(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】流れ場板
(51)【国際特許分類】
H01M 8/0258 20160101AFI20220203BHJP
H01M 8/0265 20160101ALI20220203BHJP
H01M 8/0204 20160101ALI20220203BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20220203BHJP
【FI】
H01M8/0258
H01M8/0265
H01M8/0204
H01M8/10 101
(21)【出願番号】P 2020544925
(86)(22)【出願日】2020-03-24
(86)【国際出願番号】 EP2020058140
(87)【国際公開番号】W WO2020224860
(87)【国際公開日】2020-11-12
【審査請求日】2020-08-26
(31)【優先権主張番号】102019206577.5
(32)【優先日】2019-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591006586
【氏名又は名称】アウディ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】AUDI AG
(73)【特許権者】
【識別番号】591037096
【氏名又は名称】フオルクスワーゲン・アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】VOLKSWAGEN AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】シュテイク,ルーン
【審査官】加藤 幹
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-26526(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0333341(US,A1)
【文献】特開2008-311099(JP,A)
【文献】特開2002-280028(JP,A)
【文献】特開平9-266002(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池の電極またはガス拡散層に反応物を分配するための流れ場板(1)であって、ガス入口(2)を備え、流れ場を画定する複数のチャネル(3)を備えており、前記反応物が前記流れ場の前記チャネル(3)を通流する状態において、前記ガス入口(2)と前記流れ場との間に圧力勾配が存在し、それにより前記チャネルを流れる廃ガスが前記ガス入口(2)の方向に引き込まれ、さらに、液体水および/または水蒸気をガスから分離するためのガス-水セパレータ(4)が、前記ガス入口(2)に流体的に接続されており、該ガス-水セパレータ(4)において分離したガスを前記流れ場に供給するように前記ガス-水セパレータ(4)が前記流れ場に接続されており、
前記ガス入口(2)またはその入口付近の断面積が、前記ガス-水セパレータ(4)またはその付近の断面積よりも小さい、流れ場板(1)。
【請求項2】
前記ガス入口(2)と前記ガス-水セパレータ(4)との間の断面積が徐々に増大することを特徴とする請求項1に記載の流れ場板(1)。
【請求項3】
増加する断面積が、前記チャネル(3)の長手方向に対して傾斜して延びる壁(5)によって形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の流れ場板(1)。
【請求項4】
前記壁(5)が、前記ガス-水セパレータ(4)
の周辺チャネル(6)に対して傾斜するように設計され、それにより前記ガス-水セパレータ(4)で分離されたガスが、前記流れ場の前記チャネル(3)へと続く分配のために前記周辺チャネル(6)へ
と案内されることを特徴とする請求項3に記載の流れ場板(1)。
【請求項5】
第2の壁(7)が存在し、前記壁(5)と前記第2の壁(7)とが互いに向けて配置され、前記壁(5)と前記第2の壁(7)との間に通路(8)が形成されることを特徴とする請求項3または4に記載の流れ場板(1)。
【請求項6】
前記ガス-水セパレータ(4)が、そのガス-水セパレータ(4)に保持された液体水を排出するためのアクチュエータ(10)を備えた出口(9)に
近接して設けられており、前記ガス-水セパレータ(4)で分離したガスを前記流れ場へと案内するように前記出口(9)と前記壁(5)との間に第3の壁(13)が配置されることを特徴とする請求項3~5のいずれか一項に記載の流れ場板(1)。
【請求項7】
前記ガス-水セパレータ(4)が、少なくとも1つの衝撃板(14)を有する衝撃セパレータとして形成されることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の流れ場板(1)。
【請求項8】
前記ガス-水セパレータ(4)が、メッシュセパレータとして形成されることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の流れ場板(1)。
【請求項9】
前記ガス-水セパレータ(4)が、少なくとも1つの親水性または吸湿性部材(17)として形成されることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の流れ場板(1)。
【請求項10】
前記ガス入口(2)がエジェクタ(21)
を備え、前記エジェクター(21)がノズルとして形成されることを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載の流れ場板(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池の電極またはガス拡散層に反応物を分配するための流れ場板に関し、ガス入口を備え、流れ場を画定する複数のチャネルを備えており、反応物が流れ場のチャネルを通流する状態において、ガス入口と流れ場との間に圧力勾配が存在し、それによりチャネルを流れる廃ガスがガス入口の方向に引き込まれ、さらに、液体水および/または水蒸気をガスから分離するようにガス入口に流体的に接続されたガス-水セパレータを備え、ガス-水セパレータは、そのガス-水セパレータにおいて分離したガスを流れ場に供給するように流れ場に接続されている、流れ場板に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池システムは通常、複数の燃料セルからなる燃料セルスタックを含み、そのアノード側に燃料が供給され、カソードガス、通常は空気が、カソード側に供給される。燃料消費量を削減するために、燃料電池システムはアノード側にアノード再循環システムを備えており、アノード出口に配置されたアノード廃ガスラインは通常、アノード再循環ラインを介してアノード供給ラインに接続され、それにより、未使用の燃料、特に水素がアノード供給ラインを通して燃料セルスタックに再導入される。通常、アノード廃ガスラインには、ガスから液体水を分離するガス-水セパレータが設置される。アノード再循環システムを介してアノード供給ラインに戻される燃料は、通常、エジェクタポンプや再循環ブロワなどの外部コンポーネントによって、アノード供給ラインに導入される。ここでの欠点は、それらの外部コンポーネントとそれらの接続により、熱損失が発生する可能性のある追加の表面部が形成されることである。さらに、外部コンポーネントは圧力降下を引き起こすとともに、燃料電池システム内に追加の設置スペースを設ける必要があり、それにより燃料電池システムの効率および動作安定性が低下する。
【0003】
特許文献1および特許文献2は、それぞれ、請求項1の一般的な用語に従う燃料電池スタックを説明している。それらの文献では、流れ場板が一体化されたアノード再循環システムを有しており、ガス-水セパレータが流れ場板に関連しており、複数のチャネルによって画定された流れ場と、流れ場板のガス入口との間に圧力勾配が存在し、チャネルを流れる廃ガスがガス入口の方向に引き込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】韓国登録特許第10-1405737号公報
【文献】米国特許出願公開第2010/0009223号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の根底にある課題は、燃料電池スタックに組み込まれた効果的なアノード再循環システムを可能にするために、液体水とガスのより効果的な分離が可能な流れ場板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、請求項1に記載の特徴を備えた流れ場板によって解決される。本発明の好都合な改良を伴う有利な実施形態は、従属請求項に特定される。
【0007】
流れ場板は、特に、ガス入口またはガス入口付近の断面積が、ガス-水セパレータまたはその付近の断面積よりも小さいことを特徴とする。ガス入口とガス-水セパレータとの間の断面積を広げることにより、そこに流入するガス/廃ガス混合物が減速され、ガス-水セパレータでの液体水のより効果的な分離が可能になる。さらに、それにより燃料セルスタックのアノード空間への液体水の進入およびそのような進入に関連する損傷を防ぐ。これに関連して、ガス入口と、ガス-水セパレータと、の間の断面積が徐々に増大することが特に好ましい。代替的な実施形態では、ガス入口とガス-水セパレータとの間の断面積が、1つまたは複数の部分セクション(partial section)に対して増加しないことも可能である。つまり、一定のままか、または小さくなることである。その実施形態においても、ガス-水セパレータの近傍の断面積は、それにもかかわらず、ガス入口またはガス入口付近の断面積よりも大きい。
【0008】
ガス/廃ガスの可能な限り単純な流れ制御を可能にするために、増大する断面積が、チャネルの長手方向に対して傾斜して延びる壁によって形成されることが好ましい。これにより、より一層の流れ制御が可能になると同時に、流れ場のチャネルへのガス/廃ガス混合物の逆流が防止される。
【0009】
この文脈において、ガス-水セパレータで分離されたガスが、流れ場のチャネルへと続く分配のためにその周辺チャネルへと限定して案内されるように、壁がガス-水セパレータに関連する周辺チャネルに対して傾斜して設計される場合、特に有利である。それにより、分離されたガスまたはガス-廃ガス混合物がチャネルに逆流するのを防ぐ。同時に、ガス-廃ガス混合物は、ガス-水セパレータに、またはガス-水セパレータを通して案内される。これにより、液体の水および/または水蒸気が廃ガスから確実に分離される。
【0010】
吸引効果を高め、流れの制御を改善するためには、第2の壁が存在する場合、壁と、第2の壁とが互いに向き合い、かつ/または互いに向かって延在するように配置される場合、そして、壁と第2の壁との間に通路が形成される場合が、特に有利である。それにより、通路を通って逃げる廃ガスを、ガス入口からのガスと混合することができる。同時にそれにより、流れ場板上のアノード再循環システムのコンパクトな設計と、排ガスおよびガス/排ガス混合物の効果的な流れ制御が可能となる。
【0011】
さらに、ガス-水セパレータが、ガス-水セパレータに保持された液体水を排出するためのアクチュエータを備えた出口と関連付けられ、そして、ガス-水セパレータで分離されたガスを流れ場に送るように、出口と壁との間に配置される第3の壁が存在することが望ましい。換言すれば、第3の壁は、出口と、ガス-水セパレータに関連する周辺チャネルとの間に配置される。壁および第3の壁は、互いに離間して配置され、互いに向けられ、および/または互いに向かって延在し、それにより、分離されたガスを流れ場に導く流れ制御システムを形成する。同時に、分離されたガスの逆流が防止され、ガス-水セパレータまたはその出口へのガスの流入が防止される。
【0012】
一実施形態では、ガス-水セパレータが、少なくとも1つの衝撃板(impact plates)を有する衝撃セパレータとして形成されることが好ましい。好ましくは、複数の衝撃板が提供され、個々の衝撃板は、チャネルの長手方向に対して直角に配置される。それによりガス-廃ガス混合物の流れ制御を改善し、分離率を改善する。代替的または補足的に、少なくとも1つの衝撃板は、チャネルの長手方向に対して傾斜して設計されてもよい。ガス-水セパレータは、好ましくは、凝結(precipitated)した液体水を保持するためのリザーバを有する。
【0013】
別の実施形態では、ガス-水セパレータがメッシュセパレータとして形成されることが好ましい。そこでは、メッシュセパレータは、例えばメッシュから、特にプラスチックメッシュから形成されうる。メッシュ内で、凝結水を凝結させ、収集して保持することができる。
【0014】
代替的に、ガス-水セパレータはまた、多孔質材料を有してもよく、または、凝結した液体水を貯蔵するそのような材料から形成され得る。
【0015】
さらに別の実施形態では、ガス-水セパレータは、少なくとも1つの親水性または吸湿性の部材として形成される。これにより、親水性部材での液体水の凝結、または吸湿性部材での液体水の凝結および保持が可能となる。好ましくは、ガス-水セパレータは、複数の親水性および/または吸湿性部材を有する。これらは、好ましくは、チャネルの長手方向に対して傾斜して設計され、これは、ガス-水セパレータのセパレータ表面の拡大に関連する。
【0016】
流れ場板への新しい燃料のより効果的な供給のために、エジェクタがガス入口に関連付けられている場合も好ましい。エジェクタは、好ましくはノズルとして形成することができる。
【0017】
説明において上述した特徴および特徴の組み合わせ、ならびに図の説明において以下で言及し、かつ/または単に図に示した特徴および特徴の組み合わせは、指定された組み合わせだけでなく、本発明の範囲から逸脱することなく、単独でも使用しうる。したがって、図面に明示的に示されていないまたは説明されていない実施形態だけでなく、明細書に起因する別個の特徴の組み合わせによって実施され得る実施形態もまた、本発明に包含され、開示されたと見なされるべきである。
【0018】
本発明のさらなる利点、特徴、および詳細は、好ましい例示的な実施形態の以下の説明および一式の図面から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】衝撃セパレータとして形成されたガス-水セパレータを有する流れ場板の第1の例示的な実施形態の概略図である。
【
図2】メッシュセパレータとして形成されたガス-水セパレータを有する流れ場板の第2の例示的な実施形態の概略図である。
【
図3】複数の親水性または吸湿性の部材を備えたガス-水セパレータを有する流れ場板の第3の例示的な実施形態の概略図である。
【
図4】複数の流れ場板を備えた複数の燃料電池を有する燃料電池システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、ガス入口2を備えた、燃料電池の電極またはガス拡散層に反応物を分配するための流れ場板1を示す。流れ場を画定する複数のチャネル3が流れ場板1に配置されており、反応物がチャネルを通流する状態においては、ガス入口2と流れ場との間に圧力勾配が存在する。この圧力勾配により、チャネル3を流れる廃ガスがガス入口2の方向に引き込まれる。さらに、ガス、特に廃ガスから液体水および/または水蒸気を分離するように、流れ場板1にガス-水セパレータ4が配置されており、ガス-水セパレータ4で分離されたガスを流れ場に戻すために、ガス-水セパレータ4は、流れ場に流体的に接続される。言い換えれば、流れ場板1は、燃料電池に統合された、または燃料電池の内部にある効果的なアノード再循環システムを可能にする。圧力勾配により、廃ガスは流れ場のチャネル3から引き出され、ガス入口2からの新鮮な燃料と混合される。このガス/廃ガス混合物は、ガス-水セパレータ4に供給され、液体水および/または水蒸気は、ガス/廃ガス混合物から分離され、ガス-水セパレータ4に収集される。分離されたガスは、ガス-水セパレータ4から流れ場に戻され、したがって、燃料セルスタック16のアノード空間に導入される。ガス入口2またはガス入口付近の断面積は、ガス-水セパレータ4またはその付近の断面積よりも小さい。
【0021】
この場合、ガス入口2とガス-水セパレータ4の凝結要素(precipitating elements)25との間の断面積は徐々に増加する。ガス-水セパレータ4内では、断面積はその出口9の方向に再び減少する。それにもかかわらず、ガス入口における断面積は、ガス-水セパレータ4の出口9における断面積よりも小さい。凝結要素25の方向における断面積の増加は、ガス/廃ガス混合物を減速させることを可能にし、その結果、ガス、特に燃料からの液体水および/または水蒸気の凝結または分離が改善される。これは液体水が流れ場のチャネル3に流入するのを防ぐとともにチャネル3内の水蒸気の凝縮を防ぎ、それにより、アノードへの、したがって燃料電池への損傷を回避または低減する。
【0022】
そこでは、増大する断面積は、チャネル3の長手方向に対して傾斜して延在する壁5によって形成される。そこでは、ガス-水セパレータ4で分離されたガスが、流れ場のチャネル3に続く分配のためにその周辺チャネル6へと限定して案内されるように、その壁5がガス-水セパレータ4に関連する周辺チャネル6に対して傾斜して設計される。このガス流制御は、流れ場のチャネル3へのガス/廃ガス混合物の流れまたは逆流さえも防止する。同時に、ガス/廃ガス混合物が遅くなり、凝結率(precipitation rate)が向上する。そこでは、ガスおよびガス/廃ガス混合物の流れ制御22は、
図1~3の点線によって表される。
【0023】
さらに、第2の壁7が存在し、壁5および第2の壁7は、互いに向かうように配置されるとともに、互いに向かって延在するように配置される。通路8が、壁5と第2の壁7との間に形成される。この通路8は、次いで、ガス入口2へのまたはその付近での流れ制御22を可能にし、したがって、廃ガスの、ガス入口2を介して入口領域に供給される新鮮なガスとの混合を可能にする。その中の第2の壁7は、好ましくは、第2の周辺チャネル18に対して傾斜して配置される。さらに、第3の壁13が存在する。その壁は、ガス-水セパレータ4で分離されたガスが流れ場へと案内され、分離されたガスの逆流が防止されるように、ガス-水セパレータ4に関連する出口9と、壁5との間に配置される。さらに、アクチュエータ10が、ガス-水セパレータ4に収集された液体水を排出するように出口9に関連付けられている。
【0024】
図1に示す例示的な実施形態では、ガス-水セパレータ4は、複数の衝撃板(impact plates)14を備えた衝撃セパレータ(impact separator)として形成され、これらの衝撃板14のうちの2つがここに示され、チャネル3の長手方向に対して直角に配置される。別の衝撃板14が、チャネル3の長手方向に対して傾斜するように壁5にほぼ平行に配置され、それにより、ガス-水セパレータ4から周辺チャネル6への流れ制御22が可能となる。
【0025】
図2に示す例示的な実施形態では、ガス-水セパレータ4はメッシュセパレータとして形成される。この場合、メッシュセパレータはメッシュ、特にプラスチックメッシュを有する。水はメッシュで凝結し、メッシュ内に保持される。
【0026】
図3は、ガス-水セパレータ4が複数の親水性または吸湿性の部材17を有する例示的な実施形態を示す。液体水および/または水蒸気は、壁5にほぼ平行に配置されたそれらの部材17において凝結することができる。部材17が吸湿部材17として形成される場合、凝結した水も吸湿部材17に吸収され、保持され得る。
【0027】
図4は、積層状に配置された複数の燃料セルを有する、燃料セルスタック16を備えた燃料電池システム2を示し、ここには詳細に示されていないが、各々が、前述のように少なくとも1つの流れ場板1を有する。詳細に示されていない各燃料セルは、アノードおよびカソードに関連しており、アノードとカソードとは、イオン伝導性ポリマー電解質膜によって分離されている。バイポーラプレートとして形成された流れ場板1は、このような膜電極配置の各ペアの間に配置される。この流れ場板1は、アノードとカソードに反応物を供給し、さらに個々の燃料セル間の電気的接続を確立する。ガス拡散層が、各々の電極と流れ場板1との間に配置されてもよい。
【0028】
燃料電池スタック16に燃料を供給するために、燃料電池スタック16は、アノード側でアノード供給ライン20に接続され、アノード貯蔵器19から、好ましくは復熱装置の形態の、熱交換器29を介して水素含有アノードガスを供給する。燃料電池スタック16のアノード側のアノード動作圧力は、アノード供給ライン20のアノード調整器28を介して調整可能である。アノード出口側には、アノード廃ガスライン24が存在し、そのラインを介して、流れ場板1の内部または流れ場板1で凝結した水が燃料セルスタック16から排出され、燃料セルスタック16から放出される。代替的に、このように排出された液体水は、カソードガスを加湿するための液体供給ライン23により、カソード側に供給される。そこでは、アノード廃ガスライン24は、液体供給ライン23に流体的に接続され、次いで液体供給ライン23は、コンプレッサ26の下流かつ加湿器15の上流の乾燥供給ライン11に接続される。それにより、アノード側に蓄積する液体水を、カソードガスを加湿するための加湿器15へと導くことを可能にする。この場合、アノードに蓄積し、流れ場板1上に凝結した液体水を、加湿器15の上流のカソード出口側に配置されたカソード廃ガスライン31に供給することもできる。これはまた、カソードガスを加湿するための加湿器15に液体水を供給することも可能にする。
【0029】
カソード側では、燃料セルスタック16は、酸素含有カソードガスを供給するためのカソード供給ライン30に接続されている。カソードガスを輸送および圧縮するために、コンプレッサ26がカソード供給ライン30の上流に接続される。ここに示される実施形態では、コンプレッサ26は主に電気モータによって駆動されるコンプレッサ26として設計され、そのコンプレッサの駆動は、ここでは詳細には示されていない、適切なパワーエレクトロニクス回路を備えた電気モータを介して実行される。この場合のカソード供給ラインは、2つのセクション、すなわち、コンプレッサ26を加湿器15と流体接続する乾燥供給ライン11と、加湿器15を燃料電池スタック16と流体接続するカソード供給ライン30とに分割される。
【0030】
コンプレッサ26から、環境から引き込まれたカソードガスは、カソード供給ライン30を介して直接燃料セルスタック16へと案内される。さらに、カソード供給ライン30を通流するカソードガス質量流量を調整するためバイパスライン12が存在し、そのバイパスライン12は、乾燥供給ライン11を加湿器出口側に配置された加湿器排出ライン32と流体的に接続する。
【符号の説明】
【0031】
1…流れ場板
2…燃料電池システム
3…チャネル
4…ガス-水セパレータ
5…壁
6…周辺チャネル
7…第2の壁
8…通路
9…出口
10…アクチュエータ
11…乾燥供給ライン
12…バイパスライン
13…第3の壁
14…衝撃板(impact plate)
15…加湿器
16…燃料セルスタック
17…部材
18…第2の周辺チャネル
19…アノード貯蔵器
20…アノード供給ライン
21…エジェクタ(ejector)
22…流れ制御
23…液体供給ライン
24…アノード廃ガスライン
25…凝結要素(precipitating element)
26…コンプレッサ
28…アノードアクチュエータ
29…熱交換器
30…カソード供給ライン
31…カソード廃ガスライン
32…加湿器排出ライン