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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】ブレーキ液圧制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 8/48 20060101AFI20220203BHJP
   B60T 8/34 20060101ALI20220203BHJP
   B60T 17/00 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
B60T8/48
B60T8/34
B60T17/00 D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019560508
(86)(22)【出願日】2018-12-13
(86)【国際出願番号】 IB2018059987
(87)【国際公開番号】W WO2019123132
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2020-04-23
(31)【優先権主張番号】P 2017243154
(32)【優先日】2017-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(72)【発明者】
【氏名】仁張 勉
【審査官】保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-341497(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第19961682(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第19709779(DE,A1)
【文献】特開2005-022547(JP,A)
【文献】英国特許出願公開第02104595(GB,A)
【文献】特開平10-329699(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T7/12-8/1769
8/32-8/96
15/00-17/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキ液圧回路の液圧を制御するブレーキ液圧制御装置(70)であって、
前記ブレーキ液圧回路の一部を構成する内部流路(11d)を有し、前記内部流路(11d)の一端が外面に開口したハウジング(30)と、
前記ハウジング(30)の前記内部流路(11d)の一端が開口する位置に取り付けられたアキュムレータユニット(9)とを備え、
前記ハウジング(30)は、前記内部流路(11d)の一端が開口する位置に凹部(30e)を有し、
前記アキュムレータユニット(9)は、前記凹部(30e)に固定され、
前記アキュムレータユニット(9)は、
軸線方向の一端側の面で前記内部流路(11d)を介して流入するブレーキ液を受けるピストン(55)と、
前記ピストン(55)を前記一端側に向かって付勢する付勢部材(57)と、
前記ピストン(55)を前記軸線方向に往復移動可能に保持するスリーブ部材(53)と
前記一端側が前記ハウジング(30)に固定されるとともに他端側に前記スリーブ部材(53)が固定される基部(51)とを有し、
前記基部(51)は、前記ハウジング(30)の前記凹部(30e)に嵌合される嵌合部(51b)を有し、
前記基部(51)の前記嵌合部(51b)側の端面と、前記ハウジング(30)の前記凹部(30e)の底面との間に形成される空間を含む容量部(60)が形成される
ブレーキ液圧制御装置(70)。
【請求項2】
前記スリーブ部材(53)の少なくとも一部が、前記アキュムレータユニット(9)が取り付けられる前記ハウジング(30)の外面の位置よりも外側に配置される
請求項に記載のブレーキ液圧制御装置。
【請求項3】
前記ブレーキ液圧制御装置(70)は、前記ハウジング(30)の一の外面(30a)に固定されたモータ(7)を備え、
前記アキュムレータユニット(9)は、前記モータ(7)が固定された前記一の外面(30a)に取り付けられる
請求項1又は2に記載のブレーキ液圧制御装置。
【請求項4】
前記ブレーキ液圧制御装置(70)は、前記ハウジング(30)の一の外面(30d)に面して配置された制御ユニット(40)を備え、
前記アキュムレータユニット(9)は、前記制御ユニット(40)が配置された前記一の外面(30d)に設けられて前記制御ユニット(40)の内部に配置される
請求項1又は2に記載のブレーキ液圧制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキ液圧制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、制動部へ供給されるブレーキ液の液圧を液圧回路で制御してブレーキ制御を行う液圧ユニットを、ブラケットを介して車体に取り付けるブレーキ液圧制御装置が知られている。
【0003】
ブレーキ液圧制御装置は開閉自在の調整弁及び調整弁と連動して動作するポンプ等を有している。ブレーキ液圧制御装置は電子制御されて自動的に動作し、ブレーキ液圧回路内の液圧を増減させることで車輪に発生する制動力を制御する。
【0004】
このようなブレーキ液圧制御装置にはブレーキ液の減圧及び一時的なブレーキ液の貯蔵用いられるピストン型リザーバとしてのアキュムレータが設けられている。アキュムレータは軸線方向に往復移動するピストンを備えている。
【0005】
アキュムレータは液圧ユニットのハウジングの外面に形成された凹部の内部に収容されたピストン及びスプリングを有し、当該凹部の開口に対してカバーをカシメることにより構成されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-210326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
液圧ユニットを設計するにあたり車両に応じた適切なサイズのアキュムレータを実現するためにはハウジングのサイズを変更して凹部の深さや大きさを変更する必要がある。このため少なくともアキュムレータのサイズごとにハウジングを用意しなければならず、管理コストが増大するおそれがある。また凹部の深さを深くするためにハウジングのサイズを大きくする場合には、素材コストや重量、液圧ユニットのサイズが大きくなるおそれがある。
【0008】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、液圧ユニットのハウジングを共用しつつアキュムレータのサイズの設計の自由度を向上可能なブレーキ液圧制御装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のある観点によれば、ブレーキ液圧回路の液圧を制御するブレーキ液圧制御装置であって、ブレーキ液圧回路の一部を構成する内部流路を有し、内部流路の一端が外面に開口したハウジングと、ハウジングの内部流路の一端が開口する位置に取り付けられたアキュムレータユニットとを備え、ハウジングは、内部流路の一端が開口する位置に凹部を有し、アキュムレータユニットは、凹部に固定され、アキュムレータユニットは、軸線方向の一端側の面で内部流路を介して流入するブレーキ液を受けるピストンと、ピストンを一端側に向かって付勢する付勢部材と、ピストンを軸線方向に往復移動可能に保持するスリーブ部材と、一端側がハウジングに固定されるとともに他端側にスリーブ部材が固定される基部とを有し、基部は、ハウジングの凹部に嵌合される嵌合部を有し、基部の嵌合部側の端面と、ハウジングの凹部の底面との間に形成される空間を含む容量部が形成されるブレーキ液圧制御装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように本発明によれば、液圧ユニットのハウジングを共用しつつブレーキ液圧制御装置に設けるアキュムレータのサイズの設計の自由度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態に係るブレーキ用油圧回路を示す回路図である。
図2】ブレーキ液圧制御装置を示す斜視図である。
図3】同実施形態に係るアキュムレータユニットの構成例を示す断面図である。
図4】同実施形態に係るアキュムレータユニットを示す斜視図である。
図5】同実施形態に係るアキュムレータユニットを示す斜視図である。
図6】同実施形態に係るアキュムレータユニットを示す分解斜視図である。
図7】従来のアキュムレータユニットを示す断面図である。
図8】ハウジングのサイズを比較する説明図である。
図9】アキュムレータユニットのサイズを異ならせた例を示す説明図である。
図10】アキュムレータユニットの設置位置を示す説明図である。
図11】アキュムレータユニットの設置位置を示す説明図である。
図12】アキュムレータユニットの設置位置を示す説明図である。
図13】同実施形態の変形例に係るアキュムレータユニットを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお本明細書及び図面において実質的に同一の機能構成を有する構成要素については同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0013】
<1.ブレーキ用油圧回路>
図1は、本発明の実施の形態に係るブレーキ液圧制御装置70を適用可能なブレーキ用油圧回路100の一例を示している。
【0014】
図1に示したブレーキ用油圧回路100は、例えば自動二輪車両に搭載されるものであり周知のアンチロックブレーキ制御用の油圧回路として構成されている。ここでアンチロックブレーキ制御(いわゆるABS制御)とは、例えば車両制動時においてブレーキ液圧を断続的に減少させて車輪のロック状態を抑制するような制御を指す。
【0015】
なおアンチロックブレーキ制御の作動原理及び基本的な制御手法等については当業者には既知であるために詳しい説明を省略する。
【0016】
ブレーキ用油圧回路100は前輪に対する制動力を発生させるための前輪用ディスクブレーキ装置(制動部)111の前輪用マスタシリンダ101、前輪用リザーバタンク102及び前輪用ホイールシリンダ103と、後輪に対する制動力を発生させるための後輪用ディスクブレーキ装置(制動部)116の後輪用マスタシリンダ104、後輪用リザーバタンク105及び後輪用ホイールシリンダ106と、液圧ユニット10とを備えている。
【0017】
液圧ユニット10は前輪用及び後輪用マスタシリンダ101,104と前輪用及び後輪用ホイールシリンダ103,106との間に設けられている。また液圧ユニット10は前輪用マスタシリンダ101から前輪用ホイールシリンダ103へ供給されるブレーキ液の圧力を制御し、あるいは後輪用マスタシリンダ104から後輪用ホイールシリンダ106へ供給されるブレーキ液の圧力を制御して上述のアンチロックブレーキ制御を行う。
【0018】
前輪用マスタシリンダ101には第1配管107を介して前輪用リザーバタンク102が接続されている。また前輪用マスタシリンダ101には第2配管108、液圧ユニット10及び第3配管109を介して前輪用ホイールシリンダ103が接続されている。
【0019】
前輪用マスタシリンダ101は例えば車両のハンドルレバー110が操作されることにより作動すると、液圧ユニット10を介して前輪用ホイールシリンダ103のブレーキ液圧を上昇させる。また前輪用ホイールシリンダ103は供給されるブレーキ液圧に応じて前輪用ディスクブレーキ装置111を作動させて前輪を制動させる。
【0020】
後輪用マスタシリンダ104には第4配管112を介して後輪用リザーバタンク105が接続されている。また後輪用マスタシリンダ104には第5配管113、液圧ユニット10及び第6配管114を介して後輪用ホイールシリンダ106が接続されている。
【0021】
後輪用マスタシリンダ104は例えば車両のフットペダル115が操作されることにより作動すると、液圧ユニット10を介して後輪用ホイールシリンダ106のブレーキ液圧を上昇させる。また後輪用ホイールシリンダ106は供給されるブレーキ液圧に応じて後輪用ディスクブレーキ装置116を作動させて後輪を制動させる。
【0022】
<2.ブレーキ液圧制御装置>
次にブレーキ液圧制御装置70について詳細に説明する。図1に示したようにブレーキ液圧制御装置70は液圧ユニット10及び電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)40を有している。
【0023】
液圧ユニット10は前輪用供給電磁弁1、前輪用排出電磁弁2、後輪用供給電磁弁3、後輪用排出電磁弁4、前輪用ポンプ5、後輪用ポンプ6、モータ7を有している。
【0024】
前輪用供給電磁弁1及び前輪用排出電磁弁2と、後輪用供給電磁弁3及び後輪用排出電磁弁4とは、例えば周知の二位置型電磁弁である。通常状態すなわちアンチロックブレーキ制御が行われていない状態において前輪用供給電磁弁1及び後輪用供給電磁弁3は開状態となり、前輪用排出電磁弁2及び後輪用排出電磁弁4は閉状態となる。
【0025】
また前輪用ポンプ5及び後輪用ポンプ6はECU40により制御されるモータ7により駆動される構成となっている。前輪用供給電磁弁1、前輪用排出電磁弁2、後輪用供給電磁弁3、後輪用排出電磁弁4及びモータ7はECU40に接続されており、ECU40からの制御信号に基づいて駆動制御される。
【0026】
液圧ユニット10は前輪用マスタシリンダ101から前輪用ホイールシリンダ103へ供給されるブレーキ液が流動するための前輪用流路(内部流路)11と後輪用マスタシリンダ104から後輪用ホイールシリンダ106へ供給されるブレーキ液が流動するための後輪用流路(内部流路)21とを含んでいる。
【0027】
前輪用流路11において第1流路11aの一端側が第2配管108に接続されており、他端側が前輪用供給電磁弁1に接続されている。第2流路11bの一端側が前輪用供給電磁弁1に接続されており、他端側が第3配管109に接続されている。
【0028】
第1流路11aには第3流路11cの一端側が接続されており、第3流路11cの他端側が前輪用ポンプ5の吐出側に接続されている。第4流路11dの一端側が前輪用ポンプ5の吸引側に接続されており、他端側が前輪用排出電磁弁2に接続されている。
【0029】
前輪用ポンプ5は第4流路11d側から第3流路11c側へ、すなわち前輪用ホイールシリンダ103側から前輪用マスタシリンダ101側へブレーキ液を流動させる。第4流路11dにはブレーキ液の圧力を減圧するアキュムレータユニット9が接続されている。
【0030】
第2流路11bには第5流路11eの一端側が接続されており、第5流路11eの他端が前輪用排出電磁弁2に接続されている。第2流路11bには前輪用ホイールシリンダ103へ供給されるブレーキ液の圧力を検出するための圧力センサ13が設けられている。
【0031】
一方後輪用流路21において第1流路21aの一端側が第5配管113に接続されており、他端側が後輪用供給電磁弁3に接続されている。第2流路21bの一端側が後輪用供給電磁弁3に接続されており、他端側が第6配管114に接続されている。
【0032】
第1流路21aには第3流路21cの一端が接続されており、第3流路21cの他端が後輪用ポンプ6の吐出側に接続されている。第4流路21dの一端側が後輪用ポンプ6の吸引側に接続されており、他端側が後輪用排出電磁弁4に接続されている。
【0033】
後輪用ポンプ6は第4流路21d側から第3流路21c側へ、すなわち後輪用ホイールシリンダ106側から後輪用マスタシリンダ104側へブレーキ液を流動させる。第4流路21dにはブレーキ液の圧力を減圧するアキュムレータユニット12が接続されている。
【0034】
第2流路21bには第5流路21eの一端が接続されており、第5流路21eの他端が後輪用排出電磁弁4に接続されている。
【0035】
なお前輪用供給電磁弁1及び後輪用供給電磁弁3にはそれぞれチェック弁が併設されており、前輪用ポンプ5及び後輪用ポンプ6の吐出側にはそれぞれ絞り弁が設けられている。また前輪用供給電磁弁1及び後輪用供給電磁弁3の前後と、前輪用ポンプ5及び後輪用ポンプ6の前と、前輪用排出電磁弁2及び後輪用排出電磁弁4の前とには、それぞれ図示しないフィルタが1つずつ設けられている。
【0036】
図2は本実施形態に係るブレーキ液圧制御装置70を示す斜視図である。前輪用供給電磁弁1、前輪用排出電磁弁2、後輪用供給電磁弁3、後輪用排出電磁弁4、前輪用ポンプ5、後輪用ポンプ6及びアキュムレータユニット9,12はそれぞれハウジング30の外面に形成された開口に装着されている。
【0037】
前輪用ポンプ5はハウジング30の側面30cに装着されている。後輪用ポンプ6は前輪用ポンプ5が装着された側面30cの背面に装着されている。前輪用ポンプ5が装着された側面30cから垂直に連続する側面30aにはモータ7が装着されている。
【0038】
前輪用ポンプ5が装着された側面30a及びモータ7が装着された側面30aそれぞれからともに垂直に連続する下面30bにはアキュムレータユニット9,12が装着されている。アキュムレータユニット9が装着された位置には前輪用流路11の第4流路11dの一端が開口している。アキュムレータユニット12が装着された位置には後輪用流路21の第4流路21dの一端が開口している。
【0039】
モータ7が取り付けられた面30aの背面には各電磁弁1,2,3,4及び圧力センサ13が装着されている。またモータ7が取り付けられた面30aの背面側には電子制御ユニット40が取り付けられている。
【0040】
電子制御ユニット40はモータ7の駆動の制御及び各電磁弁1,2,3,4の開閉制御等を行う電子制御基板を有する。電子制御ユニット40はABS作動時において各電磁弁1,2,3,4の開閉を制御して前輪及び後輪のロックを回避している。
【0041】
<3.アキュムレータユニット>
次に本実施形態に係るブレーキ液圧制御装置70に備えられたアキュムレータユニット9,12について詳細に説明する。ここでは前輪用流路11に設けられたアキュムレータユニット9を例に採って説明する。
【0042】
(3-1.アキュムレータユニットの構成)
図3図6はアキュムレータユニット9の構成を示す説明図である。図3はハウジング30に固定されたアキュムレータユニット9の断面図である。図4はアキュムレータユニット9を基部51側から見た斜視図であり、図5はアキュムレータユニット9をスリーブ部材53側から見た斜視図である。図6はアキュムレータユニット9の分解斜視図である。
【0043】
アキュムレータユニット9は基部51、スリーブ部材53、ピストン55、スプリング57及び環状シール部材59を備えて構成されている。本実施形態においてアキュムレータユニット9は一体的に組み立てられてハウジング30に形成された凹部30eに装着されている。
【0044】
本実施形態において基部51は流通孔51a、嵌合部51b、フランジ部51c及び小径部51dを有する。嵌合部51b、フランジ部51c及び小径部51dは軸線方向に沿ってこの順に配置されている。流通孔51aは基部51の中央部に軸線方向に沿って形成されて軸線方向の両端側に開口している。
【0045】
嵌合部51bはハウジング30の凹部30eに嵌合される部分である。フランジ部51cは嵌合部51bよりも大きい直径を有しハウジング30の凹部30eの周縁部に接合される部分である。小径部51dはスリーブ部材53の内周の直径と略同一の直径を有しておりスリーブ部材53が嵌合されて接合される。
【0046】
基部51はハウジング30に固定されてブレーキ液を貯留可能な容量部60を形成する。本実施形態において基部51の嵌合部51b側の端面とハウジング30の凹部30eの底面との間に形成された空間、基部51の流通孔51a、及び基部51の小径部51d側の端面とピストン55との間に形成される空間が容量部60として機能する。
【0047】
基部51とハウジング30との接合方法は特に限定されない。例えば基部51とハウジング30とは機械的結合、カシメ、摩擦溶接、超音波溶接又は接着材接合により接合されてよい。
【0048】
スリーブ部材53は軸方向の一端側が開口端として形成され他端側が閉塞端として形成された円筒形状の部材である。スリーブ部材53の開口端は基部51の小径部51dに嵌合され接合される。
【0049】
基部51とスリーブ部材55との接合方法は特に限定されない。例えば基部51とスリーブ部材55とはカシメ、レーザー溶接、又は接着材接合により接合されてよい。
【0050】
ピストン55はスリーブ部材55の内部を軸線方向に移動可能に配置されている。ピストン55とスリーブ部材55の底部53aとの間にはスプリング57が圧縮状態で収容されている。これによりピストン55は軸線方向に沿って基部51側に向かって付勢されている。
【0051】
ピストン55は基部51側の端面で容量部60に流入するブレーキ液を受ける。ピストン55が受ける圧力によるピストン55の付勢力がスプリング57によるピストン55の付勢力を上回るとピストン55は図示の下方に移動する。つまり容量部60に流入するブレーキ液の圧力に応じてピストン55の位置が変化して容量部60の容積が変化する。
【0052】
なおスプリング57は本発明における付勢部材の一態様であって、付勢部材はスプリング57に限られない。例えば付勢部材は板ばねや弾性ゴム等によって構成されていてもよい。
【0053】
環状シール部材59はピストン55の外周面に形成された環状溝55aに配置されている。環状シール部材59はスリーブ部材53の内周部とピストン55の外周部との間に配置されてスリーブ部材53の内周面上を摺動しつつ容量部60からスプリング57が収容された空間へのブレーキ液の漏出を防ぐ機能を有する。
【0054】
アキュムレータユニット9は図4図6に示したようにあらかじめ一体的に組み立てられた後に液圧ユニット10のハウジング30の凹部30eに接合されてよい。
【0055】
(3-2.アキュムレータサイズの変更)
本実施形態に係るアキュムレータユニット9において基部51の嵌合部51bの直径を一定とし、かつフランジ部51cがハウジング30の凹部30eの周縁部に接合可能となっていれば、その他の設計寸法を変更することによって容量部60の容積を変更することができる。
【0056】
例えば図3に示したアキュムレータユニット9のうち基部51の厚さを変更したり基部51の流通孔51aの直径を変更したりすることでハウジング30の設計を変更することなく容量部60の容積を変更することができる。
【0057】
またスリーブ部材53の軸方向長さを変更することでハウジング30の設計を変更することなく容量部60の容積の変化量を調節することができる。その際にスプリング57の弾性力を変更してもよい。
【0058】
このように本実施形態に係るブレーキ液圧制御装置70ではアキュムレータユニット9の構成部品の設計を変更することによって液圧ユニット10のハウジング30の設計を変更することなく異なるサイズのアキュムレータユニット9を液圧ユニット10に設けることができる。これにより液圧ユニット10のハウジング30を共用しつつアキュムレータユニット9のサイズの設計の自由度を向上させることができる。
【0059】
(3-3.ハウジングサイズ)
本実施形態に係るアキュムレータユニット9ではスリーブ部材53がハウジング30の取付面の位置よりも外側で基部51に固定されている。このためハウジング30に形成した凹部内にピストン及びスプリングを収容して凹部の内周部をシリンダとしてアキュムレータを構成する従来の液圧ユニットに比べてハウジングのサイズを小さくすることができる。
【0060】
図7は従来のアキュムレータ150の構成を示す断面図である。従来のアキュムレータ150は液圧ユニットのハウジング161における内部流路161aの一端に面する位置に形成された凹部163を利用して構成されている。
【0061】
ハウジング161の凹部163の内部にはピストン155及びスプリング157が収容されている。凹部163の開口部にはプラグ151がカシメられて装着されている。ピストン155の外周面には環状シール部材159が設けられている。
【0062】
スプリング157はピストン155とプラグ151との間に圧縮状態で配置されており、ピストン155を凹部163の底面側に付勢している。ピストン155は凹部163の底面側の端面で内部流路161aから流入するブレーキ液を受けて移動する。これによりアキュムレータ150がブレーキ液を保持する。
【0063】
図8は従来の液圧ユニットのハウジング161の大きさと本実施形態に係る液圧ユニット10のハウジング30の大きさとを比較した説明図である。図7に示したように従来の液圧ユニットではハウジング161に形成された凹部163を利用してアキュムレータ150が構成されている。
【0064】
これに対して本実施形態に係る液圧ユニット10ではハウジング30に対してアキュムレータユニット9が外付けされるために長さL1分ハウジング30の寸法を小さくすることができる。これによりハウジング30の素材コストや重量、液圧ユニット10のサイズを小さくすることができる。
【0065】
図9は本実施形態に係る液圧ユニット10においてアキュムレータユニット9のサイズを異ならせた例を示している。本実施形態に係るブレーキ液圧制御装置ではアキュムレータユニット9のサイズを異ならせた場合であっても液圧ユニット10のハウジング30の変更を必須としない。
【0066】
つまり図8及び図9に示した液圧ユニット10では設けられたアキュムレータユニット9のサイズが異なっているものの共通のハウジング30が用いられている。したがって液圧ユニット10のハウジング30を共用しつつアキュムレータユニット9のサイズの設計の自由度を向上させることができる。
【0067】
(3-4.アキュムレータユニットの設置位置)
本実施形態に係るブレーキ液圧制御装置70は液圧ユニット10のハウジング30に対してアキュムレータユニット9が外付けされる構成であることからアキュムレータユニット9の設置位置の自由度を向上させることができる。
【0068】
図10図12はそれぞれアキュムレータユニット9の設置位置の例を示す模式図である。図10図3及び図8等に示したハウジング30の下面30bにアキュムレータユニット9を設置した例である。
【0069】
図11はモータ7が取り付けられたハウジング30の側面30aにアキュムレータユニット9を設置した例である。図11に示した構成例によればアキュムレータユニット9がハウジング30の下面30bから下方に突き出すことがなくなる分、図10に示した構成例に比べてブレーキ液圧制御装置70の図示の上下方向のサイズを小さくすることができる。
【0070】
また図11に示した構成例ではモータ7がハウジング30から突き出す方向へとアキュムレータユニット9が突き出しているためにブレーキ液圧制御装置70の図示の左右方向のサイズの増大を抑制しつつ上下方向のサイズを小さくすることができる。
【0071】
図12はモータ7が取り付けられたハウジング30の側面30aの背面30dであってECU40が配置されたハウジング30の面30dにアキュムレータユニット9を設置した例である。図12に示した構成例ではECU40のハウジング内にアキュムレータユニット9が配置されている。
【0072】
図12に示した構成例によればアキュムレータユニット9がハウジング30の下面30bから下方に突き出すことがなくなる分、図10に示した構成例に比べてブレーキ液圧制御装置70の図示の上下方向のサイズを小さくすることができる。
【0073】
また図12に示した構成例ではアキュムレータユニット9がECU40のハウジング内に収容されるためにブレーキ液圧制御装置70の図示の左右方向のサイズを変更することなく上下方向のサイズを小さくすることができる。
【0074】
図10図12に例示したアキュムレータユニット9の設置位置は一例にすぎない。本実施形態に係るブレーキ液圧制御装置70では液圧ユニット10のハウジング30に、ピストンのシリンダとして機能する凹部を形成する必要がないことから、アキュムレータユニット9の設置位置の自由度が高くなる。
【0075】
(3-5.変形例)
本実施形態に係るブレーキ液圧制御装置70においてアキュムレータユニット9の構成は種々の変更が可能である。
【0076】
例えば図3に示したアキュムレータユニット9の構成要素のうちの基部51が省略されていてもよい。図13は基部を有しない変形例に係るアキュムレータユニット209の構成を示す断面図である。
【0077】
変形例に係るアキュムレータユニット209は液圧ユニット10のハウジング30に形成された凹部30fの周縁部に対してスリーブ部材203の開口端に形成されたフランジ部203aが接合されている。
【0078】
スリーブ部材203とハウジング30との接合方法は特に限定されない。例えばスリーブ部材203とハウジング30とは機械的結合、カシメ、摩擦溶接、超音波溶接又は接着材接合により接合されてよい。
【0079】
スリーブ部材203の内部にはピストン55及びスプリング57が収容されている。ピストン55の外周面には環状シール部材59が配置されている。スプリング57はピストン55とスリーブ部材203の底部203bとの間に圧縮状態で収容されている。これによりピストン55は軸線方向に沿ってハウジング30側に向かって付勢されている。
【0080】
ピストン55はハウジング30側の端面で内部流路11dを介して流入するブレーキ液を受けて図示の下方に移動する。つまり流入するブレーキ液の圧力に応じてピストン55の位置が変化してアキュムレータユニット209はブレーキ液を保持する。
【0081】
変形例に係るアキュムレータユニット209によってもハウジング30に接合するスリーブ部材203の軸方向長さを変更することでハウジング30の設計を変更することなくアキュムレータユニット209のサイズを変更することができる。これにより液圧ユニット10のハウジング30を共用しつつアキュムレータユニット209の設計の自由度を向上させることができる。
【0082】
また変形例に係るアキュムレータユニット209によってもスリーブ部材203の大部分がハウジング30における取付面の位置よりも外側に配置されている。このためハウジング30のサイズを小さくして素材コストや重量、液圧ユニットのサイズを低減することができる。
【0083】
また変形例に係るアキュムレータユニット209によってもハウジング30に対するアキュムレータユニット209の設置位置の選択の自由度を向上させることができる。これによりブレーキ液圧制御装置70のサイズを小さくすることが可能になる。
【0084】
以上説明したように本実施形態に係るブレーキ液圧制御装置70は基部51、ピストン55、スプリング57及びスリーブ部材53を有するアキュムレータユニット9を備えている。アキュムレータユニット9はハウジング30の内部流路11dの一端が開口する位置に取り付けられている。
【0085】
このためアキュムレータユニット9の構成部品の設計を変更することでハウジング30の設計を変更することなくアキュムレータユニット9のサイズをへんこうすることができる。これにより液圧ユニット10のハウジング30を共用しつつアキュムレータユニット9の設計の自由度を向上させることができる。
【0086】
また本実施形態に係るブレーキ液圧制御装置70ではハウジング30に対してアキュムレータユニット9が外付けされる構成であるためにピストンを収容する凹部をハウジング30に設ける必要がない。このためハウジング30のサイズを小さくすることができ素材コストや重量、液圧ユニットのサイズを低減することができる。
【0087】
また本実施形態に係るブレーキ液圧制御装置70ではハウジング30に対してアキュムレータユニット9が外付けされる構成であるためにアキュムレータユニット9の設置位置の自由度を高めることができる。このためアキュムレータユニット9の設置位置によってはブレーキ液圧制御装置70のサイズを小さくすることができる。
【0088】
また本実施形態に係るブレーキ液圧制御装置70においてアキュムレータユニット9が基部51を有する場合にはアキュムレータユニット9をハウジング30に取り付ける前にあらかじめ一体的に組み立てることができる。このためアキュムレータユニット9の組立作業を効率化することができる。
【0089】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0090】
また上記実施形態ではモータサイクルに搭載されるブレーキ液圧制御装置を例に採って説明しているが本発明はかかる例に限定されず、自動車等のその他の乗り物に搭載されるブレーキ液圧制御装置であってもよい。
【符号の説明】
【0091】
9・・・アキュムレータユニット、10・・・液圧ユニット、11d・・・第4流路(内部流路)、12・・・アキュムレータユニット、30・・・ハウジング、30a・・・側面、30b・・・下面、30e・・・凹部、40・・・電子制御ユニット(ECU)、51・・・基部、53・・・スリーブ部材、55・・・ピストン、57・・・スプリング、59・・・環状シール部材、70・・・ブレーキ液圧制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13