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<図1>
  • 特許-吸収性パッド取付け部を有する衣類 図1
  • 特許-吸収性パッド取付け部を有する衣類 図2
  • 特許-吸収性パッド取付け部を有する衣類 図3
  • 特許-吸収性パッド取付け部を有する衣類 図4
  • 特許-吸収性パッド取付け部を有する衣類 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-18
(45)【発行日】2022-02-10
(54)【発明の名称】吸収性パッド取付け部を有する衣類
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/72 20060101AFI20220203BHJP
   A41B 9/02 20060101ALI20220203BHJP
   A41B 9/04 20060101ALI20220203BHJP
【FI】
A61F13/72
A41B9/02 Z
A41B9/04 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019188240
(22)【出願日】2019-10-11
(65)【公開番号】P2021062011
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2021-01-21
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 チーカス株式会社20SS展示会 大阪展示会(大阪府大阪市中央区本町4丁目7-11 愛日会館 4F)展示日 令和1年9月5日、6日 チーカス株式会社20SS展示会 東京展示会(東京都台東区浅草橋5丁目3-2 秋葉原スクエアビル 7F)展示日 令和1年9月11日~13日 チーカス株式会社20SS展示会 本社展示会、常設展示(愛知県清須市西枇杷島町小田井3-1-3 チーカス株式会社)令和1年9月18日、令和1年9月18日以降常設展示
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】594208846
【氏名又は名称】チーカス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207066
【弁理士】
【氏名又は名称】米山 毅
(74)【代理人】
【識別番号】110002402
【氏名又は名称】特許業務法人テクノテラス
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 太郎
【審査官】▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-119161(JP,A)
【文献】特開2006-136582(JP,A)
【文献】特開2019-080672(JP,A)
【文献】特開2007-020629(JP,A)
【文献】特開2015-175079(JP,A)
【文献】特開2003-093438(JP,A)
【文献】特開平08-280725(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
A61L15/16-15/64
A41B 9/00- 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前身頃部と、後身頃部と、着用者の股下に配置される上記前身頃部と上記後身頃部とに縫製された股下部とを有する衣類であって、
前記股下部の肌側面には吸収性パッドの装着位置設定用の目安ラインが形成されており、
前記目安ラインが、標準的な装着位置を示す基準ラインを含み、
前記基準ラインが、前記股下部の幅方向に吸収性パッドの最も幅が狭い位置又は羽根付き吸収性パッドの羽根の長さ方向の中間を位置合わせするための基準とされていることを特徴とする衣類。
【請求項2】
前身頃部と、後身頃部と、着用者の股下に配置される上記前身頃部と上記後身頃部とに縫製された股下部とを有し、
前記股下部には前記股下部の幅よりも狭い浮きマチ部が形成されており、
前記浮きマチ部の肌側面には吸収性パッドの装着位置設定用の目安ラインが形成されており、
前記目安ラインが、標準的な装着位置を示す基準ラインを含み、
前記基準ラインが、前記股下部の幅方向に吸収性パッドの最も幅が狭い位置又は羽根付き吸収性パッドの羽根の長さ方向の中間を位置合わせするための基準とされていることを特徴とする衣類。
【請求項3】
前記目安ラインは、所定間隔を隔てて複数本が略平行に形成されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の衣類。
【請求項4】
前記目安ラインは、さらに、前記基準ラインの前側及び/又は後側に少なくとも1本の補正ラインを含むことを特徴とする、請求項に記載の衣類。
【請求項5】
前記目安ラインの各間隔の中に等間隔のものが含まれることを特徴とすることを特徴とする、請求項3又は4に記載の衣類。
【請求項6】
前記目安ラインの各間隔の中に不等間隔のものが含まれること特徴とすることを特徴とする、請求項3~のいずれか1項に記載の衣類。
【請求項7】
前記目安ラインが、標準ライン、前記標準ラインよりも前寄りの前寄りライン、前記標準ラインよりも後寄りの第1後寄りライン、前記第1後寄りラインよりも後寄りの第2後ろよりラインよりなり、前記標準ラインと前記前寄りラインとの間隔及び前記標準ラインと前記後寄りラインとの間隔が等しく第1間隔であり、第1後寄りラインと第2後寄りラインとの間隔が前記第1間隔よりも大きい第2間隔であることを特徴とする、請求項3に記載の衣類。
【請求項8】
前記目安ラインは、縫製、前記股下部とは異なる織り方、又は、圧縮痕の少なくとも1つにより形成されていることを特徴とする、請求項1~のいずれかに記載の衣類。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性パッド取付け部を有する衣類に関し、さらに詳しくは、着用者の股下部に配置される尿漏レパッド、失禁ライナー、生理用ナプキン等の吸収性パッドの取付け位置を確認するための目印を有する吸収性パッド取付け部を有する衣類に関する。
【背景技術】
【0002】
現在では65歳以上の老齢人口の割合30%近くにもなっており、それに伴い、泌尿器の生理的退行によって失禁状態を示す者が増えている。また、近年、失禁に対する社会的な意識が変化し、尿漏れは特に女性の高齢者の問題というだけではなく、男女とも、また、年齢とは無関係に、ストレスや体型の変化、加齢などにより、誰にでも起こりうる問題として意識されるようになってきている。
【0003】
尿失禁とは、自分の意志に関係なく尿が漏れる症状をいうが、男女ともに加齢とともに尿失禁をする者は多くなる。尿失禁には、大きく分けて運動、くしゃみなどで尿がもれる腹圧性尿失禁、尿意自覚からトイレに行くまでに尿がもれてしまう切迫性尿失禁、持続的に少量の尿がもれる溢流性尿失禁、機能性尿失禁、反射性尿失禁などが知られている。特に、腹圧性尿失禁及び切迫性尿失禁の割合が多く占めているが、これらの失禁による尿漏れ量は少量(10~15cc程度)であり、このような少量の尿が漏れるものは軽失禁と呼ばれている。
【0004】
失禁対策にはおむつが考えられるが、重度の失禁の者には着用されても、軽度の失禁の者には、直ちに外観からその着用状態が分かるので、着用が避けられている。そのため、軽失禁の者は、失禁を覚悟しての通常の衣類をそのまま着用するか、衣類の股下部に吸収性パッドを装着して(特許文献1参照)着用するか、あるいは股下部に吸水性部材が取り付けられた衣類(特許文献2参照)を着用することが多い。特に特許文献1に開示されているような吸収性パッドを装着した状態で着用する衣類は、吸収性パッドとして生理用ナプキンを用いれば、生理対策用の衣類とすることもできる。なお、尿漏れ用吸収性パッドと生理用吸収性パッドとは、吸収性材料がそれぞれの用途に応じて相違しているが、実質的に同様の構成を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-011478号公報
【文献】実用新案登録第3164944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に示されているような衣類の股下部に吸収性パッドを装着した状態で着用する衣類や、上記特許文献2に示されているような股下部に吸水性部材が取り付けられた衣類によれば、軽失禁や軽い経血の場合にはそれぞれの液体成分の漏出が良好に抑制されると共に、外観から尿失禁用ないし生理対策用の衣類であることが分かりにくくなるという効果を奏する。
【0007】
しかしながら、上記特許文献2に示されているような股下部に吸水性部材が取り付けられた衣類は、股下部に少なくとも吸水性部材の上端部及び下端部が縫合されているものである。このような衣類は、吸水量に限りがあるため、失禁尿量や経血量が多い場合には液体成分の漏出を抑えることができなくなることがあり、このような場合、衣類全体を交換する必要が生じる。それに対し、上記特許文献1に示されているような衣類の股下部に吸収性パッドを装着した状態で着用する衣類は、失禁尿量や経血量が多い場合には吸収性パッドを交換すればよいので、使用に際して手間が掛からず、取り扱いが容易となる。なお、このような吸収性パッドとしては、失禁用のものも、生理用のものも、複数のメーカーから、吸収量やサイズが異なり、さらに形状も異なる多種類のものが既に市販されている。
【0008】
しかしながら、最適な吸収性パッドの装着位置は、衣類の装着者毎に体型の相違があること、装着する吸収性パッドのサイズ、形状ないし最大吸収量が多種多様であることから、一律に定めることができない。そのため、衣類の着用者が自分で装着する吸収性パッドのザイズや形状に応じて最適な吸収性パッドの装着位置を見出す必要があった。加えて、衣類の装着者が所定の衣類及び所定の吸収性パッドに対して最適な装着位置を見出すことができても、衣類や吸収性パッドを交換すると、以前に見出した最適な吸収性パッドの装着位置が分からなくなるので、必ずしも最適な装着位置に装着できなくなることがあって。
【0009】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、吸収性パッドの最も幅が狭い位置又は羽根付き吸収性パッドの場合においては羽根の長さ方向の中間を基準として吸収性パッド装着位置設定用の目安ラインとの間の距離を確認することができ、所定の衣類及び所定の吸収性パッドについて最適な装着位置を見出した後は、その最適な装着位置を容易に記憶することができ、しかも容易にその最適な位置に所定の吸収性パッドを装着することができる衣類を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様の衣類は、前身頃部と、後身頃部と、着用者の股下に配置される上記前身頃部と上記後身頃部とに縫製された股下部とを有する衣類であって、前記股下部の肌側面には吸収性パッドの装着位置設定用の目安ラインが形成されており、前記目安ラインが、標準的な装着位置を示す基準ラインを含み、前記基準ラインが、前記股下部の幅方向に吸収性パッドの最も幅が狭い位置又は羽根付き吸収性パッドの羽根の長さ方向の中間を位置合わせするための基準とされていることを特徴とする。
【0011】
本発明の第1の態様の衣類によれば、股下部の幅方向に吸収性パッド装着位置設定用の目安ラインが形成されているので、衣類の着用者の体型や用いる吸収性パッドの種類によって最適な吸収性パッドの装着位置を確認できるようになる。すなわち、一度吸収性パッドを衣類の股下部の肌側面へ装着した状態で着用した際に、周囲への失禁尿、経血、おりもの等の漏れの有無やこれらの成分の吸収位置を確認し、吸収性パッドの最も幅が狭い位置又は羽根付き吸収性パッドの場合においては羽根の長さ方向の中間を基準として吸収性パッド装着位置設定用の目安ラインとの間の距離を確認すればよく、その結果に基づいて吸収性パッド装着位置設定用の目安ラインを基準として、吸収性パッドの装着位置を前後にずらして最適な位置に装着することができる。それにより、所定の吸収性パッドについて一度最適な装着位置を確認できれば、以降はその所定の吸収性パッドを容易に衣類の股下部における最適な装着位置に装着することができるようになる。
【0012】
なお、吸収性パッドの最適な装着位置は、例えば、羽根付きないし羽根なし等の吸収性パッドの形状や長さの差異、尿、経血、おりもの等の最大吸着量の差異等に応じて、個別に確認する必要がある。また、吸収性パッドの装着位置は、吸収性パッドの最も幅が狭い位置又は羽根付き吸収性パッドの場合においては羽根の長さ方向の中間を基準として吸収性パッド装着位置設定用の目安ラインとの間の距離を確認すればよい。また、このような衣類には、複数枚の布帛を重ねて一体化したクロッチによって股下部を形成したものも存在するが、本発明の第1の態様の衣類はこのようなものに対しても適用可能である。この場合はクロッチの肌側面の表面に目安ラインを形成することになる。
【0013】
また、本発明の第2の態様の衣類は、前身頃部と、後身頃部と、着用者の股下に配置される上記前身頃部と上記後身頃部とに縫製された股下部とを有し、前記股下部には前記股下部の幅よりも狭い浮きマチ部が形成されており、前記浮きマチ部の肌側面には吸収性パッドの装着位置設定用の目安ラインが形成されており、前記目安ラインが、標準的な装着位置を示す基準ラインを含み、前記基準ラインが、前記股下部の幅方向に吸収性パッドの最も幅が狭い位置又は羽根付き吸収性パッドの羽根の長さ方向の中間を位置合わせするための基準とされていることを特徴とする。
【0014】
本発明の第2の態様の衣類によれば、本発明の第1の態様の衣類と同様の作用・効果を奏することができることに加えて、特に羽根付の吸収性パッドを用いた場合は、浮きマチ部の装着者に接する側に羽根付の吸収性パッドを装着した後に羽根の部分を浮きマチと股下部の間に折り曲げて固定することができるので、装着者が激しい運動をしても吸収性パッドの装着状態を安定した状態に維持することができるようになり、しかも、羽根部分が外部から見えなくなるので、吸収性パッドを装着していることが他の人に知られることが少なくなる。
【0015】
本発明の第1及び第2の態様の衣類としては、股下部を有する衣類であれば、いずれのものにも適用することができ、具体的には、ショーツ、ガードル、パンツ、ボディスーツ、レオタードなどが挙げられる。ショーツとしては、サニタリー用ショーツ(生理用ショーツ)、失禁用ショーツなどが挙げられる。なお、上記衣類の着用者は、女性であっても男性であってもよい。
【0016】
また、本発明の第1及び第2の態様の衣類においては、前記目安ラインは、所定間隔を隔てて複数本が略平行に形成されていてもよい。また、目安ラインが複数本、略平行に形成されている場合は、標準的な装着位置を示す基準ラインを含んでいてもよく、さらに、前記基準ラインの前側及び/又は後側に少なくとも1本の補正ラインを含んでいてもよく、目安ラインの各間隔の中に等間隔のものが含まれていても、不等間隔のものが含まれていてもよい。
【0017】
さらに、目安ラインが複数本、略平行に形成されている場合は、標準ライン、前記標準ラインよりも前寄りの前寄りライン、前記標準ラインよりも後寄りの第1後寄りライン、前記第1後寄りラインよりも後寄りの第2後ろよりラインよりなり、前記標準ラインと前記前寄りラインとの間隔及び前記標準ラインと前記後寄りラインとの間隔が等しく第1間隔であり、第1後寄りラインと第2後寄りラインとの間隔が前記第1間隔よりも大きい第2間隔とされていてもよい。
【0018】
なお、前記目安ラインは、縫製、前記股下部ないし浮きマチ部とは異なる織り方、又は、圧縮痕の少なくとも1つにより形成されているものであってもよい。目安ラインを縫製により形成する場合は、用いる糸の色や太さ、縫い方等を他の部分と変えることにより形成すればよい。また、目安ラインを股下部ないし浮きマチ部とは異なる織り方で形成する場合は、目視で周囲と区別できる任意の織り方を採用することができる。さらに、圧縮痕により形成する場合は、特に衣類が合成繊維を含んでいる場合に有効であり、加熱された圧縮子を押し当てることによって圧縮痕が永続して残留するようになせばよい。なお、前記目安ラインは、前記吸収性パッド側の所定の基準位置が前記目安ラインに重なるように、あるいは、前記目安ラインに対して所定の位置になるように、前記吸収性パッドを前記衣類に取り付けるための目安となる。
【発明の効果】
【0019】
以上述べたように、本発明の衣類によれば、所定の衣類及び所定の吸収性パッドについて最適な装着位置を見出した後は、その最適な装着位置を容易に記憶することができ、しかも容易にその最適な位置に所定の吸収性パッドを装着することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施例の股下部を有する衣類を模式的に示す斜視図である。
図2】実施例の股下部を有する衣類を胴回り側の開孔部より見た概略平面図である。
図3】実施例の衣類の浮きマチ部の概略平面図である。
図4図4Aは実施例の吸収性パッドとして用いた羽根なし吸収性パッドの模式平面図で有り、図4Bは同じく羽根付き吸収性パッドの概略平面図である。
図5図5Aは通常の吸収性パッド貼付位置を示す図であり、図5Bは前漏れが気になる場合の吸収性パッド貼付位置を示す図であり、図5Cは少し後漏れが気になる場合の吸収性パッド貼付位置を示す図であり、図5Dは大きく後漏れが気になる場合の吸収性パッド貼付位置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、実施例を用いて本発明の衣類について説明するが、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するための衣類を説明するために例示したものであり、本発明をこの実施例に限定することを意図するものではない。本発明は、この実施例に示したものに対して、特許請求の範囲に示した技術思想を逸脱することなく、種々の変更を行ったものにも均しく適用し得るものである。
【0022】
図1図3を用いて、実施例の股下部を有する衣類を説明する。なお、図1は実施例の股下部を有する衣類を模式的に示す斜視図であり、図2は同じく股下部を有する衣類を胴回り側の開孔部より見た平面図であり、図3は同じく股下部の平面図である。
【0023】
この股下部を有する衣類10は、前身頃部12と、後身頃部13と、前身頃部12と後身頃部13との間に縫製により連結された股下部11とを有している。前身頃部12と後身頃部13とは、の股下部を有する衣類10の両側面において互いに縫製により連結され、股下部を有する衣類10の本体部を構成している。なお、図1及び図2においては、股下部を有する衣類10の両側面の連結部分は図示省略している。股下部を有する衣類10は、前身頃部12のできるだけ下端縁に近い位置に股下部11の前端部を配置することにより、股下部11が全体的に後方に寄せてある。そのため、股下部を有する衣類10は、前方から見た際に、股下部11の前端部が比較的目立たないように配慮されている。
【0024】
この股下部を有する衣類10の股下部11における肌側面には、股下部11の幅よりも狭い浮きマチ部14が配置されており、この浮きマチ部14の前端部及び後端部はともに縫製によって前身頃部12及び後身頃部13に取り付けられている。この浮きマチ部14は、少なくとも股下部11の肌側面が吸水性の布帛とされ、その下面側が撥水性(防水性)の布帛とされた複層構造の布帛からなる積層体からなり、クロッチと称されることもある。そして、浮きマチ部14は、その前端縁側及び後端縁側が股下部11とともに前身頃部12ないし後身頃部14にスパン糸、ウーリー糸などの縫着糸15を用いて伸縮自在に前身頃部12及び後身頃部13に縫着されており、また、両側縁はほつれないように縫着されている。また、股下部11の両側縁もスパン糸、ウーリー糸などの縫着糸16によって伸縮自在に縫着されている。
【0025】
この実施例の股下部を有する衣類10では、具体的には、股下部11の肌側面上に、複層構造の浮きマチ部14を載置し、浮きマチ部14の前端縁及び後端縁からそれぞれ5~7mm程度内側までの範囲内を、スパン糸、ウーリー糸等の縫着糸15を用いてオーバーロック等の縫製方法などによって前身頃部12ないし後身頃部13とともに伸縮自在に縫製している。また、股下部11の両側縁から5~7mm程度内側までの範囲内も、スパン糸、ウーリー糸等の縫着糸16を用いて平二本等の縫製方法などによって縫製することにより、浮きマチ部14の両側縁を伸縮自在に縫着している。なお、浮きマチ部14は、着用状態で、その前端縁がその後端縁よりも下方に配置されるように股下部を有する衣類10に取り付けられている。
【0026】
この実施例の股下部を有する衣類10では、浮きマチ部14の部分に尿漏れ用吸収性パッドや生理用吸収性パッド等の吸収性パッドを貼付することにより、尿漏れ対応ショーツないし生理用ショーツとすることができる。以下においては、吸収性パッドとして市販の羽根なし吸収性パッドないし羽根付き吸収性パッドを使用した場合について、吸収性パッドの肌側面への装着方法を図3図5を用いて詳細に説明する。なお、図3は股下部11上に配置されている浮きマチ部の概略平面図である。図4Aは市販の羽根なし吸収性パッドの模式平面図で有り、図4Bは同じく羽根付き吸収性パッドの模式平面図である。図5Aは通常の吸収性パッド貼付位置を示す図であり、図5Bは前漏れが気になる場合の吸収性パッド貼付位置を示す図であり、図5Cは少し後漏れが気になる場合の吸収性パッド貼付位置を示す図であり、図5Dは大きく後漏れが気になる場合の吸収性パッド貼付位置を示す図である。
【0027】
実施例の股下部を有する衣類10では、浮きマチ部14の肌側面に、浮きマチ部14の幅方向を横切るように目安ラインが複数本、平行に形成されている。この目安ラインは、例えば、図3に示したように、浮きマチ部14の先端側20から約5cm離れた位置で最も浮きマチ部14の幅が狭い位置の肌面側に、標準的な装着位置を示す標準ラインL0が形成されている。そして、基準ラインL0よりも約1cm前方側に標準ラインL0と実質的に平行に前寄りラインL1が形成されている。さらに、基準ラインL0よりも約1cm後方側に標準ラインL0と実質的に平行に第1の後寄りラインL2と、基準ラインL0よりも約3cm後方側に同じく第2の後寄りラインL3が形成されている。この場合、標準ラインL0と前寄りラインL1との間隔及び標準ラインL0と第1の後寄りラインL2との間隔は等しく第1間隔(約1cm)とされており、第1後寄りラインL2と第2後寄りラインL3との間隔は前記第1間隔よりも大きい第2間隔(約2cm)とされている。
【0028】
上記のような目安ラインL0~L3間の間隔を採用した理由は次のとおりである。すなわち、市販の吸収性パッドとしてのナプキンの各部のサイズを測定すると、ナプキンの全長ないし吸収量の相違にかかわらず、前漏れ対策部分の長さは平均値から±1cmの範囲内に収まっており、同じく後ろ漏れ対策部分の長さも平均値から±3cmの範囲内に収まっている。このことから、股下部に形成する目安ラインの間隔は、前方向は約1cmあれば有効に前漏れを防ぐことができる位置を見出すことができ、後ろ方向は最大で約3cmあれば有効に後漏れを防ぐことができる位置を見出すことができると考えられたためである。一方、後ろ方向の3cmラインよりも後ろにナプキンを付けた場合には、ほとんどのナプキンが防水布の前側端部よりも後ろ側までしか届かないため、前漏れの原因となるおそれがある。
【0029】
なお、目安ラインL0~L3は、縫製、浮きマチ部とは異なる織り方、又は、圧縮痕の少なくとも1つにより形成することができる。目安ラインL0~L3を縫製により形成する場合は、用いる糸の色や太さ、縫い方等を他の部分と変えることにより形成すればよい。また、目安ラインL0~L3を浮きマチ部とは異なる織り方で形成する場合は、目視で周囲と区別できる任意の織り方を採用することができる。さらに、目安ラインL0~L3を圧縮痕により形成する場合は、特に衣類が合成繊維を含んでいる場合に有効であり、加熱された圧縮子を押し当てることによって圧縮痕が永続して残留するようになせばよい。
【0030】
このような実施例の股下部を有する衣類10で使用する吸収性パッドとしては、例えば、図4Aに示したような羽根なし吸収性パッド21や、図4Bに示したような羽根つき吸収性パッドを使用することができる。そして、最適な吸収性パッドの装着位置は、衣類の装着者毎に体型の相違があること、装着する吸収性パッドのサイズ、形状ないし最大吸収量が多種多様であることから、一律に定めることはできない。
【0031】
そこで、衣類の装着者は、予め所定の吸収性パッドを選択する。その所定の吸収性パッドが図4Aに示したような羽根なし吸収性パッド21の場合は、幅が最も細い部分を基準位置と定める。また、その所定の吸収性パッドが図4Bに示したような羽根付き吸収性パッド22の場合は、羽根の長さ方向の中間を基準位置と定める。そして、図5Aに示したように、吸収性パッドの基準位置が浮きマチ部14の標準ラインL0と重なるように、吸収性パッドを浮きマチ部14に貼付する。装着者は、このように吸収性パッドが浮きマチ部14に取り付けられた衣類10を、所定時間、例えば朝から夜まで、装着し、吸収された成分の付着状態を確認する。
【0032】
衣類の装着者が、前漏れが多いと感じた場合は、図5Bに示したように、吸収性パッドの基準位置が標準ラインL0よりも前方の前寄りラインL1と重なるように貼付すれば、漏れた尿、経血、おりもの等が吸収性パッドの実質的に中央部に吸収されるようになる。衣類の装着者が、後漏れが少し多いと感じた場合は、図5Cに示したように、吸収性パッドの基準位置が標準ラインL0よりも後方の第1後寄りラインL2と重なるように貼付すれば、漏れた尿、経血、おりもの等が吸収性パッドの実質的に中央部に吸収されるようになる。同様に、衣類の装着者が、後漏れがかなり多いと感じた場合は、図5Dに示したように、吸収性パッドの基準位置が標準ラインL0よりもより後方の第2後寄りラインL3と重なるように貼付すれば、この場合も漏れた尿、経血、おりもの等が吸収性パッドの実質的に中央部に吸収されるようになる。
【0033】
このように、衣類の装着者は、数回、試行錯誤により、所定の吸収性パッドについて、吸収性パッドの基準位置と浮きマチ部14の肌側面に形成された目安ラインL0~L3との関係がどの場合に最適となるかを確認する。これにより、装着者は,選択された所定の吸収性パッドについて、目安ラインL0~L3のどの位置が最も好ましいかを認識することができるので、以降はその所定の吸収性パッドを用いる場合は直ちに最適な位置に貼付することができるようになる。なお、衣類の着用者が上述した所定の吸収性パッドとは異なる吸収性パッドを使用する場合は、上記の方法を再度繰り返せばよい。
【0034】
なお、吸収性パッドとして図4Bに示したような羽根付き吸収性パッド22を用いる場合は、羽根の長さ方向の中間を基準位置として、羽根なし吸収性パッド21の場合と同様にして最適な貼付位置を確認することができる。さらに、特に羽根付き吸収性パッド22を用いた場合は、浮きマチ部の装着者に接する側に羽根付の吸収性パッドを装着した後に羽根の部分を浮きマチと股下部11の間に折り曲げて固定することができるので、装着者が激しい運動をしても吸収性パッドの装着状態を安定した状態に維持することができるようになり、しかも、羽根部分が外部から見えなくなるので、吸収性パッドを装着していることが他の人に知られることが少なくなる。
【0035】
また、実施例における衣類としては、股下部を有する衣類であれば、いずれのものにも適用することができ、具体的には、ショーツ、ガードル、パンツ、ボディスーツ、レオタードなどが挙げられる。ショーツとしては、サニタリー用ショーツ(生理用ショーツ)、失禁用ショーツなどが挙げられる。なお、上記衣類の着用者は、女性であっても男性であっても同様に適用できる。
【0036】
また、上記の実施例では、股下部11に浮きマチ部14を有する衣類に対して適用した例を示したが、浮きマチ部14が存在しない衣類に対しても適用可能である。この場合は、衣類の股下部の肌側面に直接目安ラインL0~L3を形成すればよい。また、股下部が複数枚の布帛を重ねて一体化したクロッチによって形成されている場合には、このクロッチ部の肌側面に直接目安ラインL0~L3を形成すればよい。さらに、目安ラインとしては、少なくとも一本の基準ラインL0が形成されていれば、装着者は所定の吸収性パッドに対する最適貼付位置を認識できるので、再度所定の吸収性パッドを貼着する場合には容易に最適な貼付位置に貼付することができるようになる。
【0037】
以上、実施例を用いて本発明の衣類について説明したが、上記実施例は、本発明の技術思想を具体化するための衣類を説明するために例示したものであり、本発明をこの実施例に限定することを意図するものではない。本発明は、この実施例に対して種々の変更を行ったものや、変形例を組み合わせたものに対しても、均しく適用し得るものである。
【0038】
上記実施例では、複数の目安ラインの配置として、図3図4のものを例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、目安ラインの本数は4本に限定されるものではなく、少なくとも1本あればよく、2本でも、3本でも、あるいは、5本以上であってもよい。また、本発明の目安ラインの間隔も図3図4に限定されるものではない。例えば、吸収性パッドのサイズが異なるような国や地域においては、その特有の吸収性パッドの種類に応じた目安ラインの配置とすることが可能である。
【符号の説明】
【0039】
10…衣類
11…股下部
12…前身頃部
13…後身頃部
14…浮きマチ部
15…縫着糸
16…縫着糸
20…浮きマチ部の先端側
21…羽根なし吸収性パッド
22…羽根付き吸収性パッド
図1
図2
図3
図4
図5