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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】胎児超音波撮像
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/14 20060101AFI20220119BHJP
【FI】
A61B8/14
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019531982
(86)(22)【出願日】2017-12-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-23
(86)【国際出願番号】 EP2017083269
(87)【国際公開番号】W WO2018114774
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-12-17
(31)【優先権主張番号】16306720.0
(32)【優先日】2016-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】特許業務法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】チオフォロ‐バイト キュベレ
(72)【発明者】
【氏名】ペロー マシュー
(72)【発明者】
【氏名】ラウト ジーン‐ミシェル
【審査官】冨永 昌彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/042808(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0232394(US,A1)
【文献】特開2012-081257(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0065512(US,A1)
【文献】特開平09-308630(JP,A)
【文献】米国特許第05911691(US,A)
【文献】特開2014-094157(JP,A)
【文献】特表2015-535723(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0100454(US,A1)
【文献】国際公開第2016/152624(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/001784(WO,A1)
【文献】特表2017-519579(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0148657(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 - 8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
胎児の撮像ボリュームを含む超音波撮像データを記憶するデータ記憶装置と、
前記データ記憶装置と通信可能に結合され、ユーザインターフェースに応答するプロセッサ装置と、
前記プロセッサ装置の制御下にある表示デバイスと、
を含み、
前記プロセッサ装置は、
前記撮像ボリューム内で細長い形状を有する胎児基準構造を特定し、
前記胎児基準構造上に基準点を規定し、
前記ユーザインターフェースからの平行移動命令を、特定された前記胎児基準構造の伸長方向に沿った前記基準点の平行移動として解釈し、
前記表示デバイス上に、前記撮像ボリュームを、前記伸長方向に垂直な前記撮像ボリュームのボリュームスライスであって、平行移動した前記基準点と一致するボリュームスライスと共に表示し、
表示され前記撮像ボリューム内の前記胎児基準構造の前記細長い形状に沿った前記平行移動を視覚化する、
超音波撮像システム。
【請求項2】
細長い形状を有する前記胎児基準構造は、前記胎児の脊椎である、請求項1に記載の超音波撮像システム。
【請求項3】
前記プロセッサ装置は更に、
平行移動した前記基準点と一致する前記ボリュームスライス内の前記胎児の潜在的な解剖学的特徴を認識し、
表示された前記ボリュームスライス内の認識された前記潜在的な解剖学的特徴を強調表示する、請求項1又は2に記載の超音波撮像システム。
【請求項4】
認識された前記潜在的な解剖学的特徴は、認識された前記潜在的な解剖学的特徴の上のカラーオーバーレイによって強調表示される、請求項3に記載の超音波撮像システム。
【請求項5】
前記プロセッサ装置は更に、
認識された前記潜在的な解剖学的特徴のユーザ確認を受信し、
前記ユーザ確認で前記撮像ボリュームを増強する、請求項3又は4に記載の超音波撮像システム。
【請求項6】
前記プロセッサ装置は、認識された潜在的な解剖学的特徴の1つ以上の受信されたユーザ確認を使用して、多関節胎児モデルを前記撮像ボリュームに適合させる、請求項5に記載の超音波撮像システム。
【請求項7】
前記胎児の前記撮像ボリュームを取得する超音波プローブを更に含む、請求項1から6の何れか一項に記載の超音波撮像システム。
【請求項8】
超音波撮像システムを用いて胎児の撮像ボリュームのボリュームスライスを視覚化する方法であって、
データ記憶装置から前記撮像ボリュームを読み出すステップと、
前記撮像ボリューム内で細長い形状を有する胎児基準構造を特定するステップと、
前記胎児基準構造上に基準点を規定するステップと、
ユーザインターフェースからの平行移動命令を、特定された前記胎児基準構造の伸長方向に沿った前記基準点の平行移動として解釈するステップと、
前記撮像ボリュームを、前記伸長方向に垂直な前記撮像ボリュームのボリュームスライスと共に表示するステップであって、前記ボリュームスライスは、平行移動した前記基準点と一致する、表示するステップと、
表示された前記撮像ボリューム内の前記胎児基準構造の前記細長い形状に沿った前記平行移動を視覚化するステップと、
を含む、方法。
【請求項9】
平行移動した前記基準点と一致する前記ボリュームスライス内の前記胎児の潜在的な解剖学的特徴を認識するステップと、
表示された前記ボリュームスライス内の認識された前記潜在的な解剖学的特徴を強調表示するステップと、
を更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
認識された前記潜在的な解剖学的特徴は、認識された前記潜在的な解剖学的特徴の上のカラーオーバーレイによって強調表示される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
認識された前記潜在的な解剖学的特徴のユーザ確認を受信するステップと、
前記ユーザ確認を用いて、前記データ記憶装置に記憶されている前記撮像ボリュームを増強させるステップと、
を更に含む、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
認識された潜在的な解剖学的特徴の1つ以上の受信されたユーザ確認を使用して、多関節胎児モデルを前記撮像ボリュームに適合させるステップを更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項1から7の何れか一項に記載の超音波撮像システムのプロセッサ装置上で実行されると、前記プロセッサ装置に、請求項8から12の何れか一項に記載の方法を実施させるように具現化されたコンピュータ可読プログラム命令を有する、コンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、胎児の撮像ボリュームを含む超音波撮像データを記憶するデータ記憶装置と、データ記憶装置と通信可能に結合され、ユーザインターフェースに応答するプロセッサ装置と、プロセッサ装置の制御下にある表示デバイスとを含む超音波撮像システムに関する。
【0002】
本発明は更に、当該超音波撮像システムを用いて胎児の撮像ボリュームのボリュームスライスを視覚化する方法に関する。
【0003】
本発明は更に、当該超音波撮像システムのプロセッサ装置上で実行されると、プロセッサに当該方法を実施させるように具現化されているコンピュータ可読プログラム命令を有するコンピュータ可読記憶媒体を含むコンピュータプログラムプロダクトに関する。
【背景技術】
【0004】
超音波撮像は、妊娠期間中に、例えば胎児の構造奇形を検出するために、母親の子宮内の胎児の発達を評価するために定期的に使用される。臨床医が胎児の必要な各ビューの画像を取得する伝統的なやり方は、所望の解剖学的方向が2D撮像プローブの平面内となるまで、超音波プローブを、母親の腹部と音響接触した状態で操作することである。このような手順で複数のビューが生成される場合、これらのビューを取得し分析するには高度な技術が必要であり(例えば胎児心エコー検査はオペレータ依存性が非常に高い)、更に手順中に胎児が動く可能性があるため、胎児が動くたびに臨床医が自分自身の胎児に対する向きを変える必要があるため、奇形を見落とす可能性がある。
【0005】
3次元(3D)超音波画像取得の出現により、今や胎児の大きいボリュームを捕捉し、例えば患者(胎児)が退院した後であっても、任意の時点で2Dビューの再構成を計算することが可能である。3D取得手順は、胎児上で2D画像平面をゆっくりと掃引することによって、又は、胎児上で超音波ビームを電子的に操縦することによって行うことができる。次に、ユーザによって指示される画像処理を用いて、捕捉画像ボリュームを評価することができる。即ち、胎児の解剖学的構造を評価することができる。したがって、3D超音波画像取得は、オペレータ依存性が少なく、例えば胎児の検査後での様々な診断上の質問に答えるために、様々なビューに沿った画像ボリュームの評価を容易にする。
【0006】
胎児の発育を分析するのに特に興味深いのは、いわゆるバイオメトリ測定であり、これは胎児が、例えば予想される許容範囲内で正しく発育しているかどうかを確認するために使用される。このようなバイオメトリ測定は、バイオメトリ測定を容易にするために3Dボリュームに適合されている多関節胎児モデルに依存する。しかしながら、このような多関節胎児モデルの提供は、3Dボリュームに適合させるときのモデル位置の調整のための標的ランドマークを提供するために、胎児の体内の骨及び関節といった解剖学的特徴を事前に検出し及び標識付けする必要があるため、時間のかかる作業である。これは、胎児画像がよく知られているアーチファクト、即ち、母親の子宮内での胎児の位置から生じる散乱及び陰影効果によって損なわれているために、自動標識付けが通常難しいからである。
【0007】
国際特許公開WO2013/105815A1には、胎児を撮影することによって得られた所定の画像を受信する画像受信器と、所定の画像から胎児の頭部領域と胴体領域とを検出し、検出された頭部領域に対応する第1の輪郭形状、検出された胴体領域に対応する第2の輪郭形状、検出された頭部領域の中心軸である第1の軸、及び、検出された胴体領域の中心軸である第2の軸の少なくとも1つを使用することによって、胎児の形状をモデル化し、胎児のバイオメトリックデータが容易に測定可能であるように胎児をモデル化するコントローラとを含む画像処理装置が開示されている。しかしながら、この装置は、3D画像における胎児の(他の)解剖学的特徴の標識付け作業を容易にすることにおいて、ユーザを支援しない。
【0008】
国際特許公開WO2010/046819A1には、身体の3次元スキャンから得られたボリュームデータを提供する超音波スキャンアセンブリを含む超音波撮像システムが開示されている。特徴抽出器が、ボリュームデータと解剖学的実体の幾何学的モデルとのベストマッチを探す。幾何学的モデルは、各解剖学的特徴を表す各セグメントを含む。したがって、特徴抽出器は、ボリュームデータの解剖学的構造に関連した記述を提供し、当該記述は、ボリュームデータ内の各解剖学的特徴の各幾何学的位置を特定する。
【0009】
米国特許出願公開第2012/0232394A1号には、超音波が被験者の身体に向けて送られた後、当該被験者の身体から反射して戻ってくる反射波に基づいて被験者の身体内の各領域について3次元データを生成する3次元データ生成ユニットと、各領域について、3次元データを構成する2次元断面の1つを、被験者の身体内の各領域の長さを測定するために使用される測定基準画像として選択する測定画像選択ユニットと、それぞれ選択された測定基準画像を使用して被験者の身体内の各領域の長さを測定し、測定された長さを使用して被験者の推定体重を計算する測定計算ユニットと、計算された推定体重を出力する表示ユニットとを含む超音波診断装置が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、胎児の撮像ボリュームを含む超音波撮像データを記憶するデータ記憶装置と、データ記憶装置と通信可能に結合され、ユーザインターフェースに応答するプロセッサ装置と、上記プロセッサ装置の制御下にある表示デバイスとを含み、胎児の解剖学的特徴の標識付けを容易にするために使用することができる超音波撮像システムを提供することを目的とする。
【0011】
本発明は更に、胎児の解剖学的特徴の標識付けを容易にするために、上記超音波撮像システムを用いて胎児の撮像ボリュームのボリュームスライスを視覚化する方法を提供することを目的とする。
【0012】
本発明は更に、上記超音波撮像システムのプロセッサ装置上で実行されると、当該プロセッサ装置に上記方法を実施させるように具現化されているコンピュータ可読プログラム命令を有するコンピュータ可読記憶媒体を含むコンピュータプログラムプロダクトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
一態様によれば、超音波撮像システムが提供される。超音波撮像システムは、胎児の撮像ボリュームを含む超音波撮像データを記憶するデータ記憶装置と、データ記憶装置と通信可能に結合され、ユーザインターフェースに応答するプロセッサ装置と、プロセッサ装置の制御下にある表示デバイスとを含み、プロセッサ装置は、撮像ボリューム内で細長い形状を有する胎児基準構造を特定し、胎児基準構造上に基準点を規定し、ユーザインターフェースからの平行移動命令を、特定された胎児基準構造の伸長方向に沿った基準点の平行移動として解釈し、表示デバイス上に、撮像ボリュームを、伸長方向に垂直な撮像ボリュームのボリュームスライスと共に表示し、ボリュームスライスは、平行移動した基準点と一致し、平行移動命令は、表示される撮像ボリューム内の胎児基準構造の細長い形状を参照して生成される。
【0014】
本発明は、例えば胎児の脊椎といった胎児の幾つかの解剖学的特徴を、例えばプロセッサ装置によって実行される特徴認識アルゴリズムを使用して自動的に認識可能であるという洞察に基づいている。更に、幾つかの他の胎児の解剖学的特徴が、胎児基準構造に対し、幾分固定した関係を有することが認識されている。したがって、超音波撮像システムのユーザが胎児基準構造に沿った撮像ボリュームのボリュームスライスを選択するように制限することによって、上記他の胎児の解剖学的特徴の視覚化が容易になる。プロセッサ装置は、表示デバイス上で、ボリュームスライスを、撮像ボリュームと共に表示して、ユーザによって選択されたボリュームスライスの直感的な解釈が更に支援される。
【0015】
好適な実施形態では、プロセッサ装置は更に、平行移動した基準点と一致するボリュームスライス内の胎児の潜在的な解剖学的特徴を認識し、表示されたボリュームスライス内の認識された潜在的な解剖学的特徴を強調表示する。例えば脊椎といった基準構造の場合、脊椎に接続されている更なる解剖学的特徴は、当該更なる解剖学的特徴が典型的には脊椎と同等のエコー輝度を有するので、ボリュームスライスにおいてその強度は脊椎の強度と同等であるので、ボリュームスライスにおいて、簡単に検出することができる。更に、当該更なる解剖学的特徴は典型的には細長い基準構造の主たる向き/方向に関して特定の解剖学的配置を有する。例えば肩、肋骨及び股関節は、脊椎に関してやや対称的であり、脊椎に特定の角度方向で接続されている。このような事前知識は、これらの更なる解剖学的特徴を検出するのに、例えば表示されたボリュームスライス内で当該更なる解剖学的特徴を強調表示するのに役立つ。このようなシナリオでは、プロセッサ装置は、基準構造に隣接し、基準構造の強度と比較して規定の閾値内の強度変動を有するボリュームスライス内の領域を特定する、及び/又は、細長い基準構造と予想される幾何学的関係を持つ、例えば上述のように、予想される対称性及び/又は角度方向を有する領域を特定することができる。このような強調表示された認識された潜在的な解剖学的特徴は、超音波撮像システムのユーザの注意を直ちに引き、これにより、ユーザによって実際の解剖学的特徴であると認識される場合、ユーザによる認識された潜在的な解剖学的特徴の標識付けが容易になる。
【0016】
例えば認識された潜在的な解剖学的特徴は、認識された潜在的な解剖学的特徴にユーザの注意を引くために、当該認識された潜在的な解剖学的特徴の上のカラーオーバーレイによって強調表示されてよい。このようなカラーオーバーレイは、ユーザに認識された潜在的解剖学的特徴が何であるのかの提案が更に提示されることにより、ユーザによって選択された各ボリュームスライス内の解剖学的特徴をユーザが特定するのを更に支援するように、認識された潜在的な解剖学的特徴の様々な種類、例えば様々な形状に異なるカラーオーバーレイが与えられる色の規則に従って選択することができる。
【0017】
好適には、プロセッサ装置は更に、認識された潜在的な解剖学的特徴のユーザ確認を受信し、ユーザ確認を用いて、ボリュームスライスを更新する。例えばユーザは、ユーザインターフェースのキーボード等を使用して、例えば肋骨には「R」、股関節には「H」、肩甲骨には「S」等といったように、例えばキーボード上の単一のキーを押すことにより、又は、表示デバイス上でユーザに提示されるドロップダウンメニュといったメニュから適切な確認を選択することにより、認識された潜在的な解剖学的特徴の確認を提供することができる。このようにして、ユーザは、例えば撮像ボリューム内の解剖学的ランドマークを規定するために、標識付けのための実際の解剖学的構造をボリュームスライス内に迅速に特定することができる。
【0018】
このように特定された解剖学的ランドマークは、プロセッサ装置によって使用されて、多関節胎児モデルが撮像ボリュームに適合され、胎児のバイオメトリック評価は、当該多関節胎児モデルに基づくことができる。
【0019】
超音波撮像システムは、胎児の撮像ボリュームを取得する超音波プローブを更に含んでよい。当該超音波プローブは、ボリュメトリック撮像領域の3次元超音波画像フレームが提供されるように、当該領域内で超音波ビームを電子的に操縦するように構成される2次元(2D)アレイに配置されるトランスデューサ素子を含んでよい。或いは、アレイは、3次元超音波画像フレームを提供するために、ボリュメトリック撮像領域を通して機械的に操縦されるように構成される1次元(1D)アレイであってもよい。
【0020】
別の態様によれば、超音波撮像システムを用いて胎児の撮像ボリュームのボリュームスライスを視覚化する方法が提供される。方法は、データ記憶装置から撮像ボリュームを読み出すステップと、撮像ボリューム内で細長い形状を有する胎児基準構造を特定するステップと、胎児基準構造上に基準点を規定するステップと、ユーザインターフェースからの平行移動命令を、特定された胎児基準構造の伸長方向に沿った基準点の平行移動として解釈するステップと、撮像ボリュームを、伸長方向に垂直な撮像ボリュームのボリュームスライスと共に表示するステップとを含み、ボリュームスライスは、平行移動した基準点と一致し、平行移動命令は、表示された撮像ボリューム内の胎児基準構造の細長い形状を参照して生成される。上述のように、これは、上記胎児の解剖学的特徴の視覚化を容易にする。
【0021】
方法は更に、ユーザによる表示された超音波画像の解釈を更に支援するために、ボリュームスライスを、撮像ボリュームと共に表示するステップを含んでよい。
【0022】
方法は更に、平行移動した基準点と一致するボリュームスライス内の胎児の潜在的な解剖学的特徴を認識するステップと、表示されたボリュームスライス内の実際の解剖学的特徴をユーザが特定するのを支援するために、表示されたボリュームスライス内の認識された潜在的な解剖学的特徴を強調表示するステップとを含んでよい。
【0023】
方法は更に、認識された潜在的な解剖学的特徴にユーザの注意を引くために、認識された潜在的な解剖学的特徴の上のカラーオーバーレイによって、認識された潜在的な解剖学的特徴を強調表示するステップを含んでよい。
【0024】
好適な実施形態では、方法は更に、認識された潜在的な解剖学的特徴のユーザ確認を受信するステップと、標識が多関節胎児モデルを撮像ボリュームに適合させるための解剖学的ランドマークとして使用されるように、ユーザ確認でボリュームスライスを標識付けするステップとを含んでよい。
【0025】
更に別の態様によれば、本願に説明される実施形態のうちの何れかによる超音波撮像システムのプロセッサ装置上で実行されると、当該プロセッサ装置に、本願に説明される実施形態の何れかによる方法を実施させるように具現化されたコンピュータ可読プログラム命令を有するコンピュータ可読記憶媒体を含むコンピュータプログラムプロダクトが提供される。当該コンピュータプログラムプロダクトは、本発明の1つ以上の実施形態を実施することができるように、既存の胎児撮像用超音波撮像システムをアップグレードするように使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本発明の実施形態について、添付図面を参照しながらより詳細にかつ非限定的な例として説明する。
【0027】
図1図1は、動作中の例示的な実施形態による超音波撮像システムを概略的に示す。
図2図2は、図1の超音波撮像システムの一態様をより詳細に概略的に示す。
図3図3は、胎児のバイオメトリック分析に使用可能である多関節胎児モデルの原理を概略的に示す。
図4図4は、表示デバイスに表示される本発明の一実施形態のユーザインタラクション態様を概略的に示す。
図5図5は、本発明の方法の例示的な実施形態のフローチャートである。
図6図6は、本発明の超音波撮像システムの例示的な実施形態のブロック図を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
なお、図面は単に概略的であり、縮尺通りではない。また、図面全体を通して同じ参照符号を使用して、同じ又は類似の部分を示している。
【0029】
図1は、例示的な実施形態による超音波撮像システム100の概略図を示す。超音波撮像システム100は、解剖学的部位、特に胎児8を含む患者13の解剖学的部位のボリュメトリック領域を検査するために適用される。このようなボリュメトリック領域の3D画像はまた、撮像ボリュームとも呼び、一方で、当該3D画像の2Dスライスはまた、ボリュームスライスとも呼ぶ。
【0030】
超音波撮像システム100は、超音波を送受信する多数のトランスデューサ素子を有する少なくとも1つのトランスデューサアレイを有する超音波プローブ10を含む。トランスデューサ素子は、好適にはボリュメトリック領域の3次元超音波画像フレームが提供されるように、当該ボリュメトリック領域内で超音波ビームを電子的に操縦するように構成された2次元(2D)アレイに配置される。或いは、アレイは、3次元超音波画像フレームを提供するために、ボリュメトリック領域を通して機械的に操縦されるように構成された1次元アレイ(1D)であってもよい。プローブ10は、超音波を特定の方向に送信し、超音波プローブ10の所与の3D画像フレームに対して視野6を形成する特定の方向から超音波を受信する。このような3D撮像は、それ自体はよく知られているので、簡潔さのためだけに更に詳細に説明することはしない。
【0031】
図1に示す実施形態では、患者13は妊娠している人であり、検査対象の解剖学的実体は胎児8であり、その少なくとも一部が視野6内に配置される。
【0032】
超音波撮像システム100は更に、制御ユニットといった超音波撮像装置200を含む。超音波撮像装置200は、通常、1つ以上の処理要素を含むプロセッサ装置210を含み、超音波撮像システム100を介する超音波画像の提供を制御する。以下に更に説明されるように、超音波撮像装置200は、超音波プローブ10のトランスデューサアレイから超音波画像データを受信し、胎児8の様々な超音波データセットから導出された複合3次元(3D)超音波画像を提供する。
【0033】
超音波撮像システム100は更に、超音波撮像装置200から受信した超音波画像を表示する表示デバイス50を含む。更にまた、キーの任意の組み合わせ、キーボード及び入力デバイスを含み、表示デバイス50に及び/又は直接超音波撮像装置200に接続するユーザインターフェース120が提供される。当該入力デバイスの例としては、マウス、トラックボール等が挙げられる。他の適切な入力デバイスが当業者にはすぐに明らかとなろう。本願のコンテキストでは、ユーザは、例えばトラックボールやマウスといった入力デバイスを動かすことによって、キーをクリックすることによって、超音波撮像装置200に平行移動命令を伝える。なお、幾つかの実施形態における平行移動命令は、ユーザによるトラックボール又はマウスといった入力デバイスの動きに等しい。
【0034】
図2に、超音波撮像装置200の例示的な実施形態を詳細に示す。超音波撮像装置200は、少なくとも処理装置210とデータ記憶装置220とを含む。表示デバイス50は、超音波撮像装置200とは別個であっても、超音波撮像装置200の一部を構成してもよい。同様に、ユーザインターフェース120の少なくとも一部は、超音波撮像装置200とは別個であっても、超音波撮像装置200の一部を形成してもよい。
【0035】
処理装置210は、図6に概略的に示される超音波撮像システムの例示的な実施形態における超音波画像プロセッサ30といった超音波画像プロセッサ内で空間合成によってデジタルエコー信号を処理する超音波画像プロセッサを含んでよい。超音波画像プロセッサについては、以下により詳細に説明する。データ記憶装置220は、個別のメモリデバイスであっても、処理装置210の一部を形成してもよい1つ以上のメモリデバイスを含んでよい。例えばデータ記憶装置220は、超音波画像プロセッサの一部を形成しても、超音波画像プロセッサとは別個であってもよい複合画像メモリユニットを含んでよい。複合画像メモリは、3Dフレームストレージバッファとして実現されてもよく、また、同時に書き込み及び読み出しが可能なデュアルポートメモリとして実現されてもよい。このようなR/Wメモリを使用することにより、超音波プローブ10のトランスデューサアレイ及びビームフォーマ(以下により詳細に説明する)によって新しく取得された3D超音波画像フレームを、R/Wメモリの1つの領域に書き込むことができる一方で、以前にメモリに記憶された他の3D画像フレームのデータを読み出して分析することができる。新しいスライス画像データのメモリへの書き込みは、書き込みアドレスコントローラによって制御される一方で、メモリ内の他の場所からのスライス画像データの読み出しは、読み出しアドレスコントローラの制御下にあり、これにより、リアルタイムの画像分析及び合成が容易になる。当然ながら、このような複合画像メモリユニットは、例えば患者の検査後に、撮像ボリュームの取得が完了した後の当該撮像ボリュームの評価にも同様に使用することができる。
【0036】
例えば複合画像メモリユニットであるデータ記憶装置220は更に、多関節胎児モデルを記憶することができる。多関節胎児モデルは、胎児の身体の全体的な幾何学的配置及び関節の配置の変動性を考慮する。多関節胎児モデルは、胎児の骨格の解剖学的構造の最も重要な関節を網羅し、可動域(最小/最大角度)を含む関節毎の自由度を規定する。多関節胎児モデルは、一般に、関節(j)-肢(L)関係を使用して実現される。一般的な胎児構造を規定することによって、胎児を含む3次元データセットをセグメント化することができる。
【0037】
図3に、この考えについて合成例を用いて説明する。多関節胎児モデルは、各関節について、対応する関節パラメータ(回転点及び角度)を与え、したがって、全体的な配置を規定する。このモデルでは、次の前提が使用される。各肢は形状を持ち、各肢は販売可能であり、親関節を有し、子関節のリストを有する。各関節は、蝶番関節又は球関節であり、(この関節に関して)静止した肢を有し、柔軟性のある肢を有する。したがって、関節接合は、回転点、回転軸及び角度の最小値/最大値によって規定することができる。胎児の位置は、各関節の位置及び回転パラメータを規定する座標系によって与えられる。この入力に基づいて、医用画像内の実際の胎児の姿勢位置(関節接合)は、所望の位置に合うように逆運動学を使用して決定することができる。逆問題を解く際に、関節毎の自由度が考慮される。
【0038】
プロセッサ装置210の超音波画像プロセッサは、データ記憶装置220に記憶されている多関節胎児モデルに基づいて、各3D画像フレームをセグメント化するセグメント化ユニットを含んでよい。これにより、セグメント化ユニットは、ボリュメトリック領域の複数の3Dフレームから生じる複数の3D画像を提供する。各3D画像について、観察方向に対する胎児の相対的な向きが特定される。3D画像に関連付けられた胎児の相対的な向きは、取得された3Dフレーム間の空間的関係を与える。前述のように、胎児又はその一部を含む撮像ボリューム上への多関節胎児モデルのマッピングは、通常、モデル内の基準点の撮像ボリューム内の特定された解剖学的ランドマークとの位置合わせを必要とする。しかし、このような特定された解剖学的ランドマークの自動提供は、上述のとおり、胎児の画像が母親の子宮内の胎児の位置から生じるよく知られているアーチファクト、即ち、散乱及び陰影効果によって損なわれるために簡単ではない。したがって、このような解剖学的ランドマークは、通常、ユーザによって手動で提供される必要があるが、これは面倒で時間のかかる作業である。
【0039】
本発明の少なくとも幾つかの実施形態は、撮像ボリューム内のこのような解剖学的ランドマークの手動生成を容易にすることを目的としている。これは図4に概略的に示される。図4では、表示デバイス50に表示される2Dスライス(ボリュームスライス)が、本発明の実施形態によるこれらのスライスの選択方法と組み合わせて示されている。当該方法については、超音波撮像システムを用いて胎児の撮像ボリュームのボリュームスライス51、51’を視覚化する方法300の例示的な実施形態のフローチャートが示される図5を用いて更に詳細に説明する。当該方法300は、ステップ301において、例えば撮像ボリュームを捕捉し、それをデータ記憶装置220に記憶することによって開始する。例えば胎児を含むボリュメトリック領域(撮像ボリューム)の複数の3D超音波画像フレームが取得される。各3D超音波画像フレームは、胎児に対して異なる観察方向で取得されてよい。
【0040】
本発明の実施形態によれば、プロセッサ装置210は、超音波プローブ10で捕捉された撮像ボリューム内で、細長い形状を有する胎児基準構造80を特定する。これは、例えば方法300におけるステップ303に対応する。このために、プロセッサ装置210は、胎児基準構造80を検出する自動検出モジュール(図示せず)を含んでよい。この自動検出モジュールは、超音波撮像装置200の専用ハードウェアコンポーネントであってよい。この専用ハードウェアコンポーネントは、プロセッサ装置210の一部を形成しても、或いは、この検出モジュールは、例えばプロセッサ装置210の適切に構成されたプロセッサに、撮像ボリューム内の胎児基準構造80を特定させるアルゴリズムといったコンピュータプログラム命令の形である当該適切に構成されたプロセッサ上で実行するためのソフトウェアで実現されてもよい。一実施形態では、胎児基準構造80は、胎児の脊椎である。このような基準構造は、例えばそれ自体は当業者によく知られているセグメント化アルゴリズムである任意の適切な検出アルゴリズムを使用して検出することができる。胎児の脊椎の自動検出は、以下に更に詳細に説明するように、脊椎を基準として使用する場合、例えば骨格構造である多くの解剖学的特徴がより簡単に特定可能であるといったように、当該解剖学的特徴が、脊椎の近くに配置される及び/又は脊椎に連結されるという更なる利点を有する。しかし、当然ながら、以下に更に詳細に説明される本発明の実施形態の原理は、超音波プローブ10で捕捉された撮像ボリューム内に自動的に検出可能である他の細長い胎児基準構造にも等しく適用される。
【0041】
本発明によれば、典型的には上述のように脊椎といった細長い構造である特定された胎児基準構造80は、ステップ303において、超音波撮像装置200、即ち、プロセッサ装置210によって使用されて、超音波プローブ10で捕捉された撮像ボリューム内でユーザが評価可能である自由度が制限される。具体的には、プロセッサ装置210は、ステップ305において、ユーザインターフェース120から受信した平行移動命令を、特定された胎児基準構造80に沿った基準点81の平行移動として解釈する。基準点81は、胎児基準構造80を特定した後に、胎児基準構造80に沿った任意の適切な位置にあるものとしてプロセッサ装置210によって規定される。つまり、プロセッサ装置210によって、胎児基準構造80に沿ったボリュームスライス51、51’の視覚化のための任意の適切な開始点が選択される。当該開始点から、ユーザインターフェース120から受信された平行移動命令が胎児基準構造80に沿って開始され、例えば更なる基準点81’に到達する。このようにして、ステップ305において、ユーザは、ユーザインターフェース120を用いて、例えばマウス、トラックボール等の移動又はスクロール動作によって、胎児基準構造80に沿った2Dボリュームスライス51、51’を選択することができる。当該移動、スクロール動作等は、胎児基準構造80に沿った任意の適切な方向における基準点81の移動をもたらす。
【0042】
例えばユーザによって選択された胎児基準構造80に沿った各点である各基準点81、81’について、プロセッサ装置210は、ステップ307において、基準点81、81’における撮像ボリュームからボリュームスライス51、51’を抽出し、当該ボリュームスライスを表示するように表示デバイス50を制御する。当該ボリュームスライスは、基準点81、81’における胎児基準構造80の平面に垂直に方向付けられる平面内にある。一実施形態では、ボリュームスライス51、51’は、胎児基準構造80を含む撮像ボリュームと共に表示され、これにより、例えば撮像ボリューム内に表示される胎児基準構造80に沿ってスクロールし、単一ビューでのランドマーク特定のために垂直ボリュームスライス51、51’を示すことによって、ユーザが撮像ボリューム内に表示される胎児基準構造80を参照して所望の基準点を規定することができる。このために、プロセッサ装置210は、ユーザインターフェース120から受信した平行移動命令を、撮像ボリューム内に見える平行移動として、例えばユーザインターフェース120を操作しているユーザから受信した平行移動命令に従って、胎児基準構造80に沿って追跡するカーソル等として解釈することができる。
【0043】
好適な実施形態では、プロセッサ装置210は更に、ステップ309において、基準点81、81’に対応する各ボリュームスライス51、51’を評価し、これらのボリュームスライス内の潜在的な解剖学的特徴53、53’を認識する。例えばプロセッサ装置210は、ボリュームスライス51、51’内の胎児基準構造80の断面と画像の周囲領域とのコントラスト比に匹敵する特定のコントラスト比を周囲の画像領域に対して有する画像領域を認識する。或いは、プロセッサ装置210は、胎児基準構造80と同じ強度又は輝度を有する胎児基準構造80の断面に隣接する画像領域を特定することによって、画像領域を潜在的な解剖学的特徴53、53’として認識する。これは、例えば脊椎に隣接する解剖学的特徴は典型的には脊椎と同じ又は類似のエコー輝度を有する骨構造であり、したがって、そのような解剖学的特徴が脊椎と同等の強度又は輝度を有することを考えると、胎児基準構造80が脊椎である場合に特に適している手法である。このような自動認識は、代替的又は追加的に、細長い基準構造と予想される幾何学的関係(例えば予想される対称性及び/又は角度の向き)を有する領域の特定を含んでもよい。これは、更なる解剖学的特徴が典型的には細長い基準構造の主たる向き/方向に対して特定の解剖学的配置を有するという既存知識を利用する。例えば肩、肋骨及び股関節は、脊椎に対してやや対称的であり、脊椎に特定の角度方向で接続されている。このような事前知識は、これらの更なる解剖学的特徴を検出するのに、例えば表示されたボリュームスライス内で当該更なる解剖学的特徴を強調表示するのに役立つ。
【0044】
潜在的な解剖学的特徴53、53’が認識される場合、このような提案された潜在的な解剖学的特徴53、53’をユーザがすぐに認識可能とするためには、プロセッサ装置210は更に、ステップ311において、例えばランドマーク特定のために、提案された潜在的な解剖学的特徴53、53’の標識付けにおいてユーザを支援するために、表示デバイス50に表示される処理済みボリュームスライス51、51’において認識される提案される潜在的な解剖学的特徴を強調表示する。そうでない場合、ステップ309において、ボリュームスライスは表示される。提案される潜在的な解剖学的特徴53、53’の任意の適切な強調表示が考慮される。例えばプロセッサ装置210は、ステップ311において、提案される潜在的な解剖学的特徴が、表示されるボリュームスライスの残りの部分から目立つように、処理済みボリュームスライス51、51’において認識される提案される潜在的な解剖学的特徴53、53’の上にカラーオーバーレイを生成し、これにより、ユーザが提案される潜在的な解剖学的特徴をすぐに認識するのを支援する。一実施形態では、プロセッサ装置210は更に、潜在的な解剖学的特徴の特定においてユーザを更に支援するために、プロセッサ装置210が例えば肩甲骨、肋骨又は寛骨といったようにどの種類の解剖学的特徴が潜在的に認識されているのかを提案できるように、例えば潜在的な解剖学的特徴の認識された形状に基づいて、異なる潜在的な解剖学的特徴53、53’に異なる色のオーバーレイを割り当てる。なお、疑念を回避するために、プロセッサ装置210による認識された潜在的な解剖学的特徴53、53’のこのような強調表示が、例えば潜在的な解剖学的特徴の輪郭を描くこと、潜在的な解剖学的特徴を明るくすること等の任意の適切なやり方で達成可能であり、当然ながら、強調表示は、カラーオーバーレイのみに限定されない。
【0045】
一実施形態では、プロセッサ装置210は更に、胎児基準構造80に関連付けられる認識された(強調表示された)潜在的な解剖学的特徴を有するボリュームスライス51、51’が表示されると、ステップ313において、認識された解剖学的特徴のユーザ確認(user identification)を受信する。即ち、ユーザは、潜在的な解剖学的特徴53、53’が実際の解剖学的特徴であることを確認する。例えばユーザインターフェース120は、ステップ315において、例えば元の撮像ボリュームを記憶しているデータ記憶装置と同じでも違っていてもよいデータ記憶装置に記憶されている撮像ボリュームを更新することによって又は当該撮像ボリュームの新しいバージョンを作成することによって、プロセッサ装置210が表示されたボリュームスライス51、51’内の解剖学的特徴53、53’に標識を付け、データ記憶装置220に記憶されている撮像ボリュームに解剖学的標識を追加することができるように、提案された潜在的な解剖学的特徴のユーザ確認をプロセッサ装置210に中継する。撮像ボリュームの新しいバージョンには、ユーザ確認済みランドマーク標識が含まれる。
【0046】
簡単な実施形態では、ユーザは、ユーザインターフェース120のキーボードを使用して、提案された解剖学的特徴を確認認証することができる。ユーザは、例えば肩については「s」、肋骨については「r」、股関節については「h」等といったように、単一のキーストロークで提案された解剖学的特徴53、53’を確認認証する。プロセッサ装置210は、単一の文字、例えば1つの文字にそれぞれが関連付けられる認識された解剖学的特徴のリストを維持し、ユーザインターフェース120から受信したキーストロークがこのリスト内の文字に対応するかどうかをチェックすることができる。そうである場合、プロセッサ装置210は、前述のように、認識されたランドマーク標識を用いて撮像ボリュームを更新することができる。キーストロークが認識されない場合、プロセッサ装置210は、表示デバイス50上に警告信号又は警告メッセージを生成して、キーストロークが認識されなかったことをユーザに知らせることができる。当然ながら、これは単に、ユーザが提案された解剖学的特徴の確認認証を超音波撮像装置200に提供する方法の非限定的な一例にすぎない。当業者には、例えば提案された解剖学的特徴53、53’に添付されるべき標識をユーザがタイプ入力する、ユーザが表示デバイス50に表示されるドロップダウンリストから当該標識を選択する等といったように多くの他の実施形態が同様に実現可能であることは直ちに明らかであろう。
【0047】
ステップ317において、ユーザが胎児基準構造80に沿った他のボリュームスライスを評価するかどうかが確認される。評価する場合、方法300は、ステップ305に戻り、ここでプロセッサ装置210は、上述のように、胎児基準構造80に沿った基準点81に対応する更なるボリュームスライスが生成され表示されるように、当該新しい基準点81の平行移動の更なるユーザ命令の受信を待機する。評価しない場合、方法300は、ステップ319において終了する。
【0048】
本発明の超音波撮像システムの一実施形態を使用すると、ユーザは、捕捉された撮像ボリューム内の解剖学的特徴のランドマーク標識をより容易に生成することができる。ランドマーク標識は、認識された解剖学的特徴の1つ以上の受信されたユーザ確認を使用して、即ち、1つ以上のユーザ生成ランドマーク標識を使用して、プロセッサ装置210によって使用されて、多関節胎児モデルが撮像ボリュームに適合される。多関節胎児モデルは、データ記憶装置220に記憶されていてよい。例えば多関節胎児モデルは、撮像ボリュームと共に、例えば複合画像メモリであるデータ記憶装置220に記憶されていてよい。なお、多関節胎児モデルの撮像ボリュームへの適合それ自体はよく知られているので、簡潔さのためだけに、更に詳細に説明することはしない。
【0049】
図6は、超音波トランスデューサアレイ11を含む超音波プローブ10が例えば適切なケーブル等を使用して通信可能に結合されたユーザコンソールとして超音波撮像装置200が設けられている超音波撮像システム1の例示的な実施形態を概略的に示す。しかし、当然ながら、超音波撮像システム1の少なくとも一部、特に超音波トランスデューサアレイ11で捕捉された超音波データの処理のために配備されているものと当業者が理解する要素は、例えば遠隔サービスとして提供されることによって、分散配置されてもよい。
【0050】
具体的には、図6は、例えば診断撮像のために、超音波(例えば超音波パルス)を発生させ、超音波エコー(例えばパルスエコー)を受信する超音波トランスデューサアレイ11とインターフェースし制御するように配備される電子部品の例示的な実施形態のブロック図を概略的に示す。これらの電子部品の少なくとも一部が、プロセッサ装置210によって具現化される。したがって、当然ながら、これらの電子部品は異なる参照符号によって識別されているが、これは必ずしもこれらの電子部品がプロセッサ装置210とは異なることを意味するわけではない。
【0051】
超音波トランスデューサアレイ11は、幾つかの実施形態では超音波プローブ10内にあってもよいマイクロビームフォーマ12に結合される。マイクロビームフォーマ12は、超音波トランスデューサアレイ11の超音波トランスデューサセル111による信号の送受信を制御する。マイクロビームフォーマは、例えば米国特許第5,997,479号(Savord他)、米国特許第6,013,032号(Savord)及び米国特許第6,623,432号(Powers他)に説明されているように、トランスデューサ素子タイルのグループ、即ち、「パッチ」によって受信される信号の少なくとも部分ビーム形成が可能である。マイクロビームフォーマ12は、プローブケーブル(例えば同軸ワイヤ)によって、ユーザコンソールデバイス等といった超音波撮像装置200である端末機に結合される。当該装置は、送信モードと受信モードとを切り替え、マイクロビームフォーマが存在しない又は使用されず、トランスデューサアレイがメインシステムビームフォーマ20によって直接操作される場合に、メインビームフォーマ20を高エネルギー送信信号から保護する送信/受信(T/R)スイッチ16を含む。
【0052】
マイクロビームフォーマ12の制御下での超音波トランスデューサアレイ11からの超音波ビームの送信は、T/Rスイッチ16によってマイクロビームフォーマに結合されるトランスデューサコントローラ18及びメインビームフォーマ20によって指示される。トランスデューサコントローラ18は、制御パネル38を介したユーザインターフェース120のユーザ操作による入力を受信する。トランスデューサコントローラ18によって制御される機能の1つは、ビームが操縦され集束される方向である。ビームは、トランスデューサアレイから(トランスデューサアレイに直交して)真っすぐ前に、又は、より広い視野のために異なる角度に向けられてよい。トランスデューサコントローラ18は、超音波トランスデューサアレイ11の電圧源45を制御するように結合されてよい。例えば電圧源45は、例えばCMUT(容量性マイクロマシン超音波トランスデューサ)素子を崩壊モードで動作させるために、CMUTアレイ11のCMUT素子111に印加されるDC及びACバイアス電圧を設定することができ、これ自体はよく知られているが、当然ながら、本発明の実施形態は、CMUTベースの超音波プローブ10に限定されず、任意の適切な超音波プローブを本発明の超音波撮像システム1に使用できる。トランスデューサコントローラ18は更に、例えば超音波トランスデューサセル111が臨界温度に達したことを示す温度センサ信号に反応して、超音波トランスデューサセル111を低電力モードに切り替えるように電圧源45を制御することができる。
【0053】
マイクロビームフォーマ12によって生成された部分ビーム形成信号は、メインビームフォーマ20に転送され、そこでトランスデューサ素子の個々のパッチからの部分ビーム形成信号が完全ビーム形成信号に組み合わされる。例えばメインビームフォーマ20は、128個のチャネルを有し、各チャネルは、数十又は数百の超音波トランスデューサセル111のパッチから及び/又はそのような超音波トランスデューサセル111の個々の超音波トランスデューサ素子から部分ビーム形成信号を受信する。このようにして、超音波トランスデューサアレイ11の何千ものトランスデューサ素子によって受信される信号は、単一ビーム形成信号に効率的に寄与する。
【0054】
ビーム形成信号は、上述のように、プロセッサ装置210の一部を形成する信号プロセッサ22に結合される。信号プロセッサ22は、バンドパスフィルタリング、デシメーション、I及びQ成分分離、並びに、組織及びマイクロバブルから返ってくる非線形(基本周波数のより高い高調波)エコー信号の識別を可能とするために、線形信号と非線形信号とを分離する高調波信号分離といった様々なやり方で受信エコー信号を処理することができる。信号プロセッサ22は任意選択的に、スペックル低減、信号合成及び雑音除去といった追加の信号強調を行うことができる。信号プロセッサ22内の帯域通過フィルタは、トラッキングフィルタであってよく、その通過帯域は、エコー信号が受信される深度が深くなるにつれてより高い周波数帯域からより低い周波数帯域へスライドし、これにより、解剖学的情報がない深い深度からのより高い周波数の雑音が除去される。
【0055】
処理された信号は、Bモードプロセッサ26及び任意選択でドップラープロセッサ28に転送される。これらの各々は、プロセッサ装置210の一部を形成する。Bモードプロセッサ26は、身体内の臓器の組織や血管といった身体内の構造の撮像のために、受信した超音波信号の振幅の検出を使用する。身体構造のBモード画像は、例えば米国特許第6,283,919号(Roundhill他)及び米国特許第6,458,083号(Jago他)に説明されているように、高調波画像モード若しくは基本画像モードの何れか又はその両方の組み合わせで形成される。
【0056】
ドップラープロセッサ28は、ある場合、画像フィールド内の血球の流れといった物質の動きを検出するために、組織の動き及び血流からの時間的に異なる信号を処理する。ドップラープロセッサは、通常、体内の選択された種類の材料から戻ってきたエコーを通過させる及び/又は拒絶するように設定されるパラメータを有するウォールフィルタを含む。例えばウォールフィルタは、低速材料又はゼロ速度材料からの比較的強い信号は拒絶しつつ、高速材料からの比較的低い振幅の信号を通過させる通過帯域特性を有するように設定することができる。
【0057】
この通過帯域特性は、心壁といった近くの静止している又はゆっくりと動く物体からの信号は拒絶しつつ、流れる血液からの信号は通過させる。逆特性は、血流信号を拒絶しつつ、心臓の動く組織からの信号は通過させ、組織ドップラー撮像と呼ばれるものでは、組織の動きを検出し描写する。ドップラープロセッサは、画像フィールド内の異なる点からの時間的に離散的なエコー信号のシーケンスを受信及び処理し、特定の点からのエコーのシーケンスはアンサンブルと呼ばれる。ドップラー周波数の速度との対応関係が血流速度を示している状態で、比較的短い間隔に亘って高速連続で受信されるエコーのアンサンブルを使用して、流れる血液のドップラーシフト周波数を推定することができる。より長い期間に亘って受信されるエコーのアンサンブルは、よりゆっくりと流れる血液又はゆっくり動く組織の速度を推定するために使用される。
【0058】
Bモード(及びドップラー)プロセッサによって生成される構造信号及び運動信号は、スキャンコンバータ32及びマルチプレーナリフォーマッタ44に結合される。スキャンコンバータ32は、エコー信号を、それらを受信した元の空間関係で所望の画像フォーマットで配置する。例えばスキャンコンバータは、エコー信号を2次元(2D)の扇形のフォーマット、又は、ピラミッド状の3次元(3D)画像に配置することができる。
【0059】
スキャンコンバータは、画像フィールド内の点における動きに対応する色を有するBモード構造画像に、そのドップラー推定速度をオーバーレイして、画像フィールド内の組織の動き及び血流を表すカラードップラー画像を生成することができる。マルチプレーナリフォーマッタ44は、例えば米国特許第6,443,896号明細書(Detmer)に説明されているように、身体のボリュメトリック領域内の共通平面内の点から受信したエコーを、当該平面の超音波画像に変換する。ボリュームレンダラ42は、米国特許第6,530,885号(Entrekin他)に説明されているように、3Dデータセットのエコー信号を、所与の基準点から見た投影3D画像に変換する。
【0060】
2D又は3D画像は、スキャンコンバータ32、マルチプレーナリフォーマッタ44及びボリュームレンダラ42から、画像ディスプレイ50での表示のために、更なる強調、バッファリング及び一時記憶のために画像プロセッサ30に結合される。画像プロセッサ30は、プロセッサ装置210の一部を形成してよく、更に、上述のように、ボリュームスライスの視覚化を制御することができる。撮像に使用されることに加えて、ドップラープロセッサ28によって生成された血流値及びBモードプロセッサ26によって生成された組織構造情報は、定量化プロセッサ34に結合される。定量化プロセッサは、血流の体積率といった様々な流動状態の尺度、並びに、臓器の大きさ及び妊娠期間といった構造的測定値を生成する。定量化プロセッサは、測定が行われるべき画像の解剖学的構造内の点といった入力をユーザ制御パネル38から受信する。
【0061】
定量化プロセッサからの出力データは、ディスプレイ50上で画像と共に測定グラフィック及び値を再生するグラフィックプロセッサ36に結合される。グラフィックプロセッサ36はまた、超音波画像と共に表示するグラフィックオーバーレイを生成することができる。これらのグラフィックオーバーレイは、患者名、画像日時、撮像パラメータ等といった標準的な識別情報を含むことができる。このために、グラフィックプロセッサは、患者名といった入力を制御パネル38から受信する。
【0062】
ユーザインターフェース120は、トランスデューサアレイ11からの超音波信号の生成、したがって、トランスデューサアレイ11及び超音波システム1によって生成される画像の生成を制御するために送信コントローラ18に結合される。ユーザインターフェース120はまた、MPR(マルチプレーナリフォーマット)画像の画像フィールド内で定量化された測定を行うために使用される複数のMPR画像の平面の選択及び制御のために、マルチプレーナリフォーマッタ44に結合されてよい。
【0063】
方法300の上述の実施形態は、プロセッサ装置200上で実行されると、当該プロセッサ装置に方法300を実施させるコンピュータ可読記憶媒体上に具現化されたコンピュータ可読プログラム命令によって実現することができる。例えばCD、DVD又はブルーレイディスクといった光学的に読み取り可能な媒体、ハードディスクといった磁気的に読み取り可能な媒体、メモリスティック等といった電子データ記憶装置等といった任意の適切なコンピュータ可読記憶媒体を本目的に使用することができる。コンピュータ可読記憶媒体は、コンピュータ可読プログラム命令がネットワークを介してアクセス可能であるように、インターネットといったネットワークを介してアクセス可能な媒体である。例えばコンピュータ可読記憶媒体は、ネットワーク接続型記憶装置、ストレージエリアネットワーク、クラウドストレージ等であってよい。コンピュータ可読記憶媒体は、そこからコンピュータ可読プログラム命令を取得することができるインターネットアクセス可能なサービスであってもよい。一実施形態では、超音波撮像装置200は、このようなコンピュータ可読記憶媒体からコンピュータ可読プログラム命令を取り出し、取り出されたコンピュータ可読プログラム命令を、例えばデータ記憶装置220の一部を形成するメモリデバイス等であるデータ記憶装置220に格納することによって、新しいコンピュータ可読記憶媒体を作成する。
【0064】
なお、上述の実施形態は、本発明を限定するのではなく例示するものであり、当業者は、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく多くの代替実施形態を設計することができるであろう。請求項において、括弧内に配置されたいかなる参照符号も請求項を限定するものとして解釈されるべきではない。「含む」の用語は、請求項に記載されたもの以外の要素又はステップの存在を排除するものではない。要素に先行する単語「a」又は「an」は、そのような要素が複数存在することを排除するものではない。本発明は、幾つかの異なる要素を含むハードウェアによって実現することができる。幾つかの手段を列挙している装置の請求項において、これらの手段の幾つかは同一のハードウェアアイテムによって具体化することができる。特定の手段が互いに異なる従属請求項に記載されているということだけで、これらの手段の組み合わせを有利に使用することができないことを示すものではない。

図1
図2
図3
図4
図5
図6