(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】低温処理
(51)【国際特許分類】
B01D 61/14 20060101AFI20220203BHJP
C11B 9/02 20060101ALI20220203BHJP
A23L 27/12 20160101ALI20220203BHJP
B01D 69/12 20060101ALI20220203BHJP
B01D 71/34 20060101ALI20220203BHJP
B01D 71/44 20060101ALI20220203BHJP
B01D 71/52 20060101ALI20220203BHJP
B01D 71/66 20060101ALI20220203BHJP
B01D 71/68 20060101ALI20220203BHJP
B01D 71/70 20060101ALI20220203BHJP
A61K 8/9783 20170101ALI20220203BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
B01D61/14 500
C11B9/02
A23L27/12
B01D69/12
B01D71/34
B01D71/44
B01D71/52
B01D71/66
B01D71/68
B01D71/70
A61K8/9783
A61Q19/10
(21)【出願番号】P 2020505445
(86)(22)【出願日】2017-08-01
(86)【国際出願番号】 EP2017069404
(87)【国際公開番号】W WO2019024983
(87)【国際公開日】2019-02-07
【審査請求日】2020-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】511008850
【氏名又は名称】シムライズ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100114904
【氏名又は名称】小磯 貴子
(74)【代理人】
【識別番号】100134636
【氏名又は名称】金高 寿裕
(72)【発明者】
【氏名】チャンドラセカラン,ヴィジャヤナンド
(72)【発明者】
【氏名】ブレンネッケ,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】シャール,ウーヴェ
(72)【発明者】
【氏名】ディアス ゴメス,エディソン
(72)【発明者】
【氏名】ウターメーレ,クラウディア
(72)【発明者】
【氏名】クルツァン,ピエール
【審査官】小川 慶子
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-521219(JP,A)
【文献】国際公開第2014/203581(WO,A1)
【文献】特開昭61-222508(JP,A)
【文献】特表2006-523747(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 61/00-71/82
C11B 9/00-9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
香料、香味料または化粧品成分のための着色が少ない精油を提供するナノ濾過プロセスであって、以下の工程:
(i)膜が支持層と最上層とから成る選択的に透過性の薄膜複合(TFC)ナノ濾過膜を提供することと、
(ii)場合により溶媒成分と共に、流動性投入物を提供することと、
(iii)前記膜の表面を横切って前記流動性投入物を移動させることによって前記流動性投入物を分離して残余分と透過分とを形成し、前記透過分の1つ以上の成分の濃度が前記流動性投入物と比べて低下していることとを含み;
前記透過分が前記流動性投入物と比べて脱色され、国際照明委員会によって特定されているようなCIELAB色測定方式に従って、前記透過分の明度の値L
*が前記流動性投入物と比べて1以上のΔL
*に上昇しており、前記透過分の色度C
*が前記流動性投入物と比べて-2以下のΔC
*に低下している、前記ナノ濾過プロセス。
【請求項2】
前記透過分の前記明度の値L
*が前記流動性投入物と比べて
1.5以上ΔL
*
に上昇しており、及び/または前記透過分の前記色度C
*が前記流動性投入物と比べて
-4以下のΔC
*
に低下している、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記透過分の色安定性は、ナノ濾過の
48時間後の前記透過分の明度の変化によって測定される再着色が、ナノ濾過直後の前記透過分と比べて
-1.0以上のΔL
*
にしか低下せず、及び/またはナノ濾過の
48時間後の前記透過分の色度C
*
が、ナノ濾過後の前記透過分と比べて
10以下のΔC
*
にしか上昇しない程度のものである、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記TFCナノ濾過膜が窒素含有ポリマーを含まない、
請求項1~3のいずれかに記載のプロセス。
【請求項5】
前記TFCナノ濾過膜の前記支持層が、ヘテロ原子O、N、S及び/またはハロゲン及び/またはSiの1以上を含む
ポリマーを含む、
請求項1~3のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記支持層が、ポリジメチルシロキサン、ポリオクチルメチルシロキサン、ポリ[1-(トリメチルシリル)-1-プロピン]、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフッ化ビニリデン及びポリエーテルエーテルケトンから成る群から選択される物質を含む、
請求項1~5のいずれかに記載のプロセス。
【請求項7】
前記最上層が、ポリジメチルシロキサン、ポリオクチルメチルシロキサン、ポリ[1-(トリメチルシリル)-1-プロピン]、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンオキサイド)、ポリアクリル酸、固有の微孔構造のポリマー(PIM-1)、ポリスチレン-b-ポリ(エチレンオキサイド)ジブロックコポリマー、ポリ(スチレンスルホン酸ナトリウム(PSS)、及びポリビニルサルフェート(PVS)及びそれらの混合物から成る群から選択される物質を含む、
請求項1~6のいずれかに記載のプロセス。
【請求項8】
前記最上層が、シリコーンでコーティングされた
有機物親和性の層である、
請求項1~7のいずれかに記載のプロセス。
【請求項9】
前記TFCナノ濾過膜が150g/モル~1200g/モルの間の分子量カットオフを有する、
請求項1~8のいずれかに記載のプロセス。
【請求項10】
精油と溶媒とを含み、前記溶媒が少なくとも10重量%の有機溶媒成分と任意で水とを含み、前記溶媒成分が少なくとも3×10
-30Cmの双極子モーメントを有する、
請求項1~9のいずれかに記載のプロセス。
【請求項11】
前記流動性投入物を調製するのに使用される前記有機溶媒が少なくとも4×10
-30Cmの
双極子モーメントを有する、
請求項1~10のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記溶媒がさらに、2×10
-30Cm未満の双極子モーメントを有する
第2の有機溶媒成分を含む、
請求項1~11のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項13】
膜を介した前記流速が少なくとも8kg[透過分]/時間・m
2[膜]である、
請求項1~12のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項14】
前記
精油が、オレンジ、柑橘、レモン、ライム、グレープフルーツ、ベルガモット、キーライム、ザボン、シトロン、マンダリン、タンジェリン、ダイダイ、ブラッドオレンジから成る群から選択されるような柑橘属に由来し、及び/または前記精油が、ペルーバルサム油、ベンゾインシャム油、パチョリ油、ローズ油、イランイラン油、丁子葉、レモン油、オークモスアブソリュート及びバニラ抽出物から成る群から選択される、
請求項1~13のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項15】
前記精油が、マンダリン油、ペルーバルサム油、タンジェリン油、ブラッドオレンジ油、パチョリ油、バニラ抽出物及びベンゾインシャム油から成る群から選択される、
請求項1~14のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1項に記載のプロセスによって得られる着色が少ない精油。
【請求項17】
高級香料組成物、香料処方、香味料または化粧品成分またはシャワージェルのための
請求項16に記載の着色が少ない精油の使用。
【請求項18】
請求項1~15のいずれかに記載の精油の精製のためのナノ濾過プロセスを実施するための装置であって、
支持層と最上層とを持つ選択的に透過性の薄膜複合(TFC)ナノ濾過膜を含み、
前記TFCナノ濾過膜は窒素含有ポリマーを含まず;
前記最上層はポリジメチルシロキサンであり;
膜を通る流速は少なくとも8kg[透過分]/時間・m
2[膜]であり;
前記TFCナノ濾過膜は350g/モル~500g/モルの間の分子量カットオフを有する、前記装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穏やかな条件下で精油及び抽出物(特に香料、香料成分、香味料及び化粧成分のための)における不純物を減らすための新しいハイスループットプロセスを開示する。蝋のような望ましくない天然成分だけでなく、たとえば、農薬及び他の環境汚染物質等の合成物質も少なくとも1つの選択性ナノ濾過膜を使用することによって減らされる。加えて、本発明は、時間と共に高い再着色不変性を達成しながら、精油における着色成分を減らして着色の少ないまたはさらに無色の精油を得る方法に関する。さらに、望ましくない嗅覚物質の減少を介して臭気質を維持し、または高めて精製された、且つ品質の高い油を達成する。
【背景技術】
【0002】
精油は、たとえば、香味料、化粧成分及び香料の産業と同様に食品及び飲料の産業で使用される。それらはまた、殺菌性、殺ウイルス性、殺真菌性、抗寄生虫性、殺虫性、医薬及び化粧品の適用も有することができる。
【0003】
これらの不純物は広い範囲の化学種を構成するので、不純物を取り除く操作には、吸着剤の使用、蒸留、または種々の水性化学溶液による油の洗浄が含まれる。しかしながら、これらの操作の有効性は限定されており、精油の収率を下げる可能性がある。加えて、精製にて高い選択性を達成することは操作速度の低下をもたらし得る。工業規模では、生産効率は製品品質と同時に確保されなければならない。
【0004】
水性溶媒系または有機溶媒系から精油を濃縮する膜の使用は知られている。この分離は水性透過分を生成し、精油は残余分における第2の相として濃縮される。
【0005】
EP2205710では、膜に基づくプロセス(微量濾過または限外濾過)は10℃で柑橘油から蝋化合物を取り除くと記載されている。
【0006】
WO2013/167307は、不純物を減らす、または天然成分を分画するためのポリイミドを含有するナノ膜に基づくプロセスを示している。
【0007】
望ましくない物質は所望の化合物から分離するのが難しいことが多く、複数工程のエネルギーを消費するプロセスが所望の生成物を生成するのに必要とされる。さらに、精油における最も有益な化合物は通常、熱感受性であり、熱損傷を受けることなく高い収率でこれらの化合物を単離するのは難題である。
【0008】
従って、香料、香料成分及び香味料として使用される精油から不純物を取り除くためのさらに効率的なプロセスについて当該技術でニーズが残っている。
【発明の概要】
【0009】
従って、本発明の課題は、着色された成分を減らすことにより精油を純化するプロセスを提供することであった。また、プロセスは、たとえば、長期間の静置の際の光または酸化のせいで発生するような再着色の減少も示す、着色が減った精油につながるべきである。
【0010】
本発明の別の課題は、生成物の臭気質を維持するまたは高める精油を純化するプロセスを提供することであった。これらの効果は高い生産出力と同時に達成されるべきである。
【0011】
本発明の具体的な課題は、単一プロセスにて精油(たとえば、色度除去(吸収)及び/または悪臭除去のための)及び/または殺虫剤除去に適用される従来の処理工程の1以上の複合効果を達成してもよいプロセスを提供することと同時に十分に高い能力(流速)を確保することであった。従って、開示されたプロセスは、精油の製造を単純化し、及び/または加速すべきであり、油の収率及び品質を改善すべきである。
【0012】
別の課題は、精油製品の香料、香味料または化粧品成分の特性に対する考えられる否定的な影響を回避しながら、同じ寸法での分子量、すなわち、130~300Daを有する不純物からさらに経済的な方法で、特定の香料、香料成分、香味料または化粧品成分における精油を精製するプロセスを提供することであった。加えて、たとえば、蝋またはフロクマリン誘導体等の高分子量成分は選択的に除去されるべきである。
【0013】
上記に示されているように、本発明は、十分な流れで工業的規模にて使用することができるプロセスを提供することを目指す。従って、製造プロセスはエネルギー及びコストも節約すべきである。
【0014】
本発明の課題は請求項1に記載のプロセスによって解決される。好ましい実施形態は従属クレーム及び後に続く説明にて提供される。
【0015】
特に本発明は、
(a)精油を提供し、任意で精油を有機溶媒と混合して溶液を形成することと、
(b)精油または溶液を少なくとも1つの選択性ナノ濾過膜と接触させ、その際、精油に由来する少なくとも1つの化合物を含む残余分が形成され、且つ残余分と透過溶液の組成が異なるように精油に由来する少なくとも1つの化合物を含む透過分が形成されることと、
(c)任意で残余分から有機溶媒を取り除き、精製された油を形成することによって、
たとえば、農薬、殺真菌剤または殺虫剤等の望ましくない物質及び鉄等の他の環境汚染物質を減らすことにより、精油の着色成分を取り除き、及び/または精油の臭気質を維持し、または高めるプロセスに関する。
【0016】
さらに具体的には、プロセスは精油の明度及び色度を高める着色された成分を取り除く。
【0017】
従って、第1の態様では、本発明は、以下の工程:
(i)膜が支持層と最上層とから成る選択的透過性の薄膜複合(TFC)ナノ濾過膜を提供することと、
(ii)場合により溶媒成分とともに、流動性投入物に提供することと、
(iii)膜の表面を横切ってそれを移動させることによって流動性投入物を分離し、残余分と透過分を形成し、透過分の1つ以上の成分の濃度が流動性投入物と比べて低下することとを含む、香料、香味料または化粧品成分のための着色の少ない精油を提供するナノ濾過プロセスに関するものであり、その際、透過分が流動性投入物と比べて脱色され、国際照明委員会によって特定されているようなCIELAB色測定方式に従って、透過分の明度の値L*が流動性投入物と比べて1以上のΔL*に上昇し、透過分の色度C*が流動性投入物と比べて、-2以下のΔC*に低下する。
【0018】
用語CIEL*a*b*(またはCIELAB)は国際照明委員会(国際照明委員会、以後、そのCIE略記)によって特定されている色空間である。それは、ヒトの眼に見える色すべてを数学的に記載するが、参照として使用される装置に頼らないモデルとして役立つように作り出された。これは、創作物の性質または色が表示される装置とは無関係に色が定義されることを意味する。それは業界内で色を測定するための最も一般的な色空間である。
【0019】
CIELABの3つの座標は色の明度(L*=0は黒を生じ、L*=100は拡散性白を示し;反射性白はさらに高くてもよい)、赤/マゼンタと緑の間のその位置(a*負の値は緑を示す一方で正の値はマゼンタを示す)、及び黄と青の間のその位置(b*負の値は青を示し、正の値は黄を示す)を表す。空間は装置に頼らないデジタル表示のために三次元の整数空間にマッピングされ、これらの理由でL*、a*及びb*の値は絶対的である。彩度のない色は常に値a*=b*=0を有する。
【0020】
本明細書では、試料の色は明度と彩度の値双方によって測定され、L*は色の輝度または暗度を示す。色度または色彩度は色の強度または明瞭さ(すなわち、鮮やかさ対鈍さ)を区別する。それは色中心からのベクトル距離である。
【0021】
色の色度が低ければ低いほど、色はいわゆる無色にさらに近づく。CIELAB方式については、C
*=平方根(a
*平方+b
*平方)である。CIELAB方式における色(色度)C*の雑色(variegation)は、
【数1】
によってこうして定義され、その際、a
*及びb
*はこの方式における色座標である。
【0022】
本発明については、透過分の明度の値L*は流動性投入物に比べて1以上のΔL*に上昇する。
ΔL*=L*(透過分)-L*(流動性投入物)
【0023】
さらに好ましくは、明度における上昇は、ΔL*が2以上、一層さらに好ましくは5以上である。
【0024】
加えて、本発明は濾過した精油またはその濾過した溶液における彩度/色度の低下を特徴とする。
【0025】
同時に、濾過した精油またはその濾過した溶液の色度は低下する
ΔC*=C*(透過分)-C*(流動性投入物)
【0026】
その結果、透過分の色度C*は流動性投入物と比べて低下し、ΔC*の値は、国際照明委員会によって特定されているようなCIELAB色測定方式に従って-2以下である。好ましくは、上記比較について、ΔC*は-3以下であり、一層さらに好ましくは-15以下である。色度を-20以下低下させることも可能だった。
【0027】
特に好ましいのは、色度の低下が上記に記載されているような明度の上昇と共に達成されることである。
【0028】
本発明の第2の態様では、透過分の明度の値は流動性投入物と比べて1.5以上、好ましくは2.0以上のΔL*に上昇し、及び/または透過分の色度C*は流動性投入物と比べて-4以下、好ましくは-10以下のΔC*に低下する。
【0029】
通常、残余分は望ましくない着色化合物または他の副産物及び蝋のような高分子成分の蓄積を経験する。その結果、残余分の色度及び明度に関して、流動性投入物と比べて対向する明度の低下及び色度の上昇がある。
【0030】
さらに、本発明のプロセスは、精油またはその濾過した溶液の透明度が流動性投入物または残余分と比べて上昇することも特徴とする。
【0031】
色度は一般にCIELABトポグラフィーでは白色・灰色中間点に向かって低下するが、特に明度の上昇がこれに伴えば、色空間にて、好ましくはさらに黄色生成物に向かって色ずれも存在することができる。これは一般にさらに明るい色の生成物として認識されることがある。従って、好ましくはb*はさらに小さい正の値にずれ、それは黄色成分の低下を示す。これは特にタンジェリン油のような柑橘油で特に顕著である。好ましくは、b*におけるずれは-20以上、さらに好ましくは-50以上までである。一層さらに好ましくは、色の低下及び明度の上昇は黄色成分の低下と同時に達成される。
【0032】
色を減らすこと及び明度を高めることにおけるこれらの効果は製造産出物を維持することまたは高めることと同時に達成される。本発明のプロセスは、精油に適用される従来の処理工程、たとえば、色除去及び/または悪臭除去及び/または殺虫剤除去の1以上の効果を単一プロセスにて且つ同時に組み合わせる。開示されているプロセスは精製され、減色された精油の製造を単純化し、加速し、油の収率及び品質を改善する。従って、精油を精製するプロセスはさらに経済的である。これらの効果は、本発明に係る革新的なプロセス、使用される有機溶媒及び流速の特定の組み合わせによって達成される。
【0033】
本明細書に記載されているような溶媒の有無にかかわらず精油を純化するための本発明のプロセスは着色成分の減少につながる。また、たとえば、光/UVまたは酸化の作用による経時的な再着色につながるさらなる化合物も本発明のプロセスによって濾過して取り除いた。その結果、プロセスは精油を純化することによって生成物の臭気質を維持するまたは高める。
【0034】
従って、本発明の第3の態様では、透過分の色安定性は、ナノ濾過直後の透過分と比べてナノ濾過の特定の時間量の後の透過分の明度の変化によって測定される再着色が-2.0以上、好ましくは―1.0以上、さらに好ましくは-0.5以上のΔL*に上昇しまたは単に低下し、及び/またはナノ濾過直後の透過分と比べてナノ濾過の特定の時間量の後の透過分の色度が10以下、好ましくは5以下、最も好ましくは1以下のΔC*に上昇しまたは単に低下する程度のものである。
【0035】
減色安定性を維持するための特定の時間量は好ましくは少なくとも48時間、さらに好ましくは20日間、一層さらに好ましくは21週間、最も好ましくは1年間である。あるいは、特定の時間量はUV光曝露の少なくとも48時間、さらに好ましくはUV光曝露の1週間、最も好ましくはUV光曝露の1ヵ月であることができる。明度及び色度における上記変化はこれらの時間の間に達成することができる。
【0036】
従って、経時的な再着色がナノ濾過処理の後で観察されているが、本発明の濾過法を採用するとそれを相当に低下させることができる。
【0037】
これらの効果が達成され、同時に製造産出性は高い。従って、特に香料、香料成分、香味料及び化粧品成分のために精油を精製するプロセスはさらに経済的である。
【0038】
本発明の第4の好ましい態様では、TFCナノ濾過膜は窒素含有ポリマーを含まない。
【0039】
一般に、膜処理は工業用途で使用されており、さらに従来の精製及び分離のプロセス(たとえば、蒸留、蒸発、吸着、抽出及びクロマトグラフィー)の代替を提供している。これは、新しい膜を開発する経済、環境及び安全性という点で膜技術が従来の技法を超えて提供する利益によって動機付けられている。ナノ濾過に利用できる膜用の材料はセラミック及び混合マトリクスと同様に高分子マトリクスである。2つの主要な種類の膜は、一体化スキンド非対称(ISA)膜及び薄膜複合(TFC)膜である。それらは双方とも高分子膜である。本発明では、TFC膜を使用し、それは、より多孔質で化学的に異なる副層の上にキャストされた、分離層から成る。
【0040】
本発明によれば、薄膜複合(TFC)膜では、超薄分離層は「最上層」として定義され、さらに多孔質の化学的に異なる副層は「支持層」として定義される。双方の層は膜であり、それは非常に柔軟性であり、特定の用途のための、設計での相当な自由度を特徴とする。膜支持層と最上層の特徴的な層状構造のゆえに、2つの層の化学的性質及び性能を独立して最適化して全体的な膜性能を最大化することができる。支持層の選択は最上層の選択と同様に重要である。
【0041】
薄膜複合ナノ濾過膜は通常、界面重合によってまたは浸漬コーティングを介して調製される。従って、さらに多孔質の支持層は最上層を形成するための様々な組成物でコーティングされる。あるいは、薄膜複合ナノ濾過膜は、支持層の上の最上非晶質炭素層としてダイヤモンド様の炭素(DLC)ナノシートのプラズマ重合を介して作製される。
【0042】
本発明では、薄膜複合ナノ濾過膜は好ましくは支持層のコーティングによって調製される。
【0043】
窒素を含有しないポリマーを含む薄膜複合ナノ濾過膜は強い脱色を示すことが観察された。考えられる説明の1つは、本発明のプロセスが精製された精油にて微量元素である鉄を取り除くことであり得る。従って、薄膜複合ナノ濾過膜は窒素含有ポリマーを含まないことが本発明には好ましい。
【0044】
本発明によれば、支持層は独立して最適化されて全体的な膜性能を最大化することができる多孔質支持体として使用される。支持層のために選択される物質はTFC膜の支持体として使用される最も一般的な溶媒に安定のポリマーを含む。
【0045】
第5の好ましい態様では、本発明は、TFCナノ濾過膜の支持層が、ヘテロ原子O、N、S及び/またはハロゲン及び/またはSiの1以上を含むポリマー、さらに好ましくはヘテロ原子O及び/またはSを含むポリマーを含むプロセスに関する。
【0046】
特にこれらのTFCナノ濾過膜は透過分にて優れた殺虫剤除去を示すことが観察された。従って、薄膜複合ナノ濾過膜がヘテロ原子O、N、S及び/またはハロゲン及び/またはSiの1以上を含むポリマーを含むことが本発明には特に好ましい。最良の効果はヘテロ原子OまたはNを含むポリマーを用いて示された。窒素を含有しない膜が特定の目標では好ましいが、他の利点を達成するには、ヘテロ原子、たとえば、窒素を含有するポリマーも含む膜も好ましい。特に好ましいのは膜組成物におけるPANポリアクリルニトリルの使用である。
【0047】
殺虫剤除去は本発明に係る単一の膜のみを使用して効果的に達成することができることが見いだされたのに対して、最先端の技術で同じ規模での有効な殺虫剤減少を得るには、種々のカットオフ値を持つ多重膜が採用されなければならない。
【0048】
第6の特に好ましい態様では、本発明は、支持層が、たとえば、ポリジメチルシロキサン、ポリオクチルメチルシロキサン、ポリ[1-(トリメチルシリル)-1-プロピン]、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフッ化ビニリデン及びポリエーテルエーテルケトン及びそれらの混合物等の、S、Oまたはハロゲン・ヘテロ原子及び/またはSiを伴うポリマーから選択される物質を含むプロセスに関する。
【0049】
本発明者らは、支持層膜が、たとえば、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンまたはポリエーテルエーテルケトン等のポリマーから形成されるTFCナノ濾過膜が精油の着色につながる不純物を取り除くことについて最良の効果を示すことを見いだした。
【0050】
好ましくは、薄膜複合ナノ濾過膜の支持層は少なくとも1つのSまたはOヘテロ原子を伴うポリマー、たとえば特に、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、及びそれらの混合物から選択される物質を含む。
【0051】
代わりの変形では、薄膜複合ナノ濾過膜の支持層はヘテロ原子を伴わないポリマー、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン及びそれらの混合物から選択される物質を含む。これらのTFCナノ濾過膜はまた良好な精油の脱色特性も示した。
【0052】
本発明の別の展開では、薄膜複合ナノ濾過膜の支持層は、炭化ケイ素、ゼオライト、酸化ジルコニウム、酸化チタンまたは酸化アルミニウム及びそれらの混合物等の、無機物質から選択される物質を含む。
【0053】
本発明によれば、超薄「分離層」として使用される最上層は独立して最適化されて全体的な膜性能を最大化することができる。最上層に選択される物質は溶媒に安定なポリマーを含む。
【0054】
第7の態様では、本発明は、最上層が、ポリジメチルシロキサン、ポリオクチルメチルシロキサン、ポリ[1-(トリメチルシリル)-1-プロピン]、ポリ(酸化2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)、ポリアクリル酸、固有の微孔構造のポリマー(PIM-1)、ポリスチレン-b-ポリ(酸化エチレン)ジブロックコポリマー、ポリ(スチレンスルホン酸ナトリウム(PSS)、またはポリ硫酸ビニル(PVS)及びそれらの混合物から成る群から選択される物質を含むプロセスに関する。
【0055】
本発明者らは、最上層膜が、ポリジメチルシロキサン、ポリオクチルメチルシロキサン、ポリ[1-(トリメチルシリル)-1-プロピン]、ポリ(酸化2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)、ポリアクリル酸、固有の微孔構造のポリマー(PIM-1)、ポリスチレン-b-ポリ(エチレンオキサイド)ジブロックコポリマー、ポリ(スチレンスルホン酸ナトリウム(PSS)、またはポリビニルサルフェート(PVS)及びそれらの混合物等のポリマーから形成されるTFCナノ濾過膜が、たとえば、殺虫剤または殺真菌剤等の合成不純物を取り除くために良好な効果を示すことを見いだした。
【0056】
これは特に、本発明の第8の態様で実証されているように、最上層がシリコーン、好ましくは架橋されたポリジメチルシロキサンでコーティングされた有機親和性の層である場合である。
【0057】
さらに好ましいのはシリコーンでコーティングされた薄膜複合ナノ濾過膜である。特に好ましいのは架橋されたシリコーンでコーティングされた薄膜複合ナノ濾過膜である。これらのTFCナノ濾過膜は、合成不純物、特に、たとえば、ピラクロストロビンもしくはトリフロキシストロビン等の殺真菌剤またはピレスロイドを含む殺虫剤及び殺昆虫剤、たとえば、ビフェントリン、シフルトリン、及びp,p-ジコホールもしくはベンゾイル尿素、たとえば、ジフルベンズロンもしくはフルフェノクスロンを取り除くのに非常に良好な効果を示した。
【0058】
本発明のさらなる好ましい変形では、薄膜複合ナノ濾過膜、特に最上層の性能は適当な処理後方法を適用することによってさらに向上させることができる。幾つかの技法、たとえば、硬化、グラフト、プラズマ、UV、たとえば、照射及び化学処理による架橋は当該技術で既知である。
【0059】
さらに、薄膜複合ナノ濾過膜は、無機物質及び高分子物質双方の特性を組み合わせる新しい膜を誂えるのを可能にする有機・無機ポリマーハイブリットから成ることができる。
【0060】
本開示に従って使用するのに好適な選択性の膜には、高分子膜及びセラミック膜、と同様に混合された高分子/無機の膜が挙げられる。
【0061】
本発明の薄膜複合ナノ濾過膜は着色成分を選択的に取り除くことによって精油にて着色成分の減少を示した。精油における着色成分の減少に付け加えて、一部の膜は特に、長時間(たとえば、少なくとも48時間)の静置の際の、たとえば、光または酸化による再着色の減少も示した。おそらく、最上層と支持層の膜の組み合わせは、精油の脱色と他の化合物、たとえば、酸化され易い成分の除去との二重効果につながる。
【0062】
膜の性能は異なるパラメーターを特徴とする。パラメーターの1つは膜の名目上の分子量カットオフ(MWCO)である。用語「MWCO」は膜が90%の阻止(R(%)≧90)を有する最小溶質分子量として定義される。
【0063】
膜の性能を特徴付けるもう1つのパラメーターは阻止(または選択性)である。用語「阻止」はCPが透過分における溶質濃度であり、「透過分」が膜を通過している液体であり、CRが残余分(または供給分)における溶質濃度であり、「残余分」は膜を通過していない液体である、等式(a)によって定義される。
R=100×(1-CP:CR) (a)
【0064】
本発明のプロセスの第9の態様によれば、薄膜複合ナノ濾過膜は150g/モル~1200g/モルの間の分子量カットオフを有する。
【0065】
好ましくは、薄膜複合ナノ濾過膜は300g/モルから700g/モルに及ぶ、特に好ましくは350g/モルから600g/モルに及ぶ分子量カットオフを有する。
【0066】
本発明のさらに有利な変形では、薄膜複合ナノ濾過膜は好ましくは2つの異なる分子量カットオフを持つ2つの異なる層を有し、特に好ましいのは、200g/モル~1200g/モルの間の分子量カットオフを有する少なくとも1つの層である。
【0067】
好ましくは、薄膜複合ナノ濾過膜は300g/モルから700g/モルに及ぶ、さらに好ましくは400g/モルから600g/モルに及ぶ分子量カットオフを持つ少なくとも1つの選択性の膜を有する。
【0068】
本発明の具体的な展開では、2つの層は異なる分子量カットオフ値を有し、その際、少なくとも一方の層は150g/モル~400g/モルの間の分子量カットオフを有し、他方の層は500g/モル~700g/モルの間の分子量カットオフを有する。
【0069】
本発明者らは、最上層膜がポリマーから形成されるTFCナノ濾過膜が蝋、たとえば、脂肪族炭化水素、アルコール及び関連するケトン、アルデヒド、酸、ジオール、クマリン、フロクマリン、ステロール、フラボノイド、ビタミン、植物ステロール、親油性ホルモン及び酸化生成物を含む天然に存在する不純物を取り除くために良好な効果を示すことを見いだした。
【0070】
第10の態様では、本発明は精油及び溶媒を含むプロセスを提供し、その際、溶媒は溶媒は少なくとも10重量%の有機溶媒成分と任意で水とを含み、有機溶媒成分は少なくとも3×10-30Cmの双極子モーメントを有する。この量を減らすことは可能であるが、ハイスループット濾過性能を確保するには少なくとも一部の有機溶媒が好ましい。
【0071】
溶媒系は膜を通過する流速を大きく高めるという利点を有する。通常、4部の精油と1部の溶媒から1部の精油と1部の溶媒までの溶媒の組み合わせが好ましい。これは、溶媒除去の余分な工程を考慮に入れても、特に時間単位当たりの精油の収率を高める程度に流れを強化する。場合によっては、溶媒を用いてとにかく精油を濾過することが必要不可欠である。
【0072】
ナノ濾過は膜濾過に基づく方法である。ナノ濾過膜はマイクロ濾過及び限外濾過で使用されるものより小さいが、逆浸透におけるものより大きい1~10ナノメートルの孔サイズを有する。
【0073】
本発明では、濾過の間に精油と一緒に溶媒を用いることによって高い流速及び良好な分離が達成される。溶媒なしで膜濾過プロセスを実施することは可能であるが、ハイスループットを達成するために、精油に溶媒を加えることによって流動性投入物が良好に生成される。特に、溶媒は少なくとも10重量%の有機溶媒成分と任意で水とを含む。ほとんどの精油輸送プロセスは、本発明に係る膜を介して輸送される場合、有機溶媒成分が少なくとも3×10-30Cmの双極子モーメント値を有すれば、最良に作動することが見いだされた。
【0074】
用語「双極子モーメント」は、分子内での正及び負の電荷の分離、すなわち、分子全体の極性の測定として定義される。双極子の電場強度は双極子モーメントの大きさに比例する。電気双極子モーメントのSI単位はクーロン・メートル(Cm)である。溶媒の双極子モーメントの値は、Christian Reichardt,Solvents and Solvent Effects in Organic Chemistry,Wiley-VCH Publishers,3rd ed.,2003のリストに従って導き出すことができる。
【0075】
本発明の好ましい変形では、流動性投入物は精油と有機溶媒とを含み、その際、溶媒は少なくとも10重量%の有機溶媒成分を含む。精油は有機溶媒と混合されて油と溶媒の均質な溶液を形成する。混合は当業者に既知の技法によって、たとえば、静的インラインミキサー、動的インラインミキサー、及び/または機械的撹拌子を含有する混合容器を介して達成されてもよい。好ましくは、溶液は、精油に対して10~50重量%の有機溶媒成分に及ぶ量で、特に好まれては精油に対して10~20重量%の有機溶媒成分に及ぶ量で精油を含有してもよい。水は好ましくは共溶媒として使用されてもよく、その場合、量は有機溶媒・水の混合物を指す。
【0076】
溶媒を使用することの利点の1つは精油を有機溶媒と混合することによって膜系のデッドボリュームを減らすことである。
【0077】
本発明の好ましい第11の態様では、流動性投入物を調製するのに使用される有機溶媒は少なくとも4×10-30Cmの双極子モーメントを有する。この文脈で特に有用な溶媒は、ジエチルエーテル、エタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチル-tert-ブチルエーテル、シクロヘキサノール、酢酸ブチル及びアセトンである。
【0078】
特に好ましい溶媒は、エーテル部分を持つようなもの、たとえば、ジエチルエーテル及びメチル-tert-ブチルエーテル(MTBE)である。また、この文脈で有用な溶媒はアルコール部分を持つ溶媒、たとえば、エタノール、イソプロパノール及びシクロヘキサノールであり、そのうち、エタノール及びメチル-tert-ブチルエーテル(MTBE)は最も好ましい。メタノールは香味料のために精油を濾過するプロセスでは一般に使用されない。
【0079】
本発明に係る有機溶媒のプラス効果は流速が上がることである。高い選択性及び良好な脱色を達成するために、さらに高い流速にもかかわらず、本発明に係る膜を採用することが好ましい。
【0080】
異なる変形では、本発明のプロセスは2×10-30Cm未満の双極子モーメントを有する有機溶媒成分を採用する。これは好ましくはヘキサンである。
【0081】
本発明の別のさらなる改善及び第12の態様では、溶媒はさらに、2×10-30Cm未満、好ましくは1×10-30Cm未満の双極子モーメントを有する、最も好ましいは0×10-30Cm未満の双極子モーメントを有する、すなわち、全体的に無極性である第2の有機溶媒成分を含む。これらの溶媒のうち、好ましくはヘキサンまたはヘプタンが第2の無極性の共溶媒として有用であった。共溶媒の使用は流動性投入物の流動性に対して効果を有する。最良の結果はヘキサンを用いて観察された。
【0082】
精油と有機溶媒との混合物を調製するのに使用される有機溶媒はメチル-tert-ブチルエーテル(MTBE)、ジエチルエーテル、メチルエチルケトン、エタノール及びそれらの混合物から選択されることが本発明の変形すべてにおいて特に好ましい。特に好ましい有機溶媒はエタノールと水との混合物であり、その際、主成分はエタノールであり、たとえば、5体積%の水に対して95体積%のエタノールである。高い流速にもかかわらず、不純物を取り除くために高い選択性を達成するために最も特に好ましい有機溶媒はメチル-tert-ブチルエーテル(MTBE)またはエタノールである。これらの溶媒は使用される本発明のTFCナノ濾過膜との最良の相互作用を有すると思われる。
【0083】
採用される溶媒は本発明に係る膜、特に本明細書に記載されているような窒素を含まない膜と上手く連携する。それによって膜成分が精油に浸出しないことを保証することができる。これは香味料に特に重要である。
【0084】
本発明の好ましい変形では、精油の精製のためのナノ濾過プロセスはさらに、膜の表面にわたって流れに対して残余分を再び向け直すことによって残余分を再利用し、後続の残余分と透過分を形成する工程を含む。
【0085】
用語「残余分の再利用」は本明細書で使用されるとき、残余分を供給タンクに戻し、次いで同じ膜の表面にわたって再び流れを移動させ、さらなる後続の残余分と透過分を形成することを意味する。
【0086】
本明細書で開示されているプロセスは複数の段階で適用することができる。非限定例として、第2の段階はさらに、不純物の濃度を下げるために実施された第1の濾過に由来する残余分を提供することと;第1の残余分溶液を供給タンクに戻し、次いで同じまたは好ましくは異なる選択性のTFCナノ濾過膜を横切って再び通すこととを含み、その際、第2の残余分と第2の透過分が形成され、さらなる不純物の削減が実施されている。このプロセスはさらに繰り返されてさらに、第2の濾過に由来する透過分を選択性TFC膜上に再び通して高い精製のもとで第3の残余分と第3の透過分を生成することを含むことができる。プロセスは第4及び第5の通過のために反復することができる。所望の精製及び収率に応じて、工業規模の収率及びプロセスの時間効率を保持するには普通2または3回の反復が十分である。異なる種類の膜の使用は1種類の膜のみでは取り除くことができない不純物の二重選択を可能にする。
【0087】
本発明の代替のさらなる展開では、残余分が回収される。一部の適用については、さらに強い、選択的にさらに濃縮された香料組成物が採用される。香料における特定の成分の蓄積は有用な新しい成分の蓄積につながる。
【0088】
本発明の好ましい変形では、精油の精製のためのナノ濾過プロセスは第1の及び/またはその後の膜濾過サイクルから得られた透過分を回収するさらなる工程を含む。通常、これには、透過分として得られる精製された香油から溶媒を取り除く工程が含まれる。
【0089】
本発明のプロセスのさらなる因子は流れであり、それは、単位面積当たり及び単位時間当たり膜を通って流れる液体体積([kg/m2・時間]として定義される。生産流れを達成することは最適化されている。
【0090】
本発明の好ましい第13の態様では、膜を通る流速は少なくとも8kgの透過分/時間・m2での膜のサイズである。好ましくは、膜を通る流速は少なくとも12kgの透過分/時間・m2での膜のサイズである。さらに好ましくは、膜を通る流速は少なくとも20kgの透過分/時間・m2での膜のサイズである。最も好ましくは、膜を通る流速は少なくとも50kgの透過分/時間・m2での膜のサイズである。
【0091】
述べられた流速は以下に従って算出した。グラム/分で測定された結果をキログラム/時間・平方メートルに変換した。平面シートのTFCナノ濾過膜の表面は28cm2だった。
【0092】
一般に、本発明に係る特徴の特に良好な組み合わせは、(i)膜が支持層と最上層とから成る選択的に透過性の薄膜複合(TFC)ナノ濾過膜を提供することと、(ii)精油と溶媒とを含む流動性投入物を提供し、溶媒が少なくとも10重量%の有機溶媒成分と任意で水とを含み、有機溶媒成分が少なくとも3×10-30Cmの双極子モーメントを有することと、(iii)膜の表面を横切って流動性投入物を移動させることにより流動性投入物を分離して残余分と透過分を形成するので、透過分の1以上の成分の濃度が流動性投入物と比べて低下することとを含む精油の精製のためのナノ濾過膜プロセスに関係し、その際、第1の膜を通る流速は少なくとも8kg[透過分]/時間・m2[膜]である。本明細書では好ましくは、精油の脱色及び明度について記載されている効果も達成される。
【0093】
本発明のプロセスの具体的な流速は、濾過ケーキは洗い流されるので膜上に濾過ケーキは形成されないことを示した。同時に、合成不純物はTFCナノ濾過膜によって選択的に取り除かれる。本発明のプロセスは十分な流れを必要とする工業規模で使用することができる。従って、このプロセスはエネルギー及びコストを節約する。高い流速を達成するために膜及び溶媒のパラメーターを適合させることは生産の規模拡大をするために重要である。
【0094】
工業的規模での分離を行うために、大きな膜面積の効率的で経済的な梱包も必要とされる。これは膜をモジュールに詰め込むことによって行われる。3つの主な因子:適当な化学的、機械的及び透過の特性のための膜材料の選択;材料の欠陥がない強固な膜への製作;及び小型で表面積が広いモジュールへの膜の梱包が、膜モジュールの上出来な製作に寄与する
【0095】
別の変形では、薄膜複合ナノ濾過膜は様々なモジュール、たとえば、らせん巻き、封筒型、平板または管状のモジュールを有する。
【0096】
らせん巻きモジュールは標準の直径の範囲で利用できる。このモジュールは中心管の周りに巻き付けられた平板を使用する。膜は透過分スペーサーを超えて3つの端に沿って接着され「可動部」を形成する。透過分スペーサーは膜を支え、透過分を中心透過管に導く。各可動部間で、メッシュ様の供給スペーサーが挿入される。らせん巻きモジュールのサイズは0.3~5m2である。
【0097】
管状モジュールは、内側に膜の活性表面を持つ管の束状構造を有する。管を通る流れは普通乱れており、低濃度の極性形成を確保するが、エネルギーコストも増やす。管は自立型であることができ、または穴の開いた金属管への挿入によって支えることができる。このモジュールの設計は破裂前に耐えることができる圧力によってナノ濾過については限定されるので、可能な最大流れを限定する。管状モジュールには普通、無機膜が使用される。管状モジュールのサイズは0.5~2m2である。
【0098】
平板モジュールは平たい円板状の膜である。平板モジュールの円板のサイズは20~250cm2の間である。それらはセラミック物質または高分子物質で作られる。
【0099】
封筒型モジュールは封筒または中空繊維膜に似て見える。封筒型モジュールはらせん巻きモジュールと比べて幾つかの利点を提供する:それは非常に短い透過距離を有する、及びそれは、特定の溶媒では安定ではないことがある供給スペーサー及び接着剤の使用を必要としない。それは40バールの最大圧力で作動し、同じサイズのらせん巻きモジュールによって対象とされる膜面積がさらに大きいので、それは幾つかの短所を有する。
【0100】
好ましくは、本発明に使用される薄膜複合ナノ濾過膜はらせん巻きモジュールまたは平板モジュールである。
【0101】
本発明によれば、流動性投入物は好ましくは0.2~25mPa・sの範囲での粘度を有するべきである。一層さらに好ましくは、流動性投入物は0.2~2mPa・sの範囲での粘度を有する。
【0102】
本発明の別の変形では、流動性投入物は0.5~1.2kg/Lの範囲での密度を有する。流動性投入物の密度は採用される溶媒及び精油に適合させる。従って、精油と有機溶媒との組み合わせは流動性投入物の密度に関係した。好ましくは、流動性投入物は0.8~1.2kg/Lの範囲での密度を有する。特に好ましいのは、流動性投入物が0.8~1.0kg/Lの範囲での密度を有することである。流動性投入物の密度及び粘度は流動性投入物の流動性に対する効果も有する。最良の結果は上述の範囲を用いて観察された。
【0103】
一部の精油は熱分解に対して弱いことが知られている。本明細書で開示されている方法は穏やかな温度条件で効果的に実施される。これらの条件は熱感受性の成分に有害ではない。従って、熱感受性の成分はその収率を下げる、且つ精油の香料特性または風味を変える可能性がある異なる化学種に変換されない。
【0104】
従って、本発明のさらに好ましい変形では、プロセスは10℃から50℃に及ぶ温度及び/または10バールから50バールに及ぶ膜間圧で実施される。本発明を実行するためのさらに好ましい温度範囲は20~35℃である。好ましくは、濾過は10~40バールの範囲での圧力下で実行される。さらに好ましくは、膜間圧は20バールから35バールに及ぶ。本発明によれば、好ましくは、ナノ濾過プロセスは10℃から40℃に及ぶ温度にて且つ20バールから35バールに及ぶ膜間圧で実施される。
【0105】
望ましくない天然の及び合成の不純物の減少は溶媒・油の溶液を、望ましくない不純物を保持する、すなわち、残余分の形態で、且つ所望の精油化合物の透過を可能にする、すなわち、透過分の形態で、薄膜複合ナノ濾過膜と接触させることを介して達成されてもよい。本発明の少なくとも1つの展開では、膜間圧は10バールから40バールに及ぶ。
【0106】
好ましくは、膜間圧は25から35バールに及んでもよく、30バールで特に好ましい。上記温度範囲と組み合わせて、製品劣化のような二次効果がなく、選択性が最適化される。
【0107】
さらなる好ましい変形では、プロセスは、窒素またはヘリウムまたは不活性雰囲気のもとで実施される。不活性雰囲気を使用することは3つのプラス効果を有する。第1の効果は酸化の影響を受け易い化合物が不活性雰囲気によって保護されることである。第2の効果は、濾過プロセスの間に流動性投入物のTFCナノ濾過膜への逆流がないので空気の挿入はプロセスから除外されることである。さらに、不活性気体は、引火性有機溶媒を用いて問題であり得る爆発防護を提供する。
【0108】
本発明のプロセスは一般に精油について最適化されるが、精油の選択も重要であり得る。
【0109】
第14の態様によれば、本発明は、以下の柑橘属:オレンジ、柑橘、レモン、ライム、グレープフルーツ、ベルガモット、キーライム、ザボン、シトロン、マンダリン、タンジェリン、ダイダイ、ブラッドオレンジに由来する精油と上手く連携することができ、その際、精油は、ペルーバルサム油、ベンゾインシャム油、パチョリ油、ローズ油、イランイラン油、丁子葉油、レモン油、オークモスアブソリュート及びバニラ抽出物から成る群から選択される。
【0110】
好ましくは、第15の態様では、精油は、マンダリン油、ペルーバルサム油、タンジェリン油、ブラッドオレンジ油、パチョリ油、バニラ抽出物及びベンゾインシャム油から成る群から選択される。
【0111】
そのような柑橘油について特に、色成分の除去は効果的だった。その上、さらに明るい、黄色が少ない色への変化が場合によっては観察されてもよく、それは黄色成分の特に効果的な除去の結果であってもよい。
【0112】
精油は、たとえば、植物に由来し、好ましくは、液果、種子、樹皮、材木、根茎、葉、樹脂、花、皮及び根から生産される油である。そのような場合、高分子量成分及び蝋の除去は重要であり、本プロセスによって達成することができる。
【0113】
精油はまた、アングプル(angpur)、タヒチライム、クレメンタイン、ユズ、カフェライム、ウグリ、オールスパイス油、杜松油、クミン油、シナモン樹皮油、樟脳油、シタン油、生姜油、メボウキ油、ユーカリ油、レモングラス油、マスチックアブソリュート、銀梅花油、ペパーミント油、ローズマリー油、スペアミント油、ティーツリー油、乳香油、カモミール油、丁子油、ジャスミン油、ラベンダー油、ビャクダン油、ヨモギ油及びバレリアン油に由来する油から選択することができる。他の好ましい精油はシナモン葉、丁子葉、ベチバー及びラベンダーに由来するものである。
【0114】
別の変形では、本発明は、精油がアルデヒドまたはケトン、たとえば、アニスアルデヒド、シトラール、ヒドロキシシトロネラル、Lilial(登録商標)、メチルノニルアセトアルデヒド、アリルイオノン、ベルベノン、ノートケトン、ゲラニルアセトン、α-アミル桂皮酸アルデヒド、Georgywood(商標)、ヒドロキシシトロネラル、Iso E Super(登録商標)、Isoraldeine(登録商標)(メチルイオノン)、Hedione(登録商標)、マルトール、メチルセドリルケトン及びバニリンである;及び/または精油がアルコールである、たとえば、好ましくはシス-3-ヘキサノール、桂皮酸アルコール、シトロネロール、Ebanol(登録商標)、eugenol、ファルネソール、ゲラニオール、メントール、ネロール、ロジノール、Super Muguet(商標)、リナロール、フェニルエチルアルコール、Sandalore(登録商標)、テルピネオール、Timberol(登録商標)及び1-(2、2、6-トリメチルシクロヘキシル)ヘキサン-3-オールから成る群から選択される;及び/または精油が、エーテルまたはアセタールである、たとえば、好ましくはAmbrox(登録商標)、ゲラニルメチルエーテル、酸化ローズまたはSpirambrene(登録商標)から成る群から選択される;及び/または精油がラクトンのエステルである、たとえば、好ましくは酢酸ベンジル、酢酸セドリル、γ-デカラクトン、Helvetolide(登録商標)、γ-ウンデカラクトン、酢酸ベチベニル、プロピオン酸シンナミル、酢酸シトロネリル、酢酸デシル、酢酸ジメチルベンジルカルビニル、アセト酢酸エチル、イソ酪酸シス-3-ヘキセニル、酢酸リナリル及び酢酸ゲラニルから成る群から選択される;及び/または精油が大員環である、たとえば、好ましくはアンブレットリド、ブラシル酸エチレンまたはExaltolide(登録商標)から成る群から選択される;及び/または精油が複素環、好ましくはイソブチルキノリンであるプロセスに関する。
【0115】
本発明の開示されているプロセスは広い範囲の天然及び合成の不純物を取り除くことができる。従って、それによって得られる精油は、たとえば、一般に化粧品成分、香味料または香料及び香料成分として好適である。
【0116】
好ましい主要な変形では、着色成分の除去は改善された色、しかし、好ましくは減色を有する油を生じる。また、プロセスは好ましくはしばらく後の精油の再着色に関与するさらなる成分も取り除く。精油の再着色に関する着色成分または供給源成分は天然の及び合成の不純物またはそれらの酸化生成物であってもよい。
【0117】
本発明の別の好ましい展開では、望ましくない臭覚及び味覚の除去は改善された官能特性を有する油を生じる。精油における望ましくない臭覚及び味覚の供給源は、たとえば、天然の及び合成の不純物の酸化生成物であってもよい。望ましくない天然の及び合成の不純物は通常異なる化学構造を有し、時には完全にそうである。しかしながら、その選択的な除去は、採用される濾過膜及び使用される溶媒における特性の均衡に左右される。
【0118】
本発明のプロセスによって選択的の取り除かれる合成の不純物には、農薬及びそれらの残留物、たとえば、殺真菌剤、殺虫剤、殺生物剤、または殺昆虫剤及びそれらの分解産物が挙げられる。
【0119】
取り除かれる殺虫剤には、有機塩素系殺虫剤、たとえば、リンダン、エンドリン、ジエルドリン、アルドリン、イソドリン、ヘプタクロル-エクソ-エポキシド、ヘプタクロル-エンド-エポキシド、トランス-クロルダン、シス-クロルダン、オキシ-クロルダン、クロルダン、ヘプタクロル、エンドスルファン-1及びミレックスも挙げられる。
【0120】
好ましくは、本発明のプロセスは、ピレスロイド類、たとえば、ビフェントリン、シフルトリン、及びp,p-ジコホール、またはベンゾイル尿素類、たとえば、ジフルベンズロン及びフルフェノクスロンを含む殺虫剤または殺昆虫剤を取り除く。
【0121】
取り除かれるさらなる殺虫剤は好ましくは有機リン系殺虫剤、たとえば、クロルピリホス、メチダチオン、ホスメット、パラチオン、マラチオン、メチルパラチオン、ジアジノン、ジクロルボス、フェニトロチオンテトラクロルビンホス、アジンホスメチル及び有機窒素系殺虫剤、たとえば、プロパルギットである。
【0122】
その一方で、本発明のプロセスは、殺真菌剤も上手く取り除いた。そのような殺真菌剤には、ストロビルリン類、たとえば、アゾキシストロビン、ピラクロストロビン、及びトリフルオキシストロビンが挙げられる。
【0123】
蝋、たとえば、脂肪族炭化水素、アルコール及び関連するケトン、アルデヒド、酸、ジオール、クマリン、フロクマリン、ステロール、フラボノイド、ビタミン、植物ステロール、親油性ホルモン及び酸化生成物を含む天然に存在する不純物も取り除かれてもよい。
【0124】
好ましくは、本発明のプロセスは、フロクマリン、たとえば、オキシペウセダニン、ヘラクレニン、ビャクアンゲリコール、及び8-ゲラニルオキシプソラレンを取り除く。
【0125】
好ましくは取り除かれることが予想される環境汚染物質には、生きている生物によって分解され得ないので、極端に長い期間、生態圏に存続する生分解性ではない汚染物質が挙げられる。それらには、プラスチック、金属、ガラス、一部の殺虫剤及び除草剤、と同様に放射線同位元素が挙げられる。
【0126】
さらに、天然に存在する不純物または重金属を含む環境汚染物質は透過分にて選択的に減らされ得ることが見いだされた。これは特に鉄(Fe)について効果的だった。酸化的分解の供給源であることができ、且つ製品精油の長期再着色を引き起こすことができる金属を減らすことは重要である。
【0127】
減じられる重金属として好ましいのは、コバルト(Co)、銅(Cu)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)、モリブデン(Mo)、ニッケル(Ni)、セレニウム(Se)及び亜塩(Zn)である。それらの多様な産業上の、家庭での、農業での、医学での及び技術上の適用は環境におけるその広い分布につながっている。重金属は地殻全体を通して見いだされる天然に存在する元素であるが、ほとんどの環境汚染及びヒトへの曝露は、金属及び金属含有化合物の産業上の生産及び使用、ならびに家庭での及び農業での使用から生じる。これらの不純物の減少は化粧品成分及び香味料にとって特に重要である。
【0128】
本発明は、(i)精油を提供する工程と;(ii)精油と溶媒と含み、溶媒が少なくとも10重量%の有機溶媒と任意で水とを含み、有機溶媒成分が少なくとも3×10-30Cmの双極子モーメントを有する流動性投入物を提供する工程と;(iii)膜の表面を横切って流動性投入物を移動させることによって流動性投入物を分離し、残余分と透過分を形成するので、透過分の1以上の成分の濃度が流動性投入物に比べて低下する工程とを含む、TFCナノ濾過膜を採用することによって精油に存在する天然の不純物(たとえば、蝋、酸化生成物、及び着色成分)及び合成の不純物(たとえば、残留農薬、重金属)を減らすプロセスも開示し、その際、膜は支持層と最上層とから成り、薄膜複合ナノ濾過膜はヘテロ原子O、NまたはSの1以上を含有するポリマーを含み;その際、第1の膜を通る流速が少なくとも8kg[透過分]/時間・m2[膜]であり;不純物の膜除去(Rinpurities)が油種の除去(Roil)より大きいように、膜が選択的に透過性の膜である。
【0129】
本開示はまた、本明細書で開示されているプロセスから生じる組成物にも関する。そのような組成物には、精製された精油及び/または透過分物質が含まれてもよいが、残余分さえもが含まれてもよい。好ましい実施形態では、開示されているプロセスは精製された精油を生産する。通常、本発明の精油は本発明のプロセスにて採用される溶媒の除去によって回収される。
【0130】
好ましい変形では、開示されているプロセスは、供給精油と比べて少なくとも1つの不純物、たとえば、農薬または金属の90%の減少を生じる。
【0131】
別の好ましい変形では、精油の精製の品質は、欧州薬局方に従って決定される塩の残留物、いわゆる乾燥残留物の量に左右される。本発明のプロセスは乾燥残留物が少なくとも20%減らされ得ることを示した。
【0132】
さらに別の変形では、精油が処理されて精油における不純物の濃度を下げ、たとえば、重金属、好ましくは鉄の濃度を少なくとも85%低下させる。
【0133】
第16の態様では、本発明はまた、先行する態様及び変形のプロセスによって得られる精製された精油にも関する。本明細書に記載されているように、そのような精製された油またはそれを含有する溶液はあまり色彩豊かではなく、すなわち、CIELAB測定に従って低い色度を有する。
【0134】
好ましくは、精製された精油の明度の値L*は90以上、好ましくは95以上であり、及び/または色度C*は15以下、好ましくは5以下である。
【0135】
別の第17の態様では、本発明は、高級香料組成物、香料処方、またはシャワージェル、好ましくはシャワージェルの調製のためのTFCナノ濾過膜によって濾過した精油の使用に関する。好ましくは、これらの適用は無色及び/または透明である。
【0136】
別の第18の態様では、本発明は、支持層と最上層とを伴った選択的に透過性の薄膜複合(TFC)ナノ濾過膜を含む、先行クレームのいずれかに記載の精油の精製のためにナノ濾過プロセスを実施するための装置に関するものであり、その際、TFCナノ濾過膜は窒素含有ポリマーを含まず;最上層はポリジメチルシロキサンであり;第1の膜を通る流速は少なくとも8kg[透過分]/時間・m2[膜]であり;TFCナノ濾過膜は350g/モル~500g/モルの間の分子量カットオフを有する。
【0137】
好ましい変形では、本発明は、さらに、平板またはらせん巻きのTFCナノ濾過膜と再循環ポンプと残余分用の容器と透過分用の別の容器と供給タンクとを含み、使用される温度に応じて加熱システムまたは冷却システムを有する、上記に記載されているような精油の精製のためのナノ濾過プロセスを実施するための装置(
図14または
図15を参照のこと)に関する。冷却システムは、好ましくは供給タンクの上に冷却ジャケット等を含んで装置からのまたは濾過プロセスからの流動性投入物への熱伝導を阻止することができる。
【0138】
別の好ましい変形では、本発明は、膜領域から離れて供給タンクまでのTFCナノ濾過膜での濾過プロセスの間に蓄積される熱を移動させる熱交換ユニットをさらに含む、上記に記載されているような精油の精製のためのナノ濾過プロセスを実施するための装置に関する。これによって流動性投入物が一定温度で冷たく保たれることが保証されるので、濾過サイクルの任意の時点での過熱を回避しながら、サイクル周囲の温度を平衡化し、穏やかな温度処理を確保する。
【図面の簡単な説明】
【0139】
【
図1】実施例で使用されているような用語、投入物(A)、透過分(P)及び残余分(R)を説明する交差流ナノ濾過システムの模式図である。
【
図2】実施例1に係るナノ濾過の前後でのマンダリン油の投入物(A)、透過分(P)及び残余分(R)の試料の間での差異を示す図である。
【
図3】マンダリン油の投入物(A)、透過分(P)及び残余分(R)の試料のHPLC/MS解析を示す図である。
【
図4】実施例2に係るナノ濾過の前後でのバニラ抽出物の投入物(A)、透過分(P)及び残余分(R)の間での差異を示す図である。
【
図5】ナノ濾過の前後でのパチョリ油(実施例3a)の投入物(A)、透過分(P)及び残余分(R)の間での差異を示す図である。
【
図6】溶媒を伴ったナノ濾過の前後での溶媒を伴ったパチョリ油(実施例3b)の投入物(A)、透過分(P)及び残余分(R)の間での差異を示す図である。
【
図7】ナノ濾過の前後でのオレンジ油ブラジル(実施例4)の投入物(A)、透過分(P)及び残余分(R)の間での差異を示す図である。
【
図8】ナノ濾過の前後でのペルーバルサム(実施例6)の投入物(A)、透過分(P)及び残余分(R)の間での差異を示す図である。
【
図9】ナノ濾過の前後でのブラッドオレンジ油イタリア(実施例7)の投入物(A)、透過分(P)及び残余分(R)の間での差異を示す図である。
【
図10】ナノ濾過の前後でのタンジェリン油イタリア(実施例8)の投入物(A)、透過分(P)及び残余分(R)の間での差異を示す図である。
【
図11】ナノ濾過の前後でのレモン油イタリア(実施例9)の投入物(A)、透過分(P)及び残余分(R)の間での差異を示す図である。
【
図12】ナノ濾過の前後での丁子葉(実施例10)の投入物(A)、透過分(P)及び残余分(R)の間での差異を示す図である。
【
図13】ナノ濾過の前後でのイランイラン(実施例11)の投入物(A)、透過分(P)及び残余分(R)の間での差異を示す図である。
【
図14】1つの平板交差流濾過セルを含有する、外圧(N
2)と共に作動する、透過分(P)と残余分(R)とを生じる、精油の精製プロセスを記載している交差流ナノ濾過システムの模式図(フローチャート)である。
【
図15】1つのらせん状濾過セルを含有する、外圧(N
2)の有無にかかわらず(内蔵ポンプが圧力を発生する)作動する、透過分(P)と残余分(R)とを生じる、精油の精製プロセスを記載している交差流ナノ濾過システムの模式図(フローチャート)である。
【発明を実施するための形態】
【0140】
方法
I.スペクトル光度計による透明液体の色判定(L*a*b*)
この方法は、Hach Langeのスペクトル光度計(Lico400小型)を用いて透明な液体について色を判定するのに役立つ。
型:参照ビームパスを持つ走査回折格子分光光度計
視幾何0°/180°(透過光)
スペクトル範囲色測定:380nm~780nm/10nm
標準光源Cについて算出されたX(赤)、Y(緑)及びZ(青)の透過率及び2°の標準観測者(DIN5033)―色測定(またASTM E170、ISO7724)
【0141】
L*a*b*の表色系では、L*は明度の因子であり、a*及びb*は色度の座標(色調、彩度)である。a*は赤・緑の軸での位置であり、b*は黄・青の軸での位置である。
【0142】
精度の検証:精度または再現性を確保するために、6つの独立した測定の絶対的な及び相対的な標準偏差を100140レモン油イタリアのロット82(Lico500;QC0155)の試料について計算した。この分析法はSAP法AFW060及びAFW061について有効である。
【0143】
II.殺虫剤のスクリーニング
上述の分析の結果は、その現在有効なバージョンにおける規制(EC)396/2005(食品及び飼料の中または上における殺虫剤の最大残留レベルに関する規制)の要件に従う。
【0144】
分析した試料は、規制(EC)396/2005(食品及び試料の中または上における殺虫剤の最大残留レベルに関する規制)の第20条に従って処理する間に濃縮される加工食品として分類することができる。従って、対応する最大残留レベルは200の濃縮係数を考慮して算出されなければならない。
【0145】
試料を殺虫剤組成について、LC-MS-MS液体クロマトグラフィー法、GC-MSガスクロマトグラフィー法、炎光光度検出器を伴ったGC-FPDガスクロマトグラフィー法、または電子捕獲型検出器を伴ったガスクロマトグラフィー法によって分析した。選んだ殺虫剤の濾過の間での除去の結果を表2及び表5に示す。
【0146】
III.鉄の光度定量
鉄含量を誘導結合プラズマ発光分析(ICP-OES)によって測定した。誘導結合プラズマ(ICP)は定量的バルク元素組成を測定する分析法である。熱励起された検体の原子またはイオンから元素特異的な特徴的な波長で放出される放射線の強度を測定する発光分光計(OES)によって検体種が検出され、定量される。それはDIN EN ISO11885に従って実行された。使用した装置はWhatman Typ Spartan30である。
【0147】
鉄含量を測定する原理は、溶液に残る暗赤の色移り金属錯体を作り出すチオシアン酸塩(ロダニド)との鉄(III)イオンの反応:FeCl3+6KSCN→K3Fe(SCN)6+3KClである。
【0148】
手順:試料(1.00mL)を10mLのメスフラスコ:0.05mLの濃HNO3及び1.00mLの試薬溶液(KSCN 0.5M)と共に8.00mLのエタノール96体積%、1.00mLの蒸留水に入れる。よく振盪し、相分離ののち465nmでの吸収を測定する。参照はブランク値である。ブランク値については、9.00mLのエタノール96体積%、1.00mLの蒸留水を0.05mLの濃HNO3及び1.00mLの試薬溶液(KSCN 0.5M)と混合する。相分離に問題があれば、使い捨ての膜フィルター(Whatman,Typ Spartan30,0.45μm)を介して溶液をそっと濾過する。
【0149】
標準溶液の吸光度及び対応する鉄含量(5ppm~100ppm)から精度または再現性を確保するために、検量線を作成する。これは測光ソフトウェアによってグラフでまたはエクセルによって行うことができる。試料の含量は、吸光度値にわたって検量線から値を読み取ることによって決定され、または測光ソフトウェアによって算出される。この分析法はSAP法AUV235について有効である。
【0150】
乾燥残留物
乾燥残留物は秤量規模の溶媒の蒸発によって欧州薬局方に従って決定される。抽出物の定義された量または体積(2.0g)または(2.0mL)を秤量規模で100~105℃の乾燥キャビネットに入れる。次いで、五酸化リンまたはシリカを介して残留物を冷却する。試験結果はパーセント(m/m)またはグラム/リットルで定義される。
【0151】
VI.過酸化物の値
過酸化物の値はナノ濾過の前後で検出した。過酸化物の検出によって不飽和油脂における酸敗臭の最初の証拠が得られる。それは油試料が最初の酸化を受けている程度の評価基準を提供する。過酸化物の値は油脂の1キログラム当たりの過酸化物の酸素の量として定義される。SI単位は、キログラム当たりのミリモルで定義される(O2の1mEq=1ミリモル/2=O2の0.5ミリモルで2は価数であるのでN.B.1ミリ当量=0.5ミリモル)。
【実施例】
【0152】
実施例1:マンダリン油イタリアン
1倍のマンダリン油(250g)を、30℃の温度及び30バールの濾過圧にておよそ350g/モルの名目上の分子量カットオフを持つらせん状または平板のPDMS-GMT-NC-1膜によって濾過した。その結果、226gに油が透過した。
【0153】
透過分の流量は91.07kg/時間・m2だった。
【0154】
図2はナノ濾過の前後でのマンダリン油の投入物(A)、透過分(P)及び残余分(R)の試料の間での差異を示す。
【表1】
【0155】
表1及び
図2は、透過分試料の色が流動性投入物及び残余分とは対照的に減ったことを示す。これらの結果は、柑橘油、特にマンダリン油を含む精油の色を減らす本発明のプロセスの利点を実証している。
【0156】
表1によれば、流動性投入物に対するナノ濾過後の透過分の間のΔL*の差異は2.2であり、ΔC*は-5.0として算出されてもよい。
【0157】
香り試験の結果は、マンダリン油の匂いは強く、刺激的で透き通った香調があり、特にアルデヒド部分が濃いことを示した。
【0158】
マンダリン油の投入物、透過分及び残余分の試料のHPLC/MS解析の結果を
図3に示す。残余分における不純物の彩度は透過分よりも高い一方で、それは投入物と比べて透過分で低下する。
【0159】
供給分(流動性投入物)、残余分及び透過分の溶液の試料を利用して溶液に存在する殺虫剤(残留農薬)の濃度を測定した。マンダリン油イタリアンの殺虫剤スクリーニングは表2にてTFCナノ濾過を介した選択された殺虫剤及び殺真菌剤の除去を示す。
【0160】
【0161】
データは、本発明によって、ストロビルリン、特にピラクロストロビンを含む殺真菌剤が本発明のプロセス及びTFCナノ濾過膜により精油からほぼ完全に取り除かれることを示している。有機塩素系、特にp,p-ジコホール(アカリシド)及び有機リン系、特にクロルピリホスを含む残留農薬(殺虫剤)のさらなる減少が達成されてもよい。
【0162】
天然に存在する不純物も取り除かれてもよく、好ましくはフロクマリン、たとえば、オキシペウセダニン、ヘラクレニン、ビャクアンゲリコール、8-ゲラニルオキシプソラレン、またはインペラトリンが取り除かれた。
【0163】
実施例2:バニラ抽出物―公正取引
エタノール/水95/5で希釈した10倍のバニラ抽出物(200g)を、40℃の温度及び30バールの濾過圧にておよそ350g/モルの名目上の分子量カットオフを持つらせん状または平板のPDMS-GMT-NC-1膜によって濾過した。透過分の流量は8.57kg/時間・m2だった。その結果、312gの希釈した油が透過した。溶媒は真空下で取り除かれた。
【0164】
図4は、ナノ濾過の前後でのバニラ抽出物の投入物(A)、透過分(P)及び残余分(R)の試料の間での差異を示す。バニラ抽出物試料について、色は透過分で減少した。
【0165】
香り試験の結果はバニラの特徴がさらにはっきりすることを示した。
【0166】
実施例3a:溶媒なしでのパチョリ油
1倍のパチョリ油(250g)を、30℃の温度及び30バールの濾過圧にておよそ350g/モルの名目上の分子量カットオフを持つらせん状または平板のPDMS-GMT-NC-1膜によって濾過した。その結果、208gの油が透過した。透過分の流量は14.14kg/時間・m2だった。
【0167】
図5は、ナノ濾過の前後でのパチョリ油の投入物(A)、透過分(P)及び残余分(R)の間での差異を示す。
【0168】
実施例3b:溶媒を伴ったパチョリ油
70gのMTBEに溶解した1倍のパチョリ油(180g)を、30℃の温度及び30バールの濾過圧にておよそ350g/モルの名目上の分子量カットオフを持つらせん状または平板のPDMS-GMT-NC-1膜によって濾過した。その結果、210gの油が透過した。真空下で且つ廃棄する50mLのエタノールと共にMTBEを取り除いた。透過分の流量は53.57kg/時間・m2だった。
【0169】
図6は、溶媒を伴ったナノ濾過の前後での溶媒を伴ったパチョリ油の投入物(A)、透過分(P)及び残余分(R)の間での差異を示す。
【0170】
【0171】
図6及び表3は精油、特にパチョリ油の色の減少を実証している。流れは3~4倍速いが、着色不純物の選択的な減少は、流れが溶媒なしで遅い場合とまさに同様に良好だった。速い流れは速い生産プロセスにつながるので、エネルギーコストを節約することができる。
【0172】
表3によれば、流動性投入物に対する(ナノ濾過後の)透過分のΔL*の差異は2.9であり、ΔC*は-13.7として算出されてもよい。
【0173】
香り試験の結果は、パチョリ油の特徴がさらにはっきし、パチョリの部分がさらに大きな体積を有し、さらに濃いことを示した。溶媒を伴わずに精製されたパチョリ油の香り試験の結果は、溶媒と共に精製されたパチョリ油の結果ほど良好ではなかった。
【0174】
【0175】
結果は、透過分における鉄含量が溶媒を伴ったナノ濾過を介して約230ppmに(84%を超えて)減少したことを示している。
【0176】
実施例4:オレンジ油ブラジル
10倍のオレンジ油(202g)を、30℃の温度及び30バールの濾過圧にておよそ350g/モルの名目上の分子量カットオフを持つらせん状または平板のPDMS-GMT-NC-1膜によって濾過した。その結果、68gの油が透過した。透過分の流量は19.29kg/時間・m2だった。
【0177】
図7は、ナノ濾過の前後でのオレンジ油ブラジルの投入物(A)、透過分(P)及び残余分(R)の間での差異を示す。
【0178】
これらの結果は、柑橘油、特にオレンジ油を含む精油の色を減らす潜在力を実証している。
【0179】
香り試験の結果は、オレンジの風味の強い部分が保たれたが、基準が異なり、あまり良好ではないことを示した。
【0180】
殺虫剤スクリーニング:オレンジ油ブラジル
【表5】
データは、本発明によって、ストロビルリン、特にアゾキシストロビン、ピラクロストロビン及びトリフロキシストロビンを含む殺真菌剤が、本発明のプロセスにより油からほぼ完全に取り除かれることを示している。有機リン系殺虫剤、特にクロルピリホス及びメチダチオンならびに有機窒素系殺虫剤、特にプロパルギットを含む残留農薬(殺虫剤)でのさらなる減少が達成されてもよい。さらに、殺昆虫剤(ピレスロイド類)、特にビフェントリン、シフルトリン及びシペルメトリンを減少させる。この実施例は精油からの残留農薬の除去を実証している。
【0181】
実施例5:ベンゾインシャム樹脂
200gのエタノールで希釈したベンゾインシャム油(50g)を、30℃の温度及び30バールの濾過圧にておよそ350g/モルの名目上の分子量カットオフを持つらせん状または平板のPDMS-GMT-NC-1膜によって濾過した。その結果、58gの油が透過した。透過分の流量は21.43kg/時間・m2だった。
【0182】
これらの結果は精油の色の減少を実証している。
【0183】
香り試験の結果は、ベンゾインシャムの特徴がさらに強く、花のような香りであることを示した。
【0184】
実施例6:ペルーバルサム
ペルーバルサム(200g)を、30℃の温度及び30バールの濾過圧にておよそ350g/モルの名目上の分子量カットオフを持つらせん状または平板のPDMS-GMT-NC-1膜によって濾過した。その結果、90gの油が透過した。透過分の流量は8.57kg/時間・m2だった。
【0185】
図8は、ナノ濾過の前後でのペルーバルサム(実施例6)の投入物(A)、透過分(P)及び残余分(R)の間での差異を示す。
【0186】
これらの結果は精油の色の減少を実証している。
【0187】
香り試験の結果は、特徴がさらにシナモン臭があり、香ばしく且つさらに甘いことを示した。
【0188】
実施例7:自然のままのブラッドオレンジ油イタリアン
ブラッドオレンジ油を、30℃の温度及び30バールの濾過圧にておよそ350g/モルの名目上の分子量カットオフを持つらせん状または平板のPDMS-GMT-NC-1膜によって濾過した。その結果、16gの油が透過した。透過分の流量は64.29kg/時間・m2だった。
【0189】
天然に存在する不純物が取り除かれてもよく、特にフロクマリン、たとえば、オキシペウセダニン、ヘラクレニン、ビャクアンゲリコール、8-ゲラニルオキシプソラレン、またはインペラトリンが取り除かれた。
【0190】
図9は、ナノ濾過の前後でのブラッドオレンジ油の投入物(A)、透過分(P)及び残余分(R)の間での差異を示す。
【0191】
これらの結果は精油の色の減少を実証している。
【0192】
香り試験の結果は、ブラッドオレンジの特徴がナノ濾過前よりも弱いことを示した。残余分は、透過分及び流動性投入物よりも強いブラッドオレンジの特徴を示した。
【0193】
実施例8:タンジェリン油
タンジェリン油(263g)を、30℃の温度及び30バールの濾過圧にておよそ350g/モルの名目上の分子量カットオフを持つらせん状または平板のPDMS-GMT-NC-1膜によって濾過した。その結果、51gの油が透過した。透過分の流量は64.29kg/時間・m2だった。
【0194】
図10は、ナノ濾過の前後でのタンジェリン油の投入物(A)、透過分(P)及び残余分(R)の間での差異を示す。
【0195】
これらの結果は、柑橘油、特にタンジェリン油を含む精油の色の減少を実証している。
【0196】
【表6】
表6によれば、流動性投入物に対するナノ濾過後の透過分のΔL
*の差異は6.0であり、ΔC
*は-90.7として算出されてもよい。色の相当な減少があった。
【0197】
【表7】
表7によれば、流動性投入物に対するナノ濾過後の透過分のΔL
*の差異は1.3であり、ΔC
*は-27.3として算出されてもよい。
【0198】
ナノ濾過+UV光の後の透過分に対するナノ濾過後の透過分のΔL*の差異は-0.1であり、ΔC*は0.47として算出されてもよい。明らかに、新しく濾過した透過分と比べて明度は単に軽く低下した。加えて、色度は48時間UV光ののち安定であり、再着色しなかった。
【0199】
香り試験の結果は、特徴があまりテルペン様ではなく、さらに天然であったが、ジメチルアンスラニレートが少し存在することを示した。GC/MS解析はデカナールの量が低下することを示した。
【0200】
過酸化物値試験の結果は、タンジェリンの過酸化物の値がO2の7.72mEq/kg(TFCナノ濾過の前)からTFCナノ濾過の後、O2の5.37mEq/kgに低下することを示した。これらの結果は、柑橘油、特にタンジェリン油を含む精油の酸敗臭を下げる潜在力を実証している。
【0201】
乾燥残留物は秤量規模の溶媒の蒸発によって欧州薬局方に従って決定される。抽出物の定義された量または体積(2.0g)または(2.0mL)を秤量規模で100~105℃にて3時間、乾燥キャビネットに入れる。次いで、五酸化リンまたはシリカを介して残留物を冷却する。この試験の結果はパーセント(m/m)またはグラム/リットルで定義される。
【0202】
タンジェリン油2.2%(TFCナノ濾過前)からTFCナノ濾過後の0.47%までの乾燥残留物は本発明のプロセスによって不純物が減ることを示した。
【0203】
実施例9:レモン油イタリアン
溶媒なしで実施例1に記載されている方法に従ってレモン油を精製した。透過分の流量は71.14kg/時間・m2だった。
【0204】
図11は、ナノ濾過の前後でのレモン油の投入物(A)、透過分(P)及び残余分(R)の間での差異を示す。
【0205】
これらの結果は、柑橘油、特にレモン油を含む精油の色の減少を実証している。
【0206】
天然に存在する不純物も取り除かれてもよく、好ましくはフロクマリン、たとえば、オキシペウセダニン、8-ゲラニルオキシプソラレンまたはベルガモチンが取り除かれた。
【0207】
香り試験の結果は、特徴が冷煙、たばこ及びコーヒーであることを示した。
【0208】
実施例10:丁子葉油
溶媒なしで実施例1に記載されている方法に従って丁子葉油を精製した。透過分の流量は12.64kg/時間・m2だった。
【0209】
図12は、ナノ濾過の前後での丁子葉油の投入物(A)、透過分(P)及び残余分(R)の間での差異を示す。
【0210】
これらの結果は、丁子葉油の色の減少を実証している。
【0211】
香り試験の結果は、丁子葉の特徴が前よりもナノ濾過後にさらにはっきりすることを示した。
【0212】
実施例11:イランイラン油
溶媒なしで実施例1に記載されている方法に従ってイランイラン油を精製した。透過分の流量は24.00kg/時間・m2だった。
【0213】
図13はナノ濾過の前後でのイランイラン油の投入物(A)、透過分(P)及び残余分(R)の間での差異を示す。
【0214】
これらの結果は、イランイラン油の色の減少を実証している。
【0215】
香り試験の結果は、特徴がさらに花のような香り及び風変りであり、さらにサリチル酸のようであることを示した。ナノ濾過の前後での差異は明白である。
【0216】
【表8】
表8は、流動性投入物に対するナノ濾過後の透過分のΔL
*及びΔC
*の差異を示す。各試料では、濾過の後、明度の明らかな上昇及び彩度の減少があったが、それは精製法の有効性を実証している。透過分のUV安定性試験については、明度及び彩度における有意な変化はなかったが、それは再着色がなかったことを意味する。
【0217】
【表9】
無色の高級香料の試験調製は、濾過した精油を含む最終組成物が観察者にとって視覚的に無色であり、透明であることを実証した。
【0218】
【表10】
無色のシャワージェルの試験調製は、濾過した精油を含む最終組成物が観察者にとって視覚的に無色であり、透明であることを実証した。
【0219】
【0220】
表及び図におけるデータは濾過された精油、好ましくは柑橘油の色の減少を実証している。特に、流動性投入物と比べてナノ濾過後の透過分のΔL*及びΔC*の差異は精油が低い色度を有したことを示している。さらに、マンダリン油の投入物、透過分及び残余分のHPLC/MS解析の結果は不純物の彩度が透過分で低下し得る一方でそれは残余分で高いこと示した。精油の殺虫剤スクリーニングは選択された殺虫剤及び殺真菌剤のTFCナノ濾過を介した除去を示した。また鉄含量も減らすことができ、過酸化物の値も低下した。透過分の乾燥残留物は流動性投入物より少なく、高分子量成分及び蝋を取り除くことができた。これらの結果は、本発明のプロセスが、特に無色または透明の組成物にて香料、香料成分または香味料として使用することができる精製された精油を供給することを示している。また、香り試験の結果は、精油の匂いがさらに目立つ一方で悪臭を取り除き、抑制することができることも示した。