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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】静電蠕動ポンプ及び動作方法
(51)【国際特許分類】
   F04B 45/10 20060101AFI20220119BHJP
   F04B 45/047 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
F04B45/10
F04B45/047 C
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019535814
(86)(22)【出願日】2017-12-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-30
(86)【国際出願番号】 EP2017083967
(87)【国際公開番号】W WO2018122080
(87)【国際公開日】2018-07-05
【審査請求日】2020-12-18
(31)【優先権主張番号】62/440,571
(32)【優先日】2016-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】特許業務法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】フォンケン ルドルフ マリア ジョゼフ
(72)【発明者】
【氏名】ウィーカンプ ヨハネス ウィルヘルムス
(72)【発明者】
【氏名】クリー マレイケ
(72)【発明者】
【氏名】シュレポフ セルゲイ
【審査官】北村 一
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-264870(JP,A)
【文献】特開2004-025405(JP,A)
【文献】特開2014-015930(JP,A)
【文献】特開昭60-013994(JP,A)
【文献】米国特許第06007309(US,A)
【文献】米国特許第05836750(US,A)
【文献】米国特許第06109888(US,A)
【文献】中国特許出願公開第105201796(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 43/00-47/14
A61M 16/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬質フレーム内に画定された通路を通る流体の流れを生成するためのシステムであって、前記通路は上部及び下部を含み、前記システムは、
前記通路の中間点を横切って配置され、膜電極アレンジメントを含む、可撓膜と、
前記可撓膜内に波状運動を作り出し、これにより、前記通路を通る前記流体の蠕動運動を生じさせる様態で、前記可撓膜を選択的に作動させる作動システムと
を含み、前記作動システムは、
前記通路の前記上部に隣接して配置された上部電極アレンジメントと、
前記通路の前記下部に隣接して配置された下部電極アレンジメントと
を含み、
前記膜電極アレンジメントは、各々が中心部及び端部を有する複数の膜電極を含み、前記端部の幅は、前記中心部の幅の半分以下であるか、又は、
前記上部電極アレンジメントは複数の上部電極を有し、前記下部電極アレンジメントは複数の下部電極を有し、前記複数の上部電極及び前記複数の下部電極は各々が中心部及び端部を有し、前記端部の幅は、前記中心部の幅の半分以下である
システム。
【請求項2】
硬質フレーム内に画定された通路を通る流体の流れを生成する方法であって、前記方法は、
作動システムを用いて、前記通路の中間点を横切って配置された可撓膜を、前記可撓膜内に波状運動を作り出し、これにより、前記通路を通る前記流体の蠕動運動を生じさせる様態で、選択的に作動させるステップ
を有し、前記作動システムは、
前記通路の上部に隣接して配置された上部電極アレンジメントと、
前記通路の下部に隣接して配置された下部電極アレンジメントと
を含み、
膜電極アレンジメントは、各々が中心部及び端部を有する複数の膜電極を含み、前記端部の幅は、前記中心部の幅の半分以下であるか、又は、
前記上部電極アレンジメントは複数の上部電極を有し、前記下部電極アレンジメントは複数の下部電極を有し、前記複数の上部電極及び前記複数の下部電極は各々が中心部及び端部を有し、前記端部の幅は、前記中心部の幅の半分以下であり
前記方法は、選択的に電気接続するステップをさらに有する、
方法。
【請求項3】
前記可撓膜を選択的に作動させるステップは、前記可撓膜の部分を前記通路の長手方向中心軸と垂直な方向に運動させるステップを有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記可撓膜は導電材料を含み、
前記可撓膜を選択的に作動させるステップは、静電気力を介して前記可撓膜の部分を前記通路の上部又は前記通路の下部のうちの一方に向かって引き寄せるステップを有する、
請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記作動システムは、前記通路の上部に隣接して配置されたいくつかの上部電極、前記通路の下部に隣接して配置されたいくつかの下部電極、及び前記可撓膜内又はその上に配置された単一の膜電極を含み、
前記可撓膜を選択的に作動させるステップは、
前記単一の膜電極を大地に電気接続し、
前記上部電極を正の電圧に選択的に電気接続し、
前記下部電極を負の電圧に選択的に電気接続する
ことによって、静電気力を介して前記可撓膜の部分を前記通路の前記上部又は前記通路の前記下部のどちらかに向かって引き寄せるステップを有する、
請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記作動システムは、前記通路の上部に隣接して配置されたいくつかの上部電極、前記通路の下部に隣接して配置されたいくつかの下部電極、及び前記可撓膜内又はその上に配置されたいくつかの膜電極を含み、
前記可撓膜を選択的に作動させるステップは、
前記いくつかの膜電極を正の電圧又は負の電圧のどちらかに選択的に電気接続し、
前記いくつかの上部電極のうちの少なくとも1つの上部電極を正の電圧に選択的に電気接続し、
前記いくつかの下部電極のうちの少なくとも1つの下部電極を負の電圧に選択的に電気接続する
ことによって、静電気力を介して前記可撓膜の部分を前記通路の前記上部又は前記通路の前記下部のどちらかに向かって引き寄せるステップを有する、
請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記作動システムは、前記通路の上部に隣接して配置された複数の上部電極、前記通路の下部に隣接して配置された複数の下部電極、及び前記可撓膜内又はその上に配置された単一の膜電極を含み、
前記可撓膜を選択的に作動させるステップは、
前記単一の膜電極を大地に電気接続し、
前記複数の上部電極のうちの少なくとも1つの上部電極を正の電圧に選択的に電気接続し、
前記複数の下部電極のうちの少なくとも1つの下部電極を負の電圧に選択的に電気接続する
ことによって、静電気力を介して前記可撓膜の部分を前記通路の前記上部又は前記通路の前記下部のどちらかに向かって引き寄せるステップを有する、
請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記可撓膜を選択的に作動させるステップは、
前記複数の上部電極のうちの少なくとも別の1つの上部電極を負の電圧に選択的に電気接続し、
前記複数の下部電極のうちの少なくとも別の1つの下部電極を正の電圧に選択的に電気接続する
ことをさらに有する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記作動システムは、前記通路の上部に隣接して配置された複数の上部電極、前記通路の下部に隣接して配置された複数の下部電極、及び前記可撓膜内又はその上に配置された単一の膜電極を含み、
前記可撓膜を選択的に作動させるステップは、
前記単一の膜電極を正の電圧又は負の電圧のどちらかに選択的に電気接続し、
前記複数の上部電極のうちの少なくとも1つの上部電極を正の電圧に選択的に電気接続し、
前記複数の下部電極のうちの少なくとも1つの下部電極を負の電圧に選択的に電気接続する
ことによって、静電気力を介して前記可撓膜の部分を前記通路の前記上部又は前記通路の前記下部のどちらかに向かって引き寄せるステップを有する、
請求項2に記載の方法。
【請求項10】
前記可撓膜を選択的に作動させるステップは、
前記複数の上部電極のうちの少なくとも別の1つの上部電極を負の電圧に選択的に電気接続し、
前記複数の下部電極のうちの少なくとも別の1つの下部電極を正の電圧に選択的に電気接続する
ことをさらに有する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記作動システムは、前記通路の上部に隣接して配置された単一の上部電極、前記通路の下部に隣接して配置された単一の下部電極、及び前記可撓膜内又はその上に配置された複数の膜電極を含み、
前記可撓膜を選択的に作動させるステップは、
前記複数の膜電極のうちの少なくとも1つの膜電極を正の電圧に選択的に電気接続し、
前記単一の上部電極を、正の電圧及び負の電圧からなる群から選択される一方に選択的に電気接続し、
前記単一の下部電極を前記群内の他方に選択的に電気接続する
ことによって、静電気力を介して前記可撓膜の部分を前記通路の前記上部又は前記通路の前記下部のどちらかに向かって引き寄せるステップを有する、
請求項2に記載の方法。
【請求項12】
前記可撓膜を選択的に作動させるステップは、前記複数の膜電極のうちの別の膜電極を負の電圧に選択的に電気結合することをさらに有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記作動システムは、前記通路の上部に隣接して配置されたいくつかの上部電極、前記通路の下部に隣接して配置されたいくつかの下部電極、及び前記可撓膜内又はその上に配置された単一の膜電極を含み、
前記可撓膜を選択的に作動させるステップは、
前記単一の膜電極を第1の電位に電気接続し、
前記上部電極又は前記下部電極のうちの少なくとも一方を前記第1の電位と異なる第2の電位に電気接続する
ことによって、静電気力を介して前記可撓膜の部分を前記通路の前記上部又は前記通路の前記下部のどちらかに向かって引き寄せるステップを有する、
請求項2に記載の方法。
【請求項14】
前記作動システムは、前記通路の上部に隣接して配置された単一の上部電極、前記通路の下部に隣接して配置された単一の下部電極、及び前記可撓膜内又はその上に配置された複数の膜電極を含み、
前記可撓膜を選択的に作動させるステップは、
前記単一の上部電極を第1の電位に電気接続し、
前記単一の下部電極を前記第1の電位と異なる第2の電位に電気接続し、
前記複数の膜電極のうちの少なくとも1つの膜電極を前記第1の電位及び前記第2の電位のうちの少なくとも一方と異なる第3の電位に電気接続する
ことによって、静電気力を介して前記可撓膜の部分を前記通路の前記上部又は前記通路の前記下部のどちらかに向かって引き寄せるステップを有する、
請求項2に記載の方法。
【請求項15】
前記可撓膜を選択的に作動させるステップは、前記複数の膜電極のうちの少なくとも1つの膜電極を前記第1の電位及び前記第2の電位のうちの少なくとも一方と異なる第4の電位に電気接続することをさらに有する、請求項14に記載の方法。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[01] 本発明は、気体の流れを生成するための装置に関する。より詳細には、本発明は、蠕動運動を介して気体の流れを発生させる装置に関する。本発明はまた、蠕動運動を介して気体の流れを発生させるシステムに関する。本発明は、さらに、静電気力の印加を介して蠕動運動を生み出すことによって気体の流れを発生させる方法に関する。本発明はまた、蠕動運動を介した気体の流れの発生に用いるための装置を製作する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[02] 異なる種類(すなわち、液体、気体)の流体のための多くの異なる種類のポンプが存在する。用途のための最適なポンプの種類はその特定の用途の要求によって決まる。通例、特定の用途の主たる要求は、ポンプの要求圧力及び流量である。他の可能な要求は、ポンプ及び/又は関連構成要素の最大重量、幾何学的寸法、コスト、騒音レベル、要求効率、信頼性及び寿命である。
【0003】
[03] 例えば、中程度の圧力レベル(例えば、限定するものではないが、約0.04バール)及び高流量(例えば、限定するものではないが、約100リットル/分)を用いる持続陽圧呼吸療法(continuous positive airway pressure therapy)(睡眠時無呼吸患者を治療するための、CPAP療法)における用途には、通例、ラジアルブロワーが好ましい。なぜなら、このようなデバイスは、通例、非常に嵩高く、高い回転動作速度に起因する大きな騒音、及びそれらの基本的動作原理の結果生じる大量の乱流を生み出すものの、ラジアルブロワーは流量及び圧力の要求を満たすことができるからである。
【0004】
[04] 所望の流出の特定の寸法を考慮すると、要求圧力レベル及び流量をもたらすように適合可能である、効率及びポンプ寸法に関して理想的なポンプシステムは、(流体を加圧するための機構を指定せず)おおよそ、図1に示されるとおりのポンプシステム10のような様相になる。ポンプ12のクロスフロー寸法は、所望の流出寸法とぴったり合うように寸法設定することができ、かくして、ポンプ12内の流体(矢印14によって示される)の速度が、流出におけるものとほぼ等しくなることを可能にする(圧縮性及び質量保存のゆえに、速度は若干減少することになる)。速度の大きな変化は、通例、乱流及び効率損失を生じさせ、それゆえ、概して望ましくないため、ほぼ一定の速度を維持することが望まれる。このような「理想的な」構成では、ポンプを通過する流体を(流体の圧力が増大するにつれて減少する水平間隔を有する鉛直線によって示されるように)加圧するために、ポンプ12の全容積が利用され、これにより、ポンプ容積の最適な利用が可能になり、最小限の寸法が可能になる。
【発明の概要】
【0005】
[05] 本発明の一態様として、硬質フレーム内に画定された通路を通る流体の流れを生成する方法が提供される。本方法は、作動システムを用いて、通路の中間点を横切って配置された可撓膜を、膜内に波状運動を作り出し、これにより、通路を通る流体の蠕動運動を生じさせる様態で、選択的に作動させるステップを有する。
【0006】
[06] 可撓膜を選択的に作動させるステップは、膜の部分を通路の長手方向中心軸と垂直な方向に運動させるステップを有し得る。
【0007】
[07] 膜は導電材料を含み得、可撓膜を選択的に作動させるステップは、静電気力を介して膜の部分を通路の上部又は通路の下部のうちの一方に向かって引き寄せるステップを有し得る。
【0008】
[08] 作動システムは、通路の上部に隣接して配置されたいくつかの上部電極、通路の下部に隣接して配置されたいくつかの下部電極、及び膜内若しくはその上に配置された単一の膜電極を含み得、膜を選択的に作動させるステップは、単一の膜電極を大地に電気接続し、上部電極を正の電圧に選択的に電気接続し、下部電極を負の電圧に選択的に電気接続することによって、静電気力を介して膜の部分を通路の上部又は通路の下部のどちらかに向かって引き寄せるステップを有し得る。
【0009】
[09] 作動システムは、通路の上部に隣接して配置されたいくつかの上部電極、通路の下部に隣接して配置されたいくつかの下部電極、及び膜内若しくはその上に配置されたいくつかの膜電極を含み得、膜を選択的に作動させるステップは、いくつかの膜電極を正の電圧又は負の電圧のどちらかに選択的に電気接続し、上部電極のうちの少なくとも1つを正の電圧に選択的に電気接続し、下部電極のうちの少なくとも1つを負の電圧に選択的に電気接続することによって、静電気力を介して膜の部分を通路の上部又は通路の下部のどちらかに向かって引き寄せるステップを有し得る。
【0010】
[10] 作動システムは、通路の上部に隣接して配置された複数の上部電極、通路の下部に隣接して配置された複数の下部電極、及び膜内若しくはその上に配置された単一の膜電極を含み得、膜を選択的に作動させるステップは、単一の膜電極を大地に電気接続し、上部電極のうちの少なくとも1つを正の電圧に選択的に電気接続し、下部電極のうちの少なくとも1つを負の電圧に選択的に電気接続することによって、静電気力を介して膜の部分を通路の上部又は通路の下部のどちらかに向かって引き寄せるステップを有し得る。
【0011】
[11] 膜を選択的に作動させるステップは、上部電極のうちの少なくとも別の1つを負の電圧に選択的に電気接続し、下部電極のうちの少なくとも別の1つを正の電圧に選択的に電気接続することをさらに有し得る。
【0012】
[12] 作動システムは、通路の上部に隣接して配置された複数の上部電極、通路の下部に隣接して配置された複数の下部電極、及び膜内若しくはその上に配置された単一の膜電極を含み得、膜を選択的に作動させるステップは、単一の膜電極を正の電圧又は負の電圧のどちらかに選択的に電気接続し、上部電極のうちの少なくとも1つを正の電圧に選択的に電気接続し、下部電極のうちの少なくとも1つを負の電圧に選択的に電気接続することによって、静電気力を介して膜の部分を通路の上部又は通路の下部のどちらかに向かって引き寄せるステップを有し得る。
【0013】
[13] 膜を選択的に作動させるステップは、上部電極のうちの少なくとも別の1つを負の電圧に選択的に電気接続し、下部電極のうちの少なくとも別の1つを正の電圧に選択的に電気接続することをさらに有し得る。
【0014】
[14] 作動システムは、通路の上部に隣接して配置された単一の上部電極、通路の下部に隣接して配置された単一の下部電極、及び膜内若しくはその上に配置された複数の膜電極を含み得、膜を選択的に作動させるステップは、膜電極のうちの少なくとも1つを正の電圧に選択的に電気接続し、単一の上部電極を、正の電圧及び負の電圧からなる群から選択される一方に選択的に電気接続し、単一の下部電極を群内の他方に選択的に電気接続することによって、静電気力を介して膜の部分を通路の上部又は通路の下部のどちらかに向かって引き寄せるステップを有し得る。
【0015】
[15] 膜を選択的に作動させるステップは、膜電極のうちの別のものを負の電圧に選択的に電気結合することをさらに有し得る。
【0016】
[16] 作動システムは、通路の上部に隣接して配置されたいくつかの上部電極、通路の下部に隣接して配置されたいくつかの下部電極、及び膜内若しくはその上に配置された単一の膜電極を含み得、膜を選択的に作動させるステップは、単一の膜電極を第1の電位に電気接続し、上部電極又は下部電極のうちの少なくとも一方を第1の電位と異なる第2の電位に電気接続することによって、静電気力を介して膜の部分を通路の上部又は通路の下部のどちらかに向かって引き寄せるステップを有し得る。
【0017】
[17] 作動システムは、通路の上部に隣接して配置された単一の上部電極、通路の下部に隣接して配置された単一の下部電極、及び膜内若しくはその上に配置された複数の膜電極を含み得、膜を選択的に作動させるステップは、単一の上部電極を第1の電位に電気接続し、単一の下部電極を第1の電位と異なる第2の電位に電気接続し、膜電極のうちの少なくとも1つを第1の電位及び第2の電位のうちの少なくとも一方と異なる第3の電位に電気接続することによって、静電気力を介して膜の部分を通路の上部又は通路の下部のどちらかに向かって引き寄せるステップを有し得る。
【0018】
[18] 膜を選択的に作動させるステップは、膜電極のうちの少なくとも1つを第1の電位及び第2の電位のうちの少なくとも一方と異なる第4の電位に電気接続することをさらに有し得る。
【0019】
[19] 本発明のこれら及び他の目的、特徴、及び特性、並びに動作方法、及び構造の関連要素の機能、及び部分の組み合わせ、及び製作の経済性は、以下の説明及び添付の請求項を、添付の図面を参照して考慮することで、より明らかになるであろう。図面は全て本明細書の一部をなし、同様の参照符号は、様々な図における対応する部分を指定する。ただし、図面は単に例示及び説明を目的としているにすぎず、本発明の限定の定義として意図されているわけではないことが明白に理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】[20] 理論上の理想的なポンプシステムの概略図である。
図2】[21] 本発明の1つの例示的な実施形態に係るポンプ装置の部分概略等角図である。
図3】[22] 図2の線3-3に沿い、装置の長手方向中心軸に沿って見た、図2のポンプ装置の部分概略断面図である。
図4A】[23] 蠕動運動に対応する位置に配置されたポンプ膜を示す図2の線4-4に沿った図2のポンプ装置の部分概略断面図である。
図4B】[24] 図4Aの線B-Bに沿った図4Aの構成の部分概略断面図である。
図5】[25] 本発明の一例に従って配列された図2に示されるものなどの複数の装置の部分概略断面図である。
図6】[26] 図5の配列の一部分の部分概略詳細断面図である。
図7】[27] 本発明の例示的な実施形態に係るポンプ装置の部分の断面図である。
図8】[27] 本発明の例示的な実施形態に係るポンプ装置の部分の断面図である。
図9】[28] 本発明の例示的な一実施形態に係る装置の一部分の部分分解図である。
図10】[29] 本発明の別の例示的な実施形態に係るポンプ装置の部分分解等角図である。
図11】[30] 本発明の1つの例示的な実施形態に係る電気作動システムの構成要素の例示的な構成を示す回路図である。
図12】[31] 図11の電気作動システムを参照した本発明の1つの例示的な実施形態に係る例示的な切り替えシーケンス及び対応する膜の位置付けを示すチャートである。
図13】[32] 図10に示されるものなどの装置のための本発明の例示的な実施形態に係る切り替えシーケンスを示す図である。
図14】[32] 図10に示されるものなどの装置のための本発明の例示的な実施形態に係る切り替えシーケンスを示す図である。
図15】[33] 本発明の例示的な一実施形態に係る装置の製作に用いるための例示的な設備を示す図である。
図16】[34] 本発明の例示的な一実施形態に係る装置の製作に用いるためのさらなる例示的な設備を示す図である。
図17】[35] 本発明の例示的な一実施形態に係る相互接続構造の例示的な配列を示す図である。
図18】[35] 本発明の例示的な一実施形態に係る相互接続構造の例示的な配列を示す図である。
図19】[35] 本発明の例示的な一実施形態に係る相互接続構造の例示的な配列を示す図である。
図20】[35] 本発明の例示的な一実施形態に係る相互接続構造の例示的な配列を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[36] 本明細書で使用する時、単数形は、コンテキストが別途明確に指示しない限り、複数の言及を含む。
【0022】
[37] 本明細書において使用する時、2つ以上の部分又は構成要素が「結合されている」との陳述は、その部分が、直接、又は間接的に、すなわち、連係が生じる限り、1つ又は複数の中間部分又は構成要素を通じて、互いに接合されていること又は協働することを意味するものとする。
【0023】
[38] 本明細書で使用する時、「直接結合されている」は、2つの要素が互いに直接接触していることを意味する。本明細書で使用する時、「固定して結合されている」又は「固定されている」は、2つの構成要素が、互いに対して一定の向きを維持しつつ、一体となって運動するように結合されていることを意味する。
【0024】
[39] 本明細書で使用する時、「[要素、点若しくは軸]の周りに配置される」又は「[要素、点若しくは軸]の周りに延びる」又は「[要素、点若しくは軸]の周りに[X]度」などの表現における「周り」は、~を取り囲むこと、~の周囲に延びること、又は~の周囲において測定されることを意味する。測定値に言及して、又は同様の様態で使用する時、「約」は、「およそ」、すなわち、当業者によって理解されるように測定値に関連するおおよその範囲内を意味する。
【0025】
[40] 本明細書で使用する時、「一般的に」は、当業者によって理解されるように、用語に関連する「一般的な様態で」変更され得ることを意味する。
【0026】
[41] 本明細書で使用する時、「実質的に」は、当業者によって理解されるように、大部分、ほとんどの量又は程度を意味する。それゆえ、例えば、「実質的に」第2の要素内に配置された第1の要素は、大部分は、第2の要素内に配置されている。
【0027】
[42] 本明細書で使用する時、単語「単体の」は、構成要素が単一の部品又は単位として作製されていることを意味する。すなわち、別個に作製され、その後、単位として互いに結合された部品を含む構成要素は、「単体の」構成要素又は本体ではない。
【0028】
[43] 本明細書で用いる時、2つ以上の部分又は構成要素が互いに「係合する」という陳述は、それらの部分が、直接、又は1つ又は複数の中間部分又は構成要素を通じて、互いに対して力を及ぼすことを意味するものとする。
【0029】
[44] 本明細書で用いる時、用語「数、番号」は、1、又は1よりも大きい整数(すなわち、複数)を意味するものとする。
【0030】
[45] 本明細書で使用する時、語句「密閉係合する」は、間に気密シールが形成される様態で互いに接触する要素を意味するものとする。
【0031】
[46] 本明細書で使用する時、用語「コントローラ」は、限定するものではないが、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、複合プログラム可能論理デバイス(CPLD)、プログラム可能システムオンチップ(PSOC)、特定用途向け集積回路(ASIC)、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、プログラム可能論理コントローラ、或いは任意の他の好適な処理デバイス又は装置を含む、データ(例えば、ソフトウェアルーチン、及び/又はこのようなルーチンによって用いられる情報)を記憶し、取り込み、実行し、処理することができるプログラム可能アナログ及び/又はデジタルデバイス(関連メモリ部又は部分を含む)を意味するものとする。メモリ部分は、コンピュータの内部記憶領域などの様態のデータ及びプログラムコードの記憶のための記憶レジスタ、すなわち、非一時的機械可読媒体を提供する、限定するものではないが、RAM、ROM、EPROM(単数又は複数)、EEPROM(単数又は複数)、フラッシュ、及び同様のものなどの、様々な種類の内部及び/又は外部記憶媒体のうちの任意の1つ又は複数であることができ、揮発性メモリ又は不揮発性メモリであることができる。
【0032】
[47] 例えば、限定するものではないが、最上部、最下部、左、右、上部、下部、前、後、及びこれらの派生語などの、本明細書において使用される方向の語句は、図面に示される要素の向きに関連し、請求項において明示的に言及されない限り、請求項に限定を加えるものではない。
【0033】
[48] 以下の説明から、本発明の諸実施形態は静電気力を利用し、従来の解決策よりも、図1に関して説明された理想的なポンプに近い機能を果たすポンプ装置内の蠕動ポンプアクションを作り出すことが理解されるであろう。
【0034】
[49] 図2図3図4A及び図4Bは、本発明の例示的な一実施形態に係る気体の流れを発生させるためのポンプ装置20の一例を示す。ポンプ装置20は、内部を貫いて画定された通路24を有するフレーム22を含む。通路24は概ね一様な断面のものであり、その長手方向中心軸Aに沿って、入口26と出口28との間の長さLだけ延び、概して、入口26に入る全ての流体が出口28を介してのみ出ることができるように構造化されている。図2図3図4A及び図4Bに示される本発明の例示的な実施形態では、通路24は六角形断面形状を有するが、他の断面形状も本発明の範囲と異なることなく利用され得ることを理解されたい。通路24は、第1の側部30、及び第1の側部30の反対側に配置された第2の側部32を有する。通路24は、第1の側部30の中央線34と第2の側部32の中央線36との間で測定した時の最大幅wを有する。通路24は、概ね、通路24内に位置付けられた可撓性ポンプ膜38を介して、2つの小部分、すなわち、上部24A及び下部24Bに隔てられている。より具体的には、ポンプ膜38は、概して、その第1の縁部38Aにおいて、通路24の第1の側部30にその中央線34において結合され、第1の縁部38Aの反対側に配置された第2の縁部38Bにおいて、通路24の第2の側部32にその中央線36において結合されている。したがって、ポンプ膜38は、概して、通路24の境界(すなわち、フレーム22)を上部フレーム部分22A及び下部フレーム部分22Bに分離する。通路24は、上部フレーム部分22Aの中心部(符号を付されていない)と下部フレーム部分22Bの中心部との間の距離である最大高さHを有する。以下においてさらに詳細に説明されるように、静電引力の強さは電極とポンプ箔との間の印加電圧及び距離に大きく依存するため、実際的な電圧(数百ボルト)のために、通路の高さHは、概ね、およそ0.1~0.5mmの大きさの寸法に限られる。ポンプ膜38は、第1の縁部38Aと第2の縁部38Bとの間でポンプ膜38に沿って測定した時の、実際の幅wを有する。実際の幅は、通路24の幅wよりも大きく、通路24の上(又は下)面に沿って測定した時の実際の幅wと概ね等しい。換言すれば、ポンプ膜38が平らに広げられた場合、第1の縁部38Aと第2の縁部38Bとの間の距離は膜38の実際の幅wになるであろう。したがって、ポンプ膜38は、通例、本明細書の他所においてさらに詳細に説明されるように、静電気力によって作用を受けていない時には、図3に示されるものなどの安静位をとり、概して、その実際の幅wが通路24の上面又は下面(符号を付されていない)のどちらかの幅wと概ね等しいため、通路24の上面又は下面のどちらかと密閉係合することができる。
【0035】
[50] 図2の線4-4に沿ったポンプ装置20の断面図を示す図4A、及び図4Aの線B-Bに沿ったポンプ装置20の断面図を示す図4Bは、ポンプ装置20を用いて気体の流れFがどのように生成されるのかについての概略図を提供する。より具体的には、ポンプ膜38の異なる部分を、図4A及び図4Bにおける小さい矢印によって示されるものなどの上又は下方向のどちらかに鉛直に選択的に運動させることによって、波状運動がポンプ膜38内に生成される。ポンプ膜38を小さい矢印の方向に運動させることによって、ポンプ膜38の波状形状は、図4A及び図4Bにおける破線で示される交互に位置付けられた波状形状38’に向けて移行される。波を通路24の長さLに沿って入口26から出口28までさらに移行させることによって、図4Aにおけるより大きい矢印f及びfによって一般的に表されるとおりの、空気のポケットが、通路24のそれぞれ上部24A及び下部24Bの両方に沿って蠕動的様態で移行される。それゆえ、通路24を通る全体の流れFの概ね半分は、上部24Aを通って流れる流れfからのものであり、通路24を通る全体の流れFの概ね半分は、下部24Bを通って流れる流れfからのものであることを理解されたい。膜38内に生成される波の周波数が増大されるにつれて、通路24を通過する流れの速度も増大される。圧力に影響を及ぼすために、膜38内に生成される波の長さが変更され得る。
【0036】
[51] いくつかの通路24をハニカム状構造に組み合わせることによって、このような配列のクロスフロー寸法を特定の用途の要求流出寸法にほぼ完璧に適合させることができる。図5は、7本の通路24(ポンプ膜38を省略して示されている)がハニカム状ポンプ装置構造40に配列された、このような構造の一例を示す。このようなパターンを、特定の用途のポンプ要求を満たすために必要とされる回数繰り返すことができることを理解されたい。各通路24は非常に小さい寸法のものであるため、このようなハニカム構造は、概して、以下においてさらに詳細に説明されるように、互いに積層され、その後、膨張させられる薄いフィルム(例えば、典型的な厚さ範囲2~15μm)を用いて製造することができる。
【0037】
[52] 図4A及び図4Bに関して説明された様態で流体圧力差に抗して各ポンプ膜38を作動させるために、ポンプ装置20は、ポンプ膜38の部分を、ポンプ膜38内に蠕動波状運動を生成する様態で、各通路24の上部22Aに向かって上方へ、又は下部22Bに向かって下方へ選択的に運動させるように構造化された作動システムをさらに含む。本明細書に記載される諸実施形態において流体圧力差に抗してポンプ膜38を作動させるために利用される機構は、フレーム22の上部22A又は下部22Bのどちらかによるポンプ膜38の(経時的)交番静電引力である。この目的のために、図5のハニカム構造40(単一の通路に関して上述されたフレーム22と同等である)は、構造フィルム(例えば、限定するものではないが、数ミクロン(例えば10μm)の厚さを有するポリプロピレン箔のPET)から形成することができる。このような構造フィルムの片側又は両側に、交番電圧が印加される金属電極をめっきすることができる。静電引力が生じるために、ポンプ膜38もまた、全体的に、又は部分的に、(ハニカム構造40と類似した)めっきされた構造フィルム又は導電性(例えば、金属)フィルムによって形成される。結果として得られた配列内における短絡を回避するために、構造フィルム又はポンプ膜上の導電材料は互いに絶縁されなければならない。このような絶縁はいくつかの手法で達成することができる。図6に、ポンプ膜38が、両側において誘電体44をコーティングされた金属フィルム42を含む、1つの例示的な構成が示されている。このような構成では、誘電体44が、ポンプ膜の金属フィルム42を、構造フィルム50及び52上にそれぞれ配置された金属層46及び48から絶縁する。
【0038】
[53] 図6を引き続き参照すると、(正又は負の)電圧が金属層46に印加され、金属フィルム42が大地に接続されると、金属フィルム42、ひいてはポンプ膜38は電位差のゆえに金属層46(図に示されるものなど)に向かって引き寄せられる。電圧が金属層46から除去され(次に金属層46が大地に接続され)、代わりに、金属層48に印加されると、金属フィルム42、ひいてはポンプ膜38は通路24の反対側に向かって引き寄せられることになる。このような例示的な構成から、同じ電圧を構造フィルム50又は構造フィルム52の(両方でなく)どちらかの構造フィルムの両側の金属層に印加することによって、所与の断面内において、ポンプ膜38の半分は上方へ運動することになり、ポンプ膜38の半分は下方へ運動することになり、それゆえ、全てのポンプ膜38が所与の断面内で同じ方向に運動する状況よりも良好な動的つりあいをもたらすことを容易に理解することができる。別の例示的な構成(図示せず)では、金属フィルム42上の代わりに金属層46及び48上に誘電体コーティングが適用される。
【0039】
[54] 図7及び図8は、本発明の例示的な実施形態に係るさらなる代替的なハニカム構造60、80の部分を示す。図7を参照すると、上部構造フィルム62及び下部構造フィルム64の各々に、それらの上面上においてのみ金属層66、68がそれぞれコーティングされている、例示的な構造60の一部分が示されている。このような構成において、ポンプ膜70は、上面上に配置された金属層72を有する構造フィルム74を含む。金属層66、72及び68が全て非導電層(すなわち、層62、74、64)の上方に配置されているため、このような導電層66、72及び68は、最小限の量の層を用いて互いに絶縁されている。
【0040】
[55] 図7の最小限の構成と対照的に、図8は、上部構造フィルム82及び下部構造フィルム84の各々に、それらの上面及び下面の両方の上において金属層86、88がコーティングされている、例示的な構造80の一部分を示す。このような構成において、ポンプ膜90は、上面及び下面上に配置された金属フィルム層94及び96を有する非導電性中心コア層92を含む。中心コア層92と反対側の金属フィルム層94及び96の表面は、金属層86を金属層94から絶縁し、金属層88を金属層96から絶縁する役割を果たす、表面上に配置された誘電体コーティング98、100を有する。
【0041】
[56] 図7及び図8に示される実施形態は単なる例示の目的のために提供されているにすぎず、本明細書に具体的に記載されていない積層構成の他の好適な変形例もまた、本発明の範囲と異なることなく利用され得ることを理解されたい。
【0042】
[57] 静電引力の方向に、通路24内の長さの位置付けに対する依存性を持たせるために、電極の役割を果たす導電線が各通路24の長手方向軸Aと垂直な方向に作製されるような様態で、金属めっきがパターニングされる。このような電極は、通路24に対するそれぞれの電極の長さの位置に依存して、通路24の最上部(例えば、フレーム22の上部22A)又は最下部(例えば、フレーム22の下部22B)上の異なる位置において異なる電圧を印加することを可能にする様態で、通路24の長手方向に離間配置される。図9に、このようなパターニングされた構成の例示的な一実施形態が示されている。図9は、上部22A及び下部22Bに分解された装置20(図2図3図4A及び図4Bに関して上述されたものなど)のフレーム22の等角図を全体的に示す。図8に示される構成と同様に、上部22A及び下部22Bの各々は、上面110A、112A及び下面110B、112Bの両方の上に配置された金属層(符号を付されていない)を有する構造フィルム110、112を含む(図9では、構造フィルム110及び112の上面110A及び112Aのみが見えているが、下面110B及び112Bは各々、上面110A及び112Aと同じ様態でパターニングされており、それゆえ、本明細書において特に詳細に説明されないことを理解されたい)。各金属層は、構造フィルム110及び112の上面及び下面110A、112A及び110B、112Bの両方の上に、複数の(4つが示されている)(最小距離dをもって)離間配置された導体114を形成するようにパターニングされている。各導体114は、通路24の中心長手方向軸Aに対して概ね垂直に延びる。しかし、ポンプ箔の蠕動運動を最適化するために可能ないくつかの精密な幾何学的構成が存在する。このような幾何学的構成の1つの例が以下において説明される。本明細書に記載される例示的な実施形態では、電極114の全ての一般構成は概ね同じであり、それゆえ、本明細書では、構造フィルム110の上面110A上に配置された電極114の構成のみが詳細に説明される。
【0043】
[58] 各電極114は、選択的に変更され得る(通路の長手方向に測定した時の)幅を有する。図9に示される例では、各電極114の幅は、中心部114Aのための最大電極幅emaxから、中心部114Aから通路24の側部に向かって延びる端部114B及び114Cのための最小電極幅eminへ変化する。例えば、幅eminは、emaxの幅のわずか4分の1として選定することができる(例えば、限定するものではないが、それぞれ、0.5mm及び2.mm)。このような変化する幅emax及びeminの結果、中心部114Aの後縁部(すなわち、図9において符号を付されていない、通路24の入口26から最も遠くに配置された電極114の縁部)は、各電極114の外側部分114B及び114Cの後縁部(符号を付されていない)から所定の距離dオフセットしており、その一方で、前縁部(すなわち、通路24の入口26の最も近くに配置された特定の電極114の縁部)は各電極114の全長に沿って概ね一定である。各電極のこのような寸法設定は、ポンプ膜38内に所望の波状パターンを形成するのを支援するために提供される。一定の前縁部を有することによって、ポンプ膜38は最初に、(電極114の外側部分114B及び114Cに最も近い膜の部分が運動を開始して)通路24の概ね全幅wにわたってそれぞれの電極114に向かって(電極に依存して上方又は下方のどちらかへ)引き寄せられ、かくして、初期「波面」を生み出す。次に、「波」の中央(すなわち、中心長手方向軸Aに最も近い部分)が、電極114のより幅の広い(波の伝搬の方向により長い)中心部114Aにさらに引き寄せられる。それゆえ、これは、概ね通路24の入口26から出口28に向かって波面を伝搬するように作用する。
【0044】
[59] フレームの上部及び下部上のパターニングされた電極を用いる代わりに、概ね通路24の全長Lに沿って延びるフレームの上部及び下部内のパターニングされていない金属層に選択的に引き寄せられるパターニングされたポンプ膜が利用されてもよい。図10は、このような可撓性のパターニングされたポンプ膜122(上方へ弓なりになった姿勢で配置されるように示されている)を利用する本発明の一実施形態に係る例示的な装置120の部分分解等角図を示す。図7に示される構成と同様に、ポンプ膜122は誘電体フィルム124を含むが、金属フィルムを有する代わりに、ポンプ膜は、誘電体フィルム124の上面124A上に配置された複数の(4つが示されている)電極126を含む。電極126の各々は、図9に関して上述された電極114と同様の構成のものである。また、図7に示される構成と同様に、上部及び下部(符号を付されていない)は、上面(符号を付されていない)上に金属層132及び134をそれぞれコーティングされた構造フィルム128、130から形成されている。電極126のこのような構成は、図9に示される構成と概ね同じ手法で機能する。
【0045】
[60] かように、例示的な装置及びそれらの部分のいくつかの実施形態を説明したので、次に、本発明の1つの例示的な実施形態に係る電気作動システム200の構成要素の例示的な構成、及びそれらの動作を、図11及び図12に関して説明する。図11は、図9において上述されたものなどの例示的な構成と共に用いるための電気構成要素の一般的構成を概略的に示す。したがって、システム200は、4つの最上部電極1t、2t、3t、4t(以下、ひとまとめにして最上部電極xtと呼ばれる)、並びに4つの最下部電極1b、2b、3b、4b(以下、ひとまとめにして最下部電極xbと呼ばれる)を含む。電極1t及び1bは、通路の入口(図12の左側部分において示されるものなど)に最も接近して配置されており、電極4t及び4bは、通路の出口(図12参照)に最も接近して配置されている。例示的な通路内に配置されたポンプ膜は導電金属層mを含む。図11に示されるように、最上部電極xtの各々は、スイッチCtr_xt+(ここで、xは特定の電極番号を指示する)及びCtr_xt-(ここで、xは特定の電極番号を指示する)の対によって、DC電圧の供給源Vdcに選択的に電気接続され、これにより、正の電圧又は負の電圧のどちらかが(すなわち、特定の上述のスイッチを閉じることによって)最上部電極xtの各々に選択的に印加される。同様に、最下部電極xbの各々は、スイッチCtr_xb+(ここで、xは特定の電極番号を指示する)及びCtr_xt-(ここで、xは特定の電極番号を指示する)の対によって、DC電圧の供給源Vdcに選択的に電気接続され、これにより、正の電圧又は負の電圧のどちらかが(すなわち、特定の上述のスイッチを閉じることによって)最下部電極xbの各々に選択的に印加される。導電金属層は、同様に、スイッチCtr_m+及びCtr_m-の対によってDC電圧の供給源Vdcに選択的に電気接続され、これにより、正又は負のどちらかの電圧がポンプ膜の金属層に印加される。スイッチCtr_xt+、Ctr_xt-、Ctr_xb+、Ctr_xb-、Ctr_m+及びCtr_m-の各々は、オプトカプラ又は他の好適な機構を介して各スイッチに接続されたコントローラ202によって制御される。異なって荷電した構成要素の間で静電引力を誘起するために、DC電圧源Vdcは、特定の用途に依存して、約200V~600Vの範囲内の電圧を生成する。
【0046】
[61] 図12に全体的に示されるように、(図11のコントローラ202を介して)正又は負のどちらかの電圧を最上部及び最下部電極xt及びxb並びにポンプ膜の導電層mに選択的に独立して印加することによって、図4A及び図4Bに関して上述された波状運動を生成することができる。ポンプ膜の導電層mに印加される電圧の極性を定期的に逆転することによって、電極xt、xb又は層mのうちの任意のものの上における残留電荷の潜在的な蓄積を低減/解消することができることを理解されたい。また、図11及び図12の例示的な構成から、図12における水平矢印によって示されるとおりの、流体(例えば、空気)の蠕動運動は、最小限の数の(すなわち、4対のみの)離間した電極xt及びxbを利用することにより達成することができることも理解されたい。特殊な電極形状(例えば、限定するものではないが、上述された114などの電極の、誇張された、「引き伸ばされた」バージョン)が利用される場合には、さらに少数の対(例えば、1つ)を利用することもできるが、概して、最適とは言えないものになる。
【0047】
[62] 図13及び図14は、通路の最上部及び最下部内の複数の電極の代わりにポンプ膜122の一部である複数の電極126を切り替えるために全体的に変更/適合された、図11に関して説明されたものと同様の電気構成及び構成要素を利用する、図10に示されるものなどの装置のための本発明の例示的な実施形態に係る例示的な切り替えシーケンスを示す。
【0048】
[63] かように、本発明の例示的な実施形態及び例示的な動作方法を説明したので、次に、本発明の例示的な一実施形態に係る製作方法の説明を述べる。マイクロ流体の範囲をはるかに超えた流量を必要とする、本明細書において図2及び図3に関して上述されたチャネル24を有するポンプ装置20などのポンプ装置を用いる用途のためには、多くの通路24の結合体が必要とされる(例えば、典型的なCPAP用途のためには、限定するものではないが、20本の平行通路を250回積み重ね、5,000本の通路及び関連構成要素のアレイを生成することで概ね十分となろう)。図15に、このような結合体の製作に用いるための効率的な生産方法を実施するための設備300が全体的に示されている。このような方法では、302によって全体的に指示される、上に配置された金属層及び/又は誘電体層を伴う、構造フィルム(本明細書において図6図10に関して上述されたものなど)、並びに304によって全体的に指示されるポンプ膜フィルム(その任意のサブコンポーネントを含む、同様に本明細書において図6図10に関して上述されたものなど)の結合体を、割り出しドラム306の周りに巻回し、その一方で、本明細書において図6及び図16の例示的な構成においてXで指示される区域において全体的に示されるものなどの、構造フィルム302及びポンプ膜フィルム304が、膨張させられた最終構成において互いに接触し、固定されることが所望される位置において、接着剤を適用する。図15に示されるレーザパターニングプロセスは、フィルム302を形成する構造の両側の金属層のパターニングを可能にする。
【0049】
[64] 構造フィルム302及びポンプ膜フィルム304の積み重ねられた結合体を、回転されるドラム306から切り離した後に、ポンプ装置の厚さ方向に力Sを印加することによって、積層された構造を伸張し、各通路の高さを概ね0から所定の値へ全体的に膨張させ、かくして、単一の通路構成のためのこのような伸張を示す図16の例示的な構成において全体的に示されるものなどの、一体化したポンプ膜を有するハニカム構造を形成することができる。このような構成では、伸張される構造は、好適な一時的接着材料312(例えば、限定するものではないが、接着剤、熱接着など)を介して伸張装置310に一時的に接着されてもよい。
【0050】
[65] 製作プロセスにおける別の重要なステップは、個々の通路の各々からの全ての共通電極及び/又は導電層を互いに接続し、外界への電気接続を作ることである。図17図20は、本発明の例示的な一実施形態に係る、このような接続がどのように達成されるのかに関する解決策を提供する。まず、図17を参照すると、通路402(3つのみ標識されている)の例示的なアレイ400の一部分の端面図(すなわち、通路を通して見た図)が示されている。このような構成では、通路402のうちのいくつかのポンプ膜(符号を付されていない)は、好適な接着材料を介して所定のパターンで上部構造フィルム又は下部構造フィルムのどちらかに接着されている。ポンプ膜が接着された通路は、ポンプ膜が上部又は下部のどちらかの構造フィルムに接着された時に内部で露出する特定の導電要素(例えば、ポンプ膜の金属層、電極層、導電層など)を有するようにあらかじめ設計されている。4つの一番上のポンプ膜A、B、C及びDのための接着区域がZにおいて全体的に指示されている。このような接着は、図15及び図16に関して上述されたものなどの製作プロセスの間に実施される。
【0051】
[66] ポンプ膜が接着された後に、図18に示されるものなど、ポンプ膜が以前に接着された通路内に、導電性インク404又は他の好適な導電材料が(例えば、限定するものではないが、毛細管手段によって)選択的に配置される。アレイ400の積層された構造の結果、わずか数本のこのように充填された通路を用いて、20本の通路の段のために必要な導体の全てに対処することができることを理解されたい。
【0052】
[67] 導電性インク404が、選択された通路内に配置された後に、硬質の鉛直導体406が、好適なプロセス(例えば、限定するものではないが、はんだ付け)を介して、鉛直スタック内の充填された通路の各々に電気接続され、かくして、アレイの各段内の共通電気要素を電気的に相互接続し、外界へのさらなる電気接続部AA、BB、CC、DDの接続のための硬質の接続点をもたらす。
【0053】
[68] 要約すれば、本発明の諸実施形態は、限定するものではないが、特定の通路の幅、高さ、長さ、電極の数量、及び電極の幾可学的形状のうちの1つ又は複数を変更することによって、所与の用途のために容易にサイズ設定することができる、流体(例えば、限定するものではないが、気体)の流れの生成に用いるための装置を提供することを理解されたい。加えて、又は代替的に、特定の用途の要求を満たすために、装置において用いられる通路の数量を容易に変更することができる。
【0054】
[69] また、本発明の諸実施形態は、双方向的に動作させるように構成することができることも理解されたい。例えば、限定するものではないが、このような特徴は、このような装置が、フィルタを有するマスクを通した呼吸(すなわち、吸気/呼気)を支援するために利用される諸実施形態において利用される。また、流体の所望の流れを生成するためのポンプ装置として用いられる代わりに、本発明の諸実施形態はまた、真空を作り出すために利用される(例えば、真空ポンプとして利用される)ことも理解されたい。また、本発明の諸実施形態は非ポンプ用途で利用されることも理解されたい。例えば、限定するものではないが、本発明の諸実施形態は、関連通路又は通路群を遮断する所定の波形で装置の1つ又は複数のポンプ膜を実効的に「凍結させること(freezing)」によって流体の流れを遮断するための弁の役割を果たすために利用される。このようなアプローチは、同様に、光が、(例えば、ポンプ膜を通路の最下部又は最上部に接するよう配置させることによって)通過すること、又は(例えば、ポンプ膜を、通路を遮断するよう配置させることによって)遮断されることを可能にする光学デバイスとして用いられる。
【0055】
[70] 本発明は、最も実際的で好ましい実施形態であると現在考えられるものに基づいて、例示の目的のために詳細に説明されたが、このような詳細は単にその目的のためのものにすぎず、本発明は本開示の実施形態に限定されず、むしろ、添付の請求項の趣旨及び範囲に含まれる変更及び同等の構成を包括することが意図されていることを理解されたい。例えば、本発明は、可能な限り、任意の実施形態の1つ又は複数の特徴を任意の他の実施形態の1つ又は複数の特徴と組み合わせることができることを企図していることを理解されたい。別の例として、本発明の諸実施形態における通路内又は複数の通路の間で利用される電極の数量、サイズ設定、間隔、位置付けなどのうちの1つ又は複数は、本発明の範囲と異なることなく変更され得ることを理解されたい。また、要素の通路ごとの長さ方向の相対的位置付け(すなわち、入口と出口との間の位置付け)は、(例えば、限定するものではないが、ポンプ膜内にオフセットした波形を作り出すために)本発明の範囲と異なることなく変更され得ることも理解されたい。
【0056】
[71] 請求項において、括弧間に付された任意の参照符号は、請求項を限定するものと解釈されてはならない。単語「~を備える」又は「~を含む」は、請求項において列挙されたもの以外の要素又はステップの存在を除外しない。いくつかの手段を列挙するデバイスの請求項では、これらの手段のうちのいくつかはハードウェアの全く同一の単位体によって組み込まれていてもよい。単数形の要素は複数のこのような要素の存在を除外しない。いくつかの手段を列挙するデバイスの任意の請求項において、これらの手段のうちのいくつかはハードウェアの全く同一の単位体によって組み込まれていてもよい。特定の要素は、相互に異なる従属請求項に記載されているという事実のみをもって、これらの要素を組み合わせて用いることができないことが指示されるわけではない。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20