(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-18
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】草取り兼用スコップ
(51)【国際特許分類】
A01B 1/16 20060101AFI20220119BHJP
【FI】
A01B1/16
(21)【出願番号】P 2017160616
(22)【出願日】2017-08-04
【審査請求日】2020-05-11
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、権利譲渡・実施許諾の用意がある。
(73)【特許権者】
【識別番号】517296547
【氏名又は名称】井本 伸太郎
(72)【発明者】
【氏名】井本 伸太郎
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-187201(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2007/0284123(US,A1)
【文献】特許第4776045(JP,B2)
【文献】特開2017-063772(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0020537(US,A1)
【文献】特開2012-044979(JP,A)
【文献】特開平7-303401(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0108495(US,A1)
【文献】実公昭24-6262(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 1/00 - 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端側に外方に張り出した張出外縁部を持つ板状体
と、該板状体の手元側に一体に設け
られた取手を有し、前記板状体は、その下面側が地面に接したときテコ作用の支点をなす非平坦な底面と、前記張出外縁部に雑草保持用
の凹所を備えてなるスコップであって、
該凹所は、前記外縁部の前記外方に向かって広幅に広がるラッパ
形の開口形状
で、間口寸法(L)が5~20mm、その深さ(H)は該間口寸法(L)の0.5~1.2倍の大きさを持ち、かつ前記間口寸法(L)が異なる複数を備えるとともに、
該スコップの先端側に位置するものほど前記間口寸法(L)が小さいものであることを特徴とする草取り兼用スコップ。
【請求項2】
前記非平坦な底面は、前記取手の押し下げ及び捩じりによるテコ作用を同時に生じるように、前記板状体の縦方向と横方向の曲げによる膨出部を備えるものである請求項1に記載の草取り兼用スコップ。
【請求項3】
前記凹所内のエッジ部は、丸味を持つラウンドエッジで構成されてなる請求項1又は2に記載の草取り兼用スコップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【001】
本発明は、雑草等を容易に抜去する草取り機能を備えた草取り兼用スコップに関する。
【背景技術】
【002】
スコップは庭や花壇を手入れするものとして、例えば植物の植え付けや穴掘り、整地などの為に手軽に用いられ、多用されている。
【003】
一方、そこに植生する雑草や樹木は成長が早く、必要に応じてその抜去が求められるものの、例えば根を深く張ったもの、茎が地面ギリギリに広がるもの、更にこうした雑草が敷きレンガ等の隙間内に伸びたものでは、これを手で引き抜くには限界がある。仮に引き抜きができるとしても、無造作に広範に広がった場合は作業者への負担は図り知れず、特に夏場等では生育が早い為大変な労力を要する。
【004】
そうした草取りには、従来からかまや草刈り機で刈り取ったり、除草剤で一斉に枯らすことがなされるが、これら方法ではもはやその植物は植え替えはできず、また雑草の場合も、前者刈り取りによる方法では、その根っ子を残したまま茎部を切除する為に比較的早期に再生し、また近くの有用植物までも傷める恐れがある。一方、後者の除草剤による方法では土壌自体を痛めることになり、自然環境的にも問題がある。
【005】
こうした草取り作業に対応するものとして、例えば特許文献1は、先端が尖った板状の突き刺し部1と、その基端部に設けた柄とを備え、前記突き刺し部の先端から基端部に向かって複数のスリット5を形成した草取り器具を開示している。
【006】
また特許文献2は、把持部材と、該把持部材に基部を固着した本体からなる草取り具において、
前記本体は、全体が略均一の厚みで、先端部分の側部に鈎状突起により略後方に拡開する草補足空間を有し、かつ本体全体と略同一の厚みを有する草引掛部を含むことを特徴とする草取り具を開示している。
【先行技術文献】
【007】
【文献】特開2011-30号公報
【文献】実用新案登録2536257号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【008】
しかしながら、前記各特許文献による草取り具は、いずれもその先端部を雑草の茎に向けて突き刺すもので、その刺入やあるいは引き抜き時の引っ掛けによって雑草の茎部は横方向の力を受ける為、容易に切断する恐れがある。その為、地中に残った根っ子はもはや容易に取り除くことができず、例えばより大きな穴を掘って取り除くなど必要以上の手間を伴うこととなる。
【009】
本発明は、このような従来技術の草取り具が持つ課題に鑑み、その改良のための工夫と試行によって得られたもので、強固に深く根差した雑草類に対してもテコ作用によって簡単容易に抜去可能な草取り兼用スコップの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【010】
すなわち、本願請求項1に係わる発明は、
先端側に外方に張り出した張出外縁部を持つ板状体と、該板状体の手元側に一体に設けられた取
手を有し、前記板状体は、その下面側が地面に接したときテコ作用の支点をなす非平坦な底面と、前記張出外縁部に雑草保持用の凹所を備えてなるスコップであって、
該凹所は、前記外縁部の前記外方に向かって広幅に広がるラッパ形の開口形状で、間口寸法(L)が5~20mm、その深さ(H)は該間口寸法(L)の0.5~1.2倍の大きさを持ち、かつ前記間口寸法(L)が異なる複数を備えるとともに、該スコップの先端側に位置するものほど前記間口寸法(L)が小さいものであることを特徴とする草取り兼用スコップである。
【011】
更に、実施形態に係わる請求項2の発明は、前記非平坦な底面は、前記取手の押し下げ及び捩じりによるテコ作用を同時に生じるように、前記板状体の縦方向と横方向の曲げによる膨出部を備えるものであるであること、請求項3に係わる発明は、前記凹所内のエッジ部は、丸味を持つラウンドエッジで構成されてなること、を各々特徴とする前記草取り兼用スコップである。
【発明の効果】
【012】
本願請求項1に係わる発明によれば、
スコップは、先端側に外方に向かって張り出した張出外縁部を持つ板状体を用い、かつその外縁部に雑草を保持する為の凹所を設けるととともに、その底面を非平坦にしているため、保持された雑草はそのテコ作用によってほぼ真上に引き上げられ、茎部を切断することなく容易に抜去できる。
【013】
しかも、スコップは比較的厚さが薄い板状体で、かつ凹所は外方に張り出した前記外縁部に広角に設けられるため、比較的背丈の低い雑草に対しても容易に保持できるし、一般的なスコップとしても使用できる汎用性を有するもので、多用用途に利用でき、作業毎に別々の器具を準備する必要がない。
【014】
しかも、前記凹所は前記張出外縁部に設けた前記ラッパ形の複数を、スコップの先端側ほど小さいものであるため操作しやすく、また雑草の種類や大きさ、あるいはその植生状態などに応じて適宜選択でき、わざわざ別の用具に持ち替えることもなくそのまま使用できるし、雑草の保持と抜去後の取り外しが容易に行なえ、また板状体自体の強度低下を抑えることもできる。
更に、請求項2の発明によれば、前記膨出部による非平坦な底面によって、前記テコ作用は前記取手の押し下げや捩じりを同時に加えることができるため、使用場所の制限を受けることがなく、請求項3に係わる発明によれば、前記凹所内のエッジ部は、丸味を持つラウンドエッジで構成されるものである為、雑草を抜去する際に茎部が不用意に切断することが防止できる。
【図面の簡単な説明】
【015】
【
図1】 本発明に係わるる草取り用スコップの一形態を示す斜視図である。
【
図2】 草取り時のテコ作用を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【016】
以下に、本発明の実施形態の一例を図面に沿って説明する。
前記するように、本発明は先端側に外方に張り出した張出外縁部Aを持つ板状体2と、その手元側に設けた取手3で構成され、
その板状体2は、その下面が地面に接したときテコ作用の支点Sをなすように非平坦な底面とし、かつ前記張出外縁部Aに雑草保持用の凹所4を設けるとともに、該凹所4はその外方に向かって広幅に広がるラッパ形又はロート形の開口形状と、抜去する雑草の茎部以上の間口寸法Lを持つ草取り兼用スコップ1を対象にする。
【017】
図1は、その一形態を斜視図で示し、
該スコップ1は、前記外縁部Aを持つとともに曲げ加工により適宜曲げ成形された板状体2と、その手元側に一体に設けられた取手3を備える前記スコップ1が示され、本形態ではその両者を前記板状体で形成している。板状体2は、例えば鉄板やプラスチック、あるいはセラミックなどの陶器製材料により、所定の強度を持つ板厚さと手で操作可能な大きさ、例えば長さ300mm以下、厚さ5mm以下程度の板材料で構成される。
【018】
そして該板状体2は、その先端側を尖らせた刃先先端部になるように船形にし、外方に向けて張り出すように、弧状あるいは小刻みに屈折させながら膨らませた輪郭を持つ張出外縁部Aと、その外縁部Aに沿って、抜去する雑草を保持する為の雑草保持用の凹所4を備えている。なお、前記張出外縁部Aとは、このように板状体の見掛け輪郭線が外側に膨らんだ状態にある部分をいう。
【019】
また該板状体2の他方の手元側には、一般的なスコップと同様に、該板状体の成形加工により、あるいは別製の取手3を一体に備え、作業者は取手3の自由操作によって最適な使用が行われる。
【020】
本形態では、前記外縁部Aは前記板状体2の先端側から略1/2程度の縦方向長さの範囲に設け、かつその外縁部Aに沿って大きさが異なる複数の前記凹所4a,4b・・・を配置したものを示す。その場合、該凹所4は先端側に位置するものほど間口寸法(L)が小さなものを配し、手元側に向かってより大きくすることで、作業者は雑草の種類や太さ、場所に応じてわざわざ持ち替えることなく、任意の凹部4を選択することで使い分けされる。
【021】
前記板状体2は、同図に見られるように広幅な底面をなすように構成される為、雑草抜去のためのテコ作用を加える際にも、その支点S部分が沈下することなく有効なテコ作用が得られる。また、先端側をより小さい凹所4aにすることで構造的な強度不足が改善でき、通常のスコップとしてもそのまま穴掘り用などに用いることができる。
【022】
必要ならば、前記板状体2はその全周を前記張出外縁部Aで構成し、その全周にわたって前記凹所4を設けることもできるし、逆に該凹所4をスコップ1の一側面側の一部のみに設けることもできるなど、本発明はその発明思想の範囲内で種々形態に応用し採用され得る。
【023】
スコップ1は、前記板状体2を地面上に接して配したとき、その下面側にテコ作用の支点Sを作るように、底面を例えばボール状に膨出させるなど非平坦に曲げ変形したり、あるいは前記取手3を一定角度を持って取り付けすることで前記支点Sが形成される。
【024】
本形態では、全体的にトイ形に大きく曲げた板状体2を用い、更にその中央付近をやや膨らせることで、縦方向と横方向に各々膨らみを持つボール状の膨出部Cを形成している。
【025】
こうした成形によって、前記テコ作用を例えば取手3の押し下げで得る場合は前記縦方向の折り曲げ部によって、また比較的茎が太い雑草に対してスコップ1の側面側に設けたやや大きい凹所4を利用するときは、該取手3の前記押し下げや捩じり、あるいはその両方を同時に加えることで、雑草はそれらのテコ作用によってほぼ直上に持ち上げられ、茎部が切断したり根っ子が残ることが軽減される。
【026】
このように手元側の取手3を押し下げや捩じり操作で、例えば斜め方向など自由方向のテコ作用をもたらし、適用範囲の拡大を図るとともに、前記支点S部は雑草とやや離れた位置になるため、直接雑草を押し付けたり地面を突き固めることも防げるし、場所に応じて任意の凹所4が選択できる利便性もあり、作業者の負担軽減に寄与する。
図2は、その抜去状態の一例を示し、前記支点Sは、より有効なテコ作用が得られるように、例えばスコップの先端側乃至略中央付近に設けることが好ましい。
【027】
次に前記凹所4について説明する。
凹所4は、前記するように張出外縁部Aの輪郭線に沿って、その線上の所定位置に設けられ、その開口部5が前記外方に向かって広幅に広がるようにラッパ形やロート形に切り欠きされた開口形状と、前記雑草の茎部以上の間口寸法(L)を有するものとしている。
【028】
その間口角度θが鈍角になるように、
図3は該凹所4の拡大図を示し、これに見られるように、該切り欠き部は、その外側に向かって徐々に広幅になるようにその間口角度θを大きく設定している。その角度θは、例えば90°以上の鈍角にして雑草の収納が容易になるように前記ラッパ形
(凹所4c)や漏斗形
(凹所4d)として、円弧状の弧状面や小刻みに折れ曲がった屈折面で構成できるし、必要ならばこれらを適宜組み合わせた複合面で形成することもできる。
【029】
その場合、前記間口角度θは、より好ましくは140°以上の滑らかな面になるように形成してもよく、また凹所4は、雑草の茎部を嵌め入れできるように、その間口寸法Lは、雑草茎部の太さ以下、例えば5~80mm程度で、またその深さHは該間口寸法Lの1.2倍以下に設定することが好ましい。
なお前記間口寸法(L)は同図3の凹所4cが示すように、間口角度θの場合と同様に張出外縁部で見掛的に描かれる仮想輪郭線a(一点細鎖線)上で乖離する、二つの向き合った乖離点(X,X)同士の幅寸法で示すことができる。
【030】
前記開口寸法Lが前記5mm未満の小さいものでは、その凹所4内に雑草Zの茎部を収める操作に手間取り、逆に80mmを超える程大きくすることは不合理であり、好ましくは8~60mm、更に好ましくは10~40mmとし、特にスコップ1の先端側の凹所4は、その間口寸法Lは5~20mm程度の比較的小さいものが推奨される。
【031】
また形成深さHについても、前記1.2倍を超えるほど大きいものでは、抜去後の雑草の取り外しに手間取るとともに構造的にも材料強度が劣るものとなり、より好ましくは、0.5~1倍程度の深さになるように最適範囲のものが選択される。
【032】
図3は、前記凹所4の前記形状と大きさが異なる2つ4c,4dを併設したものを示すが、例えばスコップの先端側にはこのように比較的小さい凹部をなすように所定rの円弧面を持つラッパ形にすることで、その切り欠き部の幅はその円弧面に沿って減少するため、ロート形の場合のような直線的なものに比べて雑草の保持力が向上し、またその形成深さも小さくできるため、特に先端側に設けることが好ましい。
【033】
一方、スコップの後端側では板状体は広幅であるため、やや大きい凹所を設けても実質的な強度低下は少ないため、例えば徐々に大きさが異なる複数の漏斗形のものを所定間隔毎に並設することも好ましい。
【034】
こうして本発明の前記スコップ1は、例えばヨモギやスギナ、セイタカアワダチソウ、ダイオウ、・・・・・等の他、更に生育初期の比較的細い竹や樹木などのような一本植物の他、例えばカヤやススキなどのように多数本が群生した密集雑草に対しても有効に使用でき、その場合、前記開口部5はその密集太さの0.8倍以上、例えば0.8~10倍の間口寸法(L)を持つものが選択される。特に、前記板状体2はその厚さtが比較的薄い板材で構成される為、雑草が例えばナズナ、オオバコなどのように地面上に広がる背丈の低いものにおいても、その茎部を容易に前記凹所4内に差し入れすることができる。
【035】
また前記凹所
4は、その
開口部5を滑らかな広
幅になるようにして所定深さを有するものであり、雑草Zは容易にその内部に嵌め入れして、収容した雑草Zは
図2のようにその上を軽く指Uで挟み、あるいは軽く押さえて
保持したままテコ作用による引き上げ抜去ができ、また抜去後の取り外しも容易である。
【036】
このような抜去方法において、前記凹所4は雑草Zを収容しまた引き抜く際に切断しないよう、
図3のように少なくとも上面側のエッジ部は、丸味を持ったラウンドエッジにしておくことが好ましい。同図はその上下面を含めてラウンドエッジにした二つの凹所4c,4dを示し、4cは曲率径rでラッパ形にしたもの、また4dは間口角度θを広角になるように前記と同様に円弧部に続いて漏斗形にしたものを示している。
【037】
スコップ1はこのように構成され、これを草取りに用いる時は、前記説明のように、該スコップ1を雑草Zの茎部に最適な前記凹所4を選び、これに雑草の茎部を嵌め入れて保持したまま、取手3を押し下げたり捩じるだけで、雑草Zはそのテコ作用によってそのまま引き上げられ、抜去される。その場合、該凹所は前記張出外縁部に設けられるため、各凹所毎にスコップの配置角度を変えれば全ての凹所が利用できる。
【038】
しかも、スコップは比較的広幅の板状体で構成されるため、地面に対して設置面積が大きく設定できる。そのため、これを強い力で加えても、地面内に沈むことも防止できる。その際、雑草Zは横方向の力を受けず、途中で切れることが軽減するし、またその製造も従来の市販スコップなどと同様に得られるし、適用範囲も制限を受けるものではない。
【符号の説明】
【039】
1 草取り用スコップ
2 板状体(器具)
3 取手
4 凹所
A 張出外縁部
S 支点
Z 雑草