(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】遷移放射光源
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20220119BHJP
H05H 15/00 20060101ALI20220119BHJP
H05H 9/00 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
G03F7/20 503
H05H15/00
H05H9/00 C
H05H9/00 A
G03F7/20 521
(21)【出願番号】P 2019533305
(86)(22)【出願日】2017-09-06
(86)【国際出願番号】 US2017050287
(87)【国際公開番号】W WO2018048906
(87)【国際公開日】2018-03-15
【審査請求日】2020-09-07
(32)【優先日】2016-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516318891
【氏名又は名称】ビイエヌエヌティ・エルエルシイ
(73)【特許権者】
【識別番号】519078972
【氏名又は名称】ジェファーソン・サイエンス・アソシエイツ・エルエルシイ
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】ジョーダン,ケヴィン・シイ
(72)【発明者】
【氏名】ドゥシャティンスキ,トーマス・ジイ
(72)【発明者】
【氏名】スミス,マイケル・ダブリュ
(72)【発明者】
【氏名】スティーヴンス,ジョナサン・シイ
(72)【発明者】
【氏名】ホイットニー,アール・ロイ
【審査官】冨士 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-096613(JP,A)
【文献】特開2012-153551(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0230611(US,A1)
【文献】国際公開第2016/023740(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/20- 7/24
9/00- 9/02
H05G 1/00- 2/00
H05H 3/00-15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遷移放射光源であって、
ビーム軌道に沿って電子ビームを放出するように構成された電子ビーム入射器と、
前記ビーム軌道に沿って前記電子ビームを受け取って加速するように構成された電子加速器システムと、
前記ビーム軌道に沿った少なくとも1つの遷移放射生成ターゲットであって、ナノチューブ材料、ナノシート材料、およびナノ粒子材料のうちの少なくとも1つを含む少なくとも1つの遷移放射材料を有する遷移放射生成ターゲットと、を備え、
前記少なくとも1つの遷移放射材料は、窒化ホウ素ナノチューブおよび窒化ホウ素ナノシートのうちの少なくとも1つを含む、遷移放射光源。
【請求項2】
当該光源は、多重電子ビーム蓄積用に構成されている、請求項1に記載の遷移放射光源。
【請求項3】
前記電子ビームは、前記少なくとも1つの遷移放射生成ターゲットの上流の前記ビーム軌道に沿ってラスタリングされる、請求項1に記載の遷移放射光源。
【請求項4】
前記電子加速器は、エネルギー回収リニアックを含む、請求項1に記載の遷移放射光源。
【請求項5】
前記電子加速器は、電子ビームダンプを含む、請求項1に記載の遷移放射光源。
【請求項6】
複数の遷移放射生成ターゲットをさらに備える、請求項1に記載の遷移放射光源。
【請求項7】
前記遷移放射材料は、窒化ホウ素ナノチューブおよび窒化ホウ素ナノシートを含む、請求項1に記載の遷移放射光源。
【請求項8】
前記遷移放射材料は、窒化ホウ素ナノシートを含む、請求項1に記載の遷移放射光源。
【請求項9】
前記遷移放射材料は、窒化ホウ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、および炭素ホウ化物のうちの少なくとも1つを含む追加の微粒子をさらに含む、請求項1に記載の遷移放射光源。
【請求項10】
前記追加の微粒子は、所望の光波長に対して最適化された平均サイズを有する、請求項9に記載の遷移放射光源。
【請求項11】
前記遷移放射材料は、窒化ホウ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、および炭素ホウ化物のうちの少なくとも1つ
の追加材料をさらに含む、請求項1に記載の遷移放射光源。
【請求項12】
前記追加
材料は、所望の光波長に対して最適化された平均サイズを有する、請求項11に記載の遷移放射光源。
【請求項13】
前記少なくとも1つの遷移放射材料は、前記少なくとも1つの遷移放射生成ターゲット内に静電噴霧される、請求項1に記載の遷移放射光源。
【請求項14】
前記少なくとも1つの遷移放射生成ターゲットは、振動素子を含むチェンバを有し、前記振動素子は、前記少なくとも1つの遷移放射材料を前記チェンバ内のターゲットボリューム内に押し入れるように構成されている、請求項1に記載の遷移放射光源。
【請求項15】
前記少なくとも1つの遷移放射材料は、前記少なくとも1つの遷移放射生成ターゲットを通って連続的に循環する、請求項1に記載の遷移放射光源。
【請求項16】
遷移放射光を生成する方法であって、
ナノチューブ材料、ナノシート材料、およびナノ粒子材料のうちの少なくとも1つを含む少なくとも1つの遷移放射材料を有する遷移放射ターゲットに、相対論的荷電粒子ビームを通過させることを含み、
前記少なくとも1つの遷移放射材料は、窒化ホウ素ナノチューブ、窒化ホウ素ナノシート、窒化ホウ素ナノチューブ粉末、窒化ホウ素ナノチューブマット、窒化ホウ素ナノシート粉末、窒化ホウ素ナノシートマット、窒化ホウ素ナノチューブ糸、および窒化ホウ素ナノシート糸、のうちの少なくとも1つを含む、方法。
【請求項17】
遷移放射
生成ターゲットであって、ビーム軌道に沿って相対論的荷電粒子ビームを受け取って放出するように構成されたチェンバと、ナノチューブ材料、ナノシート材料、およびナノ粒子材料のうちの少なくとも1つを含む少なくとも1つの遷移放射材料と、を備え、前記遷移放射材料は、前記チェンバ内にあって、前記ビーム軌道が前記少なくとも1つの遷移放射材料を通り抜けるように、配置され、
前記少なくとも1つの遷移放射材料は、窒化ホウ素ナノチューブ、窒化ホウ素ナノシート、窒化ホウ素ナノチューブ粉末、窒化ホウ素ナノチューブマット、窒化ホウ素ナノシート粉末、窒化ホウ素ナノシートマット、窒化ホウ素ナノチューブ糸、および窒化ホウ素ナノシート糸、のうちの少なくとも1つを含む、遷移放射
生成ターゲット。
【請求項18】
前
記チェン
バは、前記少なくとも1つの遷移放射材料を前記チェンバ内のターゲットボリューム内に押し入れるように構成されている
前記振動素子をさらに含む、請求項17に記載の遷移放射
生成ターゲット。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2016年9月6日に出願された米国仮特許出願第62/383,853号、2016年9月20日に出願された米国仮特許出願第62/397,050号、2016年9月23日に出願された米国仮特許出願第62/398,941号、および2016年11月29日に出願された米国仮特許出願第62/427,506号に関連したものであり、これらの文献の各々は、その全体が参照により組み込まれる。
【政府支援に関する声明】
【0002】
本発明の一部は、米国エネルギー省により認められたM&O型契約番号DE-AC05-06OR23177に基づき、政府の支援の下でなされたものである。米国政府は、本発明に一定の権利を有する。
【技術分野】
【0003】
本開示は、ナノチューブ、ナノシート、およびナノ粒子からの遷移放射に関し、特に、光生成用の窒化ホウ素材料に関するものである。本明細書において解説する包括的な方法および実現形態は、一例としてマイクロチップリソグラフィに有用な13.5nm(91.8eV)および6.7nm(185eV)の光の生成、ならびに相対論的荷電粒子ビームおよび近相対論的荷電粒子ビームの空間分布特性のモニタリングに有用な光の生成、に用いられることがある。
【背景技術】
【0004】
遷移放射(TR)は、相対論的荷電粒子が、誘電定数としても知られる比誘電率が異なる2つの材質の間の境界を横断して遷移するときに発生する。TR広帯域放射現象は、十分に理解および研究されており、そして、幅広く高エネルギー物理学、原子核物理学、および衛星探知機において、さらに粒子ビーム加速器用の様々なビームラインモニタにおいて、利用されている。TRは、相対論的荷電粒子の検出器における光子源には最小限にしか利用されておらず、また、より高強度のTR光子源をこれにより構成することが可能ではないかと指摘されてきた。TR強度は、相対論的粒子のエネルギーEに概ね比例し、粒子軌道に沿ったTR光子放射の開き半角は、概ねローレンツ因子γ=E/mc2である。
【0005】
これまでの技術では、ほとんどの状況において有用であるための十分な光子強度は生成されないので、TR光子源は幅広く開発されてはいない。
【0006】
TR放射体に利用される材料は、典型的には、薄いシリコンウェハ、または多層箔を含む金属箔、またはポリエチレン、ポリプロピレン、もしくは類似の材料のランダム配向発泡層もしくは繊維層であった。システムに応じて、それらの箔、発泡体、または繊維は、真空中、ガス中、もしくは関心のあるTR光子を通過させる他の材料中にあり得る。典型的なTRシステムの設計目標として、使用できる光子数の最適化、TR光子の分布および位置の最適化、TR材料によるTR光子の自己吸収の最少化、ならびにTRシステム全体でのTR面の数の最大化、が含まれるが、ただし、これらに限定されない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
相対論的荷電粒子ビーム、エネルギー回収リニアック、多重ビーム蓄積、およびビームラスタリングに関連した加速器システムが、国際加速器学会で知られているが、それらは、有効な遷移放射材料がなければ、相対論的荷電粒子検出以外のTR光子ビームの生成における使用は限定される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、例えば、高品質の窒化ホウ素ナノシート(BNNS)および高品質の窒化ホウ素ナノチューブ(BNNT)を含む、無機のナノシート、ナノチューブ、および/またはナノ粒子を利用したTRの生成について記載している。本明細書で使用する場合の「高品質」BNNSという表現は、典型的には5層以下の原子層を有する六方晶窒化ホウ素(h-BN)材料のシートの総称であり、「高品質」BNNTという表現は、壁数、欠陥数が少なく、10nm未満の直径、高結晶性構造を有し、無触媒プロセスを用いて製造されたBNNTの総称である。いくつかの実施形態では、高品質のBNNSおよびBNNTが好ましい場合があるが、特に明記されない限り、BNNSおよびBNNTを採用してよいことは理解されるべきである。BNNTのような材料は、相対論的電子ビーム中に配置されたときにTRを生成するために用いられることがあり、それには、例えば、マイクロチップリソグラフィに有用な13.5nm(91.8eV)および6.7nm(185eV)の光の生成、相対論的荷電粒子ビーム特性を特定するために利用できる光の生成、が含まれる。より低品質のナノ材料(例えば、以下の1つ以上を有していないことがあるBNNT材料:少ない壁数、少ない欠陥数、10nm未満の直径、高結晶性構造、無触媒で製造されたこと)を利用することもできるが、いくつかの光子エネルギーの透過性、金属不純物がないこと、ランダム配向を得ることが可能であること、ならびにカーボンナノチューブ(CNT)およびグラフェンの場合にはプラズマ周波数がより低い可能性があること、によって、高品質のBNNSおよびBNNTが好ましい実現形態となる。
【発明の効果】
【0009】
BNNSおよびBNNT材料は、典型的な金属箔ならびにポリマ発泡体およびポリマ繊維と比較して、得られる単位質量当たりのTR面境界の数が数桁大きい。従って、BNNSおよびBNNT材料によって、特に高品質のBNNSおよびBNNTによって、顕著に高効率のTR源を製造することが可能である。特に、BNNSは、h-BN層の層数が少なく(すなわち、約1~5層)、同じように、BNNTの場合には、h-BN壁の壁数が少ない。BNNSおよびBNNTをTR材料として使用すると、既存のTR放射体と比較して、光子の強度は数桁の大きさで増加し、これにより、例えば、マイクロチップリソグラフィおよび低質量粒子ビームモニタを含む様々な用途のための有用な光子TR源の開発が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本アプローチの一実施形態によるTRの生成を示している。
【
図2】
図2は、本アプローチで使用され得る、合成直後に精製されたBNNT材料のTEM像を示している。
【
図3】
図3は、本アプローチで使用され得る、単独の3壁BNNTのTEM像を示している。
【
図4】
図4は、本アプローチで使用され得る、100ミクロン厚のBNNTマットの写真である。
【
図5】
図5は、直径約90ミクロンのBNNT原糸のSEM像を示している。
【
図6】
図6は、50MeV電子ビームがBNNT原糸に入射することによるTR放射の画像キャプチャを示している。
【
図7】
図7は、本アプローチの一実施形態によるTR光生成システムの概略図を示している。
【
図8】
図8は、本アプローチの一実施形態による、マイクロチップリソグラフィに有用なTR光生成領域の平面図を示している。
【
図9】
図9は、本アプローチの一実施形態による、マイクロチップリソグラフィに有用なTR光生成領域の側面図を示している。
【
図10】
図10は、本アプローチの一実施形態による、ビームの特性を特定するのに有用なTR光生成領域において、相対論的荷電ビームを調べている図を示している。
【
図11】
図11は、相対論的荷電粒子ビームによるTR光の生成および検出を示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
特に窒化ホウ素ナノ材料であるナノチューブ、ナノシート、およびナノ粒子からの遷移放射を、光の生成に利用することができる。本明細書では、ナノチューブ材料、ナノシート材料、およびナノ粒子材料のうちの少なくとも1つを含む遷移放射材料を採用した種々の実施形態について開示する。その材料は、窒化ホウ素ナノチューブ、窒化ホウ素ナノシート、窒化ホウ素ナノチューブ粉末、窒化ホウ素ナノチューブマット、窒化ホウ素ナノシート粉末、窒化ホウ素ナノシートマット、窒化ホウ素ナノチューブ糸、および窒化ホウ素ナノシート糸のような、窒化ホウ素ナノ材料を含み得る。
図1は、相対論的荷電粒子11(光速の少なくとも10%の速度で運動する近相対論的荷電粒子を含むこともあり、それらは、いくつかの実施形態では、粒子が非相対論的であるときには光生成が顕著に減少することを当業者であれば理解できるように、より低速で運動する)が、誘電定数としても知られる比誘電率が異なる2つの材質12と13(そのうちの1つは真空であり得る)の間の境界14を横断して遷移するときに発生するTRを示している。このTR現象は、十分に理解および研究されており、そして、幅広く高エネルギー物理学、原子核物理学、および衛星探知機において、さらに粒子ビーム加速器用の様々なビームラインモニタにおいて、利用されている。TR現象は光子ビーム源として提案されてきたが、現在の実現では生成される光が低強度であることが理由で、または相対論的荷電粒子ビーム検出器の場合には単位面積当たりの質量が小さい検出器が強く望まれることが理由で、TRは、幅広く利用されてはいない。単一の境界14についての、光子検出層16におけるTR強度分布15は、相対論的荷電粒子のエネルギーEに概ね比例し、粒子軌道18に沿ったTR光子放射の開き角17は、概ねローレンツ因子γ=E/mc
2である。TRの当業者であれば理解できるように、典型的なTRシステムでは、生成される光子数を増幅するために、複数の箔もしくはウェハまたは様々な発泡体および繊維状マットで構成され得る複数のTR境界もしくはTR面を導入する。
【0012】
真空中に配置された単一のTR面についてのTR全強度は、S=αωpγ/3であり、ただし、αは微細構造定数1/137であり、ωpは、eVで表すプラズマ周波数である。eVで表す光子エネルギーEの検討対象領域における、単一のTR面についてのTR強度分布は、dS/dE=2αln(ωpγ/E)/πである。TR光源の強度を最大化することの一部は、相対論的電子ビームが遭遇するTR面の数を最大化することによる。また、誘電材料の厚さも、形成長を特定するために重要であり、形成長は、波長と反比例関係にあり、すなわち、光の波長が短くなるほど、形成長は増加する。光の波長が形成長よりも長い場合には、生成された光を構成する光子は、それらの最大強度に達し、光の波長が形成長よりも短い場合には、その強度は低減する。急激な推移はなく、関心のある所与の波長範囲についての所与の実施形態において、TR材料における形成長分布が最適であることと、TR面の数が最適であることの間にトレードオフが存在する可能性がある。
【0013】
図2のTEM像に示すように、本例では典型的には2nm~10nmの直径および数百nm~数百ミクロンの長さを有する高結晶性材料21である、精製された高品質のBNNT材料は、概ねランダム配向のBNNTを形成することができる。一般的に、「高品質」BNNTとは、壁数が少なく(例えば、2壁をピークまたはモードとして、1~8壁)、結晶構造において目視できる欠陥数が少なく、約10nm未満の直径、高結晶性構造を有し、(必ずしもではないが)通常は無触媒で製造されるBNNTを指す。なお、高品質のBNNSおよびBNNTは、本明細書に記載の実施形態において好ましいが、それらの実施形態は、添付の請求項において別段の規定がある場合を除き、高品質のBNNSおよび/またはBNNTを適用することに限定されるものではないことは、理解されるべきである。
図2に示す材料の場合、不純物塊22で観測されるように、ホウ素、窒化ホウ素、および六方晶窒化ホウ素の不純物小粒子も存在する。これらの不純物22は、その直径が約200nm未満であって、かつ、この材料の全質量の約50%未満を占めているときには、TRの生成に対して最小限の影響しか及ぼさない。さらに、h-BNナノケージ23およびh-BNナノシート24が存在することもあり、このような構造体は、その直径が200nm未満であって、かつ、この材料の全質量の約50%未満を占めているときには、TRの生成に対して最小限の影響しか及ぼさない。それらのBNNTのいくつかは、数箇所25に群で示すように、他のBNNTと繊維を形成するか、または他のBNNTと配向が揃っている。このように配向が揃うことは、TRの生成に対して最小限の影響しか及ぼさない。さらに、TEM像のための支持グリッドとして使用されるレース状カーボングリッド26も
図2において見られる。
【0014】
図3は、レース状カーボン支持グリッドに装着された単独の3壁BNNT31のTEM像を示している。
図3に示すように、例示的な実施形態として製造された単独のBNNT31は、壁数の少ない高結晶性構造を有するものであった。
図3に示す特定のBNNTは、円筒状に巻かれた3つのBN壁を有し、これにより3壁BNNTを形成している。BNNTに関する場合に典型的には壁と表記または呼称されるものは、BNNS(
図3には示していない)の場合には、平坦であって、典型的にはBNNS材料の層またはBN層と表記または呼称される。生産されたままの高品質BNNTの壁数の分布は、2壁を壁数のピークとして、典型的には1~8壁である。TEM像を形成するときにBNNTを支持するために、レース状カーボングリッドを利用するが、これは、本アプローチのいくつかの実施形態では、存在しないことがある。平均BN層数が2以下である高品質BNNSが文献で報告されている。
【0015】
(通常は、平均壁数、または壁数のピークもしくはモードで表される)壁数が最小限であるとともに、不純物の量が最小限であるように製造されたBNNTが、本アプローチのいくつかの実施形態においてTR源を最適化するために好ましい。壁数の分布は、
図2および3に示すタイプのようなTEM像によってBNNT材料を統計的に調査することにより、特定することができる。当業者であれば理解できるように、ピーク壁数は、概算値であり得る。h-BNナノケージおよびh-BNナノシート不純物は別にして、不純物ホウ素粒子がバルク材料重量の1%未満であるとともに、平均壁数が約2である、精製されたBNNT材料は、いくつかの実施形態では特に好ましい。不純物ホウ素粒子は、ほとんどの波長についてTR光子の高い吸収性を有するが、h-BN材料は一般的にはTR光子の高い吸収性を有していない。その全体が参照により組み込まれる米国仮特許出願第62/427,506号で解説されているように典型的には450℃~750℃の範囲の水蒸気を伴う精製プロセスによって、ホウ素粒子と、さらに、いくつかの実施形態ではh-BNナノケージおよびh-BNナノシートを、除去することができる。また、高品質BNNS材料を用いてもよく、好ましくは、そのBNNS材料が含有する不純物は、バルク材料重量の約10%未満である。高品質BNNS材料は、いくつかの技術により、BNNT材料から開始して生産することができ、いくつかの好ましい実施形態では、平均壁数が約3壁であるBNNT材料から開始して生産することができる。BNNS生産技術として、例えば、一連の、湿式化学的超音波処理、硝酸浴、リンス、遠心分離、選択的分離および乾燥、が含まれる。その結果として得られる材料は、典型的には、わずか数ミクロンの平均長を有するが、このオーダの長さは、本アプローチの多くの実施形態において許容できる。TRは、遭遇される面境界の数および材料の厚さに依存するが、BNNT材料の長さには依存しない。高品質BNNS材料を利用する場合に、いくつかの実施形態では、効果的に、約100nm~数ミクロンのオーダの横断幅を有するBNNSを使用することがある。このアプローチにより、さらに後述するように、ターゲット均一性および放射損失が改善される。また、BNNT材料を強力に超音波処理することよって、BNNSを生産することができる。例えば、約1時間の継続時間にわたってBNNT材料を超音波処理することにより、BNNT材料のかなりの割合を、いくつかの実施形態では最大でBNNT材料の50%を、BNNS材料に転換させることができる。いくつかの実施形態では、TR材料は、以下でBNNS-BNNTと呼ぶBNNTとBNNSの混合物であり得る。さらに、精製されたBNNT材料は、典型的には、ナノシートとしてのh-BN、およびナノケージとしてのh-BNを含有する。これらのh-BN材料は、いくつかの実施形態では、これらも遷移放射面を提供するので、TR生成に好適に寄与する。しかしながら、h-BN材料の典型的な形成長は、BNNS-BNNT材料の形成長とは異なり得る。この差は、所与の実施形態における所与の波長でのTRの生成効率に影響を及ぼすことがある。なお、TR材料であるBNNS-BNNTにおけるBNNTとBNNSの相対量は、様々に異なる実施形態において異なり得ることは、理解されるべきである。
【0016】
図4は、約0.5g/cm
3の密度を有する約100ミクロン厚のBNNT材料のプロトタイプマット41を示している。
図4のマット41を生成するために使用される高品質BNNT材料は、質量で約50%はBNNTであり、残りの50%は、ホウ素粒子、窒化ホウ素、h-BNナノシートおよびナノケージ、の混合物である。h-BN構造体は、典型的には約10~約50nm幅の範囲内であるが、より大きな構造体がBNNT材料中にあり得ることは理解されるべきである。
図2は、h-BNナノケージ23およびh-BNナノシート24の例を示している。相対的に極めて小さい粒子も、有効なTR面に寄与するが、いくつかの実施形態において好ましいTR材料では、関心のあるいくつかの光波長について、これらの「不純物」粒子は除去されている場合がある。不純物粒子は、多くの場合、より大きいサイズであるとともに、あればTRに寄与するであろう内部表面を欠いているので、平均して、不純物粒子は、BNNTおよびBNNSと比較して、TRの生成における効率がわずかに低い。BNNTマット41は、低強度の光源の場合、および、マットでの吸収が最小限であることで、光子が十分に高強度である光の場合に、有用であり得る。いくつかの実施形態では、マットを構成するBNNTは、最初に、数ミクロンのオーダの長さでナノチューブを形成するために、上述のように湿式化学的に処理されてよく、その後、その全体が参照により組み込まれる米国仮特許出願第62/427,506号および上記において解説されているように精製されてよい。
【0017】
粒子ビーム加速器では、微細なワイヤまたは糸をビームに通過させて、そのワイヤまたは糸からの様々な放射パターンを観測することにより、粒子ビームのプロファイルを測定することができる。
図5は、BNNT糸としても知られる直径90ミクロンのBNNT原糸51の一例を示している。本アプローチのいくつかの実施形態では、BNNT糸は、後述するように、ターゲットボリューム内に配置されるか、またはターゲットボリュームに引き通される場合がある。このような実施形態は、ビームプロファイリングの実施形態として特に有用であり得る。
図5に示すものと同様のBNNT糸を利用して、
図6に示すTR放射パターンを発生させた。
図6のTR放射パターン61は、光波長領域内にあり、
図5に示す直径90ミクロンのBNNT原糸51と同様の直径100ミクロンのBNNT糸に衝突する50MeV、3mm幅の電子ビームで発生させたものである。このTR放射パターンは、そのBNNT糸に約10,000の面があることによって観測可能となったものであり、この面数は、BNNT糸の密度およびBNNTの平均壁数に基づいて推定されたものである。これらの面によって、
図6に示すパターン61をカメラが検出するのに十分な光学光子を発生させた。
【0018】
また、カーボンがBNNSに相当するものとして、カーボンナノチューブ(CNT)およびグラフェンを、TR光の生成に利用することもできるが、CNTのプラズマ周波数は、少なくともいくつかの参考文献によれば、10eV以下のオーダであるため、それらは好ましい実現形態ではないであろう。プラズマ周波数は28.81(ρZ/A)1/2eVであり、ρはg/cm3で表す密度であり、Zは原子番号であり、Aは原子量であるとして、BNNSおよびBNNTのプラズマ周波数は、標準的な方法を用いて約29eVと計算される。現在のところ、BNNSまたはBNNTのプラズマ周波数について、その他の入手できる基準測定値はない。所与の波長のTR光子の量は、そのプラズマ周波数と共に対数的に増加する。従って、いくつかの実現形態では、CNTおよびグラフェンが好ましいかもしれないが、概して、BNNSおよびBNNTは、CNTまたはグラフェンよりも好ましい。特に、電気絶縁性のBNNS-BNNTの代わりに、CNTおよび/またはグラフェンの導電性粒子によって、ターゲットの形成がより容易に実現される実施形態において、CNTおよび/またはグラフェンは、好ましい場合がある。さらに、1ミクロン未満の特性寸法を有する他のナノ材料、および、場合によっては、BN、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、炭素ホウ化物などの粒子のような、100ミクロン未満の特性寸法を有するマイクロ材料を、利用することができる。これらのそれぞれについての課題は、所与の実施形態において関心のある光波長に対して、それらが光透過性であることである。このため、これらの追加の粒子は、1つ以上の所望の波長に対して最適化された平均サイズを有するものであってよく、それらは、所与の実施形態に応じて適切であれば、最適な粉末、マット、または糸で製造することができる。また、最適な数の面を形成する最小限の質量を有することが望ましい、いくつかの実施形態では、単位面積当たりの質量密度も検討事項であり得る。
【0019】
相対論的電子ビーム中にBNNS-BNNTを配置することによって、BNNS-BNNTによるTR光源が形成されることがある。多種多様なTR光源が可能であるが、13.5nm(91.8eV)および6.7nm(185eV)の光の生成のために最適化されたTR光源の一例について、これらの2つの光波長はマイクロチップリソグラフィの場合に特に関心のあるものであるため、ある程度詳細に考察する。
【0020】
図7は、TR光源71、および電子ビーム軌道72に沿った構成要素について、概略図を示している。当業者であれば理解できるように、この実施形態は、数ある中でも特にマイクロチップリソグラフィのような用途に適している場合がある。本例では、200MeV(加速後)の電子ビームを想定しているが、本アプローチは、数MeV~数GeVの電子ビームを有する実施形態において用いてよい。本実施形態では、入射器75は、短いビームライン76を介して線形電子加速器78に約2MeV~約5MeVの初期電子ビームを供給する。加速器78は、入射器75によって供給された2MeV~5MeVのより低いエネルギーを約200MeVまで増加させる。入射器75は、例えば、3MeVの入射器であってよい。線形加速器78は、原理的には常温加速器または極低温加速器であり得るが、好ましい実現形態では、線形加速器78は、エネルギー回収リニアック(ERL)として機能することが可能な極低温加速器であり得る。加速器がERLとして機能する実施形態は、エネルギー効率的であり得る。
【0021】
図7に示す実施形態では、電子ビームは、200MeVで線形加速器78からビームライン711に沿って出て、合流セプタム712の位置でメイン光生成ループ72に合流する。線形加速器は、典型的には、電子バンチを加速するために高周波RFマイクロ波を用いる。マイクロ波キャビティは、電子加速器の当業者には周知のように、室温であるか、または超伝導高周波(SRF)キャビティの場合には超伝導温度であり得る。SRF加速器は、一般的に、よりエネルギー効率的である。合流セプタム712は、細長い静電素子と細長い磁気素子の組み合わせを利用して、入射ビームをメイン光生成ループのビーム軌道72に合流させる。いくつかの実施形態では、電子加速器のための電子ビーム制御の当業者には周知のように、横方向RFキャビティを利用してもよい。TRターゲット位置714a~714eにおいて、ターゲット上の全体的なビーム分布が均一になるように、電子ビームは、ビーム軌道72の主リングのアクセプタンスにわたってラスタリングされてよい。さらに、線形電子加速器78からの電荷パケットの位相は、互いに位相をずらして維持されてよく、これにより、いずれの時点においても、主リング72において多数のパケットがいずれか1つの位置に到達することはない。ある1つの位置に多数の電荷パケットが到達すると、ビームを乱す可能性がある空間電荷効果および/またはコヒーレント放射効果が生じる。しかしながら、当業者であれば理解できるように、いくつかの実施形態では、短い時間枠内で生成される光量を増幅するため、またはコヒーレント効果から生成される光量を増幅するために、コヒーレント効果を生じさせることが望ましい場合がある。当然のことながら、そのような効果は、他のいくつかの可能性のある用途の中でも、特にマイクロチップリソグラフィの場合には望ましくないことがある。一方、コヒーレント効果は、パルス式およびパルスプローブ式の科学実験のためのTR光を生成するのに効果的であり得る。
【0022】
このTR光源71の例では、5つのTR光ビーム715a~715e生成ターゲット714a~714eを示しており、それぞれはメイン光生成ループ72のセグメント713a~713e上にある。TR光ビーム715a~715e生成ターゲット714a~714eの数は、1から20超まで様々であり得る。
図7は、説明を簡単にするために、5つのTR光ビームのみを示している。
【0023】
電子は、TR生成ターゲット714を通過するたびに、TRプロセスのためにエネルギーを失い、さらに、電子は、dE/dxとして知られるイオン化損失のために、2MeV・cm2/gのレートで、少量のエネルギーを失う。この効果については、さらに詳細に後述する。シンクロトロン放射およびコヒーレントシンクロトロン放射のエネルギー損失機構は、実際には、検討対象のビーム電流レベルおよびピークビーム電流レベルの200MeVビームについて、(1)電子ビームを曲げる場所の磁場をいずれも最小限にすること、(2)それらの曲げの曲率を最大限にすること、および(3)ビームエンクロージャの断面積または直径を最大限にすること、により排除することができる。特に、TRターゲット714a~714eが以下で説明するように機能する場合には、TR放射損失が主要なエネルギー損失機構となる。
【0024】
図7の例では、セグメント713a~713eとターゲット714a~714eとTR光ビーム715a~715eの5回の繰り返しを含む、TRターゲットセクションに続いて、電子ビームは、本装置に複数回循環するために、戻り行程77に戻される。本明細書で記載するようなプロトタイプシステムは、TRターゲットセクションの1000回の通過を伴うものであったが、他の通過回数を用いてよいことは理解されるべきである。このような実施形態では、多重電子ビーム蓄積を効果的に採用する。1000回目または最終回の通過に続いて、電子ビームを取り出すために、静電セプタムと細い磁気セプタムの組み合わせ73および横RFフィールドを用いてよく、そして、そのビームを線形加速器78に誘導するために一連の磁石74を用いてよく、そのビームを、線形加速器において入射器のビーム76に合流させる。1000回目の通過ビームは、加速器におけるRF電力の略逆位相であり、このため、そのときのビームは入射エネルギーに近いエネルギーまで減速されている。これにより、加速器がERLとして機能する場合には、そのビームは、そのエネルギーの大部分を線形加速器78におけるRFフィールドに付与する。線形加速器78の終端で、数MeVの電子ビームをビームダンプ710に向けて偏向79させてよい。当業者であれば理解できるように、電子バンチが加速器全体を通過して最終的にビームダンプ710に到達するときの電子バンチ軌道の制御は、TRターゲット714a~714eを1000回通過した後に電子バンチを分離することができるように注意を払うべきである。
【0025】
図8は、
図7に示すTRターゲット714a~714eのような、TRターゲット81の実施形態の平面図を示している。電子ビーム83は、ターゲットチェンバ82に入射し、BNNS-BNNT材料85の領域を通過して、光ビーム86を発生させる。本実施形態では、1000回通過させるものとして説明しているが、この例の1000の個々の電子ビーム83および光ビーム86のうちの3つのみを図示している。電子ビーム84を、磁石(図示せず)によって初期方向から逸らすように曲げることで、それらが初段ミラー87に至らないようにする。ミラー87は、光ビーム86を、光源として利用される方向に変向および集束させる。初段ミラー87は、チェンバ82に貫通するTRターゲットボリューム内で発生する熱に耐えるために、TRターゲット714a~714eから十分に離間していなければならない。
【0026】
図9は、本アプローチの一実施形態によるTRターゲット91の側面図を示している。電子ビーム99(1000の個々のビームのうちの3つのみを
図9に示していることに留意すべきである)は、ターゲットボリューム98に入射して、光ビーム95を発生させる。本実施形態では、BNNS-BNNT材料94は、振動ノズル92から静電噴霧される。いくつかの実施形態では、ノズルの端93を負に帯電させてよく、これにより、BNNS-BNNT材料粒子が互いに引き付け合うことがないように、BNNS-BNNTの個々の粒子に十分な電荷を有するというレイリー基準をBNNS-BNNT材料94が満たすとともに、BNNS-BNNT粒子は、回収室97に向かってターゲットボリュームの底96に引き寄せられる。ターゲットボリュームの底96は、接地電位に保持され得る。静電力と重力の組み合わせによって、粒子の分散を誘起し、粒子はターゲットボリューム98の中を通って進む。BNNTおよび/またはBNNT材料94は加熱されることがあるが、いくつかの実施形態では、その温度は、黒体放射によって熱が除去されるようにターゲットボリューム98を十分に大きく維持することにより、1900K未満に維持され得る。なお、BNNT材料は、1900K未満の温度では熱損傷を受けない。ターゲットボリューム98、供給室910、および回収室97の壁は、熱を除去するために、図示していない標準的な水冷ループまたは他の従来の冷却法によって冷却され得る。回収室97に回収されたBNNS-BNNT材料94は、供給室911に戻すように、機械的に再循環またはリサイクル(図示せず)させてよく、これにより、全体的な生成プロセスは連続的となる。いくつかの実施形態では、TRターゲット91全体は、真空下にあり得る。
図8および9に示す実施形態は、数ある他の用途の中でも特にマイクロチップリソグラフィの実施形態においてTR光を生成するのに特に有用であり得る。
【0027】
TRターゲット91内のターゲットボリューム98にBNNS-BNNT材料94を供給するための追加の機構は、回収室97内に振動素子を含むことである。振動素子は、BNNS-BNNT材料94をターゲットボリューム98内に押し上げる。いくつかの実施形態では、マイクロチップリソグラフィのような用途に有用であるために出力光ビームの強度を十分に均一に維持するように、ターゲットボリューム98内のBNNS-BNNT材料94の平均密度に約±2%の均一性を与えるために、振動注入と静電注入の組み合わせを用いることがある。なお、所望の用途に適するように特定の実施形態に応じて種々の特徴を調整してよいことは理解されるべきである。
【0028】
ターゲットボリューム98内のBNNS-BNNT材料94の密度は、関心のある光子エネルギーのための1つだけの光子吸収長を有することにより最適化されてよいが、いくつかの実施形態では、より長い長さを用いることで、光量を向上させることができる。考察中の本例の場合の光子波長、すなわちマイクロチップリソグラフィに有用な13.5nm(91.8eV)および6.7nm(185eV)の光のための光子吸収長は、それぞれ4×10-5g/cm2および1.8×10-4g/cm2である。本例では、ターゲット領域で発生する全パワーを低く維持するように、13.5nmと6.7nmの両方の光の生成のために4×10-5g/cm2のターゲット長が用いられ、さらに追加の例として、6.7nmのために1.8×10-4g/cm2の厚さが検討される。
【0029】
以下の表は、マイクロチップリソグラフィ用途のために構成された例示的な実施形態についての全体的なパラメータを提示している。
【0030】
【0031】
なお、表1の値は概算値であって、マイクロチップリソグラフィに有用である例示的な実施形態のために選択されたものであることは理解されるべきである。現在の加速器技術で達成できる条件に対して光出力を最適化するために、本例では、電子ビームエネルギー、電流、再循環回数、ターゲットボリュームの幅およびターゲットボリュームの高さを入力パラメータとして選択している。特に本アプローチの異なる用途のためには、他の値を用いてよいことは理解されるべきである。現在の13.5nmミラー技術で達成できるものに合わせて、2%の出力帯域幅を選択している。ターゲットボリュームの長さを決定するにあたっては、BNNS-BNNTの温度を1900K未満に維持しつつ、1ステーション当たりの全パワー損失をターゲットボリュームの壁で吸収する必要があると想定している。ターゲットボリュームにおける加熱のいくらかは、初段ミラー87へと逃げていくとともに、入射ビームパイプに戻る。BNNS-BNNT材料の温度を上昇させる熱は、TR加熱と比較して、ほんのわずかである。
【0032】
光子ビームのエミッタンスは、
図1に示す光円錐17について解説した光子円錐と、ターゲットボリュームの幅と高さの組み合わせと、を組み合わせることによって得られる。1層当たりの生成効率は、層の厚さ、層数、形成長と、BNNS-BNNT配向をランダムにすること、から計算される。
【0033】
13.5nmの場合の光パワー出力29W、および6.7nmの場合の光パワー出力46Wは、
図8の初段ミラー87に送出される。上記の表における最後の項目の、6.7nmの場合の91Wとは、ターゲットが2倍の厚さの場合のものである。この出力を達成するために、ビームエネルギー損失(表1には挙げていない)を10%未満に維持するようにして、ビームエネルギーを250MeVまで増加させているが、ターゲットボリュームに対しTR放射によって生成されるパワーは、この条件について表に示すように、2倍をわずかに超えている。上記で提示した例の場合には、2%の帯域幅の値を選択している。しかしながら、6.7nm用として現在検討されているほとんどのミラーは、1%程度の帯域幅のものである。従って、6.7nmの場合の出力光強度は、1%の帯域幅を考慮すると、上記の表1に示している値の半分となる。
【0034】
マイクロチップリソグラフィの場合の上記の例では、広帯域TR光の生成のための、特に13.5nmおよび6.7nmのTR光の生成のための好ましい材料として、BNNSおよびBNNTを重視しており、そしてある程度は、CNTおよびグラフェンを重視している。なお、異なる誘電定数によって面境界を形成することが可能なあらゆる材料によってTR光が生成されること、ならびに、生成される光のスペクトルは、入射粒子のエネルギーおよびTR面の構成に応じて、THzおよび遠赤外線からX線さらにはγ線まで非常に広範囲であることは、理解されるべきである。13.5nmおよび6.7nmの光について上記で提示した例では、いくつかの実施形態において、壁数が5~50超の範囲であり得る多壁BNNTおよび多壁CNTならびに炭化ホウ素(B4C)ナノ粒子のような他のナノ材料は、金属不純物を有し得るとともに、結晶性よりも非晶性である場合があっても、好ましい実施形態であり得る。例えば、直径20~100nmのB4Cナノ粒子は、13.5nmおよび6.7nmの光の場合の形成長により近く、これにより1粒子当たりの生成効率は向上し得る。しかしながら、これらの20~100nmのB4Cナノ粒子は、1粒子当たり1層しか有しておらず、従って、TR面は、はるかに少数になり、これにより全体的な効率は低下する。さらに、TR放射の自己吸収は、生成される光の多くの波長について、質量に比例し、その質量は半径の3乗に比例し、一方、冷却黒体放射は、半径の2乗に比例する表面積に比例する。相対論的荷電粒子ビームおよびTR生成のためのターゲットの具体的な実施を設計する当業者であれば周知のように、ターゲット材料の選択を含む、所与の実施形態の最適化では、TR生成光の選択された関心のある波長の生成のために最適化する際に、これらの因子のすべてを考慮することになる。
【0035】
図10は、位置を含む、相対論的ビーム103のプロファイルを特定するためのBNNS-BNNT光源を示している。
図10のビーム103は、紙面から出てくる向きである。本実施形態では、好ましいTR材料は、上述のように、BNNS、BNNT、またはBNNS-BNNT混合物であり得る。上述のように、他の材料を検討してもよいが、関心のある波長について、光透過性のレベルおよび熱安定性を考慮しなければならない。振動と負の電子パルスによる静電帯電との組み合わせによって、BNNS-BNNTのパルス102をノズル106から放出する。BNNS-BNNT材料の波102は、ノズル106を離れると、グリッド104上の正電荷パルスとの組み合わせによって、概ね接地回収ボリューム107の方向に移動することにより、加速される。ビームコンテインメント105は、BNNS-BNNTの流れおよび振動に影響を及ぼすことがないように、十分に離間している。BNNS-BNNTの流れは、これにより、BNNS-BNNT流TR材料の多重波を発生させる。
図10は、簡単にするために、単一のBNNS-BNNT波102を示しているが、所与の瞬間に複数の波が存在し得ることは理解されるべきである。所与のBNNS-BNNT波102がグリッド104に到達すると、その極性は反転して、これにより、引き続きBNNS-BNNT波102は回収ボリューム107へと進む。BNNS-BNNT波102が相対論的荷電ビーム103を通り抜けると、TR光が発せられる。相対論的荷電ビーム103の空間プロファイルは、
図11に関して解説される、相対論的荷電ビーム103が磁石によってTR光ビームから逸れるように曲げられた場所である相互作用領域の下流の検出器による光の2つの測定値によって特定され、それらの2つの測定値は、1)BNNS-BNNT波のタイミングおよび質量分布と相関している光強度、および2)光学遷移放射(OTR)として知られる可視波長領域のTR光について、光学素子からなる望遠鏡で撮像される、BNNS-BNNT波102と粒子ビーム103との相互作用領域からの光分布、である。
【0036】
図11は、
図4および10に示す実施形態に関して上述した光源からのTRの撮像を示している。電子ビーム111は、BNNS-BNNT光源112において、TRビームまたは光エンベロープ114を生成する。電子ビーム111は、1つ以上の磁石113によって、TR光ビーム114から逸れるように曲げられる。TR光エンベロープ114は、前面ミラー115で反射して、TR光子検出器116に入射する。ミラー115のコーティングに使用される材料は、関心のあるTR光子波長を最適に反射するように選択し得る。例えば、OTRによる光波長に対しては、典型的なアルミニウムまたは金のコーティングを利用することができ、TR光子検出器116は、典型的なCCDカメラとすることができる。いくつかの実施形態では、TRミラー115を省くことができ、TRカメラ116を、
図11においてTRミラー115を示している位置に配置することができる。
図10および11に示す実施形態は、ビームプロファイリングの実施形態として特に有用であり得る。
【0037】
当業者であれば理解できるように、BNNS-BNNT波102の位置で、または
図4の上述のBNNTマット41の場合のように、相対論的荷電ビーム103からの光の測定のために、OTRについては10ミクロンの空間分解能を達成することができる。
図4に示すようなマットの利点は、BNNS-BNNTを利用する場合に、その材料をマット内に自己支持することである。さらに、BNNS-BNNTマットは、
図10について解説したTR光源システムの複雑さを伴わない。
図10に示すような、BNNS-BNNT粒子雲の利点は、非常に高電流の相対論的荷電粒子ビームのために、非常に少量の材料を使用することが可能であることである。
【0038】
当業者であれば理解できるように、加速サブシステムの設計、ビームエネルギーの選択、ビーム電流および光学素子の選択に、高い柔軟性がある。本明細書で提示している例は、それらの概念の説明を誘導する役目を果たすものである。なお、本アプローチから逸脱することなく、実施形態を他の用途のために構成してよいことは理解されるべきである。本アプローチに記載の方法は、その趣旨または本質的特徴から逸脱することなく、他の特定の形態で実施されてよい。従って、開示した実施形態は、あらゆる点で例示的なものとみなされるべきであり、上記の説明によって限定するものとみなされるべきではない。