(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】サイズ制御されたマイクロカプセル及びマイクロ粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
B01J 13/18 20060101AFI20220203BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
B01J13/18
C08L101/00
(21)【出願番号】P 2019549647
(86)(22)【出願日】2017-12-01
(86)【国際出願番号】 EP2017081273
(87)【国際公開番号】W WO2018100196
(87)【国際公開日】2018-06-07
【審査請求日】2020-11-04
(32)【優先日】2016-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】519197778
【氏名又は名称】カリシア
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【氏名又は名称】木村 健治
(72)【発明者】
【氏名】ジャミー ウォルターズ
(72)【発明者】
【氏名】ダミアン ドゥムリン
【審査官】黒川 美陶
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-528264(JP,A)
【文献】特表2003-524689(JP,A)
【文献】特表2012-529981(JP,A)
【文献】特表2007-526287(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0160109(US,A1)
【文献】特表2018-535829(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J,C08F,C08L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)撹拌しつつ、組成物C3に組成物C’2を添加するに際し、組成物C3に分散した組成物C’2の液滴を含むエマルション(E2)が得られる工程であって、前記組成物C’2及びC3は互いに混和せず、
前記組成物C’2は、架橋性単相組成物C2、又は架橋性ポリマー組成物C2に分散した少なくとも1種の活性成分を含む組成物C1の液滴を含むエマルション(E1)であり、前記組成物C1及びC2は互いに混和せず、
組成物C3の粘度は、25℃、10s
-1のせん断速度において10000mPa.s超、かつ、25℃、100s
-1~100000s
-1のせん断速度において10000mPa.s未満である工程と;
b)前記エマルション(E2)にせん断を適用するに際し、前記組成物C3に分散した組成物C’2のサイズ制御された液滴を含むエマルション(E3)が得られる工程であって、適用されるせん断速度が100s
-1~100000s
-1である工程と;
c)前記組成物C’2を重合するに際し、前記組成物C3に分散した固体マイクロカプセルが得られる工程と
を含む固体マイクロカプセルの製造方法。
【請求項2】
前記組成物C’2が、ポリマー組成物C2に、少なくとも1種の活性成分を含む組成物C1を撹拌しつつ添加することにより得られたエマルション(E1)であり、前記組成物C1及びC2は互いに非混和性である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
a1)撹拌しつつ、ポリマー組成物C2に少なくとも1種の活性成分を含む組成物C1を添加するに際し、組成物C2に分散した組成物C1の液滴を含むエマルション(E1)が得られる工程であって、前記組成物C1及びC2は互いに混和しない工程と;
a2)撹拌しつつ、組成物C3に前記エマルション(E1)を添加するに際し、前記組成物C3に分散した液滴を含むダブルエマルション(E’2)が得られる工程であって、前記組成物C2及びC3は互いに混和せず、
組成物C3の粘度は、25℃、10s
-1のせん断速度において10000mPa.s超、かつ、25℃、100s
-1~100000s
-1のせん断速度において10000mPa.s未満である工程と;
b)前記エマルション(E’2)にせん断を適用するに際し、前記組成物C3に分散したサイズ制御された液滴を含むダブルエマルション(E’3)が得られる工程であって、適用されるせん断速度が100s
-1~100000s
-1である工程と;
c)前記組成物C2を重合するに際し、前記組成物C3に分散した固体マイクロカプセルが得られる工程とを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記組成物C2が、25℃において500mPa.s~100000mPa.sの粘度を有する液体である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記組成物C2が、少なくとも1種のモノマー又はポリマーと、少なくとも1種の架橋剤と、任意選択的に少なくとも1種の触媒とを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記組成物C2が、光開始剤を含まない、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記組成物C2が、前記組成物の全質量に対して0.001質量%~70質量%の架橋剤を含む、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記活性成分が、前記組成物C1に可溶化されているか、前記組成物C1に固体粒子の形態で分散している、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記組成物C3が、少なくとも1種の分岐鎖ポリマー
、及び/又は5000g.mоl
-1を超える分子量を有する少なくとも1種のポリマー、及び/又
は固体粒子を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記組成物C3の25℃における粘度が、10s
-1のせん断速度において15000mPa.s~100000mPa.sであり、100s
-1~100000s
-1のせん断速度において5000mPa.s未満である、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
工程b)において適用されるせん断速度が、10s
-1~1000s
-1である、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
UV光源に曝露する工程を含まない、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記組成物C2の重合工程が、8時間~100時間の期間実施される、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記組成物C2の重合工程が、20℃~80℃の温度にて実施される、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記組成物C2の重合工程が、20℃~80℃の温度にて8時間~100時間の期間実施される、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光重合なしでのサイズ制御されたマイクロ粒子及びマイクロカプセルの製造方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0002】
(原文記載なし)
【発明を実施するための形態】
【0003】
化学、化粧品、農薬、塗料又は燃料及び潤滑油産業を含む多くの産業において、加水分解、熱劣化、酸化又は活性成分の性能を低下させる可能性のある他のプロセスから活性を保護するために、活性成分を周囲環境からカプセル化し、隔離することが重要である。加えて、これらの産業における多くの応用は、製造される粒子又はカプセルが、例えば、その全体的な性能をより良好に制御するために、典型的にはマイクロメートル範囲(特に0.1μm~20μm)において、狭いサイズ範囲を有することを要求する。
【0004】
化粧品、塗料、コーティング又はマスチック等の化学産業により製造された多くの製品において、ポリマーマイクロ粒子が、そのレオロジー特性又はテクスチャを改変するように添加されることがある。達成されるレオロジー性能は、マイクロ粒子の平均サイズ及びそれが広がるサイズ範囲(一般的にサイズ分布と呼ばれる)に極度に依存する。
【0005】
活性成分の性能を改善するために、周囲環境から活性成分を隔離するという課題は、多くの産業に関して比較的新しい領域である。ほとんどの非有機産業において、加水分解、熱劣化、酸化及び交差反応性等の因子に関連した性能損失は、活性成分の濃度を増加させて、所望のレベルの性能を達成することにより解決されるが、このことはコストを増加させ、さらに係る方法により形成された生成物に関連した他の問題を生み出す。
【0006】
最近では、噴霧乾燥、溶媒蒸発、界面重合及び遠心噴出(centrifugal extrusion)などを含む数多くの粒子又はカプセルの製造方法が開発され、文献に報告されている。しかし、工業的規模での粒子及びカプセルの製造方法については、エマルション技術が優位である。係る方法は、水性媒体に分散された疎水性油若しくはワックス相、又は疎水性油若しくはワックス媒体に分散された水相のエマルションを形成する工程を用いる。二相は、バッフルを備えたホモジナイザー又は撹拌容器のいずれかを用いて乳化され、界面活性剤、脂質又はポリマー乳化剤を用いて安定化される。代わりに、二相間の界面における反応をポリマーエンベロープの形成のために用いてもよい。
【0007】
しかし、これらの系は、多分散であるか大きすぎる(20μm超)エマルション及びカプセルを製造する。
【0008】
加えて、これらの系は、相の1つを形成するのに水の使用を要求する。それは、エマルションを安定化するのに界面活性剤又は同様の乳化剤の使用も要求するが、それは、カプセル材料と反応する可能性があるか、異なる相において汚染物質を提供するという欠点を有する。
【0009】
本発明は、非生物学的産業の要求に合う量を満たすバルク法を実施することにより、活性成分を含有する粒子及びカプセルを提供することを目的とする。
【0010】
本発明は、制御されたサイズ、特に20μm未満、又は5μm未満の粒子及びカプセルを得る乳化方法を提供することも目的とする。
【0011】
本発明は、水及び/又は界面活性剤及び乳化剤なしで実施することができる活性成分のカプセル化方法を提供することも目的とする。
【0012】
本発明は、マイクロ粒子及びマイクロカプセルの製造方法であって、それを構成する液滴を一方で単分散にし、他方で非常に安定にする材料からなるエマルションを用いた方法を提供することも目的とする。
【0013】
したがって、本発明は、以下の工程:
a)撹拌しつつ、組成物C3に組成物C’2を添加するに際し、組成物C3に分散した組成物C’2の液滴を含むエマルション(E2)が得られる工程であって、組成物C’2及びC3は互いに混和せず、
組成物C’2は、架橋性単相組成物C2、又は架橋性ポリマー組成物C2に分散した少なくとも1種の活性成分を含む組成物C1の液滴を含むエマルション(E1)であり、組成物C1及びC2は互いに混和せず、
組成物C3の粘度は、25℃、10s-1のせん断速度において10000mPa.s超、かつ、25℃、100s-1~100000s-1のせん断速度において10000mPa.s未満である工程と;
b)エマルション(E2)にせん断を適用するに際し、組成物C3に分散した組成物C’2のサイズ制御された液滴を含むエマルション(E3)が得られる工程であって、適用されるせん断速度が100s-1~100000s-1である工程と;
c)組成物C’2を重合するに際し、組成物C3に分散したマイクロ粒子又は固体マイクロカプセルが得られる工程と
を含むマイクロ粒子及び固体マイクロカプセルの製造方法に関する。
【0014】
組成物C’2の性質に応じて、本発明の方法は、マイクロ粒子又はマイクロカプセルを得ることを可能にする。組成物C’2が少なくとも1種の活性成分を含む場合、我々は次いでマイクロカプセルについて言及する。
【0015】
組成物C’2の性質に応じて、エマルション(E2)は、組成物C3に分散した組成物C2の液滴を含む単純エマルション、又は組成物C3に分散した液滴を含む(以下で言及されるエマルション(E’2)に対応する)ダブルエマルションである。
【0016】
組成物C’2の性質に応じて、エマルション(E3)は、組成物C3に分散したサイズ制御された組成物C2の液滴を含む単純エマルション、又は組成物C3に分散したサイズ制御された液滴を含む(以下で言及されるエマルション(E’2)に対応する)ダブルエマルションである。
【0017】
1つの実施態様によれば、本発明の方法は、以下の工程:
a”)撹拌しつつ、組成物C3に架橋性組成物C2を添加するに際し、組成物C3に分散した組成物C2の液滴を含むエマルション(E2)が得られる工程であって、
組成物C2及びC3は互いに混和せず、
組成物C3の粘度は、25℃、10s-1のせん断速度において10000mPa.s超、かつ、25℃、100s-1~100000s-1のせん断速度において10000mPa.s未満である工程と;
b)エマルション(E2)にせん断を適用するに際し、組成物C3に分散した組成物C2のサイズ制御された液滴を含むエマルション(E3)が得られる工程であって、適用されるせん断速度が100s-1~100000s-1である工程と;
c)組成物C2を重合するに際し、組成物C3に分散した固体マイクロ粒子が得られる工程とを含む。
【0018】
本実施態様によれば、本発明の方法は、したがってサイズ制御された(特に20μm未満)エマルション液滴の群を工業スケールで製造することを可能にする。本発明の方法により得られる液滴のサイズの制御は、特に、連続相C3のレオロジー特性の制御による。
【0019】
本実施態様によれば、本発明の方法は、エマルション液滴の重合工程の実施により、サイズ制御されたマイクロ粒子の製造を可能にする。この重合工程は、特に、液滴の固化を可能にし、したがっていかなる合体も排除する。
【0020】
別の実施態様によれば、前述の組成物C’2は、撹拌しつつ、架橋性ポリマー組成物C2に少なくとも1種の活性成分を含む組成物C1を添加することにより得られるエマルション(E1)であり、組成物C1及びC2は互いに混和しない。
【0021】
本実施態様によれば、本発明の方法は、以下の工程:
a1)撹拌しつつ、架橋性組成物C2に少なくとも1種の活性成分を含む組成物C1を添加するに際し、組成物C2に分散した組成物C1の液滴を含むエマルション(E1)が得られる工程であって、組成物C1及びC2は互いに混和しない工程と;
a2)撹拌しつつ、組成物C3にエマルション(E1)を添加するに際し、組成物C3に分散した液滴を含むダブルエマルション(E’2)が得られる工程であって、組成物C2及びC3は互いに混和せず、
組成物C3の粘度は、25℃、10s-1のせん断速度において10000mPa.s超、かつ、25℃、100s-1~100000s-1のせん断速度において10000mPa.s未満である工程と;
b)エマルション(E’2)にせん断を適用するに際し、組成物C3に分散したサイズ制御された液滴を含むダブルエマルション(E’3)が得られる工程であって、適用されるせん断速度が100s-1~100000s-1である工程と;
c)組成物C2を重合するに際し、組成物C3に分散した固体マイクロカプセルが得られる工程とを含む。
【0022】
本実施態様によれば、本発明の方法は、したがってサイズ制御されたダブルエマルションの液滴(特に20μm未満)の群を工業スケールで製造することを可能にする。本発明の方法により得られる液滴のサイズの制御は、特に、連続相C3のレオロジー特性の制御による。
【0023】
本実施態様によれば、本発明の方法は、ダブルエマルションの中間相の重合工程の実施により、サイズ制御されたカプセルの製造を可能にする。この重合工程は、特に、カプセルの中間層の固化を可能にし、したがっていかなる合体も排除する。
【0024】
好ましくは、本発明の方法により得られるマイクロ粒子及びマイクロカプセルは、0.1μm~20μm、好ましくは1μm~20μmの(光学顕微鏡法、TEM又は光散乱法により測定される)平均直径を有する。
【0025】
工程a)
工程a)中、組成物C’2は組成物C3に添加され、この工程は撹拌しつつ実施され、このことは、組成物C’2及びC3の混合物を乳化させるために、組成物C’2が添加される間、組成物C3が、典型的には機械的にかき混ぜられることを意味する。
【0026】
組成物C3への組成物C’2の添加は、典型的には滴下により実施される。
【0027】
1つの実施態様によれば、組成物C’2は上記で定義されたエマルション(E1)であることができる。このエマルション(E1)は、以下に記載の工程a1)に従って調製される。
【0028】
工程a1)中、組成物C1は架橋性組成物C2に添加され、この工程は撹拌しつつ実施され、このことは、組成物C1及びC2の混合物を乳化させるために、組成物C1が添加される間、組成物C2が、典型的には機械的にかき混ぜられることを意味する。
【0029】
組成物C2への組成物C1の添加は、典型的には滴下により実施される。
【0030】
工程a1)中、組成物C1は、0℃~100℃、好ましくは10℃~80℃、好ましくは15℃~60℃の温度である。工程a1)中、組成物C2は、0℃~100℃、好ましくは10℃~80℃、好ましくは15℃~60℃の温度である。
【0031】
工程a1)の添加の条件下において、組成物C1及びC2は互いに混和せず、このことは、組成物C2に可溶化されることのできる組成物C1の量(質量)が、組成物C2の全質量に対して5%以下、好ましくは1%未満、好ましくは0.5%未満であること、及び組成物C1に可溶化されることのできる組成物C2の量(質量)が、組成物C1の全質量に対して5%以下、好ましくは1%未満、好ましくは0.5%未満であることを意味する。
【0032】
したがって、撹拌しながら組成物C1が組成物C2と接触すると、後者は液滴の形態で分散し、これは単一液滴と呼ばれる。
【0033】
組成物C1及びC2の非混和性により、組成物C1から組成物C2への活性成分のマイグレーションを避けることも可能となる。
【0034】
組成物C2は、撹拌されて組成物C2に分散した組成物C1の液滴を含むエマルションを形成する。このエマルションは、「単純エマルション」又はC1-in-C2エマルションとも呼ばれる。
【0035】
工程a1)を実施するために、エマルションを形成するのに通常用いられるいかなる種類の撹拌機も用いることが可能であり、例えば機械的撹拌機、静的乳化装置、超音波ホモジナイザー、メンブレンホモジナイザー若しくは高圧ホモジナイザー、コロイドミル、高せん断分散機、又は高速ホモジナイザー等を用いることができる。
【0036】
組成物C1
組成物C1は、少なくとも1種の活性成分Aを含む。本発明の方法において、この組成物C1は、本発明の方法中に形成される液滴内及びそのようにして得られる固体カプセル内での活性成分Aのキャリアとして働く。
【0037】
本発明の方法の第一の変形例によれば、組成物C1は単相である。すなわち、それは純粋な活性成分Aであるか、可溶化形態において活性成分Aを含む溶液である。
【0038】
1つの実施態様によれば、活性成分は組成物C1に可溶化されている。
【0039】
本変形例によれば、組成物C1は、典型的には水溶液、有機溶媒又は有機溶媒の混合物中の活性成分Aの溶液からなり、活性成分Aは、組成物C1の全質量に対して1%~99%の質量含有率で存在する。活性成分Aは、組成物C1の全質量に対して5%~95%、10%~90%、20%~80%、30%~70%、又は40%~60%の範囲の質量含有率で存在することができる。
【0040】
1つの実施態様によれば、組成物C1は、活性成分Aからなる。
【0041】
本発明の別の実施態様によれば、組成物C1は二相組成物であり、このことは、活性成分が組成物C1に液体形態又は固体形態で分散し、組成物C1に全体的に可溶化されていないことを意味する。
【0042】
1つの実施態様によれば、活性成分は組成物C1に固体粒子の形態で分散する。
【0043】
本実施態様によれば、組成物C1は、有機溶媒又は有機溶媒の混合物における活性成分の固体粒子の分散体からなることができる。
【0044】
本実施態様によれば、組成物C1は、水と任意選択的に親水性有機溶媒とを含む水相における活性成分の固体粒子の分散体からなることができる。
【0045】
用いられる活性成分は、例えば:
-ポリマー及びエラストマー配合物;ゴム、塗料、接着剤、密封剤、モルタル、ワニス又はコーティング剤の重合に用いられる架橋剤、硬化剤、有機又は金属触媒(白金、パラジウム、チタン、モリブデン、銅、亜鉛の有機金属又は無機金属錯体等);
-エラストマー、塗料、コーティング剤、接着剤、密封剤、モルタル又は紙の配合物用の染料又は顔料;
-洗剤製品等の洗浄剤、ホームケア製品、化粧品及びパーソナルケア製品、テキスタイル、塗料、コーティング剤用の香料(International Fragrance Association(IFRA)により規定された分子リスト、www.ifraorg.orgウェブサイトで入手可能である);
-食品化合物及び動物試料用の芳香剤、ビタミン、アミノ酸、タンパク質、脂質、プロバイオティクス、酸化防止剤、pH補正剤、防腐剤;
-洗浄剤、洗剤製品、化粧品及びパーソナルケア製品用の柔軟剤、コンディショナー。このように、使用可能な活性成分は、例えば米国特許第6335315号及び米国特許第5877145号に記載される。
-洗浄剤、洗剤製品及びホームケア製品用の変色防止剤(アンモニウム誘導体等)、消泡剤(アルコールエトキシレート、アルキルベンゼンスルホネート、ポリエチレンエトキシレート、アルキルエトキシサルフェート又はアルキルサルフェート等);
-洗浄剤、洗剤製品、化粧品及びパーソナルケア製品を意図した、色活性剤とも呼ばれる光沢剤(スチルベン誘導体、クマリン誘導体、ピラゾリン誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、又はナフタルイミド誘導体等);
-酵素、ビタミン、タンパク質、植物抽出物、皮膚軟化剤、殺菌剤(disinfecting agent)、抗菌剤、抗UV剤、化粧品及びテキスタイルに対するスキンケア製品を意図した薬剤等の生物学的に活性な化合物。これらの生物学的に活性な化合物としては、ビタミンA、B、C、D及びE、パラアミノ安息香酸、αヒドロキシ酸(グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸又はクエン酸等)、樟脳、セラミド、ポリフェノール(フラボノイド、フェノール酸、エラグ酸、トコフェロール、ユビキノール等)、ヒドロキノン、ヒアルロン酸、イソプロピルイソステアレート、イソプロピルパルミテート、オキシベンゾン、パンテノール、プロリン、レチノール、レチニルパルミテート、サリチル酸、ソルビン酸、ソルビトール、トリクロサン、チロシンが挙げられる;
-塗料及びコーティング剤用の殺菌剤(disinfecting agent)、抗菌剤、抗UV剤;
-農薬用の肥料、除草剤、殺虫剤(insecticide)、殺虫剤(pesticide)、殺菌剤(fungicide)、防虫剤又は消毒剤;
-プラスチック、コーティング、塗料及びテキスタイルにおいて用いられる難燃剤(テトラブロモビスフェノールA等の臭素化ポリオール、ハロゲン化又は非ハロゲン化有機リン化合物、塩素化化合物、三水和アルミニウム、酸化アンチモン、ホウ素酸亜鉛、赤リン、メラミン又は二水酸化マグネシウム等);
-塗料、コーティング及び湾曲した可撓性スクリーンを形成するポリマー材料に関するフォトニック結晶又はフォトクロモフォア;
-エネルギーの貯蔵が意図される、相変化を受けたときに熱を吸収するか戻すことのできる相変化材料(PCM)として当業者に知られている製品。PCMの例及びその応用は、Faridら、Energy Conversion and Management、2004、45(9-10)、1597-1615に記載されている。PCMの例として、リン酸アルミニウム、炭酸アンモニウム、塩化アンモニウム、炭酸セシウム、硫酸セシウム、クエン酸カルシウム、塩化カルシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、リン酸カルシウム、カルシウムサッカラート、硫酸カルシウム、リン酸セリウム、リン酸鉄、炭酸リチウム、硫酸リチウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化マンガン、硝酸マンガン、硫酸マンガン、酢酸カリウム、炭酸カリウム、塩化カリウム、リン酸カリウム、炭酸ルビジウム、硫酸ルビジウム、四ホウ酸二ナトリウム、酢酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、重硫酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、水酸化ナトリウム、硝酸ナトリウム、過炭酸ナトリウム、過硫酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、亜セレン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、テルル酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ストロンチウムヒドロホスフェート、酢酸亜鉛、塩化亜鉛、チオ硫酸ナトリウム、ワックスパラフィン系炭化水素、ポリエチレングリコールの溶融塩に言及することができる;
である。
【0046】
1つの実施態様によれば、組成物C2’は、上記で定義された組成物C2であることができる。
【0047】
本実施態様によれば、工程a)は、上記の工程a”)に対応する。
【0048】
工程a”)中、架橋性組成物C2は組成物C3に添加され、この工程は撹拌しつつ実施され、このことは、組成物C2及びC3の混合物を乳化させるために、組成物C2が添加される間、組成物C3が、典型的には機械的に撹拌されることを意味する。
【0049】
組成物C3への組成物C2の添加は、典型的には滴下により実施される。
【0050】
工程a”)中、組成物C2は、0℃~100℃、好ましくは10℃~80℃、好ましくは15℃~60℃の温度である。工程a”)中、組成物C3は、0℃~100℃、好ましくは10℃~80℃、好ましくは15℃~60℃の温度である。
【0051】
工程a”)の添加の条件下において、組成物C2及びC3は互いに混和せず、このことは、組成物C3に可溶化されることのできる組成物C2の量(質量)が、組成物C3の全質量に対して5%以下、好ましくは1%未満、好ましくは0.5%未満であること、及び組成物C2に可溶化されることのできる組成物C3の質量が、組成物C2の全質量に対して5%以下、好ましくは1%未満、好ましくは0.5%未満であることを意味する。
【0052】
したがって、撹拌しながら組成物C2が組成物C3と接触すると、後者は液滴の形態で分散し、これは単一液滴と呼ばれる。
【0053】
組成物C2及びC3の非混和性により、組成物C2から組成物C3への活性成分のマイグレーションを避けることも可能となる。
【0054】
組成物C3は、撹拌されて組成物C3に分散した組成物C2の液滴を含むエマルションを形成する。このエマルションは、「単純エマルション」又はC2-in-C3エマルションとも呼ばれる。
【0055】
工程a”)を実施するために、エマルションを形成するのに通常用いられるいかなる種類の撹拌機も用いることが可能であり、例えば超音波ホモジナイザー、メンブレンホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、コロイドミル、高せん断分散機、又は高速ホモジナイザー等を用いることができる。
【0056】
組成物C2
組成物C2は架橋性組成物であり、このことは、それが、本発明の固体マイクロカプセルの重合したエンベロープを形成するために、重合(架橋)して固体材料を与えることのできる組成物であることを意味する。
【0057】
本発明によれば、組成物C2は光架橋性組成物ではない。
【0058】
1つの実施態様によれば、組成物C2は、25℃、10-1のせん断速度において500mPa.s~100000mPa.sの粘度を有する液体である。
【0059】
粘度は、直径60mmかつ角度2°の円錐及び25℃に設定された温度制御セルを備えたHaake RheostressTM600レオメーターにより測定される。
【0060】
好ましくは、25℃、せん断速度10s-1における組成物C2の粘度は、1000mPa.s~50000mPa.s、好ましくは2000mPa.s~25000mPa.s、例えば3000mPa.s~15000mPa.sである。
【0061】
好ましくは、組成物C2の粘度は、組成物C1の粘度より高い。
【0062】
本実施態様によれば、活性成分の粘度又はその化学的特性にかかわらず、エマルション(E1)の液滴の不安定化速度は十分に遅く、エマルションが不安定化される前に、マイクロカプセルのエンベロープが工程d)中に重合することが可能である。完了すると、重合は、次いで熱力学的安定化をもたらす。
【0063】
したがって、組成物C2の比較的高い粘度は、工程a)の終わりにおいて得られるエマルション(E1)の安定性を確実にする。
【0064】
好ましくは、組成物C1とC2との間の界面張力は低い。典型的には、これらの界面張力は、0mN/m~50mN/m、好ましくは0mN/m~20mN/mで変化する。
【0065】
また、組成物C1とC2との間の低い界面張力により、有利には、工程a1)の終わりにおいて得られるエマルション(E1)の安定性を確実にすることが可能となる。
【0066】
1つの実施態様によれば、組成物C1の体積と組成物C2の体積との比は、1:10~10:1で変化する。好ましくは、この比は1:3~5:1、好ましくは1:3~3:1である。
【0067】
この比を適合して、重合したマイクロカプセルのエンベロープの厚さを制御することができる。
【0068】
1つの実施態様によれば、組成物C2は、少なくとも1種のモノマー又はポリマーと、少なくとも1種の架橋剤と、任意選択的に少なくとも1種の触媒とを含む。
【0069】
有利な実施態様によれば、組成物C2は光開始剤を含まない。
【0070】
1つの実施態様によれば、組成物C2は、組成物C2の全質量に対して50質量%~99質量%のモノマー、ポリマー、又はモノマー若しくはポリマーの混合物を含む。
【0071】
1つの実施態様によれば、組成物C2は、組成物C2の全質量に対して1質量%~20質量%の架橋剤又は架橋剤の混合物を含む。
【0072】
1つの実施態様によれば、組成物C2は、組成物C2の全質量に対して0.001質量%~5質量%の触媒又は触媒の混合物を含む。
【0073】
1つの実施態様によれば、組成物C2は、組成物C2の全質量に対して0.001質量%~70質量%の架橋剤を含む。
【0074】
本発明によれば、用語「モノマー」又は「ポリマー」は、単独又は他のモノマー若しくはオリゴマーとの組み合わせでの重合による固体材料の形成に適した任意の基本単位を意味する。
【0075】
これらのモノマーは、アクリレート、メタクリレート、ビニルエーテル、N-ビニルエーテル、メルカプトエステル、チオレン、シロキサン、エポキシ、オキセタン、ウレタン、イソシアネート及びペルオキシド官能基からなる群から選択される少なくとも1種の反応性官能基を含むモノマーから選択されることができる。
【0076】
特に、モノマーは、前述の反応性官能基の少なくとも1種を有し、かつ、第一級、第二級、及び第三級アルキルアミン官能基、第四級アミン官能基、及びサルフェート、スルホネート、ホスフェート、ホスホネート、カルボキシレート、ヒドロキシ、ハロゲンの官能基、及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の官能基を追加的に有するモノマーから選択されることができる。
【0077】
組成物C2において用いられるポリマーは、ポリエーテル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリアミド、ポリアセタール、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリスルフィド及びポリジメチルシロキサンから選択されることができ、当該ポリマーは、アクリレート、メタクリレート、ビニルエーテル、N-ビニルエーテル、メルカプトエステル、チオレン、シロキサン、エポキシ、オキセタン、ウレタン、イソシアネート及びペルオキシド官能基からなる群から選択される少なくとも1種の反応性官能基を追加的に有する。
【0078】
係るモノマー又はオリゴマーの例としては、以下に制限されるものではないが、以下のポリマー:ポリ(2-(1-ナフチルオキシ)-エチルアクリレート)、ポリ(2-(2-ナフチルオキシ)-エチルアクリレート)、ポリ(2-(2-ナフチルオキシ)-エチルメタクリレート)、ポリソルビトールジメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリ((2-(1-ナフチルオキシ)エタノール)、ポリ(2-(2-ナフチルオキシ)エタノール)、ポリ(1-クロロ)2,3-エポキシプロパン)、ポリ(n-ブチルイソシアネート)、ポリ(N-ビニルカルバゾール)、ポリ(N-ビニルピロリドン)、ポリ(p-ベンズアミド)、ポリ(p-クロロスチレン)、ポリ(p-メチルスチレン)、ポリ(p-フェニレンオキシド)、ポリ(p-フェニレンスルフィド)、ポリ(N-(メタクリロキシエチル)スクシンイミド)、ポリベンズイミダゾール、ポリブタジエン、ポリブチレンテレフタレート、ポリクロラール、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリヒドリドシルセスキオキサン、ポリ(m-フェニレンイソフタルアミド)、ポリ(メチル2-アクリルアミド-2-メトキシアセテート)、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸)、ポリ-モノ-ブチルマレエート、ポリブチルメタクリレート、ポリ(N-tert-ブチルメタクリルアミド)、ポリ(Nn-ブチルメタクリルアミド)、ポリシクロヘキシルメタクリルアミド、ポリ(m-キシレンビスアクリルアミド)2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、N,N-ジメチルメタクリルアミド)、ポリ(n-ブチルメタクリレート)、ポリ(シクロヘキシルメタクリレート)、ポリイソブチルメタクリレート、ポリ(4-シクロヘキシルスチレン)、ポリシクロール(cyclol)アクリレート、ポリシクロールメタクリレート、ポリジエチルエトキシメチレンマロネート、ポリ(2,2,2-トリフルオロエチルメタクリレート)、ポリ(1,1,1-トリメチロールプロパン)トリメタクリレート)、ポリメタクリレート、ポリ(N,N-ジメチルアニリン、ジヒドラジド)、ポリ(イソフタル酸ジヒドラジン)、イソフタルポリ酸、ポリジメチルベンジルケタール、エピクロロヒドリン、ポリ(エチル-3,3-ジエトキシアクリレート)、ポリ(エチル-3,3-ジメチルアクリレート)、ポリ(エチルビニルケトン)、ポリ(ビニルエチルケトン)、ポリ(ペンテン-3-オン)、ポリホルムアルデヒド、ポリ(ジアリルアセタール)、ポリフマロニトリル、ポリグリセリルプロポキシトリアクリレート、ポリグリセリルトリメタクリレート、ポリグリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ポリグリシジルアクリレート、ポリ(n-ヘプチルアクリレート)、ポリ(n-ヘプチルアクリル酸エステル)、ポリ(n-ヘプチルメタクリレート)、ポリ(3-ヒドロキシプロピオニトリル)、ポリ(2-ヒドロキシプロピルアクリレート)、ポリ(2-ヒドロキシプロピルメタクリレート)、ポリ(N-(メタクリロキシエチル)フタルイミド)、ポリ(1,9-ノナンジオールジアクリレート)、ポリ(1,9-ノナンジオールジメタクリレート)、ポリ(N-(n-プロピル)アクリルアミド)、ポリ(オルトアクリル酸)-フタル酸)、ポリ(イソフタル酸)、ポリ(1,4-ベンゼンジカルボン酸)、ポリ(1,3-ベンゼンジカルボン酸)、ポリ(フタル酸)、ポリ(モノ-2-アクリロキシエチルエステル)、テレフタルポリ酸、フタル酸ポリ無水物、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリイソプロピルアクリレート、ポリソルビトールペンタアクリレート、ポリビニルブロモアセテート、ポリクロロプレン、ポリ(ジ-n-ヘキシルシリレン)、ポリ(ジ-n-プロピルシロキサン)、ポリジメチルシリレン、ポリジフェニルシロキサン、ポリビニルプロピオネート、ポリビニルトリアセトキシシラン、ポリビニルトリス-tert-ブトキシシラン、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン-コ-酢酸ビニル、ポリ(ビスフェノール-Aポリスルホン)、ポリ(1,3-ジオキセパン)、ポリ(1,3-ジオキソラン)、ポリ(1,4-フェニレンビニレン)、ポリ(2,6-ジメチル-1A-フェニレンオキシド)、ポリ(4-ヒドロキシ安息香酸)、ポリ(4-メチルペンテン-1)、ポリ(4-ビニルピリジン)、ポリメチルアクリロニトリル、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリメチルシルメチレン、ポリメチルシルセスキオキサン、ポリ(フェニルシルセスキオキサン)、ポリ(ピロメリットイミド-1,4-ジフェニルエーテル)、ポリテトラヒドロフラン、ポリチオフェン、ポリ(トリメチレンオキシド)、ポリアクリロニトリル、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン-コ-酢酸ビニル、ポリ(パーフルオロエチレンプロピレン)、ポリ(パーフルオロアルコキシルアルカン)、又はポリ(スチレン-アクリロニトリル)が挙げられる。
【0079】
「架橋剤」は、重合中に、モノマー、ポリマー、又はモノマー若しくはポリマーの混合物を架橋することができる少なくとも2つの反応性官能基を有する化合物を意味する。
【0080】
架橋剤は、アクリレート、メタクリレート、ビニルエーテル、N-ビニルエーテル、メルカプトエステル、チオレン、シロキサン、エポキシ、オキセタン、ウレタン、イソシアネート及びペルオキシド官能基からなる群から選択される少なくとも2つの官能基を有する分子から選択されることができる。
【0081】
架橋剤として、特に:
-1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,9-ノナンジオールジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、2,2-ビス(4)メタクリロキシフェニル)プロパン等のジアクリレート、1,3-ブタンジオールジメタクリレート、1,10-デカンジオールジメタクリレート、ビス(2-メタクリロキシエチル)N,N’-1,9-ノニレンビスカルバメート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、1,5-ペンタンジオールジメタクリレート、1,4-フェニレンジアクリレート、アリルメタクリレート、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシ-3-メタクリロキシプロポキシ)フェニル]プロパン、テトラエチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、N,N-ジアリルアクリルアミド、2,2-ビス[4-(2-アクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン、グリシジルメタクリレート;
-ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、1,1,1-トリメチロールプロパントリアクリレート、1,1,1-トリメチロールプロパントリメタクリレート、エチレンジアミンテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等の多官能アクリレート;
-プロパルギルメタクリレート、2-シアノエチルアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、N-アクリロキシスクシンイミド、N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、N-(3-アミノプロピル)メタクリルアミド塩酸塩、N-(t-BOC-アミノプロピル)メタクリルアミド、2-アミノエチルメタクリレート塩酸塩、モノアクリロキシエチルホスフェート、o-ニトロベンジルメタクリレート、アクリル酸無水物、2-(tert-ブチルアミノ)エチルメタクリレート、N,N-ジアリルアクリルアミド、グリシジルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、4-(2-アクリロキシエトキシ)-2-ヒドロキシベンゾフェノン、N-(フタルイミドメチル)アクリルアミド、シンナミルメタクリレート等の別の反応性官能基をさらに有するアクリレートに言及することができる。
【0082】
触媒は、有機、金属、有機金属又は無機金属触媒から選択されることができる。
【0083】
触媒として白金、パラジウム、チタン、モリブデン、銅、亜鉛の有機金属又は無機金属錯体に言及することができる。
【0084】
1つの実施態様によれば、組成物C2は、マイクロカプセルエンベロープの特性を改善し、及び/またはマイクロカプセルエンベロープに新たな特性を与えることのできる追加のモノマー又はポリマーをさらに含むことができる。
【0085】
これらの追加のモノマー又はポリマーとして、pH、温度、UV又はIRに感受性のある基を有するモノマー又はポリマーに言及することができる。
【0086】
これらの追加のモノマー又はポリマーは、固体マイクロカプセルの破裂、及びその後のpH、温度、UV又はIUによる刺激の後のその含有物の放出を誘起することができる。
【0087】
これらの追加のモノマー又はポリマーは、アクリレート、メタクリレート、ビニルエーテル、N-ビニルエーテル、メルカプトエステル、チオレン、シロキサン、エポキシ、オキセタン及びウレタン官能基、イソシアネート及びペルオキシドからなる群から選択される少なくとも1種の反応性官能基を有し、以下の基:
-フッ素化基等の疎水性基、例えばトリフルオロエチルメタクリレート、トリフルオロエチルアクリレート、テトラフルオロプロピルメタクリレート、ペンタフルオロプロピルアクリレート、ヘキサフルオロブチルアクリレート、又はフルオロフェニルイソシアネート;
-第一級、第二級又は第三級アミン、カルボン酸、ホスフェート、サルフェート、ニトレート又はカーボネート基等のpH感受性基;
-アゾベンゼン、スピロピラン、2-ジアゾ-1,2-ナフトキノン、o-ニトロベンジル、チオール、又は6-ニトロ-ベラトロイルオキシカルボニル等のUV感受性又はUV開裂可能な基(又はフォトクロミック基)、例えばポリエチレンオキシド)-ブロック-ポリ(2-ニトロベンジルメタクリレート)、及び(特に、Liuら、Polymer Chemistry2013、4、3431-3443に記載の)他のブロックコポリマー;
-о-ニトロベンジル又は2-ジアゾ-1,2-ナフトキノン等のIR感受性又はIR開裂可能な基、例えばLiuらPolymer Chemistry2013、4、3431-3443に記載のポリマー;及び
-ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)等の温度感受性基
のうちの1種をさらに有するモノマー又はポリマーから選択されることができる。
【0088】
工程a2)
工程a2)中、工程a’)で得られたエマルション(E1)は組成物C3に添加され、この工程は撹拌しつつ実施され、このことは、組成物C1、C2及びC3の混合物を乳化させるために、エマルション(E1)が添加される間、組成物C3が、典型的には機械的にかき混ぜられることを意味する。
【0089】
組成物C3へのエマルション(E1)の添加は、典型的には滴下により実施される。
【0090】
工程a2)中、エマルション(E1)は、15℃~30℃の温度である。工程a2)中、組成物C3は、15℃~30℃の温度である。
【0091】
工程a2)の添加の条件下において、組成物C2及びC3は互いに混和せず、このことは、組成物C3に可溶化されることのできる組成物C2の量(質量)が、組成物C3の全質量に対して5%以下、好ましくは1%未満、好ましくは0.5%未満であること、及び組成物C2に可溶化されることのできる組成物C3の(質量)が、組成物C2の全質量に対して5%以下、好ましくは1%未満、好ましくは0.5%未満であることを意味する。
【0092】
したがって、撹拌しながらエマルション(E1)が組成物C3と接触すると、後者は二重液滴と呼ばれる液滴の形態で分散し、連続相C3におけるこれらのエマルション液滴(E1)の分散体は、エマルション(E2’)と呼ばれる。
【0093】
典型的には、工程a2)中に形成される二重液滴は、単一液滴を完全に包み込む組成物C2エンベロープにより取り囲まれた上記の組成物C1の単一液滴に対応する。
【0094】
工程a2)中に形成される二重液滴は、少なくとも2つの組成物C1の単一液滴を含むこともでき、単一液滴は、単一液滴を完全に包み込む組成物C2エンベロープにより取り囲まれる。
【0095】
したがって、二重液滴は、組成物C1の1つ又はそれより多くの単一液滴からなるコアと、コアを取り囲む組成物C2の層とを含む。
【0096】
得られるエマルション(E’2)は、概してダブル多分散エマルション(C1-in-C2-in-C3エマルション、又はC1/C2/C3エマルション)であり、それは、二重液滴が、エマルション(E2’)において明確なサイズ分布を有さないことを意味する。
【0097】
組成物C2及びC3の非混和性により、組成物C2の層及び組成物C3間の混合を避けることが可能となり、したがってエマルション(E’2)の安定性を確実にする。
【0098】
組成物C2及びC3の非混和性により、コア液滴から組成物C3への組成物C1の活性成分のマイグレーションを抑制することも可能となる。
【0099】
工程a2)を実施するために、エマルションを形成するのに通常用いられるいかなる種類の撹拌機も用いることが可能であり、例えば超音波ホモジナイザー、メンブレンホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、コロイドミル、高せん断分散機、又は高速ホモジナイザー等を用いることができる。
【0100】
組成物C3
本発明によれば、25℃における組成物C3の粘度は、10-1のせん断速度において10000mPa.s超であり、c’)が実施されるせん断速度、すなわち100s-1~100000s-1のせん断速度において10000mPa.s未満である。
【0101】
組成物C3をゲル化組成物と呼ぶこともできる。好ましくは、25℃における組成物C3の粘度は、10-1のせん断速度において15000mPa.s~100000mPa.sであり、c’)が実施されるせん断速度、すなわち100s-1~100000s-1のせん断速度において5000mPa.s未満である。
【0102】
好ましくは、組成物C2及びC3間の界面張力は低い。また、組成物C2及びC3間の低い界面張力は、有利には、エマルション(E2)又は(E’2)の安定性を確実にすることを可能にすることもできる。
【0103】
1つの実施態様によれば、エマルション(E1)の体積と組成物C3の体積との比は、1:10~10:1で変化する。好ましくは、この比は1:9~3:1、好ましくは1:9~1:1である。
【0104】
この比を適合して、得られる重合したマイクロカプセルの群のうちのカプセル化された活性成分の総量を制御することができる。
【0105】
1つの実施態様によれば、組成物C3は、少なくとも1種の分岐鎖ポリマー、好ましくは5000g.mоl-1超、好ましくは10000g.mоl-1~500000g.mоl-1、例えば50000g.mоl-1~300000g.mоl-1の分子量を有する少なくとも1種の分岐鎖ポリマーを含む。
【0106】
「分岐鎖ポリマー」は、その2つの末端基間に少なくとも1つの分岐点を有するポリマーを意味し、分岐点は、分岐鎖又はぶら下げ鎖とも呼ばれる側鎖が固定されている鎖の点である。
【0107】
分岐鎖ポリマーとして、例えばグラフト若しくはくし型ポリマー、又は星形ポリマー又はデンドリマーに言及することができる。
【0108】
1つの実施態様によれば、組成物C3は、5000g/mоl超の分子量を有する少なくとも1種のポリマーを含む。
【0109】
組成物C3において用いることのできるポリマーとして、以下の化合物:
-セルロースエーテル:メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース又はメチルヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース誘導体;
-ポリアクリル酸(PAA)、ポリメタクリル酸(PMAA)、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)(pHEMA)、ポリ(N-2-ヒドロキシプロピルメタクリレート)(pHPMA)等のポリアクリレート(カルボマーとも呼ばれる);
-ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAM)等のポリアクリルアミド;
-ポリビニルピロリドン(PVP)及びその誘導体;
-ポリビニルアルコール(PVA)及びその誘導体;
-ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)及びその誘導体、たとえばポリ(エチレングリコール)アクリレート/メタクリレート、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート/ジメタクリレート、ポリプロピレンカーボネート;
-カラギーナン、イナゴマメガム又はタラガム、デキストラン、キサンタンガム、キトサン、アガロース、ヒアルロン酸、ジェランガム、グアーガム、アラビアゴム、トラガカントゴム、デュータン(diutane)ガム、オーツガム、カラヤガム、ガティガム、カードランガム、ペクチン、こんにゃくガム等の多糖類;
-ゼラチン、コラーゲン、フィブリン、ポリリシン、アルブミン、カゼイン等のタンパク質誘導体;
-ポリジメチルシロキサン(ジメチコンとも呼ばれる)、アルキルシリコーン、アリールシリコーン、アルキルアリールシリコーン、ポリエチレングリコールジメチコン、ポリプロピレングリコールジメチコン等のシリコーン誘導体;
-ジエステルワックス(アルカンジオールジエステル、ヒドロキシル酸ジエステル)、トリエステルワックス(トリアシルグリセロール、アルカン-1,2-ジオール、ω-ヒドロキシ酸及び脂肪酸のトリエステル、ヒドロキシマロン酸、脂肪酸及びアルコールのエステル、ヒドロキシル酸、脂肪酸及び脂肪アルコールのトリエステル、脂肪酸、ヒドロキシル酸及びジオールのトリエステル)、及びポリエステルワックス(脂肪酸のポリエステル)等のワックス。本発明の文脈においてワックスとして用いることのできる脂肪酸エステルは、例えばパルミチン酸セチル、オクタン酸セチル、ラウリン酸セチル、乳酸セチル、イソノナン酸セチル及びステアリン酸セチル、ステアリン酸ステアリル、ステアリン酸ミリスチル、ミリスチン酸セチル、ステアリン酸イソセチル、グリセリルトリミリステート、グリセリルトリパルミテート、グリセリルモノステアレート、又はセチルグリセリルパルミテートである。;
-セロチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ジヒドロキシステアリン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、アラキン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ペンタデカン酸、マルガリン酸、ノナデシル酸、ヘンイコシル(henicosylic)酸、トリコシル酸、ペンタコシル酸、ヘプタコシル酸、モンタン酸又はノナコシル酸等のワックスとして用いることができる脂肪酸;
-脂肪酸塩、特にステアリン酸アルミニウム、ヒドロキシルアルミニウムビス(2-エチルヘキサノエート)等の脂肪酸アルミニウム塩;
-異性体ホホバ油;
-水素化ひまわり油;
-水素化ココナッツオイル;
-水素化ラノリン油;
-ヒマシ油及びその誘導体、特に修飾水素化ヒマシ油又は脂肪族アルコールによりヒマシ油のエステル化をすることにより得られる化合物;
-ポリウレタン及びその誘導体;
-スチレンブタジエン等のスチレン系ポリマー;及び
-ポリイソブテン等のポリオレフィン
に言及することができ、これらは単独又は混合して用いることができる。
【0110】
1つの実施態様によれば、組成物C3は、クレイ、シリカ及びシリケート等の固体粒子を含む。
【0111】
組成物C3において用いることのできる固体粒子として、クレイ及びシリケート(特に(層状シリカとしても知られている)フィロシリケートのカテゴリーに属するシリケート)に言及することができる。本発明の文脈において用いることのできるシリケートの例として、ベントナイト、ヘクトライト、アタパルジャイト、セピオライト、モンモリロナイト、サポナイト、ソーコナイト、ノントロナイト、カオリナイト、タルク、セピオライト、チョークに言及することができる。ヒュームド合成シリカも用いることができる。上述のクレイ、シリケート及びシリカは、有利には、ポリエーテル、エトキシル化アミド、四級アンモニウム塩、長鎖ジアミン、長鎖エステル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の有機分子により修飾されることができる。
【0112】
これらの粒子は単独又は混合して用いることができる。
【0113】
1つの実施態様によれば、組成物C3は、5000g/mоl超の分子量を有する少なくとも1種のポリマーと、固体粒子とを含む。上述の化合物のいかなる混合物も用いることができる。
【0114】
工程b)
工程b)において、連続相において分散した多分散液滴からなるエマルション(E2)又はエマルション(E’2)は、せん断、例えば混合機において、100s-1~100000s-1のせん断速度のせん断に供される。
【0115】
1つの実施態様によれば、工程b)において適用されるせん断速度は、100s-1~50000s-1である。
【0116】
好ましくは、工程b)において適用されるせん断速度は、1000s-1~20000s-1である。
【0117】
工程b)中、エマルション(E2)又は(E’2)は混合機に導入され、次いでせん断に供され、第三のエマルション、すなわちそれぞれエマルション(E3)又は(E’3)の形成がもたらされる。
【0118】
組成物C3の粘度は、工程b)が実施されるせん断速度にて10000mPa.s未満であり、任意の種類のエマルション撹拌機を用いてエマルション(E2)又は(E’2)を容易に混合することができる。したがって、工程b)を実施するために、エマルションを形成するのに通常用いられるいかなる種類の撹拌機も用いることが可能であり、例えば機械的撹拌機、静的乳化装置、超音波ホモジナイザー、メンブレンホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、コロイドミル、高せん断分散機、又は高速ホモジナイザー等を用いることができる。
【0119】
エマルション(E3)又は(E’3)は、それぞれエマルション(E2)又は(E’2)と化学的に同一であるが、それは、単分散液滴からなり、(E2)又は(E’2)のような多分散ではない。
【0120】
典型的には、エマルション(E’3)は、組成物C1の1つ又はそれより多くの単一液滴からなるコアと、コアを取り囲む組成物C2の層とを含む二重液滴の分散体からなり、二重液滴は組成物C3に分散している。
【0121】
エマルション(E2)(又は(E’2))とエマルション(E3)(又は(E’3))との違いは、液滴のサイズ変化である:エマルション(E2)(又は(E’2))の液滴は、サイズにおいて多分散であり、一方でエマルション(E3)(又は(E’3))の液滴は、工程c)中に起こるフラグメンテーションメカニズムのために単分散である。
【0122】
高いせん断応力のみが適用された場合、エマルション(E2)(又は(E’2))の液滴は、微粒子及び単分散エマルション液滴(E3)(又は(E’3))に効果的にフラグメンテーション化されることができない。
【0123】
エマルション(E2)(又は(E’2))の液滴に適用されるせん断応力σは、工程c)中のそのかき混ぜ中に、エマルションに適用される巨視的せん断により生じる液滴の単位面積当たりの接線力として定義される。
【0124】
工程c)中のその撹拌中にエマルション(E2)(又は(E’2))に適用されるせん断応力σ(Paで表される)、組成物C3の粘度η(Pa.sで表される)及びせん断速度γ(s-1で表される)は、以下の式:
σ=ηγ
により関係づけられる。したがって、組成物C3の粘度と混合機により適用されるせん断との組み合わせにより、エマルション液滴(E2)(又は(E’2))に高いせん断応力を適用することが可能となり、したがってそれを単分散液滴に破壊する。
【0125】
工程c)
工程c)は、エマルション(E3)(又は(E’3))を重合に供することからなり、それは、組成物C2の重合を可能にする。
【0126】
本発明の1つの実施態様によれば、工程c)中、架橋性組成物C2からなる単一エマルション液滴(E3)は架橋され、したがって粘弾性ポリマーマイクロ粒子に変換される。
【0127】
別の実施態様によれば、工程c)中、架橋性組成物C2で構成されるエマルション(E’3)二重液滴のエンベロープは架橋され、したがって粘弾性ポリマーエンベロープに変換され、機械的応力なしでのその放出に対して活性成分をカプセル化し、保護する。
【0128】
工程c)中、エマルション(E3)(又は(E’3))は、最大100時間維持されることができる。この時間の間に、当業者によく知られている多くのエマルションの不安定化現象、たとえば合体、熟成、沈降又はクリーム化が、エマルション(E3)(又は(E’3))を再び多分散にする場合がある。本発明の重要な特徴は、工程c)の継続時間を通して、これらの現象を抑制することである。実際、組成物C3の粘度が、せん断速度10s-1において10000mPa.s超であるため、エマルション液滴(E3)又は(E’3)の移動性は非常に大きく低減され、エマルションの不安定化速度は、工程c)の継続時間に対して非常に遅い。
【0129】
したがって、せん断速度10s-1における組成物C3の非常に高い粘度は、工程c)が完了するまでのエマルション(E3)又は(E’3)の安定性を確実にする。
【0130】
本発明によれば、用語「重合」は、光源に曝露されることにより開始される必要のない任意の重合を包含する。特に、本発明による重合は、光開始ではない。
【0131】
本発明による重合は、例えば、熱への曝露により開始させることができ(熱開始)、又は単に試薬を互いに接触させること、若しくは単に試薬を触媒に接触させることにより開始させることができる。
【0132】
1つの実施態様によれば、本発明の方法は、UV光源へ曝露する工程を含まない。
【0133】
1つの実施態様によれば、重合工程c)は、光重合工程ではない。
【0134】
1つの実施態様によれば、組成物C2の重合工程c)は、8時間~100時間の期間実施される。
【0135】
1つの実施態様によれば、組成物C2の重合工程c)は、20℃~80℃の温度にて実施される。
【0136】
好ましくは、組成物C2の重合工程c)は、8時間~100時間の期間、20℃~80℃の温度にて実施される。
【0137】
組成物C3に分散したマイクロ粒子又は固体マイクロカプセルを含む、工程c)の終わりに得られる組成物は、使用する準備ができており、洗浄されることなく、又はさらなる処理なしで用いることができる。
【0138】
このようにして得られるマイクロカプセルのエンベロープの厚さは、典型的には10nm~2.5μm、好ましくは100nm~1000nmである。
【0139】
1つの実施態様によれば、工程c)の終わりにおいて得られるマイクロ粒子又は固体マイクロカプセルは、水及び/又は界面活性剤を含まない。
【0140】
本発明の方法は、記載のいずれの工程においても水を要求しないという利点を有する。本発明の方法は、したがって水に敏感な化合物をカプセル化することを可能にする。
【0141】
本発明の方法は、記載のいずれの工程においても界面活性剤を要求しないという利点を有する。本発明の方法は、したがって添加剤の存在を低減することを可能にし、これは、活性成分の放出後に得られる最終生成物の特性を改変することができる。
【0142】
例
例1:固体マイクロ粒子の調製
この例は以下を示す:(i)20μmより小さい液滴を製造し、次いで48時間エマルションの不安定化を防止することを可能にするゲル化組成物C3の使用;(ii)48時間後に架橋されたマイクロ粒子が得られること。
【0143】
C’2及びC3の組成物:
-組成物C’2は、ダウ コーニングにより製造された二成分Sylgard184キットにより調製された重合性PDMS調製物である。キットの成分#1は、以下の製品を含む(ダウ コーニングにより提供されたデータ):
・55.0%~75.0%のジメチル、メチル水素シロキサン、
・15.0%~35.0%のジメチルシロキサン、ジメチルビニル終端、
・10.0%~30.0%のジメチルビニル化及びトリメチル化シリカ、
・1.0%~5.0%のテトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン、0.10%未満のエチルベンゼン。
【0144】
キットの成分#2は、以下の製品を含む(ダウ コーニングにより提供されたデータ):
・200ppm未満の白金錯体、
・55.0~75.0%のジメチルシロキサン、ジメチルビニル終端、
・30.0~50.0%のジメチルビニル化及びトリメチル化シリカ、
・1.0%未満のテトラ(トリメチルシロキシ)シラン、
・0.5%のキシレン、
・0.2%のエチルベンゼン。
【0145】
このキットは、本発明の意味内において、幾つかのポリマー、幾つかの架橋剤、及び触媒の混合物と考えることができる。
【0146】
-組成物C’2は、15%の成分1と、85%の成分2とを含む。
-組成物C3は、蒸留水中の4質量%のカルボマーTego340FD(Evonik、エッセン、ドイツ)の溶液である。溶液は、プロペラ撹拌機を用いて20分間2000rpmにてかき混ぜられる。次いで2M水酸化ナトリウム溶液によりpHが6に調節される。10s-1におけるC3組成物の粘度は、52000mPa.sである。
【0147】
マイクロ粒子の製造
工程a”):500rpmにて撹拌しつつ、比C’2:C3=10:90(質量)になるまで組成物C’2を組成物C3に滴下する。この工程に用いられる撹拌機は、直径3cmの解膠プロペラを備えた機械的攪拌機(Heidolph RZR 2021)である。
【0148】
工程b):前記工程において得られたエマルション(E2)をTSR33により製造されたCouette型混合機に導入する。この混合機は、2つの同心円状シリンダーからなり、一方は可動式で他方は固定式であり、100μmの間隔で隔てられている。可動式シリンダーの回転により、間隔に含まれる全てのエマルションに均一なせん断を適用することが可能となる。エマルション(E2)は、1000s-1のせん断に供される。このせん断速度において、C3の粘度はわずか2500mPa.sであり、エマルション(E2)が混合機内部を容易に通過することが可能である。
【0149】
工程c):このようにして得られたエマルション(E3)を48時間静置して、粒子を重合させる。
【0150】
粒子は、工程c)の前後に干渉コントラスト光学顕微鏡法により画像化される。Image Jソフトウェアにより画像分析により実施された画像分析により、サイズ分布を得ることが可能となる。
図1及び2は、得られたカプセルの、本発明の方法の異なるステージにおけるサイズ分布を示す。
【0151】
工程c)の前に、エマルション液滴(E3)は8μmの平均サイズを有し、そのサイズ分布の幅は、5μmの半値幅(単分散性を評価する簡易な方法と考えられる)を有する(
図1)。工程c)の後、重合した粒子は8μmの平均サイズを有し、そのサイズ分布の幅は、5μmの半値幅を有する(
図2)。
【0152】
したがって、サイズ分布は48時間の重合の前後で同じである:エマルション(E3)は、組成物C3の高い粘度のために、いかなる不安定化も受けていなかった。
【0153】
例2:固体マイクロカプセルの調製
この例は以下を示す:(i)せん断工程の終わりに得られる二重液滴を不安定化なく48時間静置させるためのゲル化組成物C3の使用;(ii)48時間後に架橋されたカプセルが得られること。
【0154】
C1、C2及びC3の組成物:
-組成物C1は、Aerosil816(ドイツ、エッセン)(活性成分)を4質量%含むパラフィンオイル(Sigma、St.Louis、MS)の混合物である。
-組成物C2は、Dow Corning Sylgard184二成分キットにより調製された重合性PDMS調製物である。組成物C2は、30%の成分1と70%の成分2とを含む。
-組成物C3は、蒸留水中の4質量%のカルボマーTego340FD(Evonik、エッセン、ドイツ)の溶液である。溶液は、プロペラ撹拌機を用いて20分間2000rpmにて撹拌される。次いで2M水酸化ナトリウム溶液によりpHが6に調節される。10s-1におけるC3組成物の粘度は、52000mPa.sである。
【0155】
マイクロカプセルの製造
直径3cmの解膠撹拌プロペラを備えた機械的撹拌機(Heidolph RZR 2021)を用いて、全ての乳化工程を実施する。
【0156】
工程a1):200rpmにて撹拌しつつ、比C1:C2=20:80(質量)になるまで組成物C1を組成物C2に滴下する。次いで、200rpmにて30分間撹拌を維持する。
【0157】
工程a2):このようにして得られたエマルション(E1)を、500rpmにて撹拌しつつ、比E1:C3=10:90(質量)になるまで組成物C3に滴下する。
【0158】
工程b):このようにして得られたエマルション(E2)を500rpmにて20分間撹拌する。これらの条件下で、エマルション(E2)に適用されたせん断は、非常に小さく制御されているものの、500s-1未満と見積もることができる(計算の詳細は、Metzner AB、Otto RE.of non-Newtonian fluids AICHE J(1957)3:3-10、Wu,Jら、Estimate of agitator flow shear rate、AIChE J(2006)52:2323-2332を参照)。
【0159】
工程c):このようにして得られたエマルション(E3)を48時間撹拌することなく静置して、カプセルを重合させる。
【0160】
図3~5は、製造の異なる段階において取得された干渉コントラスト顕微鏡法写真を示す。
【0161】
図3は、工程b)の後のダブルエマルション液滴(E3)を示す。
【0162】
【0163】
図5は、スライドと顕微鏡スライドとの間で機械的にせん断を受け、互いにこすられた後に撮像された重合したカプセルを示す。カプセルは、この工程の後に傷がなく、有効に重合されていることを示す。
【0164】
Image Jソフトウェアにより実施される画像分析により、製造の異なる段階におけるカプセルのサイズ分布を得ることが可能となる。工程b)の後、二重液滴は6.0μmの平均サイズを有し、そのサイズ分布の幅は、5.5μmの半値幅(単分散性を評価する簡易な方法と考えられる)を有する。工程c)の後、重合したカプセルは5.8μmの平均サイズを有し、そのサイズ分布の幅は、5.0μmの半値幅を有する。したがって、サイズ分布は48時間の重合の前後で同じである:エマルション(E3)は、組成物C3の高い粘度のために、いかなる不安定化も受けていなかった。
【0165】
例3:本発明による固体マイクロ粒子の調製
この例は以下を示す:(i)20μmより小さい液滴を製造し、次いで48時間エマルションの不安定化を防止することを可能にする本発明の意味内のゲル組成物C3の使用;(ii)48時間後に架橋されたマイクロ粒子が得られること。
【0166】
C’2及びC3の組成物:
-C’2組成物は、Dow Corning Sylgard184二成分キットにより調製された重合性PDMS調製物である。組成物C’2は、15%の成分1と85%の成分2とを含む。
-組成物C3は、10質量%のアルギン酸塩の溶液である。C3組成物の粘度は、10s-1において16980mPa.sであり、100s-1において6670mPa.sである。この組成物C3は、本発明の意図においてゲル状である。
【0167】
マイクロ粒子の製造
工程a”):500rpmにて撹拌しつつ、比C’2:C3=10:90(質量)になるまで組成物C’2を組成物C3に滴下する。この工程に用いられる撹拌機は、直径3cmの解膠プロペラを備えた機械的撹拌機(Heidolph RZR 2021)である。
【0168】
工程b):前記工程において得られたエマルション(E2)を500rpmにて10分間撹拌する。
【0169】
工程c):このようにして得られたエマルション(E3)を48時間静置して、粒子を重合させる。
【0170】
粒子は、工程c)の前後に干渉コントラスト光学顕微鏡法により画像化される。Image Jソフトウェアにより画像分析により実施された画像分析により、サイズ分布を得ることが可能となる。
【0171】
工程c)の前に、エマルション液滴(E3)は6.5μmの平均サイズを有し、そのサイズ分布の幅は、3μmの半値幅を有する。工程c)の後、重合した粒子は7μmの平均サイズを有し、そのサイズ分布の幅は、3μmの半値幅を有する。
【0172】
したがって、サイズ分布は48時間の重合の前後で同じである:エマルション(E3)は、組成物C3の高い粘度のために、いかなる不安定化も受けていなかった。
【0173】
例4(比較):固体マイクロ粒子の調製
この例は、本発明の意味内のゲル化されていない組成物C3の使用により、48時間のエマルションの不安定化を防止することが可能とならないことを示す。
【0174】
C’2及びC3の組成物:
-C’2組成物は、Dow Corning Sylgard184二成分キットにより調製された重合性PDMS調製物である。組成物C’2は、15%の成分1と85%の成分2とを含む。
-組成物C3は、5質量%のアルギン酸塩の溶液である。C3組成物の粘度は、10s-1において1340mPa.sであり、100s-1において890mPa.sである。この組成物C3は、本発明の意図においてゲル状ではない。
【0175】
マイクロ粒子の製造
工程a”):500rpmにて撹拌しつつ、比C’2:C3=10:90(質量)になるまで組成物C’2を組成物C3に滴下する。この工程に用いられる撹拌機は、直径3cmの解膠プロペラを備えた機械的撹拌機(Heidolph RZR 2021)である。
【0176】
工程b):前記工程において得られたエマルション(E2)を500rpmにて10分間撹拌する。
【0177】
工程c):このようにして得られたエマルション(E3)を48時間静置して、粒子を重合させる。
【0178】
粒子は、工程c)の前後に干渉コントラスト光学顕微鏡法により画像化される。Image Jソフトウェアにより画像分析により実施された画像分析により、サイズ分布を得ることが可能となる。
【0179】
工程c)の前に、エマルション液滴(E3)は15μmの平均サイズを有し、そのサイズ分布の幅は、11μmの半値幅を有する。工程c)の後に、重合した粒子は31μmの平均サイズを有し、そのサイズ分布の幅は、12μmの半値幅を有する。
【0180】
したがって、エマルション(E3)は、C3の不十分な特性のために、大きな不安定化を受けた。
本開示は以下も包含する。
[1]
a)撹拌しつつ、組成物C3に組成物C’2を添加するに際し、組成物C3に分散した組成物C’2の液滴を含むエマルション(E2)が得られる工程であって、前記組成物C’2及びC3は互いに混和せず、
前記組成物C’2は、架橋性単相組成物C2、又は架橋性ポリマー組成物C2に分散した少なくとも1種の活性成分を含む組成物C1の液滴を含むエマルション(E1)であり、前記組成物C1及びC2は互いに混和せず、
組成物C3の粘度は、25℃、10s
-1
のせん断速度において10000mPa.s超、かつ、25℃、100s
-1
~100000s
-1
のせん断速度において10000mPa.s未満である工程と;
b)前記エマルション(E2)にせん断を適用するに際し、前記組成物C3に分散した組成物C’2のサイズ制御された液滴を含むエマルション(E3)が得られる工程であって、適用されるせん断速度が100s
-1
~100000s
-1
である工程と;
c)前記組成物C’2を重合するに際し、前記組成物C3に分散した固体マイクロカプセルが得られる工程と
を含む固体マイクロカプセルの製造方法。
[2]
前記組成物C’2が、ポリマー組成物C2に、少なくとも1種の活性成分を含む組成物C1を撹拌しつつ添加することにより得られたエマルション(E1)であり、前記組成物C1及びC2は互いに非混和性である、上記態様1に記載の方法。
[3]
a1)撹拌しつつ、ポリマー組成物C2に少なくとも1種の活性成分を含む組成物C1を添加するに際し、組成物C2に分散した組成物C1の液滴を含むエマルション(E1)が得られる工程であって、前記組成物C1及びC2は互いに混和しない工程と;
a2)撹拌しつつ、組成物C3に前記エマルション(E1)を添加するに際し、前記組成物C3に分散した液滴を含むダブルエマルション(E’2)が得られる工程であって、前記組成物C2及びC3は互いに混和せず、
組成物C3の粘度は、25℃、10s
-1
のせん断速度において10000mPa.s超、かつ、25℃、100s
-1
~100000s
-1
のせん断速度において10000mPa.s未満である工程と;
b)前記エマルション(E’2)にせん断を適用するに際し、前記組成物C3に分散したサイズ制御された液滴を含むダブルエマルション(E’3)が得られる工程であって、適用されるせん断速度が100s
-1
~100000s
-1
である工程と;
c)前記組成物C2を重合するに際し、前記組成物C3に分散した固体マイクロカプセルが得られる工程とを含む、上記態様2に記載の方法。
[4]
前記組成物C2が、25℃において500mPa.s~100000mPa.sの粘度を有する液体である、上記態様1~3のいずれかに記載の方法。
[5]
前記組成物C2が、少なくとも1種のモノマー又はポリマーと、少なくとも1種の架橋剤と、任意選択的に少なくとも1種の触媒とを含む、上記態様1~4のいずれかに記載の方法。
[6]
前記組成物C2が、光開始剤を含まない、上記態様1~5のいずれかに記載の方法。
[7]
前記組成物C2が、前記組成物の全質量に対して0.001質量%~70質量%の架橋剤を含む、上記態様5又は6に記載の方法。
[8]
前記活性成分が、前記組成物C1に可溶化されているか、前記組成物C1に固体粒子の形態で分散している、上記態様1~7のいずれかに記載の方法。
[9]
前記組成物C3が、少なくとも1種の分岐鎖ポリマー、好ましくは5000g.mоl
-1
を超える分子量を有する分岐鎖ポリマー、及び/又は5000g.mоl
-1
を超える分子量を有する少なくとも1種のポリマー、及び/又はシリケート等の固体粒子を含む、上記態様1~8のいずれかに記載の方法。
[10]
前記組成物C3の25℃における粘度が、10s
-1
のせん断速度において15000mPa.s~100000mPa.sであり、100s
-1
~100000s
-1
のせん断速度において5000mPa.s未満である、上記態様1~9のいずれかに記載の方法。
[11]
工程b)において適用されるせん断速度が、10s
-1
~1000s
-1
である、上記態様1~10のいずれかに記載の方法。
[12]
UV光源に曝露する工程を含まない、上記態様1~11のいずれかに記載の方法。
[13]
前記組成物C2の重合工程が、8時間~100時間の期間実施される、上記態様1~12のいずれかに記載の方法。
[14]
前記組成物C2の重合工程が、20℃~80℃の温度にて実施される、上記態様1~13のいずれかに記載の方法。
[15]
前記組成物C2の重合工程が、20℃~80℃の温度にて8時間~100時間の期間実施される、上記態様1~14のいずれかに記載の方法。