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特許7011158ヤットコ、杭体、およびヤットコを用いた杭体の施工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-18
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】ヤットコ、杭体、およびヤットコを用いた杭体の施工方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 13/00 20060101AFI20220119BHJP
   E02D 13/10 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
E02D13/00 Z
E02D13/10
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2017234923
(22)【出願日】2017-12-07
(65)【公開番号】P2019100141
(43)【公開日】2019-06-24
【審査請求日】2020-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】515277300
【氏名又は名称】ジャパンパイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古谷 卓一
(72)【発明者】
【氏名】諸越 英治
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3014349(JP,U)
【文献】特開平07-197477(JP,A)
【文献】特開平09-158184(JP,A)
【文献】特開2008-208629(JP,A)
【文献】特開平02-136426(JP,A)
【文献】特開2002-161535(JP,A)
【文献】特開2004-308831(JP,A)
【文献】実開平06-085436(JP,U)
【文献】特開平11-036302(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 13/00
E02D 13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
杭体に連結可能なヤットコであって、
円筒状のヤットコ本体の一端側外周面に回動可能に設けられ、杭体に取り付けられた被係合部材の貫通孔に係合可能なフック部を有する係合部材と、
前記係合部材に連結され、且つ前記ヤットコ本体の外周面側方に長手方向に沿って設けられており、前記長手方向へ移動可能な棒状のロッドと、
を備え、
前記ロッドを前記長手方向へ移動させることにより前記係合部材を回動させて、前記フック部を前記被係合部材と係合させ又は係合を解除するとともに、
前記ロッドの前記長手方向の少なくとも一方向の移動距離を規制する規制部が、前記ヤットコ本体の外周面側方における前記ロッドに沿った位置に設けられ、
前記規制部による前記ロッドの移動距離の規制によって、前記フック部と前記被係合部材との係合状態又は係合の解除状態が保持されることを特徴とするヤットコ。
【請求項2】
請求項1のヤットコであって、
前記ロッドは、長手方向の一部が他部よりも大径の大径部を有し、
前記ヤットコ本体は、前記大径部よりも前記ヤットコ本体の他端側に位置し、前記ロッドを前記ヤットコ本体の外周面から所定の距離だけ離間した位置に保持するとともに前記長手方向に移動可能に案内するガイド部材を有し、
前記ロッドの大径部と前記ガイド部材との間に、両者間の前記長手方向の距離を所定の距離以上に保つロッド移動規制部材が取り付けられることにより、前記被係合部材と前記フック部との係合状態を保持することを特徴とするヤットコ。
【請求項3】
請求項1のヤットコであって、
前記ロッドは、長手方向の一部が他部よりも大径の大径部を有し、
前記ヤットコ本体は、前記大径部よりも前記ヤットコ本体の一端側に位置し、前記ロッドを前記ヤットコ本体の外周面から所定の距離だけ離間した位置に保持するとともに前記長手方向に移動可能に案内するガイド部材を有し、
前記ロッドの大径部と前記ガイド部材との間に、両者間の前記長手方向の距離を所定の距離以上に保つロッド移動規制部材が取り付けられることにより、前記被係合部材と前記フック部との係合が解除された状態を保持することを特徴とするヤットコ。
【請求項4】
請求項1から請求項3のうち何れか1項のヤットコであって、
前記フック部は、被係合部材と係合した状態で、根本部の上面よりも先端部の上面の方がヤットコ本体の他端側に位置する形状を有していることを特徴とするヤットコ。
【請求項5】
請求項1から請求項4のうち何れか1項のヤットコであって、
前記フック部は、被係合部材の貫通孔に係合した状態で、前記貫通孔の内面と面接触可能な形状を有していることを特徴とするヤットコ。
【請求項6】
請求項1から請求項5のうち何れか1項のヤットコであって、
前記ヤットコ本体は、一端部と他端部との間に中継部を介在させることによって全長を可変に構成されるとともに、
前記ロッドは、一端部と他端部との間に前記中継部と対応する長さを有する中継部を介在させることによって、前記ヤットコ本体の全長に対応した長さに設定可能に構成されていることを特徴とするヤットコ。
【請求項7】
請求項1のヤットコに連結可能な杭体であって、
前記ヤットコのフック部に係合可能な貫通孔を有する被係合部材を備えたことを特徴とする杭体。
【請求項8】
請求項7の杭体であって、
前記貫通孔は、前記フック部の挿入方向に沿って、杭体における上方向に傾斜していることを特徴とする杭体。
【請求項9】
請求項7の杭体であって、
前記被係合部材は、前記ヤットコの係合部材との係合状態の時に、貫通孔とフック部の表面とが面接触可能に形成されていることを特徴とする杭体。
【請求項10】
請求項1のヤットコを用いた杭体の施工方法であって、
前記杭体に設けられた被係合部材に前記係合部材のフック部を係合させた状態で、前記杭体およびヤットコを地盤に形成された孔内に下降させる工程と、
前記ロッドの前記長手方向の移動により前記係合部材を回動させて、前記フック部と前記被係合部材との係合を解除する工程と、
前記係合が解除されたヤットコのみを上昇させる行程と、
を有することを特徴とするヤットコを用いた杭体の施工方法。
【請求項11】
請求項10のヤットコを用いた杭体の施工方法であって、
前記ロッドの移動を規制することにより前記被係合部材と係合部材との係合状態が解除されるのが抑制された状態で、ヤットコを下降させるとともに、
前記ロッドの移動を規制することにより前記被係合部材と係合部材との係合が解除された状態から係合状態になるのが抑制された状態で、ヤットコを上昇させることを特徴とするヤットコを用いた杭体の施工方法。
【請求項12】
請求項10および請求項11のうち何れか1項の杭体の施工方法であって、
前記杭体の上部に前記ヤットコが付き合わされた状態で、前記杭体に前記被係合部材が取り付けられることを特徴とするヤットコを用いた杭体の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヤットコ、杭体、およびヤットコを用いた杭体の施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地盤に形成された孔内に杭体を設置する際に上記杭体に連結されるヤットコは、杭体が所定の深さに設置された後、杭体との連結を解除されて孔内から引き上げられる。ヤットコとして、杭体の上部に設けられたボルトに係合可能で、ヤットコの本体部に対して回動可能な回動盤と、上記回動盤を回動させて上記ボルトとの係合を解除する解除部とを有する構成が知られている。また、上記回動盤が設けられていない構成として、杭体の上部に設けられたボルトの軸部を挟持可能な係合部材と、上記ボルトと係合部材との係合を解除する回転部材とを有する構成が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-161535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
杭体の上部に設けられたボルトに回動盤や係合部材を係合させる構成では、杭体とヤットコとを確実に連結するためには、実際上、4本以上の多数のボルトを用いることが必要となる。また、ボルトとの係合によって杭体とヤットコとを連結するために、回動盤と解除部や、係合部材と回転部材などの構成要素を有する複雑な構成とされる必要があり、それゆえ、地中に埋設させた状態で確実に係合を解除可能にすることは必ずしも容易ではない。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑み、簡素な構成で、杭体との連結および解除を確実に行うことができるヤットコ等を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、
第1の発明は、
杭体に連結可能なヤットコであって、
円筒状のヤットコ本体の一端側外周面に回動可能に設けられ、杭体に取り付けられた被係合部材の貫通孔に係合可能なフック部を有する係合部材と、
前記係合部材に連結され、且つ前記ヤットコ本体の外周面側方に長手方向に沿って設けられており、前記長手方向へ移動可能な棒状のロッドと、
を備え、
前記ロッドを前記長手方向へ移動させることにより前記係合部材を回動させて、前記フック部を前記被係合部材と係合させ又は係合を解除するとともに、
前記ロッドの前記長手方向の少なくとも一方向の移動距離を規制する規制部が、前記ヤットコ本体の外周面側方における前記ロッドに沿った位置に設けられ、
前記規制部による前記ロッドの移動距離の規制によって、前記フック部と前記被係合部材との係合状態又は係合の解除状態が保持されることを特徴とする。
【0007】
上記構成により、ロッドをヤットコ本体の一端部側に移動させることによりフック部を回動させて被係合部材に当該フック部を係合させることができる。また、ロッドをヤットコの他端部側に移動させることにより、フック部を回動させて被係合部材と当該フック部との係合を解除することができる。
【0008】
本発明のヤットコは、ヤットコ本体、係合部材及びロッドのみからなるため簡素な構成にすることができる。また、棒状のロッドを長手方向に移動させるだけで係合部材を回動させることができるのでヤットコと杭体との連結及び解除を確実に行うことができる。
【0010】
さらに、ロッドの長手方向の移動が規制されて係合部材が係合位置または係合解除位置に確実に保たれることによって、係合部材の誤動作を防ぎ、係合が解除されてしまうことによる杭体の沈下を防止したり、ヤットコを引き上げる際に係合解除状態が保たれるようにして杭体を確実に埋設状態にしたりすることが容易にできる。
【0011】
また、第2の発明は、
第1の発明のヤットコであって、
前記ロッドは、長手方向の一部が他部よりも大径の大径部を有し、
前記ヤットコ本体は、前記大径部よりも前記ヤットコ本体の他端側に位置し、前記ロッドを前記ヤットコ本体の外周面から所定の距離だけ離間した位置に保持するとともに前記長手方向に移動可能に案内するガイド部材を有し、
前記ロッドの大径部と前記ガイド部材との間に、両者間の前記長手方向の距離を所定の距離以上に保つロッド移動規制部材が取り付けられることにより、前記被係合部材と前記フック部との係合状態を保持することを特徴とする。
【0012】
上記構成では大径部がガイド部材に当接すると、それ以上のロッドの移動が規制される。また、移動規制部材が大径部とガイド部材との間に取り付けられると両者の距離が所定の距離以上に保持され、係合状態が確実に保持されることにより、係合部材の誤動作を防ぎ、杭体の沈下を防止することが容易にできる。
【0013】
また、第3の発明は、
第1の発明のヤットコであって、
前記ロッドは、長手方向の一部が他部よりも大径の大径部を有し、
前記ヤットコ本体は、前記大径部よりも前記ヤットコ本体の一端側に位置し、前記ロッドを前記ヤットコ本体の外周面から所定の距離だけ離間した位置に保持するとともに前記長手方向に移動可能に案内するガイド部材を有し、
前記ロッドの大径部と前記ガイド部材との間に、両者間の前記長手方向の距離を所定の距離以上に保つロッド移動規制部材が取り付けられることにより、前記被係合部材と前記フック部との係合が解除された状態を保持することを特徴とする。
【0014】
これにより、係合部材の誤動作を防ぎ、ヤットコを引き上げる際に杭体を確実に埋設状態にすることが容易にできる。また、上記構成ではロッドがヤットコ本体の外周面から所定の距離だけ離間した位置で保持されているため被係合部材とフック部との係合を解除する際にヤットコの外周面に干渉することなく係合を解除できる。
【0015】
第4の発明は、
第1の発明から第3の発明のうち何れか1つのヤットコであって、
前記フック部は、被係合部材と係合した状態で、根本部の上面よりも先端部の上面の方がヤットコ本体の他端側に位置する形状を有していることを特徴とする。
【0016】
上記構成により根本部の上面よりも先端部の上面の方がヤットコ本体の他端側に位置する形状で係合できるため杭体が回転若しくはヤットコを回転させた際に係合が解除されてしまうことを防ぐことができ、フック部と貫通孔との係合を強固にさせることが容易にできる。
【0017】
第5の発明は、
第1の発明から第4の発明のうち何れか1つのヤットコであって、
前記フック部は、被係合部材の貫通孔に係合した状態で、前記貫通孔の内面と面接触可能な形状を有していることを特徴とする。
【0018】
上記構成では貫通孔の内面とフック部が面接触した状態で係合するので広い面積で接触して強固な係合となる。また、係合部材や被係合部材における、ヤットコ本体の半径方向の寸法を小さく抑え、ヤットコの埋設や引き上げ時の抵抗を小さく抑え得るようにすることが容易にできる。
【0019】
第6の発明は、
第1の発明から第5の発明のうち何れか1つのヤットコであって、
前記ヤットコ本体は、一端部と他端部との間に中継部を介在させることによって全長を可変に構成されるとともに、
前記ロッドは、一端部と他端部との間に前記中継部と対応する長さを有する中継部を介在させることによって、前記ヤットコ本体の全長に対応した長さに設定可能に構成されていることを特徴とする。
【0020】
これにより、施工条件等に応じてヤットコの全長を可変に設定することが容易にできる。
【0021】
第7の発明は、
第1の発明のヤットコに連結可能な杭体であって、
前記ヤットコのフック部に係合可能な貫通孔を有する被係合部材を備えたことを特徴とする。
【0022】
上記構成では係合状態ではフック部は杭体における上方向に傾斜している貫通孔に挿入されるため係合した状態において回転しても係合が解除されることはないようにして、上記第1の発明について説明したのと同様に、比較的簡潔な構成で、ヤットコと杭体との連結および連結解除を確実にすることが容易にできる。
【0023】
第8の発明は、
第7の発明の杭体であって、
前記貫通孔は、前記フック部の挿入方向に沿って、杭体における上方向に傾斜していることを特徴とする。
【0024】
これにより、フック部と貫通孔との係合を強固にさせることが容易にできる。
【0025】
第9の発明は、
第7の発明の杭体であって、
前記被係合部材は、前記ヤットコの係合部材との係合状態の時に、貫通孔とフック部の表面とが面接触可能に形成されていることを特徴とする。
【0026】
これにより、係合部材や被係合部材における、ヤットコ本体の半径方向の寸法を小さく抑え、ヤットコの埋設や引き上げ時の抵抗を小さく抑え得るようにすることが容易にできる。
【0027】
第10の発明は、
第1の発明のヤットコを用いた杭体の施工方法であって、
前記杭体に設けられた被係合部材に前記係合部材のフック部を係合させた状態で、前記杭体およびヤットコを地盤に形成された孔内に下降させる工程と、
前記ロッドの前記長手方向の移動により前記係合部材を回動させて、前記フック部と前記被係合部材との係合を解除する工程と、
前記係合が解除されたヤットコのみを上昇させる行程と、
を有することを特徴とする。
【0028】
これにより、やはり、上記第1の発明について説明したのと同様に、ヤットコと杭体との連結および連結解除を確実にすることが容易にできる。すなわち例えば、上記構成では係合状態が解除されるのが抑制された状態で、ヤットコを下降させヤットコに連結した杭体の埋設作業ができる。
【0029】
また、第11の発明は、
第10の発明のヤットコを用いた杭体の施工方法であって、
前記ロッドの移動を規制することにより前記被係合部材と係合部材との係合状態が解除されるのが抑制された状態で、ヤットコを下降させるとともに、
前記ロッドの移動を規制することにより前記被係合部材と係合部材との係合が解除された状態から係合状態になるのが抑制された状態で、ヤットコを上昇させることを特徴とする。
【0030】
これにより、やはり、上記第1の発明について説明したのと同様に、ヤットコと杭体との連結および連結解除を確実にすることが容易にできる。
【0031】
第12の発明は、
第10の発明および第11の発明のうち何れか1つのヤットコを用いた杭体の施工方法であって、
前記杭体の上部に前記ヤットコが付き合わされた状態で、前記杭体に前記被係合部材が取り付けられることを特徴とする。
【0032】
上記構成ではヤットコと杭体がつき合わされた状態で被係合部材を取り付けるためフック部が被係合部材に確実に係合される位置に被係合部材を取り付けることができ、ヤットコと杭体との連結および連結解除を確実にすることが容易にできる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、簡素な構成で、杭体との連結および解除を確実に行うことが可能なヤットコ等を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】ヤットコと杭体とを連結した状態を示す全体図である。
図2】ヤットコと杭体の連結部分を拡大して示す正面図である。
図3】ヤットコの下端部の構成を示す横断面図である。
図4】ロッドの固定的な連結構成を示す縦断面図である。
図5】ヤットコの上端部の構成を示す斜視図である。
図6】ロッドの上方移動状態を示す斜視図である。
図7】ロッドの脱着可能な連結構成を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0036】
(ヤットコの構成)
図1、および図2に示すように、ヤットコ100は、ヤットコ本体101の下部に芯出板102を有し、杭体200の上部に、中心軸を一致させた状態で配置し得るようになっている。ここで、芯出板102の周方向の位置は、図1および図2においては便宜上紙面に平行な位置に描いているが、他の構成要素との干渉を生じない位置であれば特に限定されず、例えば同図とは45°回転させた位置に4枚設けられるなどされる。
【0037】
ヤットコ本体101の下部側面には、また、図3に示すように、回動軸111が凸設され、ワッシャ112、およびナット113によって、係合部材121が回動自在に設けられている。上記係合部材121は、杭体200の上端部に設けられた被係合部材201の貫通孔201aに係合するフック部121aを有している。上記のような係合部材121および被係合部材201等は、例えばヤットコ本体101の中心軸に回転対称に2組設けられている。なお、2組に限らず、3組以上設けられてもよい。
【0038】
上記フック部121aは、より詳しくは、被係合部材201との係合状態の位置で、根本部121cの上面121dよりも先端部121eの上面121fの方がヤットコ100における上方向に位置する形状を有している。より好ましくは、上記フック部121aは、被係合部材201との係合状態の位置で、被係合部材201の貫通孔201aの内面と面接触など、比較的広い面積で接触可能な形状を有している。また、係合部材121は、回動する際に、最下端位置が常にヤットコ本体101の下面よりも上方に位置するように形成され、杭体200の上面との干渉が防止されるようになっている。
【0039】
ヤットコ本体101の側面には、また、ヤットコ本体101の長手方向に沿って、ロッドガイド142(ガイド部材)によりヤットコ本体101の外周面から所定の距離だけ離間した位置に保持されて上下方向に移動可能に案内されるロッド131が設けられている。ロッド131の下端部には、ヨーク132が設けられている。上記ヨーク132と、係合部材121のロッド連結部121gとは、ピン孔132a・121b、連結ピン141、および図示しないコッターピンによって連結され、ロッド131の上下方向の移動により、係合部材121が回動軸111回りに回動して、係合部材121と被係合部材201とが、係合、および係合解除されるようになっている。
【0040】
上記ロッド131は、全長に亘って一体的に形成されてもよいが、例えば、図4に示すように、凸部131aを有する部材と凹部131bを有する部材とが溶接部131cにより溶接されて構成されている。このように構成されていることによって、ロッド131の一部が損傷した場合などに、全体を交換せずに、部分的に補修することができ、メインテナンスコストを低減することが容易になる。
【0041】
ヤットコ本体101の上部には、図5に示すように、上端フランジ103が形成されるとともに、側面にロッド131の上部を上下方向に移動可能に案内する2つのロッドガイド142が設けられている。一方、ロッド131には、上部に頂部リング134が設けられるとともに、上記2つのロッドガイド142の間の位置に、大径部133が設けられている。そこで、上記大径部133と、上方側のロッドガイド142との間にロッド移動規制部材143が取り付けられることにより、ロッド131の上方向への移動が規制され、被係合部材201と係合部材121との係合状態が解除されるのを抑制し得るようになっている。また、図6に示すように、上記大径部133と、下方側のロッドガイド142との間にロッド移動規制部材143が取り付けられることにより、ロッド131の下方向への移動が規制され、被係合部材201と係合部材121とが係合状態になるのを抑制し得るようになっている。すなわち、上記ロッドガイド142、大径部133、およびロッド移動規制部材143によって、ロッド131の上下方向の少なくとも一方向の移動を規制する規制部が構成されている。
【0042】
(ヤットコを用いた杭体の施工方法)
上記のようなヤットコ100を用いた杭体200の打設は、例えば次のようにして行われる。
【0043】
(1)まず、杭体200の上部にヤットコ100を同軸上に載置する。
【0044】
(2)ロッド131を下方に移動させ、係合部材121を所定の係合状態の位置にさせる。具体的には、図5に示すように、ロッド131の大径部133の上方にロッド移動規制部材143を取り付け、ロッド131の上方移動が規制されるようにする。
【0045】
(3)上記の状態で杭体200の上部に被係合部材201を載置し、係合部材121のフック部121aに貫通孔201aが係合するように位置決めして、被係合部材201を杭体200に溶接等により取り付ける。これにより、ヤットコ100と杭体200とが連結された状態となる。なお、被係合部材201はあらかじめ杭体200に溶接等により取り付けるようにしてもよいが、上記のようにいわゆる現物合わせして取り付けることにより、貫通孔201aとフック部121aの表面とが面接触等し得るようにすることが容易に可能になる。
【0046】
(4)上記杭体200およびヤットコ100を下降させて、杭体200を埋設する。
【0047】
(5)ロッド131を上方に移動させ、係合部材121と被係合部材201との係合を解除する。具体的には、図6に示すように、ロッド131を上方に引き上げ、ロッド131の大径部133の下方にロッド移動規制部材143を取り付けて、ロッド131の下方移動が規制されるようにする。これにより、係合部材121と被係合部材201とが係合状態になることが確実に抑制される。
【0048】
(6)上記係合が解除されたヤットコ100を上方に引き上げる。このとき、上記のように係合部材121と被係合部材201とが係合状態になることが確実に抑制されるので、杭体200を埋設状態に確実に保ったまま、ヤットコ100だけを引き上げることが容易に可能になる。
【0049】
上記のように、ロッド131の上下動によって回動する係合部材121のフック部121aと被係合部材201の貫通孔201aとの係合、および係合解除によってヤットコ100と杭体200との連結および連結解除をすることにより、比較的簡潔な構成で、上記連結および連結解除を確実にすることが容易にできる。
【0050】
しかも、上記のような係合は、ボルトの螺号や、ボルトの頭部と係合部材との係合等に比べて、強固な係合をさせることが容易にできるので、係合部材等の数を少なく設定することも容易にでき、一層構成の簡素化を図ることも容易にできる。
【0051】
特に、フック部121aが、被係合部材201の貫通孔201aとの係合状態の位置で、根本部の上面よりも先端部の上面の方が上方向に位置する形状を有していることにより、一層強固な係合をさせることが容易にできる。
【0052】
また、フック部121aと貫通孔201aとが面接触等可能に構成されていることにより、係合部材121や被係合部材201における、ヤットコ本体101の半径方向の寸法を小さく抑えることが比較的容易になるので、ヤットコ100の埋設や引き上げ時の抵抗を小さく抑えることも容易にできる。
【0053】
また、ロッド131の上下移動により係合部材121と被係合部材201とが係合状態、または係合解除状態にされるので、係合部材121および被係合部材201が地中にある場合でも、ロッド131の上下動位置によって、上記係合状態、または係合解除状態にあることを容易に確認することができる。
【0054】
また、ロッドガイド142、ロッド131の大径部133、およびロッド移動規制部材143等によって、ロッド131の上下方向の少なくとも一方向の移動が規制されることにより、係合部材121の誤動作を防ぎ、杭体200の沈下を防止したり、ヤットコ100を引き上げる際に杭体200を確実に埋設状態にしたりすることが、容易にできる。
【0055】
ヤットコ100におけるヤットコ本体101は、全長に亘って一体的に形成されるのに限らず、上下方向の中間部に中継部を介在させることによって、施工条件に応じて全長を可変にし得るようにしてもよい。その場合、ロッド131も、例えば、図7に示すようにピン孔135bを有する連結筒部材135が溶接部135aによって溶接された上部と、ピン孔131dが形成された下部とが連結ピン136および図示しないコッターピンによって連結され得るように構成し、上記上部と下部との間に中継部を介在させることによって、ヤットコ本体101の全長に対応した長さに設定できるようにしてもよい。
【0056】
また、係合部材121が複数設けられる場合、それぞれを係合状態または係合解除状態にするための回動方向は、互いに同一にしてもよいし、異なるようにしてもよい。例えば、ヤットコ本体101の直径方向両側に1組ずつの係合部材121および被係合部材201等が設けられる場合、係合状態にするための係合部材121の回動方向が同一(例えばともに時計回り)である場合には、比較的係合解除しやすいことがある。一方、係合状態にするための係合部材121の回動方向が互いに異なる(例えば一方が時計回りで他方は反時計回り)である場合には、比較的係合解除されにくいことがある。そこで、例えば前者のようなヤットコ100は地盤が比較的固い条件で用いる一方、後者のようなヤットコ100は地盤が比較的軟弱な条件で用いるようにするなど、使い分けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0057】
100 ヤットコ
101 ヤットコ本体
102 芯出板
103 上端フランジ
111 回動軸
112 ワッシャ
113 ナット
121 係合部材
121a フック部
121b ピン孔
121c 根本部
121d 上面
121e 先端部
121f 上面
121g ロッド連結部
131 ロッド
131a 凸部
131b 凹部
131c 溶接部
131d ピン孔
132 ヨーク
132a ピン孔
133 大径部
134 頂部リング
135 連結筒部材
135a 溶接部
135b ピン孔
136 連結ピン
141 連結ピン
142 ロッドガイド
143 ロッド移動規制部材
200 杭体
201 被係合部材
201a 貫通孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7