(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-18
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】新規キトサナーゼCHI1、そのコード遺伝子およびその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/56 20060101AFI20220203BHJP
C12N 9/42 20060101ALI20220203BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20220203BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20220203BHJP
C12N 15/70 20060101ALI20220203BHJP
C12P 19/28 20060101ALI20220203BHJP
A01N 63/50 20200101ALI20220203BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20220203BHJP
A61K 38/46 20060101ALN20220203BHJP
A61P 31/04 20060101ALN20220203BHJP
【FI】
C12N15/56
C12N9/42 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/21
C12N15/70 Z
C12P19/28
A01N63/50 100
A01P3/00
A61K38/46
A61P31/04
(21)【出願番号】P 2021086676
(22)【出願日】2021-05-24
【審査請求日】2021-05-24
(31)【優先権主張番号】202010493734.3
(32)【優先日】2020-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518193700
【氏名又は名称】青▲島▼▲農▼▲業▼大学
(74)【代理人】
【識別番号】100146374
【氏名又は名称】有馬 百子
(72)【発明者】
【氏名】程 凡昇
【審査官】上村 直子
(56)【参考文献】
【文献】Applied Microbiology and Biotechnology,2013年,Vol.97,pp.5801-5813
【文献】Journal of Molecular Catalysis B: Enzymatic,2015年,Vol.111,p.29-35
【文献】Marine Drugs,2018年,Vol.16, No.429,pp.1-13
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C12N 9/42
C12P 19/28
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列、を有することを特徴とする、新規キトサナーゼCHI1。
【請求項2】
前記
アミノ酸配列をコードする遺伝子は、キグチの消化管の内容物のメタゲノムに由来することを特徴とする、
請求項1に記載の新規キトサナーゼCHI1。
【請求項3】
配列番号SEQ ID NO:2に示されるヌクレオチド配列、を有することを特徴とする、請求項1に記載の新規キトサナーゼCHI1をコードする遺伝子。
【請求項4】
請求項3に記載の新規キトサナーゼCHI1をコードする遺伝子、又は請求項1に記載のアミノ酸配列をコードする遺伝子を、発現ベクターに連結することにより形成される、組換え発現ベクター。
【請求項5】
前記発現ベクターは、pEASYシリーズベクター、pETシリーズベクター又はpGEMシリーズベクターであることを特徴とする、
請求項4に記載の組換え発現ベクター。
【請求項6】
エンジニアリング菌が請求項4に記載の組換え発現ベクターで形質転換され、請求項1に記載の新規キトサナーゼを発現させることができる、
エンジニアリング菌。
【請求項7】
前記新規キトサナーゼの生産に適した条件下で、請求項6に記載のエンジニアリング菌を発酵させ、そして発酵産物を分離・精製して、最終にキトサナーゼを得るステップを含むことを特徴とする、
請求項1に記載の新規キトサナーゼの生産方法。
【請求項8】
(1)特定のプライマーを用いてキトサナーゼ標的遺伝子を増幅し、標的遺伝子を回収した後、それを発現ベクターに連結することにより、組換え発現ベクターを構築し、組換え発現ベクターを宿主細菌に形質転換して、高活性キトサナーゼを生産するエンジニアリング菌を得る、エンジニアリング菌の構築ステップと、
(2)エンジニアリング菌種液を1%接種量で抗生物質含有LB液体培地に接種し、37℃、250r/分でOD600=0.6まで振とうしながら培養し、終濃度が1mMのIPTGを加え、20℃で低温誘導し、250r/分で振とうしながら16時間培養し、菌体を沈殿させるか、またはさらなる拡大培養させる、エンジニアリング菌の発酵ステップと、
(3)細菌ペレットを破砕処理し、直ちに細胞破砕液を4℃、12000r/分で20分間遠心分離し、上清を回収し、上清をNi-NTAカラム法で精製・透析した後、高純度の組換えキトサナーゼ液を得る、キトサナーゼの分離・精製ステップと、を含むことを特徴とする、
請求項7に記載の生産方法。
【請求項9】
前記発現ベクターは、pEASYシリーズベクター、pETシリーズベクター又はpGEMシリーズベクターであり、宿主細菌は、大腸菌BL21又は大腸菌Rosettaであることを特徴とする、
請求項8に記載の生産方法。
【請求項10】
水産物スクラップ処理、オリゴ糖の調製、又は
植物病原菌の予防/治療における、
請求項1に記載の新規キトサナーゼの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオエンジニアリングの技術分野に関し、特に新規キトサナーゼCHI1、そのコード遺伝子およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
キトサン(chitosan)は、キチン、脱アセチル化キチンなどとも呼ばれ、化学名がβ-(1,4)-2-アミノ-2-デオキシ-β-D-グルコースである。キトサンは、キチンの脱アセチル化によって得られる天然高分子化合物であり、グルコサミン又はβ-(1,4)-グリコシド結合によって連続された少量のアセチルグルコサミン残基で構成され、相対分子量が数十万から数百万の範囲で、分子式が(C6H11NO4)nである。キチンの主な供給源は、節足動物の表皮と軟体動物の殻であり、真菌、細菌、下等藻類の細胞壁にも存在している。キチンは、タンパク質以外に窒素含有量が最も高い有機再生可能資源でもあり、その埋蔵量の豊富さがセルロースに次ぐものである。しかし、キチンは分子量が大きく、水に溶けないため、効果的に開発・利用することができず、莫大な資源の浪費になる。
【0003】
オリゴキトサン(oligochitosan)は、キトサンの物理的、化学的分解又は酵素分解によって生成された、重合度が2-20のオリゴ糖であり、β-1,4-グリコシド結合を介してアセチルグルコサミン又はグルコサミンによって接続される。オリゴキトサンは、キトサンに比べて分子量が低く、機能性オリゴ糖として、医薬、食品、化粧品及び農業などの幅広い用途に利用されている。医薬の面では、例えば、コレステロールの低減、抗腫瘍、血圧の低減、火傷、熱傷、止血、免疫調節、腸内細菌叢の調節などの用途がある。食品用途の面では、例えば、抗菌効果を奏して、健康食品、機能性食品添加物、食品防腐剤および防腐剤などとして直接使用される。化粧品用途の面では、例えば、保湿性、人間の酸素アニオンラジカルの除去、老化の遅延などの機能がある。農業の面では、例えば、窒素含有量の高い窒素肥料、植物細胞の活性化、植物内でファイトアレキシン生成の誘導、植物の耐病性の改善、さらに病原性微生物増殖の阻害、植物の広域抗生物質性の増強などの機能がある。
【0004】
キトサンにおける多くのユニークな機能は、オリゴキトサンに分解されたときにのみ現れる。したがって、キトサンの高効率分解の方法を選択することは、非常に重要である。現在、キトオリゴ糖とキトサンオリゴ糖の調製は、化学的方法、生物的方法及び物理的方法に大別される。物理的方法、化学的方法は、生産過程で大量の廃水や廃物を生成してしまうため、大量の水資源も消費され、省エネと排出削減に関する国の政策と一致していない。環境保護、省エネ、高効率の観点から、オリゴキトサンを調製ためのキトサンの生体酵素分解では、物理的方法と化学的方法では対応できない利点がり、酵素法分解の条件が穏やかで、加水分解プロセスと産物の流通は制御しやすく汚染がなく、研究のホットスポットになっている。
【0005】
キトサナーゼには、幅広い供給源があり、細菌、真菌、藍細菌、ウイルスと植物にも含まれている。研究者たちは、さまざまな微生物からキトサナーゼを連続的に分離している。例えば、Wang S、Chao Cらは、2009年にBacillusによってスクリーニングされたcereus TKU006によってキチナーゼ活性がわずか0.14U/mLであった。「キトサナーゼ/キチナーゼ生産菌株の育種、発酵、キトサナーゼの分離・精製および酵素特性の研究」では、夏祥は透明円法を使用して、最も活発な菌株としてバチルスセレウスHMX-21を下水処理施設の廃水からスクリーニングし、その活性がわずか0.56U/mLであった。Wang S,TsengWらは、2011年にキトサナーゼ産生株Acinetobacter calcoaceticus TKU024をスクリーニングし、粗酵素溶液の最大活性が0.39U/mLであった。胡遠亮らは、「キトサナーゼ産生株のスクリーニングと同定」で、土壤サンプルからスクリーニングされた最高の酵素活性を有するMitsrariaの菌株を開示し、その酵素活性がわずか0.729U/mLであった。
【0006】
一般的な菌株のスクリーニングは膨大な作業であるだけではなく、この方法で大量の遺伝子情報が欠落され、巨大な微生物遺伝子資源を利用して十分に活用することができなく、新規性の高いキトサナーゼ遺伝子を取得することが難しいが、メタゲノム法は、新しい視点から遺伝子スクリーニングをより全面的に行い、新規でより活性の高いキトサナーゼを得ることが期待される。メタゲノミクスに基づくライブラリースクリーニングは、従来の方法の欠点を回避することができ、新しい遺伝子のマイニングと新しいタンパク質の生産に役立っている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】Wang SL, Chao CH, Liang TW, Chen CC (2009) Purification and characterization of protease and chitinase from Bacillus cereus TKU006 and conversion of marine wastes by these enzymes. Mar Biotechnol (NY) 11:334-344
【文献】San-Lang Wang, Wan-Nine Tseng, Tzu-Wen Liang. Biodegradation of shellfish wastes and production of chitosanases by a squid pen-assimilating bacterium, Acinetobacter calcoaceticus TKU024. Biodegradation. 2011, Vol.22, No.5, p.939.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の問題に対して、本発明は、キグチの腸内微生物を研究対象として、全DNAを抽出してメタゲノムライブラリーを構築している。機能指向のスクリーニングにより、グリコシド加水分解酵素のGH8ファミリーに属する、高い活性と高い安定性を備えたキトサナーゼCHI1遺伝子が得られた。このようなキトサナーゼは、熱安定性とpHの安定性が高く、オリゴ糖の製造に広く使用できる。本発明はまた、このキトサナーゼを大量に発現することができるエンジニアリング菌と酵素の生産方法を提供する。このようなエンジニアリング菌を利用することにより、キトサナーゼCHI1の工業的発酵および大量生産に使用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の技術案は以下の通りである。
【0010】
本発明は、配列番号SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配を有するか、または配列番号SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列と少なくとも95%の配列同一性を有し、基本的に同じ酵素活性を持つアミノ酸配列を有する新規キトサナーゼCHI1を提供する。上記の酵素には、配列番号SEQ ID NO:1の配列を有する酵素だけでなく、この酵素配列でさらに修飾されているが実質上に同じ酵素活性を有する他の酵素も含まれる。酵素の修飾には、酵素の安定性を改善するための酵素の分子内架橋、および側鎖基の修飾、または配列の両端での精製タグの追加などが含まれる。
【0011】
上記の新規キトサナーゼ遺伝子は、微生物ゲノムの複製中に突然変異を起こしやすいので、上記のキトサナーゼの変異体も本願請求の範囲にある。同じ活性を保持するキトサナーゼ変異体は、配列番号SEQ ID NO:1に示されるアミノ酸配列と少なくとも95%の相同性を持っている。より好ましくは、変異体は、上記のキトサナーゼの対応する天然配列と92%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一である。上記の酵素変異体は、点変異、欠失変異、付加変異であってよく、最初のタンパク質配列と比較して、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個又はその以上のアミノ酸の変更が可能である。
【0012】
本願の配列では、配列番号SEQ ID NO:1に示されるキトサナーゼをCHI1と名付けている。この酵素は、発明者によってキグチの腸管メタゲノムライブラリーからスクリーニングされ、既存の配列と比較して、配列アライメントして類似性がわずか72%であった。これは、この遺伝子と既存の遺伝子との遺伝的関係が遠く、新規性が高いことを示している。
【0013】
上記のキトサナーゼのコード遺伝子CHI1(長さが870bp)をクローニングし、バイオインフォマティクス分析と電気泳動を検出したところ、CHI1の分子量が33.08kDaで、いずれもグリコシド加水分解酵素のGH8ファミリーに属し、優れた親水性と安定性を持っている結果となった。異種発現後、酵素特性を決定し、最適反応温度は60℃であり、最適pH値は5.0であった。Mn2+は、この酵素の活性を促進して大幅に改善する。キトサナーゼCHI1の最適なコロイドキトサン濃度が1.5%であったが、キチンを加水分解する能力がなかった。キトサナーゼCHI1は、Km値が2.87mg/mLであり、Vmax値が0.49μmol/分であり、比放射能が2.71U/mgであり、エンド型セルラーゼである。
好ましくは、前記新規キトサナーゼのコード遺伝子は、キグチの消化管の内容物のメタゲノムに由来する。
【0014】
本発明は、配列番号SEQ ID NO:2に示されるヌクレオチド配列を有するか、または配列番号SEQ ID NO:2に示されるヌクレオチド配列と少なくとも95%の配列同一性を有する配列を有する上記の新規キトサナーゼのコード遺伝子さらにを提供する。上記の新規キトサナーゼのコード遺伝子には、配列番号SEQ ID NO:2に示されるヌクレオチド配列だけではなく、配列番号SEQ ID NO:2との配列相同性が少なくとも95%に達つ変異配列も含まれる。より好ましくは、前記変異配列は、キトサナーゼの対応する天然配列と92%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%同一である。上記の酵素変異体は、点変異、欠失変異、付加変異であってよく、最初のタンパク質配列と比較して、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個又はその以上のヌクレオチドの変更が可能である。
【0015】
前記「有する」の意味は、前記コード遺伝子は、配列が配列番号SEQ ID NO:2に示されるヌクレオチド配列のみを有するものであってよく、遺伝子配列の両端に制限部位やエンハンサーを付加するなど、配列番号SEQ ID NO:2に示されるヌクレオチド配列に基づいて修飾およびプロセシングすることにより得られる派生配列であってもよい。
【0016】
本発明は、上記の新規キトサナーゼコード遺伝子を発現ベクターに連結することにより形成される組換え発現ベクターさらにを提供する。これは、宿主発現株の形質転換、新規キトサナーゼの生産に使用することができる。
好ましくは、前記発現ベクターは、pEASYシリーズベクター、pETシリーズベクター又はpGEMシリーズベクターである。
【0017】
上記の組換え発現ベクターを発現ベクター(宿主細菌)に形質転換することにより得られ、上記の新規キトサナーゼを効率的に発現することできる、エンジニアリング菌。
【0018】
本発明は、上記の新規キトサナーゼの生産方法をさらにを提供する。この方法は、キトサナーゼの生産に適した条件下で、上記の新規キトサナーゼの発現可能な培養物を発酵させ、そして発酵産物を分離・精製して、最終にキトサナーゼを得るステップを含む。
好ましくは、前記エンジニアリング菌を用いてキトサナーゼを生産する方法は以下のステップを含む。
【0019】
(1)エンジニアリング菌の構築ステップ:特定のプライマーを用いてキトサナーゼ標的遺伝子を増幅し、標的遺伝子を回収した後、それを発現ベクターに連結することにより、組換え発現ベクターを構築でき、組換え発現ベクターを宿主細菌に形質転換して、高活性キトサナーゼを生産するエンジニアリング菌を得る。
ここで、増幅に使用されるテンプレートはキトサナーゼのコード配列を持つ組換えベクターである。
好ましくは、キトサナーゼCHI1コード遺伝子を増幅するために使用される特定のプライマーは以下の通りである。
CHI1-F:ATGATGAGCGTGCTGGCAC;
CHI1-R:CGCAGACGCCGTATAAGACG。
【0020】
(2)エンジニアリング菌の発酵ステップ:スクリーニングされたエンジニアリング菌を種液に培養し、アンピシリン(50μg/mL)を含むLB液体培地に1%接種量で接種し、37℃、250r/分でOD600=0.6まで振とうしながら培養し、終濃度が1mMとなるようにIPTGを加え、20℃で低温誘導し、250r/分で振とうしながら16時間培養し、菌体を沈殿させるか、またはさらなる拡大培養させる。
【0021】
(3)キトサナーゼの分離・精製ステップ:細菌ペレットを破砕処理し、直ちに細胞破砕液を4℃、12000r/分で20分間遠心分離し、上清を回収した。上清をNi-NTAカラム法で精製し、そらに透析した後、高純度の組換えキトサナーゼ液を得た。
ここで、細胞壁を超音波で破壊し、超音波装置のパラメーターは、電力400W、5秒間作動、5秒間間隔で60回サイクルのように設定した。
透析バッグは20kDaの分子量カットオフを採用している。
【0022】
好ましくは、上記の方法で使用される発現ベクターは、pEASYシリーズベクター、pETシリーズベクター又はpGEMシリーズベクターである。具体的な実施例では、pEASYシリーズベクターを例とする。
【0023】
発現株として使用される宿主細菌が大腸菌BL21又は大腸菌Rosettaである。このような大腸菌は、成熟した高密度発酵条件と短い酵素生産サイクルを備えたモデル株であるため、微生物発酵産業の分野で広く使用されている。上記の発現ベクターと宿主細菌の協力により、標的キトサナーゼを効率的に発現させ、収量を増加させ、工業生産の要件を満たすことが容易となる。
【0024】
本発明は、オリゴ糖の調製、水産物スクラップ処理における上記の新規キトサナーゼの使用さらにを提供する。本発明により提供されるキトサナーゼの高い活性のため、上記のエンジニアリング菌は、新しいキトサナーゼの大量生産に使用することができ、これにより、オリゴ糖の生産工程で該キトサナーゼを利用し、キトサンの利用価値を高め、廃棄物を宝物に変えられる。
【0025】
さらに、前記キトサナーゼを使用して真菌プロトプラストを調製することもできるため、調製した真菌プロトプラストを細菌種の遺伝子ハイブリダイゼーション実験に直接適用することができ、特に細胞壁成分がキトサンである接合菌に効果的である。前記キトサナーゼは、さらに植物病原菌の抑制にも使用できる。ほとんどの植物病原真菌の細胞壁の主成分はキトサンであるため、キトサナーゼが植物病原真菌の細胞壁を分解することによって、病原菌の予防と治療研究に使用できる。
本発明は、以下の有益な効果を持っている。
【0026】
1、本発明により提供される新規キトサナーゼCHI1は、酵素活性が高く、2.71U/mgの比放射能を有し、一般的に既存のキトサナーゼ活性よりも高い。この酵素は、良好な温度安定性とpHの安定性を持ち、この酵素の最適pHが約5であるが、しかし、そのpHの安定性が比較的高く、pHのわずかな変化が酵素活性にほとんど影響を与えない。pHが4.0まで低下すると、残りの活性が約90%程度になる。緩衝液のpHが10まで上昇しても、CHI1酵素がまだ完全に不活性化されることなかった。前記新規キトサナーゼは、比較的高いpHの安定性を有するため、生産においてアプリケーションの利点があり、基質に対するCHI1の特異性が高い。
【0027】
2、組換え発現とエンジニアリング菌の構築により、標的酵素遺伝子はエンジニアリング菌で大量に発現されることができ、生産量が多いだけでなく、酵素活性も高く、工業生産のニーズに応えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】はキグチの消化管の内容物のメタゲノムDNAの電気泳動図である。
【
図2】はメタゲノムDNA精製後の電気泳動図である。
【
図3】はキトサナーゼ陽性分子クローニングのプレートスクリーニングである。
【
図4】は遺伝子CHI1のPCR増幅産物の電気泳動の結果である。 ここで、MはMarker、1はCHI1遺伝子PCR産物である。
【
図5】は組換えキトサナーゼCHI1のコロニーPCR増幅産物である。 その中では、MはMarker、1-4は異なる組換えベクターコロニークローニングの結果である。
【
図6】はCHI1とGH8ファミリーのキトサナーゼのマルチプルアラインメントの結果である。
【
図7】はキトサナーゼCHI1の疎水性の予測結果である。
【
図8】はキトサナーゼCHI1の三次元構造モデルである。
【
図9】はCHI1の誘導発現と精製のSDS-PAGE電気泳動の結果である。ここで、(A)MはMarkerで、1はCHI1誘導発現結果であり、2と3はCHI1未誘導結果である。(B)MはMarkerで、1はCHI1精製の結果である。
【
図11】はCHI1の最適な温度の測定結果である。
【
図12】はCHI1活性に対する異なる金属イオン処理の影響の結果である。
【
図13】はCHI1の基質特異性試験の結果である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下は、本発明の実施形態における図面を参照して、本発明の実施形態における技術的解決策を明確かつ完全に説明する。記載された実施形態は、すべての実施形態ではなく、本発明の実施形態の一部にすぎないことが明らかである。本発明の実施形態に基づいて、創造的な作業なしに当業者によって得られた他のすべての実施形態は、本発明の保護範囲に含まれるものとする。本発明では、特に明記しない限り、使用される機器および原材料は、市場から購入するか、または現場で一般的に使用することができる。以下の実施例の方法は、特に明記しない限り、当技術分野における従来の方法である。
実施例1 キグチの腸管の内容物のメタゲノムライブラリーの構築
1.1 キグチの腸管の内容物のメタゲノムDNAの抽出
(1)サンプル前処理とDNA抽出
【0030】
無菌操作テーブルで魚のサンプル処理を行い、まず、75%アルコールで魚の体の表面とピンセットなどの道具を拭き、はさみで肛門に沿って弧を描いて前方に切り取った。75%アルコールで消化管の外壁を拭き、滅菌リンス液(0.9%滅菌生理食塩水)で数回すすいだ。滅菌はさみで消化管を分離し、滅菌リンス液で消化管の内容物をすすいで収集した。次に、CTAB法によりキグチの消化管の内容物のメタゲノムDNAを抽出し、抽出されたメタゲノムDNAが電気泳動によって検出された。結果を
図1に示している。
(2)DNA濃度と質量の測定
抽出したDNAを電気泳動で検出・精製した後のDNA質量は、電気泳動の結果を
図2に示している。DNAサンプルの検出には、主に2つの側面が含まれる。
<1>アガロースゲル電気泳動によるDNAの純度と完全性の分析;
<2>NanodropによるDNAの純度(OD260/280、OD230/280比)と濃度の検出。
【0031】
実験結果:
図1と
図2の結果から、抽出したゲノムがわずかに分解されたことが分かった。主な原因としては、動物の腸管の内容物の組成が複雑であるため、生き残るさまざまな酵素が含まれている可能性があり、DNAの抽出と保存に役立たないことである。抽出した遺伝子を精製した後、電気泳動バンドは単一で透明であり、非分散性であった。OD260/OD280比を測定したところ、1.8-2.0の範囲内の1.83であった。RNA汚染、タンパク質やフェノールなどの不純物の汚染が少ないことを示している。OD260/OD230比が2.0未満の1.68であり、サンプルに特定の小分子と塩類が含まれていることを示している。機器によって決定された核酸濃度が376.6ng/μLであった。抽出したDNAの質量は、メタゲノムライブラリー構築のニーズを満たしている。
1.2 DNAの酵素消化と回収
【0032】
(1)以下の酵素消化の反応システムに従って抽出した魚の腸管の内容物DNAを酵素消化処理した。酵素消化の反応システムは:魚の腸管の内容物DNA 88μL;Sau3AI 2μL;10×Sau3AI Buffer10μLであった。
酵素消化の反応条件:37℃で2時間、75℃で5分間不活化。次に、電気泳動で酵素消化の影響を検出した。
(2) 制限消化後のDNA回収:ゲル回収キットを用いてゲル切断し、1000-4000bpの断片を回収した。
1.3 ベクターの酵素消化
同時に、ベクターは相応する酵素消化処理も受けた。ここで、酵素消化の反応システムは以下の通りである。
【0033】
pUC198 6μL;BamHI 2μL;10×BamHI Buffer 10μL。酵素消化の反応条件:37℃で2時間、75℃で5分間不活化。電気泳動で検出した。
1.4 ベクターのCIAP処理
ベクターDNA断片の末端のリン酸基を除去し、ベクターの自己結合を減らしてCIAP処理を行った。具体的な操作は以下の通りである。
(1)エッペンドルフチューブで以下の反応液を調製し、50μLにメスアップした。その中には、以下のものが含まれる。
DNA Fragment 15pmol、
10×Alkaline Phosphatase Buffer 5μL;
CIAP(10-30units/μL)1-2μL;
ddH2Oを加え50μLにした。
(2)まず、37℃で15分間反応させ、さらに、50℃で15分間反応させた。最後に、75℃で10分間処理して酵素を不活化させた。
1.5 DNAとプラスミドベクターの接続
【0034】
BamH Iで酵素消化した脱リン酸化クローニングベクターと不完全に酵素消化したゲノム断片をT4 DNA Ligaseで16℃で一晩ライゲーションした。
【0035】
50μLのライゲーション反応システムは以下の通りである。一回酵素消化後のDNA 30μL;酵素消化後のpUC19ベクター3μL ;10×T4 DNA Ligase Buffer 5μL;T4DNALigase2.5μL;ddH2O 9.5μL。
1.6 大腸菌E.coil Blue2菌株の形質転換
【0036】
上記の接続産物を大腸菌E.coil Blue2菌株に形質転換し、対応するプレートをコーティングしてメタゲノムライブラリーを構築した。ライブラリーの構築試験では、合計1891個のメタゲノムライブラリーが得られ、そのうち15個がコロニーPCR増幅用にランダムに選択され、そのうち11個の陽性クローンが得られ、平均インサート長は1500bpであった。
実施例2 キグチの腸管のメタゲノムライブラリーキトサナーゼのスクリーニング
【0037】
スクリーニング方法:ライブラリー内の多くのクローニングから白色陽性コロニーを選択し、1%コロイドキトサンを含むLB(Amp+IPTG+X-gal)培地プレートに接続し、37℃で1-2日間培養した。コロニーの周りに加水分解円があるかどうかを観察した。コロニーが成長したら、1mg/mLのコンゴーレッド溶液で10-15分間静置して染色し、その後脱色して透明な円のコロニー、即ち標的コロニーが得られた。ストリークによって標的コロニーを精製し、標的細菌の単一コロニーを取得した。上記の加水分解円を有する分子クローニング、プラスミド抽出、プラスミドシーケンシングはShanghai Shenggong Biological Engineering Co., Ltd.よって完成した。
【0038】
実験結果:大量のスクリーニングの結果、透明な円を生成できるさまざまな分子クローニングが多数あり、効果の最も良い1株(
図3に示されるように)にはキトサンを分解する能力があることが分かり、このライブラリー分子クローニングによってコードされる遺伝子はCHI1と名付けられ、遺伝子CHI1の具体的な配列情報は配列表の配列番号SEQ ID NO:2に示される通りである。
実施例3 キトサナーゼ遺伝子CHI1のバイオインフォマティクス分析
表1のそれぞれのツールに従い、キトサナーゼ遺伝子CHI1のさまざまな生物学的情報分析を実行した。
【0039】
【0040】
3.1 マルチプルアラインメントの結果
CHI1と8ファミリーキトサナーゼのマルチプルアラインメントを行い、具体的な比較結果を
図6に示している。比較結果は、キトサナーゼCHI1タンパク質の配列情報が配列表の配列番号SEQ ID NO:1に示されていることを示している、この酵素は、グリコシド加水分解酵素8ファミリーに属している。キトサナーゼCHI1一次構造の比較では、最も近い配列がWP-053425757.1であることを示している。これは、Rheinheimera sp.に由来するキトサナーゼであり、類似度が72%であった。上記の結果からは、CHI1が既存の配列との類似性が低く、新規キトサナーゼ遺伝子であることが示されている。
3.2 タンパク質の物理的および化学的性質の分析結果
CHI1の物理的および化学的性質を表2に示している。その予測分子量が33.08kDaであり、予測等電点が6.76であった。
【0041】
CHI1については、一般的なアミノ酸組成にはシステインCを含まず、最高のアミノ酸組成には、含有量10.7%のロイシンL、及び含有量9.7%のトリプトファンSがある。その中に、31個の酸性アミノ酸(D+E)と31個の塩基性アミノ酸(R+K)が含まれ、脂肪族アミノ酸指数が88.21である。CHI1の原子組成がC1514H2293O427N399S5であり、アミノ酸配列の不安定係数が29.97であることはタンパク質が安定していることを示し、CHI1の親水性指数が-0.214であることは親水性タンパク質であることを示している。
【0042】
[表2] キトサナーゼCHI1の物理的および化学的性質
【0043】
3.3 疎水性の分析結果
タンパク質の疎水性は、タンパク質の三次構造の形成と安定性を維持する上で重要な役割を果す。ProtScale分析によりキトサナーゼ配列を分析し、予測結果を
図7に示すように、正と負の値が疎水性と親水性を表す。全体として、CHI1親水性アミノ酸の分布は比較的均一であり、数量比は疎水アミノ酸よりも有意に高かった。これは、タンパク質の親水性が優れていることを示し、さらに酵素が可溶性タンパク質であると推測することができ、これは物理的および化学的特性分析の結果と一致している。
3.4 細胞内構造の予測結果
【0044】
【0045】
細胞内構造予測は、既知の配列N端リーダーにあるミトコンドリア標的ペプチド(mTP)、葉緑体輸送ペプチド(cTP)、及び分泌経路を持つシグナルペプチド(SP)を予測して分析することで、このタンパク質配列がシグナルペプチドの分泌経路を持つかどうかを確認することできる。表3のキトサナーゼの細胞内構造分析によれば、分泌経路を持つシグナルペプチド指数が0.942に達しており、CHI1キトサナーゼが分泌経路を持つシグナルペプチドを有しており、シグナルペプチドの予測結果と一致している。
3.5 タンパク質二次と三次構造の予測結果
【0046】
このキトサナーゼCHI1は、主にαヘリックスとランダムコイルで構成されている。9つのαヘリックス構造の総残基のパーセンテージが45.52%であり、8つのβシート残基パーセンテージが8.96%であった。ランダムコイルのパーセンテージが45.52%であった。分子ドッキングの結果を
図8に示している。この結果から、基質結合に関与しているアミノ酸残基がLeu224、Trp70、Glu31、Ala86、Asp88であり、マルチプルアラインメントの結果と一致していることを示している。
実施例4 キトサナーゼ遺伝子CHI1クローニングと発現ベクターの構築
4.1 プライマー設計
【0047】
上記のシーケンシングで得られたキトサナーゼ配列に従い、PrimerPremier5.0ソフトウェアを使用してプライマーCHI1-F、CHI1-Rを設計した。陽性分子クローニングのプラスミドをテンプレートとし、上記のプライマーと忠実度の高いpfu酵素を用いて、キトサナーゼ遺伝子CHI1を特異的に増幅させた。増幅条件の具体的な設定は以下の表5を参照する。増幅産物の電気泳動結果を
図4に示している。
CHI1-F:ATGATGAGCGTGCTGGCAC;
CHI1-R:CGCAGACGCCGTATAAGACG;
【0048】
【0049】
ゲルイメージングの増幅結果に従い、最適なアニーリング温度を選んでPCR反応を行った。
4.2 キトサナーゼ遺伝子発現ベクターの構築
【0050】
(1)PCR産物の精製:ゲルDNA回収キット説明書に従ってPCR産物を回収した。電気泳動図を
図5に示している。
(2)PCR産物がベクターと接続される。
以下の試薬を0.2mLのEPバイアルに入れ、PCR装置の温度を37℃に控えて10分間反応した。
【0051】
[表6] 接続反応システム
(3)陽性クローニングのスクリーニング
【0052】
5μLのライゲーション産物を50μL大腸菌コンピテントTransT1に加え、氷浴で30分間置き、42℃で30秒間熱ショックして、直ちに氷上に2分間静置した。250μLの室温に平衡化したLB液体培地を加え、200r/分間、37℃で1時間インキュベートした。そこから40μLを取り、アンピシリンを含む固体培地に均一にコーティングし(終濃度が30μg/mL)、37℃で8-10時間培養した。テンプレートとして白い純粋なコロニーを選び、プライマーがT7 Promoter Primer及びT7 Terminator Primerであり、以下の手順に従って増幅を行い、 94℃での変性前、94℃で2分間変性、55℃で30秒アニーリング、72℃で30秒延長、というサイクルを35回行った。72℃で10分間延長、4℃で保存した。増幅産物を電気泳動分析(結果を
図5に示している)にかけ、陽性クローニングをさらに決定するために、陽性クローニングをShanghai Shenggong Biological Engineering Co., Ltd.に送られてシーケンシングした。
【0053】
(4)発現ベクターを形質転換して正しいスクリーニングをクローニングし、質量抽出キットを参照してプラスミドを抽出し、大腸菌コンピテントE.coli BL21(DE3)に形質転換した。
【0054】
実施例5 組換えキトサナーゼCHI1の誘導発現と精製
5.1 組換えキトサナーゼの誘導プロセス
5.1.1 実験方法:
【0055】
(1)正しい発現ベクターで形質転換された単一コロニーを選び、10mLのアンピシリン(50 μg/mL)を含むLB液体培地に接種し、37℃、250r/分で振とうしながら一晩培養した。
【0056】
(2)翌日、一晩培養した細菌溶液を1%接種量で、100mLのアンピシリン(50μg/mL)を含むLB液体培地に接種し、37℃、250r/分でOD600=0.6まで振とうしながら培養した。10mLのサンプルを誘導されていないサンプルとして取り出して、10000r/分で1分間遠心分離し、細菌ペレットを収集した。その後、直ちに細胞破砕とタンパク質抽出を行い、低温ストレスによる遺伝子発現の誘導を防いだ。
【0057】
(3)残りの細菌溶液に終濃度が1mMのIPTGを加え、20℃で低温誘導し、250r/分で振とうしながら16時間培養し、この細菌溶液を誘導後サンプルとして使用し、(2)法と同様に集細菌ペレットを収集して、20℃で保存した。
【0058】
(4)誘導後の沈殿を一定量のPBS(pH8.0)で再懸濁し、等量の2×SDSローディング緩衝液を加え、10分間加熱・煮沸し、SDS-PAGE電気泳動で分離し、クーマシーブライト染色の3時間後脱色して誘導結果を観察した。
(5)誘導発現に成功した細菌を選択してクローニングし、拡大培養して細菌ペレットを収集し、20℃で保存、して次の分析と精製に供する。
5.1.2 実験結果
【0059】
誘導発現産物の電気泳動検出結果:CHI1のSDS-PAGE分析を
図9に示している。図から分かるように、CHI1のバンドが25kDaから35kDaの間で約33kDaであり、予測されたサイズと似ていることが分かった。
5.2 標的キトサナーゼの抽出、精製及び検出
5.2.1 組換え菌の破砕と細胞内タンパク質の抽出
【0060】
(1)組換え菌の培養液(100mL)を5000r/分、室温で20分間遠心分離し、菌体を回収し、組換え菌に4mLの平衡化緩衝液(pH8.0)を加え、均一までボルテックスミキシングした。
【0061】
(2)上記の菌体懸濁液を10mLの小さなビーカーに入れて、氷浴の条件下で、超音波装置を使用して細胞を破砕した。超音波装置のパラメーターは、電力400W、5秒間作動、5秒間間隔で60回サイクルのように設定した。
(3)直ちに細胞破砕液を4℃、12000r/分で20分間遠心分離し、上清を取り、酵素活性を確認した後、-20℃で保存した。
5.2.2 組換えタンパク質の精製
【0062】
Ni-NTAカラム法で組換えキトサナーゼを精製し、大量の標的タンパク質を含む細胞破砕液の上清を数回調製し、Ni-NTAカラムにかけ、洗浄、溶出などの方法で最終に高純度の標的タンパク質を取得した。具体的な操作は以下の通りである。
(1)カラムのパッキング:媒体を再懸濁して、精製用のタンパク質の量に応じて適切な量の媒体をクロマトグラフィーカラムに入れて静置した。
【0063】
(2)平衡化:5-10倍カラム容量の平衡化緩衝液でクロマトグラフィーカラムを平衡化した。強力な結合能を持つHisラベル組換えタンパク質又は特異的結合を改善するために、平衡化緩衝液に低濃度のイミダゾールを添加することができる(10-20mM)。
【0064】
(3)ローディング:サンプル緩衝液は平衡化緩衝液と同じである。クロマトグラフィーカラムの目詰まりを防ぐために、サンプルを遠心分離するか、0.45μmフィルターでろ過した。
(4)洗浄:サンプルをロードした後、5-10倍カラム容量の平衡化緩衝液でクロマトグラフィーカラムを洗浄し、廃液を収集した。
【0065】
(5)溶出:異なる濃度のイミダゾールを使用して、標的タンパク質を溶出した。平衡化緩衝液で異なる濃度のイミダゾールを調製し、グラジエント溶出を行った。
【0066】
5.2.3 透析処理
カラム後のタンパク質溶出液に高濃度のイミダゾールが含まれているため、透析によりイミダゾールを除去した。具体的な操作は以下の通りである。
【0067】
(1)透析バッグを適切な長さ(10-20cm)の小片に切った。透析バッグを大量の2%(W/V) 重曹と10mM EDTA(pH8.0)の中で10分間煮沸した。
【0068】
(2) 蒸留水で透析バッグを完全に洗浄した。1mM EDTA(pH8.0)に入れて、10分間煮沸し、その後蒸留水で清洗した。冷却後、4℃で保存し、透析バッグが常に溶液に浸されていることを確認する必要である。これ以降、透析バッグにアクセスするときは手袋を着用する必要である。
【0069】
(3)タンパク質溶液をバッグに移し、透析バッグクランプでクランプし、純水又は緩衝溶液に入れて4℃で透析を行った。1時間ごとに溶液を交換した。
【0070】
5.2.4 SDS-PAGEによる組換えキトサナーゼCHI1発現産物の検出
実験方法:誘導する前の発現産物、誘導後の発現産物、および精製後の発現産物に対して、従来のSDS-PAGEで同時に検出を行い、さまざまな状況下で発現産物の産量と純度について分析した。
【0071】
実験結果:上記の精製と透析処理後のキトサナーゼCHI1の精製産物を電気泳動で検出し、結果を
図9に示している。CHI1の精製タンパク質バンドが明確であり、モーショントレイルなどの現象がないことは、この酵素の精製効果が良好であることを示しており、次のステップで酵素特性を決定するための優れた基盤を提供する。
【0072】
実施例7 組換えキトサナーゼCHI1酵素特性の研究
9.1 最適pH値とpHの安定性
(1)実験方法:
<1>最適pH値的測定:0.1mLの前述の分離精製した酵素溶液と0.9mLコロイドキトサンを取って均一に混合し、異なるpH(3-11)値でのキトサナーゼの活性に対する反応システムの影響を測定し、実施例1の方法に従って酵素活性を測定した。最高の酵素活性を100%に設定し、異なるpH値条件下でのキトサナーゼの相対的な酵素活性を算出した。
【0073】
<2>pH値安定性の測定:キトサナーゼと異なるpHの緩衝液を混合して1時間放置した後、残留キトサン活性を測定し、最高の酵素活性を100%に設定し、キトサナーゼの相対的な酵素活性を算出した。
【0074】
(2)実験結果:
図10に示すように、組換えキトサナーゼCHI1の最適pHが約5であったが、そのpHの安定性比較的高かった。pHが4.0まで低下すると、残留活性が90%程度になった。緩衝液のpHが10まで上昇しても、CHI1酵素がまだ完全に不活性化されることなく、その活性が最適pH条件下で36.32%と19.73%に維持されている。これは、組換えキトサナーゼCHI1のpH安定性が良好であることを示している。
【0075】
しかし、ほとんどの既存のキトサナーゼは、pH値が大きく変化すると基本的に不活性化されてしまい、例えば、Zhou ら(2015年に「Extra cellular Over expression of Chitosanase from Bacillus sp.TS in Escherichia coli」に公開されている)の報告によると、大腸菌コンピテントによって発現されるBacillus sp.TSキトサナーゼの最適pHも5.0であるが、pHが4.0まで低下すると、または7.5まで上昇すると、その活性が大幅まで低下し、ほとんどの活性を失っているとされている。この研究では、CHI1の残りの酵素活性について、pH5.0において1時間後に61.59%と43.55%となっており、pH 6.0において、1時間後に63.25%と44.21%となっていることが報告され、これはCHI1のpHの安定性が優れていることを示している。
9.2 最適な反応温度と温度安定性
(1)実験方法:
【0076】
<1>最適な反応温度の測定:0.1mLの酵素溶液と0.9mLのコロイドキトサンを取って均一に混合し、30-80℃の異なる温度下で酵素活性を測定した。なお、最適な温度のキトサナーゼ活性を100%として、異なる温度下でキトサナーゼの相対的な酵素活性を算出した。
【0077】
<2>温度安定性の測定:酵素溶液を最適な温度下で1時間静置し、残りの酵素活性を測定した。なお、元の酵素活性を100%として、キトサナーゼの相対的な酵素活性を算出した。
(2)実験結果:
【0078】
図11の測定結果を示すように、組換えキトサナーゼCHI1の最適な温度が全て60℃であり、温度が異なるとキトサナーゼに大きな影響を与え、温度が80℃まで上昇すると、得られたCHI1酵素活性がわずか最適な温度での20.17%になる。60℃でCHI1を1時間処理した後、残りの酵素活性が61.59%と 43.55%であった。
9.3 金属イオンと界面活性剤
【0079】
(1)実験方法:酵素溶液を濃度が0.5Mの異なる金属イオン緩衝液(Mg2+、Zn2+、Mn2+、K+、Na+、Li+、Ca2+、Cu2+、Fe3+)と混合した。なお、ブランクは不活化の酵素溶液であり、金属イオンを含まない緩衝液を対照群とした。界面活性剤としてSDS及びEDTAを選択し、濃度が0.5Mであった。異なる処理によるキトサナーゼの相対的な酵素活性を算出した。
【0080】
(2)実験結果:
図12にしめすように、Mn
2+はCH1の酵素活性をほぼ2倍に大幅に増加させた。EDTAとSDSの両方が明らかに酵素活性を阻害したが、Li
+及びK
+がCHI1を促進しなかった。
9.4 基質の特異性
【0081】
(1)実験方法:0.9mLの異なる基質と0.1mLのキトサナーゼ液を混合し、キトサナーゼ活性を測定した。異なる基質には、コロイドキトサン、コロイドキチン、粉末キトサン、粉末キチン、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)、カゼインが含まれている。なお、最高の酵素活性を100%として、異なる基質下でのキトサナーゼの相対的な酵素活性を算出した。
【0082】
(2)実験結果:基質特異性の測定結果を
図13に示している。CHI1にはキチンを加水分解する能力がなく、コロイドキトサンが基質の場合、その最適な基質の濃度が1.5%である。
9.5 組換えキトサナーゼの速度論定数
【0083】
二重逆数プロット法を使用して運動定数を決定し、横軸に1 / S(mg / ml)、縦軸に1 / V(min /μmol)を使用してLineweaver-Burk二重逆数チャートを作成し、二重逆数グラフに従って対応する運動定数を算出した。
【0084】
二重逆数法によるとキトサナーゼCHI1のKm値が2.87mg/mLであり、Vmax値が0.49μmol/分であり、比放射能が2.71U/mgであった。TLC(薄層クロマトグラフィー分析)の結果については、24時間の加水分解後、産物に単糖が存在していないことが示されており、CHI1がエンド型セルラーゼであることが示されている。
【配列表】