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特許7011086X線システムの誤差トラッキングおよび較正
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-17
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】X線システムの誤差トラッキングおよび較正
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20060101AFI20220203BHJP
【FI】
A61B6/00 320Z
A61B6/00 300X
A61B6/00 300D
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020555782
(86)(22)【出願日】2019-04-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-26
(86)【国際出願番号】 EP2019058720
(87)【国際公開番号】W WO2019197299
(87)【国際公開日】2019-10-17
【審査請求日】2021-08-19
(31)【優先権主張番号】18167262.7
(32)【優先日】2018-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】特許業務法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ハーゼ クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】グラス ミカエル
(72)【発明者】
【氏名】シェーファー ダーク
【審査官】井上 香緒梨
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-212036(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0231596(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102013206113(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0191371(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械的画像取得システムの誤差トラッキングおよび較正を実行するための装置であって、前記装置は、
入力ユニットと、
処理ユニットとを備え、
前記入力ユニットは、異なる時間において、同じ前記機械的画像取得システムを使用して、前記機械的画像取得システムの検査領域の少なくとも第1および第2の2D投影フレームシーケンスを取得し、前記入力ユニットはさらに、前記機械的画像取得システムの予想される較正されたジオメトリを定める予想較正データを取得し、
前記処理ユニットは、少なくとも前記第1および第2の2D投影フレームシーケンスに対して別々に剛性動き補償を適用し、補償された前記第1および第2の2D投影フレームシーケンスを前記予想される較正されたジオメトリと別々に比較することで、前記第1および第2の2D投影フレームシーケンス取得中に生じた、前記予想される較正されたジオメトリからの前記機械的画像取得システムの幾何学的偏差を表す第1および第2のフレーム偏差指標シーケンスを生成し、前記第1のフレーム偏差指標シーケンスと前記第2のフレーム偏差指標シーケンスとの間の類似性を決定し、前記第1および第2のフレーム偏差指標シーケンスの少なくとも一部の間の類似性が決定された場合、1つまたは複数の較正アクションを実行する、
装置。
【請求項2】
前記処理ユニットはさらに、
前記第1および第2の2D投影フレームシーケンスのそれぞれの第1および第2の初期3D再構成を生成し、
前記第1の初期3D再構成を前記第1の2D投影フレームシーケンスに重ねることによって第1のフレームオフセットベクトルを生成し、
前記第2の初期3D再構成を前記第2の2D投影フレームシーケンスに重ねることによって第2のフレームオフセットベクトルを生成することによって、
少なくとも前記第1および第2の2D投影フレームシーケンスに対して別々に剛性動き補償を適用する、
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記処理ユニットはさらに、
前記第1および第2の2D投影フレームシーケンスのそれぞれの連続する再構成において第1および第2の画質統計を最適化することによって、前記第1および第2のフレーム偏差指標シーケンスを繰り返し生成することで、少なくとも前記第1および第2の2D投影フレームシーケンスに対して別々に剛性動き補償を適用する、
請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記入力ユニットはさらに、
前記機械的画像取得システムの偏差閾値データを受け取り、
前記処理ユニットはさらに、
前記予想される較正されたジオメトリと、類似性が決定された前記第1および第2のフレーム偏差指標シーケンスの前記少なくとも一部の間の差に基づいて、前記予想される較正されたジオメトリからの前記機械的画像取得システムの第1の測定偏差を特定し、
前記第1の測定偏差が前記偏差閾値データ内の閾値を上回る場合、ユーザにメンテナンスプロンプトを表示することによって前記較正アクションを実行し、かつ/またはデータ通信ネットワークを介して外部メンテナンスサーバにメンテナンスリクエストを送信する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記入力ユニットはさらに、
前記第1および第2の2D投影フレームシーケンスに後続する時間において、第3の2D投影フレームシーケンスを取得し、
前記処理ユニットはさらに、
前記予想される較正されたジオメトリからの前記第3の2D投影フレームシーケンスの対応する第3のフレーム偏差指標シーケンスを決定し、
前記第1および/または第2のフレーム偏差指標シーケンスと、前記第3のフレーム偏差指標シーケンスとの間の類似性を特定し、
特定された前記類似性に基づいて、前記第1および/または第2のフレーム偏差指標シーケンスと、前記第3のフレーム偏差指標シーケンスとの間の前記予想される較正されたジオメトリからの前記機械的画像取得システムの第2の測定偏差を特定し、
前記第1の測定偏差と前記第2の測定偏差との間の差の変化率を使用して、将来のメンテナンス期間のスケジューリング時間を予測し、
前記較正アクションは、前記将来のメンテナンス期間の前記スケジューリング時間をデータ通信ネットワークを介して外部メンテナンスサーバに送信すること、および/または前記スケジューリング時間をユーザに表示することを含む、
請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記処理ユニットはさらに、
前記第1のフレーム偏差指標シーケンスに基づいて、前記第1の2D投影フレームシーケンスの取得中に前記機械的画像取得システムの第1の補正された軌道を推定し、前記第2のフレーム偏差指標シーケンスに基づいて、前記第2の2D投影シーケンスの取得中に前記機械的画像取得システムの第2の補正された軌道を推定する、
請求項1から5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記処理ユニットはさらに、
互いに有意な類似性を有する前記第1および第2の補正された軌道の選択された部分を特定し、
前記選択された部分と予想ジオメトリデータとの間の較正差データを計算し、
前記処理ユニットはさらに、
第3の2D投影フレームシーケンスを取得し、前記較正差データを適用して補正された第3の2D投影フレームシーケンスを生成することによって前記較正アクションを実行する、
請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記入力ユニットはさらに、
前記機械的画像取得システムの履歴幾何学的偏差の軌道データ例を含む軌道特性データベースを取得し、
前記処理ユニットはさらに、前記較正アクションとして、
前記第1および第2の補正された軌道の前記選択された部分のうちの少なくとも1つを、前記軌道特性データベース内の前記軌道データ例と比較することと、
前記第1および第2の補正された軌道の前記選択された部分のうちの前記少なくとも1つが、前記機械的画像取得システムの、ある履歴幾何学的偏差に類似することを確認することとを実行する、
請求項6または7に記載の装置。
【請求項9】
前記入力ユニットはさらに、
前記第1および/または第2の2D投影フレームシーケンスの取得中に使用される機械的画像取得シーケンスの取得プロトコルまたは撮像対象物体を受け取る、および/または自動的に特定し、
前記処理ユニットはさらに、前記較正アクションとして、
前記取得プロトコルに基づいて、前記第1のフレーム偏差指標シーケンスに信頼度を割り当てる、
請求項1から8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記第1および第2のフレーム偏差指標シーケンスは、理想的に較正されたケースからのそれぞれの第1および第2のオフセットベクトルの大きさを表す第1および第2の大きさシーケンスを含む、
請求項1から9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記機械的画像取得システムはCアームである、請求項1から10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
機械的画像取得システムを較正するための誤差トラッキング方法であって、前記方法は、
a)異なる時間において、同じ前記機械的画像取得システムを使用して、前記機械的画像取得システムの検査領域の少なくとも第1および第2の2D投影フレームシーケンスを取得するステップと、
b)前記機械的画像取得システムの予想される較正されたジオメトリを定める予想較正データを取得するステップと、
c)少なくとも前記第1および第2の2D投影フレームシーケンスに対して別々に剛性動き補償を適用し、補償された前記第1および第2の2D投影フレームシーケンスを前記予想される較正されたジオメトリと別々に比較することで、前記第1および第2の2D投影フレームシーケンスの取得中に生じた、前記予想される較正されたジオメトリからの前記機械的画像取得システムの幾何学的偏差を表す第1および第2のフレーム偏差指標シーケンスを生成するステップと、
d)前記第1のフレーム偏差指標シーケンスと前記第2のフレーム偏差指標シーケンスとの間の類似性を決定するステップと、
e)前記第1および第2のフレーム偏差指標シーケンスの少なくとも一部の間に類似性が決定された場合、1つまたは複数の較正アクションを実行するステップとを含む、
方法。
【請求項13】
X線源と、
X線検出器と、
請求項1から11のいずれか一項に記載の機械的画像取得システムの誤差トラッキングおよび較正を実行するための装置とを備える、
X線撮像システムであって、
前記X線源は、第1の複数の取得角度から、X線放射によって関心領域を順次照射し、
前記X線検出器は、それぞれ第1の取得時間および第2の取得時間において取得された前記関心領域の少なくとも第1の2D X線投影データおよび第2の2D X線投影データを含む入力投影画像シーケンスを形成するために、第2の複数の取得角度から前記関心領域を介して伝播した前記X線放射を受け取り、
前記機械的画像取得システムの誤差トラッキングおよび較正を実行するための前記装置は、前記X線検出器から前記第1および第2の2D X線投影データを受け取り、また、前記装置は、前記X線撮像システムの予想される較正されたジオメトリを定める予想較正データを前記X線撮像システムから受け取る、
X線撮像システム。
【請求項14】
請求項1から11のいずれか一項に記載の装置又は請求項13に記載のX線撮像システムを制御するためのコンピュータプログラムであって、前記コンピュータプログラムは、前記装置および/または前記X線撮像システムによって実行されると、請求項12に記載の方法を実行する、コンピュータプログラム。
【請求項15】
請求項14に記載のコンピュータプログラムが記憶された、コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、X線システムの誤差トラッキングおよび較正、ならびにこれに関連する方法、X線撮像システム、コンピュータプログラム要素、およびコンピュータ可読媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のX線取得システムは、関心領域の高品質な立体的再構成を使用場所において直接取得することを可能にする。X線取得システムの典型的な用途は、Cアーム撮像システムの一部としての使用である。Cアームが様々な位置に移動されると、機械的な偏差によってCアームのジオメトリが変化する。
【0003】
したがって、予測可能なジオメトリを有する専用の較正ファントムを使用して、専用較正取得においてCアームを較正する必要がある。Cアーム撮像システムの様々な軌道を使用して取得された較正ファントムの取得画像を、同じ軌道での較正ファントムの予想画像と比較することで、Cアーム撮像システムの較正係数を計算して適用することができる。しかし、較正ファントムを提供し、それを使用して定期的に較正手順を実行する必要があるのは面倒である。US2017/0231596A1は、X線システムの較正パラメータを確かめるために較正ファントムの画像を評価するX線システム較正システムについて論じている。しかし、そのようなシステムはさらに改善され得る。
【発明の概要】
【0004】
したがって、X線システムの誤差トラッキングおよび較正のための改良された技術を提供することは有益であろう。
【0005】
第1の側面によれば、機械的画像取得システムの誤差トラッキングおよび較正を実行するための装置が提供される。装置は、
- 入力ユニットと、
- 処理ユニットとを備える。
【0006】
入力ユニットは、異なる時間において機械的画像取得システムの検査領域の少なくとも第1および第2の2D投影フレームシーケンスを取得するように構成され、ここで、第1および第2の取得において同じ機械的画像取得システムが使用され、入力ユニットはさらに、機械的画像取得システムの予想される較正されたジオメトリを定める予想較正データを取得するように構成される。
【0007】
第1の側面によれば、機械的画像取得システムの誤差トラッキングおよび較正を実行するための装置が提供される。装置は、
- 入力ユニットと、
- 処理ユニットとを備える。
【0008】
入力ユニットは、異なる時間において検査領域の少なくとも第1および第2の2D投影フレームシーケンスを取得するように構成され、ここで、第1および第2の取得において同じ機械的画像取得システムが使用され、入力ユニットはさらに、機械的画像取得システムの予想される較正されたジオメトリを定める予想較正データを取得するように構成される。
【0009】
処理ユニットは、少なくとも第1および第2の2D投影シーケンスに対して別々に剛性動き補償を適用し、補償された第1および第2の2D投影シーケンスを予想される較正されたジオメトリと別々に比較することで、第1および第2の取得中に生じた、予想される較正されたジオメトリからの機械的画像取得システムの幾何学的偏差を表す第1および第2のフレーム偏差指標シーケンスを生成し、第1のフレーム偏差指標シーケンスと第2のフレーム偏差指標シーケンスとの間の類似性を決定し、第1および第2のフレーム偏差指標シーケンスの少なくとも1つの対応する部分の間の類似性が決定された場合、1つまたは複数の較正アクションを実行する。
【0010】
したがって、X線撮像システムの通常の使用で取得された2つの投影シーケンスおよび予想される較正されたジオメトリを使用して、X線撮像システムの予想較正からのX線撮像システムの較正の逸脱を特定することができる。したがって、X線撮像システムをX線較正ファントムと合わせて使用して専用の較正プロセスを実行する必要性が低減される。例えば、これは、定期的な間隔でではなく、予想較正に対する投影シーケンスの逸脱が特定された場合にのみ実行すればよい可能性がある。したがって、X線撮像システムの可用性が高くなる。
【0011】
任意選択的に、処理ユニットはさらに、第1および第2の2D投影シーケンスのそれぞれの第1および第2の初期3D再構成を生成し、第1の初期3D再構成を第1の2D投影フレームシーケンスに重ねることによって第1のフレームオフセットベクトルを生成し、第2の初期3D再構成を第2の2D投影フレームシーケンスに重ねることによって第2のフレームオフセットベクトルを生成することによって、少なくとも第1および第2の2D投影シーケンスに対して別々に剛性動き補償を適用する。
【0012】
重ねること(レジストレーション)により、各自の予想される向きからの第1および第2の初期3D再構成の逸脱を特定することができ、よって、X線撮像システムの較正誤差を示すことができる。
【0013】
任意選択的に、処理ユニットはさらに、第1および第2の2D投影シーケンスのそれぞれの連続する再構成において第1および第2の画質統計を最適化することによって、第1および第2のフレーム偏差指標シーケンスを繰り返し生成することで、少なくとも第1および第2の2D投影シーケンスに対して別々に剛性動き補償を適用する。
【0014】
第1および第2の2D投影シーケンスの複数の3D再構成を生成することにより、画質統計、例えば特徴のシャープネス、「リングアーチファクト」の広範さ、および様々な他の画質統計を使用して、第1および第2の2D投影シーケンスの剛性動き補償を繰り返し最適化することができまる。したがって、システムの較正状態をより正確に評価することができる。
【0015】
任意選択的に、入力ユニットはさらに、取得システムの偏差閾値データを受け取る。処理ユニットはさらに、予想較正ジオメトリと、類似性が決定された第1および第2のフレーム偏差指標シーケンスの少なくとも1つのマッチまたは対応する部分の間の差に基づいて、予想較正ジオメトリからの機械的画像取得システムの第1の測定偏差を特定し、第1の測定偏差が偏差閾値データ内の閾値を上回る場合、ユーザにメンテナンスプロンプトを表示することによって較正アクションを実行し、かつ/またはデータ通信ネットワークを介して外部メンテナンスサーバにメンテナンスリクエストを送信する。
【0016】
したがって、偏差が所定の閾値を超えると、メンテナンスリクエストが表示されたり、またはメンテナンスが自動的にスケジュールされ得る。
【0017】
X線撮像システムの較正されたジオメトリからのX線撮像システムのジオメトリの所与の偏差は、偏差が特定のレベルを超えた場合にしか画質に悪影響を与えない可能性がある。この実施形態は、較正されたジオメトリからのX線システムの偏差の許容可能なレベルを表す閾値量に対してX線撮像システムのジオメトリの偏差を追跡する。
【0018】
任意選択的に、入力ユニットはさらに、第1および第2の2D投影フレームシーケンスに後続する時間において、第3の2D投影フレームシーケンスを取得する。
【0019】
処理ユニットはさらに、予想される較正されたジオメトリからの第3の2D投影フレームシーケンスの対応する第3のフレーム偏差指標シーケンスを決定し、第1および/または第2のフレーム偏差指標シーケンスと、第3のフレーム偏差指標シーケンスとの間の類似性を特定し、第2のフレーム偏差指標シーケンスと第3のフレーム偏差指標シーケンスの部分間の類似性に基づいて、第1および/または第2のフレーム偏差指標シーケンスと、第3のフレーム偏差指標シーケンスとの間の予想較正ジオメトリからの機械的画像取得システムの第2の測定偏差を特定し、第1の測定偏差と前記第2の測定偏差との間の差の変化率を使用して、将来のメンテナンス期間のスケジューリング時間を予測する。較正アクションは、将来のメンテナンス期間のスケジューリング時間をデータ通信ネットワークを介して外部メンテナンスサーバに送信すること、および/またはスケジューリング時間をユーザに表示することを含む。
【0020】
したがって、X線撮像システムのメンテナンス期間はより正確にスケジュールされ、その結果、許容可能なシステム精度でのX線撮像システムの使用時間の量が最適化される。
【0021】
一例では、スケジューリング精度をさらに高めるために、同様にしてさらなる2D投影フレームシーケンスが取得および処理され得る。
【0022】
より広いタイムフレームにかけてX線撮像システムの複数の偏差を特定することで、較正誤差を追跡し、例えば較正誤差が直線的にまたは幾何学的に増加しているか否かについて評価することができる。少なくとも2つの測定された偏差と、それらの間の時間の知識があれば、いつ較正誤差が許容不可になり、較正が必要になるかを定める予測を計算することができる。
【0023】
任意選択的に、処理ユニットはさらに、第1のフレーム偏差指標シーケンスに基づいて、第1の2D投影シーケンスの取得中に機械的画像取得システムの第1の補正された軌道を推定し、第2のフレーム偏差指標シーケンスに基づいて、第2の機械的画像取得システム投影シーケンスの取得中に機械的画像取得システムの第2の補正された軌道を推定する。
【0024】
補正された軌道を特定することにより、処理ユニットは、X線撮像システムのドライブシステムに更新を「フィードバック」することができ、これにより、機械的較正誤差を考慮に入れることができる。結局はX線撮像システムの機械的再較正が依然として必要になるが、補正された軌道を使用して、X線撮像システムに特定の時点で特定の位置に動くよう指令する電子コマンドにバイアスをかけることにより、X線撮像システムの有用な動作時間の量を長くすることができる(すなわち、メンテナンス間の時間を長くすることができる)。
【0025】
任意選択的に、処理ユニットはさらに、互いに有意な類似性を有する第1および第2の補正された軌道の選択された部分を特定し、選択された部分と、予想される較正された軌道との間の較正差データを計算する。処理ユニットはさらに、第3の2D投影フレームシーケンスを取得し、較正差データを適用して補正された第3の2D投影フレームシーケンスを生成することによって較正アクションを実行する。
【0026】
任意選択的に、入力ユニットはさらに、機械的画像取得システムの履歴ジオメトリ偏差の軌道データ例を含む軌道特性データベースを取得する。処理ユニットはさらに、較正アクションとして、第1および第2の補正された軌道の選択された部分のうちの少なくとも1つを、軌道特性データベース内の軌道データ例と比較することと、第1および第2の補正された軌道の選択された部分のうちの少なくとも1つが、機械的画像取得システムの、ある履歴ジオメトリ偏差に類似することを確認することとを実行する。
【0027】
設置誤差、または医療機関の特定の使用特性に起因して、同じX線撮像システムが繰り返される較正誤差を被る可能性がある。例えば、医療機関は歯科検診に焦点を当て、X線撮像システムの軌道のうちの小さなサブセットのみを使用する結果、軌道の小さなサブセットの提供に関与する部品がより摩耗する可能性がある。したがって、機械的画像取得システムの履歴幾何学的偏差を記録することにより、例えば、X線撮像システムにおける特定の現在の幾何学的偏差の原因を診断することができる。
【0028】
任意選択的に、入力ユニットはさらに、第1および/または第2の2D投影フレーム取得シーケンスの取得中に使用される機械的画像取得シーケンスの取得プロトコルを受け取り、かつ/または自動的に特定する。処理ユニットはさらに、較正アクションとして、取得プロトコルに基づいて、第1のフレーム偏差指標シーケンスに信頼度を割り当てる。
【0029】
X線撮像システムは、特定の軌道に従う患者の取得前に、電子コマンドのシーケンスを受け取る。システムの軌道の特定のポイントにおけるジオメトリ偏差を特定することにより、取得されたシーケンスの特定の時間での精度評価を提供することができる。
【0030】
任意選択的に、入力ユニットはさらに、第1および/または第2の2D投影フレーム取得シーケンスの取得中に機械的画像取得システムによって撮像される物体の種類または患者の部分の種類を受け取り、かつ/または自動的に特定する。処理ユニットはさらに、較正アクションとして、撮像対象の物体、または人体の部分に基づいて、第1のフレーム偏差指標シーケンスに信頼度を割り当てる。
【0031】
任意選択的に、第1および第2のフレーム偏差指標シーケンスは、理想的に較正されたケースからのそれぞれの第1および第2のオフセットベクトルの大きさを表す第1および第2の大きさシーケンスを含む。
【0032】
任意選択的に、機械的画像取得システムはCアームである。
【0033】
第2の側面によれば、機械的画像取得システムを較正するための誤差トラッキング方法が提供され、方法は、
a)異なる時間において前記機械的画像取得システムの検査領域の少なくとも第1および第2の2D投影フレームシーケンスを取得するステップであって、第1および第2の取得において同じ前記機械的画像取得システムが使用される、ステップと、
b)前記機械的画像取得システムの予想される較正されたジオメトリを定める予想較正データを取得するステップと、
c)少なくとも前記第1および第2の2D投影シーケンスに対して別々に剛性動き補償を適用し、前記補償された第1および第2の2D投影シーケンスを前記予想される較正されたジオメトリと別々に比較することで、前記第1および第2の取得中に生じた、前記予想される較正されたジオメトリからの前記機械的画像取得システムの幾何学的偏差を表す第1および第2のフレーム偏差指標シーケンスを生成するステップと、
d)前記第1のフレーム偏差指標シーケンスと前記第2のフレーム偏差指標シーケンスとの間の類似性を決定するステップと、
前記第1および第2のフレーム偏差指標シーケンスの少なくとも一部の間に類似性が決定された場合、1つまたは複数の較正アクションを実行するステップとを含む。
【0034】
第3の側面によれば、X線撮像システムが提供され、システムは、
- X線源と、
- X線検出器と、
- 第1の側面またはその実施形態に係る機械的画像取得システムの誤差トラッキングおよび較正を実行するための装置とを備える。
【0035】
X線源は、第1の複数の取得角度から、X線放射によって関心領域を順次照射する。
【0036】
X線検出器は、それぞれ第1の取得時間および第2の取得時間において取得された患者の関心領域の少なくとも第1の2D X線投影データおよび第2の2D X線投影データを含む入力投影画像シーケンスを形成するために、第2の複数の取得角度から関心領域を介して伝播したX線放射を受け取るように構成される。
【0037】
機械的画像取得システムの誤差トラッキングおよび較正を実行するための装置は、X線検出器から第1および第2の2D X線投影データを受け取るように構成され、また、装置は、X線撮像システムの予想される較正されたジオメトリを定める予想較正データをX線撮像システムから受け取るように構成される。
【0038】
第4の側面によれば、第1および/または第3の側面に係る処理ユニットおよび/またはシステムを制御するためのコンピュータプログラム要素が提供され、前記コンピュータプログラム要素は、プロセッサおよび/またはシステムによって実行されると、第2の側面の方法を実行する。
【0039】
第5の側面によれば第4の側面のコンピュータプログラム要素を記憶したコンピュータ可読媒体が提供される。
【0040】
以下において、「2D投影フレームシーケンス」は、例えば、発散する2次元X線ビームが患者の関心領域を通って2次元X線検出器に向かう、「コーンビームCT」等の取得アプローチを使用して取得される。
【0041】
以下において、「2D投影フレームシーケンス」は、X線検出器から受け取られるピクセル値(X線強度および/またはエネルギーをトラッキングする)を表す複数の「2D X線投影データ」を含み、これらのピクセル値は、取得システムのジオメトリ、線源、検出器および/またはアイソセンターの位置と向き、患者および/またはテーブルの位置と向き、画像取得の時間、または画像取得の任意の関連パラメータの影響を受ける。
【0042】
以下において、「機械的画像取得システム」という用語は、典型的には「Cアーム」X線撮像システムを指す。ただし、この用語は、経時的な機械的偏差が不正確さをもたらす可能性がある任意の他の形態の機械的画像取得手段、例えばCTスキャナ、マンモグラフィ用の断層撮影X線スキャナ、MRIスキャナ、蛍光透視スキャナ等にも関連し得る。
【0043】
以下において、「機械的画像取得システムの検査領域」という用語は、機械的画像取得システムが対象物の画像および/またはフレームシーケンスを取得できるように、対象物が配置され得る空間を意味する。例えば、「検査領域」は、取得中にCアームの軌道が周囲を動き得る、対象物を含む3D空間を指し得る。異なる時間において、異なる対象物(第1または第2の患者)が検査領域内に存在してもよく、あるいは、同じ対象物(患者)が2つの別々の時点において撮像されてもよいことが理解されよう。
【0044】
以下において、「異なる時間」という用語は、第1および第2のフレームシーケンスの取得が、機械的画像取得システムを用いた異なる第1および第2の医療検査のものであることを意味する。例えば、第1のフレームシーケンスは第1の患者のものであり、第2のフレームシーケンスは2番目の患者のものである。
【0045】
以下において、「機械的撮像システムのジオメトリ」という用語は、例えば、X線検出器およびX線源、ならびにそれらの支持要素の間の空間的関係を指す。機械的Cアームの場合、X線源およびX線検出器はC字型の支持ブラケット上に配置される。この場合、機械的撮像システムのジオメトリは、少なくとも、X線源とX線検出器との間の線形分離、およびX線検出器の平面に対するX線源の平面の2次元での角度によって定められる。したがって、Cアームの場合での「予想較正ジオメトリ」とは、例えば少なくとも、Cアームの構造的寸法の結果としての、X線源とX線検出器との間の線形分離の予想値、およびX線検出器の平面に対するX線源の平面の関係を指す。Cアームが例として提供されているが、予想較正ジオメトリの概念は、様々なより複雑なシステムに拡張され得ることが理解されよう。したがって、「予想較正データ」は、例えば、特定のCアームにおけるX線源とX線検出器の関係、例えば両者の間の空間的関係に関するデータを含むコンピュータデータ構造である。較正ルーチン中に、X線源とX線検出器との間のわずかな変位が特定された場合、将来の測定で補正ができるよう、これが予想較正データ内に記録されてもよいし、または、この特定された変位はさらなるデータ処理、例えば断層撮影再構成中に使用されてもよい。
【0046】
以下において、「機械的画像取得システムの幾何学的偏差」という用語は、使用中にまたは時間の経過とともに、機械的画像取得システムが予想較正ジオメトリと比較して予期しない幾何学的構成に入ることを指す。Cアーム撮像システムの場合の例として、X線源と検出器のペアを支持するCブラケットは理想的には剛性であると想定されるが、実際には、Cアームが軌道の周囲を動くのに伴いある程度の非理想的なたわみを経験する。例えば、Cアームが、Cアームを支える床に対して垂直な関係でX線源をX線検出器の上方に保持しており、その後、X線源が弧を描きながら床に向かって下方に移動し、X線検出器が弧を描きながら床から離れて上方に移動するよう、Cアームがベアリングにおいて時計回りに45°回転させられると、X線源の重量がCアームブラケットを重力方向にねじろうとしようすることで、ブラケットは小さいながらも検出可能な程度に曲がる。機械的画像取得システムのこのたわみは、予想較正データにおいて考慮されない可能性があるため、Cアームが軌道の周囲を移動するにつれて取得される2D投影フレームは、非理想的なジオメトリで取得される。
【0047】
当業者は、より複雑な機械的画像取得システムは多くの軸(例えば、6軸、または9軸)を含み、かつ複雑な軌道を描き得ることを理解するであろう。多数の軸を提供する個々の機械要素のたわみの合計はさらなる幾何学的偏差をもたらすが、以下の記載によればこれも補償可能である。
【0048】
以下において、「剛性動き補償」という用語は、2D投影セット内の構造物が骨等の剛体であると仮定して、初期3D再構成または他の態様で取得された参照データを2D投影セットに対して位置合わせするための画像処理技術である。これは、2D画像データおよび参照データ(例えば、初期3D再構成)に基づき、撮像対象物と画像システムの構成要素との間の空間的または時間的に補正された関係を提供する。
【0049】
以下において、「較正アクション」という用語は、メッセージが外部コンピュータシステムに送信されること、または、システムを再較正する必要があることを機械的画像取得システムのユーザに警告するよう、メッセージがディスプレイ上でユーザに送られることを意味する。また、任意選択的に、「較正アクション」という用語は、較正偏差の特定後に予想較正データを自動補正することを意味し得る。言い換えれば、「較正アクション」という用語は、較正偏差の特定後に、単独でまたは組み合わせて、多様な適切なプロセスが生じ得るということを幅広く網羅し得る。
【0050】
以下において、2つの変数に対して「類似性」という用語が適用される場合、これは、変数を提供する機械的画像取得システムの繰り返し生じる機械的欠陥(幾何学的欠陥、または較正誤差)に起因して生じた変数間の関係を意味する。本願では、(任意選択的に異なる患者について)異なる時間に取得された少なくとも2つの撮像シーケンスの2つの剛性動き補償の結果、第1および第2のフレーム偏差指標シーケンスが得られる。少なくとも2つの撮像シーケンス間の共通する機械的問題(例えば、撮像システムの方位角ジョイントにおける較正エンコーダのスリップ)は、第1および第2のフレーム偏差指標シーケンスの一部に現れる。現れたものが類似していることを特定できるという事実は、類似性の決定につながる。そのような類似性を特定するために、様々な信号処理手法が少なくとも2つの変数に適用され得る。例えば、変数が機械的画像取得システムのアームの「たるみ」に起因する空間偏差を表す場合、類似性を特定するための1つの手法として、少なくとも2つの変数の部分にウィンドウを適用し、少なくとも2つの変数の勾配が、例えば0.1%、1%、2%、5%、10%、または20%以内だった部分を特定することが考えられる。他の様々な信号比較手法が適用され得る。例えば、2つの変数(フレーム偏差指標)に相互相関を適用し、変数間の相互相関が特定の閾値を超える場合に類似性が存在すると決定されてもよい。
【0051】
したがって、本願の基本的なアイデアは、機械的画像取得システムの幾何学的精度の経時的変化を検出するために、少なくとも2つの2D投影フレームシーケンスが複数の患者から取得され得るというものである。予想されるシステム較正からの幾何学的偏差に基づいて、機械的画像取得システムの較正が調整または反復され得る。予想されるシステム較正からの逸脱は、予想されるシステム較正からの逸脱を示唆する少なくとも2つの2D投影フレームシーケンス内の類似性を特定することによって特定される。
【0052】
言い換えれば、第1および第2の取得において同じ機械的画像取得システムから取得された投影フレームシーケンス間の共通のバイアスを特定し、これを機械的画像取得システムの予想較正データと比較することでフレーム偏差指標を生成することが提案される。第1および第2のフレーム偏差指標シーケンス間の類似性が決定された場合、1つまたは複数の較正アクションが実行される(例えば、較正を提供する必要があることをユーザに警告する、および/またはジオメトリ偏差を自動的に補正する等)。
【図面の簡単な説明】
【0053】
例示的な実施形態を以下の図面を参照しながら説明する。
【0054】
図1図1は、機械的画像取得システムを含むX線撮像システムを概略的に示す。
図2図2は第2の側面に係る方法を概略的に示す。
図3図3は、3人の患者の臨床データセットのフレーム番号にわたってプロットされた幾何学的変換パラメータを示す。
図4図4は、動き補正された軌道について、フレーム番号に対してプロットされた10人の患者からの平均幾何学的変換パラメータを示す。
図5図5は、機械的画像取得システムの誤差トラッキングおよび較正を実行するための装置を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0055】
図1は、Cアーム取得スイート10(X線撮像システム)を示す。「コーンビームコンピュータ断層撮影」技術(CBCT)を適用するCアーム取得システムは一般的な3D画像取得技術であるが、画像取得技術はこの取得技術に限定されないことに留意されたい。
【0056】
Cアーム取得スイート10は、Cアーム取得スイートのシーリング14に取り付けられたCアーム12を含む。Cアーム12は、回転可能な方位角接続部12aによってシーリング14に取り付けられ、回転可能なベアリング12bが傾斜方向における自由度を提供する。X線源12cは、X線検出器12d(任意選択的にDFP(digital flat panel)検出器である)に面するCアーム12の第1の端部に配置される。検査領域16はX線源12cとX線フラットパネル検出器12dとの間に設けられる。検査領域16内の物体(例えば、患者の頭部)に対するX線源12cおよびX線検出器12dの角度に応じて、Cアーム12が検査領域16の周りの軌道内で動かされるに連れて2D X線投影画像のシーケンスが取得され得る。2D X線投影画像のシーケンスは、2D X線投影画像シーケンスに対して断層撮影再構成アルゴリズムを適用するように構成された、したがって、検査領域16内の患者の関心領域の3D画像を提供するように、かつ任意選択的に表示するように構成された装置18に提供される。典型的には、装置18は、FBP(filtered back projection)アルゴリズムまたはIR(iterative reconstruction)アルゴリズムを適用して、患者の関心領域の3D画像を取得する(ただし、他の多くのそのような断層撮影再構成アルゴリズムも適用され得る)。
【0057】
図1にはCアーム機械的画像取得システムが示されているが、以下の記載は、撮像検出器を支持する可動機械的要素を備えるあらゆる画像取得システム(例えば、X線源とX線検出器とのペア)に適用される。
【0058】
例えば、図1に示されるCアーム12において、方位角接続部12aおよび回転可能なベアリング12bは、回転の不正確さを導入する。X線源12dおよびX線検出器12dを支持するCブラケットは、Cブラケットが検査領域16の周囲の経路を囲うようにスライドすることを可能にする機能を有するリニアモータによって、回転可能なベアリング12bに取り付けられる。このようなリニアモータは、並進の不正確さを導入し得る。Cアームの指示された位置に対する回転および並進誤差の独立した事例の出現は既に問題である。しかも、例えば、方位角接続部12a、回転可能なベアリング12b、およびCブラケットを回転可能なベアリング12Bに接続するリニアモータにわたって誤差が相乗的に増えることを考慮すると、結果として生じる誤差は増幅する。
【0059】
言い換えれば、Cアーム12が制御装置18によって検査領域16の周りの一般的な軌道を実行するように指示された場合、幾何学的偏差に起因して、Cアーム12が実際に実行する軌道は、制御装置18がCアーム12に実行するように指示する軌道とは異なる。Cアームシステムの機械的不正確さによって引き起こされる幾何学的偏差に対応するための補正がない場合、取得された2D投影フレームシーケンスの3D再構成は高レベルの再構成誤差を有する。
【0060】
当業者は、上記で概説した問題が、任意のデータ(例えば、検査領域16)に関して任意の座標系(デカルト、極、パラメトリック)において出現することを理解するであろうし、よって、本願では、好ましいジオメトリからの誤差および幾何学的偏差の議論は、任意の座標系およびデータのケースに関連することが理解されよう。
【0061】
上記で概説した問題の解決策は、検査領域16において、既知の3D構造を有する検査ファントムを提供することである。その場合、Cアームシステムは、一連の事前に定められた軌道経路で検査領域16の周りを操作される。予想ジオメトリからのCアームシステムの逸脱によって引き起こされる、そのようにして取得された検査ファントムの2D投影フレームシーケンスの再構成における誤差は、例えば、Cアームシステムの予想較正データを更新するために使用され得る。しかし、これは予想較正データの唯一のソースではなく、例えば、Cアームシステムの整備(servicing)からも生じ得る。しかし、検査ファントムを使用して予想較正データを頻繁に更新することは望ましくない。なぜなら、較正中にはCアームシステムを医療インターベンションのために使用することができないからである。
【0062】
第2の側面によれば、機械的画像取得システムを較正するための誤差トラッキング方法が提供され、方法は、
a)異なる時間において機械的画像取得システムの検査領域の少なくとも第1および第2の2D投影フレームシーケンスを取得するステップであって、第1および第2の取得において同じ機械的画像取得システムが使用される、ステップと、
b)機械的画像取得システムの予想される較正されたジオメトリを定める予想較正データを取得するステップと、
c)少なくとも第1および第2の2D投影シーケンスに別々に剛性動き補償を適用し、補償された第1および第2の2D投影シーケンスを予想される較正されたジオメトリと別々に比較することで、第1および第2の取得中に生じた、予想される較正されたジオメトリからの機械的画像取得システムの幾何学的偏差を表す第1および第2のフレーム偏差指標シーケンスを生成するステップと、
d)第1のフレーム偏差指標シーケンスと第2のフレーム偏差指標シーケンスとの間の類似性を決定するステップと、
e)第1および第2のフレーム偏差指標シーケンスの少なくとも一部の間に類似性が決定された場合、1つまたは複数の較正アクションを実行するステップとを含む。
【0063】
図2は第2の側面に係る方法を概略的に示す。
【0064】
ステップa)において、機械的画像取得システムを使用して、少なくとも第1および第2の2D投影フレームシーケンスが取得される(ただし、任意の複数のシーケンスが取得され得る)。各シーケンスは異なる時間において取得される。各シーケンスは同じ物体(患者)のものであってもよいし、異なる物体(患者)のものであってもよい。言い換えれば、第1の2D投影フレームシーケンスにおいて、機械的画像取得システムの予想される較正された状態からの第1の幾何学的偏差が得られる。第2の2D投影フレームシーケンスにおいて、機械的画像取得システムの予想される較正された状態からの第2の幾何学的偏差が得られる。
【0065】
2D投影フレームシーケンスの各フレームは、任意選択的に、X線検出器12dによって取得された検査領域16の断面を通る2次元強度マップである。しかし、他の撮像モダリティは、例えば、検査領域16を通る一次元スライスを取得し得る。任意選択的に、機械的画像取得システムによって適用される画像技術は、「コーンビームコンピュータ断層撮影」(CBCT)である。
【0066】
ステップb)において、機械的画像取得システムの制御回路によって予想較正データが受け取られる。予想較正データは、例えば、較正ファントムを使用して較正誤差を以前に測定した機械的画像取得システムのプロセッサ上で実行されるソフトウェアモジュールから提供され得る。任意選択的に、予想較正データは、サービスラップトップパーソナルコンピュータからダウンロードされてもよく、またはインターネット等の広域ネットワークを介して提供されてもよく、または機械的画像取得システムのベンダーサーバから受け取られてもよい。
【0067】
予想較正データは、機械的画像取得システムの較正において、以前に特定された誤差を考慮に入れる。したがって、所与の画像取得プロトコルに関して、後のデータ処理中に、以前に特定された誤差が機械的に補正されたり、または以前に特定された誤差の存在が考慮に入れられ得る。予想較正データは様々なフォーマットを有し得る。任意選択的に、機械的画像取得システムの各自由度についての寸法を有するルックアップテーブルが提供される。したがって、機械的画像取得システムが各自由度における一連のポジション値によって定められる位置につくように取得プロトコルによって命じられると、取得プロトコルコマンドへの補正をルックアップテーブルから直接読み出すことができる。任意選択的に、予想較正データは、パラメータ化可能な数学的モデル、または以前に経験された較正挙動のデータベースによって提供または補足され得る。このようにすることで、予想較正データは、以前に測定された機械的画像取得システムの予想較正投影ジオメトリを定めることができる。
【0068】
当業者は、方法のここまでの工程において、機械的画像取得システムが、以前に特定された較正誤差を補正する能力を備えているものの、新たな較正誤差を特定する能力は備えていないことを理解するであろう。
【0069】
ステップc)において、第1および第2の2D投影シーケンスに対して少なくとも2つの剛性動き補償が実行される。言い換えれば、第1の取得中に得られた検査領域16内の物体の向きと、第2の取得中に得られた向きが別々に計算される。
【0070】
任意選択的に、剛性動き補償は、同じ軌道を使用して取得された第1および第2の2D投影フレームシーケンスに対して実行される。任意選択的に、剛性動き補償は、同じ軌道を使用して取得された第1および第2の2D投影フレームシーケンスの部分に対して実行される。任意選択的に、第1および第2の2D投影フレームシーケンスが同じ軌道を使用したという条件は、それぞれ第1および第2の入力軌道命令を使用して特定され得る。任意選択的に、第1および第2の2D投影フレームシーケンスが同じ軌道を使用したという条件は、第1および第2の2D投影シーケンスに適用される剛性動き補償から特定され得る。
【0071】
各2D投影シーケンスの複数のフレームについて、機械的画像取得システムのフレーム偏差指標が(フレーム番号ごとに)提供され、この指標は、特定のフレーム番号における予想される較正された投影ジオメトリからの、少なくとも1つの自由度における機械的画像取得システムの幾何学的偏差を表す。フレーム偏差指標は、任意選択的に、剛性動き補償の結果を、予想較正投影ジオメトリと比較することによって計算される。結果は、各2D投影フレームシーケンスについて、フレーム番号ごとのCアームシステムの回転および/または並進偏差を追跡するフレーム偏差指標シーケンスである。
【0072】
図3は、異なる患者の3つの臨床データセット(P1、P2、P3)のための機械的画像取得システムの動きの幾何学的変換パラメータをフレーム番号に関してプロットしたグラフである。この例では、6つの自由度を有する機械的画像取得システムが考慮されているが、当業者は、より多くのまたはより少ない数の自由度を追跡できることを認識するであろう。左側の列(T)の各グラフの3本の線は、患者ごとに、フレーム番号に対して3つの並進自由度を追跡する。左側の列のグラフのy軸は、理想的なケースと測定されたケースとの間の取得で使用される機械的画像取得システムの偏差の性能指数である並進パラメータ値(単位はmm)を定める。右側の列のグラフのY軸は、理想的なケースと測定されたケースとの間の取得で使用される機械的画像取得システムの偏差の性能指数である回転パラメータ値(単位はラジアン)を定める。右側の列(R)の各グラフの3本の線は、患者ごとに、フレーム番号に対する3つの回転自由度を追跡する。
【0073】
取得期間中、3人の患者全てでパラメータが異なることがわかる。
【0074】
ステップd)において、第1および第2のフレーム偏差指標の部分間の類似性が、例えば、第1のシーケンスの複数のフレーム偏差指標を第2のシーケンスの複数のフレーム偏差指標と比較することによって、決定される。実際には、この比較は任意選択的に、例えば、第1のフレーム偏差指標と第2のフレーム偏差指標との間の相互相関を使用して、任意選択的に、スライディングウィンドウを使用して、実行される。しかし、当業者は、類似性を特定するために第1および第2のフレーム偏差指標シーケンスを比較する方法が多数存在することを理解するであろう。他の選択肢は、パターンマッチング法、カルマンフィルタ、平均化、ローカルもしくはグローバル類似性指標、特徴検出、機械学習、人工知能、またはニューラルネットワークの使用を含み得る。
【0075】
例えば、不正確に較正されたロータリエンコーダを備える方位角ジョイントを問題として抱えるCアームでは、理想的なケースからの方位角偏差に関するフレーム偏差指標の第1および第2のシーケンスの両方が、不正確に較正されたロータリエンコーダに起因する同じ不正確さが含む。したがって、この場合、第1および第2のフレーム偏差指標シーケンスの両方が方位角ジョイントが回転されたときに同じ角度オフセットを有するので、第1および第2のフレーム偏差指標シーケンス間の相関は検出可能である。
【0076】
当業者は、前段落の例は、機械的画像取得システムの機械的構成の他の側面、例えば、撮像アームが軌道のために撮像アームの支持体から伸ばされる際の撮像アームのカンチレバー型変形等に適用可能であることを許容するであろう。
【0077】
ステップe)において、例えば、第1および第2のフレーム偏差指標の相互相関が所与の閾値を超える場合に、第1および第2のフレーム偏差指標シーケンスの類似性が特定され得る。ステップd)の説明に列挙されている他の比較技術についても同様の閾値が提供され得る。
【0078】
図4は、動き補正された軌道について、フレーム番号に対してプロットされた10人の患者からの平均幾何学的変換パラメータを示す。図4a)は、フレーム番号に対して3つの並進自由度22、24、26をmm単位(y軸上)で測定する。図4b)は、フレーム番号に対して3つの回転自由度28、30、32をラジアン単位(y軸上)で追跡する。少なくとも図4a)のグラフの20で示される部分において、平均並進自由度26がCアームジオメトリの再調整の必要性を示している。なぜなら、同様なフレーム番号範囲にかけて、同じ並進自由度において同じ逸脱が繰り返され、全10人の患者にわたる平均が増加しているからである。なお、並進自由度24も、同様のフレーム番号範囲にわたって同じ傾向を示している。
【0079】
ステップd)で第1および第2のフレーム偏差指標シーケンスの間の類似性が特定された場合、ステップe)において、1つまたは複数の較正アクションが実行される。定義の節で上述したように、「較正アクション」という用語は、データネットワークを介するデータメッセージの送信によって、外部ユーザまたはメンテナンスサービスに機械的画像取得システムが較正を必要とすることを知らせることを意味し得る。任意センタ的に、較正アクションという用語は、機械的画像取得システム自体が自動的に較正ルーチンを実行することを意味し得る。
【0080】
任意選択的に、第1のフレーム偏差指標シーケンスと第2のフレーム偏差指標シーケンスとの間の類似性を決定するステップd)はさらに、
d1)選択された数の第1のフレーム偏差指標シーケンスを、選択された数の第2のフレーム偏差指標シーケンス比較するステップと、
d2)第1および第2のフレーム偏差指標シーケンスの少なくとも第1のマッチ部分を特定するステップとを含む。
【0081】
例えば、第1および第2のフレーム偏差指標シーケンス間のマッチ部分は、所与の数のフレームインデックスにわたって、両フレーム偏差指標シーケンスが同じ勾配を辿る部分であり得る。ただし、当業者は、様々なパターンやマッチが特定され得ることを理解するであろう。
【0082】
任意選択的に、少なくとも第1および第2の2D投影シーケンスに別々に剛性動き補償を適用するステップは、さらに、
c1)第1および第2の2D投影シーケンスのそれぞれの第1および第2の初期3D再構成を生成するステップと、
c2)第1の初期3D再構成を第1の2D投影フレームシーケンスに重ねることによって第1のフレームオフセットベクトルを生成するステップと、
c3)第2の初期3D再構成を第2の2D投影フレームシーケンスに重ねることによって第2のフレームオフセットベクトルを生成するステップとを含む。
【0083】
任意選択的に、少なくとも第1および第2の2D投影シーケンスに別々に剛性動き補償を適用するステップは、さらに、
c4)第1および第2の2D投影シーケンスのそれぞれの連続する再構成において第1および第2の画質統計を最適化することによって、第1および第2のフレーム偏差指標シーケンスを繰り返し生成するステップを含む。
【0084】
任意選択的に、画質統計は、不適切な較正による機械的画像取得システムのミスアラインメントに起因するぼやけ、および/または「リングアーチファクト」の存在であり得る。ただし、当業者は他の画質統計を特定してもよい。
【0085】
任意選択的に、第2の側面の方法はさらに、
a1)取得システムの偏差閾値データを受け取るステップと、
e1)第1および第2のフレーム偏差指標シーケンスの部分と、類似性が決定された閾値データとの間の差に基づいて、予想較正ジオメトリからの機械的画像取得システムの第1の測定偏差を特定するステップと、
e2)第1の測定偏差が偏差閾値データ内の閾値を上回る場合、ユーザにメンテナンスプロンプトを表示することによって、および/またはデータ通信ネットワークを介して外部メンテナンスサーバにメンテナンスリクエストを送信することによって、較正アクションを実行するステップとを含む。
【0086】
したがって、検出された共通パターンが事前に定められた閾値を上回る場合、メンテナンスリクエストが表示されたり、またはメンテナンスが自動的にスケジュールされたりする。閾値基準のために使用されるメトリックは、機械的画像取得システムの全軌道にわたる平均として計算される、または各フレームについて個別に計算される、予想されたX線源(またはX線検出器もしくは両方の組み合わせ)位置と求められたX線源位置のデカルト3D距離であり得る。他の多くの適切なメトリックが使用されてもよい。
【0087】
任意選択的に、第2の側面の方法はさらに、
a2)第1および第2の2D投影フレームシーケンスに後続する時間において、第3の2D投影フレームシーケンスを取得するステップと、
d3)対応する、予想される較正されたジオメトリからの第3の2D投影フレームシーケンスの第3のフレーム偏差指標シーケンスを決定するステップと、
e1)第2および第3のフレーム偏差指標シーケンスの部分間の類似性を特定するステップと、
e2)第2および第3のフレーム偏差指標シーケンスの部分間の類似性に基づいて、第2および第3のフレーム偏差指標シーケンス間の予想される較正ジオメトリからの機械的画像取得システムの第2の測定偏差を特定するステップと、
e3)第1の測定偏差と第2の測定偏差との間の差の変化率を使用して、将来のメンテナンス期間のスケジューリング時間を予測するステップと、
e3)較正アクションとして、将来のメンテナンス期間のスケジューリング時間をデータ通信ネットワークを介して外部メンテナンスサーバに送信し、かつ/またはスケジューリング時間をユーザに表示するステップとを含む。
【0088】
したがって、第2の側面に従ってテストを複数の時間間隔にかけて実行することにより、閾値基準をいつ超過するかを予測するために、時間経過に伴う共通パターンの変化を使用することができる。これは、予知保全をスケジュールするために使用され得る。
【0089】
任意選択的に、第2の側面の方法はさらに、
d4)第1のフレーム偏差指標シーケンスに基づいて、第1の2D投影シーケンスの取得中に機械的画像取得システムの第1の補正された軌道を推定し、第2のフレーム偏差指標シーケンスに基づいて、第2の機械的画像CT投影シーケンスの取得中に機械的画像取得システムの第2の補正された軌道を推定するステップを含む。
【0090】
任意選択的に、第2の側面の方法はさらに、
d5)互いに有意な類似性を有する第1および第2の補正された軌道の選択された部分を特定するステップと、
d6)選択された部分間の較正差データを計算するステップとを含み、
較正アクションを実行するステップは、
e5)第3の2D投影フレームシーケンスを取得し、較正差データを適用して補正された第3の2D投影フレームシーケンスを生成するステップを含む。
【0091】
「有意な類似性」という用語は、第1および第2の補正された軌道の選択された部分を比較するために使用される特定の方法に依存するが、例えば、相互相関の閾値であり得る。
【0092】
任意選択的に、第2の側面の方法はさらに、
a3)機械的画像取得システムの履歴ジオメトリ偏差の軌道データ例を含む軌道特性データベースを取得するステップを含み、
較正アクションは、
e6)第1および第2の補正された軌道の選択された部分のうちの少なくとも1つを、軌道特性データベース内の軌道データ例と比較するステップと、
e7)第1および第2の補正された軌道の選択された部分のうちの少なくとも1つが、機械的画像取得システムの履歴ジオメトリ偏差に類似していることを確認するステップとを含む。
【0093】
したがって、見つけられた共通パターンをデータベースと、または訓練された分類器と比較することで、経時的に生じる典型的幾何学的変化である偏差が特定される。他の特定されたパターンは、再較正を必要としない偽の特定であり得る。
【0094】
任意選択的に、第2の側面の方法はさらに、
a4)第1および/または第2の2D投影フレーム取得シーケンスの取得中に使用される機械的画像取得シーケンスの取得プロトコルを受け取る、および/または自動的に特定するステップを含み、
較正アクションは、
e8)取得プロトコルに基づいて、第1のフレーム偏差指標シーケンスに信頼度を割り当てるステップを含む。
【0095】
例えば、取得された第1および第2の2D投影フレームシーケンスとともに追加の患者データが記憶され得る。例えば、取得中に患者が鎮静剤を投与されていたか否かに関する情報が考えられる。そのような情報は、患者が取得中に動かなかったケースを特定するために使用され、よって、当該データは比較ステップおよび特定ステップにおいてより高い重要性を与えられ得る。
【0096】
任意選択的に、第2の側面に係る方法への適用にあたり、特定のタイプの取得が他のタイプの取得よりも適している可能性がある。例えば、頭部Cアームスキャンは、強固な骨のフィーチャにより、より正確な剛性動き補償が可能になるという利点を有する。したがって、方法は、これらのタイプの取得のみに焦点を当ててもよく、または、発見された事項が決定的でなかったり、もしくは利用可能なデータが不十分である場合、これらのタイプの取得により高い重要性が与えられ得る。また、患者の強い動きが生じた場合、または、再構成の品質や他の関連するアルゴリズムに影響を与えるその他の固有の相違(例えば、インプラント)がある場合は、一部の個別の取得が分析から除外され得る。
【0097】
任意選択的に、第1および第2のフレーム偏差指標シーケンスは、理想的に較正されたケースからのそれぞれの第1および第2のオフセットベクトルの大きさを表す第1および第2の大きさシーケンスを含む。
【0098】
任意選択的に、機械的画像取得システムはCアームである。
【0099】
言い換えれば、第2の側面は、(例えば)各CT取得後に2D/3Dレジストレーション方法を、または別の剛性動き補償方法を(任意選択的にバックグラウンドで)適用することについて論じる。複数の患者からの動き補正された軌道が経時的に比較される。複数の患者について一貫している予想機械的画像取得システムの軌道からの逸脱は、機械的取得システムにおける不正確さとして特定される。このようにして、複数のデータセットを比較することにより、機械的画像取得システムによって一貫して引き起こされる偏差に焦点を当てることができる。患者の動き、または(機械的画像取得システムとは独立した固有の変動を引き起こす)その他の偏差が平均化される。
【0100】
第1の任意選択的な実施形態は、発見された偏差が所定の閾値を上回る場合、機械的画像取得システムの外部または内部ディスプレイ上にメンテナンスリクエストを表示するか、または、メンテナンスを自動的にスケジュールする。別の実施形態では、Cアームシステムのジオメトリ較正は、認められた偏差に基づいて自動的に補正される。
【0101】
提供される手順の概要は以下の通りである。
1)同じ軌道で記録された複数の画像取得について剛性動き補償を実行する。言い換えれば、全ての回転取得2D投影に初期3D再構成が重ねられる。代替的に、またはこれと組み合わせて、再構成された3D画像におけるアーチファクト指標またはシャープネス指標が最適化され得る。
2)対応する動き補正された軌道が各スキャンについて計算される。
3)最近の時間間隔からの動き補正された軌道のセットが選択される。
4)選択された動き補正された軌道が互いに比較され、例えば平均化、ローカルおよびグローバル類似性指標、特徴検出、機械学習、またはニューラルネットワークを使用して、共通パターンが抽出される。
5)1つまたは複数の較正アクション、例えばメンテナンスリクエストをトリガーすること、または機械的画像取得システムのジオメトリを自動較正すること等が生成される。
【0102】
任意選択的に、装置は、動き補償された3D再構成をユーザに表示するための出力ユニット56を備える。例えば、出力ユニット56はコンピュータディスプレイであってもよい。当然ながら、出力ユニットは、動き補償された3D再構成を別のコンピュータまたは表示ユニットに送信するように構成されたデータ通信手段であり得る。任意選択的に、動き補償された3D再構成は、ハンドヘルドディスプレイに安全に送信されてもよく、あるいはPACSサーバ等の安全なデータストレージ手段に提供されてもよい。
【0103】
図5は、第1の側面およびその任意選択的な実施形態に係る装置40を示す。
【0104】
第1の側面によれば、機械的画像取得システムの誤差トラッキングおよび較正を実行するための装置40が提供される。装置は、
- 入力ユニット42と、
- 処理ユニット44とを備える。
【0105】
入力ユニット42は、異なる時間において機械的画像取得システムの検査領域の少なくとも第1および第2の2D投影フレームシーケンスを取得するように構成され、ここで、第1および第2の取得において同じ機械的画像取得システムが使用され、入力ユニットはさらに、機械的画像取得システムの予想される較正されたジオメトリを定める予想較正データを取得するように構成される。
【0106】
処理ユニット44は、少なくとも第1および第2の2D投影シーケンスに別々に剛性動き補償を適用し、補償された第1および第2の2D投影シーケンスを予想される較正されたジオメトリと別々に比較することで、第1および第2の取得中に生じた、予想される較正されたジオメトリからの機械的画像取得システムの幾何学的偏差を表す第1および第2のフレーム偏差指標シーケンスを生成し、第1のフレーム偏差指標シーケンスの少なくとも一部と第2のフレーム偏差指標シーケンスの少なくとも一部の間の類似性を決定し、第1および第2のフレーム偏差指標シーケンスのそれぞれの部分の間に類似性が決定された場合、1つまたは複数の較正アクションを実行するように構成される。
【0107】
任意選択的に、装置は、コンピュータ(任意選択的に、グラフィックス処理ユニットとともに構成される)として、または例えばFPGA(field programmable gate array)もしくはASIC(application-specific integrated circuit)において修正された特定機能ハードウェアとして提供される。あるいは、装置は、例えば、PACSシステム内の集中サーバ上に提供され得る。入力ユニット42は、入力投影画像シーケンス、ならびに第1の3D剛体データおよび第2の3D剛体データを受け取るように構成される。しかし、当業者は、そのようなデータを受け取るように機能可能な広範囲のデバイスを理解するであろう。例えば、入力ユニットは、X線断層撮影またはCアーム取得システムへの接続を含み得る。任意選択的に、入力ユニットは、モデム、LANもしくはWAN接続、または別のデータ通信手段を含み得る。
【0108】
処理ユニット44は、入力ユニット42から入力情報を受け取り、上記の第2の側面で説明した方法に従って入力情報を処理する。任意選択的に、装置40は出力ユニット46を備え得る。出力ユニットは、例えば、コンピュータモニタ上に3D再構成データおよび/またはメンテナンスメッセージおよび/または較正データを表示することを可能にするグラフィックディスプレイカードであり得る。任意選択的に、出力ユニットは、例えば、動き補償された3D再構成データを安全なLAN、WANを介して通信したり、またはCD-ROM、DVD-ROM、USBドライブ、ポータブルハードドライブ、もしくはポータブルテープドライブ等に書き込むことを可能にするデータ通信手段を含む。
【0109】
任意選択的に、装置は、「発明の概要」の章で説明された第1の側面の実施形態を少なくとも含み得る。
【0110】
第3の側面によれば、X線撮像システム12であって、
- X線源12cと、
- X線検出器12dと、
- 第1の側面またはその実施形態に係る機械的画像取得システムの誤差トラッキングおよび較正を実行するための装置18とを備えるシステムが提供される。
【0111】
X線源12cは、第1の複数の取得角度から、X線放射によって関心領域を順次照射するように構成される。
【0112】
X線検出器12dは、それぞれ第1の取得時間および第2の取得時間において取得された患者の関心領域の少なくとも第1の2D X線投影データおよび第2の2D X線投影データを含む入力投影画像シーケンスを形成するために、第2の複数の取得角度から関心領域を介して伝播したX線放射を受け取るように構成される。
【0113】
機械的画像取得システムの誤差トラッキングおよび較正を実行するための装置18は、X線検出器から第1および第2の2D X線投影データを受け取るように構成され、また、装置は、X線撮像システムの予想される較正されたジオメトリを定める予想較正データをX線撮像システムから受け取るように構成される。
【0114】
第4の側面によれば、第1および/または第3の側面に係る処理ユニットおよび/またはシステムを制御するためのコンピュータプログラム要素が提供され、前記コンピュータプログラム要素は、プロセッサおよび/またはシステムによって実行されると、第2の側面の方法を実行する。
【0115】
第5の側面によれば第4の側面のコンピュータプログラム要素を記憶したコンピュータ可読媒体が提供される。
【0116】
したがって、コンピュータプログラム要素は、本発明の実施形態であり得るコンピュータユニットに保存されてもよい。このコンピューティングユニットは、上記方法のステップを実行するよう、またはその実行を誘導するよう構成され得る。
【0117】
さらに、上記装置の構成要素を操作するよう構成されてもよい。
【0118】
コンピューティングユニットは、自動的に動作するようにかつ/またはユーザの指示を実行するように構成され得る。コンピュータプログラムは、データプロセッサの作業メモリにロードされてもよい。したがって、データプロセッサは、本発明の方法を実行するよう構成されてもよい。
【0119】
本発明のこの例示的な実施形態は、最初から本発明を備えるコンピュータプログラム、および、更新によって既存のプログラムを本発明を使用するプログラムに変更するコンピュータプログラムの両方をカバーする。コンピュータプログラムは、他のハードウェアと共にまたは他のハードウェアの一部として供給される光学記憶媒体またはソリッドステート媒体等の適切な媒体上で記憶および/または分配されてもよいし、インターネットまたは他の有線もしくは無線テレコミュニケーションシステムを介して等の他の形態で分配されてもよい。
【0120】
しかし、コンピュータプログラムは、ワールドワイドウェブのようなネットワークを介して提供され、かかるネットワークからデータプロセッサの作業メモリにダウンロードされてもよい。本発明の他の例示的な実施形態によれば、コンピュータプログラム要素をダウンロード可能にするための媒体が提供され、コンピュータプログラム要素は、本発明の上記実施形態の1つによる方法を実行するように構成される。
【0121】
本発明の実施形態は、異なる主題を参照して説明されていることに留意されたい。特に、一部の実施形態は方法タイプのクレームを参照して記載される一方、他の実施形態は装置タイプのクレームを参照して記載される。しかし、当業者は上記および下記の説明から、特に明記されない限り、1つのタイプの主題に属する特徴の組み合わせに加えて、異なる主題に関連する特徴の他の組み合わせが本願に開示されていると解されることを理解するであろう。
【0122】
特徴の単純な相加以上の相乗効果を提供するよう全ての特徴が組み合わせ可能である。
【0123】
本発明は、図面及び上記において詳細に図示及び記載されているが、かかる図示および記載は説明的または例示的であり、非限定的であると考えられるべきである。本発明は、開示の実施形態に限定されない。
【0124】
開示の実施形態の他の変形例が、図面、開示、および従属請求項から、クレームされる発明に係る当業者によって理解および実施され得る。
【0125】
特許請求の範囲において、「含む」という用語は他の要素またはステップを排除するものではなく、単数形は複数を除外しない。単一のプロセッサまたは他のユニットが、請求項に記載される複数のアイテムの機能を果たし得る。複数の手段が互いに異なる従属請求項に記載されているからといって、これらの手段の組み合わせが好適に使用することができないとは限らない。特許請求の範囲内のいかなる参照符号も、その範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
図1
図2
図3
図4a)】
図4b)】
図5