(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-18
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】発泡樹脂多層成形ボード及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 44/06 20060101AFI20220203BHJP
B29C 44/44 20060101ALI20220203BHJP
B32B 5/32 20060101ALI20220203BHJP
B29K 105/04 20060101ALN20220203BHJP
B29L 9/00 20060101ALN20220203BHJP
【FI】
B29C44/06
B29C44/44
B32B5/32
B29K105:04
B29L9:00
(21)【出願番号】P 2018553831
(86)(22)【出願日】2017-11-27
(86)【国際出願番号】 JP2017042376
(87)【国際公開番号】W WO2018101198
(87)【国際公開日】2018-06-07
【審査請求日】2020-09-01
(31)【優先権主張番号】P 2016232099
(32)【優先日】2016-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000221982
【氏名又は名称】東北資材工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093230
【氏名又は名称】西澤 利夫
(72)【発明者】
【氏名】澤口 哲也
【審査官】岩田 行剛
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-047629(JP,A)
【文献】特開2016-188325(JP,A)
【文献】特開2011-012395(JP,A)
【文献】特開平08-110153(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 44/00-44/60
B32B 5/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、面融着層成形用発泡樹脂材料を面状に融着させた面融着層と、ポーラス層成形用発泡樹脂材料を点状に融着させてポーラスを形成させたポーラス層とを有し、これらの層が一体に成形され
、
前記面融着層の一部が、前記ポーラス層と一体に形成された前記ポーラス層成形用発泡樹脂材料が面融着した面融着部により形成されていることを特徴とする発泡樹脂多層成形ボード。
【請求項2】
少なくとも、前記面融着層成形用発泡樹脂材料及びポーラス層成形用発泡樹脂材料のいずれかが、カーボンを含有していることを特徴とする請求項1に記載の発泡樹脂多層成形ボード。
【請求項3】
前記発泡樹脂多層成形ボードの表面に、微細凹凸が形成されていることを特徴とする請求項1
又は2に記載の発泡樹脂多層成形ボード。
【請求項4】
前記ポーラス層が、通水性又は通気性を有することを特徴とする請求項1から
3のいずれか一項に記載の発泡樹脂多層成形ボード。
【請求項5】
移動金型と固定金型を備える金型のキャビティ内に、面融着層成形用発泡樹脂材料を供給して発泡させて面状に融着させ、面融着層を成形する面融着層成形工程と、移動金型を固定金型から離れる方向にスライドさせることによって形成されたキャビティ内の空間、又は固定金型を移動金型から離れる方向にスライドさせることによって形成されたキャビティ内の空間に、ポーラス層成形用発泡樹脂材料を供給して発泡させて点状に融着させるポーラス層成形工程とを含むことを特徴とする発泡樹脂多層成形ボードの製造方法。
【請求項6】
前記面融着層成形工程において、面融着層の一部に、表裏面に貫通する貫通部を設けるとともに、
前記ポーラス層成形工程において、前記貫通部内にポーラス層成形用発泡樹脂材料を供給して発泡させて点状に融着させ、
前記ポーラス層成形工程の後に、面融着層側から再度加熱して、前記貫通部内で点状に融着させたポーラス層成形用発泡樹脂材料を面融着させて面融着部を形成することを特徴とする請求項
5に記載の発泡樹脂多層成形ボードの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡樹脂多層成形ボード及びその製造方法に関するものであり、詳しくは、住宅建材用の断熱材に使用される発泡樹脂多層成形ボード及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、魚箱、野菜輸送箱、家電製品や精密機器の梱包材、住宅建材用の断熱材、食品用のトレー等として発泡樹脂成形品が用いられている。発泡樹脂成形品は、軽量でありながら緩衝性、断熱性、適度な剛性等の様々な優れた機能性を有している。
【0003】
これらの中でも、住宅建材用の断熱材は、国が2014年に策定したエネルギー基本計画において、建築物について2030年までに新築住宅の平均でZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の実現を目指す等としていることから、その高い断熱性能が着目されている。
【0004】
このような状況において、建築物の断熱においては、近年、付加断熱工法が注目されている。この付加断熱工法は、壁内に断熱材を充填する従来の内張断熱と壁外に断熱材を施工する外張断熱とを併用する工法であり、さらなる高断熱化が可能であるため今後の需要が見込まれている。
【0005】
そして、この付加断熱工法の外張断熱に用いられる断熱材として、種々の機能性を付与した発泡樹脂成形品の断熱材が提案されている。具体的には、例えば、異なる種類の発泡樹脂材料を複数枚接着して多層に積層したものや、異なる種類の発泡樹脂材料を一体に成形して、保温、断熱、緩衝性能を付与した発泡樹脂成型品が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0006】
この特許文献1の発泡樹脂成型品は、加熱用金型と移動金型を用いて異なる硬度の発泡層を金型内で一体に積層して成形し、保温、断熱、緩衝性能を有する発泡樹脂成型品としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記特許文献1のように、異なる硬度の発泡樹脂材料を一体に成形してた発泡樹脂成形品は、保温、断熱、緩衝性能には優れているものの、付加断熱工法の外張断熱材として用いた場合、発泡樹脂成型品の表面に発生した結露や侵入した雨水等の水滴が外壁の内側に残存する場合があり、高い湿度を原因とする黴の発生や断熱材の劣化、また、断熱性能の低下が問題となっている。
【0009】
また、異なる種類の発泡樹脂材料を複数枚接着した発泡樹脂成型品においても、接着材料の層に通気性や通水性がないため、結露やカビの発生による断熱層の層間剥離や、これに伴う断熱性能の低下が問題となっている。
【0010】
本発明は以上のような事情に鑑みてなされたものであり、優れた断熱性を有するとともに高い通気性及び通水性を有し、さらに、高い耐久性を備えた発泡樹脂多層成形ボード及びその製造方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の発泡樹脂多層成形ボード及びその製造方法は、上記の技術的課題を解決するためになされたものであって、以下のことを特徴としている。
【0012】
第1に、本発明の発泡樹脂多層成形ボードは、少なくとも、面融着層成形用発泡樹脂材料を面状に融着させた面融着層と、ポーラス層成形用発泡樹脂材料を点状に融着させてポーラスを形成させたポーラス層とを有し、これらの層が一体に成形されていることを特徴とする。
【0013】
第2に、前記第1の発明の発泡樹脂多層成形ボードにおいて、少なくとも、前記面融着層成形用発泡樹脂材料及びポーラス層成形用発泡樹脂材料のいずれかが、カーボンを含有していることが好ましい。
【0014】
第3に、前記第1又は第2の発明の発泡樹脂多層成形ボードにおいて、前記面融着層の一部が、前記ポーラス層と一体に形成された前記ポーラス層成形用発泡樹脂材料が面融着した面融着部により形成されていることが好ましい。
【0015】
第4に、前記第1から第3の発明の発泡樹脂多層成形ボードにおいて、前記発泡樹脂多層成形ボードの表面に、微細凹凸が形成されていることが好ましい。
【0016】
第5に、前記第1から第4の発明の発泡樹脂多層成形ボードにおいて、前記ポーラス層が、通水性又は通気性を有することが好ましい。
【0017】
第6に、本発明の発泡樹脂多層成形ボードの製造方法は、移動金型と固定金型を備える金型のキャビティ内に、面融着層成形用発泡樹脂材料を供給して発泡させて面状に融着させ、面融着層を成形する面融着層成形工程と、移動金型を固定金型から離れる方向にスライドさせることによって形成されたキャビティ内の空間、又は固定金型を移動金型から離れる方向にスライドさせることによって形成されたキャビティ内の空間に、ポーラス層成形用発泡樹脂材料を供給して発泡させて点状に融着させるポーラス層成形工程とを含むことを特徴とする。
【0018】
第7に、前記第6の発明の発泡樹脂多層成形ボードの製造方法において、前記面融着層成形工程において、面融着層の一部に、表裏面に貫通する貫通部を設けるとともに、
前記ポーラス層成形工程において、前記貫通部内にポーラス層成形用発泡樹脂材料を供給して発泡させて点状に融着させ、
前記ポーラス層成形工程の後に、面融着層側から再度加熱して、前記貫通部内で点状に融着させたポーラス層成形用発泡樹脂材料を面融着させて面融着部を形成することが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、優れた断熱性を有するとともに高い通気性及び通水性を有し、さらに、高い耐久性を備えた発泡樹脂多層成形ボード及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明に係る発泡樹脂多層成形ボードの一実施形態を示す概略断面図である。
【
図2】(A)は面融着層の表面の拡大写真であり、(B)はポーラス層の表面の拡大写真である。
【
図3】発泡樹脂多層成形ボードの表面に形成した微細凹凸の拡大写真である。
【
図4】(A)~(E)は、本発明に係る発泡樹脂多層成形ボードの製造工程を示した概略説明図である。
【
図5】本発明に係る発泡樹脂多層成形ボードの他の実施形態を示す概略断面図である。
【
図6】本発明に係る発泡樹脂多層成形ボードの他の実施形態を示す実物写真であり、(A)は面融着層側から見た写真であり、(B)はポーラス層側から見た写真である。
【
図7】(A)~(F)は、本発明に係る発泡樹脂多層成形ボードの他の実施形態の製造工程を示した概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、発明を実施するための形態を示し、本発明の発泡樹脂多層成形ボードをさらに詳細に説明する。
図1は本発明の発泡樹脂多層成形ボードの構造の一実施形態を示す概略断面図であり、
図2(A)は面融着層の表面の拡大写真、
図2(B)はポーラス層の表面の拡大写真である。
【0022】
本実施形態の発泡樹脂多層成形ボード1は、少なくとも、面融着層成形用発泡樹脂材料21を面状に融着させた面融着層2と、ポーラス層成形用発泡樹脂材料31を点状に融着させてポーラスを形成させたポーラス層3とを有し、これらの層が一体に成形されている発泡樹脂多層成形ボード1である。
【0023】
本発明の発泡樹脂多層成形ボード1の面融着層2は、予備発泡させた熱可塑性樹脂からなる面融着層成形用発泡樹脂材料21を二次発泡させて面状に融着させて成形した層である。面融着層2は、
図2(B)に示すように、隣り合う面融着層成形用発泡樹脂材料21同士の一粒一粒がほぼ均一に亀甲型の面状に融着し、空隙を有さず、通水することがなく、気密性、断熱性に優れた層となっている。
【0024】
面融着層成形用発泡樹脂材料21の原料となる熱可塑性樹脂としては、通常、発泡樹脂ボードの原料に使用される熱可塑性樹脂であれば特に限定されるものではなく、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂等を用いることができる。ポリオレフィン樹脂は、樹脂中のオレフィン成分が50質量%以上の樹脂を意味するものであり、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体等のポリエチレン樹脂や、ポリプロピレン、プロピレン-エチレン共重合体等のポリプロピレン樹脂等を挙げることができる。
【0025】
また、ポリスチレン樹脂は、樹脂中のスチレン成分が50質量%以上の樹脂を意味するものであり、例えば、ポリスチレン、ブタジエン変性ポリスチレン(耐衝撃性ポリスチレン)、スチレン-メタクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体(SAN)、ポリオレフィン樹脂中にてスチレン系単量体を含浸重合させたポリスチレン樹脂とポリオレフィン樹脂との複合樹脂(スチレン成分50質量%以上)等を挙げることができる。
【0026】
また、アクリル樹脂は、樹脂中のアクリル成分が50質量%以上の樹脂を意味するものであり、例えば、スチレン-メタクリル酸メチル共重合体(スチレン成分50質量%未満)、ポリメタクリル酸メチル等を挙げることができる。
【0027】
これらの中でも、二次発泡性や融着性の観点からポリスチレン樹脂を好適に用いることができる。また、上記のポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂等を二種以上併用して用いることもできる。
【0028】
また、面融着層成形用発泡樹脂材料21は、成形する発泡樹脂多層成形ボード1の用途や要求する物性に応じて、発泡倍率を適宜調整することができる。例えば、面融着層成形用発泡樹脂材料21の樹脂粒子として平均粒子径が0.5~6mmのポリスチレン樹脂を用いる場合には、発泡倍率は5~100倍程度、好ましくは10~50倍程度が考慮される。
【0029】
なお、面融着層成形用発泡樹脂材料21の樹脂粒子の予備発泡の発泡倍率は、主として樹脂粒子に含浸させる発泡剤の含有量の増減、発泡時の温度や時間によって調整することができる。また、面融着層成形用発泡樹脂材料21の平均粒子径は、樹脂粒子の粒子径及びその発泡倍率を調整することにより制御することができる。
【0030】
本実施形態の発泡樹脂多層成形ボード1のポーラス層3は、ポーラス層成形用発泡樹脂材料31を二次発泡させて点状に融着させた、通気性、通水性を有する層である。
【0031】
通気性、通水性を有するポーラス層3は、
図2(B)に示すように、隣り合うポーラス層成形用発泡樹脂材料31が互いに点状に融着して形成され、空隙を有している。ポーラス層3の具体的な形状としては、所謂おこし状の成形体が例示できる。一方、ポーラス層3のポーラス(空隙)の形状は、連通した三次元網目構造が例示される。
【0032】
ポーラス層成形用発泡樹脂材料31の基材となる発泡樹脂材料は、面融着層2を形成するための面融着層成形用発泡樹脂材料21と同様のものを用いることができる。
【0033】
ポーラス層成形用発泡樹脂材料31の具体的な発泡倍率は特に限定されないが、樹脂粒子の平均粒子径が0.5~6mmのとき、通常、5~100倍程度であり、好ましくは10~50倍程度が考慮される。
【0034】
また、ポーラス層成形用発泡樹脂材料31は、発泡力を抑える添加剤を含有する表面融着材を被覆することができる。表面溶融材に含有する発泡力を抑える添加剤は特に限定されるものではなく、例えば、軟化溶融剤等を挙げることができる。
【0035】
表面溶融材の被覆は、ポーラス層成形用発泡樹脂材料31と共に表面溶融材をスクリュー式ミキサー内に投入して十分に撹拌することによりポーラス層成形用発泡樹脂材料31の表面に被覆させることができる。
【0036】
ポーラス層成形用発泡樹脂材料31の表面に表面融着材を被覆させることにより発泡力が抑えられ、より確実にポーラス層3を形成でき、かつ二次発泡後にポーラス層成形用発泡樹脂材料31相互の連結を強固なものとすることができ、ポーラス層3の抜け落ちや崩壊を防止することができる。
【0037】
また、ポーラス層成形用発泡樹脂材料31に対して、発泡力を抑える処理を施すこともできる。発泡力を抑える具体的な処理としては、例えば、ポーラス層成形用発泡樹脂材料31を所定の定期間放置して材料内のガスを予め抜いたり、減圧環境に置いて強制的にガスを抜く処理を挙げることができる。これにより、ポーラスの形成状態を調整することが可能となる。
【0038】
本実施形態の発泡樹脂多層成形ボード1においては、面融着層成形用発泡樹脂材料21により成形された面融着層2と、ポーラス層成形用発泡樹脂材料31により成形されたポーラス層3の界面が他の材料等により接着されておらず、直接2層が融着していることを特徴としている。
【0039】
例えば、面融着層2とポーラス層3の間に、接着剤や両面接着テープ等の接着層を介在させた発泡樹脂多層成形ボードを建築物の外断熱材として用いた場合、面融着層2の接着面側に発生した結露や、外部から侵入した雨水等の水滴が逃げ場を失い、黴の発生等による接着面の劣化や、これに伴う断熱性の低下が考えられる。
【0040】
これに対して、面融着層2とポーラス層3が直接強固に融着している本実施形態の発泡樹脂多層成形ボード1では、面融着層2の内側に発生した結露や雨水等の水滴はポーラス層3の連通したポーラスを通して発泡樹脂多層成形ボード1外に逃がすことができる。これにより、発泡樹脂多層成形ボード1を常に乾燥状態に近い状態に保持することができ、高い耐久性を備えた発泡樹脂多層成形ボード1とすることができる。
【0041】
また、本実施形態の発泡樹脂多層成形ボード1においては、少なくとも、面融着層成形用発泡樹脂材料21又はポーラス層成形用発泡樹脂材料31のいずれかが、カーボンを含有していることが好ましい。カーボンの含有量は、面融着層成形用発泡樹脂材料21の発泡倍率や面吸着性に悪影響を与えない範囲であれば特に限定されるものではない。
【0042】
面融着層成形用発泡樹脂材料21又はポーラス層成形用発泡樹脂材料31のいずれかにカーボンを含有させることにより、面融着層2が赤外線を吸収、反射する性能を付与することができ、その結果、より熱伝導率の低減が可能となり、断熱性能を向上させることができる。
【0043】
また、本実施形態の発泡樹脂多層成形ボード1では、
図3に示すように、ボード表面に微細凹凸4を形成することができる。
【0044】
発泡樹脂多層成形ボード1に形成する微細凹凸4は、面融着層2とポーラス層3の表面、或いは面融着層2の表面に形成するのが望ましい。発泡樹脂多層成形ボード1を建築物の外断熱材として用い、表面にモルタル塗布施工などをする場合に、面融着層2の表面に微細凹凸4を形成しておくことにより、ボード表面とモルタルとの接着強度を向上させることができる。
【0045】
微細凹凸4の形状や深さは、ボード表面の表面積を大きくして、他建材との接着強度を向上させることができれば特に限定されるものではなく、例えば、
図3に示すような、細かい碁盤目様のメッシュ模様等が例示される。また、微細凹凸4の形成は、金型表面に予め微細凹凸4の雌型を形成しておいたり、形成した発泡樹脂多層成形ボード1の表面に後から形成するようにしてもよい。また、形成した発泡樹脂多層成形ボード1の表面を薄く接除して微細凹凸を形成することもできる。
【0046】
次に、上記で説明した本発明の発泡樹脂多層成形ボード1の製造方法について
図4を用いて詳述する。
図4(A)~(E)は、本発明の発泡樹脂成形品の製造方法の各工程を示した概略説明図である。
【0047】
本実施形態の発泡樹脂多層成形ボード1の製造方法は、移動金型52と固定金型51を備える金型のキャビティ53内に、面融着層成形用発泡樹脂材料21を供給して発泡させて面状に融着させる面融着層成形工程と、移動金型52を固定金型51から離れる方向にスライドさせることによって形成されたキャビティ53内の空間に、ポーラス層成形用発泡樹脂材料31を供給して発泡させて点状に融着させるポーラス層成形工程とを含むものである。
【0048】
まず、面融着層成形工程では、
図4(A)に示すように、移動金型52と固定金型51とを密着固定して、各々の金型の間に樹脂材料を供給する空間のキャビティ53を形成する。この段階のキャビティ53の厚さ方向の幅は、次工程で成形する面融着層2の厚みとなるため、製造する発泡樹脂多層成形ボード1及び融着層の厚みを考慮して設定する。
【0049】
次に、
図4(B)に示すように、面融着層成形用発泡樹脂材料供給用のフィーダー54を通して、キャビティ53内に面融着層成形用発泡樹脂材料21を供給して加熱し、二次発泡させて面状に融着させて面融着層2を形成する。この際の加熱温度及び加熱時間は、面融着層成形用発泡樹脂材料21の特性や、成形する発泡樹脂多層成形ボード1の用途等を考慮して適宜設定することができる。
【0050】
次に、ポーラス層成形工程として、
図4(C)に示すように、移動金型52を固定金型51から離れる方向にスライドさせて新たなキャビティ53を形成する。この段階のキャビティ53の厚さ方向の移動幅は、成形するポーラス層3の厚みとなるため、前工程で成形した面融着層2の厚みと製造する発泡樹脂多層成形ボード1の厚みを考慮して設定する。
【0051】
次に、
図4(D)に示すように、移動金型52をスライドさせて形成させたキャビティ53内にポーラス層成形用発泡樹脂材料供給用のフィーダー55を通して、ポーラス層成形用発泡樹脂材料31を供給して加熱し、二次発泡させ、点状に融着させてポーラス層3を形成する。この際の加熱温度及び加熱時間は、ポーラス層3の二次発泡の程度、即ち、使用するポーラス層成形用発泡樹脂材料31の特性や、ポーラスの通気性や通水性を考慮して適宜設定される。
【0052】
そして、面融着層2と一体に融着したポーラス層3を成形した状態で、
図4(E)に示すように金型を開けて本実施形態の発泡樹脂多層成形ボード1を取り出す。
【0053】
このようにして製造した発泡樹脂多層成形ボード1は、
図1に示すように、面融着層成形用発泡樹脂材料21で形成された面融着層2と、ポーラス層成形用発泡樹脂材料31で形成されたポーラス層3が一体に形成されている。これにより、優れた断熱性を有するとともに、高い通気性及び通水性を有する発泡樹脂多層成形ボード1とすることができる。
【0054】
また、本発明の発泡樹脂多層成形ボード1においては、
図5、
図6(A)、
図6(B)に示すように、面融着層2の一部に、ポーラス層3と一体に形成されたポーラス層成形用発泡樹脂材料31を面融着させた面融着部32を形成することができる。
【0055】
具体的には、面融着層2に設けた貫通部22内に形成したポーラス部を再加熱して面融着させた面融着部32に成形することができる。このような面融着部32を形成する方法としては、例えば、
図7(A)~(F)に示す工程を例示することができる。
【0056】
まず、
図7(A)、
図7(B)に示す面融着層成形工程において、面融着層の一部に、表裏面に貫通する貫通部22を形成する。貫通部22の形成は、固定金型51を挿通する移動可能な移動部材56をキャビティー53内に突出させた状態で、キャビティ53内に面融着層成形用発泡樹脂材料21を供給して加熱し、二次発泡させ、面状に融着させて面融着層2を形成する。
【0057】
次に、
図7(C)、
図7(D)に示すポーラス層成形工程において、移動金型52を固定金型51から離れる方向にスライドさせて新たなキャビティ53を形成するとともに、移動部材56をキャビティー53内に突出しない状態に移動する。この状態では、面融着層2に貫通部22が形成されている。
【0058】
次に、
図7(D)に示すように、形成したキャビティ53及び貫通部22内にポーラス層成形用発泡樹脂材料31を供給して水蒸気等で加熱し、発泡させて点状に融着させる。ここで、本実施形態では、面融着層2の貫通部22にポーラス層成形用発泡樹脂材料31が充填された状態であるため、水蒸気が面融着層2を抜けて一様にポーラス層成形用発泡樹脂材料31に供給され、斑のないポーラス層3及びポーラス部が形成される。そして、ポーラス層3成形後に、
図7(E)に示すように、面融着層側のみを再度水蒸気等で加熱して、貫通部22内で点状に融着させたポーラス部を面融着させて面融着部32に形成する。
【0059】
そして、
図7(F)に示すように、面融着部32及び面融着層2とポーラス層3を一体に成形した状態で、金型を開けて本実施形態の発泡樹脂多層成形ボード1を取り出す。
【0060】
このようにして製造した発泡樹脂多層成形ボード1は、より安定したポーラス層3を備え、高い通気性及び通水性を有するとともに、優れた断熱性を有する発泡樹脂多層成形ボード1とすることができる。
【0061】
なお、本実施形態において、面融着層2に設ける貫通部22の断面形状や大きさは特に限定されるものではないが、通常、
図6(A)に示すような円形とすることが望ましい。また、貫通部22の個数や形成位置も特に限定されるものではなく、発泡樹脂多層成形ボード1の仕様に応じて適宜決定することができる。
【0062】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形、変更が可能である。
【0063】
例えば、上記実施形態では、ポーラス層成形工程において、移動金型52を固定金型51から離れる方向にスライドさせることにより、新たなキャビティ53を形成しているが、逆に固定金型52を移動金型52から離れる方向にスライドさせて新たなキャビティ53を形成することもできる。
【0064】
また、上記実施形態では、面融着層2とポーラス層3の2層構成としたが、この構成を基本の構成として他の機能層を積層して形成することもできる。
【0065】
また、面融着層成形用発泡樹脂材料21とポーラス層成形用発泡樹脂材料31の色を異なる色調の材料として、成形した面融着層2とポーラス層3の色を異なるものとすることができる。これにより、異なる機能を有する各層の面を容易に視認することが可能となる。
【0066】
また、上記実施形態では、本発明の発泡樹脂多層成形ボード1を建築材料として説明したが、用途はこれに限定されるものではなく、例えば、空調機器用の断熱材や食品輸送用箱、プランター等、結露やカビの発生防止を必要とする用途全般に使用が可能である。