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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】精製した濃縮水性ロイコインジゴ塩溶液
(51)【国際特許分類】
   C09B 7/02 20060101AFI20220119BHJP
   C09B 67/20 20060101ALI20220119BHJP
   D06P 1/00 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
C09B7/02
C09B67/20 F
D06P1/00 A
【請求項の数】 29
(21)【出願番号】P 2020507600
(86)(22)【出願日】2018-08-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-24
(86)【国際出願番号】 EP2018071783
(87)【国際公開番号】W WO2019030389
(87)【国際公開日】2019-02-14
【審査請求日】2020-08-19
(31)【優先権主張番号】17185971.3
(32)【優先日】2017-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】17185976.2
(32)【優先日】2017-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】17185980.4
(32)【優先日】2017-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】18173343.7
(32)【優先日】2018-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515225895
【氏名又は名称】アルフローマ アイピー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100134784
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和美
(72)【発明者】
【氏名】エルウィン ルチチ
(72)【発明者】
【氏名】イェルク ヒューブナー
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2004/024826(WO,A1)
【文献】特表2002-520469(JP,A)
【文献】特表2004-521965(JP,A)
【文献】特表2000-512673(JP,A)
【文献】特開2009-197353(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09B 1/00-69/10
D06P 1/00-7/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性ロイコインジゴ塩溶液を製造する方法であって、その方法が、以下のステップ(A):
(A)アニリンまたはアニリンとN‐メチルアニリンの形態で芳香族アミンを含有するインジゴを含む水性組成物を、前記芳香族アミンを含む水性ロイコインジゴ溶液を作り出すために水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムの存在下、還元すること、
を含み、ここで、前記ロイコインジゴが混合されたナトリウム塩とカリウム塩の形態で存在し、ここで、ナトリウム対カリウムのモル比が4:1~8:1の範囲内にある方法。
【請求項2】
アニリンもしくはN‐メチルアニリン、またはアニリンとN‐メチルアニリンの形態で芳香族アミンを含む水性ロイコインジゴ溶液を精製する方法であって、ここで、前記ロイコインジゴが混合されたナトリウム塩とカリウム塩の形態で存在し、ここで、ナトリウム対カリウムのモル比が4:1~8:1の範囲内にあり、その方法が、以下のステップ(B):
(B)前記芳香族アミンを含む水性ロイコインジゴ溶液を、以下の:
(a)蒸留;
(b)水蒸気蒸留;
(c)抽出;
(d)不活性ガスを用いたストリッピング;
(e)そのロイコインジゴ溶液を精製流に晒すこと;または
(f)そのうちの二つ以上の組み合わせに供すること、
から成る群から選択される精製ステップに供すること、
を含む方法。
【請求項3】
アニリンまたはアニリンとN‐メチルアニリンの形態で(単数もしくは複数の)芳香族アミンを含む水性ロイコインジゴ溶液から、ISO 14362‐1:2017(E)に従ってアニリンまたはアニリンとN‐メチルアニリンの濃度を測定した場合に、アニリン不含またはアニリン不含かつN‐メチルアニリン不含の水性ロイコインジゴ溶液を製造する方法であって、ここで、前記ロイコインジゴが混合されたナトリウム塩とカリウム塩の形態で存在し、ここで、ナトリウム対カリウムのモル比が4:1~8:1の範囲内にあり、その方法が、少なくとも以下のステップ(B):
(B)前記(単数もしくは複数の)芳香族アミンを含む水性ロイコインジゴ溶液を、以下の:
(a)蒸留;
(b)水蒸気蒸留;
(c)抽出;
(d)不活性ガスを用いたストリッピング;
(e)そのロイコインジゴ溶液を精製流に晒すこと;または
(f)そのうちの二つ以上の組み合わせに供すること、
から成る群から選択される精製ステップに供すること、
を含む方法。
【請求項4】
(a)蒸留が、トレイまたは充填材を伴って提供されるカラムを使用して実施され;
(c)抽出が、遠心抽出機を使用する液‐液抽出であり;
(e)ロイコインジゴ溶液を精製流に晒すことが、少なくとも以下のステップ(α)~(γ):
(α)(単数もしくは複数の)前記アミンを含む前記水性ロイコインジゴ溶液を含む液体流を準備し;
(β)精製流を準備し;
(γ)前記液体流を前記精製流と接触させること;
を含む、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記ステップ(γ)が、以下のステップ(γ1)および(γ2):
前記液体流を前記精製流と接触させるように構成されたデバイスに、
(γ1)前記液体流を注入し;および
(γ2)前記精製流を注入すること、
を含み、かつ、その方法が、以下のステップ(δ)および(ε):
(δ)前記液体流と接触した前記精製流の少なくとも一部をそのデバイスから送り出し
;および
(ε)前記精製流によって接触された前記液体流の少なくとも一部をそのデバイスから送り出すこと、
をさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記液体流と精製流が、対向流である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記精製流が、蒸気流である、請求項4~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記蒸気流が、不活性ガス、水と混合できないガス状有機溶媒、または水蒸気、あるいはそのうちの2つもしくは3つを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記デバイスが、プレートカラム、充填カラム、または気泡カラム、あるいはそのうちの2つまたは3つ、あるいは前記カラムのいずれかのうちの2つ以上から成る群から選択される、請求項4~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記水蒸気が、ステップ(ε)に従ってデバイスから送り出された前記液体流の少なくとも一部を加熱することによって作り出される、請求項5~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ステップ(α)~(ε)が同時に実施される、請求項5~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ステップ(B)の前に以下のステップ(A):
(A)アニリンまたはアニリンとN‐メチルアニリンの形態で芳香族アミンを含有するインジゴを含む水性組成物を、前記芳香族アミンを含む水性ロイコインジゴ溶液を作り出すために水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムの存在下、還元すること、
を含み、ここで、前記ロイコインジゴが混合されたナトリウム塩とカリウム塩の形態で存在し、ここで、水酸化ナトリウム対水酸化カリウムのモル比が4:1~8:1の範囲内にある、請求項2~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記ナトリウム対カリウムのモル比が、5:1~7:1の範囲内にある、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
精製前または製造前の溶液中の前記芳香族アミンの濃度が、ISO 14362‐1:2017(E)に従って測定して200ppm超である、請求項2または3、あるいは請求項4~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記ステップ(B)で実施される蒸留が:常圧での蒸留、減圧下での蒸留および水蒸気蒸留、またはそのうちの2つもしくは3つの組み合わせ、から成る群から選択される、請求項2または3、あるいは請求項4~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記ステップ(B)が、精製後または製造後に、溶液中の芳香族アミンの濃度が、ISO 14362‐1:2017(E)に従って測定して200ppm未満になるまでに必要とされる長さまたは頻度で実施される、請求項2または3、あるいは請求項4~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
精製後または製造後の溶液中のロイコインジゴ塩の濃度が、その溶液の総重量に基づいて、5~65重量%の範囲に設定される、請求項2または3、あるいは請求項4~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
アニリンまたはアニリンとN‐メチルアニリンの形態で芳香族アミンを含有する水性ロイコインジゴ塩溶液であって、ここで、芳香族アミンの濃度が、ISO 14362‐1:2017(E)に従って測定して200ppm超であり、ここで、ロイコインジゴが混合されたナトリウム塩とカリウム塩の形態で存在し、およびここで、ナトリウム対カリウムのモル比が、4:1~8:1の範囲内にある、水性ロイコインジゴ塩溶液。
【請求項19】
前記溶液中の塩の濃度が、その溶液の総重量に基づいて、5~65重量%の範囲内にある、請求項18に記載の水性ロイコインジゴ塩溶液。
【請求項20】
アニリンまたはアニリンとN‐メチルアニリンの形態で芳香族アミンを含有する水性ロイコインジゴ塩溶液であって、ここで、芳香族アミンの濃度が、ISO 14362‐1:2017(E)に従って測定して200ppm未満であり、ここで、前記ロイコインジゴが混合されたナトリウム塩とカリウム塩の形態で存在し、およびここで、ナトリウム対カリウムのモル比が、4:1~8:1の範囲内にある、水性ロイコインジゴ塩溶液。
【請求項21】
前記溶液中の塩の濃度が、その溶液の総重量に基づいて、5~65重量%の範囲内にある、請求項20に記載の水性ロイコインジゴ塩溶液。
【請求項22】
請求項16または請求項17に記載の方法によって入手可能である、請求項20または21に記載の水性ロイコインジゴ溶液。
【請求項23】
以下のステップ(D):
(D)請求項20~22のいずれか一項に記載の水性ロイコインジゴ溶液を酸化させること、
を含む、インジゴを形成する方法。
【請求項24】
ステップ(D)の前に以下のステップ(C):
(C)請求項20~22のいずれか一項に記載のロイコインジゴ溶液で織物を処理すること、
を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
以下のステップ(I)および(III):
(I)請求項1~17のいずれか一項に記載の方法を実施し;
(III)ステップ(I)で得られたロイコインジゴ溶液を酸化させること、
を含む、インジゴを形成する方法。
【請求項26】
ステップ(III)の前に以下のステップ(II):
(II)ステップ(I)で得られたロイコインジゴ溶液で織物を処理すること、
を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記還元が水素化である、請求項1または12に記載の方法。
【請求項28】
前記芳香族アミンの濃度が2,000ppm~10,000ppmである、請求項14に記載の方法。
【請求項29】
前記芳香族アミンの濃度が2,000ppm~10,000ppmである、請求項18に記載の水性ロイコインジゴ塩溶液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野
本発明は、安定かつ精製された濃縮水性ロイコインジゴ塩溶液およびそこから得られるインジゴの分野にある。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景
インジゴは、セルロース含有繊維材料を染色するのに使用される建染め染料である。
【0003】
繊維材料に対する適用のために、インジゴは還元を受け、ここで、水可溶性ロイコインジゴ塩が形成される。次に、この塩は、水溶液の状態で繊維材料に適用される。ロイコインジゴ塩の酸化がインジゴの形成をもたらし、ここで、染色された繊維材料が得られる。
【0004】
合成により生産されたインジゴは、その中に閉じ込められた、一般的に使用される生産プロセスに起因する芳香族アミンに基づく不純物、特にアニリンおよび/またはN‐メチルアニリンを含有している。例えば、合成により生産されたインジゴは、最高6,000ppmのアニリンと最高4,000ppmのN‐メチルアニリンを含有し得る。芳香族アミン、例えばアニリンおよびN‐メチルアニリンなどは、織物適用で望ましくない。よって、これらの不純物を、繊維材料に対する適用前に、それぞれロイコインジゴ塩がそこから製造したインジゴからできるだけ取り除かなければならない。
【0005】
WO2004/024826では、蒸留、水蒸気蒸留、抽出によって、または不活性ガスを用いたストリッピングによって水性ロイコインジゴ塩溶液の段階で芳香族アミン不純物を取り除くことを示唆している。この従来技術は、芳香族アミンの濃度が200ppmの量未満に低減され得ることを開示する。次に、精製したロイコインジゴ塩溶液は、もしあれば、前記の少量の芳香族アミンを含有するインジゴを得るために酸化に供されてもよく、ここで、該ロイコインジゴは、酸化前に繊維材料上に存在する。
【0006】
さらに、輸送および適用のために、水性ロイコインジゴ塩溶液は、望ましくない塩の結晶化および/または沈殿を予防するために、できるだけ安定していなければならない。これは、ロイコインジゴ塩が相対的に高濃度で水性媒質中に存在する場合に特に重要である。濃縮したロイコインジゴ塩溶液は、還元廃水による汚染のため建染め(vat dying)プロセスに有利である。
【0007】
WO00/04100では、混合されたナトリウム塩とカリウム塩の形態で水性ロイコインジゴ溶液を提供することを示唆しているが、ここで、ナトリウムのモル‐%は70~30の範囲内にあり、カリウムのモル‐%は30~70の範囲に相当する。これは、2.33:1~1:2.33の範囲内のナトリウム対カリウムのモル比に相当する。前記範囲内では、25~40重量%のロイコインジゴ塩の相対的な高濃度にもかかわらず、前記溶存態ロイコインジゴ塩の溶液は室温にて安定であるか、または50~55重量%の濃度の場合に、40~60℃の範囲内の高い温度にて安定している、すなわち、該塩は結晶化または沈殿の傾向がない。この従来技術は、3:1~1:3の範囲内のナトリウム対カリウムのモル比をさらに開示しており、そしてそれは、75~25のナトリウムおよび25~75のカリウムのモル‐%範囲に相当する。
【0008】
WO00/04100では、ナトリウム塩の形態のロイコインジゴの溶液が20重量%の濃度までに限って安定しているWO94/23114に関してさらに教示している。このことは、WO00/04100に定義されているロイコインジゴ塩中のナトリウムによるカリウムの置換が、それぞれの溶液の安定性にマイナスの影響を及ぼし、結晶化を促進することを意味するに他ならない。
本発明の目的
【0009】
さらに安定でかつ精製された濃縮ロイコインジゴ塩溶液とそこから製造されるインジゴを提供することに関して、その必要性が産業界には存在している。
【発明の概要】
【0010】
本発明の概要
取り上げた従来技術に関する教示、すなわち、濃縮ロイコインジゴ塩溶液は、2.33:1~1:2.33の範囲内のナトリウム対カリウムのモル範囲内で提供され得る、およびナトリウムがロイコインジゴ溶液の安定性にマイナスの影響を及ぼす、にもかかわらず、本発明の発明者らは、ナトリウム対カリウムの高いモル比を有するロイコインジゴ塩溶液を調査した。驚いたことに、本発明の発明者らは、3:1~1:3の範囲内の従来技術で知られているナトリウム対カリウムのモル比を3:1超のモル比まで高めることによって、産業要件を満たす、さらに安定しかつ濃縮されたロイコインジゴ塩溶液が調製され得ることを発見した。安定した濃縮溶液は、最高10:1、例えば3.5:1~10:1など、のナトリウム対カリウムのモル比まで調製され得る。溶液の総重量に基づいて25~45重量%、例えば30重量%ほどのロイコインジゴ塩濃度を有する溶液を得てもよく、そしてそれは、室温または最高60℃の高温にて安定している。この得られる濃度領域は、建染めプロセスにおいて所望の中程度および深い色合いを得るために十分である。また、染色工場における還元廃水による汚染の要件も満たし得る。
【0011】
未精製のロイコインジゴ塩溶液は、望ましくない余分な芳香族アミンを取り除くために、精製ステップ、例えば、蒸留などを受けてもよく、ここで、精製されかつ安定した濃縮ロイコインジゴ塩溶液を得てもよい。
【0012】
本発明は、以下の項目に関する:
1.
水性ロイコインジゴ塩溶液を製造する方法であって、その方法が、以下のステップ(A):
(A)アニリンまたはアニリンとN‐メチルアニリンの形態で芳香族アミンを含有するインジゴを含む水性組成物を、前記芳香族アミンを含む水性ロイコインジゴ溶液を作り出すために水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムの存在下、還元、好ましくは水素化に供すること、
を含み、ここで、前記ロイコインジゴが混合されたナトリウム塩とカリウム塩の形態で存在し、ここで、ナトリウム対カリウムのモル比が3:1超~10:1、例えば3.5:1~10:1などの範囲内にある方法。
2.
アニリンまたはアニリンとN‐メチルアニリンの形態で芳香族アミンを含む水性ロイコインジゴ溶液を精製する方法であって、ここで、前記ロイコインジゴが混合されたナトリウム塩とカリウム塩の形態で存在し、ここで、ナトリウム対カリウムのモル比が3:1超~10:1、例えば3.5:1~10:1などの範囲内にあり、その方法が、以下のステップ(B):
(B)前記芳香族アミンを含む水性ロイコインジゴ溶液を、以下の:
(a)蒸留;
(b)水蒸気蒸留;
(c)抽出;
(d)不活性ガスを用いたストリッピング;
(e)そのロイコインジゴ溶液を精製流に晒すこと;または
(f)そのうちの二つ以上の組み合わせに供すること、
から成る群から選択される精製ステップに供すること、
を含む方法。
3.
アニリンまたはアニリンとN‐メチルアニリンを含む水性ロイコインジゴ溶液から、ISO 14362‐1:2017(E)に従ってアニリンまたはアニリンとN‐メチルアニリンの濃度を測定した場合に、アニリン不含またはアニリン不含かつN‐メチルアニリン不含の水性ロイコインジゴ溶液を製造する方法であって、ここで、前記ロイコインジゴが混合されたナトリウム塩とカリウム塩の形態で存在し、ここで、ナトリウム対カリウムのモル比が3:1超~10:1、例えば3.5:1~10:1などの範囲内にあり、その方法が、少なくとも以下のステップ(B):
(B)前記(単数もしくは複数の)芳香族アミンを含む水性ロイコインジゴ溶液を、以下の:
(a)蒸留;
(b)水蒸気蒸留;
(c)液‐液抽出;
(d)不活性ガスを用いたストリッピング;
(e)そのロイコインジゴ溶液を精製流に晒すこと;または
(f)そのうちの二つ以上の組み合わせに供すること、
から成る群から選択される精製ステップに供すること、
を含む方法。
4.
(a)蒸留が、トレイまたは充填材を伴って提供されるカラムを使用して実施され;
(c)抽出が、遠心抽出機を使用する液‐液抽出であり;
(e)ロイコインジゴ溶液を精製流に晒すことが、少なくとも以下のステップ(α)~(γ):
(α)(単数もしくは複数の)前記アミンを含む前記水性ロイコインジゴ溶液を含む液体流を準備し;
(β)精製流を準備し;
(γ)前記液体流を前記精製流と接触させること;
を含む、項目2または3に記載の方法。
5.
前記ステップ(γ)が、以下のステップ(γ1)および(γ2):
前記液体流を前記精製流と接触させるように構成されたデバイスに、
(γ1)前記液体流を注入し;および
(γ2)前記精製流を注入すること、
を含み、かつ、その方法が、以下のステップ(δ)および(ε):
(δ)前記液体流と接触した前記精製流の少なくとも一部をそのデバイスから送り出し;および
(ε)前記精製流によって接触された前記液体流の少なくとも一部をそのデバイスから送り出すこと、
をさらに含む、項目4に記載の方法。
6.
前記液体流と精製流が、対向流である、項目5に記載の方法。
7.
前記精製流が、蒸気流である、項目4~6のいずれか一項に記載の方法。
8.
前記蒸気流が、不活性ガス、水と混合できないガス状有機溶媒、または水蒸気、あるいはそのうちの2つもしくは3つを含む、項目7に記載の方法。
9.
前記デバイスが、プレートカラム、充填カラム、または気泡カラム、あるいはそのうちの2つまたは3つ、あるいは前記カラムのいずれかのうちの2つ以上から成る群から選択される、項目4~8のいずれか一項に記載の方法。
10.
前記水蒸気が、ステップ(ε)に従ってデバイスから送り出された前記液体流の少なくとも一部を加熱することによって作り出される、項目4~9のいずれか一項に記載の方法。
11.
前記ステップ(α)~(ε)が同時に実施される、項目4~10のいずれか一項に記載の方法。
12.
ステップ(B)の前に以下のステップ(A):
(A)アニリンまたはアニリンとN‐メチルアニリンの形態で芳香族アミンを含有するインジゴを含む水性組成物を、前記芳香族アミンを含む水性ロイコインジゴ溶液を作り出すために水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムの存在下、還元、好ましくは水素化に供すること、
を含み、ここで、前記ロイコインジゴが混合されたナトリウム塩とカリウム塩の形態で存在し、ここで、水酸化ナトリウム対水酸化カリウムのモル比が3:1超~10:1、例えば3.5:1~10:1などの範囲内にある、項目2~11のいずれか一項に記載の方法。
13.
前記ナトリウム対カリウムのモル比が、4:1~8:1の範囲内にあるか、または前記ナトリウム対カリウムのモル比が、5:1~7:1の範囲内にある、項目1~12のいずれか一項に記載の方法。
14.
精製前または製造前の溶液中の前記芳香族アミンの濃度が、ISO 14362‐1:2017(E)に従って測定して約200ppm超、例えば、2,000~10,000ppmなどである、項目2または3、あるいは項目2または3によっては項目4~13のいずれか一項に記載の方法。
15.
前記ステップ(B)で実施される蒸留が:常圧での蒸留、減圧下での蒸留および水蒸気蒸留、またはそのうちの2つもしくは3つの組み合わせ、から成る群から選択される、項目2または3、あるいは項目2または3によっては項目4~14のいずれか一項に記載の方法。
16.
前記ステップ(B)が、精製後または製造後に、溶液中の芳香族アミンの濃度が、ISO 14362‐1:2017(E)に従って測定して200ppm未満になるまでに必要とされる長さまたは頻度で実施される、項目2または3、あるいは項目2または3によっては項目4~15のいずれか一項に記載の方法。
17.
精製後または製造後の溶液中のロイコインジゴ塩の濃度が、その溶液の総重量に基づいて、5~65重量%、例えば10~60重量%、15~55重量%、20~50重量%または25~45重量%などの範囲に設定される、項目2または3、あるいは項目2または3によっては項目4~16のいずれか一項に記載の方法。
18.
アニリンまたはアニリンとN‐メチルアニリンの形態で芳香族アミンを含有する水性ロイコインジゴ塩溶液であって、ここで、前記芳香族アミンの濃度が、ISO 14362‐1:2017(E)に従って測定して200ppm超、例えば2,000~10,000ppmほどであり、ここで、ロイコインジゴが混合されたナトリウム塩とカリウム塩の形態で存在し、およびここで、ナトリウム対カリウムのモル比が、3:1超~10:1、例えば3.5:1~10:1などの範囲内にある、水性ロイコインジゴ塩溶液。
19.
前記溶液中の塩の濃度が、その溶液の総重量に基づいて、5~65重量%、例えば10~60重量%、15~55重量%、20~50重量%または25~45重量%などの範囲内にある、項目18に記載の水性ロイコインジゴ塩溶液。
20.
アニリンまたはアニリンとN‐メチルアニリンの形態で芳香族アミンを含有する水性ロイコインジゴ塩溶液であって、ここで、芳香族アミンの濃度が、ISO 14362‐1:2017(E)に従って測定して200ppm未満であり、ここで、前記ロイコインジゴが、混合されたナトリウム塩とカリウム塩の形態で存在し、およびここで、ナトリウム対カリウムのモル比が、3:1超~10:1、例えば3.5:1~10:1などの範囲内にある、水性ロイコインジゴ塩溶液。
21.
前記溶液中の塩の濃度が、その溶液の総重量に基づいて、5~65重量%、例えば10~60重量%、15~55重量%、20~50重量%または25~45重量%などの範囲内にある、請求項20に記載の水性ロイコインジゴ塩溶液。
22.
項目16または項目17に記載の方法によって入手可能である、項目20または21に記載の水性ロイコインジゴ溶液。
23.
以下のステップ(D):
(D)項目20~22のいずれか一項に記載の水性ロイコインジゴ溶液を酸化させること、
を含む、インジゴを製造する方法。
24.
ステップ(D)の前に以下のステップ(C):
(C)項目20~22のいずれか一項に記載のロイコインジゴ溶液で織物を処理すること、
を含む、項目23に記載の方法。
25.
以下のステップ(I)および(III):
(I)項目1~17のいずれか一項、好ましくは項目16または17に記載の方法を実施し;
(III)ステップ(I)で得られたロイコインジゴ溶液を酸化させること、
を含む、インジゴを製造する方法。
26.
ステップ(III)の前に以下のステップ(II):
(II)ステップ(I)で得られたロイコインジゴ溶液で織物を処理すること、
を含む、項目25に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
発明の詳細な説明
この開示で使用される「アニリン不含」という用語は、ISO 14362‐1:2017(E)に従って測定した濃度である、200ppm未満、100ppm未満、好ましくは80ppm未満、より好ましくは60ppm未満、より一層好ましくは40ppm未満、特に30ppm未満または20ppm未満、そして特に好ましくは10ppm未満または5ppm未満のアニリン濃度をその最も広い意味で規定する。
【0014】
この開示で使用される「アニリン不含かつN‐メチルアニリン不含」という用語は、ISO 14362‐1:2017(E)に従って濃度を測定した濃度である、200ppmまたは100ppm未満、好ましくは80ppm未満、より好ましくは60ppm未満、より一層好ましくは40ppm未満、特に30ppm未満または20ppm未満、および特に好ましくは10ppm未満または5ppm未満のアニリン濃度およびN‐メチルアニリン濃度を規定する。
【0015】
本発明による方法
【0016】
第一の態様によると、本発明は、芳香族アミン、特にアニリンまたはアニリンとN‐メチルアニリンを含有するインジゴから水性ロイコインジゴ塩溶液を製造する方法に関する。これのために、インジゴは、適切な量の水酸化ナトリウムと水酸化カリウムの存在下で適切な還元剤を使用することによって還元に供される。
【0017】
従って、その方法は、以下のステップ(A):
(A)アニリンまたはアニリンとN‐メチルアニリンの形態で芳香族アミンを含有するインジゴを含む水性組成物を、前記芳香族アミンを含む水性ロイコインジゴ溶液を作り出すために水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムの存在下、還元に供すること、
を含み、ここで、前記ロイコインジゴが混合されたナトリウム塩とカリウム塩の形態で存在し、ここで、水酸化ナトリウム対水酸化カリウムのモル比が3:1超~10:1の範囲内にある。
【0018】
好ましくは、還元が水素化として実施される。水素化は、当該技術分野で知られている方法で実施され得る。
【0019】
好ましい還元方法は、触媒としてラネー‐ニッケルを使用する水素化である。
【0020】
他の公知の方法は、例えば、亜ジチオン酸ナトリウムを使用した還元、電解による還元、例えば、媒介物として鉄のトリエタノールアミン錯体を使用した間接的電解など、インドキシル、またはヒドロキシアセトンを使用した還元である。還元が言及した還元方法に限定されないことを理解すべきである。
【0021】
本発明によると、水酸化ナトリウム対水酸化カリウムのモル比は、3:1超~10:1の範囲内にある。
【0022】
好ましい実施形態において、水酸化ナトリウム対水酸化カリウムのモル比は、4:1~8:1の範囲内にある。
【0023】
さらなる好ましい実施形態において、そのモル比は5:1~7:1である。
【0024】
上記の比はまた、以下の第二の態様と第三の態様で規定する本発明の方法に従って、かつ、第一の態様に従って生産されたロイコインジゴ塩を使用して精製されたロイコインジゴ塩にも見られる。
【0025】
ステップ(A)に使用される水酸化ナトリウムと水酸化カリウムの量は、ロイコインジゴ塩の完全な形成に必要とされる量に化学量論的に相当する量に実質的に相当している。好ましくは、モルロイコインジゴのモル単位あたり1.5~2.5モルのアルカリが使用される。より好ましくは、2.0~2.5モルのアルカリが使用され、より一層好ましくは、2.1~2.5モルのアルカリが使用される。
【0026】
必要量のアルカリを、水素化前に一度にまたは水素化中に、もしくは水素化前とその最中に分割して提供することが可能である。必要であれば、追加のアルカリもまた、水素化後に添加されてもよい。
【0027】
未精製の水性ロイコインジゴ塩溶液の調製に続いて、それは好適な精製方法によって精製されてもよい。背景技術の項で言及した従来技術により知られている方法、すなわち、
(a)蒸留、(b)水蒸気蒸留、(c)抽出、(d)不活性ガスを用いたストリッピング、(e)ロイコインジゴ溶液を精製流に晒すこと、または(f)そのうちの二つ以上の組み合わせに供すること、が使用され得る。このことは、アニリンまたはアニリンとN‐メチルアニリンの形態の前記芳香族アミンが、精製した水性ロイコインジゴ塩溶液、あるいはアニリン不含またはアニリン不含かつN‐メチルアニリン不含ロイコインジゴ溶液を作り出すために取り除かれ得ることを意味する。
【0028】
従って、第二の態様において、本発明は、アニリンまたはアニリンとN‐メチルアニリンの形態で芳香族アミンを含む水性ロイコインジゴ塩溶液を精製する方法に関し、ここで、前記ロイコインジゴが混合されたナトリウム塩とカリウム塩の形態で存在し、ここで、ナトリウム対カリウムのモル比が3:1超~10:1の範囲内にあり、そして、その方法は、以下のステップ(B):
(B)前記芳香族アミンを含む前記水性ロイコインジゴ塩溶液を、以下の:
(a)蒸留;
(b)水蒸気蒸留;
(c)抽出;
(d)不活性ガスを用いたストリッピング;
(e)そのロイコインジゴ塩溶液を精製流に晒すこと;または
(f)そのうちの二つ以上の組み合わせに供すること、
から成る群から選択される精製ステップに供すること、
を含む。
【0029】
第三の態様によると、本発明は、アニリンまたはアニリンとN‐メチルアニリンを含む水性ロイコインジゴ溶液から、ISO 14362‐1:2017(E)に従ってアニリンまたはアニリンとN‐メチルアニリンの濃度を測定してアニリン不含またはアニリン不含かつN‐メチルアニリン不含の水性ロイコインジゴ溶液を製造する方法に関し、ここで、前記ロイコインジゴがアルカリ金属塩の形態で存在し、そして、その方法は、少なくとも以下のステップ(B):
(B)前記(単数もしくは複数の)芳香族アミンを含む水性ロイコインジゴ溶液を、以下の:
(a)蒸留;
(b)水蒸気蒸留;
(c)抽出;
(d)不活性ガスを用いたストリッピング;
(e)そのロイコインジゴ塩溶液を精製流に晒すこと;または
(f)そのうちの二つ以上の組み合わせに供すること、
から成る群から選択される精製ステップに供すること、
を含む。
【0030】
ステップ(B)による精製は、ロイコインジゴ(leucoindico)塩のインジゴへの早過ぎる酸化を避けるために酸素の不存在下で実施される。
【0031】
一実施形態において、その方法は、アニリンまたはアニリンとN‐メチルアニリンの形態で芳香族アミンを含有する水性ロイコインジゴ溶液が提供されるステップ(B)の前に必要である。そのうえ、前記ロイコインジゴ塩は、混合されたナトリウム塩とカリウム塩の形態で提供されなければならず、ここで、ナトリウム対カリウムのモル比は、3:1超~10:1の範囲内にある。
【0032】
好ましい実施形態において、その比は4:1~8:1である。
【0033】
より一層好まれるのは、5:1~7:1の比である。
【0034】
本明細書中に使用される場合、「ナトリウム」および「カリウム」という用語は、その陽イオンを指す。
【0035】
ステップ(B)に使用される前記水性ロイコインジゴ塩溶液は、第一の態様で規定された方法に従って生産され得る。
【0036】
従って、その方法は、ステップ(B)の前に以下のステップ(A):
(A)アニリンまたはアニリンとN‐メチルアニリンの形態で芳香族アミンを含有するインジゴを含む水性組成物を、前記芳香族アミンを含む水性ロイコインジゴ溶液を作り出すために水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムの存在下、還元、好ましくは水素化に供すること、
をさらに含み、ここで、前記ロイコインジゴが混合されたナトリウム塩とカリウム塩の形態で存在し、ここで、水酸化ナトリウム対水酸化カリウムのモル比が3:1超~10:1の範囲内にある。
【0037】
第一の態様、第二の態様および第三の態様の一実施形態において、ステップ(A)で得られるか、または精製前もしくは製造前にステップ(B)で使用される未精製の水性ロイコインジゴ塩溶液中の芳香族アミンの濃度は、その溶液の総重量に基づいて、200ppm超である。
【0038】
別の実施形態において、前記芳香族アミンの濃度は、500ppm超、1,000ppm、1,500ppm、2,000ppm、2,500ppm、3,000ppm、3,500ppmまたは4,000ppmである。一実施形態において、蒸留前の濃度は2,000~10,000ppmである。
【0039】
一実施形態において、溶液中のアニリンの濃度は、2,000ppm~2,500ppmの範囲内にあり、かつ、N‐メチルアニリンの濃度は、1,000ppm~1,500ppmの範囲内にある。
【0040】
一実施形態において、ステップ(B)は、精製後または製造後の芳香族アミンの濃度が、ISO 14362‐1:2017(E)に従って測定した場合に、200ppm未満、100ppm未満、50ppm未満、20ppm未満、10ppm未満または5ppm未満になるまでに必要とされる長さまたは頻度で実施される。
【0041】
「100ppm未満、あるいは、100ppm未満、50ppm未満、20ppm未満、10ppm未満または5ppm未満」という用語は、芳香族アミンがもはや検出不可能である下限、すなわち、ISO 14362‐1:2017(E)に従って計測した0ppm、として包含する。
【0042】
一実施形態において、ステップ(B)は、アニリンの濃度が200ppm未満になるまでに必要とされる長さまたは頻度で実施される。
【0043】
一実施形態において、ステップ(B)は、N‐メチルアニリンの濃度が20ppm未満になるまでに必要とされる長さまたは頻度で実施される。
【0044】
一実施形態において、ステップ(B)は、アニリンの濃度が200ppm未満になり、かつ、N‐メチルアニリンの濃度が20ppm未満になるまでに必要とされる長さまたは頻度で実施され、ここで、アミンの総重量は200ppmを超えない。
【0045】
好ましい実施形態において、ステップ(B)は、アニリンの濃度が40ppm未満になり、かつ、N‐メチルアニリンの濃度が5ppm未満になるまでに必要とされる長さまたは頻度で実施される。
【0046】
さらなる好ましい実施形態において、ステップ(B)は、アニリンの濃度が20ppm未満になり、かつ、N‐メチルアニリンの濃度がもはや検出不可能になるまでに必要とされる長さまたは頻度で実施される。
【0047】
さらに別の好ましい実施形態において、ステップ(B)は、アニリンの濃度が10ppm未満になり、かつ、N‐メチルアニリンの濃度がもはや検出不可能になるまでに必要とされる長さまたは頻度で実施される。
【0048】
(a)蒸留
【0049】
好ましい実施形態において、精製が(a)蒸留によって実施される。
【0050】
蒸留はまた、不活性ガス、例えば窒素などの流れの存在下でも実施され得る。よって、その溶液は、同時に蒸留およびストリッピングされる。
【0051】
蒸留中、前記芳香族アミンは、共沸混合物としての水と一緒に取り除かれる。
【0052】
好ましい実施形態において、蒸留は常圧で実施される。
【0053】
別の実施形態において、蒸留は減圧下で実施される。
【0054】
別の実施形態において、蒸留は加圧下で実施される。
【0055】
一実施形態において、蒸留は、蒸留カラムを使用して実施される。
【0056】
本明細書中で使用される「蒸留カラム」という用語は、例えば「蒸留塔」、「精留カラム」または「精留塔」、「分留カラム」または「分留塔」などの用語と同義的に使用される。
【0057】
「カラム」という用語は、本明細書中で使用される場合、垂直な円筒状のカラムを包含する。カラムの直径は制限されない。好ましいカラムは、30センチメートル~3メートルの直径を有し、かつ、約6メートル~60メートルの範囲に及ぶ高さを有する。
【0058】
一実施形態において、精製されるロイコインジゴ溶液は、カラムの中間部または中間部付近にてカラム内に注入される。カラムの内側では、下方に流れる還流液体が、上方に流れる蒸気の冷却および凝結をもたらし、その結果、カラムの効果を高める。より多くの還流および/またはより多くのトレイが提供されるほど、高沸点の物質からの低沸点の物質のカラムによる分離がより良好になる。
【0059】
蒸留中、前記芳香族アミンは、カラムの上部、すなわち、オーバーヘッドにてまたはその付近にて水と一緒に取り除かれ、ここで、アミンと水または蒸気は、典型的には凝結させ、回収される。
【0060】
精製したロイコインジゴ溶液は、カラムの下部にて回収される。
【0061】
一実施形態において、前記精製されたロイコインジゴ溶液は、カラムに再注入され、そして、再蒸留される。
【0062】
別の実施形態において、必要であれば、オーバーヘッドで留去された水を置換するために、水もまたカラムに注入されてもよい。
【0063】
一実施形態において、カラムの内側で上方に流れる蒸気と下方に流れる液体との良好な接触を提供するために、当該技術分野で既知のバブルキャップ「トレイ」または「プレート」がカラムの内側に提供される。
【0064】
別の実施形態において、特に、減圧下で操作させるので、カラムじゅうの低圧落下が求められるときに、充填材がトレイの代わりにカラムで使用される。この充填材は、不規則投入充填物、例えば、当該技術分野で既知のラッシヒリングまたは規則シートメタルなどのいずれかであり得る。
【0065】
一実施形態において、カラムは連続した定常状態で操作される。注入、熱、周囲温度、または凝結における変化によって乱されない限り、添加される注入量は、通常、取り除かれる生成物量と等しい。
【0066】
好ましい実施形態において、注入と共にカラムに導入される熱量は、それがオーバーヘッド画分によっておよび生成物と共に取り除かれた熱量と等しくなるように調整される。慎重な調節によって、発泡、浸出、飛末同伴、または溢汪(flooding)が予防され得るか、または許容できるレベルまでに少なくとも低減され得る。
【0067】
一実施形態において、ステップ(B)において実施される精製前または製造前に、ステップ(A)で使用される水性組成物中の芳香族アミンを含有するインジゴの濃度は、前記ロイコインジゴ塩が25重量%未満の濃度でステップ(A)において得られるように選択される。
【0068】
従って、一実施形態において、ステップ(B)に使用されるロイコインジゴ塩の濃度もまた、25重量%未満である。
【0069】
蒸留による精製が選択された場合、蒸留中に、水と前記芳香族アミンが留去され、それにより、ロイコインジゴ塩溶液は精製され、かつ、同時に、溶液が濃縮され、ここで、安定し、かつ、精製された濃縮ロイコインジゴ塩溶液を入手し得るので、25重量%未満の濃度は有利であり得る。
【0070】
(b)水蒸気蒸留
【0071】
別の好ましい実施形態において、蒸留は、(b)水蒸気蒸留として実施される。
【0072】
芳香族アミン、例えば、アニリンやN‐メチルアニリンなどは、共沸混合物の形成による水蒸気揮発物であるので、前記芳香族アミンは、ステップ(A)で得られた未精製のロイコインジゴ塩溶液からステップ(B)において水と一緒に取り除かれる。
【0073】
水蒸気蒸留により、ロイコインジゴ溶液は、水蒸気の凝結によって一般的に希釈され、ここで、さらなる希釈溶液が得られる。それに続いて、過剰水が、溶液を濃縮するために留去されてもよく、ここで、さらなる芳香族アミンが取り除かれ得る。
【0074】
好ましい実施形態において、ステップ(B)で得られたロイコインジゴ塩溶液の濃度は、その溶液の総重量に基づいて、15~45重量%、好ましくは25~45重量%、さらに好ましくは25~35重量%の範囲内に設定される。
【0075】
一実施形態において、この設定は、必要であれば、水を加えるかまたは取り除くことによって、例えば、蒸留によって45重量%超の範囲まで濃縮された溶液に水を加えることによって、または水蒸気蒸留により25重量%の濃度を下回った溶液の蒸留によっておこなうことができる。
【0076】
一実施形態において、ステップ(B)は、精製後の溶液中の混合されたナトリウム塩とカリウム塩の形態のロイコインジゴの濃度が、溶液の総重量に基づいて15%超、好ましくは25~45重量%、さらに好ましくは25~35重量%になるように実施される。
【0077】
別の実施形態において、ステップ(B)は、精製後または製造後の芳香族アミンの濃度が、その溶液の総重量に基づいて、200ppm未満、例えば、100ppm、50ppm、20ppm、10ppmまたは5ppmなどになるように、かつ、その溶液中の混合されたナトリウム塩とカリウム塩の形態のロイコインジゴの濃度が、その溶液の総重量に基づいて25%超、好ましくは25~45重量%、さらに好ましくは25~35重量%になるように実施される。
【0078】
(c)抽出
【0079】
別の好ましい実施形態において、精製は、(c)抽出として実施される。
【0080】
「抽出」という用語は、本明細書中で使用される場合、その手段によってアニリンまたはアニリンとN‐メチルアニリンがロイコインジゴ溶液から抽出される液‐液抽出を意味する。
【0081】
抽出に好適な溶媒の例としては、精製条件下で不活性な水不溶性溶媒、例えば、炭化水素、ハロ炭化水素、エーテルもその他のアルコールまたはその混合物など、が挙げられる。
【0082】
好適な溶剤の具体例は、クロロホルム、ジクロロエチレン、ペルクロロエチレン、ジクロロフルオロエチレン、クロロベンゼン、メチルイソプロピルエーテル、メチルイソブチルエーテル、n‐ブチルエーテル、ジイソアミルエーテル、n‐ヘキサノール、n‐オクタノール、2‐エチルヘキサノール、n‐ノナノール、n‐デカノール、イソノナノール(異性体混合物)、イソデカノール(異性体混合物)、ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン、デカン、好適な沸騰範囲の石油エーテル、トルエン、キシレン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジ‐n‐ブチルケトンまたはシクロヘキサノン、さらにその混合物である。
【0083】
好ましい溶媒は、特にキシレン、トルエンおよび2‐エチルヘキサノールである。
【0084】
一実施形態において、インジゴの還元に続いて得られた水性のアルカリ性ロイコインジゴ溶液は、不活性有機溶媒を用いて、25~100℃、好ましくは40~70℃の温度にて抽出される。
【0085】
一実施形態において、ロイコインジゴ溶液対溶媒の相比は、1:1~1:3である。
【0086】
別の実施形態において、抽出期間は10~30分である。
【0087】
抽出可能な不純物を含有する、抽出のために利用される溶媒であって、抽出可能な不純物を含有するものは、再蒸留され、その後、抽媒として再使用され得る。
【0088】
そのプロセスは、バッチ式または連続的に実施できる。
【0089】
好ましい実施形態において、抽出は、遠心抽出機を使用して実施される。
【0090】
「遠心抽出機」という用語は、本明細書中で使用される場合、例えば「遠心接触機」または「環状遠心接触機」などの用語と同義的に使用される。
【0091】
遠心抽出機は、遠心分離機内部のローターの回転を使用して、ローターの外側の2つの不溶性液体、すなわち、水性ロイコインジゴ溶液と抽出に使用する水不溶性溶媒、を混合し、そして、ローター内部の重力野で液体を分離する。このように、遠心抽出機は、一方の液相、すなわち、ロイコインジゴ溶液から、他方の液相、すなわち、水不溶性有機溶媒の中へのアニリンまたはアニリンとN‐メチルアニリンの連続抽出を生じる。
【0092】
(e)ロイコインジゴ溶液を精製流に晒すこと
【0093】
別の好ましい実施形態において、精製は、(e)ロイコインジゴ溶液を精製流に晒すことのとおり実施される。
【0094】
その方法は、少なくとも以下のステップ(α)~(γ):
(α)(単数もしくは複数の)前記アミンを含む前記水性ロイコインジゴ溶液を含む液体流を準備し;
(β)精製流を準備し;
(γ)前記液体流を前記精製流と接触させること;
を含む。
【0095】
一実施形態において、本発明は、アニリンまたはアニリンとN‐メチルアニリンを含む水性ロイコインジゴ溶液から、ISO 14362‐1:2017(E)に従ってアニリンまたはアニリンとN‐メチルアニリンの濃度を測定してアニリン不含またはアニリン不含かつN‐メチルアニリン不含の水性ロイコインジゴ溶液を製造する方法に関し、ここで、前記ロイコインジゴがアルカリ金属塩の形態で存在し、そして、その方法は、少なくとも以下のステップ(α)~(ε):
(α)(単数もしくは複数の)前記アミンを含む前記水性ロイコインジゴ溶液を含む液体流を準備し;
(β)精製流を準備し;
前記精製流を前記液体流と接触させるように構成されたデバイスに、
(γ1)前記液体流を注入し;
(γ2)前記精製流を注入し;
(δ)前記液体流と接触した前記精製流の少なくとも一部をそのデバイスから送り出し;および
(ε)前記精製流によって接触された前記液体流の少なくとも一部をそのデバイスから送り出すこと、
を含む。
【0096】
本発明によると、ステップ(α)は、(単数もしくは複数の)前記アミンを含む前記水性ロイコインジゴ溶液を含む液体流を準備することを必要とする。前記準備は、それぞれの貯蔵コンテナ、またはその中でロイコインジゴ塩溶液がインジゴの還元によって製造される還元デバイスから直接的に、ロイコインジゴ塩溶液を送り出すことによって好ましくは実施される。送り出された溶液は、例えば、圧力、重力またはポンプの影響下にあって、流れている状態にあり、これにより、流れを形成する。好ましくは、溶液の流れは、パイプによってステップ(γ1)に使用されるデバイスへと導かれる。
【0097】
さらに本発明によると、ステップ(β)は、精製流を準備することを必要とする。前記準備は、それぞれの貯蔵コンテナから好適な精製液体または精製蒸気を送り出すことによって好ましくは実施される。送り出された精製液体または蒸気は、例えば、圧力、重力またはポンプの影響下にあって、流れている状態にあり、これにより流れを形成する。好ましくは、溶液または蒸気の流れは、パイプによってステップ(γ2)に使用されるデバイスへと導かれる。
【0098】
ステップ(β)で準備される「精製流」という用語は、前記アミンを含むロイコインジゴ溶液中のアニリンまたはアニリンとN‐メチルアニリンを取り除くか、または少なくともその含有量を低減するのに好適であるあらゆる物質を示し、ここで、前記ロイコインジゴは塩の形態で存在する。
【0099】
一実施形態において、前記精製流は、液体、すなわち、精製液体であってもよい。好ましくは、精製液体として、溶媒が、項目(c)抽出において前述したように使用され得る。従って、前記実施形態において、(e)ロイコインジゴ溶液を精製流に晒すことは(c)抽出のとおり実施され得る。
【0100】
好ましい実施形態において、前記精製流は、この後、精製蒸気とも表示され得る蒸気から作り出される。
【0101】
前記蒸気は、好適なコンテナ内の圧力下で作り出され、かつ、維持されてもよく、ここで、前記コンテナからの蒸気の放出により、前記蒸気は流れている状態になり、これにより、流れを形成する。好ましくは、放出された蒸気は、パイプを通してステップ(γ2)に使用されるデバイスに導かれる。
【0102】
「蒸気」という用語は、本明細書中で使用される場合、気相の物質または化合物を包含するか、または意味する。典型的には、斯かる蒸気は、物質または化合物をその沸点を上回るまで加熱することによって生じる。「蒸気」という用語はまた、気相中に分散した小さい液滴の形態で存在し、これによりエアゾールを形成する化合物または物質も包含する。
【0103】
一実施形態において、前記蒸気または蒸気流は、不活性ガスであるか、または不活性ガスを含む。
【0104】
別の実施形態において、前記蒸気または蒸気流は、水と混合できないガス状の有機溶媒であるか、またはそれを含む。
【0105】
さらに別の実施形態において、前記蒸気または蒸気流は、水蒸気であるか、または水蒸気を含む。
【0106】
従って、一実施形態において、前記蒸気または蒸気流は、不活性ガス、水と混合できないガス状の有機溶媒、もしくは水蒸気、またはそのうちの2つもしくは3つであるか、あるいは、それらを含む。
【0107】
好適な不活性ガスは窒素である。
【0108】
水と混合できないガス状の有機溶媒は、炭化水素から選択され得る。
【0109】
一実施形態において、前記精製流が不活性ガスであるか、または不活性ガスを含む場合、(e)ロイコインジゴ溶液を精製流に晒すことは、(d)不活性ガスを用いたストリッピングのとおり実施され得る。
【0110】
別の実施形態において、前記精製流が水と混合できないガス状の有機溶媒あるか、またはそれを含む場合、(e)ロイコインジゴ溶液を精製流に晒すことは、(d)水と混合できないガス状の有機溶媒を用いたストリッピングのとおり実施され得る。
【0111】
「蒸気」という用語は、本明細書中で使用される場合、蒸発した水を意味する。
【0112】
好ましい実施形態において、前記蒸気または蒸気流は、水蒸気を含むか、または水蒸気である。
【0113】
一実施形態において、前記精製流が水蒸気であるか、または水蒸気を含む場合、(e)ロイコインジゴ溶液を精製流に晒すことは、(b)水蒸気蒸留のとおり実施され得る。
【0114】
一実施形態において、前記蒸気または蒸気流は、水蒸気と窒素を含むか、または水蒸気と窒素から成る。
【0115】
一実施形態において、前記水蒸気は、圧力容器内で100℃または100℃超の温度まで水を加熱することによって作り出される。約10barかつ200℃の高圧水蒸気または約0.5barかつ100℃の低圧水蒸気が、本発明による方法において使用され得る。
【0116】
好ましい実施形態において、前記水蒸気は、ステップ(ε)に従ってデバイスから送り出された前記液体流の少なくとも一部を加熱することによって、追加的にまたは選択的に作り出される。加熱のために、例えば熱交換器が使用され得る。
【0117】
一実施形態において、ステップ(γ2)に従って注入される精製流から作り出されるデバイスに投入される熱量、およびステップ(γ1)に従って液体流と共に投入される熱は、デバイスへの熱の過剰であるかまたは不十分な添加が発泡または溢汪につながる可能性があるので、それがステップ(δ)および(ε)において取り除かれた熱量と等しくなるように制御される。従って、その方法は、断熱状態で達成するように実施される。
【0118】
別の実施形態において、ステップ(ε)に従ってデバイスから送り出された前記液体流の加熱部分から作り出されるデバイスに投入される熱量、およびステップ(γ1)に従って液体流と共に投入される熱は、デバイスへの熱の過剰であるかまたは不十分な添加が発泡または溢汪につながる可能性があるので、それがステップ(δ)および(ε)において取り除かれた熱量と等しくなるように制御される。従って、その方法は、断熱状態で達成するように実施される。
【0119】
さらに本発明によると、ステップ(γ1)および(γ2)は、前記液体流と前記精製流、例えば水蒸気流などが接触するように構成されたデバイスに前記液体流および前記精製流が注入されることを必要とする。
【0120】
一実施形態において、前記デバイスは、液体流を注入するための単数もしくは複数の液体流入口、および精製流を注入するための単数もしくは複数の精製流入口、例えば、単数もしくは複数の蒸気流入口などを含む。
【0121】
その入口は、デバイスのどんな位置にでも提供され得る、すなわち、その入口は、デバイスの底部もしくは頂上部、または側壁に提供され得る。
【0122】
一実施形態において、(単数もしくは複数の)液体流入口は、デバイスの底部に提供され、かつ(単数もしくは複数の)精製流入口は、頂上部に提供され、逆もまた同様である。
【0123】
別の実施形態において、(単数もしくは複数の)液体流入口は、デバイスの側壁に提供され、かつ、(単数もしくは複数の)精製流入口は、デバイスの底部もしくは頂上部に提供される。
【0124】
別の実施形態において、(単数もしくは複数の)精製流入口は、デバイスの側壁に提供され、かつ、(単数もしくは複数の)液体流入口は、デバイスの底部もしくは頂上部に提供される。
【0125】
好ましくは、(単数もしくは複数の)精製流入口および/または(単数もしくは複数の)液体流入口は、単数もしくは複数のスパージャーの形態で設計される。精製流入口および/または液体流入口としての有孔シートの使用もまた、可能である。
【0126】
一実施形態において、接触させることは、デバイスが、液体流に由来する液体で部分的にまたは完全に満たされ、かつ、(単数もしくは複数の)精製流入口が、注入された精製流が必ず液体を流れ抜けなければならないように配置されるようにして実施される。
【0127】
別の実施形態において、(単数もしくは複数の)液体流お入口よび精製流入口は、その流れが互いに交差するように配置される。
【0128】
別の実施形態において、流れを接触させることは、対向流様式で実施され得る。
【0129】
別の実施形態において、流れを接触させることは、例えば、(単数もしくは複数の)液体および精製入口が同一であるとき、すなわち、その流れが(単数もしくは複数の)共有の入口によって注入されるとき、並流様式で実施され得る。
【0130】
別の実施形態において、そのデバイスは、液体流および精製流を、それらが互いに接触するように誘導する手段を含んでいる。斯かる手段は当該技術分野で知られている。プレートおよび充填材料、例えばラッシヒリングなどが、例示的に言及されている。
【0131】
「プレート」という用語は、本明細書中で使用される場合、「トレイ」という用語と同義的に使用される。
【0132】
「充填材料(filling material)」という用語は、本明細書中で使用される場合、「充填物(packing)」という用語と同義的に使用される。
【0133】
本発明によると、ステップ(δ)は、前記精製流、例えば、前記液体流と接触した蒸気流などの少なくとも一部がデバイスから送り出される必要がある。
【0134】
従って、一実施形態において、前記デバイスは、前記液体流と接触した前記精製流の少なくとも一部を送り出すための単数もしくは複数の精製流出口を含む。
【0135】
さらに本発明によると、ステップ(ε)は、前記精製、例えば、蒸気流などによって接触された前記液体流の少なくとも一部をデバイスから送り出すことを必要とする。
【0136】
従って、一実施形態において、前記デバイスは、前記精製流、例えば、蒸気流などによって接触された前記液体流の少なくとも一部を送り出すための単数もしくは複数の液体流出口を含む。
【0137】
基本的に、その出口は、頂上部の底部において、または、すなわち、精製流と液体流入口、またはデバイスの側壁で考察されるように、様式で配置され得る。
【0138】
好ましい実施形態において、(単数もしくは複数の)精製流入口はデバイスの下部に配置され、かつ、(単数もしくは複数の)液体流入口はデバイスの上部に配置される。
【0139】
対応する好ましい実施形態において、斯かる精製流出口、例えば、蒸気出口などは、デバイスの上部に配置され、かつ、液体流出口はデバイスの下部に配置される。
【0140】
特に好ましい実施形態において、(単数もしくは複数の)精製流入口は、デバイスの底部に配置されて、かつ、(単数もしくは複数の)液体流入口はデバイスの頂上部に配置される。
【0141】
対応する特に好ましい実施形態において、(単数もしくは複数の)精製流出口はデバイスの頂上部に配置され、かつ、(単数もしくは複数の)液体流出口はデバイスの底部に配置される。
【0142】
従って、好ましい実施形態において、前記液体流と前記精製流、例えば、蒸気流などは、対向流である。
【0143】
さらなる好ましい実施形態において、前記液体流と前記精製流、例えば、蒸気流などは対向流であり、ここで、液体流は下向きに流れ、そして、精製流は上向きに流れる。
【0144】
(単数もしくは複数の)精製出口、例えば、(単数もしくは複数の)蒸気出口などから送り出される精製流、例えば、蒸気流などは、アニリンまたはアニリンとN‐メチルアニリンを含む。
【0145】
本発明による方法の結果として、(単数もしくは複数の)液体流出口からステップ(ε)に従って送り出された液体流のアニリンまたはアニリンとN‐メチルアニリンの濃度は、(単数もしくは複数の)液体流入口を介してステップ(γ1)に従ってデバイスへ注入された液体流のアニリンまたはアニリンとN‐メチルアニリンの濃度より低い。
【0146】
一実施形態において、ステップ(γ2)に従ってデバイスへ注入される精製流、例えば、蒸気流などの温度および流量は、分配比が70%未満になるように選択される。
【0147】
「分配比」という用語は、本明細書中で使用される場合、パーセント(ステップ(γ1)に従ってデバイスへ注入される液体流=100%)で表される、ステップ(δ)に従ってデバイスから送り出される精製流、例えば、蒸気流などの総量、対、ステップ(γ1)に従ってデバイスへ注入される液体流の総量の比を意味する。
【0148】
好ましい実施形態において、分配比は、60%未満であり、40%未満がより好ましく、30%未満、20%未満または10%未満がより一層好ましい。
【0149】
別の好ましい実施形態において、分配比は、60~5%の範囲内にあり、50~5%、40~5%、30~5%、20~5%または10~5%がさらに好ましい。
【0150】
好ましい実施形態において、ステップ(α)~(ε)は、同時に実施される、すなわち、プロセスは連続プロセスである。
【0151】
別の実施形態において、プロセスは不連続的に、すなわち、バッチプロセスとして、実施されてもよい。一実施形態において、デバイスは、ステップ(γ1)に従って液体流によって提供される液体で満たされる。それに続いて、ステップ(γ2)および(δ)が実施される。ステップ(δ)による接触に続いて、精製ロイコインジゴ溶液が、ステップ(ε)に従ってデバイスから送り出される。その方法は繰り返されてもよい。
【0152】
好ましい実施形態において、本発明による方法で使用されるデバイスは、カラムであるか、またはカラムを含む。
【0153】
カラム
【0154】
(e)ロイコインジゴ溶液を精製流に晒すことに使用される「カラム」という用語は、空洞構造要素、好ましくは空洞の円筒要素を包含し、ここで、その長さは直径を上回る。直径も長さも制限されない。
【0155】
一実施形態において、カラムの長さと直径または長さ対直径の比は、自由に選択されても、または達成すべき結果を考慮して最適化されてもよい。
【0156】
好ましくは、直径は0.1~4メートルの範囲内にある。
【0157】
好ましくは、長さは1~50メートル、例えば、1~30メートルなどの範囲内にある。
【0158】
別の実施形態において、直径は0.1~4メートルの範囲内にあり、かつ、長さは1~30メートルの範囲内にある。
【0159】
一実施形態において、本明細書中に規定されるカラムは、直線になるように設計される。
【0160】
別の実施形態において、本明細書中に規定されるカラムは、直線にならないように設計される。
【0161】
別の実施形態において、カラムは水平様式で配置される。
【0162】
別の実施形態において、カラムは垂直様式で配置される。
【0163】
別の実施形態において、カラムはコイルの形態で提供される。
【0164】
垂直様式での配置が好まれる。
【0165】
本発明の方法使用されるカラムは、理論段を含む。「理論段」という用語は、本明細書中で使用される場合、その中で2つの相、例えば、液体流に由来する液相と本明細書中に規定される精製流に由来する精製相、例えば、気相などとがカラム内で互いに平衡状態を確立する仮想領域または段を包含する。斯かる平衡段はまた、平衡段または理想段とも呼ばれ得る。
【0166】
本発明による方法で必要とされる理論段数は、使用されるカラムの特定のタイプに依存し得る。(単数もしくは複数の)出力画分中の、すなわち、ステップ(δ)および(ε)で得られる、アニリンまたはアニリンとN‐メチルアニリンの所望の分離度合いを考慮して、当該技術分野で既知の方法に従って決定され得る。それはまた、使用される還流の量にも依存し得る。
【0167】
そのとき、産業実現において適用されるべき段数の最終的な設計選択は、追加段のコストとより高い還流レートを使用するコストとの間の経済収支に基づいて選択され得る。
【0168】
一実施形態において、そのカラムは、5~50の理論段を有してもよい。
【0169】
別の実施形態において、そのカラムは、10~40の理論段を有してもよい。
【0170】
一実施形態において、そのカラムは、減圧下で操作され得る。
【0171】
別の実施形態において、そのカラムは、実質的に大気圧と等しい圧力下で操作され得る。
【0172】
さらに別の実施形態において、そのカラムは、大気圧より高い圧力下で操作され得る。
【0173】
一実施形態において、そのカラムは、減圧下で、例えば、0.1105Pa(絶対圧)(0.10bara)~0.95105 Pa(絶対圧)(0.95bara)の範囲内などの圧力下で動作し得る。斯かる条件において、カラムの温度は40℃~95℃の範囲に設定され得る。
【0174】
別の実施形態において、そのカラムは、実質的に大気圧と等しい圧力下で、すなわち、さまざまな0.95105Pa(絶対圧)(0.95bara)~1.2105Pa(絶対圧)(1.2bara)の範囲内で動作し得る。斯かる条件において、カラムの温度は95℃~110℃の範囲内に典型的には設定される。
【0175】
さらなる実施形態において、そのカラムは、大気圧を上回る圧力下で、任意選択で、1.2105Pa(絶対圧)(1.2bara)~11105Pa(絶対圧)(11bara)の圧力下で、例えば、7105Pa(絶対圧)(7bara)にて作動させ得る。そのとき、カラムの温度は、110℃~190℃の範囲内、例えば、160℃~170℃の範囲内に設定され得る。
【0176】
引用される温度は、カラムの底部にて計測され、そして、カラムの頂上部に残る蒸気の量に依存している。
【0177】
加熱のために、一実施形態において、スペースヒーターが使用される。「スペースヒーター」という用語は、本明細書中で使用される場合、単一、かつ、狭い領域、例えば、カラムの底部の領域、を加熱するのに使用されるデバイスを包含する。従って、前記スペースヒーターは、カラムの底部に、または底部付近に好ましくは配置される。
【0178】
別の実施形態において、そのカラムの上部領域が加熱される。
【0179】
別の実施形態において、そのカラムの底部および上部領域が加熱される。
【0180】
精製として水蒸気が使用されるか、またはステップ(γ2)に従って蒸気が送り込まれるとき、ステップ(δ)に従ってカラムを気相状態にしておくとき、アニリンは水に随伴する。カラムから来るアニリンを含む蒸気および水蒸気は、凝結され、そして、冷やされてもよい。その後、復水は、水とアニリンを含む水相に分離され得る。
【0181】
復水の一部を、それが気相中の液滴および任意選択で固形物のノックダウンに使用されるカラムの頂上部に戻してもよく、そしてその相はカラムを離れる。このノッキングダウンは、好ましくは棚段区画を使用して実施され得るか、あるいは同様に、規則充填物区画が使用されるであろう。
【0182】
そのデバイスは、好ましくは使用されるカラムの下部に、必要であれば全体に、導入された消泡手段、例えば、バッフルなどを伴って提供されてもよい。
【0183】
別の実施形態において、消泡は、精製されるロイコインジゴ溶液に消泡剤を添加することによって支援され得る。あるいは、異種の消泡剤、例えば、シリコーン油などが使用され得るが、ロイコインジゴ溶液中に溶解される均質の消泡剤を使用し、そしてそれは、精製したロイコインジゴのインジゴへのその後の酸化にマイナスの影響を及ぼさないことが好ましい。
【0184】
具体的には、本発明によると、ステップ(γ1)および(γ2)で使用されるデバイスは、
プレートカラム、充填カラム、および気泡カラム、あるいは、前記カラムのうちの任意の2つもしくは3つ、または2つ以上から成る群から選択される。
【0185】
「プレートカラム」という用語は、本明細書中で使用される場合、「棚段カラム」または「トレイカラム」という用語と同義的に使用される。
【0186】
プレートカラム、充填カラム、および気泡カラムは、当該技術分野で知られている。
【0187】
一実施形態において、そのカラムは、その方法をさらに最適化するために、プレートカラムとして設計される単数もしくは複数のシーケンスを含むか、または充填カラムとして設計される単数もしくは複数のシーケンスを含む。
【0188】
別の実施形態において、そのカラムは、その方法をさらに最適化するように、プレートカラムとして設計された単数もしくは複数のシーケンス、充填カラムとして設計された単数もしくは複数のシーケンス、および気泡カラムとして設計された単数もしくは複数のシーケンスを含有する。
【0189】
別の実施形態において、そのカラムは、その方法をさらに最適化するように、プレートカラムとして設計された単数もしくは複数のシーケンス、および気泡カラムとして設計された単数もしくは複数のシーケンスを含有する。
【0190】
別の実施形態において、そのカラムは、その方法をさらに最適化するように、充填カラムとして設計された単数もしくは複数のシーケンス、および気泡カラムとして設計された単数もしくは複数のシーケンスを含有する。
【0191】
別の実施形態において、それぞれ複数のプレートカラム、充填カラム、または気泡カラムが、その方法をさらに最適化するために連続的に接続される。
【0192】
別の実施形態において、プレートカラムは、その方法をさらに最適化するために、充填カラムまたは気泡カラムに接続される。
【0193】
別の実施形態において、充填カラムは、その方法をさらに最適化するために、気泡カラムに接続される。
【0194】
別の実施形態において、プレートカラムは、その方法をさらに最適化するために、充填カラムに接続される。
【0195】
別の実施形態において、プレートカラムは、その方法をさらに最適化するために、充填カラムおよび気泡カラムに接続される。
【0196】
さらに別の実施形態において、従来技術で開示されるように、予備精製が実施され、ここで、最終的な精製は本発明による方法で実施される。
【0197】
「予備精製」という用語は、本明細書中で使用される場合、それぞれのロイコインジゴ塩溶液からの水の留去、好適な有機溶媒を用いた抽出、水蒸気蒸留または窒素を用いたストリッピング、あるいはそのうちの二つ以上を包含する。
【0198】
当然のことながら、本発明による方法において、酸素の存在は、ロイコインジゴのインジゴへの早過ぎる酸化を予防するために、排除されなければならない。
【0199】
使用したカラムを以降でさらに詳細に考察する。
【0200】
プレートカラム
【0201】
一実施形態において、そのデバイスはプレートカラムである。
【0202】
好ましい実施形態において、そのプレートカラムは、塔の形態に配置される、すなわち、それは垂直様式で配置される。
【0203】
一実施形態において、そのカラムの高さは、5メートル超であり、好ましくは5~50メートルであり、そして10~40メートルがより好ましい。
【0204】
プレートカラムに関して、理論段はまた、理論トレイまたは理論プレートとも呼ばれる。
【0205】
そのトレイまたはプレートは、好ましくは円形鋼板から加工されたものであり、そして、カラムの最後部まで約60~75cm間隔でカラムの内側に通常導入される。
【0206】
一実施形態において、そのトレイは、バブルキャップトレイまたはバルブキャップトレイである。
【0207】
「バブルキャップトレイ」という用語は、本明細書中で使用される場合、中心ライザー上のスロットキャップを包含し、ここで、ガスはライザーを通って上方に流れ、逆流は、キャップ内にあって、ライザーとキャップの間の環状部分を下向きに通過し、そして、最終的にキャップの下側の一連の開口部またはスロットを通り抜けて液体内に入る。
【0208】
「バルブキャップトレイ」という用語は、本明細書中で使用される場合、昇降キャップによって覆われた、穿孔を有するトレイを包含する。蒸気流がキャップを持ち上げ、それにより、蒸気の通過のための流量範囲を自ら作り出す。リフティングキャップは、蒸気が液体中に水平に流れ込むように誘導する。
【0209】
一実施形態において、そのトレイは、有孔トレイ、すなわち、シーブトレイである。「シーブトレイ」という用語は、穿孔を通って上向きに流れる蒸気が、穿孔を通って下向きに流れる液体と接触するので、蒸気と液体との間の所望の接触が起こるトレイを包含する。
【0210】
一実施形態において、接触は、各穿孔にバブルキャップまたはバルブキャップを導入して、各トレイ上の堰によって維持された液体の薄層を通過して流れる蒸気泡の形成を促進することによって達成される。
【0211】
従って、一実施形態において、そのトレイは、有孔トレイ、バブルキャップトレイもしくはバルブキャップトレイ、またはそのうちの2つもしくは3つ、から選択され得る。
【0212】
有孔トレイ、バブルキャップトレイまたはバルブキャップトレイは、当該技術分野で知られている。
【0213】
一実施形態において、プレートカラムへの注入は、ステップ(γ1)および(γ2)に従ってカラム内に注入される、ステップ(α)に従って準備される液体流およびステップ(β)に従って準備される精製流、例えば、蒸気流などを含むか、またはそれらである。よって、2つの相、すなわち、精製流から作り出される気相および液体流から作り出される1つの液相が、カラムの内側に広がっている。液相は、好ましくは、重力によってカラムじゅうを下向きに流れ、それに対して、気相は上向きに流れる。これらの2つの相は、プレートの領域を埋め尽くす穴、バルブまたはバブルキャップに対応して接触する。蒸気はこれらのデバイスじゅうをより高いプレートへと移動し、それに対して、液体は、例えば下降管を通って、より低いプレートに移動する。
【0214】
液体はカラムの底部で回収され、それに対して、蒸気は頂上部で回収される。頂上部および底部にて生じた液体および蒸気は、再循環させてもよい。
【0215】
ステップ(δ)に従って頂上部にて回収された蒸気は、ロイコインジゴ溶液から取り除かれたアニリンまたはアニリンとN‐メチルアニリンを含有している。
【0216】
ステップ(ε)に従って底部にて回収された液体は、精製されたロイコインジゴ溶液を含有している。
【0217】
充填カラム
【0218】
一実施形態において、先に開示したプレートカラムのプレートは、充填区画によって、すなわち、充填材料を含む区画によって置換される。従って、精製に使用されるデバイスは、そのとき充填カラムである。
【0219】
一実施形態において、充填物は、通常の外形、例えば、積み重ねられた環、格子、独自の構造の環、またはサドルなど、を有していてもよい。
【0220】
環状は、例えば、ラッシヒリングまたはポールリングである。
【0221】
サドルは、例えば、Intalox(登録商標)サドルであってもよい。
【0222】
一実施形態において、充填物は、歪んだ形状を有していてもよい。
【0223】
その充填物は、カラム内に不規則に配置されていてもよく、ここで、環、サドル、および独自のシェードがカラム内に投げ込まれ、そして、不規則に配置されている。
【0224】
別の実施形態において、充填物は、カラム内に一定の間隔で配置されていてもよい。
【0225】
環、サドルまたは独自の構造のシェードは、さまざまな材料、例えば、セラミック、金属、プラスチック、および炭素など、から作られていてもよい。
【0226】
一実施形態において、成形充填物、例えば、ワイヤーメッシュまたは有孔シートなどの使用もまた可能である。
【0227】
充填物の必要な高さは、当該技術分野で知られている方法に従って決定され得る。
【0228】
一実施形態において、充填カラムへの注入は、ステップ(γ1)および(γ2)に従ってカラム内に注入される、ステップ(α)に従って準備される液体流およびステップ(β)に従って準備される精製流、例えば、蒸気流などを含むか、またはそれらである。よって、2つの相、すなわち、精製流から作り出される気相および液体流から作り出される1つの液相が、カラムの内側に広がっている。液相は、好ましくは、重力によってカラムじゅうを下向きに流れ、それに対して、気相は上向きに流れる。これらの2つの相は、充填カラムの充填物または充填材料に対応して接触する。蒸気はこれらのデバイスじゅうをより高い充填物へと移動し、それに対して、液体は、例えば下降管を通って、より低い充填物に移動する。
【0229】
液体は充填カラムの底部で回収され、それに対して、蒸気は頂上部で回収される。頂上部および底部にて生じた液体および蒸気は、再循環させてもよい。
【0230】
ステップ(δ)に従って頂上部にて回収された蒸気は、ロイコインジゴ溶液から取り除かれたアニリンまたはアニリンとN‐メチルアニリンを含有している。
【0231】
ステップ(ε)に従って底部にて回収された液体は、精製されたロイコインジゴ溶液を含有している。
【0232】
気泡カラム
【0233】
一実施形態において、プレートカラムまたは充填カラムに関して開示されるプレートまたは充填物を、カラムから取り除く。
【0234】
従って、そのデバイスは、気泡カラムとして設計され得る。
【0235】
「気泡カラム」という用語は、本明細書中で使用される場合、「気泡カラム型反応器」という用語と同義的に使用される。
【0236】
最も簡単な形態では、本発明による方法で使用される気泡カラムは、精製流入口に蒸気分配器を備えた垂直円筒から成る。斯かる気泡カラムは、単段気泡カラムとして設計され得る。
【0237】
ステップ(β)に従って精製流または蒸気流によって提供される気相は、分配器によって液相に入る気泡内に分散される。
【0238】
ステップ(α)に従って液体流によって提供される液相は、蒸気流の流れに対して並流または対向流により移動し得る。
【0239】
一実施形態において、気泡カラムへの注入は、ステップ(γ1)および(γ2)に従ってカラム内に注入される、ステップ(α)に従って準備される液体流およびステップ(β)に従って準備される蒸気流を含むか、またはそれらである。よって、2つの相、すなわち、精製流から作り出される気相および液体流から作り出される1つの液相が、カラムの内側に広がっている。液相は、好ましくは、重力によってカラムじゅうを下向きに流れ、それに対して、気相は上向きに流れる。
【0240】
液体は気泡カラムの底部で回収され、それに対して、蒸気は頂上部で回収される。頂上部および底部にて生じた液体および蒸気は、再循環させてもよい。
【0241】
ステップ(δ)に従って頂上部にて回収された蒸気は、ロイコインジゴ溶液から取り除かれたアニリンまたはアニリンとN‐メチルアニリンを含有している。
【0242】
ステップ(ε)に従って底部にて回収された液体は、精製されたロイコインジゴ溶液を含有している。
【0243】
公知のとおり、気泡カラムの有効性は、気泡の形状および速度に依存し得る。一実施形態において、空の反応器断面積に基づく液体および蒸気の表面速度の範囲は、それぞれ0~3cm/秒および3~25cm/秒の範囲内になるように選択される。
【0244】
一実施形態において、前記気泡カラムは、好ましくは、気泡を制御する手段を含有している、すなわち、それは好ましくは流速制御システムを含有している。
【0245】
さらに、気泡の速度、形状および面積の特性は、気泡カラムの有効性を最適化するために既知の画像処理技術によって試験され得る。
【0246】
一実施形態において、気泡反応器の長さと直径の比は、3~10である。
【0247】
他の実施形態において、単段気泡カラムの設計は、当該技術分野で知られているそれぞれのカラムによって変更されてもよい。
【0248】
一実施形態において、気泡カラムは、多段気泡カラム、すなわち、気泡カラムカスケード、として設計されてもよい。一実施形態において、前記カスケードは、シーブトレイを含んでもよい。
【0249】
別の実施形態において、気泡カラムは、ループ反応器、例えば、巨大(mammoth)ループ反応器またはジェットループ反応器など、として設計されてもよい。
【0250】
水性ロイコインジゴ塩溶液
【0251】
第四の態様によると、本発明は、アニリンまたはアニリンとN‐メチルアニリンの形態で芳香族アミンを含有する水性ロイコインジゴ塩溶液であって、ここで、溶液中の芳香族アミンの濃度が、200ppm超であり、ここで、前記溶液中のロイコインジゴが混合されたナトリウム塩とカリウム塩の形態で存在し、およびここで、ナトリウム対カリウムのモル比が、3:1超~10:1の範囲内にある、水性ロイコインジゴ塩溶液に関する。
【0252】
一実施形態において、非精製溶液中の塩の濃度は、溶液の総重量に基づいて、≦35重量%、好ましくは25~35重量%である。
【0253】
別の実施形態において、非精製溶液中の塩の濃度は、溶液の総重量に基づいて、≦25重量%、好ましくは15~25重量%である。
【0254】
第五の態様によると、本発明は、アニリンまたはアニリンとN‐メチルアニリンの形態で芳香族アミンを含有する水性ロイコインジゴ塩溶液であって、ここで、溶液中の芳香族アミンの濃度が、200ppm未満、例えば100ppm、50ppm、20ppm、10ppmまたは5ppmなどであり、ここで、溶液中のロイコインジゴが、混合されたナトリウム塩とカリウム塩の形態で存在し、およびここで、ナトリウム対カリウムのモル比が、3:1超~10:1の範囲内にある、水性ロイコインジゴ塩溶液に関する。
【0255】
好ましい実施形態において、精製された溶液中の塩の濃度は、溶液の総重量に基づいて、5~65重量%、例えば、10~60重量%、15~55重量%、20~50重量%または25~45重量%などであり、さらに好ましくは25~35重量%である。
【0256】
一実施形態において、本発明は、第二の態様に規定した方法によって入手可能な、先に規定した水性ロイコインジゴ塩溶液に関する。
【0257】
本発明による水性ロイコインジゴ溶液の使用
【0258】
第五の態様で規定した溶液は、インジゴを調製するのに使用され得る。
【0259】
よって、第六の態様によると、本発明は、以下のステップ(D):
(D)第五の態様に規定した水性ロイコインジゴ溶液を酸化させること、
を含むインジゴを製造する方法に関する。
【0260】
それぞれの従来技術で知られた酸化方法が、酸化に使用され得る。
【0261】
好ましい実施形態において、前記酸化は、第五の態様に規定した方法で得られた前記ロイコインジゴ塩溶液で処理した織物の存在下で実施される。
【0262】
従って、本発明はまたインジゴを製造する方法に関し、ここで、ステップ(D)はステップ(D)の前に以下のステップ(C):
(C)第五の態様に規定したロイコインジゴ溶液で織物を処理すること、
を含む。
【0263】
一実施形態において、本発明はインジゴを製造する方法であって、その方法が、以下のステップ(I)および(III):
(I)第一の態様または第二の態様に規定した方法、あるいはそこで規定した実施形態のいずれか一つを実施し;
(III)ステップ(I)で得られたロイコインジゴ溶液を酸化させること、
を含む方法に関する。
【0264】
一実施形態において、その方法は、ステップ(III)の前に以下のステップ(II):
(II)ステップ(I)で得られたロイコインジゴ溶液で織物を処理すること、
を含む。
【実施例
【0265】
実施例1
262gのインジゴ(濃度20重量%)を含有する1311gの水性インジゴ懸濁液を、78gの水酸化ナトリウム、19gの水酸化カリウムおよび6gのラネー‐ニッケルの存在下で70℃および2barの圧力にて水素化した。反応を終了させた後に、反応混合物を冷まし、圧力を放出した。溶液の総重量に基づく20重量%の濃度のロイコインジゴの水性アルカリ性溶液を得た。ISO 14362‐1:2017(E)に従って計測したアニリン含有量は2,585ppmであり、N‐メチルアニリン含有量は1,276ppmであった。
実施例2
【0266】
実施例1で得られた1000gの溶液を常圧にて蒸留に供した。540gの水を留去した後に、31重量%の溶液を得た。その溶液は23℃にて安定していた。ISO 14362‐1:2017(E)に従って計測したアニリン含有量は195ppmであり、N‐メチルアニリン含有量は3.3ppmであった。
実施例3(比較)
【0267】
1,000gの30重量%のロイコインジゴ溶液(6.5重量%のアルカリ金属、2,495ppmのアニリンおよび1,480ppmのN‐メチルアニリンを含有)を、環境気圧にて蒸留に供した。470mlの水が留去された後に、57重量%の溶液を得た。ISO 14362‐1:2017(E)に従って測定した、得られた濃縮溶液中のアニリンの含有量は173ppmであり、N‐メチルアミン濃度は9ppmであった。
実施例4
【0268】
1,000gの水を、2,000gの30重量%のロイコインジゴ溶液(6.5重量%のアルカリ金属、2,356ppmのアニリンおよび1,258ppmのN‐メチルアニリンを含有)に加えた。それに続いて、その組成物を環境気圧にて蒸留に供した。2,000mlの水を留去した後に、60重量%の溶液を得た。ISO 14362‐1:2017(E)によると、得られた濃縮溶液中のアニリンの含有量は38ppmであり、そして、N‐メチルアミン濃度は検出できなかった。
実施例5
【0269】
2,000gの水を、2,000gの30重量%のロイコインジゴ溶液(6.5重量%のアルカリ金属、2,350ppmのアニリンおよび1,335ppmのN‐メチルアニリンを含有)に加えた。それに続いて、その組成物を環境気圧にて蒸留に供した。3,000mlの水を留去した後に、60重量%の溶液を得た。ISO 14362‐1:2017(E)に従って測定した、得られた濃縮溶液中のアニリンの含有量は16ppmであり、そして、N‐メチルアミン濃度は検出できなかった。
実施例6
【0270】
3,000gの水を、2,000gの30重量%のロイコインジゴ溶液(6.5重量%のアルカリ金属、2,164ppmのアニリンおよび1,170ppmのN‐メチルアニリンを含有)に加えた。それに続いて、その組成物を環境気圧にて蒸留に供した。4,000mlの水を留去した後に、60重量%の溶液を得た。ISO 14362‐1:2017(E)に従って測定した、得られた濃縮溶液中のアニリンの含有量は5ppmであった。N‐メチルアミンは検出できなかった。
実施例7
【0271】
実施例4で得られた1,000gのロイコインジゴ溶液を、500gの水で希釈して、40重量%の溶液を得た。ISO 14362‐1:2017(E)に従って測定して、この溶液は5ppm未満のアニリン含有量を有していた。その溶液を、建染めに使用し、そして、深い色合いをもたらした。
実施例8
【0272】
2,000gの30重量%のロイコインジゴ溶液(6.5重量%のアルカリ金属、2,164ppmのアニリンおよび1,170ppmのN‐メチルアニリンを含有)を環境気圧にて蒸留に供した。
蒸留と同時に、3,000mlの水はゆっくり加えた。4,000mlの水を留去した後に、60重量%の溶液を得た。ISO 14362‐1:2017(E)に従って測定した、得られた濃縮溶液中のアニリンの含有量は5ppmであった。N‐メチルアミンは検出できなかった。
実施例9
【0273】
0.10mの直径と3mの高さを有し、かつ、その底部にスペースヒーターを備えた円筒形多段プレートカラムに、不活性条件下、実施例8で開始材料として使用される5~10kgのロイコインジゴ溶液を充填した。スペースヒーターを、カラム底部の液体が95~110℃の温度まで加熱されるように設定した。次に、高圧水蒸気を、カラム底部のスパージャーを介して液体中に導入した。頂上部にてカラムから出る水蒸気を回収し、凝結させた。2~4時間後に、カラムの内容物を送り出した。得られた溶液は、ISO 14362‐1:2017(E)に従って測定した場合に、アニリン不含、かつ、N‐メチルアニリン不含であった。
実施例10
【0274】
実施例9に使用したカラムをパージし、そして、不活性条件下で維持した。スペースヒーターを、カラム底部の液体が95~110℃の温度まで加熱されるように設定した。その温度を実験中制御した。カラムに、実施例9に使用したロイコインジゴ溶液5~10kgを充填した。さらなるロイコインジゴ溶液を、25℃に維持した注入容器内に移した。その溶液を、ポンプによってカラム内に注ぎ込んだ。同時に、高圧水蒸気を、カラム底部のスパージャーを介してカラム内に導入した。次に、精製された溶液をカラムから連続的に回収した。
【0275】
例えば、温度や流量などの精製設定は、様々なズレが10~60%の範囲内に収まる手段で選択した。質量収支とズレを、回収された蒸留物と残渣の量に基づいて測定した。
【0276】
カラム底部からのサンプルを、ISO 14362‐1:2017(E)に従って測定して、アニリン/N‐メチルアニリン(NMA)含有量について分析した。溶液は、ISO 14362‐1:2017(E)に従って測定した場合に、アニリン不含、かつ、N‐メチルアニリン不含であった。