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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-18
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/64 20060101AFI20220119BHJP
   B60N 2/42 20060101ALI20220119BHJP
   B60N 2/68 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
B60N2/64
B60N2/42
B60N2/68
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020101166
(22)【出願日】2020-06-10
(62)【分割の表示】P 2018108911の分割
【原出願日】2014-02-28
(65)【公開番号】P2020138734
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2020-07-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【弁理士】
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【弁理士】
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】田辺 仁一
(72)【発明者】
【氏名】栗原 彬光
【審査官】森林 宏和
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102008060486(DE,A1)
【文献】特開平08-132943(JP,A)
【文献】特開2013-132992(JP,A)
【文献】特開2011-006003(JP,A)
【文献】特開2010-253971(JP,A)
【文献】特開平10-250522(JP,A)
【文献】実開昭62-145840(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00 - 2/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートバックフレームのサイドフレームに取り付けられて側方から乗員を支持するサポート部材を備える車両用シートであって、
前記サポート部材は、
前記サイドフレームのシート幅方向内側に取り付けられた内側板と、
前記サイドフレームのシート幅方向外側に取り付けられた外側板と、
前記内側板の前側と前記外側板の前側を連結する連結部と、
前記連結部の前記サイドフレーム側に設けられ、前記内側板と前記外側板と前記連結部とに連結された後部連結部と、
を備え、
前記サイドフレームは、シート前方に膨出する前方膨出部を備え、
前記内側板は、前記前方膨出部の最大膨出位置よりも上方に設けられ
前記後部連結部は、前記内側板に荷重がかかる際に前記サイドフレームの前面に当接するように形成されていることを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
前記前方膨出部は、少なくとも前記乗員の腰の高さに相当する部分でシート前方に膨出することを特徴とする請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記内側板は、前記乗員の胸部高さに位置するように前記サイドフレームに取り付けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用シート。
【請求項4】
前記内側板は、複数の内側取付部によって前記サイドフレームに取り付けられていることを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の車両用シート。
【請求項5】
前記サポート部材は、前記内側板と前記外側板と前記連結部とに一部を囲まれる空間の上方を開放するように形成されていることを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の車両用シート。
【請求項6】
前記車両用シートは、前記サポート部材を覆うように設けられたクッションパッドと、該クッションパッドを覆う表皮と、をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の車両用シート。
【請求項7】
前記車両用シートは、前記サポート部材を覆うように設けられたクッションパッドと、該クッションパッドを覆う表皮と、をさらに備え
前記サポート部材は、上下方向に延在しており、矩形状の側受部を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用シート。
【請求項8】
前記車両用シートは、前記サポート部材を覆うように設けられたクッションパッドと、該クッションパッドを覆う表皮と、をさらに備え、
前記サポート部材は、前記内側板の端部側に形成されたフランジ部を備え、
前記フランジ部は、前記サイドフレームの側部にシート前後方向で当接する部位に、シート前後方向である厚さ方向に貫通する内側取付孔を備え、前記サイドフレームの側部に前後方向で固定されることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用シート。
【請求項9】
前記クッションパッドは、シート幅方向における前記サポート部材と前記表皮との間に設けられていることを特徴とする請求項6乃至8のいずれか一項に記載の車両用シート。
【請求項10】
前記車両用シートはクッションパッドを備え、
前記サポート部材と前記クッションパッドとの間にエアバッグモジュールが設けられていることを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに係り、特に、シートバックフレームのサイドフレームに取り付けられて側方から乗員を支持するサポート部材を備える車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の側方からの衝撃から乗員を保護する技術として、シートの側方、例えばサイドドアの内部にエアバッグモジュールが配設されたドアマウント型のエアバッグを備える車両が従来から知られている。
【0003】
また、同様に側突時の衝撃緩和を目的とし、更に、通常運転時に乗員を側方から好適に支持する技術として、特許文献1には、シートバックフレームの側部に、衝撃緩和のための空間部を内部に有して柔軟性を有するサイドサポートを設ける技術が開示されている。
具体的には、特許文献1の発明は、側突時に乗員が横移動して、サイドサポートを押圧することによってサイドサポートの空間部が潰れ、乗員の横移動を許容することによって衝撃を吸収できるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-095597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の発明のように、通常運転時にも乗員を側方から支持可能なように、サイドサポート内の空間部によって、シート側方の衝撃を和らげるようにした場合には、衝撃吸収のために十分大きな空間部を設ける必要がある。このため、シート側方の空間へのサイドサポートの張り出し量が必然的に大きくなってしまい、車両の内部空間を狭めることとなっていた。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、シート幅方向へのシートの大型化を抑制しつつ、シート幅方向からの衝撃に対する乗員の保護を好適に行える車両用シートを提供することにある。
また、本発明の他の目的は、通常運転時において、乗員から加わる荷重に対する支持剛性が高く、好適に乗員を支持することが可能な車両用シートを提供することにある。
更に、本発明の他の目的は、側突時において、乗員に加わる荷重を緩和して、好適に乗員を支持することが可能な車両用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、本願発明に係る車両用シートによれば、シートバックフレームのサイドフレームに取り付けられて側方から乗員を支持するサポート部材を備える車両用シートであって、前記サポート部材は、前記サイドフレームのシート幅方向内側に取り付けられた内側板と、前記サイドフレームのシート幅方向外側に取り付けられた外側板と、前記内側板の前側と前記外側板の前側を連結する連結部と、前記連結部の前記サイドフレーム側に設けられ、前記内側板と前記外側板と前記連結部とに連結された後部連結部と、を備え、前記サイドフレームは、シート前方に膨出する前方膨出部を備え、前記内側板は、前記前方膨出部の最大膨出位置よりも上方に設けられ、前記後部連結部は、前記内側板に荷重がかかる際に前記サイドフレームの前面に当接するように形成されていること、により解決される。
【0008】
上記の構成によれば、乗員からの押圧による内側板の変形が前方膨出部に干渉することを抑制でき、サポート部材のシート幅方向外側への変形を確保でき、側突時に乗員に加わる荷重を緩和して、好適に乗員を支持することができる。
また、上記の構成では、サイドフレームに当接する後部連結部がサポート部材に設けられていることで、サポート部材を介してサイドフレームに乗員から加わる荷重に対するサポート部材の支持剛性を高めることができ、好適に乗員を支持できることとなる。
【0009】
更に、前記前方膨出部は、少なくとも前記乗員の腰の高さに相当する部分でシート前方に膨出していると好適である。
【0012】
また、前記内側板は、前記乗員の胸部高さに位置するように前記サイドフレームに取り付けられていると好ましい。
上記の構成では、乗員に接する側にある内側板が乗員の胸部高さに配置されていることで、側突時に保護が必要となる乗員の胸部の脇を好適に支持できる。
【0013】
更に、前記内側板は、複数の内側取付部によって前記サイドフレームに取り付けられていると好ましい。
このように、複数の内側取付部によってサイドフレームに取り付けられているので、サポート部材の取付剛性を向上させることができる。
【0014】
また、前記サポート部材は、前記内側板と前記外側板と前記連結部とに一部を囲まれる空間の上方を開放するように形成されていると好ましい。
このように、サポート部材が、内側板と外側板と連結部とに一部を囲まれる空間の上方を開放するように形成されていることで、サポート部材のサイドフレームへの取付状態を開放部分から確認することができ、メンテナンス性が良好となる。
【0015】
また、前記車両用シートは、前記サポート部材を覆うように設けられたクッションパッドと、該クッションパッドを覆う表皮と、をさらに備え、前記サポート部材は、前記内側板と前記外側板と前記連結部とに連結された後部連結部を前記連結部の前記サイドフレーム側に備え、前記後部連結部は、前記内側板に荷重がかかる際に前記サイドフレームの前面に当接するように形成されていると好適である。
また、前記車両用シートは、前記サポート部材を覆うように設けられたクッションパッドと、該クッションパッドを覆う表皮と、をさらに備え、前記サポート部材は、上下方向に延在しており、矩形状の側受部を備えていると好適である。
また、前記車両用シートは、前記サポート部材を覆うように設けられたクッションパッドと、該クッションパッドを覆う表皮と、をさらに備え、前記サポート部材は、前記内側板の端部側に形成されたフランジ部を備え、前記フランジ部は、前記サイドフレームの側部にシート前後方向で当接する部位に、シート前後方向である厚さ方向に貫通する内側取付孔を備え、前記サイドフレームの側部に前後方向で固定されていると好適である。
また、前記クッションパッドは、シート幅方向における前記サポート部材と前記表皮との間に設けられていると好適である。このような構成によれば、乗員がクッションパッドを介してサポート部材に触れるため、乗員に生じる違和感を抑制できる。
また、前記車両用シートはクッションパッドを備え、前記サポート部材と前記クッションパッドとの間にエアバッグモジュールが設けられていると好適である。

【発明の効果】
【0016】
本発明の車両用シートによれば、シート幅方向におけるサポート部材のシートバックフレームからの突出量を抑制してシートの幅方向の大型化を抑制しつつ、シート幅方向からの衝撃に対する乗員の保護を好適に行うことが可能となる。
また、本発明の車両用シートによれば、通常運転時において、乗員から加わる荷重に対する支持剛性を高めることができ好適に乗員を支持することが可能となる。
また、本発明の車両用シートによれば、側突時に保護が必要となる乗員の胸部の脇を好適に支持することが可能となる。
また、本発明の車両用シートによれば、乗員からの押圧による内側板の変形が前方膨出部によって阻害されることを抑制でき、サポート部材のシート幅方向外側への変形を確保でき、側突時に乗員に加わる荷重を緩和して、好適に乗員を支持することが可能となる。
また、本発明の車両用シートによれば、内側板から乗員に付加する力が局所的に生じることを抑制しつつ、乗員に生じる異物感を抑制できる。
また、本発明の車両用シートによれば、乗員からサポート部材にシート前方側からの荷重がかかる通常運転時に、乗員の支持を好適に行うことが可能となる。
また、本発明の車両用シートによれば、サポート部材のサイドフレームへの取付状態を開放部分から確認することができることで、メンテナンス性を良好にすることが可能となる。
また、本発明の車両用シートによれば、内側板がインフレータに当接してサポート部材の撓みを阻害することを回避することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る車両用シートの外観図である。
図2】サポート部材が取り付けられた車両用シートを示す模式的な側面図である。
図3】シートバックフレームの平面図である。
図4】(a)は、ビスによってサイドフレームに固定された部分を含むサポート部材の断面であって、通常運転時のサイドフレームの断面を示す図2又は図3のA-A断面矢視図、(b)は、同断面であって、側突時のサイドフレーム32の状態を示す図2又は図3におけるA-A断面矢視図である。
図5】サポート部材の外側板側斜視図である。
図6】サポート部材の内側板側斜視図である。
図7】サポート部材の後方側斜視図である。
図8】サイドフレームに取り付けられた状態のサポート部材及びエアバッグモジュールの模式的な正面図である。
図9】シートバックフレームのサイドフレーム外側に取り付けられた状態のサポート部材及びエアバッグモジュールを示す図1のB-B断面矢視図である。
図10】他の実施形態に係るサポート部材の後方側斜視図である。
図11】他の実施形態に係るサポート部材におけるビスによってサイドフレームに固定された部分を含む断面及びサイドフレームの断面であって、図10のC-C断面を含む断面斜視図である。
図12】前方膨出部を有するサイドフレームを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態に係る車両用シートSについて説明する。
なお、以下の説明中、前後方向とは、車両用シートに着座した着座者から見たときの前後方向を意味し、幅方向とは、車両用シートのシートバックの幅方向(横幅方向)を意味し、高さ方向とは、シートバックの高さ方向、厳密にはシートバックを正面から見たときのシートバックの上下方向を意味する。
【0019】
まず、本発明の一実施形態に係る車両用シートSの構成について図1図3を参照しながら説明する。
ここで、図1は、本発明の一実施形態に係る車両用シートSの外観図、図2は、サポート部材4が取り付けられた車両用シートSを示す模式的な側面図、図3は、シートバックフレーム3の平面図である。
【0020】
車両用シートSは、図1に示すように、乗員の背凭れとなるシートバックS1、乗員が着座するシートクッションS2を備える。
【0021】
シートバックS1は、骨組みとなるシートバックフレーム3と、このシートバックフレーム3に取り付けられたサポート部材4と、これらを覆うように設けられたクッションパッド1aと、このクッションパッド1aを覆う表皮1bと、から主に構成されている。
【0022】
シートバックフレーム3は、シートバックフレーム3の幅方向に離間して配置され上下方向に延在するサイドフレーム32と、一部がサイドフレーム32を構成して、シートバックフレーム3の上部に配置されシート幅方向に延在するパイプ状の上部フレーム30と、下端部を連結する下部フレーム33とにより枠状に構成されている。
【0023】
サイドフレーム32は、上部フレーム30のうちシート高さ方向に延在する側部30aと、左右の側部30aの一部を覆うように形成されたサイドフレーム本体31aと、から構成されている。
サイドフレーム本体31aは、板金をプレス加工して断面略C字状に形成されたものであり、上側よりも下側の前後幅が広くなるように湾曲して形成された板体である。また、サイドフレーム本体31aは、シート内側に開放側が配置されるようにシートバックS1に設けられている。
【0024】
サポート部材4は、車両に加わる外力からシート幅方向において乗員を支持するために設けられているものであり、TPO(Thermo Polyolefin)、TPU(Thermoplastic Polyurethane)等のエラストマー樹脂で形成されている。サポート部材4は、左右のサイドフレーム32の少なくとも一側、本実施形態においてはシート近傍にあるドア側に取り付けられている。
また、サポート部材4は、図2及び図3に示すように、サイドフレーム32のシート幅方向内側に固定される内側板40と、サイドフレーム32のシート幅方向外側に固定される外側板42と、内側板40、外側板42の前側を連結する連結板41とから主に構成される。
なお、サポート部材4の詳細な形状については後述する。
【0025】
次に、サポート部材4の機能について、図3及び図4を参照して説明する。
ここで、図4(a)は、ビス30bによってサイドフレーム32に固定された部分を含むサポート部材4の断面であって、通常運転時のサイドフレーム32の断面を示す図2又は図3のA-A断面矢視図、図4(b)は、同断面であって、側突時のサイドフレーム32の状態を示す図2又は図3におけるA-A断面矢視図である。
【0026】
車両の通常の運転状態において、カーブ走行時のように乗員の上体がシート幅方向に振れる場合に、サポート部材4には、図3及び図4(a)において白抜きの矢印で示す後方斜め外方向に、乗員から荷重が加わることとなる。
この状態において、サポート部材4は、後述するリブ41aがサイドフレーム32の前面に当接すること及び自身の弾性によって、乗員からの荷重に対する反力を生じさせることで乗員を支持することとなる。
【0027】
一方、車両の側突時の状態においては、車両側方からの瞬時的な荷重が車両に加わることによって、通常運転状態に比較してシート幅方向に乗員の上体が大きく振れることとなる。この場合に、乗員の上体が大きく振れることで、サポート部材4には、図3及び図4(b)においてハッチング付きの矢印で示すシート幅方向に、乗員から大きな荷重が加わることとなる。
この側突時において、図4(b)において、サポート部材4を破線で示すように、サポート部材4が変形して乗員のシート幅方向の移動を許容することで、サポート部材4から大きな反力が乗員に加わることが抑制される。
【0028】
次に、上記の作用を導く、サポート部材4の詳細な形状とその機能について、図5図7を参照して説明する。
ここで、図5は、サポート部材4の外側板側斜視図、図6は、サポート部材4の内側板側斜視図、図7は、サポート部材4の後方側斜視図である。
【0029】
サポート部材4は、上述のように、内側板40と、外側板42と、内側板40、外側板42のそれぞれの前側を連結する連結板41とから主に構成されている。
内側板40は、上下方向に延在する矩形部40aと、この矩形部40aにシート幅方向に連続して連結板41に連なる台形部40bと、から構成される。特に、内側板40は、サイドフレーム32の前方膨出部31bよりも上方である乗員の胸部の高さで、上部フレーム30の側部30aに取り付けられている。なお、乗員の胸部高さは、例えば、SAE規格に準拠したダミーの胸部高さに基づいて定められるものである。
【0030】
このように、内側板40が乗員の胸部の高さで上部フレーム30の側部30aに取り付けられていることで、乗員の胸部の脇にある肋骨を内側板40が支持することによって適切に保護することができる。更に、内側板40が前方膨出部31bより上方に配置されていることで、側突時に乗員が内側板40に打ち当たるときに、内側板40の変形が前方膨出部31bに干渉されないため、サポート部材4の変形が許容されることとなる。
【0031】
矩形部40aは、サイドフレーム32を構成する上部フレーム30の側部30aに固定される部位である。サポート部材4は、後述する内側取付孔40cにビス30bが通されて側部30aに固定されることとなる。
矩形部40aがサイドフレーム32に取り付けられた状態においては、後述する外側板42に対向する矩形部40aの内面が、サイドフレーム32を構成する上部フレーム30の側部30aの側面側に当接する。矩形部40aには、上部フレーム30の側部30aにシート幅方向で当接する部位に、厚さ方向に貫通する内側取付孔40cが2個、上下に形成されている。
なお、ビス30bによる上部フレーム30の側部30aへの取付状態は、サポート部材4の上方であって、内側板40と外側板42と連結板41とに一部を囲まれる空間の上方が図7に示すように開放されていることにより、確認が容易であるためメンテナンス性が良好である。
【0032】
台形部40bは、長辺側が矩形部40aに連なるように形成されており、後述する連結板41に短辺側が接続されている。台形部40bの上辺は、内側板40の上辺から連続するように略同じ高さで形成されており、台形部40bの下辺は、内側板40の下辺の接続部から上方に傾斜するように形成されている。
【0033】
連結板41は、連結部に相当するものであり、断面略U字状であり高さ方向に延在する形状を成し、内側板40の台形部40b及び後述する外側板42に連続して形成されている。連結板41の高さ方向の長さは、矩形部40aに形成された2個の内側取付孔40cにシート前後方向において重なるように形成されている。このように、連結板41が形成されていることで、通常運転時に、シート前方且つシート内側からシート後方且つシート外側に乗員から連結板41に加わる荷重に対する連結板41の剛性を高め、乗員のホールド性を高めることができる。
また、内側板40は、連結板41の高さ方向の長さに比較して、その高さ方向の長さが長く形成されている。このようにサポート部材4が形成されていることで、内側板40と乗員との接触面積を大きくして、内側板40から乗員に付加する力が局所的に生じることを抑制することができる。更に、内側板40よりも連結板41の面積を相対的に小さくしてその剛性を低下させることで、表皮1b及びクッションパッド1aを介してサポート部材4に乗員が触れる際に、乗員に生じる異物感を抑制できる。
なお、連結板41は、応力集中を避けることができるため、断面略U字状であることが好ましいが、本発明はこれに限定されない。例えば、連結板41は、上下に延在する平板状のものであってもよい。
【0034】
外側板42は、内側板40の矩形部40aに略平行に形成され、内側板40よりもシート前後方向の長さが長く、内側板40よりも下方に長く延在している。外側板42には、下方から順に、外側板42をサイドフレーム32に取り付けるための外側取付孔42a、エアバッグモジュール6を取り付けるためのモジュール取付孔42b、及びサイドフレーム32に形成された溶接ビードに干渉されないように形成されたビード逃げ孔42cが形成されている。
【0035】
外側取付孔42aは、サイドフレーム本体31aに形成された図12に示す貫通孔31cとともに、図示せぬボルトが通され、図示せぬナットによって締結されることによって、サイドフレーム本体31aと外側板42とを取り付けるためのものである。
外側取付孔42aは、内側取付孔40cとシート幅方向に重ならない位置に形成されている。具体的には、内側取付孔40cはサポート部材4の上部に形成されており、外側取付孔42aはサポート部材4の下部に形成されており、これらがシート幅方向に重ならないように形成されている。
【0036】
このように、外側取付孔42a及び内側取付孔40cが形成されていることにより、これらのそれぞれに挿入される締結具による、サイドフレーム32への取付位置がシート幅方向において重ならないこととなる。このため、側突時に乗員から加わるサポート部材4のシート幅方向の荷重に対する剛性を低減させることができ、図4(b)を参照して説明したように、サポート部材4が変形して乗員のシート幅方向の移動を許容することととなり、サポート部材4から大きな反力が乗員に加わることが抑制される。
更に、上記のように、サポート部材4は、サイドフレーム32のシート幅方向内側とシート幅方向外側とに跨って内側板40と外側板42で取り付けられている。このため、サポート部材4は、サイドフレーム32の外側のみにシート幅方向のスペースを使って取り付けられるものよりもコンパクトに配置されることとなる。
【0037】
ビード逃げ孔42cは、サイドフレーム本体31aからシート幅方向外方に盛り上がった溶接ビードに、サポート部材4が干渉することを回避するために形成されているものである。具体的な溶接ビードは、シートバックフレーム3を構成する図示せぬクッションばね等を固定する固定部をサイドフレーム本体31aに溶接すること等によって生じる。
また、モジュール取付孔42bの詳細については後述する。
【0038】
また、図7に示すように、連結板41のサイドフレーム32側である後側には、後部連結部に相当する板状のリブ41aが、本実施形態においては5枚形成されている。リブ41aは、内側板40の外側、外側板42の内側を連結し、連結板41、内側板40、外側板42のそれぞれに垂直に形成されている。
リブ41aは、上部フレーム30の側部30aの前側に当接することによって、図3及び図4(a)に白抜きの矢印で示す、シート後方、且つ、シート幅方向外側に向かって通常運転時に乗員から加わる荷重のうち、後ろ方向成分の荷重に対する反力を生じさせることができ、乗員のホールド性を高めることができる。
【0039】
上記の実施形態に係るサポート部材4を備える車両用シートSによれば、通常運転時に、乗員のホールド性を高めることができ、且つ、側突時に、乗員の移動を許容することで、サポート部材4から大きな反力が乗員に係ることを防止できる。
つまり、本実施形態に係る車両用シートSによれば、エアバッグが動作しない通常運転時の乗員のホールド性が向上しつつ、エアバッグを備えていない車両であっても、側突時の衝撃を緩和することができる。
【0040】
更に、側突時の衝撃から乗員を保護するために、サポート部材4のシート幅方向外側にエアバッグモジュール6を取り付けるようにしてもよい。次に、このようにエアバッグモジュール6を備える実施形態について、図8及び図9を参照して説明する。
ここで、図8は、サイドフレーム32に取り付けられた状態のサポート部材4、及びエアバッグモジュール6の模式的な正面図、図9は、シートバックフレーム3のサイドフレーム32の外側に取り付けられた状態のサポート部材4、及びエアバッグモジュール6を示す図1のB-B断面矢視図である。
【0041】
本実施形態に係るエアバッグモジュール6は、モジュールケースを有しないケースレスエアバッグモジュールから成る。エアバッグモジュール6は、図9に示すように、インフレータ6aと、折り畳まれたエアバッグ6bと、エアバッグ6bを包むラップ材6dとを備えている。
エアバッグモジュール6は、後述するインフレータ6aとともに、車両用シートS内側に向かって立設されたボルト18がモジュール取付孔42bに通され締結されることにより、サポート部材4及びサイドフレーム32に固定されている。つまり、サポート部材4に形成されたモジュール取付孔42bは、エアバッグモジュール6の固定のために形成されているものである。
【0042】
また、エアバッグモジュール6は、表皮1bの端部の縫合部60に一端を共縫いされた2枚の力布6cによって覆われている。一方の力布6cの他端は、取付部材50によってサイドフレーム本体31aの取付孔16に取り付けられ、他方の力布6cの他端は、係止フック6eによって、サイドフレーム本体31aの後ろ側の縁に係止されている。
そして、インフレータ6aから噴出されるガスの圧力によって2枚の力布6cが共縫いされた縫合部60が破断することで、車両用シートS前方にエアバッグ6bが展開可能となる。
【0043】
エアバッグ6bは、布袋等からなるラップ材6dによって折り畳み状態に保持されており、このラップ材6dは、エアバッグ6bが展開する場合に、容易に破けるようになっている。
インフレータ6aは、エアバッグ6b内における内側板40よりも下方に配設され、エアバッグ6bは、インフレータ6aから噴出されるガスによって車両用シートS前方に展開するようになっている。このように、インフレータ6aは、内側板40よりも下方に配設されていることにより、側突時に乗員が当接することによる内側板40の変形に干渉することを回避できる。
インフレータ6aの外周部は、前述のように、車両用シートS内側に向かって立設されたボルト18により、サポート部材4及びサイドフレーム32に固定されている。なお、インフレータ6aは、ボルト以外の取付部材によりサイドフレーム32に固定されていてもよい。
【0044】
サポート部材4は、図9に示すように、外側板42が取付部材50の後方に配置されるように、サイドフレーム本体31aに取り付けられている。このように、サポート部材4がサイドフレーム本体31aに取り付けられていることで、エアバッグモジュール6のサイドフレーム本体31aへの取り付けに、サポート部材4が干渉することを防止できる。
【0045】
上記実施形態に係るサポート部材4は、図4に示して説明したように、内側取付孔40cを挿通するビス30bによって、上部フレーム30の側部30aにシート幅方向で固定されているものである。
しかし、本願発明は、上記実施形態に限定されず、上部フレーム30の側部30aにシート前後方向で固定されるサポート部材7を備えるものも含まれる。
【0046】
他の実施形態に係るサポート部材7について、図10及び図11を参照して説明する。なお、上記実施形態と同じものには同じ符号を付して説明を省略し、上記実施形態との相違点について詳細に説明する。
ここで、図10は、サポート部材7の後方側斜視図、図11は、サポート部材7におけるビス30bによってサイドフレーム32に固定された部分を含む断面及びサイドフレーム32の断面であって、図10のC-C断面を含む断面斜視図である。
【0047】
サポート部材7は、サイドフレーム32のシート幅方向内側に固定される内側板70と、サイドフレーム32のシート幅方向外側に固定される外側板42と、内側板70、外側板42の前側を連結する連結部71とから主に構成される。
【0048】
内側板70は、上下方向に延在しており、矩形状の側受部70bと、側受部70bに連続して内側板70の端部側に形成され、側受部70bに対して約90度~約120度の角度で形成されたフランジ部70aとを備える。
【0049】
フランジ部70aは、サイドフレーム32を構成する上部フレーム30の側部30aに固定される部位である。フランジ部70aには、後述する内側取付孔70cが形成されている。この内側取付孔70cにビス30bが通されて、フランジ部70aを含むサポート部材7は側部30aに固定されることとなる。
フランジ部70aがサイドフレーム32に取り付けられた状態においては、フランジ部70aの内面が、サイドフレーム32を構成する上部フレーム30の側部30aの前面側に当接する。
【0050】
フランジ部70aには、上部フレーム30の側部30aにシート前後方向で当接する部位に、前後方向である厚さ方向に貫通する内側取付孔70cが2個、上下に形成されている。内側取付孔70cにおけるフランジ部70aの側部30a側である内側の周縁は、側部30a側に盛り上がって形成されている。
このように内側取付孔70cの周縁が盛り上がって形成されていることで、図11に示すように、側部30aの一部を覆うサイドフレーム本体31aによって、フランジ部70aが側部30aから離間することを防ぐことができる。このため、ビス30bのぐらつきを内側取付孔70cの周縁によって抑制でき、その固定が安定する。
【0051】
側受部70bは、乗員のシート幅方向の荷重を受ける部位であり、フランジ部70aに連続する側の逆側では後述する連結部71に連続して形成されている。
【0052】
連結部71は、断面略U字状に湾曲して高さ方向に延在する形状を成し、内側板70の側受部70b及び外側板42に連続して形成されている。連結部71の高さ方向の長さは、フランジ部70aに形成された2個の内側取付孔70cにシート前後方向において重なるように形成されている。
【0053】
特に、連結部71は連結板41に比較して曲率が大きく形成されているため、側受部70bと外側板42との対向する面の距離が短い。連結部71がこのように形成されていることにより、側受部70bはサイドフレーム本体31aよりもシート外側に配置される。このため、側受部70bからシート内側に曲がって延出するフランジ部70aのシート内側への突出量が抑えられ、フランジ部70aは、サイドフレーム本体31aに固定された側部30aの前面側に対向する位置に配置されることとなる。
フランジ部70aがこのように配置されることによって、フランジ部70aを側部30aにビス30bによって前後方向で固定することが可能となる。
【0054】
このように、フランジ部70aをビス30bによって、シート幅方向ではなくシート前後方向で側部30aに固定できるため、シート幅方向に垂直な面においてビス30bの頭部が広く延在することを防ぎ、シート幅方向においてサポート部材7にクッションパッド1a及び表皮1bを介して触れる乗員の違和感を抑制できる。
また、車両用シートSにおける左右一対の上部フレーム30の間には、様々な部品が取り付けられる等によって、そのスペースが制限されて、当該部品等の取付作業性が低くなることがある。この点、図11で示す形状のサポート部材7によれば、ビス30bによって上部フレーム30の側部30aにシート前後方向で取り付けることができ、サポート部材4と比較して、サポート部材7のシート幅方向内側のスペースを広げることができる。よって、シート幅方向で側部30aに取り付けられるサポート部材4と比べて、上記部品及びサポート部材7の取付作業性が向上する。
更に、シート幅方向にビス30bの軸方向が延在しないため、ビス30bのネジ部に軸方向の繰り返し荷重が加わることを抑制でき、ビス30bの寿命、ひいてはサポート部材7の寿命を長くすることができる。
【0055】
本実施形態では、主として本発明に係る車両用シートに関して説明した。ただし、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0056】
例えば、本実施形態においては、サポート部材が、左右のサイドフレームの一方側のみに取り付けられている構成について説明したが、シート両側における乗員のホールド性を高めるために、サイドフレームの両側に、左右対称に形成されたサポート部材を取り付けるようにしてもよい。
【0057】
また、本実施形態では、サポート部材に取り付けられるエアバッグモジュールを、ケースレスのものから構成されたものを取り付けるものとして説明したが、これに限定されるものでなく、モジュールケースを備えたものであってもよい。
【符号の説明】
【0058】
1a クッションパッド
1b 表皮
16 取付孔
18 ボルト
3 シートバックフレーム
30 上部フレーム
30a 側部
30b ビス
31a サイドフレーム本体
31b 前方膨出部
31c 貫通孔
32 サイドフレーム
33 下部フレーム
4 サポート部材
40 内側板
40a 矩形部
40b 台形部
40c 内側取付孔(内側取付部)
41 連結板(連結部)
41a リブ(後部連結部)
42 外側板
42a 外側取付孔(外側取付部)
42b モジュール取付孔(エアバッグ取付部)
42c ビード逃げ孔
50 取付部材
6 エアバッグモジュール
6a インフレータ
6b エアバッグ
6c 力布
6d ラップ材
6e 係止フック
60 縫合部
7 サポート部材
70 内側板
70a フランジ部
70b 側受部
70c 内側取付孔(内側取付部)
71 連結部
S 車両用シート
S1 シートバック
S2 シートクッション
図1
図2
図3
図4
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図6
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図9
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図12