(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-01-18
(45)【発行日】2022-01-26
(54)【発明の名称】外用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 47/32 20060101AFI20220119BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20220119BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20220119BHJP
A61P 17/04 20060101ALI20220119BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20220119BHJP
A61P 17/16 20060101ALI20220119BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20220119BHJP
A61K 31/135 20060101ALI20220119BHJP
A61K 31/164 20060101ALI20220119BHJP
A61K 31/704 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
A61K47/32
A61K9/70 405
A61P17/02
A61P17/04
A61P17/06
A61P17/16
A61P37/08
A61K31/135
A61K31/164
A61K31/704
(21)【出願番号】P 2018015730
(22)【出願日】2018-01-31
【審査請求日】2020-09-17
(73)【特許権者】
【識別番号】391031247
【氏名又は名称】東光薬品工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100163658
【氏名又は名称】小池 順造
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(72)【発明者】
【氏名】吉田 清太郎
(72)【発明者】
【氏名】中村 英樹
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 皇汰
(72)【発明者】
【氏名】宮本 幸治
(72)【発明者】
【氏名】坂元 伸行
【審査官】伊藤 幸司
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-075111(JP,A)
【文献】特開2013-035830(JP,A)
【文献】特開2006-312603(JP,A)
【文献】特開2014-141470(JP,A)
【文献】特開2017-210450(JP,A)
【文献】国際公開第2008/123115(WO,A3)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート素材に、下記の(A)及び(B)を含み、低級アルコールを含まないことを特徴とする組成物を担持してなり、前記組成物100質量%中の(B)の含有量が0.01~0.5質量%である皮膚炎治療用シート型外用組成物。
(A)水溶性有効成分
(B)2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン70~90モル%とメタクリル酸ブチル30~10モル%との重量平均分子量50,000~1,000,000の共重合体
【請求項2】
皮膚炎が、肌荒れ、湿疹、かゆみ、ひび、ただれ、かぶれ、あかぎれ、あせも、しもやけ、虫さされ、じんましん、アトピー性皮膚炎、及び乾癬から選ばれる、請求項1に記載の皮膚炎治療用シート型外用組成物。
【請求項3】
水溶性有効成分が、ジフェンヒドラミン塩酸塩、グリチルリチン酸二カリウム、及びパンテノールから選ばれる少なくとも1つである請求項1又は2に記載の皮膚炎治療用シート型外用組成物。
【請求項4】
水溶性有効成分が、ジフェンヒドラミン塩酸塩、グリチルリチン酸二カリウム、及びパンテノールである請求項3に記載の皮膚炎治療用シート型外用組成物。
【請求項5】
シート素材に、下記の(A’)及び(B’)を含み、エタノールを含まないことを特徴とする組成物を担持してなり、前記組成物100質量%中の(B’)の含有量が0.01~0.5質量%である、皮膚炎治療用シート型外用組成物。
(A’)ジフェンヒドラミン塩酸塩、グリチルリチン酸二カリウム、及びパンテノール
(B’)2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン70~90モル%とメタクリル酸ブチル30~10モル%との重量平均分子量50,000~1,000,000の共重合体
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶性有効成分、及び2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン70~90モル%とメタクリル酸ブチル30~10モル%との重量平均分子量50,000~1,000,000の共重合体を含み、低級アルコールを含まない皮膚炎治療用シート型外用組成物に関する。
【0002】
詳しくは、本発明は、シート素材に、下記の(A)及び(B)を含み、低級アルコールを含まないことを特徴とする組成物を担持してなり、前記組成物中の(B)の含有量が0.01~0.5質量%である皮膚炎治療用シート型外用組成物に関する。
(A)水溶性有効成分
(B)2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン70~90モル%とメタクリル酸ブチル30~10モル%との重量平均分子量50,000~1,000,000の共重合体
【背景技術】
【0003】
皮膚に発症する種々の炎症に悩む患者が、老若男女を問わず増加している。皮膚の炎症は、ひび、あかぎれ、しもやけ、虫さされ、じんましん、アトピー性皮膚炎、湿疹、乾癬等々、環境要因や遺伝的要因によるもの等さまざまである。これら皮膚の炎症には、患部に直接適用する皮膚外用剤が用いられる。
【0004】
現在、市販されている皮膚に発症する種々の炎症用の皮膚外用剤は、軟膏、クリーム等が挙げられるが、これらを使用した場合、手が汚れるために使用が倦厭されることがある。そのため、手を汚すことなく使用できるものとしてシート型の皮膚外用剤の使用が望まれている。
また、薬剤の効能を患部に与えながら、保湿感を与えるようなスキンケア性に優れた製剤のように治療以外の機能を有することが要望されている。
【0005】
特許文献1では、難水溶性薬剤、ノニオン性界面活性剤、エタノール、及び多価アルコールを含む透明な可溶化組成物(液剤)を吸水性不織布に含浸させたシートが、患部に対し弱い刺激で汚れを拭き取ることができ、拭き取り時のさっぱり感とベタツキ感のなさを両立し、拭き取り時に白残りが生じないことが記載されている。
【0006】
しかしながら、当該シートは、肌タイプによっては、悪影響を及ぼす可能性があるエタノールを含むことから、その使用により肌が乾燥したり、刺激を強く感じたりして、肌荒れ等の皮膚疾患を悪化させる恐れもあり得る。また、さっぱり感やベタツキ感のなさに関して記載があるものの、保湿のようなスキンケア性を付与させる組成物に関する記載はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
皮膚に発症する種々の炎症の治療用の皮膚外用剤の使用時の手の汚れを低減させるシート型であって、過敏な患部への刺激が少なく、かつスキンケア性を付与できる製剤を提供するためには、シート剤に含浸された薬剤の刺激を低減させ、保湿感を与えることができる皮膚炎治療用シート型外用組成物が必要となる。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、過敏な患部への刺激が少なく、かつスキンケア性を付与できる皮膚炎治療用シート型外用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意検討したところ、低級アルコールを用いないこと、及び通常保湿剤として用いられる2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン70~90モル%とメタクリル酸ブチル30~10モル%との重量平均分子量50,000~1,000,000の共重合体を特定量用いると、水溶性有効成分の効果を低減させることなく、低刺激性とスキンケア性を付与できる皮膚炎治療用シート型外用組成物となることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち本発明は、以下の通りである。
<1> シート素材に、下記の(A)及び(B)を含み、低級アルコールを含まないことを特徴とする組成物を担持してなり、前記組成物100質量%中の(B)の含有量が0.01~0.5質量%である皮膚炎治療用シート型外用組成物。
(A)水溶性有効成分
(B)2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン70~90モル%とメタクリル酸ブチル30~10モル%との重量平均分子量50,000~1,000,000の共重合体
<2> 皮膚炎が、肌荒れ、湿疹、かゆみ、ひび、ただれ、かぶれ、あかぎれ、あせも、しもやけ、虫さされ、じんましん、アトピー性皮膚炎、及び乾癬から選ばれる、<1>に記載の皮膚炎治療用シート型外用組成物。
<3> 水溶性有効成分が、ジフェンヒドラミン塩酸塩、グリチルリチン酸二カリウム、及びパンテノールから選ばれる少なくとも1つである<1>又は<2>に記載の皮膚炎治療用シート型外用組成物。
<4> 水溶性有効成分が、ジフェンヒドラミン塩酸塩、グリチルリチン酸二カリウム、及びパンテノールである<3>に記載の皮膚炎治療用シート型外用組成物。
<5> シート素材に、下記の(A’)及び(B’)を含み、エタノールを含まないことを特徴とする組成物を担持してなり、前記組成物100質量%中の(B’)の含有量が0.01~0.5質量%である皮膚炎治療用シート型外用組成物。
(A’)ジフェンヒドラミン塩酸塩、グリチルリチン酸二カリウム、及びパンテノール
(B’)2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン70~90モル%とメタクリル酸ブチル30~10モル%との重量平均分子量50,000~1,000,000の共重合体
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、過敏な患部への刺激が少なく、かつスキンケア性を付与できる皮膚炎治療用シート型外用組成物を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施例1又は実施例2のシート型外用組成物、或いは成分(B)を含まない比較例のシート型外用組成物を、両後部前腕部内側の皮膚に適用した直後と1時間経過後の皮膚の保持水分量を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の皮膚炎治療用シート型外用組成物は、水溶性有効成分(成分(A))、及び2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン70~90モル%とメタクリル酸ブチル30~10モル%との重量平均分子量50,000~1,000,000の共重合体(成分(B))を含み、低級アルコールを含まないことを特徴とする組成物を、シート素材に担持してなり、前記組成物100質量%中の成分(B)の含有量が0.01~0.5質量%である。以下、本明細書においては、「組成物中」及び「組成物100質量%中」との記載における「組成物」とは、シート素材を含まない、成分(A)(又は成分(A’))及び成分(B)(又は成分(B’))を含有する組成物を意味し、シート素材をも含む組成物全体(すなわち、前記組成物をシート素材に担持してなる組成物)を、「シート型外用組成物」と称する。
【0015】
本発明における水溶性有効成分(すなわち、前記成分(A)又は(A’))は、第17改正日本薬局方に記載の、水に対して極めて溶けやすい(1g/1mL未満(溶質1gを溶かすのに要する水の量))、溶けやすい(1g/1mL~10mL)、やや溶けやすい(1g/10mL~30mL)、やや溶けにくい(1g/30mL~100mL)、及び溶けにくい(1g/100mL~1000mL)ものまでを意味し、すなわち、水中で、20℃の温度下で、5分間隔で30秒間強く振り混ぜるときに、30分以内(すなわち、5分間隔で6回振り混ぜてから30秒以内)に、1g/L以上溶解する成分をいう。好ましくは、ジフェンヒドラミン塩酸塩、グリチルリチン酸二カリウム、及びパンテノールから選ばれる少なくとも1つである。当該水溶性有効成分としては、ジフェンヒドラミン塩酸塩、グリチルリチン酸二カリウム、及びパンテノールの全てを含むものがより好ましい。
【0016】
本発明で用いる水溶性有効成分の組成物中の含有量は、有効成分の種類により異なるが、組成物100質量%中、0.01~10質量%とすることができる。
【0017】
本発明で用いるジフェンヒドラミン塩酸塩の組成物中の含有量は、組成物100質量%中、0.1~3質量%(好ましくは、0.4~2質量%)とすることができる。
本発明で用いるグリチルリチン酸二カリウムの組成物中の含有量は、組成物100質量%中、0.01~2質量%(好ましくは、0.1~1質量%)とすることができる。
本発明で用いるパンテノールの組成物中の含有量は、組成物100質量%中、0.1~5質量%(好ましくは、0.5~2質量%)とすることができる。
【0018】
本発明における「2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン70~90モル%とメタクリル酸ブチル30~10モル%との重量平均分子量50,000~1,000,000の共重合体」(すなわち、前記成分(B)又は(B’))とは、70~90モル%の2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンと、30~10モル%のメタクリル酸ブチルを重合させてなる、重量平均分子量50,000~1,000,000の共重合体であり、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体、及びこれらが組み合わされたもの、のいずれの構造であってもよい。共重合体の得やすさの点でランダム共重合体が好ましい。
重量平均分子量(Mw)は、ゲルろ過クロマトグラフィー(GFC)分析によりMwを算出することができる。具体的には、例えば、下記の条件にて分析を実施する。
<測定条件>
システム:高速液体クロマトグラフィーシステム;CCPS8020シリーズ(東ソー株式会社製)
カラム:SB-802.5 HQ及びSB-806MN HQを直列に接続
溶離液:20mMリン酸バッファー
検出器:RI、及びUV(波長210nm)
流速:0.5mL/分
測定時間:70分
注入量:100μL
ポリマー濃度:0.1重量%
カラムオーブン温度:45℃
【0019】
本発明における2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン70~90モル%とメタクリル酸ブチル30~10モル%との重量平均分子量50,000~1,000,000の共重合体は、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンとメタクリル酸ブチルとの共重合により調製することができる。当該共重合は、溶液重合、乳化重合、懸濁重合等の公知の方法(例えば、特開平11-035605号公報、特開2004-196868号公報等)で行うことができ、また、ラジカル重合で共重合させることが好ましい。また、本発明で用いる2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン70~90モル%とメタクリル酸ブチル30~10モル%との重量平均分子量50,000~1,000,000の共重合体として、市販品「商品名:Lipidure(リピジュア)(登録商標)PMB、日油株式会社製」等を用いることもできる。
【0020】
本発明で用いる2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン70~90モル%とメタクリル酸ブチル30~10モル%との重量平均分子量50,000~1,000,000の共重合体の組成物中の含有量は、組成物100質量%中、0.01~0.5質量%(好ましくは、0.025~0.25質量%)とすることができる。
【0021】
本発明のシート型外用組成物は、組成物中に上記成分(A)(又は成分(A’))の他に、さらに別の抗炎症剤、抗酸化剤等を有効成分として、含むことができる。
【0022】
有効成分として、さらに含んでもよい抗炎症剤としては、例えば、グリチルリチン酸及びその誘導体(例、グリチルリチン酸モノカリウム、グリチルリチン酸モノアンモニウム等)、グリチルレチン酸及びその誘導体(例、グリチルレチン酸ステアリル、グリチルレチン酸グリチルレチニル、3-サクシニルオキシグリチルレチン酸ジナトリウム等)、グアイアズレン、インドメタシン、ケトプロフェン、ピロキシカム、アセトアミノフェン、アスピリン、サリチル酸、ブフェキサマク、スプロフェン、イブプロフェンピコノール、フルルビプロフェン、プラノプロフェン、ジクロフェナクナトリウム、サリチル酸ナトリウム、サリチル酸メチル、ベンダザック、フェルビナク、ヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、甘草エキス、プロポリスエキス等が挙げられ、中でも、好ましくは、グリチルリチン酸及びその誘導体である。さらに含んでもよい抗酸化剤としては、アスコルビン酸、尿酸、グルタチオン、メラトニン、トコトリエノール類等が挙げられる。
【0023】
本発明のシート型外用組成物は、低級アルコールを含まない。これにより、過敏な患部への刺激を低減できる。本明細書において、低級アルコールとは、炭素数6以下の1価のアルキルアルコールを意味し、具体的には、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等が挙げられる。本発明のシート型外用組成物としては、エタノールを含まないものが好ましい。
【0024】
本発明のシート型外用組成物には、前記成分の他、さらに一般的に用いられる界面活性剤、油脂類、保湿剤、湿潤剤、安定剤、安定化剤、防腐剤、増粘剤、色素、香料、清涼剤等の成分を配合することができる。
【0025】
界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンラノリン、ポリオキシエチレンラノリンアルコール、ポリオキシエチレンステロール、ポリオキシエチレン水素添加ステロール、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンフェニルエーテルポリマー、ポリオキシエチレンアルキレンアリールフェニルエーテル、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、ポリオキシエチレンセチルエーテル、リン脂質、サーファクチン、サポニン、ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド、ステアリン酸ジエチルアミノプロピルアミド、トリラウリルアミン、ジメチルステアリルアミン、ジ-2-エチルヘキシルアミン、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ラウリルヒドロキシスルホベタイン等が挙げられる。
油脂類としては、例えば、流動パラフィン、白色ワセリン、黄色ワセリン、シリコン、ミツロウ等が挙げられる。
保湿剤及び湿潤剤としては、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ヒアルロン酸ナトリウム、アセチル化ヒアルロン酸ナトリウム等が挙げられる。
安定剤及び安定化剤としては、例えば、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)の4または2アルカリ塩、クエン酸、クエン酸ナトリウム、L-アルギニン、水酸化カリウム、トコフェロール、シリコーン、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ジブチルヒドロキシトルエン等が挙げられる。
防腐剤としては、例えば、パラオキシ安息香酸エステル、ビオゾール、ソルビン酸、フェノール、ベンジルアルコール等が挙げられる。
増粘剤としては、例えば、アクリル酸アクリル共重合体、アクリル酸メタクリル酸アルキル共重合体、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム)共重合体、カルボキシビニル重合体のようなアクリル酸系増粘剤(すなわち、(メタ)アクリル酸単量体及び/または(メタ)アクリル酸アルキル単量体を構成成分としてなる重合体、共重合体、または交差重合体)、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ケラト硫酸、またはこれらの塩、アラビアガム、グアーガム、ローカストビーンガム、タマリンドガム、カラギーナン、キサンタンガム、カードラン、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ベントナイト、アルギン酸、酢酸ビニル樹脂エマルション等が挙げられる。
香料としては、例えば、メントール、ハッカ油、サリチル酸メチル、バニリン、ベンジルサクシネート、メチルオイゲノール、アネトール、リモネン、オシメン、シトロネニルアセテート、シネオール、エチルリナロール、スペアミント油、ペパーミント油、ユーカリ油等が挙げられる。
清涼剤としては、例えば、カンフル、メントール、ハッカ油、フルーツフレーバー、及びバニリンなどが挙げられる。
【0026】
本発明のシート型外用組成物としては、シート型で使用され得る限り、制限はないが、例えば、粉末状や固体状の組成物そのものをシート素材に展延したり、液状の組成物をシート素材に含浸したり、ゲル状、ペースト状又はクリーム状の組成物をシート素材に塗布・展延することによりシート型の形状にできる。
【0027】
一実施形態として、本発明のシート型外用組成物は、前記成分(A)(又は成分(A’))、及び前記成分(B)(又は成分(B’))を含み、低級アルコールを含まないローション剤をシート素材に含浸することにより担持させて、シート型外用組成物とすることができる。
【0028】
本発明のシート型外用組成物に使用し得るシート素材としては、本発明の組成物を担持できるものであれば特に制限はなく、種々の織布、不織布、フィルム等を使用することができる。シート素材として、織布若しくは不織布を使用する場合、その素材は特に制限されず、綿、麻、羊毛等の天然繊維、レーヨン、アセテート等のセルロース系繊維、ナイロン、ビニロン、スチロール、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、アクリル等の合成繊維等を挙げることができる。シート素材として、フィルムを使用する場合も、その素材は特に制限されないが、具体的にはスチロール、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン等が挙げられる。この場合、適度な透過・透湿性を担保するためにメッシュ状のフィルムを用いることもできる。
本発明のシート型外用組成物のシート素材としては、不織布が好ましい。
【0029】
上記シート素材の厚みについても、特に制限はないが、使用感、貼付部位への馴染み易さ等の観点から、通常1~1000μm、好ましくは10~500μmである。また、当該シート素材は、シート型外用組成物を皮膚に貼付した場合に適用部位(貼付部位)の外形状になじむように、適度な伸縮性を有することが好ましい。
【0030】
本発明のシート型外用組成物は、基本的には、前記成分(A)(又は成分(A’))及び前記成分(B)(又は成分(B’))を含有する組成物及びシート素材からなるが、取り扱い性や衛生上の観点から、さらに必要に応じて、使用時に剥離除去される剥離フィルムを当該組成物表面に積層しておくこともできる。かかる剥離フィルムとしては、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン、塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート等を使用することができる。また、有効成分等の揮発や乾燥を防ぐために、必要に応じて、個別包装を施してもよい。
【0031】
本発明のシート型外用組成物は、大きさも特に制限されず、適用部位等に応じて適宜選択・調製することができる。
【0032】
シート型外用組成物の調製方法
本発明のシート型外用組成物は、従来公知の方法により調製することが可能である。一例として、本発明のシート型外用組成物は、前記成分(A)(又は成分(A’))及び前記成分(B)(又は成分(B’))と共に、必要に応じて添加されるその他の前記成分(例、他の有効成分薬物、界面活性剤、油脂類、保湿剤、湿潤剤、安定剤、安定化剤、防腐剤、増粘剤、色素、香料、清涼剤等)を混合、溶解して得た薬液を、所定の大きさに切断、必要に応じて折り畳んだシート素材(不織布)に含浸させることにより得ることができる。含浸方法としては、特に制限はなく、例えば、不織布に薬液を滴下又は噴霧することにより含浸させる方法、薬液中に不織布を浸漬することにより含浸させる方法、不織布をアルミパウチ等の包装具に収納した後、薬液を充填し密封する方法などが挙げられる。ここで、成分(A)を含有する薬液、成分(B)を含有する薬液、その他の成分を含有する薬液を別々に調製し、それぞれを逐次に不織布に含浸させてもよく、或いはそれらを一括して含浸させる方法を採用してもよい。また、各成分を含浸させる順序としては、どの成分から含浸させてもよい。不織布における薬液の含浸量は合計で、例えば、不織布の重量の3~6倍程度が好ましく、3.5~5.5倍程度がより好ましい。ここで、薬液の含浸量の総量が、組成物100質量%に該当する。
【0033】
シート型外用組成物の適用
本発明の皮膚炎治療用シート型外用組成物は、肌荒れ、湿疹、かゆみ、ひび、ただれ、かぶれ、あかぎれ、あせも、しもやけ、虫さされ、じんましん、アトピー性皮膚炎、乾癬等の皮膚炎の治療に用いることができる。
【0034】
本発明の皮膚炎治療用シート型外用組成物の使用方法としては、例えば、所定の成分を含むローション剤(薬液または液剤ともいう)を含浸させたシート型外用組成物を、皮膚炎やかゆみ等のある患部に対し、拭き取るように接触させる。これにより、かゆみ等の原因である汗や汚れなどを拭き取りながら、含有成分を塗布することができる。この方法においては、患部に直接指で触れる必要がないので、特に、指で直接塗布することに対して抵抗感のある患部や、患部が見えにくく、指では塗布しにくい部分、例えば、デリケートゾーンなどにも便利に使うことができる。
【0035】
以下に実施例及び試験例を挙げて本発明を詳細に説明するが、以下の実施例は、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0036】
実施例において用いた各成分は、次の通りである。
1.成分(A)(又は成分(A’)
成分(A)(又は成分(A’))の水溶性有効成分としては、ジフェンヒドラミン塩酸塩(金剛化学株式会社製)、グリチルリチン酸二カリウム(丸善製薬株式会社製)、及びパンテノール(アルプス薬品工業株式会社製)の市販品をそのまま用いた。
2.成分(B)(又は成分(B’)
成分(B)(又は成分(B’))の2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン70~90モル%とメタクリル酸ブチル30~10モル%との重量平均分子量50,000~1,000,000の共重合体としては、市販品である商品名:Lipidure(リピジュア)(登録商標)PMB(5%水溶液)(日油株式会社製)を用いた。
3.その他の成分
その他の成分としては、クエン酸水和物(小松屋株式会社製)、クエン酸ナトリウム水和物(小松屋株式会社製)、及び塩化ベンザルコニウム(日油株式会社製)を用いた。
4.シート素材
シート素材としては、ポリエステル製不織布であるSontara(ソンタラ)(登録商標)#8010(デュポン社製、坪量:45g/m2)を用いた。
【0037】
<シート型外用組成物の調製>
(実施例1)
ジフェンヒドラミン塩酸塩(金剛化学株式会社製)2g、グリチルリチン酸二カリウム(丸善製薬株式会社製)0.3g、パンテノール(アルプス薬品工業株式会社製)1g、Lipidure(リピジュア)(登録商標)PMB[共重合体組成(2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン/メタクリル酸ブチル)(モル比):80/20;重量平均分子量:600,000](5%水溶液)(日油株式会社製)1g、クエン酸水和物(小松屋株式会社製)0.01g、クエン酸ナトリウム水和物(小松屋株式会社製)0.05g、及び塩化ベンザルコニウム(日油株式会社製)0.02gを加え、これに全量100gとなるように精製水を加えて撹拌し、薬液を調製した。ポリエステル製不織布(Sontara(ソンタラ)(登録商標)#8010(デュポン社製、坪量:45g/m2))(11cm×12cm)に該薬液2.5mLを含浸させて、実施例1のシート型外用組成物を製造した。
【0038】
(実施例2及び比較例)
表1に示す種類及び含有量の各成分を含む組成物を薬液として使用した以外は、実施例1と同様の手順に従って製造した。
【0039】
【0040】
<刺激感及びスキンケア性評価試験>(試験例1)
実施例1、2及び比較例で調製したシート型外用組成物を用いて、以下の手順に従い、シート型外用組成物適用直後と適用1時間後の皮膚に保持できる水分量より使用直後の刺激感及びスキンケア性を評価した。
【0041】
(評価方法)
[1]被験者は、恒温恒湿室(20℃、40%RH)で15分間安静にした。
[2]初期状態の両後部前腕部内側の健康な状態の部位の角層水分量をSKICON EX200(IBS社)で測定した。
[3]両後部前腕部内側を各製剤で10往復拭った。
[4]恒温恒湿室(20℃、40%RH)で5分間安静にし、皮膚への刺激感の有無を確認した。
[5]続いて、塗布部位の角層水分量を測定した。
[6]塗布部位に水滴を乗せ、10秒静置した。
[7]10秒後、直ちに水滴をキムワイプで拭い取り、水滴付着部位の角層水分量を測定した。
[8]その後、同部位の角層水分量を30、60、90、120秒後まで測定した。
[9]前記[8]の測定から1時間後、恒温恒湿室(20℃、40%RH)で15分間安静にした。
[10]前記[6]の水滴付着部位の角層水分量を測定した。
[11]前記[6]~[8]と同様の操作を行った。
【0042】
スキンケア性の評価方法は、前記手順により得られた開始前、0、30、60、90、120秒後の角層水分量の結果をプロットした折れ線グラフを作成し、この折れ線グラフの内側の面積値を保持水分量とした。
また、比較例のシート型外用組成物(Lipidure(登録商標)PMB含有量0%)を使用した直後の皮膚の保持水分量を1.0とし、それぞれを使用した場合の面積比を算出した。
【0043】
実施例1、2及び比較例のシート型外用組成物は、いずれも刺激感が無かった。スキンケア性の評価結果を
図1に示した。
図1によれば、使用直後では実施例1及び2のシート型外用組成物で処理した皮膚の保持水分量は、比較例よりも高くなっていた。また、処理1時間後も実施例1及び2のシート型外用組成物で処理した皮膚では、その効果が持続している結果が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明によれば、過敏な患部への刺激が少なく、かつ優れたスキンケア性を付与できる皮膚炎治療用シート型外用組成物を提供することが可能である。