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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
   G09F 9/30 20060101AFI20220119BHJP
   G02F 1/1333 20060101ALI20220119BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20220119BHJP
   H01L 27/32 20060101ALI20220119BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20220119BHJP
   H05B 33/06 20060101ALI20220119BHJP
   H05B 33/22 20060101ALI20220119BHJP
   H05B 33/04 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
G09F9/30 330
G09F9/30 308Z
G09F9/30 338
G09F9/30 309
G02F1/1333 500
H05B33/14 A
H01L27/32
H05B33/02
H05B33/06
H05B33/22 Z
H05B33/04
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020114365
(22)【出願日】2020-07-01
(62)【分割の表示】P 2016034269の分割
【原出願日】2016-02-25
(65)【公開番号】P2020190727
(43)【公開日】2020-11-26
【審査請求日】2020-07-01
(73)【特許権者】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】鄭 翔遠
【審査官】小野 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-151297(JP,A)
【文献】特開2011-034066(JP,A)
【文献】特開2006-323292(JP,A)
【文献】特開2015-204239(JP,A)
【文献】特開2011-215380(JP,A)
【文献】特開2008-089884(JP,A)
【文献】特開2010-097031(JP,A)
【文献】特開2011-047977(JP,A)
【文献】特開2015-121777(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 9/00-46
G02F 1/13-1/141
1/15-1/19
H01L 27/32
51/50
H05B 33/00-33/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する第1基板と、
前記第1基板の第1面に設けられた、複数の薄膜トランジスタと、
前記第1基板の第1面に設けられた、前記複数の薄膜トランジスタを制御するための信号が入力される端子部と、を有し、
前記第1基板は、前記複数の薄膜トランジスタと前記端子部との間に湾曲部を含み、
前記湾曲部において、前記第1基板の第1面と、前記第1基板の側面と、を被覆する有機膜が設けられており、
前記第1基板の第1面であって、前記湾曲部とは異なる箇所に、前記有機膜が設けられていない領域を有することを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記第1基板は、前記第1面に対向する第2面をさらに有し、
前記湾曲部において、前記第1基板の第2面を被覆する有機膜がさらに設けられていることを特徴とする、請求項1に記載に表示装置。
【請求項3】
前記湾曲部において、前記端子部から前記複数の薄膜トランジスタに向かう方向に延在する配線が設けられ、
前記有機膜は、前記配線を被覆することを特徴とする、請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
前記複数の薄膜トランジスタを封止する封止材をさらに有し、
前記配線は、前記封止材に被覆されない領域を有し、前記有機膜は、前記封止材に被覆されない領域を被覆することを特徴とする、請求項3に記載の表示装置。
【請求項5】
前記第1基板は、前記第1面に対向する第2面側に設けられた支持部材をさらに有し、
前記支持部材は、前記複数の薄膜トランジスタと平面視で重畳する領域に設けられ、
前記湾曲部は、前記支持部材が設けられない領域を有することを特徴とする、請求項1に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一実施形態は、可撓性を有する表示装置の基板構造に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネセンス素子や液晶素子を各画素における表示素子として用い、この表示素子を駆動する回路を薄膜トランジスタによって形成した表示装置が開発されている。表示装置の一形態として、可撓性の基板を用いて曲折させたり湾曲させたりすることが可能な表示装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-169711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
表示装置は、基板上に薄膜トランジスタ、容量素子等の回路素子と、この回路素子を接続する配線部を有し、これらの層間を埋める有機絶縁膜及び無機絶縁膜や、例えば各種電極の上に設けられる無機絶縁膜が基板の略全面に設けられている。ここで、可撓性を有する基板を湾曲させると、基板上に設けられている薄膜に応力が作用してクラック等の欠陥が生じることが問題となっている。すなわち、基板が可撓性を有していても、その上部に設けられる無機絶縁膜等の薄膜は同等の可撓性を有しているとは限らないので、可撓性基板を曲げることによって薄膜にクラック等の欠陥が生じてしまう。例えば、可撓性基板上の無機絶縁膜等にクラック等の欠陥が発生すると、そこから水分が浸入し、画素領域における表示素子を劣化させる原因となる。
【0005】
そこで、本発明の一実施形態は、可撓性を有する基板を用いた表示装置において、基板を湾曲させた場合においても、クラック等の欠陥によって信頼性が低下してしまうことを抑制することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態によれば、可撓性を有する第1基板と、第1基板の第1面に設けられた画素部及び駆動回路部と、を有し、第1基板は折り曲げ可能な湾曲部を含み、湾曲部において、少なくとも基板の第1面を被覆する有機膜が設けられている表示装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態に係る表示装置の構成を示す平面図である。
図2】本実施形態に係る表示装置の構成を示す断面図であり、図1で示すA-B線に沿った構成を示す図である。
図3】本実施形態に係る表示装置の構成を示す断面図であり、図1で示すC-D線に沿った構成を示す図である。
図4】本実施形態に係る表示装置の構成を示す断面図であり、図1で示すA-B線に沿った構成において基板を曲げた状態を示す図である。
図5】本実施形態に係る表示装置の構成を示す断面図であり、図1で示すA-B線に沿った構成において基板を曲げた状態を示す図である。
図6】本実施形態に係る表示装置の構成を示す断面図であり、図1で示すC-D線に沿った構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を、図面等を参照しながら説明する。但し、本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に例示する実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0009】
本明細書において、ある部材又は領域が他の部材又は領域の「上に(又は下に)」あるとする場合、特段の限定がない限りこれは他の部材又は領域の直上(又は直下)にある場合のみでなく他の部材又は領域の上方(又は下方)にある場合を含み、すなわち、他の部材又は領域の上方(又は下方)において間に別の構成要素が含まれている場合も含む。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態に係る表示装置100の構成を示す。また、図1で示す表示装置100において、A-B線に沿った断面構造を図2に示し、C-D線に沿った断面構造を図3に示す。以下の説明ではこれらの図面を参照する。
【0011】
表示装置100は、第1基板102の第1面10に画素106が配列する画素部104を有する。表示装置100は第1基板102において、画素部104の外側の領域(周辺領域)に画素106を駆動する駆動回路部を有する。駆動回路部は、走査信号を出力する第1駆動回路108、走査信号に同期して映像信号を出力する第2駆動回路110を含む。第2駆動回路110は、例えば第1基板102上に搭載されたドライバICである。また、第1基板102の外側の領域には、信号が入力される端子部112が設けられている。端子部112は、映像信号が入力される端子を含む。端子部112は配線基板118と電気的に接続される。上述のドライバIC、即ち第2駆動回路110は、配線基板118上に搭載されてもよい。
【0012】
第1駆動回路108及び第2駆動回路110と画素部104との間は配線によって接続される。この接続領域は、導電膜により形成される配線と、この配線を埋め込む絶縁層を含む。本明細書では、画素部と駆動回路部との間の領域におけるこの接続領域を配線部と呼ぶこととする。表示装置100は、画素部104と第1駆動回路108との間に第1配線部114を有し、画素部104と第2駆動回路110との間に第2配線部116を有する。
【0013】
本実施形態において、第1基板102は可撓性を有する。可撓性を有する第1基板102は、素材として樹脂材料が用いられる。樹脂材料としては、繰り返し単位にイミド結合を含む高分子材料を用いるのが好ましく、例えば、ポリイミドが用いられる。具体的には、第1基板102として、ポリイミドをシート状に成形したフィルム基板が用いられる。また、第1基板102の他の形態として、金属の薄板基板、金属の薄板に樹脂フィルムを貼り合わせた複合基板、ガラスの薄板基板に樹脂フィルムを貼り合わせた複合基板が用いられてもよい。
【0014】
表示装置100は、第1基板102に対向して封止材126が設けられている。封止材126は第1基板102に対向する第2基板とも言える。画素部104は、封止材126により被覆されている。封止材126は、樹脂材料による被膜又はシート状の部材により構成される。
【0015】
表示装置100は、少なくとも一部に湾曲部120を含む。すなわち、第1基板102が可撓性を有することにより、表示装置100は少なくとも一部が曲げられた状態を含み得る。湾曲部120は、第1基板102が曲折又は湾曲される領域である。第1基板102が湾曲することにより、画素部、駆動回路部及び配線部の内、少なくとも湾曲部120と重畳する部位は第1基板102と共に湾曲する。
【0016】
表示装置100は、第1基板102の第1面10に対向する第2面20に、支持部材122が設けられる。支持部材122は第1基板102の略全面を覆うように配設されるが、少なくとも一部に切欠き部124を含む。第1基板102に密接して配置される支持部材122は、実質的に基板の厚さを大きくすることと同等の作用をする。すなわち、支持部材122は、第1基板102の撓みを抑制する。一方、支持部材122の切欠き部124では第1基板102の厚さが維持されるので、支持部材122が設けられる領域と比較して撓みやすい状態にある。第1基板102は、支持部材122の切欠き部124に対応する領域が湾曲部120となる。
【0017】
支持部材122は、第1基板102と同じ樹脂材料、または第1基板102よりも硬質な部材で形成される。支持部材122としては、シリコーン樹脂等による樹脂膜、アクリル板等の薄板材が用いられる。なお、支持部材122は、本実施形態において、必須な構成ではなく、適宜使用され得る構造材である。しなしながら、上述のように、支持部材122を用いることで、第1基板102の撓みを抑制し、切欠き部124を設けることにより、表示装置100の湾曲部120の位置を設定することができる。
【0018】
支持部材122の切欠き部124は任意の位置に、任意の幅で設けることができる。図2は、表示装置100の切欠き部124が画素部104と第2駆動回路110との間に設けられる態様を示す。別言すれば、図2で示す表示装置100は、第2配線部116と重なる領域が湾曲部120となっている。
【0019】
図2及び図3で示すように、表示装置100は、湾曲部120を含む領域に有機膜128を有する。有機膜128は、第1基板102の第1面10においては第2配線部116の上面を覆うように設けられる。別言すれば、有機膜128は、画素部104と第2駆動回路部110との間の領域に設けられている。第2配線部116は、有機膜128により被覆され保護される。有機膜128は第1基板102の第2面20の側にも設けられている。また、有機膜128は、第1基板102の第1面と第2面との間の領域、すなわち第1基板102の側面部を覆うように設けられる。このように、有機膜128を第1基板102に設けることで、湾曲部120の保護膜として用いることができる。有機膜128は、第1基板102の第1面10、第2面20及び側面に連続的に設けられることで、湾曲部120の一部に応力が集中し、例えば、第2配線部116にクラック等の欠陥が生じた場合でも当該欠陥が大気に露出しないようにすることができる。
【0020】
図4は、このような表示装置100を、湾曲部120において第1基板102を湾曲させた状態を示す。第1基板102は、第2駆動回路110が画素部104の背面側に配置されるように曲折されている。第1基板102の湾曲部120には曲げ応力が作用する。例えば、第2配線部116は、第1基板102を曲げることにより、曲げ応力が作用する。すなわち、第2配線部116に含まれる配線と、この配線を埋め込む絶縁層に曲げ応力が作用する。この場合、配線を形成する金属膜は塑性を有するが、配線を埋め込む絶縁層の内少なくとも無機絶縁層は脆性によりクラック等の欠陥が発生する。第2配線部116に発生したクラック等の欠陥は、画素部104に向かって進行する(成長する)。仮に、第2配線部116のクラック等の欠陥が大気に露出していればそこから水分等が画素部104に浸入することとなり、表示装置100の信頼性に影響を及ぼすことが問題となる。
【0021】
本実施形態に係る表示装置100は、第2配線部116を被覆する有機膜128が設けられている。図3図4に示すように、有機膜128は、表示装置100の全域に設けられるのではなく、少なくとも湾曲部120を含む表示装置100の一部に設けられる。当該一部において、有機膜128は、第1面10と、第2面20と、第1面10と第2面20との両方に交差する側面とに、連続的に設けられている。別言すれば、有機膜128は、当該一部の全周に亘って設けられている。有機膜128は可撓性を有する第1基板102と同様に柔軟性を有するので、曲げに対する耐性が高く、クラック等の欠陥が生じにくいという特性を有する。有機膜128は、湾曲部120においても、第1基板102の曲面に沿って設けられる。そのため、第2配線部116の絶縁層にクラック等の欠陥が生じても、当該欠陥が外面に露出しない。また、表示装置100は、湾曲部120とは異なる部分(非湾曲部)を有し、非湾曲部には、有機膜128が形成されていない領域がある。即ち、表示装置100の全域に、第1面10と、第2面20と、第1面10と第2面20との両方に交差する側面とに、連続的に設けられている有機膜128を備えているわけではない。
【0022】
さらに、有機膜128として、透湿性が低い(非透湿性(ガスバリア性)を有する、または耐湿性が高い)被膜を用いることで、仮に第2配線部116にクラック等の欠陥が生じても信頼性を維持することができる。すなわち、有機膜128としては、非透湿性(ガスバリア性)、機械的特性(曲げに対する耐性)に優れている素材を用いることが望まれる。
【0023】
このような有機膜128として、ポリクロロパラキシリレンを用いること、ポリクロロパラキシリレンを含めることが好ましい。ポリクロロパラキシリレンは、パリレンC、パリレンN、パリレンDといった分子構造が異なる複数種が知られている。有機膜128として、パリレンC、パリレンN及びパリレンDのいずれかを用いることができるが、これらの中でも耐湿性が高いパリレンCを用いることが好ましい。
【0024】
有機膜128としてのポリクロロパラキシリレン薄膜は、真空蒸着法により作製することができる。真空蒸着法で作製されるポリクロロパラキシリレン薄膜は、分子単位で成長する。このため、被堆積表面の形状にかかわらず、微細な隙間にも均一にポリクロロパラキシリレン薄膜を形成することができる。ポリクロロパラキシリレン薄膜は、真空蒸着法によって数マイクロメートルから数十マイクロメートルの厚さの被膜を形成することができ、このような厚さであっても封止性能を発揮することができる。なお、有機膜128を湾曲部120に設けるには、ポリクロロパラキシリレン薄膜の成膜時に、第1基板102の湾曲部120に対応する開口部を有するシャドーマスクを用いればよい。シャドーマスクを用いた成膜により、画素部104等の他の領域に有機膜128が形成されず、湾曲部120に選択的にポリクロロパラキシリレンの薄膜を成長させることができる。
【0025】
このように、本発明の一実施形態によれば、可撓性を有する基板を用いた表示装置において、基板を湾曲させた場合においても、クラック等の欠陥によって信頼性が低下してしまうことを防止することができる。
【0026】
次に、本実施形態に係る表示装置100の詳細を、図5及び図6を参照して説明する。図1で示すA-B線に対応する断面構造を図5に示し、C-D線に対応する断面構造を図6に示す。すなわち、図5は、表示装置100が湾曲部120で曲げられた状態を示し、図6は湾曲部120の断面図を示す。
【0027】
表示装置100は、第1基板102が湾曲部120で曲折され、第2駆動回路110及び端子部112が画素部104の背面側に配置されている。画素部104と第2駆動回路110との間には、第2配線部116が設けられている。第2配線部116は、湾曲部120の曲面に沿って設けられている。
【0028】
第1基板102の第1面10には画素部104が設けられている。図5で示す一例は、画素106にトランジスタ130、発光素子132、第1容量素子134、第2容量素子136を含む態様を示す。発光素子132はトランジスタ130と電気的に接続されている。第1容量素子134はトランジスタ130のゲート電位を保持し、第2容量素子136は発光素子132に流れる電流量を調整するために付加的に設けられている。なお、図5で示す画素106は一例であり、画素はトランジスタと発光素子、又はトランジスタ、発光素子及び第1容量素子、或いは他の素子が付加されて構成されていてもよい。
【0029】
トランジスタ130は、半導体膜138、ゲート絶縁膜140、ゲート電極142が積層された構造を有する。ソース・ドレイン電極152は、第1絶縁膜144の上面に設けられる。ソース・ドレイン電極152は、半導体膜138のソース領域又はドレイン領域に相当する領域と接触し、電気的な導通が図られる。ソース・ドレイン電極152の上層には平坦化層としての第2絶縁膜146が設けられる。そして、第2絶縁膜146の上面に発光素子132が設けられる。画素部104の構造として、第1絶縁膜144は無機絶縁材料で形成され、第2絶縁膜146は有機絶縁材料で形成される。第1容量素子134は、ゲート絶縁膜140を誘電体膜として、半導体膜138と第1容量電極154が重畳する領域、および第1絶縁膜144を誘電体膜としてソース・ドレイン電極152と第1容量電極154とが挟まれた領域に形成される。第2容量素子136は、第2絶縁膜146の上層に設けられる第3絶縁膜148を誘電体膜として、第1電極158と第2容量電極156とが重畳する領域に形成される。第3絶縁膜148は、酸化シリコン、窒化シリコン、窒酸化シリコン等の無機絶縁膜で形成される。
【0030】
発光素子132は、トランジスタ130と電気的に接続される第1電極158(画素電極)、発光層160、第2電極162(共通電極)が積層された構造を有する。発光素子132は、第1電極158と第2電極162との間の電位を制御することで発光が制御される。画素部104は、第1電極158の周縁部を覆い内側領域を露出するバンク層164を含む。発光層160は、第1電極158の上面からバンク層164に亘って設けられる。第2電極162は、発光層160の上面を覆い、画素部104の略全面に亘って設けられる。
【0031】
発光層160は、有機エレクトロルミネセンス材料を発光材料として含む層である。発光層160は、低分子系又は高分子系の有機材料を用いて形成される。低分子系の有機材料を用いる場合、発光層160は発光性の有機材料を含む発光層に加え、当該発光層を挟むように正孔注入層や電子注入層、さらに正孔輸送層や電子輸送層等含んで構成されていてもよい。発光層160は、水分により劣化するとされているため、第2電極162の上層には第4絶縁膜150が設けられる。第4絶縁膜150は、画素部104の略全面に設けられる。
【0032】
第4絶縁膜150としては、窒化シリコン、酸化シリコン、酸化アルミニウムなどの無機絶縁膜の単層又は積層体が適用される。尚、第4絶縁膜150の上に、例えば有機絶縁膜と無機絶縁膜との積層体からなる、更なる絶縁膜が配置されてもよい。第4絶縁膜150の上面側には、封止材126が設けられる。図5は、封止材126がシート状の板材である場合を示す。この場合、封止材126は、画素部104の外周を囲むシール材172によって第1基板102に固定される。第4絶縁膜150と封止材126との間には空隙があり、この空隙に充填材が設けられていてもよい。充填材は樹脂材料が用いられる。
【0033】
画素部104の端部(シール材172と接する領域)と画素106との間には第2絶縁膜146及びバンク層164を分断する開口部168を有している。この開口部168の側面及び底面を被覆するように無機材料で形成される第3絶縁膜148及び第2電極162が設けられている。別言すれば、第3絶縁膜148と第2電極162とが開口部168において接する領域を有している。このような構造により、発光層160は、実質的に第3絶縁膜148と第2電極162とに囲まれて密封される。すなわち、このような封止構造により、有機樹脂材料で形成される第2絶縁膜146やバンク層164を通って、水分等が発光層160に浸入するのを防止している。また、画素部104は、第2電極162が下層の配線と電気的に接続される接続部170が設けられている。
【0034】
第1基板102は、画素部104から第2駆動回路110にかけて第1配線166が延設されている。第1配線166が延設される領域は、湾曲部120に相当する領域でもある。第1配線166は、例えば、ソース・ドレイン電極152と同じ層で形成される。例えば、第1配線166は、アルミニウム(Al)膜で形成され、その上層側及び下層側にチタン(Ti)、モリブデン(Mo)等の高融点金属膜が積層された構造を有している。第1配線166の上層には、画素部104から延設される第3絶縁膜148、第4絶縁膜150が積層される。湾曲部120は、封止材126の外側領域に存在するが、第3絶縁膜148、第4絶縁膜150が設けられることで、第1配線166は大気に直接晒されることはなく、これらの絶縁膜によって保護される。
【0035】
湾曲部120には有機膜128が設けられる。すなわち、有機膜128は封止材126の外側の領域に設けられている。有機膜128は、湾曲部120において最外層として設けられていることが好ましい。図5は、湾曲部120において、第1基板102上にゲート絶縁膜140、第1絶縁膜144、第1配線166、第3絶縁膜148及び第4絶縁膜150が積層された構造を有する。さらに、第4絶縁膜150の上層には有機膜128が設けられている。
【0036】
第1基板102を湾曲させると、第2配線部116に曲げ応力が作用する。このとき、第1配線166は金属膜であるため塑性があり基板の曲げに応じて変形することが可能であるが、第3絶縁膜148や第4絶縁膜150は、無機材料で形成されるため脆性により第1基板102を湾曲させることによりクラック等の欠陥が発生してしまう。これらの無機絶縁膜に発生したクラック等の欠陥が、画素部104に向かって広がると、そこから大気中の水分等が画素部104に浸入する。例えば、第1基板102を湾曲部120で繰り返し曲げられると、第2配線部116への応力も繰り返し作用するので、無機絶縁膜に発生するクラック等の欠陥が成長する。
【0037】
表示装置100は、開口部168において、第3絶縁膜148と第2電極162とが密接する水分遮断構造が採用されているため、発光層160への水分の浸入はある程度防ぐことができる。しかし、画素106には、第1電極158とソース・ドレイン電極152とを電気的に接続するコンタクトホールが設けられている。このコンタクトホールは、第1絶縁膜144、第2絶縁膜146に形成される。外部から画素部104へ浸入する水分等は、第1絶縁膜144、第2絶縁膜146を貫通するコンタクトホールを介して、発光層160が設けられる領域に浸入する経路ができる。それによって、表示装置100の製造後に後発的に、画素部104で発光素子132の劣化が生じ、表示品質を低下させることとなる。
【0038】
しかしながら、本実施形態においては、湾曲部120において、第4絶縁膜150の上層を有機膜128が被覆している。このため、無機絶縁膜であるゲート絶縁膜140、第1絶縁膜144、第3絶縁膜148及び第4絶縁膜150のいずれかにクラック等の欠陥が生じても、当該欠陥部分が大気に露出するのを防ぐことができる。
【0039】
第2配線部116において発生するクラック等の欠陥は、また、応力の集中しやすい第1基板102の端部において発生しやすい。しかし、図6で示すように、第1基板102の全周を覆うように有機膜128を設けることで、第1基板102の端部においてクラック等の欠陥が発生しても、当該欠陥が大気に露出しないようにすることができる。
【0040】
また、図6で示すように、第2配線部116は、第1基板102上に、第1基板102側から、ゲート絶縁膜140、第1絶縁膜144、第1配線166、第3絶縁膜148、第4絶縁膜150が積層された領域と、ゲート絶縁膜140、第1絶縁膜144、第3絶縁膜148、第4絶縁膜150が積層された領域とが混在している。この2つの領域の境界では、積層構造の違いにより、第1基板102が曲げられることにより応力が集中する。例えば、第1配線166を被覆する第3絶縁膜148に応力が集中することが考えられる。この場合においても、外層に有機膜128が設けられていることで、第3絶縁膜148に仮に欠陥が生成されても、当該欠陥部分が大気に露出することを防ぐことができる。
【0041】
本実施形態において、表示装置100の湾曲部120が第2配線部116と重なる領域に設けられる態様を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、湾曲部120は第1配線部114に重畳するように設けられていてもよい。また、湾曲部120は、画素部104を交差するように設けられていてもよい。いずれにしても、第1基板102が曲げられる湾曲部120において、外皮層として有機膜128が設けられていることで、第1基板102を曲げることによる耐性を高めることができる。
【0042】
本実施形態では、画素部104に表示素子として発光素子132が設けられる態様を示すが、他の表示素子により画素が形成される表示装置にも適用することができる。例えば、表示素子として、液晶の電気光学効果を利用した液晶素子を用いた液晶表示装置においても、本実施形態で示す構成を適用することができる。
【符号の説明】
【0043】
10・・・第1面、20・・・第2面、100・・・表示装置、102・・・第1基板、104・・・画素部、106・・・画素、108・・・第1駆動回路、110・・・第2駆動回路、112・・・端子部、114・・・第1配線部、116・・・第2配線部、118・・・配線基板、120・・・湾曲部、122・・・支持部材、124・・・切欠き部、126・・・封止材、128・・・有機膜、130・・・トランジスタ、132・・・発光素子、134・・・第1容量素子、136・・・第2容量素子、138・・・半導体膜、140・・・ゲート絶縁膜、142・・・ゲート電極、144・・・第1絶縁膜、146・・・第2絶縁膜、148・・・第3絶縁膜、150・・・第4絶縁膜、152・・・ソース・ドレイン電極、154・・・第1容量電極、156・・・第2容量電極、158・・・第1電極、160・・・発光層、162・・・第2電極、164・・・バンク層、166・・・第1配線、168・・・開口部、170・・・接続部、172・・・シール材
図1
図2
図3
図4
図5
図6