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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】小型空気浄化装置
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/00 20060101AFI20220203BHJP
   A61L 9/20 20060101ALI20220203BHJP
   F24F 1/008 20190101ALI20220203BHJP
   F24F 8/167 20210101ALI20220203BHJP
   F24F 7/003 20210101ALI20220203BHJP
   B01D 46/10 20060101ALI20220203BHJP
   B01J 35/02 20060101ALN20220203BHJP
【FI】
A61L9/00 C
A61L9/20
F24F1/008
F24F8/167
F24F7/003
B01D46/10 A
B01J35/02 J
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020103491
(22)【出願日】2020-06-16
(62)【分割の表示】P 2016566047の分割
【原出願日】2015-11-25
(65)【公開番号】P2020168393
(43)【公開日】2020-10-15
【審査請求日】2020-06-23
(31)【優先権主張番号】P 2014262542
(32)【優先日】2014-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】515316458
【氏名又は名称】株式会社Nano Wave
(74)【代理人】
【識別番号】100142550
【弁理士】
【氏名又は名称】重泉 達志
(72)【発明者】
【氏名】今井 勇次
【審査官】中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2005/067985(WO,A1)
【文献】特開2002-126055(JP,A)
【文献】特開2004-305436(JP,A)
【文献】特開平08-215295(JP,A)
【文献】特開2013-004923(JP,A)
【文献】特開2009-247546(JP,A)
【文献】特開平09-318120(JP,A)
【文献】特開2010-279462(JP,A)
【文献】国際公開第2013/176062(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/00-20
B01D 46/00
B01J 35/02
B01D 53/86-88
F24F 1/0071-008、0328-0355、7/003-06、8/167
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体内に配置され、酸化チタンを含む光触媒部材と、
前記筐体内に配置され、前記光触媒部材に対して紫外光を照射し、複数のLED素子を含む発光部と、
前記筐体内の空気を流通させるファンと、を含み、
前記光触媒部材は、酸化チタンの粒子をコーティングしたポリエステルであり、
前記発光部は、前記筐体内の空気の流通方向について、前記筐体内に配置されている全ての前記光触媒部材よりも上流側に配置され
前記発光部は、前記複数のLED素子が実装されるLED発光実装基板を有し、
前記複数のLED素子は、50個以上であり、
前記複数のLED素子は、縦方向及び横方向に整列して実装され、
前記LED発光実装基板は、金属からなる基板本体と、前記基板本体の上側に形成され樹脂からなる絶縁層と、前記絶縁層の上側に形成される金属からなる回路パターンと、を有し、
前記回路パターンは、前記複数のLED素子とワイヤにより電気的に接続され、
前記回路パターンは、前記複数のLED素子へ電力を供給するアノード電極及びカソード電極を有し、
前記発光部の光出力は、600mW以上であり、
前記筐体は、1辺が20cm以下で、他の2辺が15cm以下の直方体状であり、
前記筐体は、互いに対向する側面に吸気口及び排気口を有し、
前記発光部は、前記吸気口が形成された側面及び前記排気口が形成された側面から離れている小型空気浄化装置。
【請求項2】
前記ファンは、シロッコファンである請求項に記載の小型空気浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒を用いた小型空気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化チタン(TiO)等の光触媒は、紫外線の照射を受けると活性化して強力な酸化還元作用を生じ、窒素酸化物(NO)、硫黄酸化物(SO)等の有害化合物や汚濁物等を効果的に分解する作用を発揮する。光触媒を利用した小型空気浄化装置として、吸気口及び排気口を備えた筐体内に、紫外線ランプを収納すると共に、該紫外線ランプで生成される紫外線の照射範囲内に光触媒を配置したものが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-220123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、酸化チタンを励起する際に、蛍光管のブラックライトを多数用いないと、アセトアルデヒドの除去性能が不十分であるという問題点があった。また、蛍光管のブラックライトは長尺であるため、装置が大型になってしまうという問題点もあった。
【0005】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、アセトアルデヒドの除去性能を向上させ、しかも小型化を図ることのできる小型空気浄化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では、筐体と、前記筐体内に配置され、酸化チタンを含む光触媒部材と、前記筐体内に配置され、前記光触媒部材に対して紫外光を照射し、複数のLED素子を含む発光部と、前記筐体内の空気を流通させるファンと、を含む小型空気浄化装置が提供される。
【0007】
上記小型空気浄化装置において、前記発光部は、前記各LED素子が実装される銅ベース基板を有することが好ましい。
【0008】
上記小型空気浄化装置において、前記ファンは、シロッコファンであることが好ましい。
【0009】
上記小型空気浄化装置において、前記発光部の電源部は、前記筐体内にて露出されていることが好ましい。
【0010】
上記小型空気浄化装置において、前記発光部は、ハロゲンランプ形状の発光装置であり、前記LED素子の高集積構造を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、アセトアルデヒドの除去性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の一実施形態を示す小型空気浄化装置の模式断面説明図である。
図2図2は、LED発光部実装基板の平面図であり、13直4並列の場合である。
図3図3は、Cu基板上にLED素子をマウントした実装基板の一部断面図である。
図4図4は、アセトアルデヒドの除去性能を示すグラフである。
図5図5は、変形例を示す小型空気浄化装置の模式断面説明図である。
図6図6は、横軸を順方向電流(mA)、縦軸をLED光出力(mW)としたLED素子の動作性能を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1から図3は本発明の一実施形態を示し、図1は小型空気浄化装置の模式断面説明図である。
図1に示すように、この小型空気浄化装置1は、直方体状の筐体2と、筐体2内に配置され酸化チタン(TiO)がコーティングされたセラミックフォーム3と、筐体2内に配置されセラミックフォーム3に対して紫外光を照射する発光装置4と、筐体2内の空気を流通させるファン5と、筐体2内に配置され空気の塵埃を除去するためのフィルター6と、を有している。
【0014】
筐体2は、例えばアルミニウムからなり、吸気口2aと排気口2bとを有している。本実施形態においては、吸気口2a及び排気口2bは、互いに対向する側面にそれぞれ設けられる。筐体2内には吸気口2a側から排気口2bへ向かって、ファン5、発光装置4、セラミックフォーム3、フィルター6の順に並べられる。
【0015】
筐体2は、空気の流れる方向の寸法が20cm、これと直交する水平方向の寸法が15cm、高さ方向の寸法が15cmとなっている。ここで、従来の蛍光管のブラックライトは長尺であり、従来の筐体の高さ方向の寸法を少なくとも20cm以上とする必要があった。しかも、ブラックライト1本では効果がなく複数本用いられているのが現状である。しかしながら、複数のLED素子43を有する発光装置4を用いることにより、筐体の高さ方向の寸法を15cm以下とすることができる。このように、直方体状の筐体2の寸法について、1辺を20cm以下、他の2辺を15cm以下とすることができれば、「小型」の空気浄化装置ということができる。
【0016】
また、吸気口2aと排気口2bは、それぞれ抗菌材料からなる防虫ネット7でそれぞれ覆われている。これにより、発光装置4の光に誘因されて筐体2内へ虫が侵入することはない。
【0017】
光触媒部材としてのセラミックフォーム3は、例えばアルミナからなり、内部が三次元網目構造となっている。セラミックフォーム3の表面には、光触媒としての酸化チタンの粒子がコーティングされている。酸化チタンは410nm以下の波長の光で励起可能であり、励起状態となる付近の空気を浄化する。
【0018】
ファン5は、作動時に筐体2内の空気を吸気口2a側から排気口2b側へ送出する。ファン5の型式は任意であり、プロペラファンであってもシロッコファンであってもよい。ファン5としてシロッコファンを用いることにより、後述する発光装置4の筐体41の温度を効果的に下げ、発光装置4の各LED素子43の光出力を向上させることができる。また、フィルター6は、筐体2内の排気口2aを塞ぐよう設けられる。
【0019】
発光部としての発光装置4は、筐体41と、筐体41の内部に配置される電源基板44と、筐体上部の実装基板42に実装される複数のLED素子43と、電源基板44へ直流電力を供給するための外部電源(図示せず)とを接続する配線45と、を有する。筐体41は、例えばセラミックからなり、開口部を有する。発光装置4は、各LED素子43の光を筐体41の開口部から照射する。
【0020】
図2は、LED発光部実装基板の平面図であり、13直4並列の場合である。
図2に示すように、LED発光実装基板42は正方形状に形成され、各LED素子43が縦方向及び横方向に整列して配置される。回路パターン423は、一対のアノード電極426及びカソード電極427を有し、各LED素子43へ電力を供給する。本実施形態においては、13個のLED素子43が並べられた4つの直列接続部428が並列に接続され、計52個のLED素子43が使用される。発光装置4に用いられるLED素子43の個数は、50個以上とすることがのぞましい。
【0021】
具体的に、各LED素子43は平面視にて350μm×350μmであり、20μmから200μmの実装精度でLED発光実装基板42に搭載される。この実装精度で搭載することにより、各LED素子43の高集積構造が実現される。各LED素子43の高集積構造を有していれば筐体41の形状は任意であり、例えば筐体41としてハロゲンランプ形状のものを用いることができる。本実施形態における発光装置4の光出力は、600mW以上である。
【0022】
図3は、Cu基板上にLED素子をマウントした実装基板の一部断面図である。
図3に示すように、LED発光実装基板42は、金属からなる基板本体421と、基板本体421の上側に形成され樹脂からなる絶縁層422と、絶縁層422の上側に形成され金属からなる回路パターン423及び放熱パターン424と、絶縁層422の上側に形成され絶縁材からなる表層としての白色レジスト層425と、を有している。基板本体421は銅からなり、絶縁層422を貫通し金属からなる放熱部422aを通じて、放熱パターン424と接続される。本実施形態においては、放熱部422a及び放熱パターン424も銅から構成される。絶縁層422は、例えばポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、液晶ポリマー等からなり、導電性を有する基板本体421と回路パターン423との絶縁を図る。回路パターン423は、例えば表面(上面)に薄膜状の金を有する銅からなり、各LED素子43とワイヤ431により電気的に接続される。白色レジスト層425は、例えば酸化チタンのフィラーが混入されたエポキシ系の樹脂からなり白色を呈する。
【0023】
各LED素子43は、例えばInGaN系の発光層を有し、紫外光を発する。各LED素子43のピーク波長は400nm以上410nm以下とすることが好ましい。本実施形態においては、各LED素子43のピーク波長は405nmである。本実施形態においては、各LED素子43はフェイスアップ型であり、それぞれワイヤ60により回路パターン20と電気的に接続される。
【0024】
以上のように構成された小型空気浄化装置1では、発光装置4からセラミックフォーム3に対して紫外光を照射した状態でファン5を作動させることにより、吸気口2aから取り込まれた空気をセラミックフォーム3で浄化して排気口2bから排出することができる。ここで、発光装置4として紫外光を発するLED素子43を用い、高集積高出力構造とすることによって、蛍光管を用いたブラックライトよりもアセトアルデヒド除去性能を向上させることができる。
【0025】
図4は、横軸を時間、縦軸をアセトアルデヒド濃度としたアセトアルデヒドの除去性能を示すグラフである。アセトアルデヒドの除去性能を調べるにあたり、まず、蛍光管を用いたブラックライトを用いたもの(以下、比較例)と、LED素子43を用いた発光装置4の実装基板42をアルミニウムベースとしたもの(以下、実施例A)とを比較した。尚、比較例と実施例Aにおいては、ファンとしてプロペラファンを用いた。データを取得するにあたり、開始から30分で紫外線照射を開始し、開始から220分で紫外線照射を終了した。図4に示すように、実施例Aは、比較例と比べて、紫外線照射中のアセトアルデヒド濃度が低下した。これにより、LED素子43を高集積高出力構造とすることによって、アセトアルデヒド除去性能が向上したことが理解される。
【0026】
次いで、実施例Aと、実装基板42を銅ベースとしたもの(以下、実施例B)と、を比較した。尚、実施例Bにおいても、ファンとしてプロペラファンを用いた。図4に示すように、実施例Bは、実施例Aと比べて、紫外線照射中のアセトアルデヒド濃度が低下した。これにより、発光装置4の実装基板42を銅ベース基板とすることにより、アセトアルデヒド除去性能がさらに向上したことが理解される。
【0027】
次いで、実施例Bと、ファン5をシロッコファンとしたもの(以下、実施例C)と、を比較した。尚、実施例Cにおいても、実装基板42として銅ベースのものを用いた。図4に示すように、実施例Cは、実施例Bと比べて、紫外線照射中のアセトアルデヒド濃度が低下した。これにより、小型空気浄化装置1のファン5をシロッコファンとすることにより、アセトアルデヒド除去性能がさらに向上したことが理解される。
【0028】
次いで、実施例Cと、図5に示すように発光装置4の筐体41を外し、電源基板44を空気中に開放したもの(以下、実施例D)と、を比較した。尚、実施例Dにおいても、実装基板42として銅ベースのものを用い、ファン5をシロッコファンとしたものを用いた。図4に示すように、実施例Dは、実施例Cと比べて、紫外線照射中のアセトアルデヒド濃度が低下した。これにより、発光装置4の筐体41を設けないこと(電源基板44を露出させること)により、アセトアルデヒド除去性能がさらに向上したことが理解される。
【0029】
図6は、横軸を順方向電流(mA)、縦軸をLED光出力(mW)としたLED素子の動作性能を示すグラフである。
図6に示すように、実施例A、実施例B、実施例C、実施例Dの順に、LED素子43の光出力が向上することが理解される。これはLEDの放熱を向上させたことによる。すなわち、発光装置4の実装基板42を銅ベース基板とするとアルミニウムベース基板の場合よりもLED素子43の光出力が向上し、小型空気浄化装置1のファン5をシロッコファンとするとプロペラファンの場合よりもLED素子43の光出力が向上し、発光装置4の筐体41を設けないと設けた場合よりもLED素子43の光出力が向上する。
【0030】
尚、前記実施形態においては、405nmをピーク波長とするLED素子43を用いたものを示したが、ピーク波長はこれに限定されず例えば365nmとすることもできる。
【0031】
また、前記実施形態においては、酸化チタンの粒子をコーティングしたセラミックフォーム3を用いたものを示したが、酸化チタンを含んでいればセラミックフォーム3の代わりに、ポリエステル等のようなプラスチック材料や、水等のような液体を用いることもできる。
【0032】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【産業上の利用可能性】
【0033】
以上のように、本発明の小型空気浄化装置は、アセトアルデヒドの除去性能を向上させ、しかも小型化を図ることができ産業上有用である。
【符号の説明】
【0034】
1 小型空気浄化装置
2 筐体
3 セラミックフォーム
4 発光装置
5 ファン
42 実装基板
43 LED素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6