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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-18
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】研削材の再生方法及びその装置
(51)【国際特許分類】
   B24C 9/00 20060101AFI20220119BHJP
【FI】
B24C9/00 E
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018178733
(22)【出願日】2018-09-25
(65)【公開番号】P2020049559
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2020-06-03
(73)【特許権者】
【識別番号】518340739
【氏名又は名称】有限会社ワコー産業
(73)【特許権者】
【識別番号】390015967
【氏名又は名称】株式会社キンキ
(74)【代理人】
【識別番号】100102211
【弁理士】
【氏名又は名称】森 治
(72)【発明者】
【氏名】山本 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】酒本 吉伸
(72)【発明者】
【氏名】和田 直哉
(72)【発明者】
【氏名】三枝 増之
(72)【発明者】
【氏名】芝本 岳
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-198831(JP,A)
【文献】再公表特許第2016/199498(JP,A1)
【文献】特開2008-018518(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24C 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ショットブラスト処理後に発生する研削材とワークからの除去物とからなる混合物に含まれる研削材の再生方法において、前記混合物を3種類の粒度に篩分けを行うことによって前記混合物から粒度の大きなワークからの除去物及び粒度の小さな微細物を分離した中間粒度の混合物を、風力選別機による比重選別行うことによって前記中間粒度の混合物から軽量物を分離し、重量物を再使用可能な研削材として分離する前段階で、混合物の含水率が予め定めた閾値を超えた場合に、混合物を乾燥処理することで混合物の含水率を閾値以下にして前記篩分けと比重選別とを順次行うこと特徴とする研削材の再生方法。
【請求項2】
前記混合物を乾燥処理する前段階で、粗篩分けを行うことで、前記混合物から塊状物を分離すること特徴とする請求項1に記載の研削材の再生方法。
【請求項3】
ショットブラスト処理後に発生する研削材とワークからの除去物とからなる混合物に含まれる研削材の再生装置において、前記混合物を3種類の粒度に篩分けを行うことによって粒度の大きなワークからの除去物、粒度の小さな微細物及び中間粒度の混合物に分離する篩分け手段と、前記中間粒度の混合物を軽量物と、重量物の再使用可能な研削材とに分離する風力選別機からなる比重選別手段を備えるとともに、該篩分け手段及び比重選別手段の前段に、混合物の含水率が予め定めた閾値を超えた場合に、混合物を乾燥処理することで混合物の含水率を閾値以下にして篩分け手段及び比重選別手段に供給するようにする乾燥手段を備えるようにしたこと特徴とする研削材の再生装置。
【請求項4】
前記乾燥手段の前段に、粗篩分けを行うことで、前記混合物から塊状物を分離する篩分け手段を備えるようにしたこと特徴とする請求項3に記載の研削材の再生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研削材の再生方法及びその装置に関し、特に、ショットブラスト処理後に発生する研削材とワーク(加工物)からの除去物(錆等の鉄くず、塗料かす等の廃プラ等)とからなる混合物から、再使用可能な研削材を分離して回収するための研削材の再生方法及びその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ワークのバリ除去、表面研削、梨地加工のような模様付け等のためにショットブラスト処理が広く用いられている。
このショットブラスト処理は、粒体の研削材をワークに衝突させ、ワークの加工等を行う手法である。
ショットブラスト処理に当たっては、研削材の種類(粒径、組成、密度、硬度、強度)、投射速度、投射角度、投射量等を、ワークの硬さや加工条件によって最適なものを選定して行われる。
そして、研削材の種類は、一般に、金属系(鉄系、ステンレス系、アモルファス等)、セラミック系(アルミナ、炭化ケイ素等)、樹脂系(ナイロン、ポリカ等)、植物系(クルミ、木材チップ)、ガラス系(ビーズ、粉末)、ドライアイス等の各種素材が用いられている。
【0003】
ところで、ショットブラスト処理後に発生する研削材とワークからの除去物とからなる混合物は、通常、全量が廃棄物として処理されており、以下の問題点が指摘されてきた。
1.研削材は性能的に劣化していないが、除去物の混入のため全量廃棄せざるを得ない。
2.除去物と共に研削材を廃棄することになり、廃棄処理費用が嵩む。
3.研削材が再利用できないためランニングコストが嵩む。
4.1.のため、廃棄物の量が増加する。
【0004】
この問題に対処するため、ショットブラスト処理後に発生する混合物から再使用可能な研削材を分離して回収し、再利用に供するための各種技術が提案され、実用化されている(例えば、特許文献1~2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-212764号公報
【文献】特開2003-305650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記従来のショットブラスト処理後に発生する混合物から再使用可能な研削材を分離して回収し、再利用に供するための各種技術は、基本的に篩分けと比重選別とを適宜組み合わせるようにしたものであるが、ショットブラスト処理後に発生する混合物の性状に合わせた柔軟な処理が行いにくく、このため所期の想定しているほどは研削材の回収率を高めることができないという問題があった。
【0007】
本発明は、上記従来のショットブラスト処理後に発生する混合物に伴う問題点に鑑み、ショットブラスト処理後に発生する混合物の性状に合わせた処理を行うことによって、研削材の回収率を高めることができる研削材の再生方法及びその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の研削材の再生方法は、ショットブラスト処理後に発生する研削材とワークからの除去物とからなる混合物に含まれる研削材の再生方法において、篩分けと比重選別とを行うことによって前記混合物から再使用可能な研削材を分離する前段階で、混合物の含水率が予め定めた閾値を超えた場合に、混合物を乾燥処理することで混合物の含水率を閾値以下にして篩分けと比重選別とを行うこと特徴とする。
【0009】
この場合において、前記混合物を乾燥処理する前段階で、粗篩分けを行うことができる。
【0010】
また、上記目的を達成するため、本発明の研削材の再生装置は、ショットブラスト処理後に発生する研削材とワークからの除去物とからなる混合物に含まれる研削材の再生装置において、前記混合物から再使用可能な研削材を分離する篩分け手段及び比重選別手段を備えるとともに、該篩分け手段及び比重選別手段の前段に、混合物の含水率が予め定めた閾値を超えた場合に、混合物を乾燥処理することで混合物の含水率を閾値以下にして篩分け手段及び比重選別手段に供給するようにする乾燥手段を備えるようにしたこと特徴とする。
【0011】
この場合において、前記乾燥手段の前段に、粗篩分けを行う篩分け手段を備えるようにすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の研削材の再生方法及びその装置によれば、ショットブラスト処理後に発生する混合物の性状、特に、混合物の含水率に合わせた処理を行うことによって、研削材の回収率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の研削材の再生方法の一実施例を示すフロー図である。
図2】本発明の研削材の再生装置の一実施例を示す平面図である。
図3】本発明の研削材の再生装置(前段階)の正面図である。
図4】本発明の研削材の再生装置の側面図(図3のA矢視図)である。
図5】本発明の研削材の再生装置(分離工程)の正面図である。
図6】本発明の研削材の再生装置の篩分け手段の説明図である。
図7】本発明の研削材の再生装置の比重選別手段の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の研削材の再生方法及びその装置の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【0015】
図1図7に、本発明の研削材の再生方法及びその装置の一実施例を示す。
【0016】
この研削材の再生方法は、ショットブラスト処理後に発生する混合物の性状、特に、混合物の含水率に合わせた処理を行うことによって、研削材の回収率を高めることを目的としてなしたものであって、ショットブラスト処理後に発生する研削材とワークからの除去物とからなる混合物に対して、粗篩分けを行った後、混合物の含水率が予め定めた閾値を超えた場合に、混合物を乾燥処理することで混合物の含水率を閾値以下にし、その後、篩分けと比重選別とを行うことによって混合物から再使用可能な研削材を分離するようにしたものである。
【0017】
そして、この研削材の再生方法を実施するための研削材の再生装置は、ショットブラスト処理後に発生する研削材とワークからの除去物とからなる混合物が投入される受入ホッパ1と、混合物の粗篩分けを行う篩分け手段としての旋回篩2と、混合物の含水率が予め定めた閾値を超えた場合に、混合物を乾燥処理することで混合物の含水率を閾値以下になるようにする乾燥手段としての乾燥炉3と、含水率が閾値以下になった混合物の篩分けを行う篩分け手段としての振動篩4と、比重選別を行う比重選別手段としての風力選別機5とを備え、各装置をコンベア装置11~16や貯留ホッパ17によって接続することで、混合物を連続して処理することによって混合物から再使用可能な研削材を分離することができるようにしている。
【0018】
この場合において、混合物の粗篩分けを行う篩分け手段としての旋回篩2は、受入ホッパ1から受け入れた混合物を解砕しながら粗篩分けを行うもので、ここで分離された塊状物(例えば、30mm以上の塊状物)は、混合廃棄物として処理される。
これにより、後工程の各装置の負荷を軽減することができる。
【0019】
混合物を乾燥処理する乾燥手段としての乾燥炉3は、各種の乾燥炉を使用することができるが、本実施例においては、ロータリキルンを使用するようにしている。
乾燥炉3は、乾燥サイクロン31、バグフィルタ32及び排風機33に接続することで、発生する塵埃が外部に漏れないようにしている。
この場合、例えば、乾燥炉3に連なるコンベア装置13、14等を防塵カバーで覆った遮蔽構造とし、乾燥炉3を介して内部の空気を吸引することで、発生する塵埃が外部に漏れないようにすることができる。
また、乾燥炉3は、燃料タンク34から供給される重油等の液体燃料を使用するバーナを備えるようにしている。
【0020】
乾燥炉3は、混合物の含水率を閾値以下になるようにするが、このため、乾燥炉3の導入部や排出部の適宜箇所に、混合物の含水率を測定する含水率測定手段(図示省略)を配設し、乾燥炉3の運転状態を自動制御するようにすることができる。
【0021】
混合物の含水率を閾値は、混合物の材質等によって、適宜値に設定することができるが、通常、10%WB以下、好ましくは、5%WB以下、3%WB以下程度に設定するようにする。
【0022】
含水率が閾値以下になった混合物の篩分けを行う篩分け手段としての振動篩4は、例えば、混合物を3種類の粒度に篩分けを行うことによって、例えば、3mm以上の鉄くずや廃プラ等を混合廃棄物として、1mm以下の微細物を製鋼用フォーミング抑制剤(RPF)(40~50%程度)として分離(カスケードリサイクル)するようにし、残りの1~3mmの混合物を、比重選別を行う比重選別手段としての風力選別機5に導入するようにする。
【0023】
比重選別を行う比重選別手段としての風力選別機5は、軽量物の鉄くずや廃プラ等を混合廃棄物として分離し、残りの重量物を再生研削材(再生砕石)(30~40%程度)として回収し、再利用に供するようにする。
【0024】
この研削材の再生方法及びその装置によれば、ショットブラスト処理後に発生する混合物の性状、特に、混合物の含水率に合わせた処理を行うことによって、研削材の回収率を高め、再生研削材(再生砕石)として再利用に供することができるとともに、併せて回収される微細物を製鋼用フォーミング抑制剤(RPF)に供する(カスケードリサイクル)ことができ、廃棄物の排出量を大幅に低減することができる。
【0025】
以上、本発明の研削材の再生方法及びその装置について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明の研削材の再生方法及びその装置は、ショットブラスト処理後に発生する混合物の性状に合わせた処理を行うことによって、研削材の回収率を高めることができることから、ショットブラスト処理に用いられる各種研削材の再生の用途に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0027】
1 受入ホッパ
2 旋回篩
3 乾燥炉
31 乾燥サイクロン
32 バグフィルタ
33 排風機
34 燃料タンク
4 振動篩
5 風力選別機
11~16 コンベア装置
17 貯留ホッパ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7