(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】フェノール樹脂発泡体積層板およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 5/18 20060101AFI20220119BHJP
B32B 27/42 20060101ALI20220119BHJP
B32B 27/10 20060101ALI20220119BHJP
B32B 27/12 20060101ALI20220119BHJP
C08J 9/04 20060101ALI20220119BHJP
C08J 9/36 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
B32B5/18
B32B27/42 101
B32B27/10
B32B27/12
C08J9/04 101
C08J9/36 CEZ
(21)【出願番号】P 2020511137
(86)(22)【出願日】2019-03-29
(86)【国際出願番号】 JP2019014215
(87)【国際公開番号】W WO2019189840
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2020-07-15
(31)【優先権主張番号】P 2018069058
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390018717
【氏名又は名称】旭化成建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100181272
【氏名又は名称】神 紘一郎
(72)【発明者】
【氏名】三堀 寿
(72)【発明者】
【氏名】菊池 典晃
(72)【発明者】
【氏名】小宮山 政美
【審査官】伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/152155(WO,A1)
【文献】特開2014-124789(JP,A)
【文献】特表2009-525441(JP,A)
【文献】特公平04-002097(JP,B2)
【文献】特許第6129398(JP,B1)
【文献】特開2015-151484(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-0953191(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
C08J 9/00- 9/42
C08L 61/00-61/34
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノール樹脂発泡体の少なくとも片面に面材が積層されたフェノール樹脂発泡体積層板であって、前記フェノール樹脂発泡体の密度が20kg/m
3以上40kg/m
3未満、中心部独立気泡率が85%以上、表層部独立気泡率が80%以上、平均気泡径が70μm以上180μm以下であり
、前記面材は不織布又は紙類からなり、少なくとも一方の面材上に金属箔がさらに積層されており、
前記金属箔が積層された面の表面平滑性レベルが2mm以下であり、前記金属箔および前記面材を貫通する複数の開孔部が設けられている、フェノール樹脂発泡体積層板。
【請求項2】
厚み斑が2mm以下である、請求項1に記載のフェノール樹脂発泡体積層板。
【請求項3】
フェノール樹脂発泡体の両面に面材が積層された、請求項1又は請求項2に記載のフェノール樹脂発泡体積層板。
【請求項4】
前記開孔部の孔径が0.1mm以上3mm以下、孔数が1m
2当たり1,000個以上1,000,000個以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載のフェノール樹脂発泡体積層板。
【請求項5】
金属箔がアルミニウム箔である、請求項1~4のいずれか一項に記載のフェノール樹脂発泡体積層板。
【請求項6】
前記開孔部にフェノール樹脂発泡体が充填されていることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のフェノール樹脂発泡体積層板。
【請求項7】
フェノール樹脂、界面活性剤、発泡剤、発泡核剤、および有機酸を含有する酸性硬化剤を含む発泡性フェノール樹脂組成物を、混合する混合工程、混合した発泡性フェノール樹脂組成物を下面材上に吐出する吐出工程、前記下面材上に吐出した発泡性フェノール樹脂組成物を発泡、硬化させつつ上面材上から予成形を行う工程、発泡および硬化反応により本成形を行う工程、その後に水分を放散させる後硬化を行う工程を含み、フェノール樹脂の重量平均分子量が300以上2,000以下であり、予成形を行う工程の雰囲気温度が60℃以上80℃以下、予成形を行う工程の加熱気体の風速が0.1m/分以上であり、かつ、本成形を行う工程の雰囲気温度が80℃以上100℃以下、本成形を行う工程の加熱気体の風速が0.25m/分以上であり、前記下面材の前記発泡性フェノール樹脂組成物を吐出する側とは反対側の表面及び上面材の前記発泡性フェノール樹脂組成物と接触させる側とは反対側の表面の少なくとも一方の上に金属箔が積層されており、前記金属箔および前記面材を貫通する複数の開孔部が設けられている、フェノール樹脂発泡体積層板の製造方法。
【請求項8】
前記開孔部の孔径が0.1mm以上3mm以下、孔数が1m
2当たり1,000個以上1,000,000個以下である、請求項7に記載のフェノール樹脂発泡体積層板の製造方法。
【請求項9】
金属箔がアルミニウム箔である、請求項7又は請求項8に記載のフェノール樹脂発泡体積層板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に金属箔が積層され、表面平滑性に優れ、高断熱性能を有する、フェノール樹脂発泡体積層板に関する。
【背景技術】
【0002】
レゾール型フェノール樹脂を原料としたフェノール樹脂発泡板は、無機系断熱材に比べて断熱性が良好なことから、従前より、例えば金属サイディング等の外壁材、間仕切りパネル等の内壁材の他、天井材、防火扉、雨戸等の建材や、工業プラント用の保冷・保温材等として幅広く使用されている。しかし、無機系断熱材と比較すると総じて不燃レベルが低いため、様々な分野において、不燃特性を有する高断熱性のフェノール樹脂発泡板、とりわけ、施工性に優れる密度40kg/m3未満の軽量化フェノール樹脂発泡板の不燃化技術が望まれていた。
【0003】
フェノール樹脂発泡板の不燃化技術としては、発泡体を芯材とし、金属箔のような気体不透過性面材及び不織布からなるフェノール樹脂発泡体積層板を製造する技術(特許文献1)が知られている。該フェノール樹脂発泡体積層板は、不織布付きのフェノール樹脂発泡体積層板の製造後に、気体不透性の金属箔を接着剤等を用いて貼り合わせることにより得られる。
【0004】
しかし、この方式を採用する場合には、接着剤等を用いて、該フェノール樹脂発泡体積層板に金属箔を積層させる際に、該フェノール樹脂発泡体積層板と金属箔間に存在する空気が抜けずに残りやすく、その結果、外観不良となりやすいという問題があった。この気泡残存の問題を解決するためには、積層専用設備により、金属箔上より、該フェノール樹脂発泡体積層板に対して、適度な圧力をかけることが必要となる。しかし、圧力をかけすぎると、該フェノール樹脂発泡体の表層部及び中心部の独立気泡率を悪化させる原因となるため、生産速度を落として該気泡を抜きながら製造する必要があり、生産性が上がらないという問題があった。すなわち、不織布面材付きのフェノール樹脂発泡体積層板の製造後に、気体不透性の金属箔を接着剤等を用いて貼り合わせる技術は、該フェノール樹脂発泡体積層板に金属箔を積層させるための高額な専用設備が必要となるだけでなく、工程の煩雑化と生産性の低下、及び、接着剤等を利用することにより加工コストがかかりすぎる等の問題点があった。
【0005】
そこで、前記課題を解決する、高断熱性能を有するフェノール樹脂発泡板の不燃化技術が求められてきた。
【0006】
これらの問題を解決するためには、金属箔ならびに不織布のような基材からなる面材を、フェノール樹脂発泡体積層板製造時の面材として用い、該面材とフェノール樹脂発泡体との接着の役目を、発泡性フェノール樹脂組成物に担わせる必要があることがわかった。
【0007】
なお、フェノール樹脂発泡体積層板の製造時には、発泡性フェノール樹脂の硬化に伴い発生する水分を、適度に系外へ放散除去する必要があるため、金属箔ならびに不織布のような基材からなる面材を事前に開孔させておく必要がある。
【0008】
上記考えに基づく技術としては、特許文献2及び3に記載された技術が知られている。
特許文献2には、多数の小孔を有する金属箔を積層させた気体不透性表面材(以下、「金属箔積層面材」という場合がある。)を表層に備えたフェノール樹脂発泡体を製造する技術が記載されている。しかし、本技術により得られるフェノール樹脂発泡体積層板は、平均気泡径が大きく、更には、独立気泡率が低く高断熱性能を有さないばかりか、表面平滑性にも劣るため、実使用上の問題があった。
【0009】
一方、特許文献3には、基材にアルミニウム箔を積層させた面材を用いてフェノール樹脂発泡体積層板を製造するに際して、該面材表面の開孔条件を適正化する、フェノール樹脂発泡体積層板が提案されており、得られた製品は高断熱性能を有するとされている。しかし、前記積層板は、アルミニウム箔を有する積層面材の表面平滑性に劣り、更にはフェノール樹脂発泡体の低密度化を実現できないことがわかった。
【0010】
また、特許文献4においては、金属箔の面材としての利用は記載されているものの孔の必要性が考慮されていない。そのため、アルミニウム箔を有する積層面材の表面平滑性及び断熱性能共に実用化レベルには程遠い技術であることがわかった。更に、特許文献5及び6には、面材として必要に応じて孔が開けられた、金属フィルムを用いることができると記載されてはいるものの、発泡性フェノール樹脂の硬化に伴い発生する水分を適度に系外へ放散除去する際の、これら金属層を有する面材利用時の困難性に関して全く考慮されていない。事実、アルミニウム箔を有する積層面材の表面平滑性に劣る上断熱性能も悪く、実用化レベルにはないことがわかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2002-339472号公報
【文献】特公平04-002097号公報
【文献】特表2009-525441号公報
【文献】特開2017-160431号公報
【文献】国際公開第2016/152155号
【文献】特開2016-43687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
すなわち、軽量性に優れ、厚み方向に亘って独立気泡率が高く、表面平滑性に優れた、不燃性を有するフェノール樹脂発泡体積層板が求められてきた。
【課題を解決するための手段】
【0013】
そこで、本発明者らは、上記課題を解決すべく検討を重ねたところ、予め開孔した金属箔積層面材に、発泡性フェノール樹脂組成物を接液させ、その後硬化時に発生する発泡体中に残存する水分を効率的に放散除去すること、すなわち、フェノール樹脂の重量平均分子量と予成形工程及び本成形工程の雰囲気温度及び加熱気体の風速を適正化することにより、軽量性に優れ、厚み方向に亘って独立気泡率が高く、表面平滑性が良好であり、不燃性を有する、フェノール樹脂発泡体積層板を作り上げることに成功した。
【0014】
すなわち、本発明は以下の[1]~[9]を提供する。
【0015】
[1]フェノール樹脂発泡体の少なくとも片面に面材が積層されたフェノール樹脂発泡体積層板であって、前記フェノール樹脂発泡体の密度が20kg/m3以上40kg/m3未満、中心部独立気泡率が85%以上、表層部独立気泡率が80%以上、平均気泡径が70μm以上180μm以下であり、前記フェノール樹脂発泡体積層板の表面平滑性レベルが2mm以下であり、前記面材は不織布又は紙類からなり、少なくとも一方の面材上に金属箔がさらに積層されており、前記金属箔および前記面材を貫通する複数の開孔部が設けられている、フェノール樹脂発泡体積層板。
【0016】
[2]厚み斑が2mm以下である、前記[1]に記載のフェノール樹脂発泡体積層板。
【0017】
[3]フェノール樹脂発泡体の両面に面材が積層された、前記[1]又は[2]に記載のフェノール樹脂発泡体積層板。
【0018】
[4]前記開孔部の孔径が0.1mm以上3mm以下、孔数が1m2当たり1,000個以上1,000,000個以下である、前記[1]~[3]のいずれか一項に記載のフェノール樹脂発泡体積層板。
【0019】
[5]金属箔がアルミニウム箔である、前記[1]~[4]のいずれか一項に記載のフェノール樹脂発泡体積層板。
【0020】
[6]前記開孔部にフェノール樹脂発泡体が充填されていることを特徴とする、前記[1]~[5]のいずれか一項に記載のフェノール樹脂発泡体積層板。
【0021】
[7]フェノール樹脂、界面活性剤、発泡剤、発泡核剤、および有機酸を含有する酸性硬化剤を含む発泡性フェノール樹脂組成物を、混合する混合工程、混合した発泡性フェノール樹脂組成物を下面材上に吐出する吐出工程、前記下面材上に吐出した発泡性フェノール樹脂組成物を発泡、硬化させつつ上面材上から予成形を行う工程、発泡および硬化反応により本成形を行う工程、その後に水分を放散させる後硬化を行う工程を含み、フェノール樹脂の重量平均分子量が300以上2,000以下であり、予成形を行う工程の雰囲気温度が60℃以上80℃以下、予成形を行う工程の加熱気体の風速が0.1m/分以上であり、かつ、本成形を行う工程の雰囲気温度が80℃以上100℃以下、本成形を行う工程の加熱気体の風速が0.25m/分以上であり、前記下面材の前記発泡性フェノール樹脂組成物を吐出する側とは反対側の表面及び上面材の前記発泡性フェノール樹脂組成物と接触させる側とは反対側の表面の少なくとも一方の上に金属箔が積層されており、前記金属箔および前記面材を貫通する複数の開孔部が設けられている、フェノール樹脂発泡体積層板の製造方法。
【0022】
[8]前記開孔部の孔径が0.1mm以上3mm以下、孔数が1m2当たり1,000個以上1,000,000個以下である、前記[7]に記載のフェノール樹脂発泡体積層板の製造方法。
【0023】
[9]金属箔がアルミニウム箔である、前記[7]又は[8]に記載のフェノール樹脂発泡体積層板の製造方法。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、軽量性に優れ、断熱性能と平滑性が良好であり、十分な不燃性能を有する、金属箔積層面材を表層に配するフェノール樹脂発泡体積層板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明のフェノール樹脂発泡体積層板の一例を示す図である。
【
図2A】
図1に示したフェノール樹脂発泡体積層板における開孔部の様子を説明する図である。
【
図2B】
図1に示したフェノール樹脂発泡体積層板における開孔部の様子を説明する図である。
【
図2C】
図1に示したフェノール樹脂発泡体積層板における開孔部の様子を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明をその好適な実施形態に則して詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0027】
図1は、本発明のフェノール樹脂発泡体積層板の一例を示している。本実施形態におけるフェノール樹脂発泡体(以下、単に「発泡体」という場合がある。)2は、硬化反応によって形成された、多数の気泡が分散した状態で存在するものであり、板状に得られるものである。フェノール樹脂発泡体は、厚み方向に上下面材が積層された発泡体積層板の形で得られるのが一般的である。そして、本実施形態のフェノール樹脂発泡体積層板1は、厚み方向に亘って独立気泡率が高く、優れた断熱性能を有している。また、本実施形態のフェノール樹脂発泡体積層板1は、少なくとも一方の面材上に金属箔6がさらに積層されており、金属箔6および面材4を貫通する複数の開孔部7が設けられている。これにより、断熱性に優れるとともに不燃特性をも有する建材などとして幅広く使用することができる。本実施形態のフェノール樹脂発泡体積層板1は、後述する本発明のフェノール樹脂発泡体積層板の製造方法によって製造することができる。
【0028】
また、本実施形態のフェノール樹脂発泡体積層板1は、これを単体で使用できる他、外部部材と接合させて様々な用途に用いられる。外部部材の例としては、ボード状材料がある。ボード状材料としては、普通合板、構造用合板、パーティクルボード、OSB、などの木質系ボード、および、木毛セメント板、木片セメント板、石膏ボード、フレキシブルボード、ミディアムデンシティファイバーボード、ケイ酸カルシウム板、ケイ酸マグネシウム板、火山性ガラス質複層板などが好適である。
【0029】
本実施形態におけるフェノール樹脂発泡体2の密度は用途に応じて定められるが、20kg/m3以上40kg/m3未満であり、より好ましくは22kg/m3以上38kg/m3以下、更に好ましくは24kg/m3以上35kg/m3以下である。密度が20kg/m3以上であると、圧縮強度、曲げ強さ等の機械的強度が確保でき、フェノール樹脂発泡体積層板1の取り扱い時に破損が起こることを回避することができる。一方、密度が40kg/m3未満であると、樹脂部の伝熱が増大し難いため、断熱性能を保つことができる。なお、フェノール樹脂発泡体2の密度は、主に、発泡剤の割合、更には、発泡剤の添加量と酸性硬化剤として用いられる有機酸の添加量との比、温度や滞留時間等の硬化条件などの変更により所望の値に調整できる。
【0030】
フェノール樹脂発泡体2の中心部独立気泡率は、85%以上であり、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上である。独立気泡率が85%未満であると、フェノール樹脂発泡体2中の発泡剤が空気と置換して長期の断熱性能が低下する傾向が生じるという懸念がある。なお、フェノール樹脂発泡体2の独立気泡率は、例えば、フェノール樹脂の反応性や温度の調整、酸性硬化剤として用いられる有機酸の添加量との比、更には硬化温度条件などの変更により所望の値に調整できる。特に本技術においては、金属箔6が気体不透性面材であるために、硬化反応により生成する水を速やかに系外へ放散できない場合には、独立気泡率が低下しやすい。独立気泡率は、製造時の金属箔6および面材4を貫通する開孔部7の径(以下、「孔径」と呼ぶ)と開孔部の数(以下、「孔数」と呼ぶ)に左右されやすい。
【0031】
フェノール樹脂発泡体2の表層部独立気泡率は、80%以上であり、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上である。
【0032】
フェノール樹脂発泡体2の平均気泡径は、70μm以上180μm以下であり、好ましくは70μm以上170μm以下、より好ましくは、70μm以上160μm以下である。平均気泡径が70μm以上であると、発泡体の密度が高くなることを抑制できるため、発泡体における樹脂部の伝熱割合を低減可能となり、フェノール樹脂発泡体積層板1の断熱性能を確保することができる。また、逆に平均気泡径が180μmを超えると、輻射による熱伝導率が増加する。なお、フェノール樹脂発泡体2の平均気泡径は、例えば、製造時の金属箔6および面材4を貫通する開孔部7の孔径と孔数に左右されるが、フェノール樹脂の反応性や温度の調整、発泡剤の添加量と酸性硬化剤として用いられる有機酸の添加量との比、更には硬化温度条件などの変更によっても所望の値に調整できる。
【0033】
フェノール樹脂発泡体積層板1の厚みは、15mm以上200mm以下であることが好ましく、18mm以上160mm以下であることがより好ましく、20mm以上100mm以下であることが更に好ましい。特にフェノール樹脂発泡体積層板1の厚みが200mm超となると、製造時にフェノール樹脂組成物中の水分を放散させ難くなり、表面平滑性レベルが低下しやすく、また、独立気泡率の低下も起きやすくなる。
【0034】
そして、フェノール樹脂発泡体2は、発泡剤を含有し、例えば、フェノール樹脂、界面活性剤、発泡剤、および、有機酸を含有する酸性硬化剤とを含む発泡性フェノール樹脂組成物から製造される。なお、発泡性フェノール樹脂組成物は、任意に、上記以外の成分、例えばフタル酸系化合物等を含有していてもよい。
【0035】
フェノール樹脂としては、アルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物によって合成するレゾール型フェノール樹脂を用いる。レゾール型フェノール樹脂は、フェノール類とアルデヒド類とを原料としてアルカリ触媒により40~100℃の温度範囲で加熱して合成する。また、必要に応じてレゾール型フェノール樹脂の合成時、もしくは合成後に尿素等の添加剤を添加してもよい。尿素を添加する場合は予めアルカリ触媒でメチロール化した尿素をレゾール型フェノール樹脂に混合することがより好ましい。合成後のレゾール型フェノール樹脂は、通常過剰な水分を含んでいるので、発泡に際し、発泡に適した水分量に調整する。また、フェノール樹脂には、脂肪族炭化水素または高沸点の脂環式炭化水素、或いは、それらの混合物や、エチレングリコール、ジエチレングリコール等の粘度調整用の希釈剤、その他必要に応じて種々の添加剤を添加することもできる。
【0036】
フェノール樹脂の合成時のフェノール類対アルデヒド類の出発モル比は1:1から1:4.5の範囲内が好ましく、より好ましくは1:1.5から1:2.5の範囲内である。
【0037】
ここで、本実施形態においてフェノール樹脂合成の際に好ましく使用されるフェノール類は、フェノール自体、および他のフェノール類である。他のフェノール類の例としては、レゾルシノール、カテコール、o-、m-およびp-クレゾール、キシレノール類、エチルフェノール類、p-tertブチルフェノール等が挙げられる。また、2核フェノール類も使用できる。
【0038】
また、アルデヒド類は、アルデヒド源となり得る化合物であればよく、アルデヒド類としては、ホルムアルデヒド自体、および他のアルデヒド類やその誘導体を用いることが好ましい。他のアルデヒド類の例としては、グリオキサール、アセトアルデヒド、クロラール、フルフラール、ベンズアルデヒド等が挙げられる。
【0039】
なお、フェノール樹脂には、添加剤として尿素、ジシアンジアミドやメラミン等を加えてもよい。本明細書において、これらの添加剤を加える場合、「フェノール樹脂」とは添加剤を加えた後のものを指す。そして、本明細書では、「フェノール樹脂」に対して界面活性剤を添加したものを「フェノール樹脂組成物」と称する。また、「フェノール樹脂組成物」に対して発泡剤、発泡核剤および酸性硬化剤を添加して発泡性および硬化性を付与したものを「発泡性フェノール樹脂組成物」と称する。
【0040】
フェノール樹脂の重量平均分子量は、300以上であり、400以上であることが好ましく、500以上であることがより好ましい。また、前述の重量平均分子量は、2,000以下であり、1,800以下であることが好ましく、1,600以下であることがより好ましい。フェノール樹脂の重量平均分子量が300未満であると、硬化に比べて発泡が進み過ぎてしまうため、中心部及び表層部の独立気泡率が低下し、また、平均気泡径が大きくなる。一方、フェノール樹脂の重量平均分子量が2,000を超えると、発泡が促進され難くなり、密度が高くなるとともに表面平滑性レベルが悪化する。なお、フェノール樹脂の重量平均分子量は、本明細書の実施例に記載の方法を用いて測定することができる。
【0041】
フェノール樹脂の40℃における粘度は、好ましくは7,000mPa・s以上25,000mPa・s以下であり、より好ましくは8,000mPa・s以上22,000mPa・s以下、さらに好ましくは9,000mPa・s以上20,000mPa・s以下である。
【0042】
フェノール樹脂の水分量は1.5質量%以上10.0質量%以下であることが好ましく、より好ましくは2.5質量%以上8.0質量%以下、さらに好ましくは3.5質量%以上6.0質量%以下である。
【0043】
発泡性フェノール樹脂組成物に含まれる界面活性剤、発泡剤は、フェノール樹脂に予め添加しておいてもよいし、酸性硬化剤と同時に添加してもよい。
【0044】
界面活性剤としては、フェノール樹脂発泡体2の製造に一般に使用されるものを使用できるが、中でもノニオン系の界面活性剤が効果的である。例えば、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの共重合体であるアルキレンオキサイドや、アルキレンオキサイドとヒマシ油との縮合物、アルキレンオキサイドと、ノニルフェノール、ドデシルフェノールのようなアルキルフェノールとの縮合生成物、アルキルエーテル部分の炭素数が14~22のポリオキシエチレンアルキルエーテル、更にはポリオキシエチレン脂肪酸エステル等の脂肪酸エステル類、ポリジメチルシロキサン等のシリコーン系化合物、ポリアルコール類等が好ましい。これらの界面活性剤は単独で用いてもよいし、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、その使用量については特に制限はないが、フェノール樹脂100質量部に対して0.3質量部以上10質量部以下の範囲で好ましく使用される。
【0045】
発泡剤は、特に限定されないが、炭化水素(HC類)、ハイドロフルオロカーボン(HFC類)、塩素化ハイドロフルオロオレフィン、非塩素化ハイドロフルオロオレフィン、および、塩素化炭化水素等を用いることが好ましい。オゾン層の破壊を防ぐ観点から、炭化水素およびハイドロフルオロカーボン等を用いることが好ましい。とりわけ、地球温暖化係数が小さいことから、炭化水素を使用することがより好ましい。また、フェノール樹脂発泡体積層板1の断熱性能をより向上させる観点からは、塩素化ハイドロフルオロオレフィンおよび非塩素化ハイドロフルオロオレフィンの内の少なくとも一種を含有することが好ましい。
【0046】
炭化水素としては、炭素数が3~7の環状または鎖状のアルカン、アルケン、アルキンが好ましい。具体的には、ノルマルブタン、イソブタン、シクロブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、シクロペンタン、ネオペンタン、ノルマルヘキサン、イソヘキサン、2,2-ジメチルブタン、2,3-ジメチルブタン、シクロヘキサン、等を挙げることができる。その中でも、ノルマルペンタン、イソペンタン、シクロペンタン、ネオペンタンのペンタン類およびノルマルブタン、イソブタン、シクロブタンのブタン類が好適に用いられる。また、ハイドロフルオロカーボンとしては、ハイドロフルオロプロペン、ハイドロクロロフルオロプロペン、ハイドロブロモフルオロプロペン、ハイドロフルオロブテン、ハイドロクロロフルオロブテン、ハイドロブロモフルオロブテン、ハイドロフルオロエタン、ハイドロクロロフルオロエタン、ハイドロブロモフルオロエタン等を挙げることができる。
【0047】
塩素化ハイドロフルオロオレフィンとしては、具体的には、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(例えば、ハネウェルジャパン株式会社製、製品名:Solstice(登録商標)LBA)などが挙げられる。また、非塩素化ハイドロフルオロオレフィンとしては、具体的には、1,3,3,3-テトラフルオロ-1-プロペン(例えば、ハネウェルジャパン株式会社製、製品名:Solstice(登録商標)1234ze)、2,3,3,3-テトラフルオロ-1-プロペン、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンなどが挙げられる。
【0048】
ここで、塩素化ハイドロフルオロオレフィンおよび非塩素化ハイドロフルオロオレフィンの発泡剤中の含有割合は、環境負荷を増加させることなく所望の断熱性能を発現させるために、30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることが更に好ましく、60質量%以上であるとなお好ましい。
【0049】
なお、断熱性能の向上という観点からは、塩素化ハイドロフルオロオレフィンおよび非塩素化ハイドロフルオロオレフィンからなる群より選択される少なくとも一種を発泡剤の構成成分とすることが好ましい。一方で、塩素化ハイドロフルオロオレフィンおよび非塩素化ハイドロフルオロオレフィンからなる群より選択される少なくとも一種を含む発泡剤を使用して得られるフェノール樹脂発泡体においては、発泡剤とレゾール型フェノール樹脂との親和性が高すぎるために、硬化反応によって発生する水がフォーム内に残留しやすくなる。そのため、金属箔のような気体不透性表面材を表層に備えたフェノール樹脂発泡体を製造する場合には、硬化状態が十分であっても、他の発泡剤を使用した際と比較して、若干表面平滑性が劣りやすいこともわかった。
【0050】
塩素化炭化水素としては、炭素数が2~5の直鎖状または分岐状の塩素化脂肪族炭化水素を使用し得る。結合している塩素原子の数は、限定されるものではないが、1~4が好ましく、塩素化脂肪族炭化水素としては、例えば、ジクロロエタン、プロピルクロリド、イソプロピルクロリド、ブチルクロリド、イソブチルクロリド、ペンチルクロリド、イソペンチルクロリドなどが挙げられる。これらのうち、クロロプロパンであるプロピルクロリド、イソプロピルクロリドがより好ましく用いられる。
【0051】
なお、これら発泡剤は、単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせてもよく、任意に選択できる。
【0052】
発泡性フェノール樹脂組成物中の発泡剤の量は、発泡剤の種類、フェノール樹脂との相性や、温度、滞留時間等の発泡・硬化条件によりばらつきがあるが、フェノール樹脂および界面活性剤との合計100質量部に対して、10.0質量部以下であることが好ましく、4.5質量部以上10.0質量部以下であることがより好ましく、5.5質量部以上9.0質量部以下であることが更に好ましい。フェノール樹脂および界面活性剤の合計100質量部当たりの発泡剤の量が4.5質量部未満の場合、フェノール樹脂発泡体2の密度が高くなりすぎる。また、フェノール樹脂および界面活性剤の合計100質量部当たり10.0質量部を超える量の発泡剤を添加すると低密度化しすぎることになり、フェノール樹脂発泡体2を適度な強度を有する密度とすることができない上に、気泡壁面が割れやすくなり独立気泡率が低下しやすくなる。
【0053】
また、本実施形態においては、発泡核剤を使用する。発泡核剤としては、主に、窒素、ヘリウム、アルゴン、空気などの、発泡剤よりも沸点が50℃以上低い低沸点物質のような気体発泡核剤を用いることができる。また、水酸化アルミニウム粉、酸化アルミニウム粉、炭酸カルシウム粉、タルク、はくとう土(カオリン)、珪石粉、珪砂、マイカ、珪酸カルシウム粉、ワラストナイト、ガラス粉、ガラスビーズ、フライアッシュ、シリカフューム、石膏粉、ホウ砂、スラグ粉、アルミナセメント、ポルトランドセメント等の無機粉、および、フェノール樹脂発泡体の粉砕粉のような有機粉のような固体発泡核剤を添加することもできる。これらは、単独で使用してもよいし、気体及び固体の区別なく、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。発泡核剤の添加タイミングは、発泡性フェノール樹脂組成物を混合する混合機内に供給されていればよく、任意に決めることができる。
【0054】
本実施形態における気体発泡核剤の発泡剤に対する添加量は、発泡剤の量を100質量%として、0.2質量%以上1.0質量%以下であることが好ましく、0.3質量%以上0.5質量%以下であることがより好ましい。発泡核剤の添加量が0.2質量%未満であると、不均一な発泡が起こりやすく、得られるフェノール樹脂発泡体の平均気泡径が場所によって不均一になりやすい。また、発泡核剤の添加量を1.0質量%超とすると、平均気泡径が大きくなりやすく、さらにはボイドも発生しやすい。また、固体発泡核剤の発泡剤に対する添加量は、フェノール樹脂および界面活性剤との合計100質量部に対して、3.0質量部以上10.0質量部以下であることが好ましく、4.0質量部以上8.0質量部以下であることがより好ましい。
【0055】
酸性硬化剤は、フェノール樹脂組成物を硬化できる酸性の硬化剤であればよく、酸成分として有機酸を含有する。有機酸としては、アリールスルホン酸、或いは、これらの無水物が好ましい。アリールスルホン酸およびその無水物としては、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、フェノールスルホン酸、置換フェノールスルホン酸、キシレノールスルホン酸、置換キシレノールスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸等、および、それらの無水物が挙げられ、これらを一種類で用いても、二種類以上組み合わせてもよい。なお、本実施形態では、硬化助剤として、レゾルシノール、クレゾール、サリゲニン(o-メチロールフェノール)、p-メチロールフェノール等を添加してもよい。また、これらの硬化剤は、エチレングリコール、ジエチレングリコール等の溶媒で希釈してもよい。
【0056】
酸性硬化剤の使用量は、その種類により異なり、パラトルエンスルホン酸一水和物60質量%とジエチレングリコール40質量%との混合物を使用する場合には、フェノール樹脂と、界面活性剤との合計100質量部に対して、好ましくは8質量部以上20質量部以下、より好ましくは10質量部以上15質量部以下で使用される。
【0057】
<フェノール樹脂発泡体積層板の製造方法>
次に、上述したフェノール樹脂発泡体積層板の製造方法について説明する。本実施形態のフェノール樹脂発泡体積層板の製造方法としては、フェノール樹脂、界面活性剤、発泡剤、発泡核剤、および、有機酸を含有する酸性硬化剤とを含む発泡性フェノール樹脂組成物を、混合する混合工程、混合した発泡性フェノール樹脂組成物を下面材上に吐出する吐出工程、前記下面材上に吐出した発泡性フェノール樹脂組成物を発泡、硬化させつつ上面材上から予成形を行う工程、発泡および硬化反応を行わせる主工程である本成形を行う工程、その後に水分を放散させる後硬化を行う工程とを備える。本製造方法においては、連続製造方式を採用することができる。
【0058】
連続製造方式では、下面材上に吐出したフェノール樹脂組成物を上面材で被覆した後、発泡および硬化させながら上下方向から均すように予成形し、その後、発泡および硬化を進めつつ板状に成形していく。ここで、少なくとも一方の面材は、金属箔を備えており、吐出工程において発泡性フェノール樹脂組成物を吐出する面材(下面材)の発泡性フェノール樹脂組成物を吐出する側とは反対側の表面、および予成形工程において発泡性フェノール樹脂組成物上に配置する面材(上面材)の発泡性フェノール樹脂組成物と接触させる側とは反対側の表面の少なくとも一方の上に、金属箔が積層されている。
【0059】
すなわち、フェノール樹脂発泡体と面材とは、発泡性フェノール樹脂組成物の自己接着性により接着されており、積層されたフェノール樹脂発泡体と面材との間には、フェノール樹脂発泡体が面材に浸透した共存部、が存在している。
【0060】
連続製造方式における、予成形工程および本成形工程において夫々予成形および本成形を行う方法としては、スラット型ダブルコンベアを利用する方法や、金属ロールもしくは鋼板を利用する方法、さらには、これらを複数組み合わせて利用する方法等、製造目的に応じた種々の方法が挙げられる。このうち、例えば、スラット型ダブルコンベアを利用して成形する場合には、上下の面材で被覆された発泡性フェノール樹脂組成物をスラット型ダブルコンベア中へ連続的に案内した後、加熱しながら上下方向から圧力を加えて、所定の厚みに調整しつつ、発泡および硬化させ、板状に成形することができる。
【0061】
フェノール樹脂発泡体の少なくとも上下面に配される面材としては、不織布又は紙類からなり、該面材の少なくとも一方の上には金属箔が積層される。使用される不織布又は紙類からなる面材としては、主成分がポリエステル、ポリプロピレン、ナイロン等からなる不織布および織布や、クラフト紙、ガラス繊維混抄紙、水酸化カルシウム紙、水酸化アルミニウム紙、珪酸マグネシウム紙等の紙類や、ガラス繊維不織布のような無機繊維の不織布等が好ましく、これらは混合(または積層)して用いてもよい。中でも、ポリエステル、ポリプロピレン、ナイロン等からなる不織布は、ガス透過性が良好な上に、発泡性フェノール樹脂組成物との相性が良く、アンカー効果により、十分な接着強度を発現しやすいため、より好ましい。
【0062】
なお、これらの面材は、通常ロール状の形態で提供されている。更に、面材としては、難燃剤等の添加剤を混練したものを用いても構わない。また、面材に積層する金属箔の材質はアルミニウム、銅、鉄、錫、チタン、ニッケル、ステンレス等が好ましく、その厚みは0.005mm以上1.0mm以下のものが好ましい。更に、金属箔と面材との積層方法は特に限定されるものではないが、エポキシ樹脂、ポリエチレン樹脂等を用いて積層させることができる。金属箔の表面には更に化粧層等を配しても良い。この化粧層は内装側仕上面を構成する層であり、例えば、水酸化アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸カルシウムなどを含有するシート(無機混抄紙)、ポリエチレンテレフタレート製不織布などが使用される。このような化粧層を設けることによって、内装側仕上面は、塗装、モルタル加工などに適した表面となる。
【0063】
金属箔を積層させた面材には、金属箔および面材を貫通する開孔部が存在し、該開孔部の孔径は、0.1mm以上3mm以下であり、より好ましくは0.2mm以上2mm以下、更に好ましくは0.3mm以上1mm以下である。なお、開孔形状は特に限定されず、孔径は略円形とみなした際の最長径を測定し決定され得る。また、孔数は、1m2当たり1,000個以上1,000,000個以下であることが好ましく、5,000個以上500,000個以下であることがより好ましく、10,000個以上250,000個以下であることが更に好ましい。なお、孔径が複数種類存在する場合には、任意の1m2当たりの平均孔径及び平均孔数を各々5点測定し、加重平均した数値とする。
【0064】
発泡成形時には、開孔部に、発泡性フェノール樹脂樹脂組成物が浸透しつつも硬化する。開口部の孔径が3mm以内であると、発泡性フェノール樹脂組成物が、開孔部から染み出し難くなり設備を汚さずに、長時間の連続生産が可能となることから好ましい。そのため、
図2A~Cとなるように設計されることが重要である。前述のとおり、フェノール樹脂発泡体と面材とは、発泡性フェノール樹脂組成物の自己接着性により接着されており、積層されたフェノール樹脂発泡体と面材との間にはフェノール樹脂発泡体が面材に浸透した共存部が存在している。ここで、フェノール樹脂発泡体に積層される金属箔および面材を貫通する開孔部が設けられている。そのため、面材と共存せずとも発泡性フェノール樹脂組成物のみが開孔部内に浸入して硬化し、結果フェノール樹脂発泡体として充填される。この充填状態の違いにより、3種類の構成状態を取り得る。すなわち、発泡性フェノール樹脂組成物が発泡及び硬化する際に、得られるフェノール樹脂発泡体の厚み方向の最表層部が、フェノール樹脂発泡体と面材の共存部内の厚み方向位置で留まる場合(
図2A)、接着層の位置で留まる場合(
図2B)、金属箔内の位置で留まる場合(
図2C)である。いずれの場合も本技術を達成し得る構成である。
【0065】
開孔部の孔径が0.1mm以上、もしくは、孔数が1m2当たり1,000個以上であると、硬化により発生する水分が放散しやすくなり、中心部独立気泡率及び表層部独立気泡率が低下し難くなり、更に表面平滑性レベルも向上する。なお、孔数が1m2当たり1,000,000個以内であると金属箔積層面材に張力を印加した際に切れ難くなるため好ましい。
【0066】
不燃性のフェノール樹脂発泡体積層板は、建材など様々な用途で積層板としての需要が見込まれるものの、その多くは厚み精度が求められる。そのため、金属箔が積層された面の平滑性の改善、すなわち、実用上は、後述する表面平滑性レベルの測定において、2mm以内であることが強く望まれてきた。更に、表面平滑性に加えて、積層板全体に亘って厚み斑が少ないことが好ましい。
【0067】
本発明においては、フェノール樹脂の重量平均分子量、及び、予成形を行う工程の雰囲気温度及び該工程の加熱気体の風速、更には、本成形を行う工程の雰囲気温度及び該工程の加熱気体の風速は極めて重要となる。特に、従来技術においては、予成形を行う工程の加熱気体の風速は0.10m/分未満、本成形を行う工程の加熱気体の風速は0.15m/分未満、に各々設定されることが一般的であったが、本発明の検討においてはこの風速条件を適正化することの必要性が明らかとなった。
【0068】
予成形する際には、流れ方向に連続的に、複数の発泡性フェノール樹脂組成物が下面材上に吐出され、上面材で被覆される。その際、雰囲気温度を60℃以上80℃以下に調整しつつ、金属箔を積層させた面材に対して、加熱気体を0.1m/分以上の風速とすることが重要である。
【0069】
ここで加熱気体は、空気や窒素、またはアルゴン等を利用することができるが、好適には空気が利用される。
【0070】
予成形工程の雰囲気温度が60℃未満であると、フェノール樹脂組成物中の水分を放散させ難くなり、表面平滑性レベルが低下しやすい。一方、雰囲気温度が80℃超であると、発泡に対して硬化が追い付かなくなり、平均気泡径が大きくなりやすくなり、また、表面平滑性レベルが低下するため、好ましくない。
【0071】
また、予成形工程において、金属箔を積層させた面材に対して、加熱気体を0.1m/分未満の風速とすると、フェノール樹脂組成物中の水分を放散させ難くなり、また、表面平滑性レベルが低下するため、好ましくない。
【0072】
予成形工程に続き、本成形工程および後硬化工程を設け、段階的に昇温させることが重要である。本成形工程の加熱温調条件は、雰囲気温度を80℃以上100℃以下に調整しつつ、金属箔を積層させた面材に対して、加熱気体を0.25m/分以上の風速とすることが重要である。
【0073】
本成形工程の雰囲気温度が80℃未満であると、フェノール樹脂組成物中の水分を放散させ難くなり、表面平滑性レベルが低下しやすい。一方、雰囲気温度が100℃超であると、発泡に対して硬化が追い付かなくなり、中心部及び表層部の独立気泡率が低下しやすく、更に平均気泡径が大きくなりやすくなり、また、表面平滑性レベルが低下するため、好ましくない。
【0074】
また、本成形工程において、金属箔を積層させた面材に対して、加熱気体を0.25m/分未満の風速とすると、フェノール樹脂組成物中の水分を放散させ難くなり、また、表面平滑性レベルが低下するため、好ましくない。
【0075】
該区間においては、無端スチールベルト型ダブルコンベアまたはスラット型ダブルコンベア、もしくはロール等を用いて本成形を行うことができる。また、本成形工程の滞留時間は、発泡および硬化反応を行わせる主工程であることから、5分以上2時間以内とすることが好ましい。滞留時間が5分以上であると発泡と硬化を十分に促進させることができる。なお、滞留時間が2時間以内であるとフェノール樹脂発泡体積層板の生産効率を高めることができる。
【0076】
後硬化工程は、本成形工程後に行われる。後硬化工程の雰囲気温度は、90℃以上120℃以下であることが好ましい。90℃以上であると、発泡体積層板中の水分が放散しやすくなり、120℃以下であると、製品の独立気泡率が向上し製品の断熱性能が向上する。後硬化工程の温調区間を設けることで、残存する多くの水分を放散させることができる。なお、後硬化工程においては、金属箔を積層させた面材に対して、加熱気体を0.1m/分以上の風速とすることが好ましい。後硬化工程の滞留時間は、1時間以上8時間以内とすることが好ましい。滞留時間が1時間以上であると水分放散を十分に促進させることができる。また、滞留時間が8時間以内であるとフェノール樹脂発泡体積層板の生産効率を高めることができる。
【0077】
また、密度が20kg/m3以上40kg/m3未満のフェノール樹脂発泡体積層板の表面平滑性レベルを向上させるためには、フェノール樹脂の重量平均分子量を適正化し、予成形工程の雰囲気温度、予成形工程における金属箔を積層させた面材に対する加熱気体の風速、本成形工程の雰囲気温度、更には、本成形工程における金属箔を積層させた面材に対する加熱気体の風速を適正化することが極めて重要である。
【0078】
不燃性能要求としては、コーンカロリーメーターによる発熱性試験(加熱)を20分間行い、総発熱量が8MJ/m2以下となることであるが、本技術によって得られるフェノール樹脂発泡体積層板は、これらの基準を満たす。
【0079】
なお、コーンカロリーメーターは試料の燃焼時の発熱量などを測定するための装置で、建築基準法の不燃材料等の評価にはコーンカロリーメーターによる発熱性試験の項目が含まれている。
【0080】
本発明により得られるフェノール樹脂発泡体積層板は、金属箔および面材を貫通する開孔部が存在するが、該開孔部が存在しているか否かは、フェノール樹脂発泡体積層板から金属箔を積層した面材を剥離させた際の面材側の剥離面(フェノール樹脂発泡体と接していた界面)を観察することにより、目視にて容易に確認することができる。
【0081】
更には、本発明者らが鋭意検討を行った結果、予め開孔した金属箔積層面材上に、フェノール樹脂の重量平均分子量を適正化した発泡性フェノール樹脂組成物を吐出し、硬化時に発生する発泡体中に残存する水分を効率的に放散除去する必要があることを見出した。すなわち、本発明者らは、フェノール樹脂の重量平均分子量を適正化しつつ、予成形工程及び成形工程の雰囲気温度及び加熱気体の風速を適正化することで、表面平滑性レベルが良好で、不燃性の軽量化フェノール樹脂発泡体積層板が得られることを見出した。
【実施例】
【0082】
以下に、実施例および比較例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0083】
<フェノール樹脂Aの合成>
反応器に52質量%ホルムアルデヒド水溶液(52質量%ホルマリン)3,500kgと99質量%フェノール2,510kg(不純物として水を含む)を仕込み、プロペラ回転式の攪拌機により攪拌し、温調機により反応器内部液温度を40℃に調整した。次いで48質量%水酸化ナトリウム水溶液をpHが8.7になるまで加えた後85℃まで昇温して、反応を行わせた。反応液のオストワルド粘度が120平方ミリメートル毎秒(=120mm2/s、25℃における測定値)に到達した段階で、反応液を冷却し、フェノール樹脂中の尿素含有量が4.6質量%となるように尿素を添加した。その後、反応液を30℃まで冷却し、パラトルエンスルホン酸一水和物の50質量%水溶液を、pHが6.3になるまで添加した。得られた反応液を薄膜蒸発機によって濃縮処理し、重量平均分子量および粘度を以下の方法で測定した。その結果、重量平均分子量が1,800、40℃における粘度が12,000mPa・sである、フェノール樹脂を得た。これをフェノール樹脂Aとした。
【0084】
<重量平均分子量>
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定により以下のような条件で測定を行い、後に示す標準物質によって得られた検量線よりフェノール樹脂の重量平均分子量Mwを求めた。
前処理:
フェノール樹脂約10mgをN,Nジメチルホルムアミド(和光純薬工業株式会社製、高速液体クロマトグラフ用)1mlに溶解し、0.2μmメンブレンフィルターでろ過したものを測定溶液として用いた。
測定条件:
測定装置:Shodex System21(昭和電工株式会社製)
カラム:Shodex asahipak GF-310HQ(7.5mmI.D.×30cm)
溶離液:臭化リチウム0.1質量%をN,Nジメチルホルムアミド(和光純薬工業株式会社製、高速液体クロマトグラフ用)に溶解し使用した。
流量:0.6ml/分
検出器:RI検出器
カラム温度:40℃
標準物質:標準ポリスチレン(昭和電工株式会社製「Shodex standard SL-105」)、2-ヒドロキシベンジルアルコール(シグマアルドリッチ社製、99%品)、フェノール(関東化学株式会社製、特級)
【0085】
<粘度>
回転粘度計(東機産業(株)製、R-100型、ローター部は3°×R-14)を用い、40℃で3分間安定させた後の測定値をフェノール樹脂Aの粘度とした。
【0086】
<フェノール樹脂Bの合成>
反応液のオストワルド粘度が30平方ミリメートル毎秒(=30mm2/s、25℃における測定値)に到達した段階で、反応液を冷却し、フェノール樹脂中の尿素含有量が6.0質量%となるように尿素を添加した以外は、フェノール樹脂Aと同様の手順で合成し、反応液の濃縮条件を調整することで、重量平均分子量が610、40℃における粘度が12,000mPa・sである、フェノール樹脂Bを得た。
【0087】
<フェノール樹脂Cの合成>
反応液のオストワルド粘度が300平方ミリメートル毎秒(=300mm2/s、25℃における測定値)に到達した段階で、反応液を冷却し、フェノール樹脂中の尿素含有量が3.3質量%となるように尿素を添加した以外は、フェノール樹脂Aと同様の手順で合成し、反応液の濃縮条件を調整することで、重量平均分子量が2,000、40℃における粘度が12,000mPa・sである、フェノール樹脂Cを得た。
【0088】
<フェノール樹脂Dの合成>
反応液のオストワルド粘度が450平方ミリメートル毎秒(=450mm2/s、25℃における測定値)に到達した段階で、反応液を冷却し、フェノール樹脂中の尿素含有量が3.3質量%となるように尿素を添加した以外は、フェノール樹脂Aと同様の手順で合成し、反応液の濃縮条件を調整することで、重量平均分子量が2,900、40℃における粘度が12,000mPa・sである、フェノール樹脂Dを得た。
【0089】
<フェノール樹脂Eの合成>
反応器に52質量%ホルムアルデヒド水溶液(52質量%ホルマリン)3,500kgと99質量%フェノール2,510kg(不純物として水を含む)を仕込み、プロペラ回転式の攪拌機により攪拌し、温調機により反応器内部液温度を40℃に調整した。次いで50質量%水酸化ナトリウム水溶液を反応液のpHが8.7になるまで加えた。反応液を1時間かけて85℃まで昇温し、その後オストワルド粘度が200平方ミリメートル毎秒(=200mm2/s、25℃における測定値)に到達した段階で、反応液を冷却し、尿素を400kg添加した。その後、反応液を30℃まで冷却し、パラトルエンスルホン酸一水和物の50質量%水溶液を、pHが6.4になるまで添加した。得られた反応液を薄膜蒸発機によって濃縮処理し、重量平均分子量が1,510、粘度20,000mPa・sのフェノール樹脂を得た。これをフェノール樹脂Eとした。
【0090】
<フェノール樹脂Fの合成>
反応器に52質量%ホルムアルデヒド水溶液(52質量%ホルマリン)3,500kgと99質量%フェノール2,510kg(不純物として水を含む)を仕込み、プロペラ回転式の攪拌機により攪拌し、温調機により反応器内部液温度を40℃に調整した。次いで50質量%水酸化ナトリウム水溶液を加えながら昇温して、反応を行わせた。オストワルド粘度が60平方ミリメートル毎秒(=60mm2/s、25℃における測定値)に到達した段階で、反応液を冷却し、尿素を570kg添加した。その後、反応液を30℃まで冷却し、パラトルエンスルホン酸一水和物の50質量%水溶液で、pHを6.4に中和した。この反応液を60℃で濃縮処理して、重量平均分子量が750、粘度5,300mPa・sのフェノール樹脂を得た。これをフェノール樹脂Fとした。
【0091】
(実施例1)
フェノール樹脂A100質量部に対して、界面活性剤としてエチレンオキサイド-プロピレンオキサイドのブロック共重合体とポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテルを質量比率でそれぞれ50%ずつ含有する組成物を3.0質量部の割合で混合することでフェノール樹脂組成物を得た。フェノール樹脂組成物100質量部に対して、発泡剤としてイソプロピルクロリド40質量%と1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン60質量%の混合物6.3質量部、気体発泡核剤として窒素を発泡剤に対して0.35質量%、更に、酸性硬化剤としてキシレンスルホン酸80質量%とジエチレングリコール20質量%の混合物からなる組成物を10質量部添加し、30℃に温調した回転数可変式のミキシングヘッドに供給した。混合し、得られた発泡性フェノール樹脂組成物をマルチポート分配管にて分配し、移動する下面材上に供給した。なお、混合機(ミキサー)は、特開平10-225993号に開示されたものを使用した。即ち、混合機の上部側面に、フェノール樹脂Aおよび発泡核剤を含む発泡剤の導入口があり、回転子が攪拌する攪拌部の中央付近の側面に酸性硬化剤の導入口を備えている混合機を使用した。攪拌部以降は発泡性フェノール樹脂組成物を吐出するためのノズルに繋がっている。また、混合機は、酸性硬化剤導入口までを混合部(前段)、酸性硬化剤導入口~攪拌終了部を混合部(後段)、攪拌終了部~ノズルを分配部とし、これらにより構成されている。分配部は先端に複数のノズルを有し、混合された発泡性フェノール樹脂組成物が均一に分配されるように設計されている。ここで、混合機およびノズルは、各々温調水により温度を調節できるようになっており、温調水温度はともに25℃とした。また、マルチポート分配管の吐出口には、発泡性フェノール樹脂組成物の温度を検出できるように熱電対が設置してあり、ミキシングヘッドの回転数は600rpmに設定した。下面材上に供給した発泡性フェノール樹脂組成物は、予成形工程に導入されるが、このときの予成形工程の設備温度は70℃、加熱空気の風速は0.20m/分とした。なお、予成形は、上面材上方より、フリーローラーにて行った。その後、二枚の面材で挟み込まれるようにして、90℃に加熱されたスラット型ダブルコンベアに導入した(本成形工程)。本成形工程の加熱空気の風速は、0.35m/分とした。本成形工程において、15分の滞留時間で発泡性フェノール樹脂組成物を硬化させた後、110℃のオーブンで3時間硬化させ(後硬化工程)、厚み50mmのフェノール樹脂発泡体積層板を得た。なお、面材としては、上下面材ともに、アルミニウム箔(7μm厚み)が、ポリエチレン樹脂層を介して、ポリエステル不織布(旭化成(株)エルタスE05060、目付量60g/m2)に一体積層化したものに、開孔(孔径1mm、孔数10,000個/m2)を施したものを使用した。
【0092】
そして、得られたフェノール樹脂発泡体積層板の特性(密度、中心部独立気泡率、表層部独立気泡率、平均気泡径、フェノール樹脂発泡体中の塩素化ハイドロフルオロオレフィンおよび非塩素化ハイドロフルオロオレフィンの解析、フェノール樹脂発泡体積層板の表面平滑性レベル、及びコーンカロリーメーターによる発熱性試験による不燃性を以下の方法によって評価した。
【0093】
<密度>
20cm角のフェノール樹脂発泡体を試料とし、JIS K7222に従い質量と見かけ容積を測定して求めた。
【0094】
<中心部独立気泡率>
ASTM-D-2856に従い測定した。具体的には、フェノール樹脂発泡体積層板より面材を取り除いた後、直径30mm~32mmの円柱形試料をコルクボーラーで刳り貫いた。次いで、フェノール樹脂発泡体の厚み方向中心が中心となるように高さ9mm~13mmに切り揃えた後、空気比較式比重計(東京サイエンス社製、1,000型)の標準使用方法により試料容積を測定した。測定された試料容積から、試料質量とフェノール樹脂の密度から計算した壁(気泡以外の部分)の容積を差し引いた値を、試料の外寸から計算した見かけの容積で割り、100をかけた値を独立気泡率として求めた。同様の操作を各測定部位から50mm以上離れた部位について全10点測定し、最も低い測定値を中心層独立気泡率とした。なお、フェノール樹脂の密度は1.3kg/Lとした。また、フェノール樹脂発泡体の厚みが30mm以下の場合には、直径30mm~32mmの円柱形試料をコルクボーラーで刳り貫き、フェノール樹脂発泡体の厚み方向中心が中心となるように高さ4mm~6mmに切り揃えた後、同様の評価を行った。
【0095】
<表層部独立気泡率>
フェノール樹脂発泡体積層板より面材を取り除いた後、直径30mm~32mmの円柱形試料をコルクボーラーで刳り貫いた。次いで、フェノール樹脂発泡体の厚み方向の片側表面が円柱の円表面の一面となるように高さ9mm~13mmに切り揃えた後、空気比較式比重計(東京サイエンス社製、1,000型)の標準使用方法により試料容積を測定した。測定された試料容積から、試料質量とフェノール樹脂の密度から計算した壁(気泡以外の部分)の容積を差し引いた値を、試料の外寸から計算した見かけの容積で割り、100をかけた値を求めた。同様の操作を、各測定部位から50mm以上離れた部位について全10点測定し、最も低い測定値を(a)とした。なお、フェノール樹脂の密度は1.3kg/Lとした。また、コルクボーラーで刳り貫いた同じ試料について、発泡体の厚み方向のもう一方の表面が円柱の円表面の一面となるように高さ9mm~13mmに切り揃えた後、同様にして全10点測定し、最も低い測定値を(b)とした。その後、(a)及び(b)の測定値の内、低い方の測定値を、スキン層独立気泡率として定義した。なお、フェノール樹脂発泡体の厚みが30mm以下の場合には、直径30mm~32mmの円柱形試料をコルクボーラーで刳り貫き、フェノール樹脂発泡体の一方の表面が一辺となるように高さ4mm~6mmに切り揃えた後、同様の評価を行った。
【0096】
<平均気泡径>
平均気泡径は、JIS K6402に記載の方法を参考に、以下の方法で測定した。
フェノール樹脂発泡体積層板の厚み方向のほぼ中央を表裏面に平行に切削し、得られた試験片の切断面を50倍に拡大した写真を撮影した。そして、得られた写真上にボイドを避けて9cmの長さ(実際の発泡体断面における1,800μmに相当する)の直線を4本引き、各直線が横切った気泡の数に準じて測定したセル数を各直線について求め、それらの平均値で1,800μmを割った値を平均気泡径とした。なお、ボイドとは、前記50倍に拡大した写真上において、1.5cm以上の略円形直径に相当する気泡径を有する気泡をいう。
【0097】
<フェノール樹脂発泡体中の塩素化ハイドロフルオロオレフィンおよび非塩素化ハイドロフルオロオレフィンの解析>
フェノール樹脂発泡体積層板のフェノール樹脂発泡体中に塩素化ハイドロフルオロオレフィンおよび非塩素化ハイドロフルオロオレフィンが含まれているか否かを以下の方法により確認した。
【0098】
まず、解析対象となる化合物の標準ガスを用いて、以下のGC/MS測定条件における保持時間を求めた。次いで、フェノール樹脂発泡体積層板から得たフェノール樹脂発泡体の試料10gと、金属製ヤスリとを10L容器(製品名:テドラーバック)に入れて密封し、窒素5Lを注入した。そして、テドラーバックの上からヤスリを使って試料を削り、試料を細かく粉砕した。続いて、81℃に温調された温調機内にテドラーバックを10分間入れた。テドラーバック中で発生したガスを100μL採取し、以下に示すGC/MS測定条件にて分析した。塩素化ハイドロフルオロオレフィンおよび非塩素化ハイドロフルオロオレフィンの種類は、事前に求めた保持時間とマススペクトルから同定を行った。
【0099】
[GC/MS測定条件]
GC/MSの測定は以下のように行った。
ガスクロマトグラフはアジレント・テクノロジー社製のAgilent7890型を用い、カラムはジーエルサイエンス社製InertCap 5(内径0.25mm、膜厚5μm、長さ30m)を用いた。キャリアガスとしてヘリウムを用い、その流量は1.1mL/分とした。注入口の温度は150℃、注入方法はスプリット法(1:50)とし、試料の注入量は100μLとした。カラム温度はまず-60℃で5分間保持し、その後50℃/分で150℃まで昇温し、2.8分保持した。
【0100】
質量分析計は日本電子社製のQ1000GC型を用いた。イオン化方法:電子イオン化法(70eV)、スキャン範囲:m/Z=10~500、電圧:-1300V、イオン源温度:230℃、インターフェイス温度:150℃の条件で質量分析を行った。
【0101】
<フェノール樹脂発泡体積層板の表面平滑性レベルの評価>
ノギスを用いてフェノール樹脂発泡体積層板の厚みを測定した。測定した厚みを一辺とする立方体状試料を5つ準備した。立方体状試料の幅方向に対して、5mm間隔で厚みを測定し、最大値と最小値の差Δhを求めた。同様にして、立方体状試料の長さ方向に対しても、5mm間隔で厚みを測定し、最大値と最小値の差Δhを求めた。幅方向および長さ方向各々のΔhのうち、より大きな方の値をΔHとした。ΔHが0mm超1mm以下であればA、ΔHが1mm超2mm以下であればB、ΔHが2mm超であればCとして表面平滑性レベルの評価を行った。なお、ΔHは、AおよびBであることが好ましい。
【0102】
<フェノール樹脂発泡体積層板の厚み斑>
ノギスを用いてフェノール樹脂発泡体積層板の厚みを測定した。まず、フェノール樹脂発泡体積層板の一辺の長さを測定し、中心位置を決めた。そして、この中心位置から端部方向へ10mm間隔で両側ともマーキングを行い、マーキングされた位置での厚みをノギスを用いて全て測定した。次に、上記測定を行った辺と垂直方向の一辺に対しても同様に、10mm間隔でノギスを用いて全てのマーキング位置での厚みを測定し、上記二辺に関する全ての測定点における、最大値と最小値の差ΔHaを求めた。ΔHaが0mm超1mm以下であればA、ΔHaが1mm超2mm以下であればB、ΔHaが2mm超であればCとして厚み斑の評価を行った。なお、ΔHaは、AおよびBであることが好ましい。
【0103】
<コーンカロリーメーターによる発熱性試験評価;不燃性>
フェノール樹脂発泡体積層板から、(99±1)mm×(99±1)mmのサンプルを切り出し、ISO-5660に準拠し、輻射強度50kW/m2にて20分間加熱したときの総発熱量を測定した。上記条件での発熱性試験において、総発熱量が8MJ/m2以下であればA、総発熱量が8MJ/m2超であればBとして、不燃性評価を行った。なお、該評価は、Aであることが好ましい。
【0104】
(実施例2)
フェノール樹脂Bを用いた以外は、実施例1と同様にして、フェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0105】
(実施例3)
フェノール樹脂Cを用いた以外は、実施例1と同様にして、フェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0106】
(実施例4)
予成形工程の雰囲気温度を60℃とした以外は、実施例1と同様にして、フェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0107】
(実施例5)
予成形工程の雰囲気温度を80℃とした以外は、実施例1と同様にして、フェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0108】
(実施例6)
予成形工程の加熱空気の風速を0.1m/分とした以外は、実施例1と同様にして、フェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0109】
(実施例7)
本成形工程の雰囲気温度を80℃とした以外は、実施例1と同様にして、フェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0110】
(実施例8)
本成形工程の雰囲気温度を100℃とした以外は、実施例1と同様にして、フェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0111】
(実施例9)
本成形工程の加熱空気の風速を0.25m/分とした以外は、実施例1と同様にして、フェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0112】
(実施例10)
上下面材ともに、アルミニウム箔(厚み7μm)が、ポリエチレン樹脂層を介して、クラフト紙(65g/m2)に一体的に積層化されたものに、開孔(孔径1mm、孔数10,000個/m2)を施した面材を用いた以外は、実施例1と同様にして、フェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0113】
(比較例1)
特許文献2(特公平04-002097号公報)における実施例5と同様に、0.050mm厚みのアルミニウム箔を接着剤を用いてクラフト紙(65g/m2)に積層させた後、孔径0.6mm、孔数200個/m2に開孔した面材、及び、フェノール樹脂Dを用い、予成形工程が存在せず、本成形工程の雰囲気温度を70℃とし、本成形工程の加熱空気の風速を0.12m/分とした以外は、実施例1と同様にして、厚み30mmのフェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0114】
(比較例2)
特許文献3(特表2009-525441号公報)における実施例1と同様に、0.050mm厚みのアルミニウム箔を接着剤を用いてガラス繊維面材(140g/m2)に積層させた後、孔径0.7mm、孔数210個/m2に開孔した面材、及び、フェノール樹脂Dを用い、予成形工程が存在せず、本成形工程の雰囲気温度を70℃とし、本成形工程の加熱空気の風速を0.12m/分とした以外は、実施例1と同様にして、厚み50mmのフェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0115】
(比較例3)
上下面材ともにアルミニウム箔(7μm厚み)が、ポリエチレン樹脂層を介して、ガラス繊維混抄紙(目付量70g/m3)に一体積層化したものに、開孔(孔径1mm、孔数10,000個/m2)を施した面材を使用し、フェノール樹脂としてフェノール樹脂Aを用いた以外は、特許文献4(特開2017-160431)における実施例1と同様にして、厚み50mmのフェノール樹脂発泡体積層板を得た。すなわち、予成形工程は存在しない。
【0116】
(比較例4)
本願実施例1に相当する面材、すなわち、上下面材ともにアルミニウム箔(7μm厚み)が、ポリエチレン樹脂層を介して、ポリエステル不織布(旭化成(株)エルタスE05060、目付量60g/m3)に一体積層化したものに、開孔(孔径1mm、孔数10,000個/m2)を施したものを使用した以外は、特許文献5(国際公開2016/152155)における実施例1と同様にして、厚み50mmのフェノール樹脂発泡体積層板を得た。すなわち、フェノール樹脂としてはフェノール樹脂Eを用い、予成形工程は存在しない。
【0117】
(比較例5)
上下面材ともにアルミニウム箔(7μm厚み)が、ポリエチレン樹脂層を介して、ポリエステル不織布(旭化成(株)エルタスE05030、目付量30g/m3)に一体積層化したものに、開孔(孔径1mm、孔数10,000個/m2)を施した面材を使用した以外は、特許文献6(特開2016-43687)における実施例1と同様にして、厚み50mmのフェノール樹脂発泡体積層板を得た。すなわち、フェノール樹脂としてはフェノール樹脂Fを用い、予成形工程は存在しない。
【0118】
(比較例6)
予成形工程を設け、予成形条件として、設備温度を70℃、加熱空気の風速を0.08m/分とした以外は、比較例5と同様にして、厚み50mmのフェノール樹脂発泡体積層板を得た。
【0119】
実施例1~10および比較例1~6で得られたフェノール樹脂発泡体積層板の特性の評価結果を、表1にまとめた。
【0120】
【0121】
表1より、実施例1~10で得られたフェノール樹脂発泡体積層板は、比較例1~6で得られたフェノール樹脂発泡体積層板と比較して、軽量性に優れ、厚み方向に亘って独立気泡率が高く、平滑性が良好である、不燃性のフェノール樹脂発泡体積層板であることがわかる。
【符号の説明】
【0122】
1 フェノール樹脂発泡体積層板
2 フェノール樹脂発泡体
3 フェノール樹脂発泡体と面材の共存部
4 面材
5 接着層
6 金属箔(アルミニウム箔)
7 開孔部
8 開孔部に浸透したフェノール樹脂発泡体