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特許7011064ツールパス仮想化および最適化システム、方法および装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】ツールパス仮想化および最適化システム、方法および装置
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/4093 20060101AFI20220119BHJP
   G05B 19/4069 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
G05B19/4093 D
G05B19/4069
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020528331
(86)(22)【出願日】2018-12-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-18
(86)【国際出願番号】 US2018064330
(87)【国際公開番号】W WO2019113370
(87)【国際公開日】2019-06-13
【審査請求日】2021-09-29
(31)【優先権主張番号】62/595,505
(32)【優先日】2017-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】509224985
【氏名又は名称】ディーピー テクノロジー コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ペトルッツィ,シモーネ
(72)【発明者】
【氏名】ソナ,ジュリアーノ
【審査官】尾形 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-30101(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0308057(US,A1)
【文献】特開2018-151736(JP,A)
【文献】特表2009-521028(JP,A)
【文献】特開2008-117032(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/18-19/416
G05B 19/42-19/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータ支援製造(CAM)システムにおいて最適化されたツールパスを決定するための方法において、前記最適化されたツールパスは、ワークピースの一部に関連付けられたツールパスを含み、前記最適化されたツールパスは、コンピュータ数値制御(CNC)マシン用に構成され、前記方法が:
CNCマシンの切削ツールに関するパラメータのセットを決定するステップであって、前記パラメータのセットは、ピボット、速度、加速度、およびジャークを含み、前記決定はCNCマシンの切削ツールの運動学的特性とツールパスに基づいており、前記切削ツールの運動学的特性は、関連するツール端部、ツール長、およびツール軸に基づいている、ステップと;
マシン操作を実行するための切削ツールの位置決めおよび切削ツールの動きを決定するステップであって、前記切削ツールの位置決めおよび切削ツールの移動の決定は、前記CNCマシンに関連する決定されたパラメータのセットに基づく、ステップと;
前記CNCマシンと前記切削ツールの能力に基づいて、前記切削ツールの位置決めと切削ツールの移動の能力チェックを実行するステップと;
実行された能力チェックに基づいて、前記切削ツールの矛盾のない動きを有する最適化されたツールパスを決定し、前記パラメータのセットの1つ以上を調整するステップであって、前記最適化されたツールパスは、前記切削ツールのジャークが閾値より下であることに基づく、ステップと;
前記CNCマシンでマシン操作を生成するために前記決定された最適化されたツールパスを伝送するステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1の方法がさらに、
製造および部品仕上げの品質に関する正確な表示を提供するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1の方法において、前記ピボットは、ツール端部、切削ツールの長さ、および切削ツールの軸方向の傾きに基づいて決定されることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1の方法において、ピボットの変位は、現在のピボットと以前のピボットの差であることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項4の方法において、前記速度は、ピボットの変位とツール端部の変位の長さの比率に基づいて決定されることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項5の方法において、ツール端部の変位は、現在のツール端部と以前のツール端部の間の差であることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1の方法において、最適化のルールのセットは、ツール速度を最小化するルールのセット;ツールのジャークを最小化するルールのセット;およびツールの加速度を最小化するルールのセットのうちの1以上であることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1の方法がさらに、CNCマシンによって、前記生成されたマシン操作を実行するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項8の方法において、前記CNCマシンによって、前記生成されたマシン操作を実行するステップは、最適化されたツールパスの成功した決定に基づくことを特徴とする方法。
【請求項10】
プロセッサおよびアドレス指定可能メモリを具え、前記プロセッサが、
コンピュータ数値制御(CNC)マシンに関連するパラメータのセットを決定するステップであって、前記パラメータのセットは、ピボット、速度、加速度、およびジャークを含み、前記決定は、CNCマシンの切削ツールとツールパスの運動学的特性に基づいており、前記切削ツールの運動学的特性は、関連するツール端部、ツール長、およびツール軸に基づいている、ステップと;
マシン操作を実行するための切削ツールの位置決めおよび切削ツールの移動を決定するステップであって、前記切削ツールの位置決めおよび切削ツールの移動の決定は、CNCマシンに関連する前記決定されたパラメータのセットに基づく、ステップと;
前記CNCマシンと前記切削ツールの能力に基づいて、前記切削ツールの位置決めと切削ツールの移動の能力チェックを実行するステップと;
実行された能力チェックに基づいて、前記切削ツールの矛盾のない動きを有する最適化されたツールパスを決定し、前記パラメータのセットのうちの1以上を調整するステップであって、前記最適化されたツールパスは、前記切削ツールのジャークが閾値より下であることに基づく、ステップと;
前記CNCマシンでマシン操作を生成するために、前記決定された最適化されたツールパスを伝送するステップと、を行うように構成された装置。
【請求項11】
請求項10の装置において、前記プロセッサはさらに、
製造および部品仕上げの品質に関する正確な表示を提供するステップを行うよう構成されていることを特徴とする装置。
【請求項12】
請求項10の装置において、前記プロセッサはさらに、
最適化されたツールパスの成功した決定に基づいて、CNCマシンによって、前記生成されたマシン操作を実行させるステップを行うよう構成されていることを特徴とする方法。
【請求項13】
それぞれがプロセッサおよびアドレス指定可能メモリを有する仮想マシンツールパス最適化コンポーネントおよび位置決め動作コンポーネントを有するコンピュータ支援製造(CAM)システムにおいて;
前記位置決め動作コンポーネントプロセッサが:
コンピュータ数値制御(CNC)マシンに関連するパラメータのセットを決定するステップであって、このパラメータのセットは、ピボット、速度、加速度、およびジャークを含み、前記決定は、CNCマシンの切削ツールの運動学的特性とツールパスに基づいており、前記切削ツールの運動学的特性は、関連するツール端部、ツール長、およびツール軸に基づいている、ステップと;
マシン操作を実行するための切削ツールの位置決めおよび切削ツールの移動を決定するステップであって、前記切削ツールの位置決めおよび切削ツールの移動の決定は、CNCマシンに関連する決定されたパラメータのセットに基づく、ステップと
を行うように構成され;
仮想マシンツールパス最適化コンポーネントプロセッサは:
前記CNCマシンと切削ツールの能力に基づいて、前記切削ツールの位置決めおよび切削ツールの移動の能力チェックを実行するステップと、実行された機能チェックに基づいて、切削ツールの矛盾のない動きを有する最適化されたツールパスを決定し、前記パラメータのセットのうちの1以上を調整するステップであって、前記最適化されたツールパスは、前記切削ツールのジャークが最大閾値より下であることに基づく、ステップと;
前記ジャークの大きさのオーダーが前記最大閾値を超えたときに、ユーザへの前記ツールパスの危険点の通知を伝送するステップと;
前記CNCマシンでマシン操作を生成するために決定された最適化ツールパスを伝送するステップとを行うように構成されていることを特徴とするCAMシステム。
【請求項14】
請求項13のCAMシステムにおいて、
ツールパス仮想化および最適化システムを具え、当該ツールパス仮想化および最適化システムは、
CAMシステムに最適化されたツールパスを決定するように構成され、この最適化されたツールパスは、ワークピースの一部に関連するツールパスを含み、前記最適化されたツールパスはCNCマシン用に構成されていることを特徴とするCAMシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、そのいくつかの実施形態において、概して、CAMシステムによるマシンツールプログラム生成の最適化と、ツールおよびツールパスの運動学的特性を用いたCNCコントローラによるマシンツール軸制御とに関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ支援製造(CAM)システムは、コンピュータ数値制御(CNC)マシンツール用の一連の命令を生成する。そのような命令は、素材ブロックを切削して所望のモデル形状を得るために、複雑な経路に沿って切削ツールを駆動する。このような切削動作は、最初に素材ブロックが、CNCマシンの切削操作によって目標形状にフライス加工(milling)される製造サイクルとして知られている。
【0003】
通常、命令は切削操作ごと、または部品の特定の幾何学的特徴に適用できるシーケンスごとにグループ化され、特定の機械加工法と切削ツールが用いられる。概して、ほとんどのCAMソリューションは、部品のコンピュータ支援設計(CAD)モデルを使用して、切削操作すなわちワークピースと切削ツール間の相対移動(一般に「ツールパス」と呼ばれる)の作成を達成する。仮想化モデルを利用すると、実際の切削作業の前に、製造品質と部品の仕上げに関する正確な表示が可能になる。より高い精度で、ワークピースのガウジングや他の損傷を回避するように、ツールパスを計算することができる。さらに、フライス加工プロセスの初期段階、例えば、切削操作の前にシミュレーションで上記のような問題を検出した場合に、ユーザが、切削操作の前にそのような問題に気付くことができる。
【0004】
ツールパスは、原則として1の「ツールモーション」または一連の基本モーションであり、したがってマシンの幾何学形状やマシンの物理的限界とリンクしている。すべてのマシンにツールパスが困難な領域や方向があり、特定の状況では、マシンからツールパスを個別に生成できない場合がある。フライス工具の速さ(speed)、速度(velocity)、角度などの変更がすべて製造の品質に影響するため、多くのCNCパラメータを設定する必要がある。シミュレーションプロセスは、物理的な切削段階でマシンがCNCシステムとほぼ同じになる場合にのみ重要で役立つ。したがって、フライス加工シミュレーションにおいてオペレータを支援するために、3D環境でこのような要因を決定して表示する必要がある。
【発明の概要】
【0005】
複数の実施形態は、コンピュータ支援製造(CAM)コントローラおよびCNCコントローラを有するコンピュータ数値制御(CNC)システムを含み得る。いくつかの実施形態では、CAMコントローラは、CAMプロセッサやメモリによって、ピボット、速度、加速度、およびジャークのうちの1以上を決定するように構成され得る。さらなる実施形態では、CNCコントローラは、CAMによって、決定されたピボット、速度、加速度、およびジャークに基づいて、ツール速度、ツール送り、およびツール加速度のうちの少なくとも1つを制御するように構成され得る。さらなる実施形態では、CAMコントローラの少なくとも1つのパラメータは、CNCコントローラの少なくとも1つのマシンパラメータに対応する。すなわち、CNCコントローラは、ピボット速度ベクトルを決定することにより、さらにはツールパス戦略に関連するジオメトリ関連の運動学的データのリアルタイム視覚化を表示することにより、5軸ツールパスで最適化されるようにさらに構成され得る。
【0006】
コンピュータ支援製造(CAM)システムにおいて最適化されたツールパスを決定するための方法の実施形態が開示されており、この最適化されたツールパスは、ワークピースの一部に関連付けられたツールパスを含み、最適化されたツールパスは、コンピュータ数値制御(CNC)マシン用に構成されており、前記方法は:CNCマシンの切削ツールに関するパラメータのセットを決定するステップであって、前記パラメータのセットは、ピボット、速度、加速度、およびジャークを有し、前記決定はCNCマシンの切削ツールの運動学的特性とツールパスに基づいており、前記切削ツールの運動学的特性は、関連するツール端部、ツール長、およびツール軸に基づいている、ステップと;マシン操作を実行するための切削ツールの位置決めおよび切削ツールの移動を決定するステップであって、前記切削ツールの位置決めおよび切削ツールの移動の決定は、CNCマシンに関連する決定されたパラメータのセットに基づく、ステップと;CNCマシンと切削ツールの能力に基づいて、切削ツールの位置決めと切削ツールの移動の能力チェック(capability check)を実行するステップと;実行された機能チェックに基づいて、切削ツールの矛盾のない動き(consistent motion)を有する最適化されたツールパスを決定し、パラメータのセットの1つ以上を調整するステップであって、前記最適化されたツールパスは、切削ツールのジャークが閾値を下回ることに基づく、ステップと;CNCマシンでマシン操作を生成するために決定された最適化されたツールパスを伝送するステップとを含む。
【0007】
この方法はさらに、製造および部品仕上げの品質に関する正確な表示を提供するステップを含み得る。さらに、ピボットは、ツール端部、切削ツールの長さ、および切削ツールの軸方向の傾斜に基づいて決定されてもよい。一実施形態では、ピボット変位は、現在のピボットと以前のピボットの差であり、ツール端部変位は、現在のツール端部と以前のツール端部の間の差である。速度は、ピボット変位とツール端部変位の長さの比率に基づいて決定される。
【0008】
この方法はさらに、(1)ツール速度を最小化するルールのセット、(2)ツールのジャークを最小化するルールのセット、および(3)ツールの加速度を最小化するルールのセットのうちの少なくとも1つからなる最適化のルールのセットを有してもよい。この方法はさらに、CNCマシンによって生成されたマシン操作を実行するステップを含むことができ、最適化されたツールパスの成功した決定に基づくことができる。
【0009】
装置の実施形態は、プロセッサおよびアドレス指定可能メモリを含み、プロセッサは、コンピュータ数値制御(CNC)マシンに関連するパラメータのセットを決定するステップであって、パラメータのセットは、ピボット、速度、加速度、およびジャークを有し、前記決定は、CNCマシンの切削ツールとツールパスの運動学的特性に基づいており、切削ツールの運動学的特性は、関連するツール端部、ツール長、およびツール軸に基づいている、ステップと;マシン操作を実行するための切削ツールの位置決めおよび切削ツールの移動を決定するステップであって、前記切削ツールの位置決めおよび切削ツールの移動の決定は、CNCマシンに関連する前記決定されたパラメータのセットに基づく、ステップと;前記CNCマシンと切削ツールの能力に基づいて、前記切削ツールの位置決めと切削ツールの移動の能力チェックを実行するステップと;実行された機能チェックに基づいて、切削ツールの矛盾のない動きを有する最適化されたツールパスを決定し、前記パラメータのセットのうちの1以上を調整するステップであって、最適化されたツールパスは、切削ツールのジャークが閾値を下回ることに基づいている、ステップと;CNCマシンでマシン操作を生成するために、決定された最適化されたツールパスを伝送するステップとを行うように構成される。
【0010】
システムの実施形態は、それぞれがプロセッサおよびアドレス指定可能メモリを有する仮想マシンツールパス最適化コンポーネントおよび位置決め動作コンポーネントを有するコンピュータ支援製造(CAM)システムを有し;位置決め動作コンポーネントプロセッサは:コンピュータ数値制御(CNC)マシンに関連するパラメータのセットを決定するステップであって、このパラメータのセットは、ピボット、速度、加速度、およびジャークを有し、前記決定は、CNCマシンの切削ツールの運動学的特性とツールパスに基づいており、切削ツールの運動学的特性は、関連するツール端部、ツール長、およびツール軸に基づいている、ステップと;マシン操作を実行するための切削ツールの位置および切削ツールの動きを決定するステップであって、切削ツールの位置および切削ツールの動きの決定は、CNCマシンに関連する決定されたパラメータのセットに基づく、ステップとを行うように構成することができ;また、仮想マシンツールパス最適化コンポーネントプロセッサは:CNCマシンと切削ツールの機能に基づいて、切削ツールの位置決めと切削ツールの動きの機能チェックを実行するステップと、実行された機能チェックとパラメータセットの1つ以上の調整に基づいて、切削ツールの矛盾のない動きを有する最適化されたツールパスを決定するステップであって、この最適化されたツールパスは、最大の閾値を下回る切削ツールのジャークに基づいている、ステップと;CNCマシンでマシン操作を生成するために決定された最適化ツールパスを送信するステップとを行うように構成することができる。
【0011】
CAMシステムはさらに、ツールパス仮想化および最適化システムを含むことができ、ツールパス仮想化および最適化システムは、CAMシステムに最適化されたツールパスを決定するように構成することができ、最適化されたツールパスは、ワークピースの一部に関連するツールパスを含み、最適化されたツールパスはCNCマシン用に構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
複数の実施形態が、添付の図面において、限定としてではなく、例として示されている。
図1図1は、ツールパス仮想化および最適化システムの機能ブロック図である。
図2図2は、位置決め移動計算デバイスを有するCAMシステムのトップレベル機能ブロック図である。
図3図3は、製造サイクルを介してCNCマシンによって加工されるターゲットを示す。
図4図4は、素材と、切削操作によって達成すべき目標形状とを示す。
図5図5A~5Bは、切削ツールおよびカットすべきピースを示す。
図6図6は、様々なサイクル中にパスに沿って素材を段階的に切除する切削ツールを示す。
図7図7A~7Bは、カッター位置および3次元空間における切削ツールを示す。
図8図8は、5軸ツールパスと空間を移動するいくつかのカッター位置を生じる切削ツールの動きを示す。
図9図9は、切削ツールのカッター位置、切削ツール長およびピボット点を示す。
図10図10は、切削ツールのカッター位置および対応する速度ベクトルを示す。
図11図11は、ターゲット表面領域に対する切削ツールのカッター位置、およびツール位置とターゲットとの間の相互作用を示す。
図12図12A~12Bは、5軸ツールパスに対するツール端部およびピボットの表示例を示す。
図13図13A~13Cは、さらに同じワークピースモデルを示すが、いくつかのピボット速度ベクトルを示す。
図14図14は、関連する運動学的データの視覚化に基づいて決定されたピボット速度ベクトルを示す。
図15図15は、関連する運動学的データの視覚化に基づいて決定されたピボット速度ベクトルをさらに示す。
図16図16A~16Bは、速度ベクトル、加速度ベクトル、およびジャークベクトルを示す。
図17図17は、視覚的に表示されたピボット速度、加速度、およびジャークのいくつかの例を示す。
図18図18は、視覚的に表示されたピボット速度、加速度、およびジャークのいくつかの例を示す。
図19図19A~Dは、視覚的に表示されたピボット速度、加速度、およびジャークのいくつかの例を示す。
図20図20は、ツールパス仮想化および最適化システムによって決定されたジャークの視覚化をさらに示す。
図21図21は、ツールパス仮想化および最適化システムによって決定されたジャークの視覚化をさらに示す。
図22図22は、ツールパス仮想化および最適化システムによって決定されたジャークの視覚化をさらに示す。
図23図23は、ツールパス仮想化および最適化システムによって決定されたジャークの視覚化をさらに示す。
図24図24は、ツールパス仮想化および最適化システムによって決定されたジャークの視覚化をさらに示す。
図25図25は、ツールパス仮想化および最適化システムによって決定されたジャークの視覚化をさらに示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
コンピュータ支援製造(CAM)計算システムは、高度な自動化により、部品、ワークピース、マシンツールおよびその構成要素のシミュレーションバージョンから入手可能な情報を用いて、正確で効率的な切削操作またはマシンタスクの指示を生成する。ツールパス仮想化および最適化システムおよび計算デバイスの実施形態は、ツールパスのシミュレーションおよび視覚化を容易にすることができ、ここでフライス盤のツールパスは、切削ツールで定義される各ツール運動を含む/示す。
【0014】
本願において、速度、加速度、およびジャークは、時間、時間、または時間の次元を有する長さの比率の代わりに、長さ、長さ、または長さの次元を有する長さの比率として参照される。サイクルは、ワークピースに沿って切削ツール(CT)の矛盾のない(consistent)動作を生成する、幾何学的、論理的、技術的な規則の連続した順序のセットとして定義することができる。モーションタイプは、サイクルを互いに区別するために使用される。例えば、3軸サイクルでは、CTの傾きは一定であり、このサイクルを記述するのに単一点の動きで十分である。4軸サイクルでは、CTの傾きは1自由度で変化し得る。5軸サイクル(現在は最も複雑)では、CTの傾きは実質的に3D空間の任意の方向であり(フライス盤の物理的限界と矛盾しない)、2つのパラメータによって制御される:(1)3D基準点(通常ツール端部、TEと呼ばれる)と;(2)3Dユニットの基準方向(通常、ツール軸、TAと呼ばれる)である。
【0015】
次に、ペア(TE、TA)がカッター位置(CL)を規定し、順序付けられたCLのシーケンスが5軸ツールパスを形成する。数学的形式では、CLは以下のように表される。
【0016】
ツールパス仮想化および最適化システムおよび計算デバイスの一実施形態では、速度、加速、およびジャークは、CTの特定ポイントの相対位置の関数として定義される量とみなすことができる。ピボット、速度、加速度、ジャークが問題となる5軸サイクルのツールパス最適化のために視覚化方法を実装することができる。ジャークが最大値を超える可能性のある場面に対して閾値を決定してもよく、例えば、そのような大きなジャーク値が発生したピボット点の長い矢印で示されている。本願の実施形態は、ジャーク値の大きさのオーダーが最大閾値を超えたときに、ツールパスの危険点をユーザに通知できるようにするものであり、この閾値は、特定のフライス盤および動作を維持するためのフライス盤の能力に基づいて決定され得る。
【0017】
一部の実施形態では、CAM計算システムは、部品、ワークピース、および特にツールパス最適化におけるマシンツールのシミュレーション版を生成するための仮想マシンツールパス最適化コンポーネントを具える。特に、マシンの運動学やマシンのコントローラ仕様などの情報を有する仮想マシンツールモデルを介して、切削ツールの動きを最適化して信頼性を高め、ジャークが低減された滑らかな動きを生成し、ここで滑らかな動きはユーザの希望と装置の能力に依存する。仮想マシンツールパス最適化コンポーネントのいくつかの実施形態は、例えば、ツールパスの仮想化および最適化によって特徴付けられるマシンツールの切削および/または非切削マシンプロセス中の切削ツールの位置および動きを決定する。
【0018】
CAMシステムの実施例は、最適であって、ワークピースまたはマシンツールの構成要素やその周辺での望ましくない接触や速度をもたらさない位置決め動作を生成するために、本書に開示される仮想マシンツールパス最適化コンポーネントを具え得る。いくつかの実施形態では、切削ツールによる位置決めおよび移動は、切削ツールのピボット、速度、加速度、およびジャークに依存し、これらのパラメータは、ツールパスをさらに最適化するためにツール端部、ツール長、およびツール軸に依存し得る。マシンのシステムとオペレータは、操作中の切削ツールの速度と加速度を考慮する必要がある。
【0019】
したがって、仮想ツールパス最適化コンポーネントがこれらのパラメータを決定することができ、得られるツールパス用のパラメータが、仮想マシンツールパス最適化コンポーネントによってユーザまたはマシンオペレータに伝達され得る。CAMシステム内で、仮想マシンツールパス最適化コンポーネントは、これらの情報をツールパス最適化プロセスで使用される位置決め移動計算デバイスに送信することもできる。一部のCAMシステムでは、位置決め移動計算デバイスを介して、マシンツールの動きと他の構成要素の仮想表現を利用することができる。いくつかの実施形態では、マシンツールの動きの仮想モデルをCAMシステムが使用して、例えば、マシン軸の制限内で、所望のマシンのためにより適切で、同時に衝突やワークピースや機械部品との望ましくない接触がない操作を生成することができる。さらに、仮想モデルは、ターゲット表面の微分特性により準拠するように、ツールと動きの形状特性を提供し得る。さらに、仮想モデルを使用して、マシン加工操作をシミュレートし、マシンと切削ツールの機能内で動作する正確で衝突のない結果を保証することができる。
【0020】
本実施形態の態様は、ツールパスの凹面の変化に基づいて、切削ツールの形状および微分特性を決定することができる。ターゲット表面の凹面の変化が切削に危険なポイントを引き起こす可能性があることが示され、本実施形態によれば、システムは、仕上げ品質を低下させる、大きな加速度や大きなジャークを特定および図示/表示することができる。ツールパスは、製造されるべき部品のターゲットモデルの形状のすべての特徴を考慮して計算されるため、通常、このような形状はCADファイル内の表面の数式によってCAMソフトウェアに提供される。このような数式により、部品表面のいわゆる微分特性を評価することができる。すなわち、微分特性は、例えば微分係数の変化率など、微分係数や微分法の数学的概念に依存する。これらの微分特性の中で、部品表面の凹凸の変化は、経験的にツールパスに悪影響を及ぼし、ツールパスの特定ポイントで大きな加速度やジャークを生じることがある。
【0021】
ツールパス仮想化および最適化システムのこの実施形態は、CAMシステムとエンドユーザに、そのような大きな加速度および/またはジャークの早期検出(例えば、シミュレーション段階であって、ツールパスをCNCマシンに供給し製造する前)のためのツールを提供する。大きな加速度やジャークは通常、仕上がりの品質を低下させるため、ツールパスの仮想化および最適化システムは、ユーザがツールパスの計算に関係するパラメータ(技術的または幾何学的など)を変更して、より滑らかな特性、すなわちジャーク/速度/加速度の小さな新しいツールパスを再計算できるようなツールを提供する。ツールパス仮想化および最適化システムの実施形態は、操作のリアルタイム情報を提供するCAMおよび/またはCNCマシンコントローラで実施することができる。
【0022】
ピボット、速度、加速度、およびジャークの決定は、仮想マシンツールパス最適化コンポーネントによって、また一部は切削ツールの切削ツール長に基づいて行われ、すべての切削ツールには関連する切削長の値を有する。さらに、ピボット、速度、加速度、ジャークは、さらにツール端部(TE)とツール軸(TA)に基づいて決定され得る。すべての方向/位置/傾きは、固定または直行する参照フレームに関して評価される対象となり、これは共同で信頼性があるか、ターゲットと一致する場合がある。一実施形態では、切削ツールの切削長CTは、TEおよびTAに依存しない絶対値であり得る。ただし、CT、TE、およびTAの長さは、CTのいくらかの傾斜が他よりもツールの係合につながる可能性があるという意味で相互に関連し得る。すなわち、切削長は、切削能力を有するツールの部分のカッターに沿った延長部として定義することができる。
【0023】
CAMシステムの一実施形態において、仮想マシンツールパス最適化コンポーネントは、切削ツールが部品の特定の幾何学的特徴に材料を除去する操作として定義される機械加工操作や、加工操作の一部、および任意選択的に非切削操作を含むツールパス要素の特定のグループといった操作の合間または操作中に、ピボット、速度、加速度、およびジャークを決定することができる。いくつかの実施形態では、切削ツールの動きの仮想化は、ツール端部、ツール軸、およびピボット点のそれぞれにおける切削ツールの各運動軸の定義を含み得る。この仮想化は、各軸の位置、速度、および加速度の制限も提供する場合があるため、位置決め移動計算デバイスは、その軸での切削ツールに利用可能な最も適した軸と速度を選択することができる。同様に、本実施形態の別の態様では、仮想マシンコントローラは、マシンツールモデルが、仮想マシンツールパス最適化コンポーネントから受信したデータに基づいて、実世界の対応物を正確にエミュレートできるようにする。次に、仮想マシンコントローラは、CAMシステムで用いられるマシンツールモデルを提供する。一実施形態では、仮想化および最適化は、自動的かつ動的に決定され、ユーザに表示され、および/またはCAMプログラム用に作成される。
【0024】
一実施形態では、仮想マシンツールパス最適化コンポーネントは、ピボット変位とツール端部変位の長さの比である速度を特定することができ、ここでピボットは、ツール端部と、切削ツール長さと、切削ツールの軸の傾きとに基づいて決定することができる。この実施形態では、ツールベクトルは、単位ノルムベクトル、すなわちツール軸を用いて正規化することができ、ツール軸の傾きを表すベクトルは正規化される。したがって、ピボットとツール端部の相対速度は数値の形式となり、この速度は正の値となる。速度が特定されると、仮想マシンツールパス最適化コンポーネントは、各速度値を3D空間の方向に関連付ける。この方向は、図示するように、ツール端部とツール軸のベクトルのセットに基づく。したがって、仮想マシンツールパス最適化コンポーネントは、ツールの運動学的特性とフライス加工で用いられるツールパスに依存するパラメータのセットを決定する。いくつかの実施形態では、これらのパラメータは、同じ3D環境でフライス加工シミュレーションの結果が報告され、シミュレーションで示される図に視覚的に表示されてもよい。すなわち、このような決定された情報を表示する重要性は、ツール軌道に直交するベクトルで具体化され、可変長を有するこれらのパラメータが、製造および部品仕上げの品質に関する正確な指標を提供できるという事実にある。さらに、決定された情報は、CNCマシン軸の動きの滑らかさに関する指標を提供し、それによってシステムはこれらの指標を用いて、特にツールの動きにジャークがある場合、ジャークが閾値よりも大きく切削に問題が生じる可能性がある場合にサイクルを再計算し、ジャークを設定された制限内の小さい値にすることができる。
【0025】
図1は、CAMシステム100の実施形態を示す機能ブロック図であり、このシステムは、仮想マシンツールパス最適化コンポーネント110と、位置決め移動計算デバイス120またはコンポーネント、例えば、リンク移動計算機と、仮想マシンツールシミュレータ130とを具え、これらはそれぞれがコンピュータ数値制御(CNC)マシンツールに関連する。位置決め移動計算デバイス120は、CAMシステムから、CNCマシンの仮想モデル160を受け取り、この仮想モデル160は、マシンツールの表現およびマシンツールコンポーネントのセットを含んでおり、ここでマシンツールの仮想表現は、CNCマシンツールに関連する運動学的制約のセットをさらに含み得る。一実施形態では、仮想マシンツールシミュレータ130は、仮想モデル160から入力信号を受け取る。一実施形態では、各位置決め命令またはツール移動は、マシンツールの特定の運動学、ならびにそのマシンツールのコントローラに、そして任意選択でワークピースに基づいて構成することができる。仮想マシンツールシミュレータ130から受信され、位置決め移動計算デバイス120にフィードバックされる追加情報に基づいて、仮想モデル160を変更し、反復ループで更新することができ、システムの状態がその履歴に依存するヒステリシスの生成に影響を与える。
【0026】
図1のCAMシステム100は、マシンの運動学的定義およびマシンツールのコントローラの論理記述を含む仮想マシンモデル160を利用することができ、それにより、仮想マシンツールシミュレータ130は、仮想マシンツールパス最適化コンポーネント110に入力を送信または提供することができる。仮想モデル160の実施例は、例えば、マシンツール、固定具、部品、素材、ツール、およびホルダを含む、部品の製造プロセスで使用され得る物品の固体表現を含み得る。位置決め移動計算デバイス120は、仮想マシンツールシミュレーションを仮想マシンツールシミュレータ130に送信し、この仮想マシンツールシミュレーションは、仮想マシンツールパス最適化コンポーネント110によって決定されたパラメータに基づいており、このパラメータは、切削ツールに関連するあらゆるジャーク動作を含む。したがって、ピボット速度およびピボット加速度ベクトルを用いて、切削ツールのジャーク動作を特定および表示して、最適化された切削ツールの動き190を決定することができる。すなわち、各切削ツールの動作やマシンの位置決め動作は、マシンツールの仮想モデルに基づいて計算され、CAMシステムによって自動的または動的に最適化され得る。さらに、ユーザディスプレイ170を介して、ツールパス最適化の視覚化をマシンオペレータまたはユーザに提示することができ、それによりマシンオペレータはユーザパラメータ180を提供して、切削ツール190の動きをさらに最適化することができる。ユーザは、ユーザパラメータ180を位置決め移動計算デバイス120に、またはいくつかの実施形態では仮想マシンツールパス最適化コンポーネント110に提供することができる。
【0027】
図2は、仮想マシンツールパス最適化コンポーネント200を有する位置決め移動計算デバイスの実施形態を有するCAMシステムの例示的なトップレベル機能ブロック図を示す。この動作環境は、中央処理装置(CPU)などのプロセッサ224;ルックアップテーブル、例えばアレイなどのアドレス指定可能メモリ227;外部デバイスインターフェース226、例えば、任意のユニバーサルシリアルバスポートおよび関連する処理、および/またはイーサネットポートおよび関連処理;出力装置インターフェース223;および、オプションのユーザインターフェース229、例えば、ステータス光のアレイ、および1以上のトグルスイッチ、および/またはディスプレイ、および/またはキーボードおよび/またはポインタマウスシステムおよび/またはタッチスクリーンを具える計算デバイス220として示されている。任意で、アドレス指定可能メモリは、例えば、フラッシュメモリ、SSD、EPROM、および/またはディスクドライブおよび/または別の記憶媒体であってもよい。これらの構成要素は、データバス228を介して互いに通信することができる。アプリケーションの実行をサポートするなどのオペレーティングシステム225は、ツールパスの仮想化と最適化のステップを実行して、受信した仮想モデルに基づいて切削ツールの最適化された動きを決定するように構成可能なプロセッサ224を含み、この仮想モデルは、仮想マシンツールパス最適化コンポーネントによって決定され、機械加工設定のオブジェクトのセットに基づいて決定される、ピボット、速度、加速度、およびジャークのパラメータを含む。
【0028】
図3~25は、そのようなパラメータが決定され、CAMシステムでツールパスの仮想化と最適化の方法を提供するために用いられるプロセスを図示し説明するものである。一部の実施形態では、決定されたピボット、速度、加速度、およびジャークは、仮想マシンのツールパス最適化コンポーネントによってチェックおよび検証され得る。この検証により、生成された命令がCNCマシンで確実に機能することとなり、これにより、非切削の時間が大幅に増加したり無駄な時間が発生したりする望ましくないオンマシンでの検証を回避することができる。
【0029】
図3は、所望のモデル形状を得るために必要な製造サイクルを介してCNCマシンによって加工されるターゲット320を示す。CNCマシンは、素材のブロックを切削することによって所望のモデル形状を得るべく、複雑な経路に沿って切削ツールを駆動するCAMソフトウェアからの命令を受け取る。そのような切削操作は製造サイクルとして知られており、以下で詳述する。図4は、素材と、切削操作によって達成されるべき目標形状とを一緒に示す。さらに、初期素材410の材料と、CNCマシンでの前述の切削操作によって得られるターゲット420の形状が図示されている。
【0030】
図5A~5Bは、切削ツール(CT)520と切削されるべきピースを示しており、ここでCT520は素材510を切削するがターゲットモデル515までではなく、それは粗い材料を除去した後に素材から最終形状を削り出す過程として残される。いくつかの実施形態では、CADモデルを使用して、および/またはCADモデルに基づいてサイクルが決定および設計され、このサイクルは、加工対象のピースに沿ったCTの矛盾のない動きを生み出す、幾何学的、論理的および技術的ルールの順序付けされたセットを表す。このモデルは、サイクルと共に、コンピュータのデジタルファイル(CADファイルなど)に保存される。一実施形態では、動きのタイプが、1のサイクルを別のサイクルと区別する。例えば、上述したように、3軸サイクルではCTの傾きは一定であり、単一点の動きでサイクルを記述するのに足りる。一方、4軸の実施例ではCTの傾きは1自由度で変化し、さらに5軸サイクルではCTの傾きは実質的に3D空間の任意の方向が想定される。他の実施形態では、CTが固定に保持される場合は、ワークピースに動きと自由度が割り当てられてもよい。すなわち、配向可能なスピンドルマシンの例ではCTが方向付けられるが、配向可能なテーブルマシンではワークピースが傾けられてツールは空間の固定方向に整列したままとなる。したがって、切削ツールとワークピースとの間の相対的な傾き(どの方法でも切削ツールの配向と呼ばれる)が考慮される。
【0031】
図6は、様々なサイクル、すなわちツールパスの間に経路に沿って素材を徐々に削り出す切削ツール520を示し、これらのツールパスはCAMソフトウェアによって生成され得る。以前に定義したように、さまざまなサイクル中にCT520が辿る幾何学的経路は、ツールパスとして知られる。別の言い方をすれば、ツールパスは、ワークピースの所望の幾何形状を生成するために、CT520の先端530が辿る空間を通る幾何学的経路である。先端の位置は、その点に付された方向矢印に関連付けられる(各先端位置に、矢印が関連付けられる)。
【0032】
図7A~7Bは、カッター位置(CL)およびX、Y、Z軸を有する3次元空間(正規直交基準フレーム)における切削ツールを示す。図7Bは、例示的なツール端部(TE)720(黒丸で示す)および矢印の方向に丸から出ているツール軸(TA)730(二重の黒い実線で示す)を示す。CLは、TEとTAに基づいて決定することができ、5軸において、幾何学的属性のセットは、基準点と単位ノルム方向を含み得る。すなわち、このペア(TE、TA)が、5軸ツールパスを構成するカッター位置および複数のカッター位置の順序付けられたシーケンス(例えば、10から10の範囲)を定義するために使用される。ツールの動きは、速度、送り速度、スピンドルパラメータなどの運動学的データによっても表される。ただし、本実施形態の異なる態様では、速度、加速度、ジャークなどの用語が、CTの特定の点の相対位置の関数として定義される量として、例えば、相対位置間の距離の比として用いられる。
【0033】
図8は、CTの動きが複数のカッター位置(CL)810、820、830、840を提供し、TEおよびTAが時間的および空間的に漸進的に移動する5軸ツールパスを示す。図示のように、切削ツールが位置820から位置830に移動する際の、他の中間カッター位置840が示されている。切削ツールは、第1のCL(または位置)810から第2のCL820に、そして最終的に第nのCL830に進むが、(有限の任意の)数の中間CL840を通過するように示されている。上記のように、CAMソフトウェアによって生成されたツールパスは、後の段階でCNCマシンで使用され得る。すなわち、CLの順序付けられたシーケンスとして定義されるツールパスの複雑さに基づいて、図中のnの値は、数単位から10の範囲となり得る。
【0034】
図9は、空間を移動する同じCLを示すが、各CLに関連して、CL1、2、…nを示すことに加えて、さらに切削ツール長(CTL)950を示す。切削ツール長は正の値(切削機能を実行できるツールの軸部分を表す)であり、TEとTA(単位ノルムベクトル)が前述のように図8に示されているが、ここでは切削長さの測定値(またはCTL)と示されている。ピボットが、CTLに基づいてCTの各CLについて決定される。したがって、各CTL値はTAを調整するために使用され、次にTEに加えられて各CLのピボット、例えばPivot、Pivot、...、Pivotが決定される。CTは関連する(正の)切削ツール長CTL値を有し、CTLはTEからTAに沿って測定された長さであり、ピボットと称されるCLの別の特徴点をもたらす。ピボットの数学的表記は、TE+CTL*TAで表され、j番目のCLの場合、Pivot=TE+CTL*TAであり、J=1、2、...nである。
【0035】
図10は、CTおよびCTLのカッター位置を、各ピボットの速度の決定に使用できる固定値として示す。したがって、速度スカラー値は、2つの隣接するピボット間の差分ベクトルのモジュール(例えば、|P-P|)と、同じ2つの隣接するツール端部の差分ベクトルのモジュール(例えば、|TE-TE)に基づく。すなわち、切削ツールの特定のカッター位置の速度(常に正の値)は、本図に示される数式例にあるように、次の位置のTEと現在位置のTEに沿って、次の位置の決定されたピボットと現在位置のピボットとに基づく。
【0036】
CTLは固定の定数の正の値であるため、j番目のCL(TE、TA)は(TE、Pivot)または単に(TE、P)と記述することもできる。TE、Pは3Dポイントであり、TEからTEj+1の3Dセグメントを|TEj+1-TE|(PおよびPj+1の場合も同様)で示す。さらに、スカラー量は最初のペア(TE、P)に関連付けられる。
=|P-P|/|TE-TE|ここで、スカラー値Vは、対応するTEに関するPivotの速度である。
より一般的には、以下が定義される。
対応するTE(j=l、2、..n-l)に対するPivotの速度 V=|Pj+1-P|/|TEj+1-TE
【0037】
図10はさらに、CTおよびCTLのカッター位置を示し、ここで各CLにおける速度1010、1020は、3D空間における方向に関連付けられている。この方向は、ωおよび単位ノルムベクトルとして表すことができる。方向は、現在のCLでのTAとともに、後続の各CLおよび現在のCLでのTEに基づいて決定することができる。次に、ツール端部に対するピボットの相対変位の特性を表すか提供するピボット速度ベクトルのセットを決定することができる。
【0038】
一部の実施形態では、システムのユーザディスプレイが、前に定義された数値V1、V2、...Vnを、それぞれ3D空間内の方向に関連付けるためにグラフィック表示してもよい。方向ωjは値Vjとωj=Ωj/|Ωj|のように関連付けられ、ここでΩj=(TEj+l-TEj)∧TAj、j=l、2、...n-1(記号∧は3Dベクトル間の外積を表す)、ωjは単位ノルムベクトルとして定義することができ、外積に含まれる2つのベクトルが平行である場合、ωjはゼロベクトルとして定義される。
【0039】
「Pj」に付されたベクトルWj=Vj*ωjの長さは、スカラー値Vjと等しくなる。これは、ツール端部TEjに対するピボット点「Pj」の相対運動の視覚的な測定値として表示される。ベクトルW1およびW2が、それぞれ「P1」、「P2」に付されている。Wjは「ピボット速度ベクトル」と呼ぶことができるが、厳密な物理的な意味での速度ではなく、ツール端部に対するピボットの相対変位の特性を表している。Ωj=(TEj+1-TEj)∧TAjの選択は、Wjが「TAj」に直交することを保証することに留意されたい。
【0040】
図11は、ターゲット表面領域に対する切削ツールのカッター位置、およびツール位置とターゲット間の相互作用を示しており、切削ツールの切削動作によって、素材が切削ツールで連続的に削られた後にターゲット表面1130が作成されることが示されている。
【0041】
図12A~12Bは、5軸ツールパスに対するTE1210およびピボット1220の例示的な表示を示す。図12Aは、5軸ツールパスに対するツール端部および関連するピボットの集合を示す。図12Bは、同じツールパスを、ツール軸ベクトル1230を示すベクトルとともに示す。これらの図では、切削ツールは表示されていないことに注意されたい。
【0042】
図13A~13Cは、同じワークピースモデルをさらに示すが、多数のピボット速度ベクトル1310がより詳細に示されている。図13Bは、図13Aの円で囲まれた部分の拡大版を示す。また、図13Cは、ピボット速度ベクトルを示す矢印間の長さの差に関するxy軸の断面図を示す。ツールパスの仮想化および最適化システムの一態様では、ピボット速度ベクトルは、CTによって生成された動作をハイライトし、ツールパスシミュレーション段階中にそのような動作を検出するツールを提供する(ユーザはそのような相対運動を避けるために計算されたツールパスのパラメータをまだ変更できる)。一実施形態では、隣接する矢印間の長さの差は、ツール端部に対するピボット点の矛盾のない相対的な動きを示し得る。つまり、本システムは、一般にフライス盤の回転軸の運動学に悪影響を及ぼし、完成した切削モデルの最終品質を損なう可能性がある相対運動が発生するツールパスのゾーンを検出する方法を提供する。したがって、図13A~Cのピボット速度ベクトル1310は、そのような動きを強調し、そのような動きを検出する方法を提供することができる。
【0043】
図14、15は、関連する運動学的データの視覚化に基づいて決定されたピボット速度ベクトル1410を示し、ツール軸ベクトル1420も図14に示されている。さらに図14を参照すると、ワークピースが不等角投影図で示され、図15では同じワークピースが正射投影図またはx-y断面図で示されている。不等角投影図では、隣接するピボット速度ベクトル間の長さの差とともに、ツール軸の矢印が示されている。
【0044】
本実施形態の態様は、ツールパス仮想化および最適化システムに必要なさらなる属性を開示する。ピボットの加速度は、後続および現在の切削位置の速度とTEに基づいて決定され得る。すなわち、CTの特定のCLの加速度は、次の位置の決定された速度と現在位置の速度(例えば、Vj+i-V)とともに、現在のTEの次の位置の直後のTE、および現在位置におけるTE(例えば、TEj+2-TE)に基づき得る。これが以下に示す例示的な数式で表される:
=(Vj+i-V)/(|TEj+2-TE|)ここで、A=対応するTEに対するPivotの加速度
=(Aj+i-A)/(|TEj+3-TE|)ここで、J=対応するTEに対するPivotのジャーク
【0045】
TEの差は、差分ベクトルの係数として表すことができる。さらに、ピボットのジャークは、後続の位置の決定された加速度と現在位置の加速度(例えば、Aj+1-A)に基づいて、さらに現在位置のTEと現在位置の次の位置の直後のTE(例えば、TEj+3-TE)に基づいて決定される。前述のように、分母は時間、時間、または時間の代わりに長さ、長さ、または長さの次元を有するので、これらは物理的な意味での加速度やジャークではない。TEの運動の長さは、時間変数の役割を果たすことを目的としている。また、AおよびJは、その分子が符号を変更できるため、負である場合があることに留意されたい(常に負ではない分母ではない)。
【0046】
さらに、ωj(以前に定義)を用いることにより、3D空間の方向を、ベクトル定義によってAとJに関連付けることができる:
Qj=Ajωj、ここでQjの長さはスカラー値Ajと等しい。これは、ツール端部TEjに対するピボット点Pjの相対加速度の視覚的測定値として表示される(Pjが付される)。
【0047】
Rj=Jjωj、Rjの長さはスカラー値Jjに等しい。これは、ツール端部TEjに対するピボット点Pjの相対的なジャークの視覚的測定値として表示される(Pjが付される)。
【0048】
図16A~16Bは、各CL、1,2,3,...nにおける速度ベクトル、加速度ベクトル、およびジャークベクトルを示す。一部の実施形態では、速度および加速ベクトルがツールパス仮想化および最適化システムによって用いられるため、ジャークは表示から省略されてもよい。すなわち、ツールパス仮想化および最適化システムは、マシンがデータを受信し、ワークピースの物理的な切削/機械加工を開始するCNC段階の前または最中に(例えば、リアルタイムで)そのようなデータを利用することができる。
【0049】
本実施形態は、ツールパス仮想化および最適化システムの機能に対処する。提供されている実施例のいくつかの態様は、速度、加速度、およびジャークベクトルのそれぞれの数値に基づいて仮想化モデルがどのように影響を受けるかに関する。例えば:
|TEj+1-TE|がゼロであれば、|Pj+1-P|はゼロでない(そうしないと、CLがダブルで生成され、サイクルツールパスには役に立たなくなる)。そのような場合、Vjには規定の最大フルスケール値VjMAXが割り当てられる。
【0050】
|TEj+1-TE|がゼロの場合、|TEj+2-TE|もなり得る。このような場合、Vと同じ規則を想定すると、Aには規定の最大フルスケール値AjMAXが割り当てられる。|TEj+2-TE|がゼロで、|TEj+1-TE|がゼロでない場合、CAMシステムによって通常回避されるサイクルツールパスの180°ターンに対応する。そのような場合、|TEj+2-TE|のゼロ値は、ゼロでない|TEj+1-TE|に便利に置き換えることができる。
【0051】
|TEj+1-TE|と|TEj+2-TE|の両方ともゼロの場合、|TEj+3-TE|もなり得る。このような場合、VjおよびAjと同じ規則を想定すると、Jjには、規定の最大フルスケール値JjMAが割り当てられる。|TEj+3-TE|がゼロで、|TEj+1-TE|と|TEj+2-TE|の両方がゼロでない場合も発生し得る。このような場合、|TEj+3-TE|のゼロ値は、|TEj+1-TE|と|TEj+2-TE|の中の最大値に便利に置き換えることができる。
【0052】
図17、18、および19A~Dは、実際のCADCAMモデルの様々な組み合わせで視覚表示されたピボット速度、加速度、およびジャークのいくつかの例を示す。図20~25はさらに、ツールパス仮想化および最適化システムによって決定されたジャークの視覚化を示している。
【0053】
上記の実施形態の特定の特徴および態様の様々な組み合わせおよび/または部分的な組み合わせがなされてもよく、それらも発明の範囲内にあると考えられる。したがって、開示された実施形態の様々な特徴および態様は、開示された発明のさまざまなモードを形成するために、互いに組み合わせるか置き換えることができることを理解されたい。さらに、実施例として本明細書に開示されている本発明の範囲は、上述の特定の開示された実施形態によって限定されるべきではないことが意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図13A
図13B
図13C
図14
図15
図16A
図16B
図17
図18
図19A
図19B
図19C
図19D
図20
図21
図22
図23
図24
図25