(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】板状工作物の加工のための工具機械および方法
(51)【国際特許分類】
B21D 28/02 20060101AFI20220119BHJP
B21D 28/36 20060101ALI20220119BHJP
B23K 26/08 20140101ALI20220119BHJP
B23K 26/10 20060101ALI20220119BHJP
B21D 35/00 20060101ALI20220119BHJP
B23Q 1/30 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
B21D28/02 A
B21D28/36 A
B21D28/36 Z
B23K26/10
B21D35/00
B23Q1/30
(21)【出願番号】P 2019514025
(86)(22)【出願日】2017-09-26
(86)【国際出願番号】 EP2017074281
(87)【国際公開番号】W WO2018055177
(87)【国際公開日】2018-03-29
【審査請求日】2019-09-25
(31)【優先権主張番号】102016118175.7
(32)【優先日】2016-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】517330221
【氏名又は名称】トルンプ ヴェルクツォイクマシーネ ゲーエムベーハー+シーオー.ケージー
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】ウィルヘルム,マルクス
(72)【発明者】
【氏名】ハンク,レイナー
(72)【発明者】
【氏名】クリンクハマー,マルク
(72)【発明者】
【氏名】シンデウォルフ,レオナルド
(72)【発明者】
【氏名】オッケンフス,シモン
(72)【発明者】
【氏名】カペス,ジェンズ
(72)【発明者】
【氏名】トランクライン,デニス
(72)【発明者】
【氏名】タタールチク,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ノイペルト,イェルク
(72)【発明者】
【氏名】ビット,ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】マーツ,マルクス
(72)【発明者】
【氏名】ヤキシュ,クリスチャン
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-515315(JP,A)
【文献】特表2015-524355(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102011088673(DE,A1)
【文献】特開平09-001438(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0314408(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 28/02
B21D 28/36
B23K 26/08
B21D 35/00
B23Q 1/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状工作物(10)の加工のための工具機械(1)であって、
ストローク軸(14)に沿ってストローク駆動装置(13)によって、上部工具(11)によって加工されるべき前記工作物(10)の方向およびその反対方向に移動可能であり、少なくとも1つのモータ駆動装置(17)によって前記ストローク軸(14)に垂直に伸びる上部位置付け軸(16)に沿って位置付け可能な前記上部工具(11)と;
前記上部工具(11)に配向され、少なくとも1つのモータ駆動装置(26)によって前記上部工具(11)の前記ストローク軸(14)に垂直に配向された下部位置付け軸(25)に沿って位置付け可能な下部工具(9)と;
機械フレーム(2)であって、前記機械フレーム(2)のフレーム内部(7)中で前記上部工具(11)および下部工具(9)が移動可能である前記機械フレーム(2)と;
前記上部工具(11)および下部工具(9)の移動のための前記モータ駆動装置(17、26)が制御可能であり、並びに前記上部工具(11)の前記上部位置付け軸(16)に沿った移動および前記下部工具(9)の前記下部位置付け軸(25)に沿った移動がそれぞれ互いから独立して制御可能である制御(15)と;を有し、
前記上部工具(11)が前記上部位置付け軸(16)に沿った移動により、および上部ストローク駆動装置(13)の前記ストローク軸(14)に沿ったストローク運動により、重複して制御可能であ
り、
前記上部工具(11)が工具体(39)を備え、前記工具体(39)の長手軸(40)が位置付け軸(35)に平行に配向されるか、または前記位置付け軸(35)の中にあり、前記位置付け軸(35)に直角に配向される少なくとも1つの切断縁部(38)を備え、前記上部工具(11)が傾斜したまたは湾曲した工作物縁部(91)の製作のために、作業ストロークの第1ストローク段階で前記ストローク軸(14)に沿って前記工作物(10)に供給され、第2ストローク段階で直線的なストローク運動または少なくとも部分的に前記ストローク軸(14)の外にある曲線型のストローク運動によって制御され、前記工作物縁部(91)が搬出されることを特徴とする、
板状工作物(10)の加工のための工具機械。
【請求項2】
板状工作物(10)の加工のための工具機械(1)であって、
ストローク軸(14)に沿ってストローク駆動装置(13)によって、上部工具(11)によって加工されるべき前記工作物(10)の方向およびその反対方向に移動可能であり、少なくとも1つのモータ駆動装置(17)によって前記ストローク軸(14)に垂直に伸びる上部位置付け軸(16)に沿って位置付け可能な前記上部工具(11)と;
前記上部工具(11)に配向され、少なくとも1つのモータ駆動装置(26)によって前記上部工具(11)の前記ストローク軸(14)に垂直に配向された下部位置付け軸(25)に沿って位置付け可能な下部工具(9)と;
機械フレーム(2)であって、前記機械フレーム(2)のフレーム内部(7)中で前記上部工具(11)および下部工具(9)が移動可能である前記機械フレーム(2)と;
前記上部工具(11)および下部工具(9)の移動のための前記モータ駆動装置(17、26)が制御可能であり、並びに前記上部工具(11)の前記上部位置付け軸(16)に沿った移動および前記下部工具(9)の前記下部位置付け軸(25)に沿った移動がそれぞれ互いから独立して制御可能である制御(15)と;を有し、
前記上部工具(11)が前記上部位置付け軸(16)に沿った移動により、および上部ストローク駆動装置(13)の前記ストローク軸(14)に沿ったストローク運動により、重複して制御可能であり、
前記上部工具(11)が工具体(39)を備え、前記工具体(39)の長手軸(40)が位置付け軸(35)に傾いて配向され少なくとも1つの切断縁部(38)を備え、前記切断縁部(38)が直角に前記位置付け軸(35)または前記長手軸(40)に配向され、前記上部工具(11)が傾斜したまたは湾曲した工作物縁部(91)の製作のために、作業ストロークの第1ストローク段階で前記ストローク軸(14)に沿って前記工作物(10)に供給され、第2作業ストロークで直線的なストローク運動または少なくとも部分的に前記ストローク軸(14)の外にある曲線型のストローク運動によって制御され、前記工作物縁部(91)が搬出されることを特徴とする、
板状工作物(10)の加工のための工具機械。
【請求項3】
前記上部工具(11)および前記下部工具(9)の移動が、同時に、移動方向または移動速度、または、移動方向および移動速度において独立して、それぞれ1つの前記モータ駆動装置(17、26)によって制御されることを特徴とする請求項1
または2に記載の工具機械。
【請求項4】
前記下部工具(9)が下部ストローク駆動装置(27)によって前記ストローク軸(14)に沿って前記工作物(10)の方向へと、およびその反対方向へと移動可能であり、前記下部位置付け軸(25)に沿った移動によって重複して制御可能であることを特徴とする請求項1
または2に記載の工具機械。
【請求項5】
前記上部ストローク駆動装置(13)および下部ストローク駆動装置(27)が互いから独立して制御可能であることを特徴とする請求項1
または2に記載の工具機械。
【請求項6】
前記上部工具(11)のストローク軸(14)に垂直な面で、前記機械フレーム(2)への1面または両面に少なくとも1つの前記フレーム内部(7)に画定する工作物台(28、29)が設けられ、前記工作物台(28、29)上で前記工作物台(28、29)の台面に前記板状工作物(10)が加工のために前記上部工具(11)および下部工具(9)に対して位置付け可能であることを特徴とする請求項1
または2に記載の工具機械。
【請求項7】
前記工作物台(28、29)および前記フレーム内部(7)に近接して横断する送り装置(22)が設けられ、前記送り装置(22)に沿って前記板状工作物(10)を把持するためのグリップ(23)が移動可能に設けられ、前記グリップ(23)によって前記板状工作物(10)が前記工作物台(28、29)の台面の中で前記上部工具(11)および下部工具(
9)に関して摺動可能であることを特徴とする請求項
6に記載の工具機械。
【請求項8】
前記下部工具(9)が工作物台(28、29)の台面に対して下方位置に下降可能におよび少なくとも1つの前記工作物台(28、29)によって通過可能であり、および前記フレーム内部(7)で
前記工作物台(28、29)が動き、前記工作物台(28、29)の台面が閉鎖されることが可能であることを特徴とする請求項1
または2に記載の工具機械。
【請求項9】
前記上部ストローク駆動装置(13)および下部ストローク駆動装置(27)が同一
型であることを特徴とする請求項1
または2に記載の工具機械。
【請求項10】
前記機械フレーム(2)がC型フレームまたは閉じたフレームとして形成されることを特徴とする請求項1
または2に記載の工具機械。
【請求項11】
前記機械フレーム(2)に少なくともX、YまたはZ方向に移動可能な少なくとも1つのさらなる工作物加工装置(201)が割り当てられるかまたはそれに配置されることを特徴とする請求項1
または2に記載の工具機械。
【請求項12】
前記工作物加工装置(201)が前記上部工具(11)および下部工具(9)に平行に、移動可能であることを特徴とする請求項
11に記載の工具機械。
【請求項13】
少なくとも1つの前記工作物加工装置(201)が前記上部工具(11)または下部工具(9)、または、前記上部工具(11)および下部工具(9)から独立して移動可能であることを特徴とする請求項
11に記載の工具機械。
【請求項14】
前記工作物加工装置(201)がレーザ加工装置であり、前記機械フレーム(2)に沿って移動可能な少なくとも1つのレーザ加工ヘッド(206)を含むことを特徴とする請求項
11に記載の工具機械。
【請求項15】
前記レーザ加工ヘッド(206)が前記機械フレーム(2)に配置された少なくとも単軸のリニア駆動(107)によって移動可能であることを特徴とする請求項
14に記載の工具機械。
【請求項16】
工作物台(28、29)の中に光線通路開口部(210)がレーザ加工ヘッド(206)の移動軌道に沿って設けられることを特徴とする請求項
11に記載の工具機械。
【請求項17】
前記上部工具(11)または前記下部工具(9)、または、前記上部工具(11)および前記下部工具(9)の前記駆動装置(17、26)およびレーザ加工装置(201)が同じ前記制御(15)により制御可能であることを特徴とする請求項
11に記載の工具機械。
【請求項18】
ストローク軸(14)に沿ってストローク駆動装置(13)によって、上部工具(11)によって加工されるべき工作物(10)の方向、および反対方向に移動可能な前記上部工具(11)が、少なくとも1つのモータ駆動装置(17)によって前記ストローク軸(14)に垂直に延びる上部位置付け軸(16)に沿って位置付けされ;
前記上部工具(11)に配向された下部工具(9)が、少なくとも1つのモータ駆動装置(26)によって前記上部工具(11)の前記ストローク軸(14)に垂直に配向された下部位置付け軸(25)に沿って位置付けられ;
前記上部工具(11)および下部工具(9)が機械フレーム(2)のフレーム内部(7)で移動され;
制御(15)により前記上部工具(11)および下部工具(9)の移動のための前記モータ駆動装置(17、26)が制御され;
前記工作物(10)が前記上部工具(11)と前記下部工具(9)の間に位置付けられ;
前記上部工具(11)の前記上部位置付け軸(16)に沿った移動および前記下部工具(9)の前記下部位置付け軸(25)に沿った移動がそれぞれ互いから独立して制御され;
前記上部工具(11)が前記上部位置付け軸(16)に沿った移動、および上部ストローク駆動装置(13)の前記ストローク軸(14)に沿ったストローク運動により重複して制御され;
前記上部工具(11)が工具体(39)を備え、前記工具体(39)の長手軸(40)が位置付け軸(35)に平行に配向されるか、または前記位置付け軸(35)の中にあり、前記位置付け軸(35)に直角に配向される少なくとも1つの切断縁部(38)を備え、前記上部工具(11)が傾斜したまたは湾曲した工作物縁部(91)の製作のために、作業ストロークの第1ストローク段階で前記ストローク軸(14)に沿って前記工作物(10)に供給され、第2ストローク段階で直線的なストローク運動または少なくとも部分的に前記ストローク軸(14)の外にある曲線型のストローク運動によって制御され、前記工作物縁部(91)が搬出される;
ことを特徴とする、板状の工作物(10)を工具機械(1)によって加工するための方法。
【請求項19】
ストローク軸(14)に沿ってストローク駆動装置(13)によって、上部工具(11)によって加工されるべき工作物(10)の方向、および反対方向に移動可能な前記上部工具(11)が、少なくとも1つのモータ駆動装置(17)によって前記ストローク軸(14)に垂直に延びる上部位置付け軸(16)に沿って位置付けされ;
前記上部工具(11)に配向された下部工具(9)が、少なくとも1つのモータ駆動装置(26)によって前記上部工具(11)の前記ストローク軸(14)に垂直に配向された下部位置付け軸(25)に沿って位置付けられ;
前記上部工具(11)および下部工具(9)が機械フレーム(2)のフレーム内部(7)で移動され;
制御(15)により前記上部工具(11)および下部工具(9)の移動のための前記モータ駆動装置(17、26)が制御され;
前記工作物(10)が前記上部工具(11)と前記下部工具(9)の間に位置付けられ;
前記上部工具(11)の前記上部位置付け軸(16)に沿った移動および前記下部工具(9)の前記下部位置付け軸(25)に沿った移動がそれぞれ互いから独立して制御され;
前記上部工具(11)が前記上部位置付け軸(16)に沿った移動、および上部ストローク駆動装置(13)の前記ストローク軸(14)に沿ったストローク運動により重複して制御され;
前記上部工具(11)が工具体(39)を備え、前記工具体(39)の長手軸(40)が位置付け軸(35)に傾いて配向され少なくとも1つの切断縁部(38)を備え、前記切断縁部(38)が直角に前記位置付け軸(35)または前記長手軸(40)に配向され、前記上部工具(11)が傾斜したまたは湾曲した工作物縁部(91)の製作のために、作業ストロークの第1ストローク段階で前記ストローク軸(14)に沿って前記工作物(10)に供給され、第2作業ストロークで直線的なストローク運動または少なくとも部分的に前記ストローク軸(14)の外にある曲線型のストローク運動によって制御され、前記工作物縁部(91)が搬出される;
ことを特徴とする板状の工作物(10)を工具機械(1)によって加工するための方法。
【請求項20】
前記上部工具(11)または前記下部工具(9)、または、前記上部工具(11)および前記下部工具(9)が前記位置付け軸(16、25)に沿った移動、および前記ストローク軸(14)とストローク軸(30)に沿ったストローク運動によって重複して制御されることを特徴とする請求項
18または19に記載の方法。
【請求項21】
前記上部工具(11)が前記上部位置付け軸(16)に沿った移動および前記ストローク軸(14)に沿ったストローク運動によって重複して制御され、前記下部工具(9)が静止するよう制御されるため、前記上部工具(11)および前記下部工具(9)が作業ストローク後互いに対して調整された終了位置に配置されることを特徴とする請求項
18または19に記載の方法。
【請求項22】
前記上部工具(11)または前記下部工具(9)、または、前記上部工具(11)および前記下部工具(9)が少なくとも1つの直線的なストローク運動によって制御され、前記ストローク運動の方向が少なくとも部分的に前記ストローク軸(14)とストローク軸(30)の外にあることを特徴とする請求項
18または19に記載の方法。
【請求項23】
前記上部工具(11)または前記下部工具(9)、または、前記上部工具(11)および前記下部工具(9)が曲線状のまたは軌道状のストローク運動によって制御され、前記ストローク運動の方向が少なくとも部分的に前記ストローク軸(14)とストローク軸(30)の外にあることを特徴とする請求項
18または19に記載の方法。
【請求項24】
前記上部工具(11)が第2ストローク運動に続く第3ストローク運動によって制御され、その場合に前記ストローク軸(14)に沿ったストローク運動が、前記工作物縁部(91)の完成のために、前記工作物(10)の材料の最後の分離のために制御されることを特徴とする請求項
18または19に記載の方法。
【請求項25】
前記上部工具(11)または前記下部工具(9)、または、前記上部工具(11)および前記下部工具(9)が、前記ストローク駆動装置(13、27)によって位置付け軸(35、48)を中心とした回動により互いに対して配向されることを特徴とする請求項
18または19に記載の方法。
【請求項26】
前記工作物(10)が前記上部工具(11)または前記下部工具(9)、または、前記上部工具(11)および前記下部工具(9)の作業ストローク中静止されたままであることを特徴とする請求項
18または19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は好ましくは板金である板状工作物の加工のための工具機械および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
欧州特許出願公開第3106241号明細書から板状工作物の加工のための工具機械が公知である。この工具機械は、上部ストローク駆動装置によってストローク軸に沿って上部工具によって加工されるべき工作物への方向および反対方向に運動可能であり、モータ駆動装置によってストローク軸に垂直に延在する上部位置付け軸に沿って移動可能である、上部工具を含む。上部工具には下部位置付け軸に沿ってモータ駆動によって移動可能な下部工具が割り当てられる。上部工具および下部工具は、それぞれ互いから独立してそれらの位置付け軸に沿って機械フレームのフレーム内部で移動可能である。工作物を加工のために上部工具と下部工具の間に位置付けるために、この機械フレームには工作物を受けるための2つの工作物台が割り当てられる。
【0003】
さらなる工具機械は欧州特許第2527058号明細書から公知である。この出版物は工作物の加工のための加圧機の形の工具機械を開示し、上部工具はストローク装置に設けられ、それは加工されるべき工作物に対してストローク軸に沿って工作物への方向および反対方向に移動可能である。ストローク軸の中および上部工具に向き合って下側に位置する下部工具が設けられる。上部工具のストローク運動のためのストローク駆動装置は楔ギアによって制御される。それに配置された上部工具を有するストローク駆動装置は、位置付け軸に渡って移動可能である。下部工具は上部工具と同期的に移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】欧州特許出願公開第3106241号明細書
【文献】欧州特許第2527058号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は工作物の加工における柔軟性を向上させる工具機械および方法を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、上部工具が上部位置付け軸に沿った移動によっておよび上部ストローク駆動装置のストローク軸に沿った運動によって重複して制御可能である、好ましくは板金である板状工作物の加工、特に切断および/または変形のための工作物機械によって解決される。さらに上部位置付け軸および上部ストローク軸に沿った重複した移動により行程時間短縮が達成され得る。それによって上部工具および下部工具からの、あるいは上部工具から下部工具へのおよびその逆の連動しない運動も可能になりうる。これは工作物の切断、打ち抜き、変形および/またはそれらの組み合わせの場合にも、印字、刻印またはそれに準じるものの場合にも、加工のための多くの加工可能性を切り開く。そのことから例えば上部工具を打ち抜き工具として形成する場合、およびこれと関連してストローク軸への少なくとも1つの対抗切断縁部を有する下部工具を打ち抜き鋳型として形成する場合、ストローク軸への少なくとも1つの切断縁部あるいは打ち抜きスタンプを有する工具体の定義された位置付けは必要ない。なぜなら打ち抜きスタンプおよび打ち抜き鋳型は上部工具および/または下部工具の独立した移動可能性のためにそれらの位置で互いに対して制御装置を使って配置可能であるためである。
【発明の効果】
【0007】
上部工具および下部工具の移動が同時に移動方向および/または移動速度においてそれぞれ1つのモータ駆動装置によって独立して制御可能であることが好ましく企図される。それによって上部工具および下部工具の移動は同時に制御されるが、同期的移動の必要はない。むしろ上部工具の移動は下部工具の移動から逸脱して行われる。
【0008】
工具機械のさらなる有利な実施形態は下部工具がストローク駆動装置によってストローク軸に沿って工作物の方向に向かっておよび反対方向に可動であることを企図する。移動が下部工具の下部位置付け軸に沿ってストローク運動により下部ストローク駆動装置に沿って重複して制御可能であることを好ましく企図する。そのようにして上部工具も下部工具もそれぞれ互いから独立してストローク駆動装置によってストローク軸に沿って移動可能に制御され得る。それによって加工の柔軟性のさらなる向上が達成される。
【0009】
上部ストローク駆動装置および下部ストローク駆動装置が、それぞれ互いから独立して工具機械の制御によって制御され得ることが、さらに好ましく企図される。このストローク運動は移動と重複されることができ、それぞれ上部工具のためにも下部工具のためにも選択され制御され得る。それによって工作物の加工においても加工方向においても柔軟性が向上する。例えば工作物に対して垂直なあるいはZ方向へのストローク軸に沿った加工方向から逸脱して、移動の重複が位置付け軸に沿ってY方向におよびストローク軸に沿ってZ方向に行われる、上部工具および/または下部工具のストローク運動が可能でありうる。それによってZ軸に関しても斜めの切断が工作物にもたらされ得る。
【0010】
その上の台面の中に板状の工作物が位置付け可能な機械フレームに隣接する少なくとも1つの機械フレームのフレーム内部に画定する工作物台が設けられることがさらに好ましく企図される。この工作物台は例えば積荷ユニットおよび/または荷降ユニットに割り当てられる。それによって板状工作物による工具機械の簡単な装備が行われうる。送り装置およびそれに配置された張架装置またはグリップを使って工作物は、それが上部工具と下部工具の間の所望の加工位置に配置されるように、フレーム内部に関して移動され得る。好ましくは機械フレームの両側に工作物台が設けられ、それによって機械フレームの片側に未加工の工作物が位置付けされ、この工作物が送り装置を使って開いた、特にC字型の機械フレームまたは閉じた機械フレームを通して案内され得る。大きな部分または残りのグリッドはもう1つの工作物台面を介して機械フレームから搬出され荷降ろされ得る。1つまたは複数の工作物部品が機械フレームを通って下方に排出される限り、もう1つの工作物台もまた新しい工作物を装備するために使用され、それによって生産性が高められることができる。
【0011】
工作物台に隣接しフレーム内部を横断して、それによって工作物が上部および下部工具に関して摺動可能である送り装置が設けられることがさらに好ましく企図される。それによって例えば工作物がX方向およびその反対方向に移動可能であり、それに対して上部および/または下部工具はY方向およびその反対方向に機械フレームの中を移動可能である。それによってフレーム内部の加工空間内で工作物の加工のための全ての所望の位置が占められることができ、それによって工作物の全面的な加工が実現する。
【0012】
下部工具が工作物台の台面に対して下方位置に下降可能であり、少なくとも1つの工作物台によって通過されることが可能であり、好ましくはフレーム内部で工作物台によって閉鎖されまたは閉鎖可能な台面が成形されることがさらに好ましく企図される。これは工作物の加工後その中に部分的に切断された部分が剥き出しになった工作物部品を有する工作物の確実な搬送または残余グリッドに付着した工作物部品の残余結合を使って後続の加工工程または排出工程が行われうることを可能にする。部品も機械空間内で下方に排出できるように下降可能な下部工具の領域中の工作物台の間に下に向かって開くことができる部分蓋を装備することができる。下部工具の下降によって工作物の下面に下部工具が通過するときに破損、特に引っ掻き傷ができることも防止できる。
【0013】
上部および下部ストローク駆動装置が同一形であることがさらに好ましく企図される。それによって工具機械の製造コストの削減が可能になる。好ましくは上部および下部ストローク駆動装置の移動を制御するための駆動装置も同一形に形成される。
【0014】
工具機械用の機械フレームはC字型フレームとしてまたは閉じたフレームとして形成され得る。機械および加工力の大きさによって相応な機械フレームが形成され得る。
【0015】
工具機械のさらなる有利な実施形態は機械フレームに少なくとも1つのさらなる工作物加工装置を割り当てるか、またはX、Yおよび/またはZ方向に移動可能なもう1つの工作物加工装置を機械フレームに配置することを企図する。それによって工具機械の中で同じ工作物への2つのそのように互いに相違する加工が、有利にはグリップによる把持位置を使って実施され得る。
【0016】
さらなる工作物加工装置は好ましくは上部または下部工具に平行に、特に機械フレームの上部の水平なフレーム脚に沿って移動可能である。それによって工具機械の構造が上部または下部工具並びに少なくとも1つの機械フレームに割り当てられた工作物台を使って維持され、工作物の付加的な加工が組み込まれることができる。
【0017】
このさらなる工作物加工装置は好ましくは上部および/または下部工具から独立して移動可能に制御される。
【0018】
好ましくは工作物加工装置が特に少なくとも1つのレーザ加工装置ヘッドが機械フレームに沿って移動可能なレーザ加工装置として形成される。それによって工具機械の中で例えば工作物の切断、溶接、印字のようなレーザ加工も打ち抜き加工および/または変形および/または印字も行うことができる。例えば工作物の打ち抜き加工または変形が実施されることができ、続いて工作物部品が工作物から分離する前にレーザを使った印字またはマーキングが行われることができる。そのようなマーキングは工作物部品に留まりうるため、製造時間および/または製造場所が後の時点で追跡可能である。
【0019】
有利なことに少なくとも1つのレーザ加工装置ヘッドが少なくとも単軸に形成されたリニア駆動によって機械フレームに接して移動可能に配置される。それによってレーザ加工装置ヘッドの加工位置の工作物への正確な案内および制御が実現できる。
【0020】
上部工具および/または下部工具の駆動装置および/またはレーザ加工装置は制御、好ましくは共有の制御によって、それぞれ互いから独立して制御可能であることがさらに好ましく企図される。
【0021】
本発明の根底にある課題はさらに特に板金である板状工作物の加工方法により解決され、その方法においては上軸に沿ってストローク駆動装置によって上部工具で加工されるべき工作物への方向およびその反対方向に運動可能な上部工具が、少なくとも1つのモータ駆動装置によってストローク軸に垂直に延びる上部位置付け軸に沿って位置付けられ、上部工具に配向された下部工具が少なくとも1つのモータ駆動装置によって上部工具のストローク軸に垂直に延びる下部位置付け軸に沿って位置付けられ、上部および下部工具が機械フレームのフレーム内部で移動され、制御によって上部および下部工具の移動のためのモータ駆動装置が駆動され、工作物が上部工具と下部工具の間に位置付けられ、上部工具の移動が上部位置付け軸に沿い、下部工具の移動が下部位置付け軸に沿い、それぞれ互いから独立して制御され、上部工具がその上部位置付け軸に沿った移動により、および上部ストローク駆動装置のストローク軸に沿ったストローク運動によって重複して制御される。これは工具の使用における高い柔軟性を実現する。上部および下部工具は例えば切断縁部の上部工具でのおよび対抗切先の下部工具での配置に関して自由な選択を可能にする。それらのそれぞれの位置付け軸への間隔の調整は必要ない。なぜなら上部工具および下部工具のそれぞれの位置付け軸に沿った独立した移動により例えば切断縁部の対抗切断縁部に対する自由に選択可能な位置付けが可能であるからである。それによって簡単な方法で、例えば刃の空隙幅を設定するために切断縁部から対抗切断縁部への様々な間隔も設定され得る。この加工の柔軟性は切断するまたは打ち抜きする加工だけではなく、変形、湾曲、印字、刻印またはさらなる工作物加工の可能性にも相応しうる。
【0022】
上部工具および/または下部工具が位置付け軸に沿った移動によっておよびストローク軸に沿ったストローク運動によって重複して制御されることが好ましく企図される。これは上部工具の下部工具に関する例えばZ方向に配向されたストローク軸の外にある軌道に沿ったストローク運動を可能にする。移動とストローク運動の重複は任意に制御され得る。
【0023】
好ましくは斜めに延びるストローク運動も弓状または曲線状のストローク過程も制御され得る。ストローク運動の軌道過程は使用法に合わせて選択することができる。例えば方向において互いに相違する複数の連続した直線的なストローク運動も制御され得る。1つまたは複数の直線的なストローク運動と1つのまたは複数の曲線状のストローク運動の組み合わせも互いに組み合わされ得る。
【0024】
例えば上部工具がY方向への移動およびZ方向へのストローク運動の重複によって制御され、それに対して下部工具が休止または静止して位置付けられることがさらに好ましく企図され得る。この上部および下部工具の駆動は交換されることもできる。例えば上部工具が重複した移動およびストローク運動によって制御され、それに対して下部工具がストローク運動のみによってまたは位置付け軸に沿った移動のみによって制御されることも企図できる。同じことが、上部工具が下部工具と交換された配置にも相応する。
【0025】
方法のさらなる有利な実施形態は、工作物の特に工作物縁部の加工が上部工具によって実施され、それがその長手軸が平行にまたは上部工具の位置付け軸の中にあり、好ましくは位置付け軸に直角に配向された少なくとも1つの切断縁部を含む工具体を備えることを企図する。そのような上部工具は位置付け軸に沿った重複した移動およびストローク軸に沿ったストローク運動により制御されるため、例えば上部工具が作業ストロークのストローク運動によってストローク軸に対して傾斜したまたは斜めのストローク方向によって、例えば工作物の部分縁部を搬出するために印加される。ストローク軸に傾斜してまたは斜めに配向された直線的なストローク運動の場合、例えば斜角面が製作される。直線的なストローク運動のストローク軸への傾斜に応じて斜角面の角度が影響されうる。さらに斜角面が工作物の厚さのわずかな部分かまたは厚さの半分に渡ってのみか、または工作物の前面全体に沿って延びるかによって影響される。上部工具の上部位置付け軸に沿った移動および曲線状のストローク運動または円弧状のストローク運動を達成するためのストローク軸に沿ったストローク運動が重複する場合、工作物の丸みを帯びた部分縁部も生成されうる。
【0026】
上部工具および/または下部工具がストローク軸の周りを、あるいは上部工具および/または下部工具のそれぞれの位置付け軸の周りを回動することにより、上部工具および/または下部工具がストローク駆動装置によって互いに対して配向されることが好ましく企図される。上部および下部のストローク駆動装置の上部工具および/または下部工具の回動運動のこの駆動はまたそれぞれ互いから独立して行われる。
【0027】
前述の種類の工具機械における板状工作物の加工の際には、工作物が上部工具および/または下部工具の作業ストロークの間休止または静止して保持されることが好ましく企図される。
【0028】
本発明並びにそのさらなる有利な実施形態および発展形態は、図面に示された例を参照して以下により詳細に説明される。説明および図面から得られる特徴は、本発明に従って個々にまたは任意の組み合わせで適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図2】
図2は
図1のストローク駆動装置およびモータ駆動装置の基本構造の概略図である。
【
図3】
図3は
図1のタペットのYおよびZ方向への重複したストローク運動の概略表である。
【
図4】
図4は
図1のタペットのYおよびZ方向へのさらなる重複したストローク運動の概略表である。
【
図5】
図5は
図1の工作物台面を有する工具機械を上から見た概略図である。
【
図6】
図6は 機械基礎フレームに割り当てられた工作物台面の
図1中の線VI-VIに沿った工具機械の概略断面図である。
【
図7】
図7は
図1の工具機械用の工具の第1実施形態の透視図である。
【
図9a】
図9aは加工されるべき工作物に工作物縁部を製作するための
図7の工具の簡略化された概略図である。
【
図9b】
図9bは加工されるべき工作物に工作物縁部を製作するための
図7の工具の簡略化された概略図である。
【
図9c】
図9cは加工されるべき工作物に工作物縁部を製作するための
図7の工具の簡略化された概略図である。
【
図9d】
図9dは加工されるべき工作物に工作物縁部を製作するための
図7の工具の簡略化された概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1はスタンピングプレスとして形成された工具機械1を示す。この工具機械1は閉じた機械フレーム2を備えた支持構造を含む。この機械フレームは2本の水平フレーム脚3、4並びに2本の垂直フレーム脚5および6を含む。機械フレーム2は上部工具11および下部工具9を有する工具機械1の作業領域を成形するフレーム内部7を包括する。
【0031】
工具機械1は、簡略化のために
図1には示されない、加工目的のためにフレーム内部7の中に配置され得る板状工作物10の加工のために使用される。加工されるべき工作物10は、フレーム内部7の中に設けられる工作物支持体8の上に載せられる。工作物支持体8の凹部の中で、機械フレーム2の下部水平フレーム脚4に下部工具9が例えば打ち抜き鋳型の形で支持される。この打ち抜き鋳型には鋳型開口部を設けることができる。打ち抜き加工の際、打ち抜き鋳型として形成された下部工具の鋳型開口部の中に、打ち抜きスタンプとして形成された上部工具11が沈み込む。
【0032】
上部工具11および下部工具9は、打ち抜きスタンプおよび打ち抜き鋳型の代わりに、曲げスタンプおよび曲げ鋳型としても工作物10の変形のために使用され得る。
【0033】
上部工具11はタペット12の下端にある工具受けの中に固定される。タペット12は、それを使って上部工具11がストローク方向にストローク軸14に沿って移動され得るストローク駆動装置13の部分である。ストローク軸14は、
図1で暗示される工具機械1の数値制御15の座標系のZ軸の方向に延びる。ストローク軸14に垂直にストローク駆動装置13が位置付け軸16に渡って二重矢印の方向に移動され得る。位置付け軸16は数値制御15の座標系のY方向の方向に延びる。上部工具11を受けるストローク駆動装置13は、モータ駆動装置17を使って位置付け軸16に渡って移動する。
【0034】
ストローク軸14に沿ったタペット12の運動、および位置付け軸16に沿ったストローク駆動装置13の位置付けは、駆動装置17の形の、特に位置付け軸16の方向に延び、機械フレーム2と固定的に結合した駆動スピンドル18とともに形成され得るスピンドル駆動装置の形のモータ駆動装置17を使って行われる。ストローク駆動装置13は運動の際に、上部フレーム脚3の2、3本のガイドレール19の上を位置付け軸16に渡って案内される。それらのうちではガイドレール19が
図1で識別され得る。1本の残りのガイドレール19は図示されるガイドレール19に並行して延び、これから数値制御装置15の座標系のX軸の方向に間隔を設ける。ガイドレール19上をストローク駆動装置13のガイドシュー20が移動する。ガイドレール19とガイドシュー20の相互の係合は、ガイドレール19とガイドシュー20の間のこの結合が、垂直方向に作用する負荷をも受けることができるように形成される。それに相応してストローク装置13はガイドシュー20およびガイドレール19に渡って機械フレーム2に吊持される。ストローク駆動装置13のもう1つの構成要素は、それによって上部工具11の位置が下部工具9に関して調節可能になる楔ギア21である。
【0035】
下部工具9は下部位置付け軸25に沿って移動可能に受けられる。この下部位置付け軸25は数値制御15の座標系のY軸の方向に延びる。好ましくは下部位置付け軸25は上部位置付け軸16に平行に配向される。下部工具9は直接下部位置付け軸16でモータ制御装置26によって位置付け軸25に沿って移動し得る。代替的または補完的に下部工具9は、下部位置付け軸25に沿ってモータ制御装置26を使って移動可能なストローク駆動装置27にも設けられる。この制御装置26は好ましくはスピンドル駆動装置として形成される。下部ストローク駆動装置27は上部ストローク駆動装置13の構造に相応し得る。同様にモータ制御装置26はモータ制御装置17に相応し得る。
【0036】
下部ストローク駆動装置27は、同様に下部水平フレーム脚4に割り当てられたガイドレール19に摺動可能に支持される。ガイドレール19上をストローク駆動装置27のガイドシュー20が移動するため、ガイドレール19とガイドシュー20の間の接続は、下部工具9で水平方向に作用する負荷をも受けることができる。それに相応してストローク駆動装置27も、ガイドシュー20およびガイドレール19に渡って機械フレーム2で、上部ストローク駆動装置13のガイドレール19およびガイドシュー20に対して間隔を空けて吊持される。ストローク駆動装置27も、それによって下部工具9のZ軸に沿った位置または高さを調節できる楔ギア21を含むことができる。
【0037】
数値制御15によって、上部工具11の上部位置付け軸16に沿った移動のためのモータ駆動17も、下部工具9の下部位置付け軸25に沿った移動のための単数または複数のモータ駆動26も、互いから独立して制御され得る。それによって上部および下部工具11、9は同期的に座標系のY軸の方向に移動できる。同様に上部および下部工具11、9の独立した移動は、異なる方向にも制御され得る。上部および下部工具11、9のこれらの独立した移動は、同時に制御され得る。上部工具11と下部工具9の間の移動の連動解除により、工作物10の加工の柔軟性の向上が達成される。工作物10の加工のための上部および下部工具11、9は多様なあり方でも形成され得る。
【0038】
ストローク駆動装置13の構成要素は
図2で示された楔ギア21である。楔ギア21は2つの入力側の楔ギア部材122、123および2つの出力側の楔ギア部材124、125を含む。後者は建設的に出力側の二重楔126の形の構造ユニットにまとめられている。出力側の二重楔126にはタペット12がストローク軸14の周りで回動可能に軸支される。モータ回転駆動装置128が出力側の二重楔126の中に格納され、タペット12を必要に応じてストローク軸14の周りに配置する。そのときタペット12の左回動も右回動も
図2の二重楔によって可能である。タペット軸受129が概略的に示される。一方でタペット軸受129はタペット12のストローク軸14を中心とする摩擦の少ない回転運動を許し、もう一方でタペット軸受129はタペット12を軸方向に軸支し、相応にタペット12上でストローク軸14の方向に作用する負荷を出力側の二重楔126の中に搬出する。
【0039】
出力側の二重楔126は楔面130および出力側の駆動部材125の楔面131によって画定される。出力側の楔ギア駆動部材124、125の楔面130、131には、入力側の楔駆動部材122、123の楔面132、133が向き合う。縦ガイド134、135によって、入力側の楔駆動部材122および出力側の楔駆動部材124、並びに入力側の楔駆動部材123および出力側の楔駆動部材125が、Y軸の方向に、つまりストローク駆動装置13の位置付け軸16の方向に、互いに関して相対的に可動に案内される。
【0040】
入力側の楔駆動部材122はモータ駆動ユニット138を有し、入力側の楔駆動部材123はモータ駆動ユニット139を有する。両駆動ユニット138、139は共同でスピンドル駆動装置17を成形する。
【0041】
モータ駆動ユニット138、139に共通であるのは、機械フレーム2に軸支され、その結果支持構造側の駆動装置として
図1に示された駆動スピンドル18である。
【0042】
モータ駆動ユニット138、139に対して入力側の楔駆動部材122、123が、これらが位置付け軸16に沿って例えば互いに向かって動き、それによって一方では入力側の楔駆動部材122、123間の、もう一方では出力側の楔駆動部材124、125間の相対運動が生じるように作動される。この相対運動の結果、出力側の二重楔126およびそれに支持されるタペット12が、ストローク軸14に沿って下方に動く。例えばタペット12に取り付けられた打ち抜きスタンプ11が作業ストロークを実施し、そのとき工作物台28、29または工作物支持体8上に置かれた工作物10を加工する。楔駆動部材122、123の互いに対して対抗する運動によって、タペット12はまたもストローク軸14に沿って持ち上げられまたは上方に動く。
【0043】
前述の
図2のストローク駆動装置13は好ましくは下部ストローク駆動装置27と同一に形成され下部工具9を受ける。
【0044】
図3はタペット12の可能なストローク運動の概略表を示す。表はY軸およびZ軸に沿ったストロークの経過を示す。ストローク軸14および位置付け軸16に沿ったタペット12の移動の重複した制御は、例えばタペット12の下方に工作物10へと斜めに延びるストローク運動が、これが第1直線Aで示されるように制御され得る。それに続いてストロークの実施後タペット12は、例えば直線Bで示されるように、垂直に持ち上げられ得る。タペット12を工作物10への新しい作業位置に位置付けるために、続いて例えば直線CのY軸に沿った移動のみが行われる。それに続いて例えば前述した作業順序が繰り返され得る。後続の加工段階のために工作物10が工作物台面28、29上で移動される限り、直線Cに沿った移動も省略され得る。
【0045】
図3の表に示されたタペット12の上部工具11での可能なストローク運動は、好ましくは静止された下部工具9と組み合わされる。そのとき下部工具9は、上部工具11の作業ストロークの終わりに、上部および下部工具11、9が定義された位置を占めるように機械フレーム2内に位置付けられる。
【0046】
この例示的に重複したストローク過程は、上部工具11のためにも下部工具9のためにも制御され得る。工作物10の行われるべき加工に応じて、上部工具および/または下部工具9の重複したストローク運動が制御され得る。
【0047】
図4ではY軸およびZ軸に沿った例示的に示される線Dによってタペット12のストローク運動を示す概略表が示される。
図3から逸脱してこの実施形態例では、Y方向およびZ方向への移動の重複が相応に制御15によって制御されることにより、タペット12のストローク運動が曲線状または円弧状の推移を辿り得ることが企図される。そのようなXおよびZ方向への移動の柔軟な重複によって、加工に固有の課題が解決される。そのような曲線的推移の制御が上部工具11および/または下部工具9のために企図され得る。
【0048】
図5には
図1の工具機械1の概略図が示される。工具機械1の機械フレーム2の側方にそれぞれ1つの工作物台28、29が延在する。工作物台28は、例えば詳細には示されないそれによって、未加工の工作物10が工作物台28上に載せられる、積載ステーションに割り当てられ得る。工作物台28、29に画定して工作物台28上に載せられた工作物10を把持するために、複数のグリップ23を含む送り装置22が設けられる。送り装置22を使って、工作物10はX方向に機械フレーム2を通して案内される。好ましくは送り装置22がY方向にも移動可能に制御され得る。それによって工作物10のX-Y面での自由な移動が企図され得る。作業課題に応じて工作物10は、送り装置22によってX方向にもX方向とは反対方向にも運動可能である。この工作物10の移動は、上部工具11および下部工具9のそれぞれの加工課題のための、Y方向へのおよびその反対方向への移動に適応することができる。
【0049】
工作物台28に向き合ってもう1つの工作物台29が機械フレーム2に設けられる。これは例えば荷下ろしステーションに割り当てられ得る。代替的に未加工の工作物10および工作物81を有する加工された工作物10の積載および荷降ろしも、同じ工作物台28、29に割り当てられ得る。
【0050】
工具機械1はさらにレーザ加工装置201、特に概略的にのみ
図5の上面図に示されるレーザ切断機を有することができる。このレーザ加工装置201は例えばCO
2レーザ切断機として形成され得る。レーザ加工装置201は、概略的に示された光線ガイド204を使ってレーザ加工ヘッド、特にレーザ切断ヘッド206に案内されその中に集束されるレーザ光線203を生成するレーザ源202を含む。その後レーザ光線204は、工作物10を加工するために切断ノズルにより、工作物10の表面に垂直に配向される。レーザ光線203は加工場所、特に切断場所で好ましくはプロセスガス流と共に工作物10に作用する。レーザ光線203が工作物10に発生する切断位置は、上部工具11および下部工具9の加工位置に隣接する。
【0051】
レーザ切断ヘッド206は、リニア軸システムを有するリニア駆動207により少なくともY方向に、好ましくはYおよびZ方向に移動可能である。レーザ切断ヘッド206を受けるこのリニア軸システムは機械フレーム2に割り当てられ、それに固定されまたはその中に統合され得る。レーザ切断ヘッド206の作業空間の下に、光線通路開口部210が工作物台28中に設けられる。好ましくは光線通路開口部210の下にレーザ光線21のための光線捕取装置が設けられ得る。光線通路開口部210および場合により光線捕取装置は構造ユニットとして形成され得る。
【0052】
レーザ加工装置201は、代替的にその光線が光配線の助けを借りてレーザ切断ヘッド206に案内される個体レーザもレーザ源202として備えることができる。
【0053】
図6は
図1の線VI-VIによる概略断面図を示す。この工具機械1の図では垂直フレーム脚5、6も上部水平フレーム脚3も次第に小さくなる。この図は工作物台28、29が下部工具9を少なくとも部分的に包囲する工作物支持体8まで直接延びることを示す。その間に生じる空間内に下部工具9が、下部位置付け軸25に沿ってY方向およびその反対の方向に移動可能である。さらにこの工具機械1がレーザ加工装置21を装備する限り、光線通路開口部210が工作物台28の中に示される。
【0054】
工作物台28上に例えば加工された工作物10が載せられ、そこで工作物部品81が切断間隙83から、例えば打ち抜き加工またはレーザ光線加工により残留接続82以外切り抜かれる。この残留接続により工作物81は工作物10あるいは残りの残留グリッドの中に保持される。工作物部品81を工作物10から分離するために、工作物10は送り装置22を使って上部および下部工具11、9に打ち抜きおよび排出段階のために位置付けられる。そのとき残留接続82は上部工具11の下部工具9への打ち抜きストロークによって分離される。工作物部品81は例えば工作物支持体8の部分的下降によって下方に排出され得る。代替的に比較的大きい工作物部品81の場合、切り抜かれた工作物部品81は、工作物部品81および残留グリッドを搬出するために、再び工作物台28または工作物台29に返送される。小さい工作物部品81も場合により下部工具9中の開口部から排出され得る。
【0055】
図7では例えば工作物10を工具機械1の中で加工するために使用可能な工具31の透視図が示される。
図8は
図7の概略断面図を示す。この工具31は上部工具11および下部工具9を含む。上部工具11は基体33並びに差し口34を備える。これらは左右対称に共有の位置軸35に配置される。基体33にさらにインデックス楔36がタペット12の中、あるいは工具機械1の工具受けの中に、上部工具を配向するために設けられる。この実施形態例では、基体33がクランプ環として形成されるため、クランプシャフト34のクランプの元で有利には一体的にそれに配置された工具体39が軸架されて保持される。代替的に基体31および/または工具体39および/またはクランプシャフト34は、一体的に形成され得る。工具体39の長手軸40は位置軸35の中に延在する。代替的には工具体39あるいは工具体39の長手軸40が、位置軸35に対して側方にずれて設けられ得る。工具体39の下端に好ましくは切断縁部38が形成される。この工具体39では長手軸40に直角にスタンプ面43が形成され、それに1、2、3、または4つの切断縁部38が形成され得る。
【0056】
下部工具9はその上側に工作物10を載せるための台面47を有する基体41を含む。基体41内に好ましくは基体41を完全に横断する開口部46が設けられる。この下部工具9を位置軸48を中心とするその配向について調節するために、この実施形態例では詳細には示されない例えば基体41の外周に対して突出しうる調節部材が基体41に設けられる。
【0057】
この実施形態例では下部工具9が基体41に解除可能に固定された対抗切断導入部50を含む。この対抗切断導入部50は少なくとも1つの対抗切断縁部51を備える。好ましくはこの対抗切断縁部51は開口部46に向かって配向される。
【0058】
さらにこの対抗切断導入部50は台面47に対して高く形成されるため、対抗切断縁部51に隣接して、工作物10が続く加工のために定義されて当接する支持面61が成形される。実施形態例では2つの互いに対して間隔を設けて配置されたU字型凹部により互いから分離されて間隔を設ける対抗切断縁部51が設けられる。
【0059】
加工を待つ工作物10は直角の工作物縁部91を備える。この工作物縁部91は面取りがなされるか、あるいは斜角面64を備えるべきである。
【0060】
斜角面64の製作並びに斜角面64の代替的な実施形態は、以下に
図9a~9eを元に詳しく説明される。この代替的な実施形態のために上部工具11および下部工具9が
図7および8に基づいて使用される。斜角面64の製作のために工作物10は支持面61に関連して下部工具9に配向される。上部工具11はその位置軸に関連して後続の作業ストロークのために下部工具9の位置軸48に配向される。それに続いて作業スロトークが実施される。これは少なくとも2つの、好ましくは3つのストローク段階を有し得る。第1ストローク段階では上部工具11が下降し、工具体39の切断縁部38が工作物10の表面上に当接するか、または位置がわずかに工作物10の上部を占めるまで、下部工具に向かって移動する。それに続いて、上部工具11が矢印Aに従う、例えばストローク軸14に対して45°の角βを有する直線的ストローク運動によって制御されることにより、第2ストローク段階が導入される。それによって斜角面64を成形するための工作物縁部91の鋏断または切除が行われる。工具体39の切断縁部38が工作物10の前面と同一平面上になった後、作業ストロークは終了するか、または
図9bに示されるように場合により鋏断された材料を完全に分離するために、その中で例えば移動がストローク軸40に沿って行われる第3工程段階が導入され得る。
【0061】
第1作業ストロークの上記の作業方法に代替的に、工作物10を下部工具9の支持面61に位置付けした後、作業ストロークが第1ストローク段階によって、上部工具11が最後に占めた位置から出発して第1ストローク段階が導入されるため、
図9aに示されるように、工具体39が直接工作物10の表面の上に位置付けられるように実施されることが企図され得る。この第1ストローク段階はすでにY方向およびZ方向からの重複した運動を有しうる。
【0062】
代替的に下部工具9が上部工具11に関連して位置付けられ、有利には送り装置22を介して工作物10が支持面61に当接することが確保されることも企図され得る。
【0063】
図9cでは
図9aおよび
図9bのための代替的な実施形態が示される。そこに取り付けられた工作物10の斜角面64は、面取りされるかまたは円弧状の延び方を有する。そのような斜角面64の製作のために、第2ストローク段階の制御は
図9aの前述の第2ストローク段階から逸脱する。そのとき上部工具11がストローク軸14に沿った重複したストローク運動、および位置付け軸16に沿った移動によって制御されるため、切断縁部38が円弧状または曲線状の延び方を辿ることが企図される。それによって円弧状の斜角面64が成立する。斜角面64の延び方あるいは斜角面64の湾曲はストローク軸14に沿ったストローク運動および位置付け軸16に沿った移動のそれらの重複の際の割合に応じて決まる。
【0064】
図9dでは
図9aの代替的な実施形態が示される。そのとき第2ストローク段階の間、例えば45°以下の角度の直線的な斜角面64の成形のための移動が制御されるだけではなく、複数の斜角面64が工作物10に形成されることが企図される。
図9dは例えば2つの連続して異なる角度で配向される斜角面64を示す。
【0065】
複数の互いに前後して並ぶ斜角面64の数もそれらの角度位置もまたも選択に従って制御15を使って制御可能である。
【0066】
代替的に9aの平坦な斜角面64および
図9cの湾曲した斜角面64は単一にまたは複数を互いに組み合わせることも企図できる。
【0067】
図10では
図7の上部工具11の代替的な実施形態の透視図を示す。
図11は
図10の上部および下部工具11、9の概略断面図を示す。
【0068】
これらの
図10および
図11の実施形態は、工具体39が位置付け軸35の外にある長手軸40を有することで
図7および
図8から逸脱する。好ましくは0°と90°の間の角度aが位置付け軸35と長手軸40の間に設けられる。それ以外は
図7および
図8の実施が適用される。
【0069】
以下に
図12a~12fに基づき様々な実施形態が説明され、それらの場合工作物10の斜角面64が上部工具11によって製作されることができ、それらは位置付け軸35に対して傾斜した工具体39を備える。そのとき位置付け軸35への長手軸40の様々な角度位置が、部分縁部あるいは斜角面64の製作も同じ角度位置によって実現することが可能である。
【0070】
図12aでは例えば斜角面64の形態が工作物10の前面あるいは上側への45°の角βで示される。ここではその長手軸40が45°の角aで位置軸35に配向される工具体39が適用される。
【0071】
図9aおよび
図9bで説明された作業ストロークの実施形態がこの場合も適用される。45°の角βの斜角面64の実施のための作業ストロークの第2ストローク段階は、その長手軸が45°の角aで位置軸35に配向される工具体39の場合、好ましくはストロークの直線移動が第2ストローク段階で長手軸40に沿って制御されるため、長手軸40および運動方向が矢印Aに従い一致するように制御される。
【0072】
図12bの工作物10における45°の角βの斜角面64の製作は、例えば位置軸35への30°の角aを有する長手軸40を有する例えば工具体39が使用されることにより、
図12aの実施形態から逸脱する。第2ストローク段階による移動は、矢印Aに従いストローク軸14に対して45°の角度で行われるため、移動は第2ストローク段階で工具体39の長手軸40から逸脱する。
【0073】
図12cは
図12および
図12bのさらなる代替手段を示す。またも工作物10における45°の角βを有する斜角面64が製作される。そのとき工具体39が長手軸40によって15°の角aの分だけ位置軸35の外にある上部工具11に導入される。しかし矢印Aに従う第2ストローク段階での移動は、
図12aおよび
図12bの実施形態例における第2ストローク段階の移動に相応する。
【0074】
これらの実施形態は、工具体39の長手軸14の位置軸35に対する角aが、工作物10における斜角面64のために設けられるべき角βと等しいか、またはそれより小さいとき斜角面64の製作が行われることを示す。
【0075】
以下の
図12d~12fでは、それらの角βに関しても工作物10の前面におけるそれらの長さに関しても、互いから逸脱するさらなる斜角面64が説明される。
図12d~12fのこれらの実施形態では例えば工具体39が長手軸40によって導入され、それらの長手軸40は例えば位置軸35に対して50°の角aの分だけ傾斜する。
【0076】
図12dでは斜角面64の例示的な配置が示される。ここでは工作物縁部91のいわゆる屈折が示される。斜角面64は前面の高さに関して小さくのみ形成される。第2ストローク段階での上部工具11の直線的ストローク運動の配向に応じて、またも斜角面64の位置、あるいは斜角面64の角βが工作物10の工作物表面に配向され得る。例えば斜角面64は30°である。
【0077】
図12eでは斜角面64が工作物表面に対し60°の角を有する実施形態が示される。同時に斜角面64は例えば工作物10の前面の高さの3分の2に渡って延びる。
【0078】
図12fでは斜角面64の成形のためのさらなる代替的な実施形態が示される。この斜角面64は例えば完全に工作物10の全前面あるいは厚さに渡って延びる。斜角面64の配向は例えば工作物10の工作物面に対して40°の角度で行われる。
【0079】
第2ストローク段階における上部工具11の直線的なストローク運動は、斜角面64の形成されるべき角に相応して制御される。
【0080】
上述の実施形態例では下部工具9が静止し、作業ストロークは上部工具11によって行われうる。代替的に上部工具11と下部工具9を交換した制御も企図され得る。作業ストロークを実施するために,上部および下部工具11、9での移動パラメータの分割も企図されうる。そのとき上部および下部工具11、9の相対運動がストローク軸14、30の中で、および/または位置付け軸16、25に沿って行われうる。