これらの発見のいくつかは、我々の国際公開第2012/120490(A)号に記載されており、その内容全体が参考として本明細書に組み込まれている。
【0003】
凝血塊は本質的にリビングポリマーであり、赤血球及び白血球、血小板並びに多数のその他のタンパク質及び構成成分がその中で存在する、絡み合いかつ架橋した線維素ストランドのマトリックスを含む。本発明者らは、凝血塊の機械的特性が、線維素及び赤血球の相対的割合により強く影響を受け、また高(かつ高度に組織化された)繊維素含有量及び低赤血球含有量を伴う凝血塊が、高赤血球含有量の凝血塊よりもはるかに強固かつ大いに凝集性を有する傾向にある、ということを発見した。このような凝血塊はまた、より高い摩擦係数を有する、又は換言すれば、「膠着」することが見出されてきた。これらの強固かつ粘着性のある凝血塊を血管から除去することは、非常に難題であり得る。
【0004】
繊維素含有量が低く、かつ赤血球含有量が高い凝血塊は、凝集力が低くかつより脆く、また前述のより組織化された繊維素が豊富な凝血塊よりも低い摩擦係数を有する、ということが見出されてきた。これらの特性は、このような凝血塊が閉塞部分から容易に引き出されるが、遠位血管領域又は新しい血管領域内へと凝血塊の断片が欠損される結果的な危険性を伴って、回収プロセス中に分解し得る傾向にあることを意味する。
【0005】
なお、本発明者らは、凝血塊の繊維素マトリックスが、凝血塊物質が特定の状況において粘弾性の挙動を示す、という結果をもたらし得ることを発見した。変化する繊維素含有量を試験した凝血塊の範囲にて、一連の実験を実施した。凝血塊の試料を容器に保持して、凝血塊の表面上に圧子を定置させ、固定の圧入力を施した。凝血塊内への圧子の貫入の深さは、各凝血塊の種類に関する時間の関数として測定された。高繊維素含有量及び低赤血球含有量を伴う凝血塊が、数分間にわたって、凝血塊内へと効果的に「徐々に伸びて進む」圧子により、最大の粘弾性効果を示すことが判明したが、これに対し、低繊維素含有量の凝血塊では、圧子は、数秒程度の間に、ほとんど完全に凝血塊に貫入する傾向にある。繊維素構造がより大きい組織化のレベル(及び凝血塊の成熟度)であれば、凝血塊がより強固であり、圧子により貫入される範囲がはるかに少ない、という結果をもたらす。
【0006】
繊維素が豊富な凝血塊の高摩擦特性と組み合わされたこの挙動は、これらの凝血塊型を、特に機械的血栓摘出術による回収において困難にさせる傾向にある。従来のステント回収器では、これらの強固な凝血塊に貫入する、及びこれらの強固な凝血塊を把握することが困難であることが見出される場合があり、またそれらが血管壁に維持する高レベルの摩擦が、凝血塊を押し丸めかつ圧縮する傾向をもたらし得る。
【0007】
このような凝血塊をカテーテル内に吸引する試みはまた、カテーテル内腔に嵌合させるために凝血塊を変形させなければならない故に難題であり得、またこのような凝血塊を変形させるために必要なエネルギーは、吸引によって容易には得られない。これらの凝血塊型の高摩擦係数は、それらをカテーテルの遠位開口部へと吸引することを更に困難にする。凝血塊をより近位の導子の安全装置へと引き込むことができるように、このような凝血塊上に吸引把持部又は外装を保持したとしても、これらの強固な凝血塊が簡単には変形及び再形成する傾向になく、また従って、封止部に影響を与え、また続いて吸引把持部に影響を与えるために、カテーテル先端部の形状へと直ちには適合はしない故に、非常に難しい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、1)凝血塊とカテーテルとの間の摩擦、及び2)それらがカテーテルの先端部内へと吸引される際に、これらの強固な凝血塊を変形させるのに必要なエネルギー/負荷、という主要な課題を解決することにより、繊維素が豊富な凝血塊物質をカテーテル内へと吸引するという課題を解決する。
【0009】
従来の凝血塊吸引は、カテーテル(時折、中間カテーテル、又は吸引カテーテル、又は遠位アクセスカテーテルとして称される)を患者の血管系に挿入して、そのカテーテルを閉塞した凝血塊まで進行させることを伴う。次に、シリンジポンプ又は真空ポンプをカテーテルの近位端部へと取り付けて、真空を加え、凝血塊をカテーテルの先端部内へと吸引してカテーテルを介して排出することを試みる。加えられる真空のレベルは、シリンジポンプに加えられる力又はポンプの設定により非常に限定された範囲へと制御することができ、また典型的には、67kPa~101kPa(500mmHg~760mmHg)の適切に一定の圧力降下(又は「完全な」真空)が加えられる。凝血塊が位置している血管とカテーテルの内部との間の圧力の差異は、(患者の血圧が大気圧よりも高い場合に、101kPa(760mmHg)を超え得る)圧力勾配を発生させ、凝血塊をカテーテル開口部内へと付勢する。
【0010】
しかし、凝血塊の直径はカテーテルの直径よりも大きく、従って、カテーテル内へと吸引される凝血塊に関して、凝血塊は、カテーテル先端部内へと嵌合するように、変形及び延在しなければならない。凝血塊を変形させてカテーテル内へと嵌合させるためのエネルギーは、カテーテル先端部が、凝血塊のための押出ダイの形態として機能する際の、効果的な押出エネルギーである。この押出エネルギーは、凝血塊をカテーテル内へと吸引するための増大した押出エネルギーを必要とする、高繊維素凝血塊を伴う凝血塊の、繊維素含有量に関連する。凝血塊を吸引するための現行の技術は、カテーテルの先端部へと定常状態の真空を適用することを伴うが、しかし、多くの場合、現行の技術では、カテーテル内へと凝血塊を完全に吸引するための十分なエネルギーが提供されない場合が多い。カテーテルの引き続く回収は、凝血塊を引き出さない、又は部分的に回収された凝血塊を引き出すか、のどちらかであり、かつENT(新しい領域における塞栓化)を発生させる、部分的に露出した凝血塊を側面分枝又は新しい血管内へと見失う危険性を、発生させる。
【0011】
本発明は、高繊維素含有量を有する凝血塊を含む凝血塊を完全に吸引するための、カテーテルの能力を向上させる。上記のように、凝血塊をカテーテル内へと吸引する又は吸い込んで、血管系外へと排出する目的により、カテーテルの先端部へと真空を加えて、カテーテルと血管との間に圧力差を発生させる。本発明において詳細に述べられる装置を操作する場合、通常、カテーテルの先端部にて加えられる定常状態の真空は、拍動性形態又は波形形態へと変更され、これにより、一設計形態では、時間に対してプロットするカテーテル先端部と血管との間の圧力差は、正弦波に類似する。波形形態又は拍動性形態での凝血塊への吸引力の適用は、凝血塊を変形させることができ、かつ連続的又は一定の吸引力を適用するよりも更に迅速かつより効果的に、凝血塊をカテーテル内へと入り込ませるのに必要な抵抗力又は押出力を克服する、「衝撃荷重」を凝血塊へと適用する。
【0012】
なお、凝血塊が吸引カテーテルの遠位先端部を閉塞する場合、凝血塊の一部はカテーテルの先端部の内部にある。血栓の圧縮及び処置が凝血塊の摩擦を増大させることを、試験が示した。従って、カテーテルの先端部にて凝血塊を圧縮することで、凝血塊とカテーテル先端部の内側表面との間の静摩擦が更に増大する。凝血塊とカテーテルとの間の静摩擦は、凝血塊をカテーテル内へと完全に吸引することを可能にするために、克服される必要がある。凝血塊に拍動力を適用することにより、凝血塊がわずかに近位及び遠位に振動又は移動し得て、これにより、凝血塊とカテーテルの内部表面との間の相互作用が、静摩擦から動摩擦相互作用へと変化する。我々の試験において、凝血塊の動摩擦は静摩擦よりも低くなることを示し、従って、本発明において詳細に述べられる装置を使用した場合に、凝血塊を除去する総力が減少する。
【0013】
血栓の繊維素マトリックスは多孔性であり、また赤血球は、圧力差及び繊維素の密度に応じて、マトリックス内で移動して流れる。カテーテル先端部にて拍動エネルギー又は真空を適用することにより、凝血塊成分の本移動を促進することができ、繊維素マトリクスから赤血球を吸引して排出させることを可能にする。従って、次に、減少したエネルギーにより、凝血塊の赤血球含有量が減少して繊維素マトリックスの変形を促進する故に、血栓の吸引が容易である。
【0014】
本発明は、0%~100%にて繊維素含有量を変化させることによる凝血塊の吸引に好適であり、また好ましくは、30%を超える繊維素含有量を有する凝血塊又は血栓の吸引に適している。本発明は、ヒト血管系からの血餅の除去に関する。特に、本発明は、前部循環及び後部循環を含む神経血管からの血餅の除去に、より特定的に関係する。塞栓形態での、血餅、又は凝塊化した血液粒子の除去技術及び手段は、既に周知であり、かつ使用において確立されている。体内において凝血塊の存在が認められた場合、投薬又は外科的処置の形態での最善の医療(BMT)により治療してよい。外科的処置は、機械的手段を使用して、凝血塊を引き出しかつ除去することを伴い得る。血餅はまた、塞栓として同定及び称され得る。外科的処置は、総腸骨動脈などの遠隔位置において動脈系内に導入されてきたカテーテルの遠位端部により、血管内で凝血塊又は塞栓形成部に到達される、低侵襲性の血管内処置の形態であってよい。これは周知のものであり、また本発明の背景技術に関連する。
【0015】
本明細書に記載された血管内処置に関連して、外科的血管内処置にわたって、凝血塊の除去をもたらすために使用される手段のうち1つは、一般に、カテーテルを介した、凝血塊の密集体の「吸引」として称されるものを使用することである。吸引は、カテーテルの遠位端部を介して、血管内で負圧又は吸い込みが凝血塊の密集体に適用され得ることによる技術であり、カテーテルは、近位端部において真空源へと接続されている。
【0016】
たとえ、それらに適用される真空又は吸引が最大強度であっても、移動又は除去が不可能な凝血塊が存在することが、周知である。本発明は、この状況及びこれらの種類の困難な血餅の除去に関するが、これらに限定されない。本発明は、凝血塊に隣接する、又は接触するカテーテルの遠位端部を介して、連続する交互の力を含む拍動エネルギーを適用することにより、血餅を除去する方法を示して記述し、この連続する交互の力は凝血塊に適用され、かつ凝血塊を吸引し、カテーテルを介して戻すことに加えて、凝血塊を変形させる効果を有する。拍動力はまた、ある時間にわたって凝血塊に加えられる連続する拍動の形態であるとして説明され得、一般に、周波数と称される。各拍動は、カテーテルの遠位先端部における、流体の連続する正及び負の容積変位からなる。この周期性の正及び前方への突出する圧力、続いて負圧は、一般には数学的に説明することができるが、正弦関数に限定されない。
【0017】
吸引機能は、カテーテルの先端部にて、約67~101キロパスカル(kPa)(水銀柱で約500~760ミリメートル(mmHg))の負圧の形態にて負圧を印加して、カテーテルの遠位端部から近位端部への流れを発生させ、血液回路の一部であり、かつ真空源に近接する容器においてこの流れの量を回復させる、ということが知られている。正圧及び負圧の拍動の連続は、吸引された負圧と共に、カテーテルにわたって印加される。拍動力の供給源は、吸引吸い込み源から分離され、かつ独立している。
【0018】
拍動性の正圧及び負圧の連続を表す波形により、本発明の工程が構成される。
【0019】
それらに適用される吸引のレベルにより移動又は除去が不可能な凝血塊が存在することが、周知である。本発明は、これらの種類の凝血塊の除去に関する。本発明は、遠位先端部においてカテーテルにわたって拍動力を凝血塊に適用する方法を記載し、本方法は、1つ以上の断片での凝血塊を吸引してカテーテル内へと回収する効果を有する。拍動力はまた、ある時間にわたって凝血塊に適用される連続する拍動の形態である。各拍動は、カテーテルの遠位先端部における、流体の連続する正及び負の容積変位からなる、又は負の容積変位を変化させる。
【0020】
負圧を変化させるこの期間周期は、一般には数学的に説明することができるが、正弦関数に限定されない。連続する拍動性の圧力は、定常状態の負圧/吸引力と共に印加される。いずれの吸引もなく拍動を適用することにより血餅を回収することができることが、更なる本発明の工程として観察されてきた。
【0021】
カテーテルの先端部において発せられる圧力の正弦特性に関して、次に、圧力特性は、次の方法にて純粋な正弦波について変化する場合がある。正弦波は、周波数及び振幅において等しいが、正又は負であり得る、4つの構成要素を有するものとして、この目的のために記述され得る。波形の第1部分が、ピストンの前進運動により誘導される増大する圧力である場合、次に、第2部分は、ピストンの逆向運動により引き起こされる負圧であり得る。ピストンは、シャフトの長さに沿って周期的に回転し、また従ってピストンを前進運動及び逆向運動へと方向づけるシャフト又は接続ロッドにより、駆動される。波形がこの運動を記述する故の観点から、増大する圧力を示す曲線の第1部分は、立ち上がり時間として称される。ピストンの逆向運動を表し、またカテーテルの先端にて負圧をもたらす曲線の次の部分は、立ち下がり時間又は減衰時間として称される。この曲線は、各周期にて、1つの正のピーク及び1つの負のピークを有する。連続拍動を構成する連続周期では、ピークからピークへの時間は正弦波と同一である。正弦波のピークは、正から負へと転換するのと同時に波形の強度又は振幅が連続的に変化する際に、持続時間を有さない、と言える。
【0022】
本発明は、次の方法において、純粋な正弦波に対して変動し得る、カテーテルの先端部において適用される波形特性を記載する。1つは、立ち上がり時間が減衰時間と等しくない場合がある、ということである。立ち上がり時間は、立ち下がり時間の持続時間よりも長い、又は短い持続時間であり得る。第2に、波形のピークは、持続時間又は滞留時間を有してよい。滞留時間の目的は、流体又は血液がピストンチャンバ内の空間内へと充填されるいくらかの時間、又はチャンバの先端部における開口部を介して通過する時間を可能にすることである。
【0023】
血餅を引き出して回収するために適用される拍動の性質は、次の変数、又は制御態様により、定義することができる。
往復運動
周波数
振幅
立ち上がり時間
滞留時間
減衰/立ち下がり時間
連続での正変位及び負変位両方の往復運動の適用が周知ではない一方で、記載されるように、往復運動に関して周知の利用可能な多数の方法が存在する。
【0024】
1つは、チャンバ内で動くピストンがクランクシャフト又はディスクの外半径へと接続され、ピストンを往復式で駆動させるように回転することによる、純粋な機械的周期性駆動システムである。この往復距離は、ストローク長さとして知られている。正変位ポンプにて本方法を使用するが、連続した正変位及び負変位ではないことが、周知である。
【0025】
往復運動を発生させる別の周知の方法は、電磁誘導を使用した電気機械的方法によるものであり、磁界がワイヤのコイルにおいて、あるいは、各方向における異なる力にわたる更なる制御のために、ワイヤの2つのコイルにおいて誘導され、チャンバにおいてピストンを往復式で動かすために必要な力を発生させる。
【0026】
電力源は、交流電流若しくは交流電圧又は直流電流であり得、モード制御回路を切り替えることにより、正周期及び負周期が達成される。
【0027】
従来のように、正圧及び負圧の対称的な正弦波形をもたらす周期運動は、最も単純である。波形の形状を変更することが望ましい場合があり、これにより、負圧が正圧よりも高くなる、又は、これにより、圧力増大率が圧力低下率よりも低くなる。正圧が存在しない、又は正圧が負圧よりも低く、これにより凝血塊の密集体の振動が減少することが有利であり得る、ということが本明細書で理解される。ピークにおける滞留時間の導入及び波形の谷が、各周期の正の部分及び負の部分の両方において生じる流体変位ための時間を可能にすることが、本発明の工程として理解されかつ表される。これは、増大する周期の周波数としてより適切かつ重要である。
【0028】
本発明によると、真空源及び捕集チャンバ、凝血塊の位置へと負圧を伝達するカテーテル、並びに真空源により提供される定常状態の真空を一連の拍動又は波形形状へと変化させる装置を含む、血管から閉塞性凝血塊を除去するためのシステムが提供される。一実施形態では、本装置は機械的駆動システムを含み、流体チャンバ内で動くピストンがクランクシャフト又はディスクの外半径へと接続され、ピストンを往復式で駆動させて、連続する正流体変位及び負流体変位を発生させるように回転する。この可変流体変位は、真空ポンプにより提供される定常状態の真空又は負変位と組み合わされて、血管系内の凝血塊に隣接したカテーテルの先端部において、カテーテルと血圧との間に波形圧力差を生成する。
【0029】
1つの反復では、正流体変位及び負流体変位を生じさせる往復運動は、電磁誘導を使用した電気機械的方法により発生し、磁界がワイヤのコイルにおいて、あるいは、各方向における異なる力にわたる更なる制御のために、ワイヤの2つのコイルにおいて誘導され、流体チャンバにおいてピストンを往復式で動かすために必要な力を発生させる。
【0030】
別の反復では、流体変位は、圧電効果などのその他の電気機械的手段を使用してピストンを動かすことにより、発生する。
【0031】
別の反復では、流体変位は、空気抗打機などのその他の機械的手段を使用して発生する。
【0032】
本発明の一形態では、拍動圧力差又は波形圧力差を発生させる装置は、真空ポンプとチャンバとに分離され、かつ管材及びコネクタを介して接続される。別の反復では、本発明の装置及び真空ポンプは、単一ユニットに統合される。
【0033】
本発明の一実施形態では、カテーテル先端部において圧力差を発生させるピストンは、流体チャンバとして機能するカテーテル本体内に配置される。ピストンは、カテーテルの近位端部に配置された駆動システムへのリニア接続を介して、カテーテルにて近位及び遠位に移動する。あるいは、ピストンは、カテーテル内に位置づけられた電子手段を介して、カテーテルにて移動する。
【0034】
本発明の一形態では、波形圧力差を生成するための流体変位を発生させる装置は、流体チャンバ内に、機械的又は電気機械的駆動装置を使用して前進及び後退する単一のピストンを含む。装置の異なる形態では、ピストンを有する複数の流体チャンバが、複雑な波形を容易にするために接続される。装置の変位出力は、次に、独立して動作するようにプログラム可能な各ピストンの、変位の和分とすることができる。
【0035】
装置の一反復では、流体変位を発生させるためのピストンは、ピストンと流体チャンバとの間の移動シールを伴うシリンジに類似する。別の反復では、その他の周知の油圧シリンダーの形態を使用して、異なる波形形態を発生させる。
【0036】
本発明の別の反復では、電気機械的手段によりカテーテルの先端部が振動して、カテーテルと凝血塊との間の摩擦を低減させて、凝血塊を吸引するために必要な押出エネルギー又は変形エネルギーの克服を手助けする。カテーテル先端部の振動を、0.076cm(0.030”)の直径内腔を超える又はそれに等しい断面積を伴う大型の吸引内腔と組合せることができ、また好ましい実施形態では、0.10cm(0.040”)の直径内腔を超える又はそれに等しい断面領域を有する大型の吸引内腔と組合せることができる。振動する先端部を伴うカテーテルは、本特許の箇所に記載されるように、定常状態の吸引真空又は波形圧力差を用いて、使用されてよい。先端部の振動周波数は、5Hzから20,000Hz超の超音波周波数の範囲であってよい。
【0037】
本発明によれば、
ガイドカテーテル又は外装及び中間カテーテルを提供することであって、中間カテーテルが、遠位開口部を有し、またガイドカテーテルの内腔内で前進することができるように構成されている、ことと、
閉塞に近位の第1血管内へと、ガイドカテーテルを挿入する工程と、
中間カテーテルの近位端部を、真空ポンプから構成される吸引源、捕集チャンバ、及び本発明の機器に接続する工程と、
中間カテーテルの先端部が、閉塞に隣接する血管へとガイドカテーテルの遠位を延在させるまで、ガイドカテーテルの内腔を介して中間カテーテルを前進させる工程と、
中間カテーテルの近位端部に定常状態の吸引を適用する工程と、
中間カテーテルが、当該中間カテーテルの遠位内腔を介して当該吸引を誘導するように構成されて、凝血塊を当該中間カテーテルの開口部内へと吸引する工程と、を含む、血管から閉塞性凝血塊を除去する方法もまた、提供される。
【0038】
凝血塊が吸引されない場合、本発明の装置上のスイッチが、カテーテルと凝血塊周辺の血圧との間に波形圧力差を提供する。波形圧力差は、凝血塊の押出エネルギーを克服し、凝血塊とカテーテルとの間の摩擦を減少させ、これにより、中間カテーテルを介して凝血塊が捕集チャンバ内へと吸引され得て、血管系から排出される。
【0039】
本発明の一実施形態では、この波形は、固定周波数及び振幅を伴い、かつ同一の立ち上がり時間及び減衰時間を伴う正弦波に、類似している。
【0040】
本発明の別の実施形態では、波形のピーク間の周波数又は時間は変化してよく、また時間と共に増大又は減少してよい。複数の高周波パルス、続いて多数の低周波パルスなどの反復する周波数のパターンを、利用してよい。
【0041】
同様に、その他の実施形態では、波形の振幅は時間と共に変化してよく、かつ増大若しくは減少する振幅、又は異なる振幅パルスの組み合わせからなることができる。
【0042】
別の実施形態では、波形の立ち上がり時間及び減衰時間は変化してよく、これにより、減衰時間は立ち上がり時間よりも短い、若しくはその逆である、又は異なる立ち上がり時間と減衰時間との組み合わせ、例えば、のこぎり波形は、凝血塊の吸引において有益であってよい。
【0043】
本発明の一実施形態にて利用される別の波パターンは、切頭型の波パターン又は方形波パターンであり、ピークにて、若しくは波の谷にて、又はその両方にて、滞留時間が波周期内へと組み込まれる。滞留時間はまた、周期における任意の地点にて波パターン内へと組み込まれてよく、例えば、ステップ波パターンを発生させる。
【0044】
本装置の別の実施形態では、圧力差の振幅は、波周期のほんのわずかな時間、凝血塊に正圧が印加され得て、凝血塊に適用される衝撃荷重を増大させるようなものである。
【0045】
本発明の一実施形態では、波形は、本特許の箇所に記載されるような、多数の波形又は特徴の組み合わせである。別の実施形態では、本発明は、特定の圧力差の波形をカテーテル先端部に適用するためにプログラム可能であってよく、これは、異なる凝血塊の種類に関して最適化されてよく、例えば、赤血球が豊富な凝血塊に関して最適化された波形とは異なり得る、繊維素が豊富な凝血塊に関して、事前プログラム式最適化波形を適用してよい。
【0046】
本方法の追加の変形形態もまた提供され、変形形態には、
中間カテーテルが閉塞に初めて接近する際に、波形圧力差が中間カテーテルに適用される上記のような方法が、含まれる。
【0047】
本方法の追加の変形形態は、中間カテーテルが処置において使用されない場合に、ガイドカテーテル又は外装に波形圧力差を適用することである。あるいは、波形圧力差は、中間カテーテル及びガイドカテーテルの両方に同時に適用することができる。
【0048】
本特許に記載された中間カテーテルに適用される波形又は拍動圧力差はまた、中間カテーテルがステントリーバ装置と共に使用される場合に使用され得る。波形圧力差は、凝血塊とカテーテルとの間の摩擦を減少させ、凝血塊を変形させる手助けをする。これは、凝血塊がステントリーバ装置により中間カテーテル内へと引き込まれる際に、凝血塊に作用する外装力を減少させる、追加の利点を所与する。
【0049】
本発明によれば、
カテーテル、及び
拍動真空力を発生させて、カテーテルの遠位端部にて圧力勾配を律動的に送るための装置を含む、血管から閉塞性凝血塊を除去するためのシステムが提供される。
【0050】
一例では、装置は、真空ポンプ及びパルス発生器を含む。
【0051】
一実施形態では、パルス発生器は真空ポンプと一体型である。
【0052】
別の実施形態では、パルス発生器は真空ポンプから分離されている。
【0053】
パルス発生器は、一例では、真空ポンプとカテーテルの近位端部との間に配置されてよい。
【0054】
それらは、真空ポンプとカテーテルの近位端部との間の可撓性管材であってよい。
【0055】
一実施形態では、パルス発生器は可撓性管材に取り付けられる。
【0056】
パルス発生器は、一例では、往復運動式プランジャを備える。
【0057】
パルス発生器は、別の例では、回転可能なカムを備える。
【0058】
カムは、管材における抗力を最小化するための外側軸受を含んでよい。外側軸受は、摺動する外層を含んでよい。
【0059】
一例では、可撓性管材は、その長さに沿って均一な断面である。
【0060】
一実施形態では、可撓性管材は、その長さに沿って変更可能な断面である。
【0061】
本システムは、拍動真空源を発生させるための装置を制御するための、コントローラを含んでよい。コントローラは、時間の経過による波形における圧力の変化に適応し得る、又は波形において圧力を徐々に変化させるように構成される。
【0062】
一例では、波形は、固定周波数及び振幅、並びに同一の立ち上がり時間及び減衰時間を有する。
【0063】
別の例では、波形は時間と共に変化する周波数を有する。
【0064】
波形は、時間と共に変化する振幅を有してよい。
【0065】
波形は、異なる立ち上がり時間及び減衰時間を有してよい。
【0066】
一例では、波形の立ち上がり時間及び減衰時間は、時間と共に変化する。
【0067】
場合によっては、波形は、各波のピーク及び谷にて滞留時間を組み込んだ切頭型の波形又は方形波形である。
【0068】
波形は、各波内に1つ以上の滞留時間を組み込んで、ステップ波形態を生じさせてもよい。
【0069】
本発明はまた、
閉塞性凝血塊に隣接した位置へとカテーテルを送達する工程、及び
カテーテルを使用して、凝血塊に拍動真空を適用する工程、を含む、血管から閉塞性凝血塊を除去するための方法を提供する。
【0070】
本方法は、場合によっては、波形において、圧力を時間と共に変化させる工程を含む。
【0071】
波形は、固定周波数及び振幅、並びに同一の立ち上がり時間及び減衰時間を有してよい。
【0072】
波形は、時間と共に変化する周波数を有してよい。
【0073】
波形は、時間と共に変化する振幅を有してよい。
【0074】
波形は、異なる立ち上がり時間及び減衰時間を有してよい。
【0075】
波形の立ち上がり時間及び減衰時間は、時間と共に変化してよい。
【0076】
波形は、各波のピーク及び谷にて滞留時間を組み込んだ切頭型の波形又は方形波形であってよい。
【0077】
波形は、各波内に1つ以上の滞留時間を組み込んで、ステップ波形態を生じさせてもよい。
【0078】
一実施形態では、本システムは、吸引された血液又は物質を受容するように構成されたキャニスタを含む。
【0079】
一例では、本システムは、キャニスタに接続された真空ポンプを含む。真空は、キャニスタを介して引き起こされてよい。
【0080】
一実施形態では、本システムは第1の真空パルス発生器を含む。一例では、本システムは第2の真空パルス発生器を含む。真空パルス発生器は、同時に、又は異なる時間にて個別に動作して、発生する真空パルスを変化させるように構成されてよい。
【0081】
一例では、第1のパルス発生器は、ハウジング及びハウジング内で回転可能及び/又は振動可能な要素を有する弁を含む。
【0082】
一例では、第2のパルス発生器は、可撓性管材に係合するように適応される。第2の真空パルス発生器は、回転可能なカムを含んでよい。
【0083】
別の例では、第1の真空パルス発生器はポンプを含む。本システムは、ポンプの両側に配置された逆止め弁を更に含んでよい。
【0084】
更なる例では、本システムは、吸引された血液又は物質を受容するように構成されたキャニスタを含み、また第1のパルス発生器は、キャニスタを介して移動可能な閉塞子を含む。
【図面の簡単な説明】
【0085】
本発明は、例示目的のみで与えられたそのいくつかの実施形態の以下の説明から、添付の図面に関連して、より明確に理解されるであろう。
図1】本発明を説明する目的のための、脳におけるネットワークに対する類似の脳血管管状ネットワークの表現において詰まった、凝血塊の図である。
図2】例示目的のみで、吸引源又は連続する負の吸い込み源、及び拍動圧力勾配源が、カテーテルを介して両方とも組み合わされて共通効果をもたらすことを、示している。
図3】概略形態のみにて、循環系とインターフェース接続している完全な血液回路を示す。
図4A】例示目的のみで、カテーテルの遠位先端部において圧力差波形を発生させる、周期運動を発生させる手段を示す。
図4B】例示目的のみで、カテーテルの遠位先端部において圧力差波形を発生させる、周期運動を発生させる手段を示す。
図4C】例示目的のみで、カテーテルの遠位先端部において圧力差波形を発生させる、周期運動を発生させる手段を示す。
図5A】往復運動の伝導を発生させることが可能な正圧及び負圧のパルスを表す、多数の可能な波形形態特性を示す。
図5B】往復運動の伝導を発生させることが可能な正圧及び負圧のパルスを表す、多数の可能な波形形態特性を示す。
図5C】往復運動の伝導を発生させることが可能な正圧及び負圧のパルスを表す、多数の可能な波形形態特性を示す。
図5D】往復運動の伝導を発生させることが可能な正圧及び負圧のパルスを表す、多数の可能な波形形態特性を示す。
図5E】往復運動の伝導を発生させることが可能な正圧及び負圧のパルスを表す、多数の可能な波形形態特性を示す。
図6】可変速度を伴う、電動の往復式駆動装置の一例である。
図7】脳血管の複雑性を示す血液回路において詰まった血餅に接触する又は隣接する、カテーテルの遠位先端部を示す。
図8】脳血管の複雑性を表す血液回路において詰まった凝血塊に強固に嵌入したカテーテルの遠位先端部を示す-これは、~67kPa(~500mmHg)の率における吸引又は吸い込みの結果として、である。
図9図8の凝血塊が、少数(3~5)の往復運動の拍動に従ってカテーテル内へと吸引されてきたことを示す。
図10A】血管内のカテーテル内へと吸引される、凝血塊の概略図である。
図10B】血管内のカテーテル内へと吸引される、凝血塊の概略図である。
図10C】血管内のカテーテル内へと吸引される、凝血塊の概略図である。
図10D】血管内のカテーテル内へと吸引される、凝血塊の概略図である。
図11】定常状態の真空に関する、時間に対する圧力差のグラフである。
図12】本発明により発生する、拍動圧力差波形に関する時間に対する、圧力差のグラフである。
図13】負圧差及び正圧差を伴う圧力差波形である。
図14】変化する周波数を伴う圧力差波形である。
図15】減衰時間及び立ち上がり時間を伴う圧力差波形である。
図16】変化する振幅を伴う圧力差波形である。
図17】切頭型の波を伴う圧力差波形である。
図18】波内に滞留時間を伴う圧力差波形を示す。
図19】本発明の凝血塊除去システムの図である。
図20A】ピストン型の拍動真空発生器を示す。
図20B】ピストン型の拍動真空発生器を示す。
図20C】カム型の拍動真空発生器を示す。
図21】別の拍動真空発生器の図である。
図22A】別のカム型の拍動真空発生器を示す。
図22B】別のカム型の拍動真空発生器を示す。
図23A】拍動吸引システムを示す。
図23B図23Aの拍動吸引システムの要素を示す。
図23C図23Aの拍動吸引システムの要素を示す。
図24A】拍動圧力波形を示す。
図24B】拍動圧力波形を示す。
図25】本発明の別の拍動吸引システムの概略である。
図26】本発明の別の拍動吸引システムの一部の概略である。
図27A】一方向弁の図である。
図27B】一方向弁の図である。
図28A】本発明の拍動吸引システムの一部を示す。
図28B図28Aの拍動吸引システムの要素の、種々の状態を示す。
図28C図28Aの拍動吸引システムの要素の、種々の状態を示す。
図28D図28Aの拍動吸引システムの要素の、種々の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0086】
本発明の具体的な実施形態が、ここで図面に関連して詳細に説明され、同一の参照番号は、同一又は機能的に類似した要素を示す。用語「遠位」又は「近位」とは、以下の記載において、治療する医師に対する位置又は方向に関して使用される。「遠位」又は「遠位に」とは、医師から離れた位置又は医師から離れる方向である。「近位」又は「近位に」とは、医師に近い位置又は医師に向かう方向である。
【0087】
大脳、冠状動脈、及び肺静脈にアクセスすることは、複数の市販の製品及び従来の処置工程を使用することを伴う。ガイドワイヤ、ガイドカテーテル、血管造影カテーテル及びマイクロカテーテルなどのアクセス製品は、その他の場所に記載され、カテーテル処置室の手順で定常的に使用されるものである。以下の記述において、これらの製品及び方法は、本発明の装置及び方法と併せて用いられることが想定され、そのことを詳細に説明する必要はない。
【0088】
以下の詳細な記述は、単に例示的なものであり、本発明又は本発明の適用及び使用を制限することを意図するものではない。本発明の記述は、多くの場合は頭蓋内動脈の処置との関連におけるものであるが、本発明はまた、前述のようにその他の身体通路においても使用され得る。
【0089】
図1参照番号1は、脳血管に対する複雑性に類似した内腔ネットワークの例示のみを示す。参照番号2は、脳血管ネットワーク内に詰まった凝血塊を表す図である。参照番号3は、血液がネットワークに進入する場所を示し、また参照番号4は、血液がネットワークから進出する場所を示す。
【0090】
図2は、パルス発生システムを伴う、回路内へと組み合わされた定常状態の真空ポンプの概略的表現を示す。この回路は、次に、カテーテルの近位端部に接続される。吸引吸い込みを発生させるための真空ポンプ11は、承認された標準の製図図示記号により表される。周期性の往復運動機械12が、ピストンチャンバ内にて往復式で動くプランジャ16と共に示される。吸引回路内の流体捕集容器13は、体内から吸引された内容物の全てを捕集する。吸引回路内の管材14は、往復運動装置がカテーテルの近位端部に接続する同一地点において、カテーテルの近位端部へと接続される。これは、Y接合コネクタを使用して達成される。カテーテル近位端部に接続するために、コネクタ15が提供される。カテーテルは、次に、通常、総腸骨動脈(ここでは図示せず)において、止血弁を通過して血管系へと進入する。
【0091】
図3は、血管及び脳血管系を含む系全体の完全な概略を示す。本発明の装置は概略方式50にて示され、また定常状態の真空ポンプ32及び拍動流発生器31を含む。これらのポンプの出力は、コネクタ51において、カテーテル34の近位端部へと組み合わされ、かつ接続される。カテーテルは、止血弁40において血管系内へと導入されて、凝血塊41の目的の位置へと前進する。カテーテル先端部35が凝血塊41に接近した場合、カテーテル先端部において、ポンプ32からの定常状態の真空が適用され得る。凝血塊により吸引流が遮断される場合、拍動流発生器31は、カテーテル先端部において圧力差波形を発生させるように嵌入され得て、凝血塊41を吸引する。
【0092】
図4A~Cは、正弦波形状に一致する圧力出力を発生させる拍動流発生器の図解である。ピストン65は、駆動ピン63を含む回転ホイール61により前後する。この駆動ピン63は、構成要素62のスロットに嵌入し、リニア方向のみに移動することができるように抑制される。従って、ホイール61の回転運動は、ホイールが回転する際に、示されるように、方向66に移動するピストン65の直線運動へと転換される。68における流体の圧力出力は、正弦波に一致する。
【0093】
図5は、往復運動の伝導を発生させることが可能な正圧及び負圧のパルスを表す、変化する周波数を有する多数の可能な波形形態特性を示す。
【0094】
図6は、可変速度を伴う、電動の往復式駆動装置83の一例である。本構成では、往復式駆動シャフト(図示せず)は、シリンジ85のプランジャに接続される。駆動装置はトリガ84を使用して作動され、またピストン81を前後に移動させて、シリンジ85の先端部にて拍動圧力出力を生じさせる。
【0095】
図7は、脳血管の複雑性を示す血液回路において詰まった血餅に接触する又は隣接する、カテーテルの遠位先端部を示す。図8は、血管回路内に依然として詰まった血餅内に強固に嵌入した、カテーテルの遠位先端部を示す。本実施例では、67kPa(500mmHg)の真空がカテーテルへと適用されて凝血塊を吸引するが、この定常状態の吸引エネルギーの適用は、凝血塊を吸引するために十分ではなかった。図9は、図8の凝血塊が、カテーテルの先端部において適用された少数(3~5)の往復運動の拍動の後に、カテーテル内へと完全に吸引されてきたことを示す。
【0096】
図10Aは、血管205内に詰まった閉塞性凝血塊201の略図を示す。カテーテル203が血管系へと導入されてきて、先端部202が凝血塊に接近する。図10Bは、凝血塊214と接触したカテーテル210を示す。凝血塊212の一部は、カテーテル先端部211内へと吸引されてきて、先端部を閉塞させ、かつカテーテル210の端部を封止する。カテーテルが遮断される際に、カテーテルPにおける圧力は、血管Pにおける圧力とは異なる。凝血塊に対して作用する圧力差は、(P~P)の関数であり、またこれは、凝血塊を変形させ、かつカテーテル内へ流入又は押出すように付勢する。拍動圧力差の適用は、凝血塊に適用されるエネルギーを増大させ、かつ凝血塊を変形させて流すことを手助けする。図10Cは、拍動圧力差が凝血塊220に適用される場合に、インターフェース223において凝血塊が変形し得て、凝血塊がカテーテル221の開口部に進入して完全な吸引を促進することを示す。凝血塊224とカテーテルの内側表面222との間の摩擦はまた、拍動圧力差の適用により減少し、凝血塊の完全な吸引を促進する。図10Dは、カテーテル内への完全な吸引に近づいている凝血塊232を示す。
【0097】
図11~18は、波形の範囲に関する、時間に対する圧力差の一連のグラフである。圧力差ΔPは、図10Bに示すように、凝血塊に対して作用する圧力であり、また凝血塊により先端部が閉塞する場合の、血管における血圧とカテーテル先端部における圧力との間の差異に関する。
【0098】
図11は、定常状態の真空に関する、時間に対する圧力差のグラフを示す。本グラフでは、真空ポンプがスイッチオンされた後に、定常状態の状況が達成された場合に、プラトー301に到達するまで、圧力差の増大300が発生する。
【0099】
図12は、本発明により発生する、拍動圧力差波形に関する時間に対する、圧力差のグラフを示す。グラフ320は、固定周波数(F)及び振幅(A)を伴う正弦波に類似している。
【0100】
図13は、波周期の一部の間に、カテーテル先端部において、正圧差341が凝血塊に対して印加されることを示す、圧力差波形340を示す。
【0101】
図14は、周波数FがFとは異なりかつ時間と共に変容する、変化する周波数を伴う、圧力差波形を示す。
【0102】
図15は、減衰時間及び立ち上がり時間を伴う圧力差波形を示す。本実施例では、減衰時間tは立ち上がり時間tよりも短く、のこぎり波形を発生させることが示される。
【0103】
図16は、変化する振幅を伴う圧力差波形を示す。振幅の絶対値は、ここで示されるように時間と共に変化し得、A、A、及びAは全て異なる。振幅の最大値及び最小値もまた、時間と共に変化し得る。
【0104】
図17は、切頭型の波を伴う圧力差波形を示す。この波形は、最小圧力差及び最大圧力差の地点において、滞留時間400及び401を可能にする。
【0105】
図18は、滞留時間が波内に導入されてきた、圧力差波形を示す。450及び451、又は452に示されるような単一の滞留時間などの複数の滞留時間を、周期に導入することができる。
【0106】
図19は、本発明の別の構成500の図解である。本概略では、パルス発生器(501)は、真空ポンプ502に対して別個の装置である。本パルス発生器501は、本特許の箇所に記載されるように、カテーテル503の先端部において圧力差波形を発生させ得るが、非血液接触型である。パルス発生器501は、コネクタ管材504を選択的に圧縮することにより、波形を生じさせる。これは、コネクタ管材504が使い捨て可能であり、かつ単回使用のみである故に、使用に先立った装置の部分の滅菌を必要としない、という利点をもたらす。本使用方法は、近位弁/封止部506を伴うコネクタ505において、カテーテル503の近位端部に接続された真空ポンプ502及びパルス発生器501を伴う前述したものと、同一である。カテーテル503は、血管系を介して、凝血塊508の、血管507における目的の位置へと導入される。この場合、ステントリーバ型の凝血塊捕捉装置509もまた、示される。
【0107】
図20Aは、図19に示されるものなどの、パルス発生器550の内部詳細を示す。本構成では、往復運動式プランジャ551は、管材552を圧縮して圧力波を生じさせることができる。管材552は弾性であり、またプランジャが上昇し次第、その形状を回復させる。図20Bに示すプランジャ560のストロークは変化させることができ、かつ異なるプランジャ幅又は複数のプランジャにより、変位変動を提供することができる。図20Cは、カム562によりプランジャが置換される、本設計の変形形態を示す。カムの回転は、パルス発生性能を提供する。
【0108】
図21は、複数のカムを連続して含む、パルス発生器の有利な設計を示す。真空ポンプに最も近いカム602が回転して、管材600を封止することができ、これにより、カム604及び605の回転が、管材において正圧を発生させ得る。管材600は可撓性であり、かつ直線状であってよい、又は示されるように段階状の直径を有してよい。カムは、いくらかの、又は全てのカムが任意の所与の時間において機能し、それぞれが異なる周波数を伴うように、又は全く動作しないように、プログラムすることができる。
【0109】
カムと可撓性管材との間の摩擦を減少させるために、各カムは、図22A及びBに示すような慴動する外層を有してよい。カム651は偏心軸650上で回転して、管材653を圧縮する。摩擦を減少させるために、カムは、管材に対して回転しない、低摩擦の慴動する外輪652を有する。図22Bは、カム670の位置が図22Aに対してどのように回転するかを示すが、外輪672は管材壁673に対して回転しなかったことを示す。
【0110】
図23aは、真空ポンプ714及びパルス発生システムを含む、本発明の装置700を示す。図23bは、システムのパルス発生構成要素の、より詳細な図を示す。真空ポンプ714は、ダイアフラム若しくはベーン若しくはピストンポンプ、又は蠕動ポンプ、あるいは負圧差を発生させるその他の手段を含んでよい。本真空ポンプは、管材705により、吸引された血液又は物質を受容するように構成された受容キャニスタ707に接続されている。キャニスタ内には安全弁が提供されてよく、流体又は物質が管材705に進入してポンプに損傷を与えることを防止する。管材706は、キャニスタを回転弁711へと接続させる。管材708は、回転弁711を、患者内に挿入されるカテーテル(図示せず)に接続させ、また直接接続させる、又は接続管材、若しくはコネクタ、若しくは回転止血弁、あるいは同類のもの、のどれかを更に接続させる。管材708は、管材708の組立体、回転弁711、及び管材707が容易にシステムへと組み立てられ得る、又は容易にシステムから取り外され得るように(それらがシステムの使い捨て可能要素であり得るように)構成されたクリップ709により、所定の位置に保持される。所定の位置内へとクリップ止めされた場合、管材708は、回転可能なカム710と支持プレート712との間に位置する。使用時において、一度スイッチ701が「オン」位置に移動すると、システムは、真空ポンプ714を用いて定常状態の真空を供給することが可能である。真空ポンプは、管材705を介してキャニスタ707を空にし、また従って、(一度回転弁711及びカム710が開放位置にあると)管材706及び708を介して吸い込み力又は吸引力が伝達される。
【0111】
図23b及び図23cは、パルス発生システムの動作を示す。回転弁711は、引入れ管材コネクタ717及び排出管材コネクタ716、並びに内部回転要素713を伴う、ハウジング715を含む。回転要素713が、コネクタ717又は716のどちらかの開口部を覆う場合、弁が閉じられて、管材708がもはやキャニスタ707内の真空に曝されない。従って、要素713を回転させる、又は振動させることにより、管材708を介して真空パルスが送達され、またこれは、前述のように、執拗な凝血塊物質の回収に関して有利であり得る。しかし、吸引される物質の性質及び状態が、管材708において発生するパルス波形に影響を与える場合があり、かつ処置カテーテルに伝達され、また従って、患者にも伝達されて、影響を与える場合がある。図24bは、回転弁711などの単純なオン/オフ弁を伴う真空ポンプにより発生する、代表的なパルスを示す。垂直軸851は圧力を表し、また水平軸850は時間を示す。任意のパルスを発生させることに先立って、比較的定常状態にある真空レベル853が、管材708において提供される。弁711の閉鎖は、真空源から管材を遮断する。管材708が、液体血液又は非常に軟らかい凝血塊を吸引するカテーテルに接続される場合(ケース1)では、弁711の閉鎖がカテーテルにおける真空の急速な減衰を引き起こし、また角度857が急勾配となり得て、レベル854から855へと真空を急速に減衰させることを可能にする。一度弁711が開くと、真空が回復して、カテーテルにおける真空レベルが本来のレベル853へと急速に戻る。管材708が、繊維素が豊富な血栓などの抵抗性物質を吸引するカテーテルに接続される場合(ケース2)では、弁711の閉鎖が、カテーテルにおける真空の、先の場合におけるよりも緩やかな減衰を引き起こし、また角度857がより浅くなり得て、これにより、真空の減衰率が著しく減少する。カテーテルにおいて効果的なパルスを生じさせるために、13kPa/秒を超える(100mmHg/秒を超える)真空レベルの変化率が必要である。27kPa/秒を超える(200mmHg/秒を超える)変化率が好ましく、また53kPa/秒を超える(400mmHg/秒を超える)変化率がより好ましいが、一方で、80kPa/秒を超える(600mmHg/秒を超える)変化率が最も好ましい。
【0112】
回転可能なカム710及び支持プレート712は、特に、管材708が、繊維素が豊富な血栓などの抵抗性物質を吸引するカテーテルに接続されるシナリオにおいて、管材708における真空の減衰率を増大させる手段、及び接続される任意のカテーテルを提供する。これは、圧力の正パルスを生じさせて、真空に反作用させることにより、達成される。これは、カム710の回転が、カムと支持プレート712との間で管材708を圧縮することにより達成され、それにより、管材708内の液体又は気体を圧縮し、また従って、管材内の真空レベルを急速に減少させる。図23cは、この圧縮が作用していることを示す。カムは、弁711が閉じている際に、同時に管材708を圧縮するように時間を調節してよい、又は部分的に、弁711の閉鎖よりも後に管材708を圧縮するように時間を調節してよい。カム710は、弁711の開放前、開放と同時、又は開放後に、管材708の圧縮を開放するように時間を調節してよい。発生する、拍動波形における本システムの衝撃力を、図24aに示す。
【0113】
垂直軸751は圧力を表し、また水平軸750は時間を示す。任意のパルスを発生させることに先立って、比較的定常状態にある真空レベル753が、管材708において提供される。弁711の閉鎖は、真空源から管材を遮断する。管材708が、繊維素が豊富な血栓などの抵抗性物質を吸引するカテーテルに接続される場合(ケース3)では、弁711の閉鎖が、カテーテルにおける真空の、地点754と755との間の線により示される第1の減衰率での、緩やかな減衰の開始を引き起こす。管材708を圧縮するカム710の回転は、地点755と756との間の線により示される、著しく増大した真空の減衰率を引き起こす。滞留時間は、カム710が回転して管材708から圧縮を除去し、かつ弁711が開いた後に、地点756と757との間に提供されてよく、管材708における真空レベルが地点757~地点758へと急速に下降することを可能にする。再び、滞留時間は、追加のパルスが提供される前に、真空レベル753において提供されてよい。
【0114】
図25は、真空レベルの急速な変化率を伴うパルスを提供するように構成された、本発明の別の拍動吸引ポンプシステム900の概略図である。血栓907を吸引するプロセスにおける、カテーテル901が示されている。この吸引は、血栓がカテーテルの外側に位置している媒質とカテーテルの内側内腔の媒質との間の圧力差により、引き起こされる。吸引力は、それ自体がキャニスタ904に接続される管材908に続いて接続される、管材903を介して、カテーテルへと提供される。キャニスタ904は、ポンプ905により空にされる。第2の「ポンプ」902は、管材903と908との間に位置し、またピストンポンプの本実施形態において構成され、シリンジに類似する。一方向弁906及び909の対は、ピストンポンプ902の一方の側面に位置し、これにより、ピストンが下方に移動する場合に、低いが制限された正圧が管材903に印加され、またそれ故に、弁906が閉じる前に、カテーテル901に印加される。これは、カテーテル901内の真空レベルにおける、急速な変化率を引き起こす。逆に、ピストンが上方に移動する場合、システムは、キャニスタよりもむしろカテーテルから優先的に吸引し得て、カテーテル内の真空レベルにおける急速な増大を生じさせる。
【0115】
図26は、システム900と非常に類似した、本発明の別の拍動吸引ポンプシステム950の概略図である。吸引力は、それ自体がキャニスタ954に接続される管材958に続いて接続される、管材953を介して提供される。キャニスタ954は、ポンプ955により空にされる。第2の「ポンプ」952は、管材953と958との間に位置する。ポンプ952は、振動ダイアフラム組立体963の本実施形態において構成され、圧縮ばね960により支持されて、このばね960及びカム961の反作用的諸力により作動する。カム961は、本明細書にて示されるギア組立体962を含む、多くの手段により、動作し得る。一方向弁956及び959の対は、ポンプ952の一方の側面に位置し、これにより、ダイアフラムが下方に移動する場合に、低いが制限された正圧が、弁956が閉じる前に、管材953に印加される。これは、カテーテル951内の真空レベルにおける、急速な変化率を引き起こす。逆に、ダイアフラムが上方に移動する場合、システムは、キャニスタよりもむしろカテーテルから優先的に吸引し得て、カテーテル内の真空レベルにおける急速な増大を生じさせる。
【0116】
図27a及び27bは、本発明の単純な一方向弁1000の概略である。これらは、開くことにより一方向での流れを容易に可能にし、かつ一度、弁に対する圧力勾配(及び、それ故に流れの方向)が変化すると、急速かつ自動的に閉じるように、構成される。弁1000は、どちらかの端部において一対の管材コネクタ1002及び1003を伴う、本体区分1001を含む。本体1001は、一般に、正方形又は長方形の区分を有し、これにより、フラップ1004が外側端部においてヒンジ連結し得、かつ開放位置から閉鎖位置へと自由に移動し得る。停止部1005が提供され、これにより、フラップが、流れの方向における変化によりフラップが閉じ得ない完全な開放位置に到達することを、防止する。第2の停止部1006は、一度圧力勾配が逆転すると、完全な閉鎖位置を越えてフラップが移動することを防止する。
【0117】
図28aは、本発明の拍動ポンプシステム1050の一部の概略である。キャニスタ1051は、管材1052に接続することにより、真空ポンプ(図示せず)に接続され、また管材1053に接続することにより、処置カテーテル(図示せず)に接続される。使用時には、真空ポンプにより、キャニスタ内に真空が発生し、また従って、血液及び血栓は、処置カテーテルを介して、また管材1053を介して、キャニスタ内へと吸引される。図24bに関連して記載されるような拍動波形は、閉塞子1055の前後の振動により発生し得、これは、導子引き込み口1056により、キャニスタを介して案内され、かつキャニスタの反対側における管材1053の開口部に進入する。閉塞子は、示されるような単純なギア機構により、又は当該技術分野において周知の任意のその他の往復運動手段により、前後に移動することができる。図28b~dは、種々の異なる位置における、図28aの閉塞子を示し、また閉塞子の運動がキャニスタ内への漏出を生じさせないことを確実にするために使用されてよい、段状要素1056をも示す。
【0118】
図28b(及び図28a)は、管材1053の開口部内で狭い案内部分1057のみが位置している、開放位置における閉塞子を示す。この位置にて、閉塞子からの抑制が少ない、又は閉塞子からの抑制がない、定常状態の真空を維持してよい。図28cは、閉塞子の先細りになった部分1058が、完全に管材1053の開口部内にある、閉鎖位置における閉鎖子を示す。この位置にて、管材1053は、もはやキャニスタ内の真空に曝されることがなく、また管材(及び接続されたカテーテル)内の真空レベルが減衰し始める。この真空の減衰率は、図28dにて示す位置への閉塞子の更なる前進により著しく促進され得、管材1053内の流体(又は気体)へと正変位を提供し、システム700、900、及び950に記載されたピストン及びダイアフラムの運動への、類似した効果を有する。
【0119】
以上、本発明の具体的な実施形態を図示及び説明したが、本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく種々の変更を行うことが可能である点が、上記の説明により明らかであろう。例えば、本明細書に記載された実施形態は特定の特徴に言及するが、本発明は、異なる特徴の組み合わせを有する実施形態を含む。本発明は、記載されている特定の特徴全てを含んではいない実施形態をも含む。
【0120】
本発明は、本明細書においてこれまで述べてきた、構成及び詳細において変化する場合のある実施形態に限定されない。
【0121】
〔実施の態様〕
(1) 血管から閉塞性凝血塊を除去するためのシステムであって、
カテーテル、及び
拍動真空力を発生させて、前記カテーテルの遠位端部にて圧力勾配を律動的に送るための装置、を含むシステム。
(2) 前記装置が、真空ポンプ及びパルス発生器を備える、実施態様1に記載のシステム。
(3) 前記パルス発生器が前記真空ポンプと一体型である、実施態様2に記載のシステム。
(4) 前記パルス発生器が前記真空ポンプから分離されている、実施態様2に記載のシステム。
(5) 前記パルス発生器が、前記真空ポンプと前記カテーテルの前記近位端部との間に位置する、実施態様4に記載のシステム。
【0122】
(6) 前記真空ポンプと前記カテーテルの前記近位端部との間に、可撓性の管材を備える、実施態様4又は実施態様5に記載のシステム。
(7) 前記パルス発生器が前記可撓性の管材に取り付けられている、実施態様6に記載のシステム。
(8) 前記パルス発生器が往復運動式プランジャを備える、実施態様7に記載のシステム。
(9) 前記パルス発生器が回転可能なカムを備える、実施態様7に記載のシステム。
(10) 前記カムが、前記管材における抗力を最小化する外側軸受を備える、実施態様9に記載のシステム。
【0123】
(11) 前記外側軸受が摺動する外層を備える、実施態様10に記載のシステム。
(12) 前記可撓性の管材が、その長さに沿って均一な断面のものである、実施態様7~11のいずれかに記載のシステム。
(13) 前記可撓性の管材が、その長さに沿って可変の断面のものである、実施態様7~11のいずれかに記載のシステム。
(14) 拍動真空源を発生させるための前記装置を制御するための、コントローラを含む、実施態様1~13のいずれかに記載のシステム。
(15) 前記コントローラが、波形において、前記圧力を時間と共に変化させるように適応されている、実施態様14に記載のシステム。
【0124】
(16) 前記波形が、固定周波数及び振幅、並びに同一の立ち上がり時間及び減衰時間を有する、実施態様15に記載のシステム。
(17) 前記波形が、時間と共に変化する周波数を有する、実施態様15に記載のシステム。
(18) 前記波形が、時間と共に変化する振幅を有する、実施態様15に記載のシステム。
(19) 前記波形が、異なる立ち上がり時間及び減衰時間を有する、実施態様15に記載のシステム。
(20) 前記波形の立ち上がり時間及び減衰時間が、時間と共に変化する、実施態様15に記載のシステム。
【0125】
(21) 前記波形が、各波のピーク及び谷にて滞留時間を組み込んだ切頭型の波形又は方形波形である、実施態様15に記載のシステム。
(22) 前記波形が、各波内に1つ以上の滞留時間を組み込んで、ステップ波形態を生じさせる、実施態様15に記載のシステム。
(23) 血管から閉塞性凝血塊を除去する方法であって、
閉塞性凝血塊に隣接した位置へとカテーテルを送達する工程、及び
前記カテーテルを使用して、前記凝血塊に拍動真空を適用する工程、を含む方法。
(24) 波形において、前記圧力を時間と共に変化させる工程を含む、実施態様23に記載の方法。
(25) 前記波形が、固定周波数及び振幅、並びに同一の立ち上がり時間及び減衰時間を有する、実施態様24に記載の方法。
【0126】
(26) 前記波形が、時間と共に変化する周波数を有する、実施態様24に記載の方法。
(27) 前記波形が、時間と共に変化する振幅を有する、実施態様24に記載の方法。
(28) 前記波形が、異なる立ち上がり時間及び減衰時間を有する、実施態様24に記載の方法。
(29) 前記波形の立ち上がり時間及び減衰時間が、時間と共に変化する、実施態様24に記載の方法。
(30) 前記波形が、各波のピーク及び谷にて滞留時間を組み込んだ切頭型の波形又は方形波形である、実施態様24に記載の方法。
【0127】
(31) 前記波形が、各波内に1つ以上の滞留時間を組み込んで、ステップ波形態を生じさせる、実施態様24に記載の方法。
(32) 血管から閉塞性凝血塊を除去するためのシステムであって、
閉塞性凝血塊に真空を適用するためのカテーテル、及び
前記凝血塊に適用される追加のエネルギーを発生させるための装置、を含むシステム。
(33) 前記装置が、前記カテーテルの前記遠位先端部において、前記凝血塊へと可変圧力を印加するように適応されている、実施態様32に記載のシステム。
(34) 前記装置により印加される前記可変圧力が、前記カテーテルと前記凝血塊周辺の前記血圧との間の可変圧力差を生じさせるように適応されている、実施態様32又は実施態様33に記載のシステム。
(35) 前記可変圧力差が、前記凝血塊の変形及び吸引に必要とされる押出エネルギーを克服するための、前記凝血塊への追加のエネルギーを提供するように適応されている、実施態様34に記載のシステム。
【0128】
(36) 前記凝血塊への可変圧力差の適用が、前記凝血塊と前記カテーテルとの間の摩擦を、静摩擦から動摩擦へと変化させ、総摩擦を減少させて、前記カテーテル内への吸引を促進するように適応されている、実施態様34に記載のシステム。
(37) 前記凝血塊への可変圧力差の適用が、前記凝血塊の空隙率を増大させて、前記凝血塊を吸引するために必要な前記変形力を減少させるように適応されている、実施態様34に記載のシステム。
(38) 時間に対する圧力差のプロットが波形を生じさせる、実施態様34に記載のシステム。
(39) 前記圧力差波形が、固定周波数及び振幅、並びに同一の立ち上がり時間及び減衰時間を伴なう正弦波に類似する、実施態様38に記載のシステム。
(40) 前記圧力差波形が、時間と共に変化する周波数を有する、実施態様38に記載のシステム。
【0129】
(41) 前記圧力差波形が、時間と共に変化する振幅を有する、実施態様38に記載のシステム。
(42) 前記圧力差波形が、異なる立ち上がり時間及び減衰時間を有する、実施態様38に記載のシステム。
(43) 前記圧力差波形の立ち上がり時間及び減衰時間が、時間と共に変化する、実施態様38に記載のシステム。
(44) 前記圧力差波形が、各波のピーク及び谷にて滞留時間を組み込んだ切頭型の波形又は方形波形である、実施態様38に記載のシステム。
(45) 前記圧力差波形が、各波内に1つ以上の滞留時間を組み込んで、ステップ波形態を生じさせる、実施態様38に記載のシステム。
【0130】
(46) 前記カテーテル先端部における前記圧力が、常に前記周囲の血圧未満である、実施態様34及び実施態様38に記載のシステム。
(47) 前記カテーテル先端部における前記圧力が、前記波形の一部に関して前記周囲の血圧を超える、実施態様34及び実施態様38に記載のシステム。
(48) 前記圧力差波形が、実施態様39~45に詳細に記載されている、いくつかの、又は全ての前記波形の組み合わせである、実施態様38に記載のシステム。
(49) 前記圧力差波形が、前記装置において事前プログラムされている、実施態様48に記載のシステム。
(50) 前記事前プログラムされている圧力差波形が、特定の凝血塊の種類のために最適化されている、実施態様49に記載のシステム。
【0131】
(51) 前記圧力差波形が、シリンジに類似した流体チャンバにおける1つ以上のピストンを移動させることにより、前記装置において生じる、実施態様38に記載のシステム。
(52) 前記ピストンが、回転機械的駆動システムにより駆動される、実施態様51に記載のシステム。
(53) 前記ピストンが、リニア駆動システムなどの電気機械的手段により駆動される、実施態様51に記載のシステム。
(54) 前記ピストンが、ピエゾ電気式の手段により駆動される、実施態様51に記載のシステム。
(55) 前記ピストンが、空気圧シリンダーにより駆動される、実施態様51に記載のシステム。
【0132】
(56) 追加のエネルギーを発生させるための前記装置が、前記カテーテルから分離されている、実施態様32~55のいずれかに記載のシステム。
(57) 追加のエネルギーを発生させるための前記装置が、前記カテーテルと一体型である、実施態様32~56のいずれかに記載のシステム。
(58) 前記カテーテルがピストンを含む、実施態様57に記載のシステム。
(59) 前記ピストンが、前記カテーテルの外部にある駆動システムにより作動する、実施態様58に記載のシステム。
(60) 前記凝血塊に適用される前記追加のエネルギーが振動力を含む、実施態様32~59のいずれかに記載のシステム。
【0133】
(61) 前記カテーテルが振動先端部を組み込む、実施態様60に記載のシステム。
(62) 前記振動先端部の前記周波数が、5Hzから20,000Hz超まで可変である、実施態様60に記載のシステム。
(63) 前記振動先端部が、0.78mmを超える総断面積を伴う1つ以上の吸引内腔を含む、実施態様61に記載のシステム。
(64) 前記装置が、定常状態の真空発生器及び拍動流発生器を備える、実施態様34に記載のシステム。
(65) 血管から閉塞性凝血塊を除去する方法であって、
閉塞性凝血塊に隣接した位置へとカテーテルを送達する工程と、
前記カテーテルを使用して、前記凝血塊に真空を適用する工程と、
前記凝血塊に追加のエネルギーを適用する工程と、を含む方法。
【0134】
(66) 前記追加のエネルギーが前記カテーテルを介して前記凝血塊に適用される、実施態様65に記載の方法。
(67) 前記カテーテルが前記凝血塊に接近した際に、前記追加のエネルギーが前記カテーテルを介して前記凝血塊に適用される、実施態様66に記載の方法。
(68) 前記カテーテルが定常状態の真空を用いた前記凝血塊の吸引に失敗した後のみに、前記追加のエネルギーが前記カテーテルを介して前記凝血塊に適用される、実施態様66に記載の方法。
(69) 前記追加のエネルギーが、前記血管系における前記凝血塊の近位に位置するガイドカテーテル又は外装に適用される、実施態様65に記載の方法。
(70) 前記追加のエネルギーが、ガイドカテーテル又は外装、及び中間カテーテルに同時に適用される、実施態様65に記載の方法。
【0135】
(71) ステントリーバ装置の前記使用と共に、前記追加のエネルギーが前記カテーテルを介して前記凝血塊に適用される、実施態様65に記載の方法。
(72) 前記追加のエネルギーが前記カテーテルを通して前記凝血塊に適用される、実施態様65に記載の方法。
(73) a.前記凝血塊に隣接した位置へと、前記補助装置を送達すること、及び
b.前記凝血塊に前記追加のエネルギーを直接適用すること、を含む、実施態様65~72のいずれかに記載の方法。
(74) 前記カテーテル及び前記補助装置を、同時に送達することを含む、実施態様73に記載の方法。
(75) 吸引された血液又は物質を受容するように構成されたキャニスタを備える、実施態様1~22、又は実施態様32~64のいずれかに記載のシステム。
【0136】
(76) 前記システムが、前記キャニスタに接続された真空ポンプを備える、実施態様75に記載のシステム。
(77) 前記真空が、前記キャニスタを通して引き起こされる、実施態様76に記載のシステム。
(78) 第1の真空パルス発生器を備える、実施態様1~22、実施態様32~64、又は実施態様75~77のいずれかに記載のシステム。
(79) 第2の真空パルス発生器を備える、実施態様78に記載のシステム。
(80) 前記真空パルス発生器が、同時に、又は異なる時間にて個別に動作して、発生する前記真空パルスを変化させるように構成されている、実施態様79に記載のシステム。
【0137】
(81) 前記第1のパルス発生器が、ハウジング及び前記ハウジング内で回転可能及び/又は振動可能な要素を有する弁を含む、実施態様78~80のいずれかに記載のシステム。
(82) 前記第2のパルス発生器が可撓性の管材に係合するように適応されている、実施態様78~81のいずれかに記載のシステム。
(83) 前記第2の真空パルス発生器が回転可能なカムを備える、実施態様82に記載のシステム。
(84) 前記第1の真空パルス発生器がポンプを備える、実施態様78に記載のシステム。
(85) 前記ポンプの両側に配置された逆止め弁を更に備える、実施態様84に記載のシステム。
【0138】
(86) 吸引された血液又は物質を受容するように構成されたキャニスタを備え、また前記第1のパルス発生器が、前記キャニスタを通って移動可能な閉塞子を備える、実施態様78に記載のシステム。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20A-20C】
図21
図22A-22B】
図23A
図23B
図23C
図24A
図24B
図25
図26
図27A
図27B
図28A
図28B
図28C
図28D