(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-18
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】ブラジャー
(51)【国際特許分類】
A41C 3/00 20060101AFI20220119BHJP
A41C 3/10 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
A41C3/00 A
A41C3/10 A
(21)【出願番号】P 2019173864
(22)【出願日】2019-09-25
【審査請求日】2019-09-25
(73)【特許権者】
【識別番号】398056827
【氏名又は名称】株式会社ファーストリテイリング
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100154759
【氏名又は名称】高木 貴子
(72)【発明者】
【氏名】生田 麻衣子
(72)【発明者】
【氏名】栗原 英子
(72)【発明者】
【氏名】小泉 民子
(72)【発明者】
【氏名】白石 高廣
【審査官】住永 知毅
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-193302(JP,A)
【文献】特開2001-303309(JP,A)
【文献】特許第6406463(JP,B2)
【文献】特開2002-327314(JP,A)
【文献】国際公開第02/015728(WO,A1)
【文献】特開2013-213304(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41C 3/00
A41C 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表地(51A)と裏地(51B)とによりバストを覆う1対のカップ部(2)にそれぞれパッド(6)が設けられたブラジャー(1)であって、
一定の長さを有するテープ部材である複数の第1接続部(7)を備え、
前記パッド(6)は、前記表地(51A)と前記裏地(51B)との間に形成された空間内に配置され、前記パッド(6)の下側を含む周囲が前記複数の第1接続部(7)
のみを介して前記カップ部(2)に固定され
ることにより、前記表地(51A)及び前記裏地(51B)からは分離して浮いた状態を維持し、
前記複数の第1接続部(7)の全部又は一部は、伸縮部材であ
り、
隣接する2つの前記第1接続部(7)同士を繋ぐ線の中心から前記パッド(6)の端部までの垂線の距離(d2)は、1cm以下である
ことを特徴とするブラジャー(1)。
【請求項2】
前記第1接続部(7)の数は、3以上である
ことを特徴とする請求項1に記載のブラジャー(1)。
【請求項3】
前記カップ部(2)に固定された前記パッド(6)は、前記ブラジャー(1)の着用者の前後方向に移動可能である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のブラジャー(1)。
【請求項4】
前記複数の第1接続部(7)は、前記パッド(6)と前記カップ部(2)とに縫い合わされる
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のブラジャー(1)。
【請求項5】
一定の長さを有する第2接続部(8)を備え、
前記各パッド(6)は、前記第2接続部(8)を介して連結される
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のブラジャー(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラジャーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、伸縮性の生地を用いたハーフトップ型のブラジャーが提供されている。ハーフトップ型のブラジャーは着用時の圧迫感が少ないため、成長期の少女のファーストブラとして、またスポーツ用として広く利用されている。
【0003】
ブラジャーのカップ部にはパッドが設けられることがある。例えば、外側布と内側布を重ねてカップ部を構成し、この2枚の布の間にパッドを収容したブラジャーが提案されている(特許文献1参照)。パッドによりバストトップを覆うことができ、運動時も揺れるバストをしっかりサポートできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、2枚の布の間にパッドを収容しただけではパッドが動きやすく、洗濯時にパッドが折れ曲がることがある。激しい運動時には、パッドの位置がバストから大きくずれることもある。そのたびにパッドの形状や位置を調整しなければならず、煩雑である。
【0006】
パッドを収容する2枚の布のパッド外周を縫い合わせるか、又は接着剤でパッドをカップ部に接着することで、パッドをカップ部に固定することもできる。
【0007】
しかしパッドは前後方向に移動することによって、1つのパッドで大小異なるバストをサポートできる。パッドの位置を固定すると、この前後方向でのパッドの移動も制限されるため、あらかじめバストのサイズに合わせた異なるサイズのパッドを用意する必要がある。
【0008】
また接着剤を使用する場合は、接着剤の硬化によってパッドの柔らかさが損なわれ、着用者が違和感を持つことがある。
【0009】
本発明は、異なるサイズのバストをサポートでき、かつ着用時の快適性に優れたブラジャーの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様のブラジャー(1)は、バストを覆う1対のカップ部(2)にそれぞれパッド(6)が設けられたブラジャー(1)であって、一定の長さを有する複数の第1接続部(7)を備え、前記パッド(6)は、前記複数の第1接続部(7)を介して前記カップ部(2)に固定され、前記複数の第1接続部(7)の全部又は一部は、伸縮部材であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、異なるサイズのバストをサポートでき、かつ着用時の快適性に優れたブラジャーを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態のブラジャーの外観を示す斜視図である。
【
図3】裏地を取り外したブラジャーを内側から示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のブラジャーの実施の形態について、図面を参照して説明する。以下に説明する構成は、本発明の一実施態様であり、本発明はこれに限定されない。
【0014】
なお以下の説明において、上とは図面中の方向Y1をいい、下とは図面中の方向Y2をいう。また右とは図面中の方向X1をいい、左とは図面中の方向X2をいう。着用者の前とは方向Z1をいい、着用者の後ろとは方向Z2をいう
【0015】
(ブラジャー)
図1は、本発明の一実施形態のブラジャー1の外観を示す斜視図である。
図1に示すように、ブラジャー1は、1対のカップ部2、背面部3及び1対の肩部4を備える。
【0016】
カップ部2は、着用者のバストを覆う。背面部3は、カップ部2の左右両脇から着用者の背面へ延びて背面を覆う。肩部4は、カップ部2と背面部3とを連結し、着用者の左右の肩に掛けられる。
【0017】
ブラジャー1は、例えば襟ぐり及び袖ぐりを有する前身頃51と後身頃52とを、それぞれの肩と脇を連結することで形成できる。前身頃51と後身頃52の下端の位置は、例えばバストの下側とすることができる。
【0018】
図2は、前身頃51の構成を示す。
図2は、
図1中のA-A線における断面図である。
図2に示すように、前身頃51は、表地51A及び裏地51Bを備える。
【0019】
表地51Aと裏地51Bは、同じ形状であり、襟ぐり、袖ぐり、脇及び下端が縫い合わされる。裏地51Bは、着用者と接する内側に位置し、表地51Aは着用者と反対の外側に位置する。
【0020】
前身頃51及び後身頃52の素材は、柔軟性及び伸縮性を有することが好ましい。これにより、着用者が動作しやすく、快適性が向上する。また吸汗性を有する素材も、着用時の快適性が向上し、好ましい。そのような素材としては、例えば綿、アクリル、ナイロン、ポリウレタン等が挙げられる。
【0021】
本実施形態のブラジャー1は、前身頃51及び後身頃52の下端に設けられたゴム等の伸縮部材53を備える。伸縮部材53により、ブラジャー1が着用者の身体にフィットしやすくなる。
【0022】
図3は、裏地51Bを取り外したブラジャー1を着用者に接する内側から示す。
図3に示すように、ブラジャー1は、カップ部2の表地51Aと裏地51Bとの間に、パッド6、複数の第1接続部7及び第2接続部8を備える。
【0023】
(パッド)
本実施形態のパッド6は三角形状であるが、バストだけでなく脇の一部も被覆するように、三角形状の左側又は右側の角部が脇側へ延びた形状を有する。このような形状によれば、リンパ腺がある脇付近もパッド6でサポートすることができ、成長期にある着用者の快適性が特に向上する。
【0024】
なおパッド6の形状は、バストを被覆できるのであれば特に限定されず、例えば単純な三角形状であってもよく、円形状、楕円形状、四角形状、レモン形状等であってもよいし、不規則な形状であってもよい。
【0025】
パッド6は、
図2に示すように、トップ6aを中心に湾曲する凸形状であると、バストの形状にフィットし、サポート性が向上する。
【0026】
パッド6の素材としては、例えばウレタン、シリコン、綿等の柔軟性及び弾力性を有する材料を使用できる。
【0027】
(第1接続部)
パッド6は、複数の第1接続部7を介してカップ部2に固定される。本実施形態では、複数の第1接続部7の一方の端部がパッド6に縫い合わされ、他方の端部がカップ部2に縫い合わされることで、パッド6がカップ部2に固定される。
【0028】
パッド6は複数の位置で固定されるため、洗濯時、運動時等に、パッド6の折れ曲がりや、バスト位置からのパッド6の位置ずれを効果的に抑えることができる。固定に接着剤を使用しないため、接着剤によるパッド6の硬化も防ぐことができ、着用時の快適性が向上する。
【0029】
第1接続部7は一定の長さd1を有し、パッド6は当該長さd1だけカップ部2から離れた位置でカップ部2に固定される。そのため、パッド6はカップ部2に固定されながらも一定範囲内で可動することができる。
【0030】
例えば、着用者のバストサイズに合わせて、パッド6は着用者の前後方向(方向Z1及び方向Z2)へ移動可能である。よって、大きいバストサイズの場合は前へ移動でき、1サイズのパッド6で大小異なるサイズのバストをサポートできる。
【0031】
また運動時に揺れるバストに追従して、パッド6も上下方向(方向Y1及び方向Y2)と左右方向(方向X1及び方向X2)とに移動可能であり、動作しやすく、快適性に優れたブラジャー1を提供できる。
【0032】
第1接続部7のパッド6側の端部からカップ部2側の端部までの長さd1は、許容できるパッド6の可動範囲を考慮して適宜設定することができる。各第1接続部7の長さd1は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0033】
複数の第1接続部7の全部又は一部は、伸縮部材である。伸縮部材の第1接続部7は、第1接続部7の長さd1以上にパッド6が移動することができ、バストのサポート性が高まる。また伸縮部材の第1接続部7はその長さd1を短くすることができ、たるみによる違和感を減らして、快適性を向上させることができる。
【0034】
第1接続部7の数は、3以上であることが好ましい。3以上であれば、パッド6が固定されやすく、折れ曲がりにくい。本実施形態の第1接続部7の数は5である。
【0035】
複数の第1接続部7は、隣接する2つの第1接続部7同士を繋ぐ線の中心からパッド6の端部までの垂線の長さ(距離)d2が、1cm以下の位置に配置されることが好ましい。これにより、パッド6の折れ曲がりを効果的に抑えつつ、接続部7の配置数を削減することができる。
【0036】
本実施形態の第1接続部7はテープ部材であるが、一定の長さd1を有するのであればテープ形状に限らず他の形状であってもよい。
【0037】
(第2接続部)
1対のパッド6は、第2接続部8を介して連結される。本実施形態において、第2接続部8の両端が各パッド6の前中心M側の端部と縫い合わされることで、各パッド6が連結される。
【0038】
連結により、前中心M側のパッド6の折れ曲がりを防ぐことができる。また各パッド6は互いに固定されるため、各パッド6の脇側への位置ずれを抑えることができる。
【0039】
第2接続部8は一定の長さd3を有するため、各パッド6は互いに固定されながらも一定範囲内で可動することができる。バストのサイズ又は動きにしたがって、パッド6が移動できるため、1サイズのパッド6で大小異なるサイズのバストをサポートできるとともに、着用者が動作しやすく、快適なブラジャー1を提供できる。
【0040】
第2接続部8の上下方向における位置は、トップ6aに近いと、パッド6の回転を抑えやすい。
【0041】
第2接続部8の左のカップ部2側の端部から右のカップ部2側の端部までの長さd2は、許容できるパッド6の可動範囲を考慮して適宜設定することができる。
【0042】
第2接続部8は、伸縮部材であってもなくてもよい。第2接続部8の伸縮性は、高いほどパッド6が動きやすく、着用者が動作しやすい一方、低いほど脇側へのパッド6の位置ずれを抑えやすい。
【0043】
本実施形態の第2接続部8はテープ部材であるが、一定の長さd3を有するのであれば形状は限定されない。
【0044】
第2接続部8を介してパッド6が固定される場合、隣接する第1接続部7と第2接続部8は、互いを繋ぐ線の中心からパッド6の端部までの垂線の長さ(距離)d2が、1cm以下の位置に配置されることが好ましい。これにより、パッド6の折れ曲がりを効果的に抑えつつ、第1接続部7の配置数を削減することができる。
【0045】
本実施形態では、5つの第1接続部7と1つの第2接続部8により6方向でパッド6の位置が固定され、それぞれを繋ぐ線からの垂線の長さd2が1cm以下であるため、折れ曲がるパッド6の余地が少ない。
【0046】
なお第1接続部7の数及び位置は、パッド6の形状及びサイズに応じて設定することができる。例えば、円形状のパッドの場合、第1接続部7の数を3とすることができる。同じ円形状でも、サイズが大きいパッドの場合、第1接続部7の数を5としてもよい。
【0047】
また第2接続部8の数は、1つに限らず、複数であってもよい。
【0048】
本実施形態の第1接続部7及び第2接続部8は、パッド6と別部材であるが、パッド6と同じ部材であってよい。
【0049】
図4は、第2接続部8がパッド6の一部であるブラジャー1Bの例を示す。
図4に例示するパッド6Bは、左右の円形状のパッド部分61と各パッド部分61を連結する第2接続部8Bとが1つの部材で構成されている。
【0050】
図4に例示するパッド6Bの場合、前中心M側の折れ曲がりは少ないため、例えば3つの第1接続部7を脇側に配置することができる。
【0051】
以上のように、本実施形態のブラジャー1は、複数の第1接続部7によって、パッド6がカップ部2に固定される。よって、パッド6の折れ曲がりや位置ずれを減らすことができる。またパッド6の固定に接着剤は使用せず、パッド6の柔軟性を維持できる。
【0052】
第1接続部7は一定の長さd1を有し、複数の第1接続部7の全部又は一部は伸縮部材であるので、パッド6は固定されながらも一定の範囲で可動できる。よって、パッド6が前後方向に移動し異なるサイズのバストをサポートできる。またパッド6はバストに合わせて上下方向又は左右方向に移動できるため、フィット感が向上し、着用時の快適性が向上する。
【0053】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【0054】
例えば、ブラジャーに限らず、カップ付きのタンクトップ、スリップ、キャミソール、ドレスの他、ボディスーツ、スリーインワン、レオタード、水着等のバストをサポートするカップ部を有し、パッドによってバストの保形、整形等の造形が可能な衣類であれば、いずれにも本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0055】
1・・・ブラジャー、2・・・カップ部、6・・・パッド、7・・・第1接続部、8・・・第2接続部、51・・・前身頃、51A・・・表地、51B・・・裏地