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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】人工膝関節
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/38 20060101AFI20220119BHJP
【FI】
A61F2/38
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020522773
(86)(22)【出願日】2018-06-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-27
(86)【国際出願番号】 CN2018093793
(87)【国際公開番号】W WO2019007290
(87)【国際公開日】2019-01-10
【審査請求日】2020-03-03
(31)【優先権主張番号】201710530831.3
(32)【優先日】2017-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520004421
【氏名又は名称】朱紅文
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】朱紅文
(72)【発明者】
【氏名】黄国富
(72)【発明者】
【氏名】董栄華
(72)【発明者】
【氏名】朱天謀
【審査官】小原 一郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0044414(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0226068(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第01749505(EP,A1)
【文献】特表2008-507354(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0004460(US,A1)
【文献】特表2008-541785(JP,A)
【文献】国際公開第2006/091495(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大腿骨顆プロステーシス(1)と脛骨高原部プロステーシス(2)と位置決めピン(5)とを含み、
前記脛骨高原部プロステーシス(2)は、互いに独立している脛骨高原部内側プロステーシス(201)と脛骨高原部外側プロステーシス(202)とを含み、
前記位置決めピン(5)によって脛骨高原部内側プロステーシス(201)及び脛骨高原部外側プロステーシス(202)を脛骨の上端に固定し、
前記脛骨高原部内側プロステーシス(201)及び脛骨高原部外側プロステーシス(202)はそれぞれ脛骨高原部顆間隆起(31)の両側に設けられ、大腿骨顆プロステーシス(1)の下方に位置しており、
前記脛骨高原部内側プロステーシス(201)及び脛骨高原部外側プロステーシス(202)の底部にプロステーシス割り溝(23)が開設されており、
脛骨高原部プロステーシス(2)の下方に位置する脛骨頂部に脛骨割り溝(32)が開設されており、
前記プロステーシス割り溝(23)及び前記脛骨割り溝(32)が共に、位置決めピン(5)を取り付けるためのリミット孔(4)を形成し、かつ、該リミット孔が脛骨高原部顆間隆起(31)を貫通することを特徴とする、人工膝関節。
【請求項2】
前記脛骨高原部プロステーシス(2)が、膝蓋骨の後側下方に放置されていることを特徴とする、請求項1に記載の人工膝関節。
【請求項3】
前記位置決めピン(5)は脛骨高原部顆間隆起(31)を通り、その一方端の上部が脛骨高原部内側プロステーシス(201)中に取り付けられ、他方端の上部が脛骨高原部外側プロステーシス(202)中に取り付けられていることを特徴とする、請求項に記載の人工膝関節。
【請求項4】
前記脛骨高原部内側プロステーシス(201)及び脛骨高原部外側プロステーシス(202)はいずれも上部ガスケット(21)及び下部ガスケット(22)をそれぞれ含み、
その中、下部ガスケット(22)上に弾性部材(6)が設けられており、該弾性部材(6)によって大腿骨顆プロステーシス(1)から脛骨高原部プロステーシス(2)の上部ガスケットへ伝達する衝撃力を緩衝し、上部ガスケット(21)に半月板に類似する機能を有させることを特徴とする、請求項1に記載の人工膝関節。
【請求項5】
前記弾性部材(6)は、下部ガスケット(22)を貫通し、下部ガスケット(22)上に固定的に取り付けられており、上端が下部ガスケット(22)の上方から露出し、上部ガスケットの下表面に突っ張って設置されていることを特徴とする、請求項に記載の人工膝関節。
【請求項6】
前記弾性部材(6)は、スリーブ(61)とバネ(62)とを含み、バネ(62)の下端がスリーブ(61)中に埋設されており、バネの上端が上部ガスケットの下表面に突っ張って設置されており、
スリーブ(61)が下部ガスケット(22)を通り、スリーブの最下端が脛骨上の孔室(7)中に取り付けられていることを特徴とする、請求項に記載の人工膝関節。
【請求項7】
前記スリーブ(61)の底部には、前記バネ(62)の伸縮を調節するボルト(63)が設けられていることを特徴とする、請求項に記載の人工膝関節。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用人工関節プロステーシスに関し、具体的に人工膝関節に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、膝関節置換術は、世界中で膝関節病変及び損傷に対して最も基本的な治療計画であり、置換術において関節プロステーシス(人工膝関節とも呼ばれる)を人体内に移植して、人体の自然な膝関節を置換するためである。科学技術がだんだんと進歩するにつれて、人工膝関節及び置換術に対してますますさらに高く要求されるようになり、人々は、苦痛の軽減を希望している上、使用寿命の向上をも希望しており、さらにより良い術後回復効果を希望しており、ひいては通常の健常者のレベルまで達することを希望しており、このために、様々な人工膝関節が徐々に登場し、様々な構想や仮想が続々と提案されてきたが、現在の主流となる手術法及び人工膝関節は上記の要求を満足するにはほど遠い。
【0003】
人体の2つの主な腿骨は大腿骨及び脛骨であり、大腿骨が上に、脛骨が下にあり、大腿骨と脛骨とが交差しかつ相互作用する位置は膝関節であり、膝関節における大腿骨の部分が大腿骨の下端と呼ばれ、膝関節における脛骨の部分が脛骨の上端と呼ばれ、大腿骨の下端及び脛骨の上端が大きくなり、膝関節の安定性のために支持基盤を提供する。
【0004】
大腿骨の下端に2つの分離している顆が形成されており、顆の下表面が滑らかな円形で関節軟骨に覆われており、上記2つの分離している顆が対称するものではなく、内側顆の方が大きく、外側顆の方が小さく、このように内側及び外側の異なる応力状況に適応する。脛骨の上端は、浅くて、凹状の、関節軟骨により覆われている外側及び内側高原部を含み、内側高原部が外側高原部より大きく、脛骨高原部全体が外側高原部と内側高原部との間の隆起又は結節によって分離されている。
【0005】
膝蓋骨(膝のお皿)は大腿四頭筋腱中に埋められており、大腿四頭筋腱が大腿前側上部の大腿四頭筋の筋肉組織を膝蓋骨に接続し、膝蓋靭帯が膝蓋骨を膝関節の真下に位置する脛骨に接続する。大腿四頭筋腱、膝蓋骨及び膝蓋靭帯の組み合わせが1つの滑車に似ており、大腿四頭筋の筋肉組織から生じる力を、屈曲した膝関節を介して脛骨に伝達することで、脚を真直ぐにするか、あるいは屈曲した速度を遅くし、もちろん、膝蓋骨は、膝関節が衝撃による損傷を避けるように保護するという他の機能をも有する。
【0006】
十字靱帯の作用は、屈曲及び伸展期間において顆を概ね脛骨上に位置づけ、膝関節の屈曲期間において、前十字靱帯により加えられた張力が顆の後方への変位を制限し、膝関節の伸展期間において、後十字靱帯が顆の前方への変位を制限する。
【0007】
膝半月板は、膝関節が正常に機能することに対して極めて重要な役割を果たし、関節の対称性を増加する以外、半月板は、力を膝関節を経過する時に緩衝及び分化させ、大腿骨と脛骨との間の摩擦及び衝撃を弱める。
【0008】
しかしながら、現在流行している膝関節置換術において、自然脛骨高原部を直接に切り取り、人工の脛骨高原部で置き換え、かつ大腿骨の表面に形状が類似する大腿骨顆プロステーシスを取り付けることにより、新しい大腿骨顆プロステーシスと人工脛骨高原部とを相互に作用させることが多く、これにより術後の膝関節中に十字靱帯及び半月板がなくなり、ひいては膝蓋骨もなくなっているので、従来の手術法及び相応する人工膝関節そのものの特性によってこのような手術後に所望の回復効果を有することが不可能となり、このような手術は膝関節固有の生理的構造及び特性を破壊し、膝関節に永久で不可逆的な損害を与えており、その調整が急務となり、十字靱帯、膝蓋骨を保留することができ、半月板緩衝機能を有する新規な人工膝関節が必要となっている。
【0009】
また、長年の臨床研究によると、膝関節病変のうち、内側顆及び外側顆、内側高原部及び外側高原部の損傷程度が異なり、人間の行為習慣、仕事の習慣等に影響されることが多く、内側に位置する顆又は高原部が先に損傷され、さらにもう一側の顆又は高原部の損傷の加速を引き起こし、かつ、この過程において患者は巨大な痛みに苦しみ、もしこの過程で手術を行えば、損傷されていない側も一緒に切り取られることが多く、なぜなら脛骨高原部及び新たな大腿骨顆はいずれも一体化しているからである。しかも、ほとんどの膝関節病変も半月板、大腿骨顆又は脛骨高原部の退廃、すり減りにより引き起こされ、十字靱帯及び膝蓋骨の損傷によるものは極めて少ない。
【0010】
このために、単顆型膝関節で既存の一体型膝関節を置換することが提案され、このような構想は提唱に値するが、実際の実施過程において大きな困難に遭遇し、最後に実現できなくなっているか、又はその実際の効果が元の一体型膝関節よりも低い。その主な問題は以下のとおりである。単顆型膝関節で置換した場合、置換部分は無傷部分と機能、高さが不一致し、無傷部分の損害速度を有効に遅らせることができず、元々無傷の他方の部分の膝関節も損傷された後、依然として手術を行って人工膝関節を交換する必要があり、この時も単顆型膝関節を使用すれば、2つの単顆型膝関節が高さ、寸法、弾性等の点で一致に調整しにくく、使用効果が悪く、もし一体型膝関節で置換すれば、以前に置換された単顆型膝関節がまた無意味となり、さらに脛骨及び大腿骨の二次損傷取付にも係わっている。
【0011】
上記の課題に鑑み、本発明者は従来の人工膝関節を鋭意に研究し、上記の課題を解決できる新規な人工膝関節を設計した。
【発明の概要】
【0012】
上記の課題を解決するために、本発明者は鋭意に研究を行い、人工膝関節を設計した。該膝関節は、大腿骨顆プロステーシスと脛骨高原部プロステーシスとを含み、前記脛骨高原部プロステーシスは脛骨高原部顆間隆起の両側にそれぞれ設けられている脛骨高原部内側プロステーシス及び脛骨高原部外側プロステーシスを含み、該人工膝関節は脛骨高原部プロステーシスを固定する位置決めピンをさらに含み、前記脛骨高原部プロステーシスの底面上にプロステーシス割り溝が開設されており、前記脛骨高原部プロステーシスの下方の脛骨上に脛骨割り溝が開設されており、前記プロステーシス割り溝が前記脛骨割り溝と互いに対応し、共に位置決めピンを収容するリミット孔を構成し、前記リミット孔が脛骨高原部顆間隆起を貫通し、脛骨高原部内側プロステーシスと脛骨高原部外側プロステーシスとを連通し、該人工膝関節は、前記リミット孔中に嵌め込むことが可能な位置決めピンをさらに含み、該位置決めピンとリミット孔との嵌め合いによって脛骨高原部内側プロステーシスと脛骨高原部外側プロステーシスとの相対位置の安定性、バランスを確保することができる。これにより、本発明を完成した。
【0013】
具体的には、本発明の目的は、人工膝関節を提供することにあり、該膝関節は、大腿骨顆プロステーシス1と脛骨高原部プロステーシス2とを含み、
前記脛骨高原部プロステーシス2は互いに独立している脛骨高原部内側プロステーシス201及び脛骨高原部外側プロステーシス202を含み、
前記脛骨高原部内側プロステーシス201及び脛骨高原部外側プロステーシス202がそれぞれ脛骨高原部顆間隆起31の両側に設けられており、大腿骨顆プロステーシス1の下方に位置している。
【0014】
その中、前記脛骨高原部プロステーシス2が膝蓋骨の後側下方に放置されている。
【0015】
その中、該人工膝関節は位置決めピン5をさらに含み、前記位置決めピン5によって脛骨高原部内側プロステーシス201及び脛骨高原部外側プロステーシス202を脛骨上に固定する。
【0016】
その中、前記位置決めピン5は脛骨高原部顆間隆起31を通り、その一方端の上部が脛骨高原部内側プロステーシス201中に取り付けられており、その他方端の上部が脛骨高原部外側プロステーシス202中に取り付けられている。
【0017】
その中、前記脛骨高原部内側プロステーシス201及び脛骨高原部外側プロステーシス202の底部にプロステーシス割り溝23が開設されており、
脛骨高原部プロステーシス2の下方に位置する脛骨頂部に脛骨割り溝32が開設されており、
前記プロステーシス割り溝23が前記脛骨割り溝32と共に位置決めピン5を取り付けるためのリミット孔4を形成し、かつ、該リミット孔が脛骨高原部顆間隆起31を貫通する。
【0018】
その中、前記内側単顆プロステーシス201及び脛骨高原部外側プロステーシス202はいずれも上部ガスケット21及び下部ガスケット22をそれぞれ含み、
その中、下部ガスケット22上に弾性部材6が設けられており、該弾性部材6によって大腿骨顆プロステーシス1から脛骨高原部プロステーシス2の上部ガスケットへ伝達する衝撃力を緩衝し、上部ガスケット21に半月板に類似する機能を有させる。
【0019】
その中、前記弾性部材6は、下部ガスケット22を貫通し、下部ガスケット22上に固定的に取り付けられており、上端が下部ガスケット22の上方から露出し、上部ガスケットの下表面に突っ張って設置されている。
【0020】
その中、前記弾性部材6はスリーブ61とバネ62とを含み、バネ62の下端がスリーブ61中に埋設されており、バネの上端が上部ガスケットの下表面に突っ張って設置されており、
スリーブ61が下部ガスケット22を通り、スリーブの最下端が脛骨上の孔室7中に取り付けられている。
【0021】
その中、前記スリーブ61の底部に前記バネ62の伸縮を調節するボルト63が設けられている。
【0022】
本発明は、上述した人工膝関節の使用方法をさらに含み、該方法は、
大腿骨顆プロステーシス1を大腿骨顆上に取り付けるステップ1と、
脛骨高原部プロステーシス2を取り付ける空間を脛骨高原部上に開設するステップ2と、
脛骨上に脛骨割り溝32を掘り、該脛骨割り溝32を脛骨高原部顆間隆起31まで延伸させ、脛骨高原部顆間隆起31上に顆間隆起孔33を形成するステップ3と、
脛骨上に孔室7を掘るステップ4と、
脛骨高原部プロステーシス2上のスリーブを孔室7中に嵌め込み、同時に、プロステーシス割り溝23が脛骨割り溝32及び顆間隆起孔33と共にリミット孔4を構成するようにプロステーシス割り溝23、脛骨割り溝32及び顆間隆起孔33の相対位置を調整するステップ5と、
位置決めピン5をリミット孔4中に取り付け、位置決めピン5の固定後に骨セメントによって脛骨高原部プロステーシス2を固定するステップ6と、
を含み、
その中、好ましくは、ステップ5を実行する前に、スイベルボルト63によってバネ62の伸縮を調節する。
【0023】
本発明が有する有益な効果は下記(1)~(7)を含む。
【0024】
(1)本発明が提供する人工膝関節は、2つの分離している脛骨高原部内側プロステーシス及び脛骨高原部外側プロステーシスを有し、それぞれ脛骨高原部顆間隆起の両側に放置することができ、これにより脛骨高原部顆間隆起を切り取って破壊する必要がなくなり、脛骨高原部顆間隆起上の十字靱帯を完全に保留できるように確保し、これにより使用効果及び患者の感受性が極めて大きく向上する。
【0025】
(2)本発明が提供する人工膝関節は、2つの分離している脛骨高原部内側プロステーシス及び脛骨高原部外側プロステーシスを有し、病状に応じてプロステーシス移植を段階的に行うことができ、実際の応用がより円滑で便利である。
【0026】
(3)本発明が提供する人工膝関節の脛骨高原部プロステーシス上に弾性部材が設けられており、半月板の機能を模擬し、緩衝、振幅減衰効果を提供して、人工膝関節を自然の膝関節とより実質的に類似するようにすることができる。
【0027】
(4)本発明が提供する人工膝関節脛骨高原部プロステーシスの弾性部材においてバネ弾性/弾力が調節可能であり、異なる年齢及び身体状況に応じて調節することができ、該バネ弾性/弾力が最適な状態にあるよう確保することができる。
【0028】
(5)本発明が提供する人工膝関節の脛骨高原部プロステーシスの弾性部材は下方に向けて突出する筒状構造中に設けられており、該筒状構造が脛骨上の孔室内に嵌め込まれ、これにより脛骨高原部プロステーシスに対する制限、固定役割を果たすこともできる。
【0029】
(6)本発明が提供する人工膝関節の脛骨高原部プロステーシス上には、プロステーシス割り溝が開設されており、さらに脛骨高原部内側プロステーシス及び脛骨高原部外側プロステーシスを連通しかつ脛骨高原部顆間隆起を通る位置決めピンが設けられており、これにより2つの脛骨高原部プロステーシス同士の相対位置を全方向に制限固定しており、人工膝関節の応力を均衡にし、全体を安定させ、使用寿命が長く、患者感受性が良好である。
【0030】
(7)本発明が提供する人工膝関節は、大腿骨及び脛骨上の小部分の領域をのみ置換しており、大腿骨及び脛骨近傍の他の生理的部分に何ら損傷及び破壊も与えず、その正常の生理的機能に影響を及ぼすこともなく、術後に膝蓋骨、十字交差靱帯等、膝関節における関連生理的構造を保留することができ、これにより良好な術後回復効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1は、本発明の1つの好ましい実施形態に係る人工膝関節の組立分解図を示す。
図2図2は、従来技術の人工膝関節のうち、常用される一体型大腿骨プロステーシスの構造模式図を示す。
図3図3は、本発明の1つの好ましい実施形態に係る人工膝関節における大腿骨内側単顆プロステーシス又は大腿骨外側単顆プロステーシスの構造模式図を示す。
図4図4は、本発明の1つの好ましい実施形態に係る人工膝関節におけるリミット孔/位置決めピンの断面形状模式図を示す。
図5図5は、本発明の1つの好ましい実施形態に係る人工膝関節におけるリミット孔/位置決めピンの断面形状模式図を示す。
図6図6は、本発明の1つの好ましい実施形態に係る人工膝関節におけるリミット孔/位置決めピンの断面形状模式図を示す。
図7図7は、本発明の1つの好ましい実施形態に係る人工膝関節における脛骨高原部内側プロステーシスの構造模式図を示す。
図8図8は、本発明の1つの好ましい実施形態に係る人工膝関節における脛骨高原部プロステーシス上の弾性部材の断面図を示す。
図9図9は、本発明の1つの好ましい実施形態に係る人工膝関節における、脛骨高原部プロステーシスを放置する脛骨の構造模式図を示す。
図10図10は、本発明の1つの好ましい実施形態に係る人工膝関節における、1つの脛骨高原部内側プロステーシス又は脛骨高原部外側プロステーシスを放置する脛骨の構造模式図を示す。
図11図11は、本発明の1つの好ましい実施形態に係る人工膝関節における大腿骨顆プロステーシスと大腿骨との組立分解図を示す。
図12図12は、本発明の1つの好ましい実施形態に係る人工膝関節における、大腿骨顆プロステーシスと大腿骨とを組み立てた後の構造模式図を示す。
【符号の説明】
【0032】
1 大腿骨顆プロステーシス
101 大腿骨内側単顆プロステーシス
102 大腿骨外側単顆プロステーシス
11 前方バックカバー
12 固定針
13 後方バックカバー
14 固定ピン
2 脛骨高原部プロステーシス
201 脛骨高原部内側プロステーシス
202 脛骨高原部外側プロステーシス
21 上部ガスケット
22 下部ガスケット
23 プロステーシス割り溝
3 脛骨
31 脛骨高原部顆間隆起
32 脛骨割り溝
33 顆間隆起孔
4 リミット孔
5 位置決めピン
6 弾性部材
61 スリーブ
62 バネ
63 ボルト
7 孔室
8 大腿骨
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面及び実施例を参照しながら本発明をさらに詳しく説明する。これらの説明により、本発明の特徴及びメリットがよりはっきりして明確になる。
【0034】
ここで専用される「例示的」とは、「例、実施例又は説明文として用いる」ことを意味する。ここで、「例示的」として説明する全ての実施例もその他の実施例より優れるか又は良いと解釈する必要はない。図面において実施例の各種の態様を示しているが、特に説明がない限り、図面を比例で作成する必要はない。
【0035】
本発明が提供する人工膝関節によれば、図1に示すように、該人工膝関節は、大腿骨顆プロステーシス1及び脛骨高原部プロステーシス2を含み、その中、大腿骨顆プロステーシス1が大腿骨8の下端に設けられており、大腿骨下端の一部の骨構造を置換し、脛骨高原部プロステーシス2が脛骨3の上端に設けられており、脛骨上端の脛骨高原部上の一部の骨構造を置換する。本願に記載の脛骨高原部は、脛骨上の、大腿骨下端と接触する面であり、脛骨高原部の中央に脛骨高原部顆間隆起31があり、隆起又は結節とも称され、その上に十字交差靱帯が付着しており、脛骨高原部が主に前記脛骨高原部顆間隆起の両側の内側高原部及び外側高原部から構成される。
【0036】
前記脛骨高原部プロステーシス2は、互いに独立している脛骨高原部内側プロステーシス201及び脛骨高原部外側プロステーシス202を含み、それぞれ内側高原部及び外側高原部を置換するためである。前記脛骨高原部プロステーシスで内側高原部及び/又は外側高原部を置換した後、脛骨高原部上の置換されていない部分(脛骨高原部顆間隆起を含む)の高さが脛骨高原部プロステーシスの高さと一致し、すなわち、脛骨高原部プロステーシスで一部の脛骨構造が置換された後、脛骨の高さも外形も変化していない。
【0037】
前記大腿骨顆プロステーシスは、2つの分離している単顆であってもよいし、一体的に接続されている全顆であってもよく、図2に示されるのは一体的に接続されている全顆型大腿骨プロステーシスであり、該大腿骨プロステーシスの体積及び重量が大きく、しかも、該プロステーシスは、滑車軌跡の変化により大腿骨滑車を遮蔽し、膝蓋骨と摩擦することがあり、その正常の動作を保証するために人工膝蓋骨で置換する必要になることは多い。
【0038】
本発明において、好ましくは、前記の2つの分離している単顆は、それぞれ大腿骨内側単顆プロステーシス101及び大腿骨外側単顆プロステーシス102であり、すなわち、大腿骨内側単顆プロステーシス101及び大腿骨外側単顆プロステーシス102が互いに独立している。大腿骨内側単顆プロステーシス101が内側単顆大腿骨上に取り付けられており、脛骨高原部内側プロステーシス201のトップ面上に当接しており、大腿骨外側単顆プロステーシス102が外側単顆大腿骨上に取り付けられており、脛骨高原部外側プロステーシス202のトップ面上に当接している。
【0039】
大腿骨顆プロステーシスの大腿骨内側単顆プロステーシス101及び大腿骨外側単顆プロステーシス102は、全体的形状及び構成がほとんど類似しており、両者が鏡面対称に近似し、大腿骨内側単顆と大腿骨外側単顆とは、大きさ、形状がいずれも少し相違しているので、それらに対応する大腿骨内側単顆プロステーシス101及び大腿骨外側単顆プロステーシス102は完全に対称するものではない。大腿骨内側単顆プロステーシス101及び大腿骨外側単顆プロステーシス102が有する部材がほとんど一致しているので、ここでは大腿骨内側単顆プロステーシス101を例として説明し、図1及び図3に示すように、それが前方バックカバー11、固定針12、後方バックカバー13及び固定ピン14を含む。
【0040】
具体的には、図11及び図12に示すように、前記大腿骨内側単顆プロステーシス101の外形は、置換する部分の大腿骨の外形と一致し、その外部が円弧面状であり、前記大腿骨内側単顆プロステーシス101を大腿骨上に固定するために、前記大腿骨内側単顆プロステーシス101の両端にそれぞれ前方バックカバー11及び後方バックカバー13が設けられており、その中、前記後方バックカバー13の最上端が前方バックカバーの方向へ傾斜している。
【0041】
前記大腿骨顆プロステーシスを取り付ける際に、まず、凹むプロステーシス固定領域を大腿骨上に掘り、大腿骨顆プロステーシスを該領域内に取り付けた後、ちょうど該領域をいっぱいに埋めることができ、大腿骨を、前記プロステーシス固定領域を掘る前の状態に回復させる。すなわち、大腿骨内側単顆プロステーシス101は、プロステーシス固定領域に嵌め込むことによって大腿骨上に固定される。
【0042】
大腿骨内側単顆プロステーシス101及び大腿骨外側単顆プロステーシス102の内側には、いずれも固定針12及び固定ピン14がそれぞれ設けられており、大腿骨上にプロステーシス固定領域を加工する際に、さらに相応する位置に、海綿質骨中で盲孔を掘る必要があり、大腿骨内側単顆プロステーシス101又は大腿骨外側単顆プロステーシス102をプロステーシス固定領域に掛け止めた場合、固定ピン14が前記盲孔内に嵌め込まれる。
【0043】
同時に、海綿質骨上に、前骨皮質に近接する箇所にテーパー状溝/テーパー状孔が開設されており、その中、前記前骨皮質とは、前方バックカバー11と接触する骨皮質を指し、前記テーパー状溝/テーパー状孔の具体的な形状、数は、いずれも固定針12の形状、数と対応しており、大腿骨内側単顆プロステーシス101又は大腿骨外側単顆プロステーシス102をプロステーシス固定領域に掛け止めた場合、固定針12上の針先が該テーパー状溝/テーパー状孔内に挿入される。
【0044】
好ましくは、前記盲孔の孔径寸法が固定ピン14の外径寸法より少し小さく、固定ピン14を盲孔内に嵌め込む過程において、必ず盲孔の孔径を拡大させてしまい、該海綿質骨領域を押圧し、これにより緊密な固結を形成する。
【0045】
好ましくは、前記固定針12及び固定ピン14はいずれも1個又は複数個であってもよく、本願において固定針が2個、固定ピンが1個であることが好ましく、相応的に、前記盲孔及びテーパー状溝/テーパー状孔の数が固定ピン14及び固定針12の数と一致する。
【0046】
大腿骨上の、前記前方バックカバー11、後方バックカバー13と接触する領域が骨皮質領域であり、高い強度及び靱性を有する。本発明において、さらに好ましくは、前方バックカバー11が前記固定針12に隣接し、前方バックカバー11が骨皮質の外部に掛け止め、固定針12が海綿質骨中に挿入され、かつ内側から骨皮質上に突き当て、これにより骨皮質を強め、後方バックカバー13と共に窪み溝を形成してさらに大腿骨上に掛け止めて固定する。同時に、前方バックカバー11が前記固定針12と共に断面がV形となる溝状構造を構成し、大腿骨上の、研削加工された骨皮質が該溝状構造の底部に突き当てることとなる。前記固定針12及び前記断面がV形となる溝状構造と共に前方バックカバー11の骨皮質に対する固定を補助するこことにより、前方バックカバー11及び後方バックカバー13が大腿骨上に掛け止め可能となる。科学的かつ合理的に大腿骨顆プロステーシスと大腿骨との間の塊を堅固で確実にすることができ、長期にわたる検証に耐えることができる。
【0047】
1つの好ましい実施形態において、前記大腿骨顆プロステーシスの表面積寸法が小さいので、体積も重量も小さく、具体的には、前記大腿骨内側単顆プロステーシス101の外表面の面積は、大腿骨内側単顆の外表面積の約60%以下を占め、好ましくは40%~55%程度に達してもよく、本願では50%程度であることが好ましく、同様に、前記大腿骨外側単顆プロステーシス102の外表面の面積は大腿骨外側単顆の外表面積の約60%以下を占め、好ましくは40%~55%程度に達してもよく、本願では50%程度であることが好ましい。
【0048】
前記大腿骨内側単顆プロステーシス101及び大腿骨外側単顆プロステーシス102はそれぞれ大腿骨滑車の両側に位置しており、大腿骨内側単顆プロステーシス101及び大腿骨外側単顆プロステーシス102の置換はいずれも大腿骨滑車の正常動作に影響を及ぼさないので、大腿骨内側単顆プロステーシス101及び大腿骨外側単顆プロステーシス102の置換が膝蓋骨の正常動作及び取付位置に影響を及ぼさない。
【0049】
本発明において、好ましくは、前記脛骨高原部プロステーシスは、脛骨高原部内側プロステーシス201及び脛骨高原部外側プロステーシス202を含み、前記脛骨高原部内側プロステーシス201及び脛骨高原部外側プロステーシス202がそれぞれ脛骨高原部顆間隆起31の両側に設けられ、かつ大腿骨顆プロステーシス1の下方に位置しており、脛骨高原部プロステーシス2は脛骨高原部における内側高原部及び外側高原部を置換し、大腿骨顆プロステーシス1を支持する。図9に示すように、前記2つの脛骨高原部プロステーシスを放置、固定するために、脛骨又は脛骨高原部に対して一定の構造改造を行う必要があり、改造後の脛骨は脛骨高原部と称されることがある。図10に示すように、前記脛骨高原部プロステーシスの脛骨高原部内側プロステーシス201又は脛骨高原部外側プロステーシス202のみで置換する場合、改造後の脛骨が脛骨高原部であってもよい。
【0050】
図1に示すように、前記脛骨高原部プロステーシス2の上表面は、大腿骨との嵌め合いを容易にするために、内向き、下向きの凹みを有し、自然脛骨高原部上の内側高原部及び外側高原部に類似している。
【0051】
前記脛骨高原部プロステーシス2の断面が腰状又は類腰状となり、その外部輪郭は、掘られた部分の脛骨高原部と一致している。
【0052】
前記脛骨高原部プロステーシス2の断面寸法が脛骨高原部断面寸法の約1/3である。
【0053】
1つの好ましい実施形態において、図1に示すように、該人工膝関節は、脛骨高原部プロステーシス2を固定する位置決めピン5をさらに含み、前記位置決めピン5によって脛骨高原部内側プロステーシス201及び脛骨高原部外側プロステーシス202を脛骨上に固定する。
【0054】
好ましくは、前記位置決めピン5は脛骨高原部顆間隆起31を通り、その一方端の上部が脛骨高原部内側プロステーシス201中に取り付けられており、その他方端の上部が脛骨高原部外側プロステーシス202中に取り付けられている。
【0055】
1つの好ましい実施形態において、図7に示すように、前記脛骨高原部プロステーシス2の底部にプロステーシス割り溝23が開設されている。
【0056】
図9及び図10に示すように、前記脛骨高原部プロステーシス2の下方の脛骨頂部に脛骨割り溝32が開設されており、すなわち、前記脛骨高原部プロステーシスの下方の脛骨/脛骨高原部上に脛骨割り溝32が開設されており、脛骨割り溝32が脛骨高原部顆間隆起31を通り/差し込み、すなわち、前記脛骨高原部顆間隆起上に顆間隆起孔33が開設されており、顆間隆起孔33が貫通孔である。
【0057】
図4図5及び図6に示すように、前記プロステーシス割り溝23は前記脛骨割り溝32と対応し、顆間隆起孔33と共にリミット孔4を構成し、該リミット孔は前記位置決めピン5を取り付けるためである。
【0058】
好ましくは、前記リミット孔4及び位置決めピン5が脛骨高原部顆間隆起31を貫通し、脛骨高原部内側プロステーシス201と脛骨高原部外側プロステーシス202とを連通する。すなわち、前記リミット孔4の軸方向に、リミット孔は3つの部分を組み立ててなるものであり、そのうち、両端に位置する2つの部分は、いずれも上方のプロステーシス割り溝23及び下方の脛骨割り溝32によって取り囲んでなるものである。中間に位置する第3の部分は、完全に脛骨高原部顆間隆起31上に開設された顆間隆起孔33である。
【0059】
1つの好ましい実施形態において、位置決めピンの長さの値が脛骨高原部内側プロステーシス201又は脛骨高原部外側プロステーシス202上のプロステーシス割り溝23の長さの値より大きく、該位置決めピンの長さの値が1つのプロステーシス割り溝23の長さの値と脛骨高原部顆間隆起31の幅の値との和より小さい。これにより、脛骨高原部内側プロステーシス201又は脛骨高原部外側プロステーシス202をのみ取り付けた場合、該位置決めピンは、位置決め、固定の役割を満足することができ、脛骨高原部内側プロステーシス201及び脛骨高原部外側プロステーシス202を取り付けた場合、前記リミット孔4の長さが自然にそれに従って延長し、該位置決めピンは延長後のリミット孔内へさらに深く移動することができ、最後に位置決めピンが完全に脛骨高原部顆間隆起31を貫通し、位置決めピンの両端はいずれもプロステーシス割り溝23内に嵌め込まれ、脛骨高原部プロステーシス2に対するリミット及び固定の役割を果たし、なお、位置決めピンの存在により、脛骨高原部顆間隆起の両側に位置する脛骨高原部内側プロステーシス201及び脛骨高原部外側プロステーシス202を縦方向に位置決めることにより、置換後の膝関節大腿骨の生理的高さを置換前の膝関節大腿骨の生理的高さとほぼ一致させることができ、さらに、これに基づいて脛骨高原部内側プロステーシス201及び脛骨高原部外側プロステーシス202に対する固定を実行することにより、脛骨プロステーシスを合理的な位置に位置させ、術後に患者の感受性が良好であることを確保する。
【0060】
前記脛骨高原部プロステーシス2の脛骨高原部内側プロステーシス201又は脛骨外側単顆プロステーシス202をのみ取り付けた場合、前記リミット孔が脛骨高原部顆間隆起31内まで延伸し、前記脛骨高原部顆間隆起31を貫通せず、すなわち、この時の顆間隆起孔33が盲孔である。
【0061】
好ましくは、脛骨高原部顆間隆起31の幅の値がプロステーシス割り溝23の長さの値以下である。
【0062】
1つの好ましい実施形態において、図4図5及び図6に示すように、前記リミット孔4の断面形状が位置決めピン5の断面形状と一致している。該断面形状は、楕円形、正方形、台形、菱形、三角形、五角形、五角星形、六角形、八角形等の各種の形状であってもよく、各種の断面形状の位置決めピンのうち、三角形、正方形、台形及び多角形の使用効果がより良く、本発明では台形を選択することが好ましく、かつ、該台形の上辺がプロステーシス割り溝23中に位置し、下辺が脛骨割り溝32中に位置し、かつ、上辺長さが下辺長さよりも大きい。
【0063】
1つの好ましい実施形態において、前記位置決めピンの断面寸法がリミット孔の断面寸法と対応しており、両者が緊密に嵌め合いしており、好ましくは締まりばめ(tight fit)であり、これにより、位置決めピンが一定の深さまで嵌め込まれた後に進みにくくなり、係止され、この時、位置決めピンがちょうど所望の位置に停止し、好ましくは、該位置が真ん中の位置であり、両側へ偏らない。
【0064】
1つの好ましい実施形態において、前記リミット孔の断面寸法がリミット孔の断面寸法と対応しており、位置決めピンがリミット孔の相応する深さの位置まで嵌め込むことができ、前記位置決めピンの端面上に拡張ボルトを設置してもよく、位置決めピンが所望の位置、好ましくは真ん中の位置に位置する場合、前記拡張ボルトをねじって、位置決めピンをリミット孔中に係止し固定させることにより、位置決めピンの位置を安定させ、両側へ偏らないように確保する。
【0065】
1つの好ましい実施形態において、前記位置決めピンの断面寸法が均一で一定であるが、リミット孔の断面寸法が一定ではなく、前記位置決めピンの端面上に拡張ボルトが設けられており、位置決めピンがリミット孔上の、寸法が大きい側から進入し、位置決めピンが一定の深さまで嵌め込まれた後に進みにくくなり、これにより位置決めピンを所望の位置に停止させることができ、かつ、この時、前記拡張ボルトをねじって、位置決めピンをリミット孔中に係止固定することにより、位置決めピンの固定をさらに安定させる。
【0066】
本発明において、前記位置決めピンは1個又は複数個であり、各々の位置決めピンが1つのリミット孔と嵌め合い、位置決めピンが複数個である場合、リミット孔も複数であり、位置決めピンの数がリミット孔の数と一致するよう保持される。
【0067】
前記脛骨高原部プロステーシス2が脛骨前上端面の位置、膝蓋骨後側下方に配置されており、好ましくは、脛骨高原部プロステーシス2の設置位置は膝蓋骨の下縁と所定の距離が保持され、自然脛骨高原部と膝蓋骨との間の距離の値が該所定距離の値と等しい。脛骨高原部プロステーシス2で自然脛骨高原部を置換することにより、膝蓋骨自体に実質的な影響を及ぼさず、膝蓋骨の摺動にも影響を及ぼさず、術後に膝蓋骨の保留を確保することができる。本願に記載の自然脛骨高原部とは、人体内で自然に生長した脛骨高原部のことを指し、その中、自然とは、自然に存在していることを表す。
【0068】
1つの好ましい実施形態において、図7及び図8に示すように、前記内側単顆プロステーシス201及び脛骨高原部外側プロステーシス202は、巨視的構造上、ほとんど鏡面対称しているが、各々の部品の寸法の大きさが少し相違しており、完全に人体の生理的構造に従って模造されている。前記内側単顆プロステーシス201及び脛骨高原部外側プロステーシス202はいずれも上部ガスケット21及び下部ガスケット22を含み、上部ガスケット21と下部ガスケット22とがボルト、ベアリングピン等の方式によって固定されており、上部ガスケット21と下部ガスケット22とが縦方向に一定の相対変位を有し、その他の方向に相対移動できなくなっている。
【0069】
下部ガスケット22上に弾性部材6が設けられている。該弾性部材6によって大腿骨顆プロステーシス1から脛骨高原部プロステーシス2の上部ガスケット21へ伝達する衝撃力を緩衝し、上部ガスケット21に半月板に類似する機能を有させる。前記半月板は人体の膝関節において緩衝、振幅減衰の役割を果たす軟骨組織である。具体的には、大腿骨顆プロステーシス1から脛骨高原部プロステーシス2へ衝撃力が伝達されると、まず上部ガスケット21が該衝撃力を受け、かつ、上部ガスケット21を下へ移動させることにより、弾性部材6を押圧し、かつ、弾性部材6の反作用力が徐々に増大するにつれて、上部ガスケット21の、下へ移動する速度がますます小さくなり、それに掛かった衝撃力もますます小さくなり、最後に上部ガスケットが下部ガスケット上に押し付けられ、共に作用力を脛骨へ伝達することとなり、弾性部材6による緩衝を経て、該作用力に対応する脛骨への損耗が無視できる程度となり、これにより、半月板に類似する緩衝役割を果たし、半月板に類似する機能と称する。
【0070】
本願において、前記弾性部材6はバネを含んでもよく、エアバッグ、緩衝ガスケット等緩衝、振幅減衰の役割を果たして一定の弾性を有する部材を含んでもよく、それが上部ガスケット21の下方に設けられ、上部ガスケット21から伝達する衝撃力を緩衝することができればよく、具体的な構造特徴に応じて適切な具体的な放置位置を選択することができる。
【0071】
以下、バネを含む弾性部材を例として説明する。
【0072】
前記弾性部材6は下部ガスケット22を貫通してその上に固定されており、下部ガスケット22の上方に位置する一部の弾性部材6が上部ガスケット21の下表面を突き上げ、下部ガスケット22の下方に位置する一部の弾性部材6が柱状となっている。
【0073】
好ましくは、具体的には、図8に示すように、前記弾性部材6はスリーブ61とバネ62とを含む。
【0074】
その中、バネ62の下端がスリーブ61中に埋設されており、バネの上端が上部ガスケットの下表面に突っ張って設置されている。これにより、大腿骨顆プロステーシスから上部ガスケット21へ伝達する力がバネ62により緩衝された後に下部ガスケット22上に作用することとなる。
【0075】
本発明に係るプロステーシス割り溝23が前記下部ガスケット22上に開設されている。
【0076】
1つの好ましい実施形態において、前記スリーブ61は、脛骨3上に開設された孔室7中に嵌め込まれている。好ましくは、孔室の断面形状がスリーブ61の断面形状と一致しており、断面寸法も一致しており、両者は緊密に貼り合せることができ、これにより、脛骨と脛骨高原部プロステーシスとの相対位置を安定させ、相対変位しない。前記スリーブ61及び孔室7の断面形状は各種の形状、例えば多角形、四角形、三角形、楕円形、円形等であってもよく、本発明では該断面形状が円形であることが好ましい。
【0077】
前記スリーブは、バネを保護、放置する役割を果たすことができるし、脛骨高原部プロステーシス2を制限、固定する役割を果たすこともでき、これにより、脛骨高原部プロステーシス2全体の構造が簡単となり、脛骨高原部プロステーシスの放置固定過程を簡略化する。
【0078】
本発明において、好ましくは、前記バネ62は、終始、非伸び状態にある。
【0079】
1つの好ましい実施形態において、図8に示すように、前記スリーブ61の底部にはボルト63が設けられており、該ボルト63は回転するにつれて縦方向に移動することができ、前記スリーブ61の内部で、前記ボルトの頂部がバネ62の底部を突き上げ、これにより、ボルト63の縦方向における位置を制御することでバネ62の弾性の大きさを調節できる。ボルト63が縦方向に下方へ移動すれば、バネ62が押圧され、バネ62の弾性が大きくなり、ボルト63が縦方向に下方へ移動すれば、バネ62の押圧程度が小さくなり、バネ62の弾性が小さくなる。これにより、患者の年齢及び身体状況に応じて適切なバネ弾性を調節することができ、あるいはバネ伸縮と称することがあり、これにより、上部ガスケット21と下部ガスケット22との間の弾性を半月板の弾性と一致させ、上部ガスケット21と下部ガスケット22との全体の高さ/厚さを人工膝関節で置換されていない側の高さと一致させる。
【0080】
さらに、脛骨高原部内側プロステーシス201又は脛骨高原部外側プロステーシス202の上部ガスケット21及び下部ガスケット22全体の高さ/厚さをその前に置換された脛骨高原部外側プロステーシス202又は脛骨高原部内側プロステーシス201の高さと一致させることにより、2回分けて置換される脛骨高原部内側プロステーシス201及び脛骨高原部外側プロステーシス202同士の高さ、弾性が不一致である問題を解決し、段階的手術後の効果が良好となる。
【0081】
1つの好ましい実施形態において、前記スリーブ61の底部及び/又はボルト63近傍に目盛線を描き、該目盛線によってボルト63のねじり程度を直接に読み取ることができる。これにより、弾性部材6を放置する際にバネの伸縮を調節しやすくなる。
【0082】
好ましくは、前記バネ62は、頂部に設けられて上部ガスケット21と接触するためのトップブロックを含む。
【0083】
本発明において、前記バネ62は、金属、各種の高分子ポリマーなどの材料から作製することができる。
【0084】
本発明は、人工膝関節の使用方法を提供する。
【0085】
該人工膝関節は、上述した人工膝関節であり、該方法は下記のステップを含む。
【0086】
ステップ1:脛骨高原部プロステーシス2を放置するための空間を脛骨高原部上に開設し、好ましくは、該空間が1つのみである場合、脛骨高原部顆間隆起31の一方側に位置し、該空間が2つである場合、それぞれ脛骨高原部顆間隆起31の両側に位置し、かつ、該空間を開設する過程において、脛骨高原部顆間隆起31及びその上の十字靭帯を破壊することはなく、さらに好ましくは、膝蓋骨及びそれが位置する大腿四頭筋腱に損傷を与えることはない。
【0087】
ステップ2:脛骨上に脛骨割り溝32を掘って該脛骨割り溝32を脛骨高原部顆間隆起31まで延伸させ、脛骨高原部顆間隆起31上に顆間隆起孔33を形成し、脛骨上に孔室7を掘り、好ましくは、脛骨割り溝32及び孔室7の数が一定ではなく、1つ、2つ又は複数であってもよく、好ましくはいずれも1つである。
【0088】
ステップ3:脛骨高原部プロステーシス2上のスリーブを孔室7中に嵌め込み、同時に、プロステーシス割り溝23が脛骨割り溝32、及び顆間隆起孔33と共にリミット孔4を構成するように、プロステーシス割り溝23、脛骨割り溝32及び顆間隆起孔33の相対位置を調整する。
【0089】
ステップ4:位置決めピン5をリミット孔4中に取り付ける。
【0090】
ステップ5:位置決めピン5によって脛骨高原部プロステーシス2の高さ位置を固定し、骨セメントの注入量を調節することによって脛骨高原部プロステーシス2の高さをさらに固定する。
【0091】
好ましくは、ステップ3を実行する前に、スイベルボルト63によってバネ62の伸縮を調節し、その中、さらに弾性検出デバイスを用いてバネの伸縮/強度を検出し、複数の弾性部材6におけるバネの伸縮/強度の一致性を保証する。
【0092】
好ましくは、下記の選択可能なステップをさらに含む。
【0093】
ステップa:上部ガスケット21、下部ガスケット22及び弾性部材6を完全な脛骨高原部プロステーシス2となるように組み立て、好ましくは、前記脛骨高原部プロステーシス2は脛骨高原部内側プロステーシス201及び/又は脛骨高原部外側プロステーシス202を含む。
【0094】
ステップb:大腿骨顆プロステーシス1を取り付け、その中、大腿骨顆プロステーシスが大腿骨上に固定され、かつ、脛骨高原部プロステーシスの上方に位置し、脛骨高原部プロステーシスと接触する。好ましくは、まず、前記大腿骨上にプロステーシス固定領域を掘り、さらに大腿骨顆プロステーシスを該領域内に嵌め込み、かつ、大腿骨顆プロステーシスは特別の弧度及び前方バックカバー11と後方バックカバー13を有するので、大腿骨顆プロステーシスを大腿骨上に掛け止め、同時に、大腿骨顆プロステーシス上の固定針12を大腿骨の海綿質骨中に挿入し、大腿骨顆プロステーシス上の固定ピン14を大腿骨上に掘られた固定ピン14内に嵌め込むことにより、大腿骨顆プロステーシスと大腿骨との固定を実現する。
【0095】
本発明は、人工膝関節の置換方法を提供する。
【0096】
該人工膝関節は、上述した人工膝関節であり、該方法は下記のステップを含む。
【0097】
ステップ1:脛骨高原部プロステーシス2を放置するための空間を脛骨高原部上に開設し、好ましくは、該空間が1つのみである場合、脛骨高原部顆間隆起31の一方側に位置し、該空間が2つである場合、それぞれ脛骨高原部顆間隆起31の両側に位置し、かつ、該空間を開設する過程において、脛骨高原部顆間隆起31及びその上の十字靭帯を破壊することはなく、さらに好ましくは、膝蓋骨及びそれが位置する大腿四頭筋腱に損傷を与えることはない。
【0098】
ステップ2:脛骨上に脛骨割り溝32を掘って該脛骨割り溝32を脛骨高原部顆間隆起31まで延伸させ、脛骨高原部顆間隆起31上に顆間隆起孔33を形成し、脛骨上に孔室7を掘る。好ましくは、脛骨割り溝32及び孔室7の数が一定ではなく、1つ、2つ又は複数であってもよく、好ましくはいずれも1つである。
【0099】
ステップ3:脛骨高原部プロステーシス2上のスリーブを孔室7中に嵌め込み、同時に、プロステーシス割り溝23が脛骨割り溝32、及び顆間隆起孔33と共にリミット孔4を構成するように、プロステーシス割り溝23、脛骨割り溝32及び顆間隆起孔33の相対位置を調整する。
【0100】
ステップ4:位置決めピン5をリミット孔4中に取り付ける。
【0101】
ステップ5:位置決めピン5によって脛骨高原部プロステーシス2の高さ位置を固定し、骨セメントの注入量を調節することによって脛骨高原部プロステーシス2の高さをさらに固定する。
【0102】
好ましくは、ステップ3を実行する前に、スイベルボルト63によってバネ62の伸縮を調節し、その中、さらに弾性検出デバイスを用いてバネの伸縮/強度を検出し、複数の弾性部材6におけるバネの伸縮/強度の一致性を保証する。
【0103】
好ましくは、さらに下記の選択可能なステップを含む。
【0104】
ステップa:上部ガスケット21、下部ガスケット22及び弾性部材6を完全な脛骨高原部プロステーシス2となるように組み立て、好ましくは、前記脛骨高原部プロステーシス2は脛骨高原部内側プロステーシス201及び/又は脛骨高原部外側プロステーシス202を含む。
【0105】
ステップb:大腿骨顆プロステーシス1を取り付け、その中、大腿骨顆プロステーシスが大腿骨上に固定され、かつ、脛骨高原部プロステーシスの上方に位置し、脛骨高原部プロステーシスと接触する。好ましくは、まず、前記大腿骨上にプロステーシス固定領域を掘り、さらに大腿骨顆プロステーシスを該領域内に嵌め込み、かつ、大腿骨顆プロステーシスは特別な弧度及び前方バックカバー11と後方バックカバー13を有するので、大腿骨顆プロステーシスを大腿骨上に掛け止め、同時に、大腿骨顆プロステーシス上の固定針12を大腿骨の海綿質骨中に挿入し、大腿骨顆プロステーシス上の固定ピン14を大腿骨上に掘られた固定ピン14内に嵌め込むことにより、大腿骨顆プロステーシスと大腿骨との固定を実現する。
【0106】
以上、好適な実施形態を結合して本発明を説明しているが、これらの実施形態は例示的なものであり、説明のためのものに過ぎない。これに基づき、本発明に対して様々な置換及び改進を行うことができ、これらはいずれも本発明の保護範囲内に含まれる。
図1
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